JP2003268020A - 水分散体の製造方法およびその水分散体 - Google Patents

水分散体の製造方法およびその水分散体

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JP2003268020A
JP2003268020A JP2002073462A JP2002073462A JP2003268020A JP 2003268020 A JP2003268020 A JP 2003268020A JP 2002073462 A JP2002073462 A JP 2002073462A JP 2002073462 A JP2002073462 A JP 2002073462A JP 2003268020 A JP2003268020 A JP 2003268020A
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polymerizable unsaturated
aqueous dispersion
monomer
radical
unsaturated monomer
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JP2002073462A
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Tomio Hashimoto
富雄 橋本
Kunihiro Inui
州弘 乾
Yoshiyuki Sakai
禎之 酒井
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Toyo Ink Mfg Co Ltd
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Toyo Ink Mfg Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】乳化重合により作成した高分子乳化剤を使用し
て乳化重合を行う水分散体の製造方法でありながら、重
合時に凝集物の発生しない安定な水分散体の製造方法を
提供することを課題とする。さらに、コーティング剤に
使用した場合に、ロールコート適性に優れ、光沢、耐水
性、耐ブロッキング性、密着性の良好な塗膜を形成する
ことのできる水分散体を提供することを課題とする。 【解決手段】カルボキシル基含有単量体を含むラジカル
重合可能な不飽和単量体と、連鎖移動剤とラジカル重合
性不飽和基を1個以上有する界面活性剤を用いて乳化重
合して1次重合体とする第1の工程;前記1次重合体を
塩基性物質で中和して1次重合体とする第2の工程;お
よび、芳香族系単量体を含むラジカル重合可能な不飽和
単量体を、ラジカル重合性の不飽和基を1個以上有する
界面活性剤で乳化混合した後、前記1次重合体と、乳化
重合して2次重合体とする第3の工程を含む水分散体の
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重合安定性、保存
安定性、成膜性の良好な粒子径の細かい水分散体の製造
方法およびその水分散体に関し、さらに詳しくは、紙、
フィルム、金属、ガラス、木材、皮革などの各種基材に
使用することのできるコーティング用、インキ用水分散
体であり、ロールコート適性に優れ、光沢、耐水性、耐
ブロッキング性、密着性の良好な塗膜を形成する水分散
体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ラジカル重合可能な不飽和単
量体を重合してなる水分散体の重合方法として、乳化重
合法は多岐にわたり利用されている。一般的な乳化重合
法としては、水媒体中で界面活性剤を使用し、そのミセ
ル中でラジカル重合を行う方法がある。この方法で作ら
れた水分散体は分子量が高く、コーティング用樹脂とし
て使用した場合には優れた物性をもつ塗膜が得られる。
反面、高分子量であるため成膜性が悪く光沢のよい塗膜
を得るのが難しい。また得られた水分散体の粘性はチキ
ソ性が強く、スプレーコートには適しているがロールコ
ートには適していない。
【0003】一方、上記に示した乳化重合法に対して、
水溶性の樹脂を高分子乳化剤として使用する乳化重合法
が知られている。この方法で作られた水分散体は、水溶
性樹脂が比較的多く存在するために成膜性がよく、ある
程度の高光沢な塗膜が得られる。また、粘性もニュート
ニアンに近くロールコートに適しているという特徴があ
る。しかし、水溶性樹脂を比較的多く使用しているため
耐水性が悪いという欠点を持っている。
【0004】この問題を解決するために酸含有モノマー
の使用量を減らすことが考えられるが、重合安定性、得
られた水分散体の経時安定性が悪くなる。この方法に用
いられる高分子乳化剤としては、さまざまな水溶性樹脂
が利用されており、これを用いたラジカル重合による製
造方法としては溶液重合、塊状重合、乳化重合などによ
る方法が知られている。
【0005】このうち、溶液重合による方法は脱溶剤の
必要性があり効率性、経済性がよくない。塊状重合によ
る方法は得られた固形樹脂を水に溶解する工程が必要で
あり効率性に問題がある。
【0006】一方、乳化重合による方法は、連続して次
の重合を行うことができるため最も効率のよい方法であ
る。例えば、特公平6−81765号公報には、反応性
のない界面活性剤を用い、親水性の1次重合体を乳化重
合で作成して、次に疎水性の2次重合体を乳化重合する
方法が示されている。しかし、この方法は、反応性のな
い界面活性剤を使用するため、コーティング剤に使用し
た場合に、その塗膜に反応性のない界面活性剤が残り、
耐水性、インキへの上塗り塗装性等に悪影響を及ぼし
た。さらに当該方法で得られた1次重合体の高分子乳化
剤は、親水性モノマーと疎水性モノマーの分布が偏りや
すく、また、当該記載の方法で2次重合体を重合した場
合は、分散体が不安定となり凝集物が発生しやすくなっ
た。しかも、得られる水分散体は高固形分で、粒子径の
細かいものは得られず、塗装適性や光沢に関して不利で
あった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、乳
化重合により作成した高分子乳化剤を使用して乳化重合
を行う水分散体の製造方法でありながら、重合時に凝集
物の発生しない安定な水分散体の製造方法を提供するこ
とを課題とする。さらに、コーティング剤に使用した場
合に、ロールコート適性に優れ、光沢、耐水性、耐ブロ
ッキング性、密着性の良好な塗膜を形成することのでき
る水分散体を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、全
不飽和単量体に対して0.5〜10重量%のカルボキシ
ル基含有単量体を含むラジカル重合可能な不飽和単量体
(X)と、全不飽和単量体に対して0.5〜5.0重量
%の連鎖移動剤と、全不飽和単量体に対して0.05〜
1.0重量%のラジカル重合性不飽和基を1個以上有す
る界面活性剤を用いて乳化重合して1次重合体(a)と
する第1の工程;前記1次重合体(a)を塩基性物質で
中和して1次重合体(a’)とする第2の工程;およ
び、芳香族系単量体を含むラジカル重合可能な不飽和単
量体(Y)を、ラジカル重合性の不飽和基を1個以上有
する界面活性剤で乳化混合した後、前記1次重合体
(a’)と、乳化重合して2次重合体(b)とする第3
の工程を含み、かつ、前記ラジカル重合性の不飽和基を
1個以上有する界面活性剤の量が、全不飽和単量体
(Y)に対して0.5〜5.0重量部である水分散体
(C)の製造方法に関する。
【0009】また、本発明は、第3の工程において、第
1の工程のラジカル重合可能な不飽和単量体(X)に由
来する部分と、第3の工程のラジカル重合可能な不飽和
単量体(Y)との重量比が9:1〜2:8であることを
特徴とする上記製造方法に関する。
【0010】また、本発明は、上記水分散体の製造方法
で製造してなる水分散体に関する。
【0011】また、本発明は、水分散体の粒子径が5〜
100nmであることを特徴とする上記水分散体に関す
る。
【0012】また、本発明は水分散体を含んでなるコー
ティング剤に関する。
【発明の実施形態】以下に、本発明の好ましい実施形態
を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるもので
はない。
【0013】本発明では、目的とする水分散体を製造す
るために2回(第1の工程および第3の工程)の乳化重
合を行う。第1の工程は1次重合体(a)を重合する工
程であり、0.5〜10重量%のカルボキシル基含有単
量体を含むラジカル重合可能な不飽和単量体(X)と、
0.5〜5.0重量%の連鎖移動剤と、全不飽和単量体
に対して0.05〜1.0重量%のラジカル重合性の不
飽和基を1個以上有する界面活性剤用いて乳化重合して
1次重合体とする。
【0014】第1の工程においては、ラジカル重合可能
な不飽和単量体(X)は、カルボキシル基含有単量体お
よび、その他のラジカル重合可能な不飽和単量体からな
る。
【0015】本発明に使用するカルボキシル基含有単量
体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、
マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などの重合性不飽
和カルボン酸およびそれらの無水物などから1種または
2種以上を選択することができる。
【0016】カルボキシル基含有単量体は、第1の工程
で使用するラジカル重合可能な不飽和単量体(X)中の
0.5〜10重量%であることが望ましい。カルボキシ
ル基含有単量体が0.5重量%より少ないと、重合安定
性が悪く凝集物が多量に発生して生産効率に悪影響を及
ぼす。一方、10重量%より多いと、コーティング剤に
使用した場合、塗膜の耐水性が悪くなる。
【0017】本発明に使用するその他のラジカル重合可
能な不飽和単量体としては、アクリル酸メチル、アクリ
ル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−
ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミ
ル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、
アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチ
ル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアク
リル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタ
クリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリ
ル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル
酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メ
タクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタク
リル酸ドデシルなどのメタクリル酸アルキルエステル
類;アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキ
シプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリ
ル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基含有モノマ
ー;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチ
ルアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミ
ド、N−ブトキシメチルメタアクリルアミドなどのN−
置換アクリル、メタクリル系モノマー;アクリル酸グリ
シジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有
モノマー;並びにアクリロニトリルなどから1種または
2種以上を選択することができる。
【0018】本発明においては分子量調整のために連鎖
移動剤を使用する。チオグリコール酸オクチル、チオグ
リコール酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オ
クチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、ステ
アリルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルス
チレンダイマーなどを使用することができる。連鎖移動
剤は、特に1次重合体(a)の乳化重合での使用が重要
であり、1次重合体の分子量によりその高分子乳化剤と
しての性能も左右される。1次重合体(a)の重量平均
分子量については3000〜30000が適当であり、
この調整には連鎖移動剤を用いるのが最も有効である。
さらに水分散体(c)の分子量を調整するために2次重
合体(b)の乳化重合時にも使用することができる。ラ
ジカル重合性の不飽和基を1個以上有する界面活性剤
は、第1の工程で用いるラジカル重合可能な不飽和単量
体(X)100重量部に対して0.5〜5.0重量部使
用する。この範囲外では、上記好ましい分子量を有する
1次重合体(a)が得られにくい。
【0019】本発明においては、環境問題を考慮して非
ノニルフェノール構造のラジカル重合性の不飽和基を1
個以上有する界面活性剤を使用することを特徴としてい
る。ラジカル重合性の不飽和基を1個以上有する界面活
性剤を用いることにより、1次重合体(a)に使用する
カルボキシル基含有単量体を減らすことが可能となる。
さらに得られた水分散体をコーティング剤に使用した場
合に、反応性のない界面活性剤のない塗膜を得ることが
できる。このことにより耐水性が良好で、インキ上に塗
装してもにじみのない高光沢の塗膜を得ることができ
る。
【0020】本発明に使用する界面活性剤は、非ノニル
フェノール系で分子中にラジカル重合性の不飽和基を1
個以上有するものであり、例えばスルフォコハク酸エス
テル系(市販品としては、例えば花王株式会社製ラテム
ルS−120,S−180P,S−180A,三洋化成
株式会社製エレミノールJS−2等)やアルキルエーテ
ル系(市販品としては、例えば第一工業製薬株式会社製
アクアロンKH−05、KH−10、旭電化工業株式会
社製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、E
R−10、20、30、40等)がある。
【0021】乳化重合に際しては、これらの1種または
2種以上を混合して用いる。またラジカル重合性の不飽
和基を1個以上有する界面活性剤の使用量が少なく乳化
が不充分である場合は、必要に応じて反応性のない界面
活性剤を併用することも可能である。しかし、前述した
ように塗膜の耐水性等の悪影響が考えられるため極力さ
けた方が好ましい。反応性のない界面活性剤としては、
通常の乳化重合に使用される非ノニルフェノール系のア
ニオン系、ノニオン系の界面活性剤を使用することがで
きる。
【0022】ラジカル重合性の不飽和基を1個以上有す
る界面活性剤は、第1の工程で用いるラジカル重合可能
な不飽和単量体(X)100重量部に対して0.05〜
1重量部使用する。0.01重量部より少ない場合で
は、重合時のエマルジョンの安定性が悪く凝集が起こり
やすい。また1重量部より多い場合では重合時の安定性
はよくなるが、樹脂中に親水性部分が多く、得られる樹
脂が高粘度になり高固形分の樹脂が得られない。
【0023】本発明の第2の工程としては、前記1次重
合体(a)を塩基性物質で中和して1次重合体(a’)
とする。この操作により1次重合体(a)は高分子乳化
剤としての機能を十分発揮できるようになる。
【0024】中和する際の塩基性物質としては、アンモ
ニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルア
ミン等のアルキルアミン類;2−ジメチルアミノエタノ
ール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ア
ミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類;モル
ホリン等の塩基で中和することができる。本発明では、
中和とは、カルボキシル基含有単量体のカルボキシル基
と、塩基性物質の塩基とを反応させることを意味し、必
ずしも、中和後のpHが7付近である必要はない。従っ
て、中和の程度は特に制限はなく、1次重合体(a’)
が高分子乳化剤として機能する範囲で行うことができ
る。
【0025】本発明の第3の工程では、芳香族系単量体
を含むラジカル重合可能な不飽和単量体(Y)を、ラジ
カル重合性の不飽和基を1個以上有する界面活性剤で乳
化混合した後、前記1次重合体(a’)と乳化重合して
2次重合体(b)を作成する。
【0026】第3の工程においては、ラジカル重合可能
な不飽和単量体(Y)は、芳香族系単量体、および、芳
香族系単量体以外のラジカル重合可能な不飽和単量体か
らなる。
【0027】本発明に使用する芳香族系単量体として
は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレ
ン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ベンジルア
クリレート、ベンジルメタクリレート、ビニルトルエン
等から1種または2種以上を選択することができる。
【0028】芳香族系単量体は、第1の工程において
は、高分子乳化剤として水溶化が悪くなるため出来るだ
け含有しない方が良い。第3の工程で使用するラジカル
重合可能な不飽和単量体(X)の芳香族系不飽和単量体
は屈折率が高いため、これを多く含む分散体を用いたコ
ーティング剤の塗膜は高い光沢をもつ。そのため、高光
沢を得るには第3の工程で芳香族系単量体をできるだけ
多量に使用した方が有利である。
【0029】第3の工程で用いる芳香族系単量体は、1
種または2種以上を選択することができる。 第3の工
程では、芳香族系単量体は、第3の工程で使用するラジ
カル重合可能な不飽和単量体(Y)中の20〜99重量
%であることが望ましい。前述したように芳香族系不飽
和単量体を多く含む化合物を用いたコーティング剤の塗
膜は高い光沢をもつため、2次重合体(b)においても
20重量%以上の芳香族系不飽和単量体が必要である。
【0030】芳香族系単量体以外のラジカル重合可能な
不飽和単量体としては、第1の工程で説明したカルボキ
シル基含有単量体、およびその他のラジカル重合可能な
不飽和単量体の中から1種または2種以上から選択する
ことができる。第1の工程で用いるラジカル重合可能な
不飽和単量体(X)と、第3の工程で用いるラジカル重
合可能な不飽和単量体(Y)とは、同じであっても異な
っていてもよい。カルボキシル基含有単量体は、第3の
工程では、必ずしも必要ではない。
【0031】本発明は、この第3の工程で不飽和単量体
をラジカル重合性の界面活性剤で乳化混合した後、乳化
重合を行い、2次重合体(b)を作成することを特徴と
する。この工程における2次重合体(b)の重合安定性
は、塩基性物質により中和された1次重合体(a’)の
高分子乳化剤としての性能に大きく依存する。1次重合
体(a)にはその水溶化のためにカルボキシル基含有単
量体を使用しているが、本発明では耐水性の良好な水分
散体とするためその使用量をできるだけ少なくしてい
る。これにより耐水性は向上するが、1次重合体(a)
を中和して水溶化した1次重合体(a’)の水溶性が充
分ではない。1次重合体(a’)の水溶性が充分でない
まま、第3の工程で2次重合体(b)を作成すると、凝
集物が多量に発生する。
【0032】この場合、1次重合体の量をある程度多く
することで凝集物の量を減らすことはできるが、高分子
乳化剤とほとんど同じ物性の樹脂溶液が得られるだけと
なる。このような不具合を解消するため第3の工程で使
用しているが、その結果、第3の工程で行う乳化重合の
安定化が図れ、目的とする水分散体(c)を得ることが
できる。
【0033】本発明では、第3の工程において、第1の
工程のラジカル重合可能な不飽和単量体(X)に由来す
る部分と、第3の工程のラジカル重合可能な不飽和単量
体の重量比(Y)が9:1〜2:8であることが好まし
い。重量比において、9:1より第1の工程の不飽和単
量体(X)に由来する部分の量が多くなると得られる水
分散体(c)の中の低分子量の親水性の樹脂が増えるこ
ととなり、コーティング剤に使用した際の塗膜物性、特
に耐水性や強度などに悪影響がでる。また2:8より第
1の工程の不飽和単量体(X)に由来する部分の量が少
なくなると2次分散体(b)を分散させる能力が及ば
ず、乳化重合時の重合安定性が悪くなる。
【0034】本発明では、第3の工程において、ラジカ
ル重合性の不飽和基を1個以上有する界面活性剤で乳化
混合することを特徴とする。ラジカル重合性の不飽和基
を1個以上有する界面活性剤は、第3の工程で用いるラ
ジカル重合可能な不飽和単量体(Y)100重量部に対
して0.5〜5.0重量部使用する。0.5重量部より
少ない場合では、重合時のエマルジョンの安定性が悪く
凝集が起こりやすい。
【0035】1次重合体(a)および2次重合体(b)
の乳化重合時に使用する開始剤としては、アンモニウム
パーオキサイド、ソディウムパーオキサイド等の無機系
過酸化物重合開始剤や水溶性アゾ系開始剤を使用する。
場合によればベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソ
ブチロニトリルなどの油溶性の開始剤を併用することも
できる。これら開始剤は単独で使用することもできる
が、ロンガリット等の還元剤との併用によるレドックス
型で使用してもよい。
【0036】また乳化重合中に、硫酸第二銅、塩化第二
銅等の銅イオンや、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等の鉄イオ
ンなどの遷移金属イオンを重合系に10-7〜10-5モル
/リットルの範囲で添加することができる。
【0037】さらに緩衝剤として酢酸ナトリウム、クエ
ン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が、また保護コロ
イドとしてのポリビニルアルコール、水溶性セルロース
誘導体等が使用できる。
【0038】本発明で製造された水分散体(c)の粒子
径は、5〜100nmであることが好ましい。水分散体
(c)の粒子径は、コーティング剤として用いた場合の
成膜性に大きな影響を与える。粒子径が100nmより
大きい場合であると得られた塗膜の光沢が低く、また塗
膜の割れなどの塗膜欠陥にもつながる。また、通常の手
法では、粒子径が5nmより小さい水分散体は得られに
くい。なお、粒子径はレーザー光散乱法で測定した。
【0039】本発明で製造された水分散体は、各種コー
ティング剤に使用することができる。このコーティング
剤は保存安定性、成膜性が良好であり、ロールコート適
性に優れ、光沢、耐水性、耐ブロッキング性、密着性の
良好な塗膜を形成する。コーティング剤の具体例として
は紙、フィルム、金属、ガラス、木材、皮革などの各種
基材に使用することのできる塗料やインキが挙げられ
る。またこれらのコーティング剤には顔料、染料等の着
色剤やフィラー、微粉末シリカ等のチキソ性調整剤、コ
ロイダルシリカ、アルミナゾル、ポリビニルピロリド
ン、ポリビニルアルコール、水溶性ポリエステル樹脂、
水溶性または水分散性ポリウレタン樹脂、乳化剤、消泡
剤、レベリング剤、滑り剤、粘着性付与剤、防腐剤、防
黴剤、造膜助剤としての有機溶剤などを必要に応じて配
合してもよい。
【0040】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。な
お、例中「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量
%」を示す。
【0041】(実施例1)温度計、滴下ロート、還流冷
却管を備え窒素ガスで置換した反応容器に、表1に示す
反応釜量のイオン交換水と界面活性剤を仕込んだ。表1
の第1工程滴下分はあらかじめ混合しておいた。内温を
80℃に昇温した後、滴下を開始した。内温を80℃に
保ちながら約29.5g/10分の割合で滴下し、さら
にその温度で0.5時間反応した。次に第2工程の25
%アンモニア水を添加して10分間撹拌を続けた。次に
第3工程としてあらかじめ乳化混合してプレエマルジョ
ンとしておいた。開始剤を添加し、同時にプレエマルジ
ョンを約47g/10分の割合で滴下し、さらに2時間
反応させた。冷却後、固形分41.2%、粘度780mP
a・s、pH8.1、粒子径54nmの水分散体を得た。
【0042】
【表1】
【0043】(実施例2〜10)表2に示す組成を実施
例1と同様の方法で重合して、それぞれの水分散体を得
た。
【0044】
【表2】
【0045】(比較例1〜6)表3に示す組成を実施例
1と同様の方法で重合して、それぞれの水分散体を得
た。
【0046】
【表3】
【0047】次に得られた実施例1〜10および比較例
1〜10の水分散体の物性を評価した。評価試験方法は
下記に示した方法で行った。各試験で得られた試料の物
性結果を表4に示した。
【0048】水分散体の評価 (1)重合安定性:反応終了後の反応容器への樹脂の付
着量および、濾布で濾過後の凝集物の量を目視で評価し
た。なお、評価基準は次のとおりである。 ◎:良好である。 ○:実用上問題のないレベルである。 △:若干問題のあるレベルである。 ×:不良である。
【0049】(2)保存安定性:密閉したガラス容器に
水分散体をいれて40℃で1カ月保存し、粘度の変化率
を測定した。さらに、ガラス容器の底の凝集物について
目視で評価した。なお、評価基準は次のとおりである。 ◎:粘度変化率 ≦±10%、凝集物は認められない。 ○:粘度変化率 ≦±10%、凝集物がわずかに認めら
れる。 △:粘度変化率 ±10%〜±30%、もしくは凝集物
が一部認められる。 ×:粘度変化率 ≧±30%、もしくはかなりの沈降が
認められる。
【0050】(3)耐水性:得られた水分散体(c)1
00部にブチルセロソルブ5部を添加し試験用の分散体
溶液とした。顔料濃度14%、樹脂/顔料の固形分比=
1/1の水性フレキソインキを#4バーコーターでコー
ト紙に塗工し80℃のオーブンで1分間乾燥した。この
上に、試験用の分散溶液を#6バーコーターで塗工し、
120℃のオーブンで3分間乾燥させ評価試料とした。
試料を学振型テスターにセットして、水で濡らしたカナ
キン3号布で500g×100回表面を往復させ、表面
状態を目視で観察した。なお、評価基準は次のとおりで
ある。 ◎:100回のラビングでも塗膜に全く変化がない。 ○:100回のラビングで塗膜にわずかな変化が見られ
る。 △:100回のラビングで塗膜にかなりの変化が見られ
る。 ×:100回のラビングを行わないうちに塗膜がなくな
ってしまう。
【0051】(4)光沢:上記で作成した評価試料を用
いて、60度の鏡面反射率をグロスメーターで測定し
た。
【0052】
【表4】
【0053】比較例1〜2は、第1の工程において、そ
れぞれ、カルボキシル基含有単量体0.25重量%、連
鎖移動剤0.25重量%用いた例であるが、どちらも、
重合安定性および保存安定性に劣った。また、比較例3
および4は、第1の工程において、それぞれ、反応性界
面活性剤0重量%、または非反応性界面活性剤を用いた
例であるが、いずれも耐水性が著しく劣った。
【0054】また、比較例5は、第3の工程において、
乳化混合をせずモノマー滴下を行ったが重合途中から全
体に凝集し取り出せなかった。比較例6は反応性界面活
性剤を8重量%使用した例であるが、耐水性が劣る結果
であった。これに対して、本発明の水分散体である実施
例1〜9は、いずれも、重合安定性、保存安定性、耐水
性、光沢値のすべてを満足するものであった。
【0055】
【発明の効果】本発明によれば重合安定性、保存安定
性、成膜性の良好な粒子径の細かい水分散体を製造する
ことができ、その水分散体を紙、フィルム、金属、ガラ
ス、木材、皮革などの各種基材に使用することのできる
コーティング用、インキ用塗装剤に用いると、ロールコ
ート適性に優れ、光沢、耐水性、耐ブロッキング性、密
着性の良好な塗膜を形成することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J011 KA06 KA09 KA10 KB08 KB13 KB29 4J038 CP061 MA08 MA10 NA01 NA04 NA12

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】全不飽和単量体に対して0.5〜10重量
    %のカルボキシル基含有単量体を含むラジカル重合可能
    な不飽和単量体(X)と、全不飽和単量体に対して0.
    5〜5.0重量%の連鎖移動剤と全不飽和単量体に対し
    て0.05〜1.0重量%のラジカル重合性不飽和基を
    1個以上有する界面活性剤を用いて乳化重合して1次重
    合体(a)とする第1の工程;前記1次重合体(a)を
    塩基性物質で中和して1次重合体(a’)とする第2の
    工程;および、芳香族系単量体を含むラジカル重合可能
    な不飽和単量体(Y)を、ラジカル重合性の不飽和基を
    1個以上有する界面活性剤で乳化混合した後、前記1次
    重合体(a’)と、乳化重合して2次重合体(b)とす
    る第3の工程を含み、かつ、前記ラジカル重合性の不飽
    和基を1個以上有する界面活性剤の量が、全不飽和単量
    体(Y)に対して0.5〜5.0重量%である水分散体
    (C)の製造方法。
  2. 【請求項2】第3の工程において、第1の工程のラジカ
    ル重合可能な不飽和単量体(X)に由来する部分と、第
    3の工程のラジカル重合可能な不飽和単量体(Y)との
    重量比が9:1〜2:8であることを特徴とする請求項
    1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の水分散体の製造方
    法で製造してなる水分散体。
  4. 【請求項4】水分散体(c)の粒子径が5〜100nm
    であることを特徴とする請求項3記載の水分散体。
  5. 【請求項5】請求項3または4記載の水分散体を含んで
    なるコーティング剤。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006193680A (ja) * 2005-01-17 2006-07-27 Showa Highpolymer Co Ltd 艶消しクリアトップコート用エマルジョン、塗料組成物、および塗装物品
JP6222869B1 (ja) * 2016-07-29 2017-11-01 サイデン化学株式会社 無溶剤液状アクリル樹脂組成物及び無溶剤液状アクリル樹脂組成物の製造方法

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JP2006193680A (ja) * 2005-01-17 2006-07-27 Showa Highpolymer Co Ltd 艶消しクリアトップコート用エマルジョン、塗料組成物、および塗装物品
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