JP2003253406A - 高耐摩耗高強度焼結部品およびその製造方法 - Google Patents
高耐摩耗高強度焼結部品およびその製造方法Info
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Abstract
結部品およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 カムロブ10は、鉄基粉末と黒鉛粉とを
含む鉄基粉末混合物を原料とし、圧縮成形、焼結および
浸炭により形成される焼結部品である。カムロブ10
は、表層をなす外側材11と、当該外側材11よりも内
方に位置する内側材12とを備えている。そして、内側
材を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率を、外側材
を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率に比べて高く
し、内側材における炭素量を確保しつつ外側材を高密度
化した。
Description
度の焼結部品およびその製造方法に関する。
冶金法による焼結部品に対し、耐摩耗性と機械的強度と
について、一層の強化の要求が強まっている。例えば、
特開平10−317090号公報には、鉄基粉末混合物
を圧縮成形して成形体とし、この成形体に焼結処理を施
して焼結体とし、その後に、浸炭処理を行って焼結部品
を得る技術が記載されている。
および高強度化に対しては、成形体の成形密度ひいては
焼結体の焼結密度の高密度化が有効であることが知られ
ている。この高密度化のためには、鉄基粉末混合物中の
黒鉛含有率を低減すればよい。
部品は全体が一種類の鉄基粉末混合物から成形されてい
るため、黒鉛含有率を低減するだけでは、焼結部品の高
耐摩耗化と高強度化との両立を図ることが難しいのが実
情である。すなわち、焼結密度が上昇すると、浸炭処理
時に炭素が中心部ないし芯部に拡散し難くなる。このた
め、表面部分は硬化されるが、中心部の炭素濃度は低い
ままであり、十分な機械的強度を得ることができないと
いう問題がある。
ためになされたものであり、高耐摩耗化と高強度化との
両立を図り得る焼結部品およびその製造方法を提供する
ことを目的とする。
記する手段により達成される。
混合物を原料とし、圧縮成形、焼結および浸炭により形
成される焼結部品であって、表層をなす第1の層と、当
該第1の層よりも内方に位置する第2の層とを少なくと
も備え、前記第2の層を形成する鉄基粉末混合物中の黒
鉛含有率を、前記第1の層を形成する鉄基粉末混合物中
の黒鉛含有率に比べて高くし、前記第2の層における炭
素量を確保しつつ前記第1の層を高密度化してなる高耐
摩耗高強度焼結部品。
界面の位置は、前記焼結部品が使用される際の最大へル
ツ応力の発生位置と異なることを特徴とする上記(1)
に記載の高耐摩耗高強度焼結部品。
混合物を原料とし、表層をなす第1の層と、当該第1の
層よりも内方に位置する第2の層とを少なくとも備える
焼結部品を製造する焼結部品の製造方法において、前記
第2の層を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率を、
前記第1の層を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率
に比べて高くし、前記第1の層を形成する鉄基粉末混合
物および前記第2の層を形成する鉄基粉末混合物を圧縮
成形して、前記第1の層と前記第2の層とを備える成形
体とし、前記成形体に焼結処理を施した後に、前記第1
の層に浸炭処理を行うことを特徴とする高耐摩耗高強度
焼結部品の製造方法。
合物中の黒鉛含有率は、0.2質量%以上、0.5質量
%未満であることを特徴とする上記(3)に記載の高耐
摩耗高強度焼結部品の製造方法。
粉末混合物は、銅粉をさらに含むことを特徴とする上記
(3)に記載の高耐摩耗高強度焼結部品の製造方法。
デン、銅、クロム、マンガンから選ばれる一種以上の金
属と、鉄との鉄合金の粉末であることを特徴とする上記
(3)に記載の高耐摩耗高強度焼結部品の製造方法。
界面の位置を、前記焼結部品が使用される際の最大へル
ツ応力の発生位置と異なる位置に形成することを特徴と
する上記(3)に記載の高耐摩耗高強度焼結部品の製造
方法。
物および金型を120℃〜140℃に加熱して行う温間
成形および/または金型潤滑によるものであることを特
徴とする上記(3)に記載の高耐摩耗高強度焼結部品の
製造方法。
の表面に圧縮残留応力を存在させ、耐摩耗性を向上させ
たことを特徴とする上記(3)に記載の高耐摩耗高強度
焼結部品の製造方法。
ロケット、プーリ、オイルポンプ、シンクロハブのいず
れかであることを特徴とする上記(3)に記載の高耐摩
耗高強度焼結部品の製造方法。
する。
を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率を、表層をな
す第1の層を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率に
比べて高くしてあるので、第1の層は、第2の層に比べ
て高密度化されて十分緻密化し、浸炭処理によって高耐
摩耗性を発揮する一方、第2の層は、第1の層ほどは高
密度化されないものの、十分な炭素量が確保されている
ため強い機械的強度を発揮する。したがって、高耐摩耗
化と高強度化との両立を図り得る焼結部品を得ることが
できる。
と第2の層との境界面位置と最大ヘルツ応力の発生位置
とが異なるため、境界面における第1の層と第2の層と
の剥離を回避した焼結部品を得ることができる。
は、第2の層に比べて高密度化されて十分緻密化し、浸
炭処理によって高耐摩耗性を発揮する一方、第2の層
は、第1の層ほどは高密度化されないものの、十分な炭
素量が確保されているため高い機械的強度を発揮する。
したがって、高耐摩耗化と高強度化との両立を図り得る
焼結部品を製造することができる。
を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率を、0.2質
量%以上、0.5質量%未満とすることで、第1の層を
形成する鉄基粉末混合物の圧縮性を高めることができ、
高密度の第1の層を備える焼結部品を製造することがで
きる。
混合物中に銅粉を添加することによって、耐摩耗性と機
械的強度とをさらに向上させた焼結部品を製造すること
ができる。
を、ニッケル、モリブデン、銅、クロム、マンガンから
選ばれる一種以上の金属と、鉄との鉄合金の粉末とする
ことによって、耐摩耗性と機械的強度とをより一層向上
させた焼結部品を製造することができる。
と第2の層との境界面位置と最大ヘルツ応力の発生位置
とが異なるため、境界面における第1の層と第2の層と
の剥離を回避した焼結部品を製造することができる。
および/または金型潤滑を用いることによって、鉄基粉
末混合物をより高く圧縮することが可能であり、高耐摩
耗化と高強度化との両立を図った焼結部品を効率的に製
造することができる。
に優れる第1の層を備える焼結部品を製造することがで
きる。
耗化と高強度化との両立を図ったカムロブ、スプロケッ
ト、プーリ、オイルポンプまたはシンクロハブを製造す
ることができる。
を参照しつつ説明する。
は本発明に係る製造方法により製造された焼結部品の一
例であるカムロブ10を示す断面図、図1(B)は、同
図(A)の1B−1B線に沿う断面図である。
構成する部品の一つであり、図示しないパイプに固定さ
れてカムシャフトを構成している。カムロブ10には、
部品全体としての機械的強度が高いこと、および、他の
部品と接触する表層の耐摩耗性すなわち硬度が高いこと
の2点が要求される。
む鉄基粉末混合物を原料とし、圧縮成形、焼結および浸
炭により形成される焼結部品である。カムロブ10は、
多層構造を有し、径方向外方に位置し表層をなす外側材
11(第1の層に相当する)と、当該外側材11よりも
径方向内方に位置する内側材12(第2の層に相当す
る)とを備えている。そして、内側材12を形成する鉄
基粉末混合物中の黒鉛含有率は、外側材11を形成する
鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率に比べて高くしてある。
かかる構成により、内側材12における炭素量を確保し
つつ外側材11を高密度化し、カムロブ10全体として
の機械的強度を高め、かつ、他の部品と接触する表層の
耐摩耗性を高めてある。
面13の位置は、カムロブ10が使用される際の最大へ
ルツ応力の発生位置14と異なる位置に設定してある。
最大へルツ応力の発生位置14は、図1に点線で示され
る。かかる構成により、境界面13における外側材11
と内側材12との剥離を回避した多層構造のカムロブ1
0を得ることができる。
を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率を、外側材1
1を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率に比べて高
くする。次いで、外側材11を形成する鉄基粉末混合物
および内側材12を形成する鉄基粉末混合物を圧縮成形
して、外側材11と内側材12とを備える成形体とす
る。そして、成形体に焼結処理を施した後に、外側材1
1に浸炭処理を行う。
合物として、外側材11を形成する第1の鉄基粉末混合
物と、内側材12を形成する第2の鉄基粉末混合物との
二種類を製作する。第1と第2の鉄基粉末混合物は、い
ずれも、鉄(Fe)系の金属粉末である鉄基粉末を主体
とし、黒鉛(C)粉を含んでいる。また、第1と第2の
鉄基粉末混合物は、温間成形を行うために、粉末成形用
潤滑剤も含んでいる。潤滑剤としては、ステアリン酸亜
鉛、ステアリン酸リチウムなどが用いられる。
(Cu)粉をさらに含んでもよい。第1と第2の鉄基粉
末混合物中に銅粉を添加することによって、耐摩耗性と
機械的強度とをさらに向上させたカムロブ10を製造す
ることができる。
場合には、鉄基粉末を、ニッケル(Ni)、モリブデン
(Mo)、銅、クロム(Cr)、マンガン(Mn)から
選ばれる一種以上の金属と、鉄との鉄合金の粉末とする
ことが好ましい。鉄基粉末をこれらの鉄合金粉末とする
ことによって、耐摩耗性と機械的強度とをより一層向上
させたカムロブ10を製造することができる。
は、第1の鉄基粉末混合物の高密度化による焼結部品の
高密度化が有効である。一般に黒鉛粉は焼結部品の機械
的強度を向上するために添加されるが、見掛け密度の低
い黒鉛粉の含有量が多いと、外側材11の密度を十分に
高めることができない。そこで、外側材11の高密度化
を図るために、第1の鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率を
低下させるのがよい。
鉛含有率は、0.2質量%以上、0.5質量%未満とし
た。黒鉛含有率が0.5質量%以上になると、圧縮成形
しても緻密化し難く、密度の向上効果が小さい。一方、
黒鉛含有率が0.2質量%未満では、浸炭処理による強
度の向上効果が小さい。このため、第1の鉄基粉末混合
物に含まれる黒鉛は、当該鉄基粉末混合物全量に対し、
0.2質量%以上、0.5質量%未満に限定した。これ
により、第1の鉄基粉末混合物の圧縮性を高めることが
でき、高密度の外側材11を備えるカムロブ10を製造
することができる。
第1の鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率に比べて高い、
0.7質量%〜0.8質量%である。
に圧縮成形する際には、加圧成形時に第1の鉄基粉末混
合物および第2の鉄基粉末混合物が相互に混ざり合うこ
とを防止するため、仮圧縮方式により圧縮成形する。
圧縮成形を示す概念図である。まず、一方の鉄基粉末混
合物21を金型23内に充填する(図2(A))。充填
後、パンチ24a、24bによって、鉄基粉末混合物2
1を崩れない密度まで金型23内で仮圧縮する(図2
(B))。次に、他方の鉄基粉末混合物22を、仮圧縮
された鉄基粉末混合物21によって仕切られた金型23
の空間に充填する(図2(C))。パンチ24a、24
b、25a、25bによって、仮圧縮された鉄基粉末混
合物21と一緒に鉄基粉末混合物22を加圧成形し、鉄
基粉末成形体を得る(図2(D))。
板をはさんで両側に鉄基粉末混合物を充填する仕切り板
方式などを適用して成形体を得ることもできる。
潤滑によって行われる。ここで、温間成形とは、粉体を
高密度に成形するための製造方法の一つであり、鉄基粉
末混合物を加熱しつつ成形し、潤滑剤を溶融させて粉末
粒子間に潤滑剤を均一に分散させ、粒子間および成形体
と金型との間の摩擦抵抗を下げて成形性を向上させる粉
体の成形方法である。潤滑剤としては、前述したよう
に、ステアリン酸亜鉛などが用いられる。また、金型潤
滑とは、温間成形の一種であり、予熱され表面に固体潤
滑剤を帯電付着させた金型に、加熱された鉄基粉末混合
物を充填したのちに加圧成形する粉体の成形方法であ
る。温間金型潤滑用の固体潤滑剤としては、ステアリン
酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウ
ムなどの金属石鹸や、エチレンビスステアラマイドなど
の通常ワックスと指称される潤滑剤が単独あるいは混合
して用いられる。これらの方法によれば、一回の加圧成
形によって密度の高い成形体を得ることができる。
縮成形を行うために、第1と第2の鉄基粉末混合物のそ
れぞれは、前述したように、温間成形用の潤滑剤を含ん
でいる。金型内面には、カムロブ10の形状に合致した
形状のキャビティが形成されている。温間成形および/
または金型潤滑による圧縮成形では、第1と第2の鉄基
粉末混合物および金型を、120℃〜140℃に加熱す
る。前述した仮圧縮方式を採用した場合には、加熱した
第2の鉄基粉末混合物を加熱した金型内に充填して仮圧
縮し、次いで、加熱した第1の鉄基粉末混合物を金型内
に充填する。そして、所定の温度(120℃〜140
℃)および圧力(600MPa〜700MPa)の下
で、第1と第2の鉄基粉末混合物を加圧し、鉄基粉末成
形体を形成する。
て焼結体を作製する。焼結処理条件は特に限定されるも
のではなく、公知の焼結方法をいずれも好適に使用でき
る。例えば、焼結温度は、1100℃〜1300℃の範
囲であり、焼結雰囲気は、水素を5〜6質量%含む窒素
ガス雰囲気、あるいは、ブタン変性ガス雰囲気である。
なお、焼結温度が高いほど焼結体の強度は増加するが、
焼結温度の上昇は焼結コストの増加につながることか
ら、要求される強度およびコストを考慮して、焼結温度
を適宜選択するのが好ましい。
体に対して、浸炭焼入れ処理および焼戻し処理を行う。
この一連の処理により、外側材11の炭素濃度が高くな
り、外側材11の硬度が向上する。
されるものではなく、公知の浸炭焼入れ焼戻し方法をい
ずれも好適に使用できる。例えば、浸炭性雰囲気のカー
ボンポテンシャルは材料によって異なるが、0.6質量
%C〜0.8質量%Cとし、金属組織が共析組織になる
雰囲気に調整する。昇温は鉄基材料のオーステナイト領
域である850℃以上にする。焼結体のボリュームによ
って異なるが、20〜60分程度、昇温された状態を保
持する。その後、150℃の焼入れオイルで冷却し、熱
処理後のひずみを除去するために焼戻しを300℃程度
で行う。
に圧縮残留応力を存在させ、耐摩耗性を向上させること
ができる。つまり、浸炭焼入れ処理により、炭素が金属
相に拡散した後に焼入れされるので、外側材11の表面
に圧縮残留応力が物理的に発生して、外側材11の耐摩
耗性が向上する。
10外周面と接触する部品との摺動によってカムロブ1
0内部に大きなヘルツ応力が発生する場合がある。ま
た、外側材11と内側材12との境界面13は、カムロ
ブ10の他の部位と比較して剥離が生じ易い。そこで、
最大ヘルツ応力発生位置14と境界面13の位置とを異
ならせ、境界面13における外側材11と内側材12と
の剥離の虞をなくすことが好ましい。
側材12を形成する第2の鉄基粉末混合物中の黒鉛含有
率を、表層をなす外側材11を形成する第1の鉄基粉末
混合物中の黒鉛含有率に比べて高くしてあるので、外側
材11は、内側材12に比べて高密度化されて十分緻密
化し、浸炭処理によって高耐摩耗性を発揮する。内側材
12は、外側材11ほどは高密度化されないものの、外
側材11が高密度化されているため、浸炭処理時に炭素
が拡散し難い。しかしながら、内側材12を形成する第
2の鉄基粉末混合物には十分な炭素量が確保されている
ため、内側材12は強い機械的強度を発揮する。したが
って、高耐摩耗化と高強度化との両立を図ったカムロブ
10を製造することができる。
13の位置は、カムロブ10が使用される際の最大へル
ツ応力の発生位置と異なるので、境界面13における外
側材11と内側材12との剥離を回避した多層構造のカ
ムロブ10を製造することができる。
末混合物中の黒鉛含有率を、0.2質量%以上、0.5
質量%未満とすることで、外側材11を形成する第1の
鉄基粉末混合物の圧縮性を高めることができ、高密度の
外側材11を備えるカムロブ10を製造することができ
る。
ことによって、耐摩耗性と機械的強度とをさらに向上さ
せたカムロブ10を製造することができる。
ン、銅、クロム、マンガンから選ばれる一種以上の金属
と、鉄との鉄合金の粉末とすることによって、耐摩耗性
と機械的強度とをより一層向上させたカムロブ10を製
造することができる。
用いて圧縮成形を行うことによって、少ない回数で鉄基
粉末混合物を高く圧縮することが可能であり、圧縮工程
の回数を少なくすることができ、高耐摩耗化と高強度化
との両立を図ったカムロブ10を効率的に製造すること
ができる。
の表面に圧縮残留応力を存在させたので、耐摩耗性に優
れる外側材11を備えるカムロブ10を製造することが
できる。
製造方法は上述したカムロブ10およびその製造方法に
限定されるものではなく、高耐摩耗化と高強度化との両
立が要請される部品に広く適用できるものである。例え
ば、スプロケット、プーリ、オイルポンプまたはシンク
ロハブなどの焼結部品を作製することができる。
なる2層構造のカムロブ10を示したが、本発明は、三
層以上の複数層を有する焼結部品にも適用が可能であ
る。
図1に示すカムロブ10を作製した。
は、純鉄粉と、銅粉と、黒鉛粉とを含み、その混合組成
を、Fe−2質量%Cu−0.3質量%Cとした。さら
に、第1の鉄基粉末混合物全量に対して、0.5質量%
の温間成形用の潤滑剤を含有させた。一方、内側材12
に用いる第2の鉄基粉末混合物は、純鉄粉と、銅粉と、
黒鉛粉とを含み、その混合組成を、Fe−2質量%Cu
−0.8質量%Cとした。さらに、第2の鉄基粉末混合
物全量に対して、0.5質量%の温間成形用の潤滑剤を
含有させた。
ャビティを有する成形用金型を用いた。第1と第2の鉄
基粉末混合物および金型を140℃に加熱し、700M
Paの圧力で圧縮成形し、外側材11と内側材12とを
備える成形体とした。
雰囲気中において1150℃で30分間焼結し、鉄基焼
結体とした。
ムロブ10の表面の炭素濃度を0.8質量%とした。
応力は外側材11の表面から境界面13へ向かう法線に
沿って2mmの位置に発生した。このため、外側材11
の厚さを3mmとし、外側材11の層内に最大ヘルツ応
力発生位置14が存在するようにして、境界面13の位
置と最大ヘルツ応力の発生位置14とを異ならせ、境界
面13における外側材11と内側材12との剥離を防止
した。
例3にて作製されるスプロケット30、40を示す概略
断面図である。
スプロケット30を作製した。
は、鉄とモリブデンとの合金であって組成がFe−1.
5質量%Moの合金粉末と、黒鉛粉とを含み、その混合
組成を、Fe−1.5質量%Mo−0.4質量%Cとし
た。さらに、第1の鉄基粉末混合物全量に対して、0.
4質量%の温間成形用の潤滑剤を含有させた。一方、内
側材32に用いる第2の鉄基粉末混合物は、純鉄粉と、
銅粉と、黒鉛粉とを含み、その混合組成を、Fe−1質
量%Cu−0.7質量%Cとした。さらに、第2の鉄基
粉末混合物全量に対して、0.5質量%の温間成形用の
潤滑剤を含有させた。
たキャビティを有する成形用金型を用いた。金型にも固
体潤滑剤を塗布した。第1と第2の鉄基粉末混合物およ
び金型を130℃に加熱し、600MPaの圧力で圧縮
成形し、外側材31と内側材32とを備える成形体とし
た。
0℃で20分間焼結し、鉄基焼結体とした。
プロケット30の表面の炭素濃度を0.7質量%とし
た。
ルツ応力は外側材31の表面から境界面33へ向かう法
線に沿って3mmの位置に発生した。このため、外側材
31の厚さを1.5mmとし、内側材32の層内に最大
ヘルツ応力発生位置34が存在するようにして、境界面
33の位置と最大ヘルツ応力の発生位置34とを異なら
せ、境界面33における外側材31と内側材32との剥
離を防止した。
て図3に示すスプロケット40を作製した。
は、鉄とニッケルと銅とモリブデンとの合金であって組
成がFe−4質量%Ni−1.5質量%Cu−0.5質
量%Moの拡散合金鋼粉末と、黒鉛粉とを含み、その混
合組成を、Fe−4質量%Ni−1.5質量%Cu−
0.5質量%Mo−0.2質量%Cとした。さらに、第
1の鉄基粉末混合物全量に対して、0.35質量%の温
間成形用の潤滑剤を含有させた。一方、内側材42に用
いる第2の鉄基粉末混合物は、純鉄粉と、ニッケル粉
と、銅粉と、黒鉛粉とを含み、その混合組成を、Fe−
2質量%Ni−1質量%Cu−0.7質量%Cとした。
さらに、第2の鉄基粉末混合物全量に対して、0.7質
量%の温間成形用の潤滑剤を含有させた。
たキャビティを有する成形用金型を用いた。金型にも固
体潤滑剤を塗布した。第1と第2の鉄基粉末混合物およ
び金型を120℃に加熱し、600MPaの圧力で圧縮
成形し、外側材41と内側材42とを備える成形体とし
た。
0℃で20分間焼結し、鉄基焼結体とした。
プロケット40の表面の炭素濃度を0.7質量%とし
た。
ツ応力は外側材41の表面から境界面43へ向かう法線
に沿って3mmの位置に発生した。このため、外側材4
1の厚さを1.5mmとし、内側材42の層内に最大ヘ
ルツ応力発生位置44が存在するようにして、境界面4
3の位置と最大ヘルツ応力の発生位置44とを異なら
せ、境界面43における外側材41と内側材42との剥
離を防止した。
造による効果を明確にするために、一層からなる焼結部
品を対比のために作製した。
同じ形状のカムロブを作製した。
材11に用いる第1の鉄基粉末混合物と同じものであ
り、純鉄粉と、銅粉と、黒鉛粉とを含み、その混合組成
を、Fe−2質量%Cu−0.3質量%Cとした。さら
に、鉄基粉末混合物全量に対して、0.5質量%の温間
成形用の潤滑剤を含有させた。
た。鉄基粉末混合物および金型を140℃に加熱し、7
00MPaの圧力で圧縮成形し、単一層の成形体とし
た。
雰囲気中において1150℃で30分間焼結し、鉄基焼
結体とした。
ムロブの表面の炭素濃度を0.8質量%とした。
プロケット30と同じ形状のスプロケットを作製した。
材21に用いる第1の鉄基粉末混合物と同じものであ
り、鉄とモリブデンとの合金であって組成がFe−1.
5質量%Moの合金粉末と、黒鉛粉とを含み、その混合
組成を、Fe−1.5質量%Mo−0.4質量%Cとし
た。さらに、鉄基粉末混合物全量に対して、0.4質量
%の温間成形用の潤滑剤を含有させた。
た。金型にも固体潤滑剤を塗布した。鉄基粉末混合物お
よび金型を130℃に加熱し、600MPaの圧力で圧
縮成形し、単一層の成形体とした。
0℃で20分間焼結し、鉄基焼結体とした。
プロケットの表面の炭素濃度を0.7質量%とした。
末混合物中の黒鉛含有率を高めたものについて、比較の
ために対比例3として作製した。
同じ形状のスプロケットを作製した。
との合金であって組成がFe−1.5質量%Moの合金
粉末と、黒鉛粉とを含み、その混合組成を、Fe−1.
5質量%Mo−0.8質量%Cとした。対比例3の原料
中の黒鉛含有率は、実施例2および対比例2の原料に比
べて、0.4質量%高めてある。さらに、鉄基粉末混合
物全量に対して、0.4質量%の温間成形用の潤滑剤を
含有させた。
形用金型を用いた。金型にも固体潤滑剤を塗布した。鉄
基粉末混合物および金型を120℃に加熱し、600M
Paの圧力で圧縮成形し、単一層の成形体とした。
0℃で20分間焼結し、鉄基焼結体とした。対比例3で
は、浸炭処理を実施しない。
表1は、実施例1から3と、対比例1から3とによって
作製される焼結部品の密度と、耐摩耗性を示す硬度と、
焼結部品の内部の引張り強さと、についての実験結果を
示している。硬度はロックウェル試験のAスケールによ
って測定した。内部強度は、JSPM規格標準2−64
引っ張り試験片にて測定した。
値とし、耐摩耗性の良否(OK/NG)を判定した。内
部の引張り強さについては637MPaをしきい値と
し、機械的強度の良否(OK/NG)を判定した。
11の密度は7.45g/cm3に達し、硬さはHRA
で80以上を示した。内側材12の密度は7.15g/
cm 3であり、硬さはHRAで67であった。一方、対
比例1では、密度は実施例1の外側材11と同じく7.
45g/cm3に達し、表面硬さはHRAで80以上を
示したが、表面から徐々に硬さが低下し、表面から3.
5mm以上の深さでは硬さがHRA65未満となった。
て表面の硬度はしきい値よりも高い値を示している(O
K)。しかし、焼結部品の内部では、原料である鉄基粉
末混合物中の黒鉛粉の含有量がもともと少なく、浸炭処
理によっても炭素濃度が上昇しない。このため、焼結部
品の内部では、引張り強さがしきい値未満となり、NG
と判定された。したがって、高耐摩耗化と高強度化との
両立を図ることができなかった。
は、内側材12に比べて高密度化されて十分緻密化して
おり、硬度はしきい値以上であり(OK)、高耐摩耗性
を発揮している。一方、内側材12は、外側材11ほど
は高密度化されないものの、十分な炭素量が確保されて
いるため、引張り強さはしきい値以上であり(OK)、
高い機械的強度を発揮している。したがって、高耐摩耗
化と高強度化との両立が達成できたことを確認した。ま
た、外側材11は対比例1と材質が同一であるが、厚さ
が3mmであるため、対比例1で問題となる、表面から
3.5mm以上の深さにおける硬度の低さは発生しな
い。
g/cm3に達し、硬さはHRAで83以上を示した。
内側材32の密度は7.2g/cm3であり、硬さはH
RAで70であった。一方、対比例2では、密度は実施
例2の外側材31と同じく7.4g/cm3に達し、表
面硬さはHRAで83以上を示したが、表面から徐々に
硬さが低下し、表面から3mm以上の深さでは硬さがH
RA70未満となった。
て表面の硬度はしきい値よりも高い値を示している(O
K)。しかし、焼結部品の内部では、原料である鉄基粉
末混合物中の黒鉛粉の含有量がもともと少なく、浸炭処
理によっても炭素濃度が上昇しない。このため、焼結部
品の内部では、引張り強さがしきい値未満となり、NG
と判定された。したがって、高耐摩耗化と高強度化との
両立を図ることができなかった。
は、内側材32に比べて高密度化されて十分緻密化して
おり、硬度はしきい値以上であり(OK)、高耐摩耗性
を発揮している。一方、内側材32は、外側材31ほど
は高密度化されないものの、十分な炭素量が確保されて
いるため、引張り強さはしきい値以上であり(OK)、
高い機械的強度を発揮している。したがって、高耐摩耗
化と高強度化との両立が達成できたことを確認した。ま
た、外側材31は対比例2と材質が同一であるが、厚さ
が1.5mmであるため、対比例2で問題となる、表面
から3mm以上の深さにおける硬度の低さは発生しな
い。
5g/cm3に達し、硬さはHRAで87以上を示し
た。内側材42の密度は7.2g/cm3であり、硬さ
はHRAで70であった。各値はしきい値を上回ってお
り、良好な結果が得られた。実施例3と実施例2とは、
各層の材料の混合組成が異なっており、実施例3では、
ニッケルの添加によって、外側材41においては硬度す
なわち耐摩耗性がより一層向上し、内側材42において
は内部引張り強さすなわち機械的強度がより一層向上し
た。
硬さはHRAで73以下であった。対比例3では、原料
である鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率を高くし、機械的
強度の向上を目標としたが、密度が7.1kg/cm3
と低いことにより、炭素濃度が高い利点を活かせず、硬
度がしきい値を下回る低い値となった。一方、内部にお
いては炭素濃度が高いことから、しきい値を上回る高い
引張り強さを示してはいる。したがって、高耐摩耗化と
高強度化との両立を図ることができなかった。
良の原因を外側材11、31、41と内側材12、3
2、42との二層構造によって解消した結果、いずれの
しきい値をも上回る結果が得られ、高耐摩耗化と高強度
化との両立を図ることができた。
は密度が高い場合には内部において炭素濃度が低く、内
部の機械的強度が低いといった問題があったのに対し
て、本発明は表面の密度は上がり、かつ浸炭で表面硬さ
も維持し、内側材12、32、42の密度は外側材1
1、31、41の表面と比較して低いものの、要求され
る硬さと機械的強度とを示した。
本発明に係る製造方法により製造された焼結部品の一例
であるカムロブを示す断面図、図1(B)は、同図
(A)の1B−1B線に沿う断面図である。
縮成形を示す概念図である。
ロケットを示す概略断面図である。
Claims (10)
- 【請求項1】 鉄基粉末と黒鉛粉とを含む鉄基粉末混合
物を原料とし、圧縮成形、焼結および浸炭により形成さ
れる焼結部品であって、 表層をなす第1の層と、当該第1の層よりも内方に位置
する第2の層とを少なくとも備え、 前記第2の層を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率
を、前記第1の層を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含
有率に比べて高くし、前記第2の層における炭素量を確
保しつつ前記第1の層を高密度化してなる高耐摩耗高強
度焼結部品。 - 【請求項2】 前記第1の層と前記第2の層との境界面
の位置は、前記焼結部品が使用される際の最大へルツ応
力の発生位置と異なることを特徴とする請求項1に記載
の高耐摩耗高強度焼結部品。 - 【請求項3】 鉄基粉末と黒鉛粉とを含む鉄基粉末混合
物を原料とし、表層をなす第1の層と、当該第1の層よ
りも内方に位置する第2の層とを少なくとも備える焼結
部品を製造する焼結部品の製造方法において、 前記第2の層を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含有率
を、前記第1の層を形成する鉄基粉末混合物中の黒鉛含
有率に比べて高くし、 前記第1の層を形成する鉄基粉末混合物および前記第2
の層を形成する鉄基粉末混合物を圧縮成形して、前記第
1の層と前記第2の層とを備える成形体とし、 前記成形体に焼結処理を施した後に、前記第1の層に浸
炭処理を行うことを特徴とする高耐摩耗高強度焼結部品
の製造方法。 - 【請求項4】 前記第1の層を形成する鉄基粉末混合物
中の黒鉛含有率は、0.2質量%以上、0.5質量%未
満であることを特徴とする請求項3に記載の高耐摩耗高
強度焼結部品の製造方法。 - 【請求項5】 前記第1と第2の層を形成する鉄基粉末
混合物は、銅粉をさらに含むことを特徴とする請求項3
に記載の高耐摩耗高強度焼結部品の製造方法。 - 【請求項6】 前記鉄基粉末は、ニッケル、モリブデ
ン、銅、クロム、マンガンから選ばれる一種以上の金属
と、鉄との鉄合金の粉末であることを特徴とする請求項
3に記載の高耐摩耗高強度焼結部品の製造方法。 - 【請求項7】 前記第1の層と前記第2の層との境界面
の位置を、前記焼結部品が使用される際の最大へルツ応
力の発生位置と異なる位置に形成することを特徴とする
請求項3に記載の高耐摩耗高強度焼結部品の製造方法。 - 【請求項8】 前記圧縮成形は、前記鉄基粉末混合物お
よび金型を120℃〜140℃に加熱して行う温間成形
および/または金型潤滑によるものであることを特徴と
する請求項3に記載の高耐摩耗高強度焼結部品の製造方
法。 - 【請求項9】 前記浸炭処理により、前記第1の層の表
面に圧縮残留応力を存在させ、耐摩耗性を向上させたこ
とを特徴とする請求項3に記載の高耐摩耗高強度焼結部
品の製造方法。 - 【請求項10】 前記焼結部品は、カムロブ、スプロケ
ット、プーリ、オイルポンプ、シンクロハブのいずれか
であることを特徴とする請求項3に記載の高耐摩耗高強
度焼結部品の製造方法。
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