JP2003251499A - 圧粉成形用型内潤滑剤および圧粉成形法 - Google Patents

圧粉成形用型内潤滑剤および圧粉成形法

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JP2003251499A
JP2003251499A JP2002051591A JP2002051591A JP2003251499A JP 2003251499 A JP2003251499 A JP 2003251499A JP 2002051591 A JP2002051591 A JP 2002051591A JP 2002051591 A JP2002051591 A JP 2002051591A JP 2003251499 A JP2003251499 A JP 2003251499A
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resin
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Masaaki Sato
正昭 佐藤
Takafumi Hojo
啓文 北条
Masahiro Murakami
政博 村上
Kazuhisa Fujisawa
和久 藤沢
Kinichi Okumura
欽一 奥村
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HIRONO KAGAKU KOGYO
Kobe Steel Ltd
Hirono Kagaku Kogyo KK
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HIRONO KAGAKU KOGYO
Kobe Steel Ltd
Hirono Kagaku Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 円滑な圧粉成形サイクルを阻害することな
く、圧粉成形過程で金型に均一で優れた性能の型内潤滑
膜を効率よく形成することができ、しかも、抜型時の圧
力を低下させると共に抜き音を可及的に抑えることがで
き、且つ金型内面や圧粉成形体の表面を傷めず、優れた
表面特性と外観を有する焼結製品を効率よく製造するこ
とのできる型内潤滑剤と圧粉成形法を提供すること。 【解決手段】 ハロゲン元素、Si元素およびシアノ基
を含まないオレフィン系モノマーの重合体、ポリアミ
ド、ポリオキシメチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹
脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロー
スよりなる群から選択される少なくとも1種を含み、粒
径が0.05〜80μmの粉末状樹脂からなる圧粉成形
用型内潤滑剤と、これを用いた圧粉成形法を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属や金属酸化物
などの粉末冶金用粉体を金型で圧粉成形する際に、高密
度の圧粉成形体を効率よく成形できる様に改善された圧
粉成形用の型内潤滑剤と、該潤滑剤を用いた圧粉成形法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】粉末冶金では、金属や酸化物、炭化物、
窒化物などからなる粉体を金型内に充填して加圧成形
し、得られる成形体(圧粉体ということがある)を加熱
することにより焼結体(焼結製品ということがある)の
製造が行われる。焼結製品としては、磁性材料、超硬合
金、機械部品、含油金属部品、耐熱材料、接点材料など
が挙げられ、近年、自動車産業や機械産業、電子産業な
どを始めとして様々の分野で幅広く利用されている。
【0003】金型を用いて金属や酸化物などの原料粉体
を圧粉成形するに当たっては、原料粉体と金型内壁面と
の摩擦による成形圧力の増大によって金型が変形した
り、金型内壁面の摩耗や傷の発生などによって金型の耐
久性が劣化するという問題がある。また、圧粉成形体を
金型から抜き出す際に、成形体が型から抜け難くなると
生産性が著しく損なわれ、また抜型時に型カジリなどを
起こすと、成形不良品の発生率が増大する。さらに、圧
粉成形体を抜型する際の抜き圧が高くなると大きな抜き
音が発生し、騒音により作業環境を劣化させる。
【0004】こうした問題を解決するための手段とし
て、金型内面に潤滑剤を塗布または付着させる方法が種
々提案されている。たとえば 金型内に固形潤滑剤を充填して圧縮し、これを抜き出
して金型内面に潤滑剤皮膜を形成した後、原料粉体の圧
粉成形を行う方法(特開昭54−39306号公報)、 水や有機溶剤の如き媒体に分散または溶解させた潤滑
剤を、スプレーや刷毛、布などで金型内面に塗布して潤
滑皮膜を形成する方法(特開昭52−108323号、
同54−71706号、特開平9−104902号、特
開2001−219236号公報など)、 粉末潤滑剤を凝着力や静電気によって金型内面に付着
させる方法(特開昭63−50401号、特開平8−1
00203号公報など)が知られている。
【0005】ところが上記の方法では、潤滑剤を大量
に使用しなければならず、しかも成形サイクルが長くな
るという致命的な欠点がある。また上記の方法は、金
型が低温の場合には水や有機溶剤などの揮発に長時間を
要し、また高温の金型に適用すると、媒体が瞬時に揮発
するため均一な潤滑膜が形成され難くなるという問題が
指摘される。また上記の方法では、金型内面への粉体
潤滑剤の付着力が小さいため、金型に原料粉体を充填し
たときに粉末潤滑剤が金型内面から脱落し、潤滑性能が
有効に発揮され難くなる。
【0006】本発明者らは、上記方法の中で、特にの
揮発性溶剤として水や有機溶媒を媒体とする方法におい
て、冷間・温間いずれの成形温度条件下でも型内潤滑剤
として優れた造膜性を確保できる様にすれば、取扱いが
容易で作業性にも優れた方法になり得ると考えた。
【0007】これまで公開されている揮発性溶媒に分散
させた潤滑剤のうち、無機質潤滑剤の例として、窒化ホ
ウ素や黒鉛の微粉末からなる無機質微粉末、或はこれに
少量の接着剤を配合したもの(特開昭52−10832
3号、特開2001−21923号公報など);あるい
は水性コロイダルグラファイトに窒化ホウ素や弗化物を
配合したもの(特開昭54−71706号公報など);
フッ素系有機物質にワックス、シリコーン、金属セッケ
ン、合成油、グラファイト、タルク、雲母などを配合し
たもの(特開平8−113797号公報など);金属セ
ッケンや黒鉛、窒化ボロンなどの固体潤滑剤を溶媒に分
散したもの(特開平9−272901号公報など);黒
鉛と窒化ホウ素、二硫化モリブデン、タルク等の固体潤
滑剤を水に分散させたもの(特開平9−295102号
公報など);酸化カルシウムや窒化ホウ素などを配合し
たもの(特開平8−100203号公報など);金属セ
ッケンやワックス、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、グ
ラファイトなどを塗布するもの(特開2000−199
02号公報など)などが多数知られている。
【0008】また有機物質の例としては、エチレンビス
ステアロアミド、ポリエチレンベースの脂肪酸、ポリテ
トラフルオロエチレン、ワックスなどを溶剤に分散させ
たもの(特開平8−100203号公報など)がある。
【0009】これらの公報に開示されている潤滑剤の構
成成分は、従来からよく知られた一般的なもので、それ
なりに優れた潤滑性能を期待できる。しかし無機質粉体
は、圧粉成形工程で成形体表面に付着し、焼結後もその
まま焼結製品の表面に残存するため、焼結製品の物性や
表面外観を劣化させる。しかも、カルシウムや亜鉛、リ
チウムの如き金属やその酸化物、更にはフッ素化合物や
硫化物の如き毒性の強い化合物を使用すると、焼結工程
で揮散して環境問題を誘発する。
【0010】また、有機化合物のうちポリテトラフルオ
ロエチレンは分子中にフッ素原子を含んでおり、焼結時
にフッ酸などの有毒ガスを発生するという問題がある。
また、潤滑剤としてシリコーンを使用すると、焼結時の
熱で二酸化珪素が生成して焼結炉の炉壁を汚染する。合
成油やワックス、エチレンビスステアロアミド、ポリエ
チレンベースの脂肪酸などの潤滑剤は、50〜150℃
で低粘性の液状となって潤滑性を示すが、高温では熱分
解を起こして潤滑性能を失う。従って、近年における例
えば自動車部品の高強度化といった要請に応えるには、
更なる高温条件下での粉末成形法が求められる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な従
来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、円滑な
成形サイクルを阻害することなく、圧粉成形過程で金型
に均一で優れた性能の型内潤滑層を効率よく形成するこ
とができ、しかも、圧粉成形体を抜型する際の圧力を低
下させると共に抜き音を可及的に抑えることができ、且
つ金型内面や圧粉成形体の表面を傷めず、更には、潤滑
剤が表面に付着した圧粉成形体を焼結する際にも有毒ガ
スの揮散がなく、更なる高い金型温度での成形を可能な
らしめ、優れた表面特性と外観の焼結製品を与え得る様
な圧粉成形用の型内潤滑剤と圧粉成形法を提供すること
にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明の圧粉成形用型内潤滑剤とは、ハロゲン
元素、Si元素およびシアノ基を含まないオレフィン系
モノマーの重合体、ポリアミド、ポリオキシメチレン、
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹
脂、ウレタン樹脂、セルロースよりなる群から選択され
る少なくとも1種を含み、粒径が0.05〜80μm、
より好ましくは0.1μm以上、60μm以下の粉末状
樹脂を主成分として含有するところに要旨を有してい
る。この粉末状樹脂は、圧粉成形温度で揮発する溶剤に
分散させた状態で金型内面への潤滑膜形成剤として使用
することが望ましい。
【0013】また本発明に係る圧粉成形法とは、圧粉成
形用金型を成形温度以上に高めておき、該金型の内面に
粉末状樹脂からなる型内潤滑剤を成形温度で揮発する溶
剤に分散した状態で付着させ、金型温度で上記溶剤を揮
発させることによって金型内面に潤滑膜を形成した後、
該金型内に粉末冶金用粉体を充填して圧粉成形するとこ
ろに要旨が存在する。ここで使用される粉末状樹脂とし
ては、上記重合体や樹脂を主成分とする粒径0.05〜
80μmのものが好適である。
【0014】本発明の上記方法を利用すれば、粉末冶金
用原料粉末として鉄粉などをそのまま用いて圧粉成形し
た場合でも、型内潤滑剤の前記作用効果によって高密度
の圧粉成形体を得ることができるが、使用する粉末冶金
用原料粉末の中にも適量の内部潤滑剤を含有させておけ
ば、原料粉末相互の滑り性が高められ、圧粉成形密度を
一段と高めることができるので、好ましい実施形態とし
て推奨される。そして前述した型内潤滑剤は、この際に
使用する内部潤滑剤としても有効に活用できる。
【0015】
【発明の実施の形態】圧粉成形を行う際に、金型温度を
例えば300℃といった高温に高めると、型内潤滑剤と
して使用される従来の油脂成分は低粘性の液体となり、
金型内面を流動して膜厚が不均一になったり、あるい
は、蒸発や熱分解を生じてガスが発生したり酸化され易
く、潤滑不良や圧粉体表面にムラや巣、変色といった好
ましくない現象を引き起こす原因になる。
【0016】そこで、こうした従来の低分子有機化合物
に指摘される欠点を解決するには、粉末状の高分子樹脂
を利用することが好ましいと考え鋭意探索したところ、
上記本発明に到達した。
【0017】すなわち本発明で型内潤滑膜の形成に用い
る分散液は、特定の粉末状樹脂が揮発性溶媒に分散した
ものであるから、スプレー塗布や刷毛塗り、あるいは布
に含浸して塗布する方法などで金型内面に塗布し、揮発
性溶剤を揮発させるといった簡便且つごく短時間で金型
内面に潤滑膜を形成することができ、それにより、室温
から高温に亘る広い温度条件下で優れた潤滑性を与える
ことができる。
【0018】本発明で使用する金型潤滑剤は、粉末状樹
脂を揮発性溶剤に分散してなるもので、粉末状樹脂とし
ては、ハロゲン元素またはSi元素、シアノ基を含まな
いオレフィン系モノマーの重合体、ポリアミド系樹脂、
ポリオキシメチレン系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ
樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロ
ースよりなる群から選択される少なくとも1種が選択さ
れる。
【0019】上記においてオレフィン系モノマーとは、
炭素−炭素二重結合を有するモノマーであり、公知の方
法でビニル重合することにより高分子量の樹脂となる。
但し、ハロゲン元素やSi元素、シアノ基を含むモノマ
ーから得られる樹脂は、焼結工程で有毒物質が発生した
り熱分解生成物が生成するので、本発明ではこれら以外
のものを使用するのがよい。
【0020】かかるモノマーの具体例としては、スチレ
ンやビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メトキシスチ
レンなどの芳香族ビニル化合物類;メチル(メタ)アク
リレートやエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエ
チル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリ
シジル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メ
タ)アクリレートなどのアクリレート類;ブタジエンや
イソプレン、ピペリレンなどのジエン類;エチレンやプ
ロピレン、ブチレン、α−オレフィンなどのオレフィン
類;酢酸ビニルや酢酸アリル、安息香酸ビニル、フタル
酸ジアリルなどのエステル類;アクリルアミドやメタク
リルアミドなどのアミド類;マレイン酸やフマル酸など
の酸類などが挙げられる。これらのオレフィン系モノマ
ーは、ラジカル重合やイオン重合、配位重合などにより
重合すると樹脂状となる。
【0021】次に、ポリアミド系樹脂の具体例を挙げる
と、6−ナイロンや66−ナイロン、612−ナイロ
ン、11−ナイロンなどが例示される。ポリオキシメチ
レン系樹脂としては、ポリアセタールや変性ポリアセタ
ール等が挙げられる。フェノール樹脂とは、フェノール
とホルムアルデヒドを酸やアルカリ触媒により付加縮重
合することによって得られる熱硬化性樹脂である。エポ
キシ樹脂は、エポキシ基含有化合物とアミンやカルボン
酸含有化合物との反応によって得られる熱硬化性樹脂で
ある。
【0022】尿素樹脂とは、尿素とホルムアルデヒドの
付加縮重合によって得られる熱硬化性樹脂、メラミン樹
脂とは、メランミンとホルムアルデヒドの付加縮重合に
よって得られる熱硬化性樹脂、ウレタン樹脂とは、イソ
シアネート基とアミン化合物やポリオール化合物との付
加重合によって得られる熱硬化性樹脂である。セルロー
スはデンプンから得られるもので、水に不溶性のものが
好ましく利用される。
【0023】上記樹脂は、高温条件下での圧粉成形にも
適用できるよう高温で分解し難い高分子量物が好まし
く、一般的には分子量が1万以上、好ましくは2万以
上、さらに好ましくは100万以上のものが使用され
る。これら高分子樹脂の中でも特に好ましいのは熱硬化
性樹脂である。熱硬化性樹脂は、溶剤に不溶であるため
分子量は測定できず、熱可塑性樹脂よりも分子量は大き
く、熱によって軟化はするが液状にはなり難い樹脂であ
る。
【0024】本発明では、上記高分子樹脂の粉末を揮発
性溶剤に分散させた状態で型内潤滑膜形成剤として使用
する。ここで揮発性溶剤とは、金型に塗布する前の段階
では液状で粉末状樹脂に対し分散媒として作用し、金型
に塗布された後は蒸発し揮散するものである。具体的に
は水、メタノールやエタノール、グリコールなどのアル
コール類;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン
類;酢酸エチルや炭酸ジエチルなどのエステル類;ジオ
キサンやジプロピルエーテルなどのエーテル類;トルエ
ンやキシレンなどの芳香族系溶剤;N−メチルピロリド
ンやジメチルホルムアミドなどの含窒素溶剤など、通常
の溶剤が使用できる。溶剤として特に好ましいのは、引
火性がなく或は引火性の低い水、水とアルコールやアセ
トン、N−メチルピロリドンなどの如き水溶性溶媒との
混合溶剤である。
【0025】該溶剤に粉末状樹脂を分散させる手段とし
ては、次のいずれかの方法を採用すればよい。
【0026】(1)粒径0.05〜80μmの粉末状樹
脂を溶剤に添加し、撹拌機などにより強制的に混合して
分散させる方法(強制分散法)。この分散液は、放置す
ると粉末状樹脂が沈殿することがあるので、これを防ぐ
には、粉末状樹脂の粒径を10μm程度以下に微細化し
て使用するか、或はポリビニルアルコール、メチルセル
ロース、CMC、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコ
ールなどの水溶性ポリマーや界面活性剤、分散剤などを
配合し、分散安定性を高めることが好ましい。
【0027】(2)樹脂を可溶性溶剤に溶解しておき、
該溶液を乳化剤や分散剤の存在下で水やアルコールの如
き分散用溶剤と混合し、ホモジナイサーやディスパーな
どで強制撹拌することにより微分散させる方法(相転換
法)。ここで使用される乳化剤としては、ノニオン系界
面活性剤や両性界面活性剤が、また分散剤としては、ポ
リビニルアルコールやCMCなどが例示される。
【0028】(3)熱可塑性樹脂を使用する場合、熱溶
融した樹脂と水とを押出機やニーダーなどにより剪断力
をかけながら混練し乳化させて分散液とする方法(強制
乳化法)。このとき、樹脂自身で乳化力が不足する場合
は、必要に応じて上述した様な乳化剤や分散剤を併用す
ればよい。
【0029】(4)液状モノマーを乳化剤や分散剤の存
在下に水中油滴型の分散状態としておき、これに触媒を
加えて重合せしめ、生成した樹脂粒子の分散した水性分
散液を得る方法(例えば、乳化重合やシード乳化重合、
懸濁重合、乳懸濁重合、マイクロ懸濁重合等の重合
法)。
【0030】さらに上記(1)〜(4)で得た分散液を
適宜組み合わせて使用することができる。
【0031】本発明で使用する粉末状樹脂は、溶剤中に
微粒子状で分散している。従って、この分散液を成形温
度に高めた金型内面に塗布すると溶剤は直ちに揮発し
て、金型内面に樹脂粉または樹脂粉と溶融膜が共存する
潤滑膜が形成され、固体潤滑機能を発揮する。
【0032】該粉末状樹脂の固体潤滑作用を有効に発揮
させるには、粒子径が0.05μm程度以上、80μm
程度以下、より好ましくは0.1μm以上、60μm以
下の範囲のものを使用すべきであり、0.05μmを下
回る微粒子状の樹脂粉は、工業的に安定して製造するこ
とが困難であるばかりでなく、余りに微細な樹脂粉で
は、金型内面でのコロ機能による潤滑性が有効に発揮さ
れ難くなる。他方、樹脂粉の粒径が大きすぎると、固体
潤滑機能が低下するばかりでなく、金型内面から樹脂粒
子が脱落し易くなって満足な潤滑作用が発揮され難くな
る。
【0033】なお粉末状樹脂の溶剤分散液を調製する際
に、粉末状樹脂と共に溶剤に可溶性の樹脂を併用する
と、潤滑性能を更に高めることができるので好ましい。
即ち溶剤可溶性の樹脂は、金型内面に粉末状樹脂からな
る潤滑膜を形成する際に、金型内面への潤滑膜の密着性
を高めると共にその均一性を高める作用も発揮するから
である。かかる溶剤可溶性樹脂としては、膜形成剤とし
て機能するいわゆる造膜剤やバインダーが利用される。
こうした可溶性樹脂の併用による効果を有効に発揮させ
るには、粉末状樹脂と溶剤可溶性樹脂の使用比率を質量
比で100/0〜50/50、好ましくは98/2〜6
5/35の範囲にすることが望ましい。溶剤可溶性樹脂
の配合比率が多過ぎると、金型内面に潤滑膜を形成する
際の溶剤の蒸発・乾燥に長時間を要し、「金型内面潤滑
→圧粉成形用粉末の充填→圧粉成形→成形品の抜型」を
1サイクルとする成形サイクルが長くなるので好ましく
ない。
【0034】上記で使用する溶剤可溶性樹脂は、潤滑膜
を構成する粉末状樹脂の分散に用いる溶剤の種類に応じ
て選択すればよく、例えば、ポリビニルアルコール、ボ
リビニルピロリドン、無水マレイン酸とスチレンまたは
イソブチレンの共重合体、ポリエチレンイミン、ポリア
クリルアミド、ポリアクリル酸やその変性物、水溶性ア
クリル系樹脂、水溶性ウレタン系樹脂、メチルセルロー
ス、変性デンプン、ポリエチレングリコールなどの水溶
性樹脂;ポリ酢酸ビニル、ポリエチルビニルエーテル、
ポリビニルピリジンなどのアルコール可溶性樹脂などが
例示される。
【0035】また、分散液中で粉末状樹脂が沈降するこ
となく安定な分散状態とするため、例えば高級アルコー
ルやノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界
面活性剤などを適量添加することも有効である。
【0036】更に、型内潤滑膜としての潤滑能を一層高
めるため、例えば、トリフェニルホスフィンやトリクレ
ジルホスフェートなどの燐化合物;ステアリン酸やオレ
イン酸などの高級脂肪酸;流動パラフィンなどの極圧潤
滑剤を適量含有させることも有効である。
【0037】圧粉成形が高温で行なわれる場合は、成形
温度での潤滑膜(即ち、粉末状樹脂)の酸化または燃焼
による潤滑能の低下を防ぐため、酸化防止剤を添加する
ことも有効である。酸化防止剤としては、2,6−ジ−
t−ブチル−4−メチルフェノールの如き昇華性のフェ
ノール系酸化防止剤や、テトラキス[メチレン−3−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート]メタンなどのフェノール系酸化防止剤
などが例示される。
【0038】更に本発明で使用する潤滑剤中には、合成
パラフィンやパラフィンワックス、ポリエチレンワック
ス、ポリプロピレンワックスなどのワックス類;パルミ
チン酸アミド、メチレンビスステアロアマイド、エチレ
ンビスステアロアマイド等のアミド類;ステアリン酸や
モンタン酸などの高級脂肪族有機酸の如く、高温で溶融
し低粘性の流体となって潤滑能を発揮する公知の潤滑剤
を、本発明の目的を阻害しない範囲で補助的に併用する
ことも可能である。
【0039】本発明において、金型内面に粉末状樹脂含
有分散液を塗布する際の濃度は、塗布作業性や金型内面
に形成される潤滑膜の厚さ等を考慮して適宜に決めれば
よいが、一般的な濃度は0.2質量%以上、10質量%
以下、より好ましくは2質量%以上、9質量%以下であ
る。分散液の濃度が0.2質量%を下回る低濃度では、
金型内面に形成される潤滑膜が不均一になり易く、金型
内面の一部で潤滑不足を生じることがある。他方、10
質量%を超えて過度に高濃度になると、分散液の粘度が
高くなり過ぎて塗装作業性が低下したり、潤滑膜が厚く
なり過ぎて圧粉成形体に表面荒れや巣を生じさせる原因
になることがある。
【0040】金型内面への上記分散液の塗布方法は、霧
吹きや塗装ガンを用いた気体同伴または非同伴のスプレ
ー方式、布や紙に含浸して塗布する方法など、金型の作
動状況に応じて適宜選択して採用すればよい。しかしス
プレー方式は、塗布の自動化が容易で且つ金型内面の形
状や大きさにかかわらず金型内面の隅々まで均一に塗布
し易いので、最も好ましい方法として推奨される。この
場合、吹付けるノズルの数や位置、吹き付け時間など
は、金型内面の全域に均一且つ適切な付着量が得られる
様に適宜決めればよい。
【0041】上記粉末状樹脂を含む分散液を、温度を圧
粉成形温度以上に高めた金型の内面に塗布すると、該金
型温度で分散液中の揮発性溶剤は直ちに蒸発し、粉末状
樹脂を含む潤滑成分のみが金型内面に潤滑膜を形成す
る。
【0042】即ち本発明では、該揮発性溶剤の揮発(乾
燥)に圧粉成形のために採用される金型の熱を採用する
もので、従って粉末状樹脂の分散に使用する揮発溶剤と
しては、圧粉成形温度に応じて当該成形温度で揮発する
溶剤が選択して使用される。よって該溶剤の種類は、圧
粉成形時の金型温度に応じて、該温度で揮発する沸点の
ものを選択すべきであり、例えば、圧粉成形を常温乃至
100℃程度の比較的低温で行う場合は、該圧粉成形温
度で揮発する例えば低級のアルコール系、エーテル系、
ケトン系等の低沸点溶剤を使用し、100℃以上の温度
で圧粉成形を行う場合は、該成形温度で揮発する例えば
水が揮発性溶剤として使用できる。
【0043】圧粉成形を行う際には、金型を所定の成形
温度にまで高めてから圧粉成形用の原料粉末を金型内へ
充填し、あるいは原料粉末を金型内へ充填し所定の成形
温度にまで昇温してから加圧成形が行われるが、本発明
では、圧粉成形に先立って金型内面に潤滑膜を形成して
おく必要があり、しかも粉末状樹脂を含む分散液中の揮
発性溶剤は当該金型温度で揮発させなければならない。
従って、金型を所定の成形温度にまで高めてからその内
面に粉末状樹脂を含む分散液を塗布し、該分散液に含ま
れる揮発性溶剤を金型の保有熱で揮発させることにより
金型内面に潤滑膜を形成し、次いで粉末冶金用の原料粉
末を充填してから圧粉成形を行う手順が採用される。こ
の際、分散液塗布後の揮発性溶剤の揮発を促進して乾燥
を早めるため、塗布後温風や熱風を吹付けることも可能
である。また、分散液を予め加熱してから金型に塗布す
ることも可能である。
【0044】なお金型温度を100℃以上に加熱した場
合は、分散用の溶媒として水を使用したときでも、分散
液中の水は金型内面への塗布から1秒以内に揮発して速
やかに潤滑膜を形成するので、圧粉成形のためのサイク
ルタイムをほとんど延長することなく、短いサイクルで
圧粉成形を効率よく実施できる。但し必要によっては、
水と共に適量の低沸点溶剤を併用し水系混合溶媒として
使用することで溶剤の揮発を促進し、成形サイクルタイ
ムを更に短縮することも有効である。
【0045】なお金型内面への潤滑膜の好ましい付着量
は、不揮発分基準で1〜100g/m2、より好ましく
は5〜80g/m2の範囲である。付着量が1g/m2
満では、充分な型内潤滑作用が得られ難くなり、逆に1
00g/m2を超えて過度に付着量が多くなると、圧粉
成形体が表面荒れを起こしたり表層部に巣ができて焼結
製品欠陥の原因になることがある。
【0046】金型内面への潤滑膜形成後は、金型内への
粉末冶金用原料粉末の充填と圧粉成形を数秒以内で可及
的速やかに行うことが好ましい。潤滑膜の形成から圧粉
成形までに時間が経過し過ぎると、潤滑性低下を引き起
こす恐れがあるからである。また、例えば500℃とい
う高温条件下で潤滑膜が酸化劣化したり、あるいは、潤
滑膜が高温条件下で蒸発したり熱分解を起こし、潤滑能
が損なわれる恐れがあるからである。
【0047】圧粉成形のための好ましい金型温度は、室
温から500℃までの範囲であり、成形温度が常温未満
の低温では、揮発性溶剤の種類にもよるが分散液塗布後
の乾燥に時間がかかり、成形サイクルが長くなって生産
性が低下し、一方成形温度が500℃を超えると、型内
潤滑膜の酸化劣化や蒸発が軽視できなくなる。分散媒と
して水や水系混合溶媒を使用するときのより好ましい圧
粉成形温度は130〜400℃の範囲である。
【0048】金型の材質には特に制限がなく、いずれの
素材でも使用可能である。成形圧力も特に制限されな
い。
【0049】圧粉成形に使用される粉末冶金用原料粉末
の種類にも特に制限がなく、鉄・鋼やステンレス鋼の如
き各種鉄基合金を始めとして、銅、アルミ、チタンの如
き非鉄金属や合金などの金属類、更には金属酸化物、金
属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物など様々の原料を
使用できる。
【0050】本発明の方法を実施するに当たっては、前
記潤滑剤を型内潤滑として使用し、上記原料粉末を用い
て圧粉成形すればよい。この際、上記原料粉末に通常の
内部潤滑剤を配合して使用し、型内潤滑に加えて内部潤
滑効果を相加的乃至相乗的に発揮させて圧粉密度を一段
と高めることも勿論可能である。この際、本発明の前記
型内潤滑剤を、内部潤滑剤として粉末冶金用原料粉末中
に例えば0.01〜0.3質量%程度配合して使用する
ことも有効である。
【0051】この際、金型内面への潤滑膜形成時におけ
る前記揮発性溶剤の蒸発潜熱による金型温度の降温を補
うため、原料粉末を適度に加熱してから金型内部へ充填
することも、好ましい実施形態として推奨される。
【0052】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、下記実施例はもとより本発明を制限するも
のではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施
することは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。なお
下記において、「部」および「%」とあるのは、特に断
らない限り質量基準であり、各物性値は下記方法で測定
した値を意味する。
【0053】[粉末状樹脂の融点およびTg(℃)]D
SC(示差走査熱量計)を使用し、昇温速度10℃/分
で測定した。なお架橋度の高い樹脂は、DSCチャート
のべースラインの変曲点が200℃まで明確に認められ
なかったので、>200℃と記した。
【0054】[粉末状樹脂の平均粒径(μm)]レーザ
ー回折散乱式粒度分布測定器(COULTER MUL
TISIZER)を使用し、積算質量が50%になった
ときの粒径を平均粒径(μm)とした。
【0055】[圧粉成形後の抜出力(MPa)]原料粉
体を圧縮成形したのち金型から圧粉成形体を抜き出す際
の力を、金型と成形体の接触面積で除した値として求め
た。
【0056】[抜出音]各圧粉成形温度での成形後に、
圧粉成形体を抜き出すときに発生する音の有無を聞き分
けて評価した。いずれかの成形温度で音が認められた場
合を抜出音「有」とし、無い場合は「−」で示した。
【0057】[圧粉成形体外観]得られた圧粉成形体の
外観を目視観察し、傷が無く光沢面に近い状態を○と
し、僅かに疵ありを△、傷が多いものを×とした。
【0058】[圧粉成形体密度(g/cm3)]得られ
た圧粉成形体の質量を測定し、体積で除した値を示し
た。
【0059】[圧粉成形体強度(MPa)]JPMA
M09−1992に準じて測定した。
【0060】[焼結体強度(MPa)]JPMA M0
9−1992に準拠して得た圧粉成形体を焼結した後、
JPMA M09−1992に準じて強度を測定した
(焼結条件;1140℃×20分、窒素ガス雰囲気)。
【0061】参考例A〜D(懸濁重合による粉末状樹脂
分散液の製造) 滴下ロート、撹件機、温度計、窒素ガス導入管および還
流冷却器を備えたフラスコに、分散剤としてポリビニル
アルコール(加水分解率;80モル%、重合度;150
0)0.2部を溶解させた脱イオン交換水200部を仕
込む。次いで窒素置換した後、表1に示す組成のモノマ
ー混合物100部をフラスコに仕込み、窒素雰囲気下で
撹絆しながら60℃に昇温し、次いでベンゾイルパーオ
キサイドを0.15部添加して、同温度で10時間懸濁
重合を行った。この重合により、固形分濃度32%の水
分散体を得た。なお、表中のMMAはメチルメタクリレ
ート、BAはブチルアクリレート、EDMAはエチレン
グリコールジメタクリレート、MAAはメタクリル酸、
Stはスチレンを表している。
【0062】なお、上記水分散体から樹脂を分離し、乾
燥して得た樹脂のTg(℃)および平均粒径(μm)を
表1に示した。
【0063】参考例E(乳化重合による粉末状樹脂分散
液の製造) 滴下ロート、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および還
流冷却器を備えたフラスコに、乳化剤としてドデシルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム0.3部を溶かした脱イオ
ン交換水200部を仕込み、窒素置換した。その後、表
1に示した組成のモノマー混合物100部を仕込み、窒
素雰囲気下で撹拌してモノマーを乳化させると共に、6
0℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム0.3部を
仕込み、同温度で10時間乳化重合を行った。この重合
により、固形分濃度が32%の水分散体を得た。該水分
散体から前記と同様にして樹脂を分離し、乾燥して得た
樹脂のTg(℃)および平均粒径(μm)を表1に示し
た。
【0064】参考例F(シード重合による粉末状樹脂分
散液の製造) 滴下ロート、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および還
流冷却器を備えたフラスコに、乳化剤としてドデシルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム0.3部を溶かした脱イオ
ン交換水200部を仕込み、窒素置換した。その後、M
MA10部とBA3部をフラスコに仕込み、窒素雰囲気
下でよく撹拌しながら60℃に昇温した後、過硫酸アン
モニウムを0.1部添加して1時間重合することによ
り、シードポリマーラテックスを合成した。その後、更
にMMA75部とBA2部、EDMA5部、MAA5部
のモノマー混合物87部を仕込み、窒素雰囲気下でよく
撹拌しながら70℃に昇温し、次いで過硫酸アンモニウ
ム0.1部を加えて同温度で10時間重合反応を行っ
た。この重合により、固形分濃度が32%の水分散体を
得た。該水分散体から前記と同様にして樹脂を分離し、
乾燥して得た樹脂のTg(℃)と平均粒径(μm)を表
1に示した。
【0065】参考例G〜P(強制分散による粉末状樹脂
分散液の製造) 表2の符号G〜Pに記載した粉末状樹脂5部と0.4%
ポリビニルアルコール(ケン化度;88モル%、重合
度;1700)水溶液95部を混合し、ホモジナイザー
で分散することによって5%濃度の樹脂分散液を得、参
考例G〜Pとした。
【0066】参考比較例Q〜U(強制分散法による各種
樹脂分散液の製造) 表2の参考比較例Q〜Uに記載した樹脂または無機粉末
5部と0.4%ポリビニルアルコール(ケン化度;88
モル%、重合度;1,700)水溶液95部を混合し、
ホモジナイサーで分散させて5%濃度の水分散体を得、
参考比較例Q〜Uとした。
【0067】参考例V(相転換法による樹脂分散液の製
造) ポリスチレン(Tg:100℃)5部をトルエン6部に
溶解した後、乳製カゼイン0.1部を溶解した水50部
と混合した後、ホモジナイサーで撹拌しながら5%アン
モニア水を39部添加し、分散液を得た。該分散液にお
いて、樹脂分は2〜15μmの油滴として水中に存在し
ており、溶剤を蒸発した後の粒子径は0.4〜8μmで
あった。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】実施例1〜5、比較例1 圧粉成形用の原料粉末として、高圧縮性鉄粉(神戸製鋼
所製:商品名「アトメル4800DF−C」、粒径25
0μm以下)100部に対し、黒鉛粉末0.6部と金属
石鹸系潤滑剤0.1重量部を混合して、粉末冶金用混合
粉末を調製した。
【0071】他方、圧粉成形機に取り付けられた成形用
金型を所定の圧粉成形温度に高めておき、その内面に上
記で得た分散液(型内潤滑剤)を噴霧する。
【0072】金型のキャビティーは横32mm、縦13
mm、高さ6mmの成形体が形成される大きさであり、
所定の温度に維持しておく。表1に示した分散液を、不
揮発分濃度で5%となる様に水またはメタノールで濃度
調整した後、空気同伴型の塗装用スプレーによって金型
内面に噴霧すると、分散液は金型内面に付着したのち、
水またはメタノールは金型温度で直ちに蒸発して金型内
面に潤滑膜が形成される。
【0073】このとき金型内面への潤滑剤の付着量(g
/m2)は、スプレーのノズル先端から10cm離れた
位置に直径40mmの鏡面仕上げ超硬金属板をおき、こ
れに各分散液を空気同伴で吹き付け、該金属板上に付着
する潤滑膜の質量を測定して単位面積当たりの潤滑膜量
を算出した。そして、潤滑膜量は1〜100g/m2
なる様に、同伴する空気圧やスプレー時間を予め設定し
ておき、スプレー機器の先端から金型内面までの距離を
調整した。その後、金型内面への潤滑膜の形成状況を観
察した。
【0074】次いで、上記方法で内面に潤滑膜を形成し
た金型に、先に調製した粉末冶金用原料粉末を投入して
圧粉成形し、横32mm、縦13mm、高さ6mmの圧
粉成形体を製造する。圧粉成形時の圧力は686MPa
とし、金型温度は室温と150℃および350℃の3点
について行った。そして、成形後金型から圧粉成形体を
抜型する際の抜出力と抜出音を観察すると共に、圧粉成
形体抜型後の成形体の表面状況を目視観察すると共に、
該圧粉成形体の密度および強度を求めた。
【0075】更に、得られた各圧粉成形体を、N2ガス
雰囲気下に1140℃×20分焼結し、得られた焼結体
の強度(MPa)を求めた。結果を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】表3より次の様に考察できる。すなわち実
施例1〜5では、粒径が0.05〜80μmの範囲にあ
るメタクリレート系樹脂を潤滑膜成分として用いた例で
あり、いずれの場合も、低温から高温の金型温度で安定
して良好な結果が得られている。これに対し比較例1
は、粒径が90μmの粉末状樹脂を使用しているため、
抜出圧が高くなっている。これらの結果より、粉末状樹
脂の粒径は80μm以下が好ましいことが分かる。
【0078】比較例2〜6 上記実施例5において、潤滑膜形成剤として前記表2の
参考比較例Q〜Uで得た分散液(5%濃度の水分散体と
して使用)に代えた以外は同様にして実験を行った。そ
の結果を表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】表4からも明らかな様に、公知の潤滑剤で
ある黒鉛や窒化ホウ素、二硫化モリブデンは、全ての金
型温度で良好な潤滑性が得られているが、比較例5で示
したエチレンビスステアロアミドは350℃で抜き圧が
上昇しており、高温での使用に耐えない。また、比較例
6で示したポリテトラフルオロエチレンは優れた潤滑能
を有しているが、分子中にフッ素原子を含むため、焼結
工程で有毒ガスを発生する危険性がある。また、黒鉛
(比重:2.0〜2.3)や二硫化モリブデン(比重:
4.8)、窒化ホウ素(比重:2.3)は、水性分散液
として固形成分が沈降分離し易く取扱い性に欠けるのに
対し、実施例の粉末状樹脂は比重が0.9〜1.6であ
り、水性媒体中での分散安定性も良好であった。
【0081】実施例6〜15 前記実施例5において、分散液を前記表2に示した参考
例G〜Pの分散液(5%濃度の水分散体として使用)に
代えた以外は同様にして実験を行ない、表5,6に示す
結果を得た。
【0082】実施例16 前記実施例5において、潤滑膜形成剤を参考例Vの分散
液に代えた以外は同様にして実験を行ない、表6に示す
結果を得た。
【0083】実施例17 前記実施例5において、潤滑剤として樹脂分散液とエチ
レンビスステロアミドの水分散液を90:10の比(固
形分比)混合したものを使用した以外は同様にして実験
を行ない、表6に示す結果を得た。
【0084】実施例18 前記実施例5において、潤滑剤として、樹脂分散液90
部に更に5%濃度のポリビニルアルコール水溶液を10
部加えた分散液を用いた以外は同様にして実験を行な
い、表6に示す結果を得た。
【0085】実施例19,20 上記実施例5において、型内潤滑剤として参考例Aまた
はFで得たものを使用し、また、粉末冶金用原料金属粉
末として高圧縮性鉄粉(神戸製鋼所製、商品名「アトメ
ル4800DF−C」、粒径250μm以下)100部
に対し、内部潤滑剤として、同じく参考例AまたはFで
得た水分散体を加熱乾燥して得た樹脂粉末0.1部と黒
鉛粉末0.6部を加えて均一に混合した粉末冶金用混合
粉末を使用し、それ以外は同様にして実験を行ない、表
7に示す結果を得た。
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】これらの結果からも明らかな様に、潤滑膜
形成剤として各種粉末状樹脂の水分散液を用いたもの
(実施例6〜15)は、いずれも優れた潤滑性を示して
おり、ポリスチレンの乳化液(実施例16)も有効に使
用できることが分かる。また実施例17からは、エチレ
ンビスステアロアミドのみを用いた前記表3の比較例5
に比べて優れた潤滑性を有していることが分かる。更に
実施例18からは、造膜成分としてボリビニルアルコー
ルを併用すると金型内面に良好な潤滑膜を形成し、優れ
た潤滑性を発揮することが分かる。
【0090】実施例19,20は、型内潤滑膜を形成す
ると共に、該型内潤滑剤と同じものを乾燥して得た粉末
樹脂を内部潤滑剤として使用した例であるが、何れの場
合も外面性状が良好で密度の高い圧粉成形体が得られて
いる。
【0091】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、潤
滑膜を構成する粉末状樹脂として、ハロゲン元素、Si
元素およびシアノ基を含まないオレフィン系モノマーの
重合体、ポリアミド、ポリオキシメチレン、フェノール
樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタ
ン樹脂、セルロースを選択することにより、円滑な成形
サイクルを阻害することなく、圧粉成形過程で金型に均
一で優れた性能の型内潤滑層を効率よく形成することが
でき、しかも、圧粉成形体を抜型する際の圧力を低下さ
せると共に抜き音を可及的に抑えることができ、且つ金
型内面や圧粉成形体の表面を傷めず、優れた表面特性と
外観を有する焼結製品を効率よく製造し得ることになっ
た。また、潤滑膜が表面に付着した圧粉成形体を焼結す
る際にも、有毒ガスが揮散したり、焼結炉の内壁面に潤
滑剤の熱分解生成物が付着堆積するといった問題も未然
に回避できる。
【0092】そして本発明の圧粉成形法によれば、圧粉
成形用金型を成形温度以上に高めておき、該金型の内面
に、上記粉末状樹脂からなる潤滑剤を成形温度で揮発す
る溶剤に分散した状態で付着させ、金型温度で上記溶剤
を揮発させることによって金型内面に潤滑膜を形成した
後、該金型内に粉末冶金用粉体を充填して圧粉成形する
ことにより、短い成形サイクルで効率よく圧粉成形を遂
行し得ることになった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10M 107/44 C10M 107/44 // C10N 20:06 C10N 20:06 Z 40:36 40:36 50:02 50:02 (72)発明者 北条 啓文 兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目3番1号 株式会社神戸製鋼所高砂製作所内 (72)発明者 村上 政博 兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目3番1号 株式会社神戸製鋼所高砂製作所内 (72)発明者 藤沢 和久 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 奥村 欽一 兵庫県三木市別所町小林244−1 広野化 学工業株式会社内 Fターム(参考) 4H104 CA01A CB12A CB19A CE11A CE13A CE14A EA08A PA48 QA08 4K018 CA07 CA08 CA09

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハロゲン元素、Si元素およびシアノ基
    を含まないオレフィン系モノマーの重合体、ポリアミ
    ド、ポリオキシメチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹
    脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロー
    スよりなる群から選択される少なくとも1種を含み、粒
    径が0.05〜80μmの粉末状樹脂を主成分として含
    有することを特徴とする圧粉成形用型内潤滑剤。
  2. 【請求項2】 前記粉末状樹脂が、架橋ポリマーからな
    るものである請求項1に記載の型内潤滑剤。
  3. 【請求項3】 前記粉末状樹脂が、圧粉成形温度で揮発
    する溶剤に分散されたものである請求項1または2に記
    載の型内潤滑剤。
  4. 【請求項4】 圧粉成形用金型を成形温度以上に高めて
    おき、該金型の内面に、粉末状樹脂を主成分とする型内
    潤滑剤を成形温度で揮発する溶剤に分散した状態で付着
    させ、金型温度で上記溶剤を揮発させることによって金
    型内面に潤滑膜を形成した後、該金型内に粉末冶金用粉
    体を充填して圧粉成形することを特徴とする圧粉成形
    法。
  5. 【請求項5】 型内潤滑剤として、請求項1〜3のいず
    れかに記載の潤滑剤を使用する請求項4に記載の圧粉成
    形法。
  6. 【請求項6】 前記粉末冶金用粉体として、内部潤滑剤
    を含む粉体を使用する請求項4または5に記載の粉末冶
    金法。
  7. 【請求項7】 前記内部潤滑剤が、請求項1または2に
    記載の粉末状樹脂である請求項5に記載の粉末冶金法。
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