JP4698659B2 - 冶金粉末組成物のための潤滑剤 - Google Patents
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Description
本発明は、冶金粉末組成物のための潤滑剤、及びその潤滑剤を含む金属粉末組成物に関する。本発明は、更に前記潤滑剤を用いて焼結物品を製造する方法、及び圧縮(compaction)される金属粉末組成物中に前記潤滑剤を使用することに関する。特に、本発明は、プレスした時、大きな抗折力を有する物品をもたらす潤滑剤に関する。更に、本発明による潤滑剤は、熱間及び冷間の両方の圧縮に用いることができる利点を有する。
金属粉末組成物を圧縮し、焼結することにより製造される金属製品は、工業的に益々広く用いられるようになってきている。種々の形及び厚さの多数の異なった製品が製造されており、これらの製品に対して要求されている品質条件は、製造された金属製品が大きな強度と同様、大きな密度を有することである。
金属圧縮では、異なった標準温度範囲が用いられている。例えば、冷間プレスは、主に金属粉末(その粉末は室温になっている)を圧縮するのに用いられている。冷間プレス及び熱間プレスの両方共、潤滑剤を使用する必要がある。
室温より高い温度での圧縮は、一層低い温度で行う圧縮より大きな密度及び大きな強度をもつ生成物を生ずる明らかな利点を有する。
冷間圧縮で用いられている潤滑剤の殆どは、高温圧縮では用いることができない。なぜなら、それらは限定された温度範囲内でのみ有効であるように見えるからである。効果のない潤滑剤は、圧縮工具の摩耗をかなり増大する。
どの程度工具が摩耗するかは、工具材料の硬度、適用圧力、及び被圧縮物を圧縮し、放出する時のその圧縮物と工具壁との間の摩擦のような種々の因子によって影響される。後者の因子は用いる潤滑剤に大きく関係している。
放出力は、工具から圧縮物を放出するのに必要な力である。大きな放出力は、圧縮工具の摩擦を増大するのみならず、圧縮物を損傷することもあるので、この力は減少させるのが好ましい。
しかし、潤滑剤を使用すると圧縮に問題を生じ、従って、その潤滑剤が、遂行される圧縮の種類に充分適することが重要である。
満足できるように実施するためには、圧縮操作中粉末組成物の気孔構造から潤滑剤が押出され、圧縮物と工具との間の界面中へ入り、それによって圧縮工具の壁を潤滑すべきである。圧縮工具の壁のそのような潤滑により、放出力は減少する。
潤滑剤を圧縮物から押出さなければならない別の理由は、さもないと焼結後の圧縮物中に気孔を生ずることになるからである。大きな気孔は、製品の動的強度性に悪影響を及ぼすことはよく知られている。
本発明による新規な潤滑剤の目的は、大きな抗折力、大きな未焼成密度を有する圧縮生成物の外、大きな焼結密度、及び金属粉末と一緒にした潤滑剤による低い放出力を有する焼結生成物を製造することができるようにすることにある。圧縮物は、圧縮工具から放出された時かなりの応力を受け、その製品は圧縮と焼結との間の取扱い中に亀裂又は他の損傷を受けることなく一体的に保持されなければならないので、大きな抗折力を持つことが重要である。このことは、薄い部品の場合には特に重要である。
本発明による潤滑剤は、500〜10,000重量平均分子量Mwを有するポリオレフィン系重合体を含有する。ポリオレフィンは、異なった結晶度を有する熱可塑性重合体の群である。ポリオレフィンは、単純なポリオレフィン、ポリ(α−オレフィン)、オレフィン及び(又は)α−オレフィンに基づく共重合体に分けることができる。共重合体は、酢酸ビニル、アクリレート、スチレン等のような他の種類のコモノマーを含んでいてもよい。ポリ(α−オレフィン)には、ポリプロピレン及びポリ(1−ブテン)のような重合体が含まれる。しかし、単純なポリオレフィンには、分岐鎖低密度ポリエチレン及び直鎖高密度ポリオレフィンのような重合体が含まれる。比較的低い分子量の直鎖ポリエチレンは、ポリエチレンワックスと呼ばれている。
本発明による重合体は、ポリエチレンワックスであるのが好ましい。本発明による潤滑剤は、冷間及び熱間の両方の圧縮で用いることができるが、熱間圧縮では、潤滑剤の重量平均分子量Mwが、1000〜10,000であるのが好ましい。
好ましくは本発明の潤滑剤は、2.5より小さく、好ましくは1.5より小さい多分散性Mw/Mnを有する。
本発明は、冷間と熱間の両方の圧縮を用いた焼結物品の製法の他に、金属粉末と上述の潤滑剤とを含む金属粉末組成物に更に関する。本発明による冷間圧縮方法は、
(a) 金属粉末と潤滑剤とを混合して金属粉末組成物とし、
(b) 前記金属粉末組成物を圧縮して圧縮体にし、次いで
(c) 前記圧縮体を焼結する、
諸工程を含み、500〜10,000の重量平均分子量を有する本発明の潤滑剤が利用される。
(a) 金属粉末と潤滑剤とを混合して金属粉末組成物とし、
(b) 前記金属粉末組成物を圧縮して圧縮体にし、次いで
(c) 前記圧縮体を焼結する、
諸工程を含み、500〜10,000の重量平均分子量を有する本発明の潤滑剤が利用される。
本発明による熱間圧縮法は、
(a) 金属粉末と潤滑剤とを混合して金属粉末組成物とし、
(b) 前記金属粉末組成物を予め定められた温度へ予熱し、
(c) 前記加熱した金属粉末組成物を、加熱した工具の中で圧縮し、次いで
(d) 前記圧縮した金属粉末組成物を焼結する、
諸工程を含み、1000〜10,000の重量平均分子量Mwを有する本発明の潤滑剤が利用される。
(a) 金属粉末と潤滑剤とを混合して金属粉末組成物とし、
(b) 前記金属粉末組成物を予め定められた温度へ予熱し、
(c) 前記加熱した金属粉末組成物を、加熱した工具の中で圧縮し、次いで
(d) 前記圧縮した金属粉末組成物を焼結する、
諸工程を含み、1000〜10,000の重量平均分子量Mwを有する本発明の潤滑剤が利用される。
本発明は、冷間及び熱間圧縮される冶金粉末組成物に、本発明による潤滑剤を使用する方法に更に関する。
潤滑剤は、本発明による金属粉末組成物の0.1〜2.0重量%、好ましくは金属粉末組成物の全量に基づき、0.2〜0.8重量%を構成することができる。本発明による潤滑剤を少量用いることができることは、本発明の本質的な利点である。なぜなら、それにより、大きな密度を有する圧縮物及び焼結生成物をコスト的に効果的に得ることができるからである。
本明細書及び特許請求の範囲で用いられている用語「金属粉末」とは、通常の不純物含有量が約1.0重量%以下、好ましくは約0.5重量%以下である鉄粉末から本質的に構成された鉄を主成分とする粉末を包含する。そのような極めて圧縮性の冶金級鉄粉末の例は、ニュージャージー州リバートンのヘゲネス社(Hoeganaes Corporation)から入手できるアンコールスチール(ANCORSTEEL)1000シリーズの純粋鉄粉末、例えば、1000、1000B及び1000C、及びスウェーデンのヘゲネスABから入手することができる同様な粉末である。例えば、アンコールスチール1000鉄粉末は、No.325篩(米国篩系)より小さい粒子約22重量%、及びNo.100篩より大きな粒子約10重量%、及びそれら二つの粒径の間に入る残余(No.60篩より大きなものは微量)からなる典型的なスクリーン分布を有する。アンコールスチール1000粉末は、約2.85〜3.00g/cm3、典型的には2.94g/cm3の見かけの密度を有する。本発明で用いることができる他の鉄粉末は、ヘゲネスのアンコール(ANCOR)MH−100粉末のような典型的なスポンジ状鉄粉末である。
鉄を主成分とする粉末は、一種以上の合金元素と混合されているか、予め合金化されているか、又は拡散結合されている、好ましくは実質的な純粋な鉄である鉄を含んでいてもよい。鉄粒子と一緒にすることができる合金元素の例には、次のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:モリブデン;マンガン;マグネシウム;クロム;珪素;銅;ニッケル;金;バナジウム;コロンビウム(ニオブ);黒鉛;燐;アルミニウム;銅と、錫又は燐との二成分系合金;マンガン、クロム、硼素、燐又は珪素の鉄合金;炭素と、鉄、バナジウム、マンガン、クロム、及びモリブデンの中の二種又は三種との低融点三元及び四元共融物;タングステン又は珪素の炭化物;窒化珪素;酸化アルミニウム;及びマンガン又はモリブデンの硫化物;及びそれらの組合せ。典型的には、合金元素は鉄粉末、好ましくは実質的に純粋な鉄粉末と、約7重量%以下の量、一層好ましくは約0.25〜約5重量%、一層好ましくは約0.25〜約4重量%の量で一般に一緒にされているが、或る特別な用途では、合金用元素は、鉄粉末と合金元素との約7〜約15重量%の量で存在していてもよい。
従って、鉄を主成分とする粉末には、合金用粉末の形になっている合金元素を混合した鉄粒子が含まれる。ここで用いられる用語「合金用粉末」とは、前に述べたように、どのような粒状の単体又は化合物でもよく、その単体又は化合物が最終的に鉄粉末と合金化していても、していなくても、鉄粒子と物理的に混合されたそれら単体又は化合物を指す。合金元素の粒子は、一般に約100μ未満の、好ましくは約75μ未満の、一層好ましくは約30μ未満の重量平均粒径を有する。合金用粉末が鉄粉末から分離したり粉塵になったりしないように、鉄粒子と合金用粉末との混合物中に結合剤を含有させるのが好ましい。一般に用いられる結合剤の例には、米国特許第4,483,905号及び第4,676,831号明細書〔両方共エングストレーム(Engstroem)による〕及び米国特許第4,834,800号明細書〔セメル(Semel)による〕(これらは全て言及することによってそっくりそのまま本明細書に組み入れる)に記載されているものが含まれる。
鉄を主成分とする粉末は、更に、一種以上の合金元素と予め合金化した鉄の形になっていてもよい。予め合金化した粉末は、鉄と希望の合金元素との溶融物を作り、次にその溶融物を噴霧し、それによって噴霧された液滴が固化して粉末を形成することにより製造することができる。配合する合金元素(一種又は多種)の量は、最終的金属部品に望まれる性質に依存する。そのような合金用元素を配合した予め合金化した鉄粉末は、ヘゲネス社からそのアンコールスチール系粉末の一部として入手することができる。
鉄を主成分とする粉末の更に別な例は、拡散結合した鉄を主成分とする粉末であり、それは上述の合金元素が外側表面に拡散結合した実質的に純粋な鉄粒子を含む。そのような市販の粉末には、ヘゲネス社から入手することができるディスタロイ(DISTALOY)4600A拡散結合粉末が含まれ、それはニッケル 約1.8%、モリブデン 約0.55%、及び銅 約1.6%を含んでおり、また、ヘゲネス社から入手することができるディスタロイ4800A拡散結合粉末も含まれ、それはニッケル 約4.05%、モリブデン 約0.55%、及び銅 約1.6%を含有する。同様な等級の粉末は、スエーデンのヘゲネスABから入手することもできる。
好ましい鉄を主成分とする粉末は、モリブデン(Mo)と予め合金化された鉄からなる。その粉末は、Mo 約0.5%〜約2.5重量%を含有する実質的に純粋な鉄の溶融物を噴霧することにより製造する。そのような粉末の一例は、ヘゲネスのアンコールスチール85HP鋼粉末であり、それはMoを約0.85重量%、マンガン、クロム、珪素、銅、ニッケル、モリブデン、又はアルミニウムのような他の材料を合計約0.4重量%未満、炭素を約0.02重量%未満含有する。そのような粉末の別の例は、ヘゲネスのアンコールスチール4600V鋼粉末であり、それはモリブデン 約0.5〜0.6重量%、ニッケル 約1.5〜2.0重量%、マンガン 約0.1〜0.25重量%、及び炭素 約0.02重量%未満を含有する。
本発明で用いることができる別の予め合金化した鉄を主成分とする粉末は、コーストン(Causton)による「鉄合金の明確な予め合金化した粉末を含む鋼粉末混合物」と題する米国特許第5,108,93号明細書(これは言及することによってそっくりそのまま本明細書に組み入れる)に記載されている。この鋼粉末組成物は、二種の異なった予め合金化した鉄を主成分とする粉末の混合物であり、一つはモリブデン 0.5〜2.5重量%を含む鉄のプレアロイであり、他方は炭素と、遷移元素成分 少なくとも約25重量%と、鉄とのプレアロイであり、この場合、後者の成分はクロム、マンガン、バナジウム及びニオブからなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む。この混合物は、鋼粉末組成物に対し少なくとも約0.05重量%の遷移元素成分を与える割合になっている。そのような粉末の一例は、ヘゲネスのアンコールスチール41AB鋼粉末として市販されており、それはモリブデン 約0.85重量%、ニッケル 約1重量%、マンガン 約0.9重量%、クロム 約0.75重量%、及び炭素 約0.5重量%を含む。
本発明の実施で有用な他の鉄を主成分とする粉末は、強磁性体粉末である。一例は、少量の燐と予め合金化された鉄の粉末と混合した実質的に純粋な鉄粉末からなる組成物である。
本発明の実施で有用な更に別の鉄を主成分とする粉末は、ラッツ(Rutz)等による米国特許第5,198,137号明細書(これは言及することによってそっくりそのまま本明細書に組み入れる)に記載されているような、熱可塑性材料の実質的に均一な被覆を与えるように、熱可塑性材料で被覆した金属粒子である。各粒子は、芯の鉄粒子の周りを取り巻く実質的に均一な被覆を有するのが好ましい。被覆された鉄粒子の約0.001〜15重量%の被覆を与えるのに充分な熱可塑性材料を用いる。一般に、熱可塑性材料は、被覆した粒子の少なくとも0.2重量%、好ましくは約0.4〜2重量%、一層好ましくは約0.6〜0.9重量%の量で存在する。約10,000〜50,000の範囲の重量平均分子量を有する、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、又はポリフェニレンエーテルのような熱可塑性物が好ましい。他の重合体で被覆された鉄を主成分とする粉末には、ラッツ等の米国特許第5,063,011号明細書(これは言及することによってそっくりそのまま本明細書に組み入れる)に記載されているような、燐酸鉄の内部被覆を有するものが含まれる。
純粋な鉄、予め合金化された鉄、拡散結合された鉄、又は熱可塑性物被覆鉄の粒子は、1μm以下、又は約850〜1000μmまでのように小さい重量平均粒径を有することができるが、一般に約10〜500μmの範囲の重量平均粒径を有する。約350μm以下、好ましくは50〜150μmの最大数平均粒径を有するものが好ましい。
本発明による金属粉末及び潤滑剤とは別に、金属粉末組成物は、結合剤、処理助剤、及び硬質相からなる群から選択された一種以上の添加剤を含んでいてもよい。結合剤は、米国特許第4,834,800号明細書(これは言及することによってそっくりそのまま本明細書に組み入れる)に記載されている方法に従う粉末組成物に添加してもよく、金属粉末組成物中に、鉄及び合金用粉末の重量に基づき、約0.005〜3重量%、好ましくは約0.05〜1.5重量%、一層好ましくは約0.1〜1重量%の量で混合してもよい。
金属粉末組成物中に用いる処理助剤は、タルク、フォルステライト、硫化マンガン、硫黄、二硫化モリブデン、窒化硼素、テルル、セレン、二フッ化バリウム、及び二フッ化カルシウムからなっていてもよく、それらは単独か又は組合せて用いられる。
金属粉末組成物に用いる硬質相は、タングステン、バナジウム、チタン、ニオブ、クロム、モリブデン、タンタル、及びジルコニウムの炭化物、アルミニウム、チタン、バナジウム、モリブデン、及びクロムの窒化物、Al2O3、B4C、及び種々のセラミック材料からなっていてもよい。
慣用的技術を利用して、金属粉末及び潤滑剤粒子を混合して実質的に均一な粉末組成物とする。
本発明による潤滑剤は、固体粒子の形で金属粉末組成物に添加されるのが好ましい。潤滑剤の平均粒径は変動してもよいが、3〜150μmの範囲にあるのが好ましい。
もし粒径が余りにも大きいと、その潤滑剤が圧縮中に金属粉末組成物の気孔構造を出ることが困難になり、そのため潤滑剤が焼結後に大きな孔を与え、強度性の損なわれた圧縮物を与える結果になることがある。
本発明による冷間圧縮では、工程は次の通りである:
(a) 金属粉末と、500〜10,000の重量平均分子量Mwを有するポリオレフィン系重合体を含む本発明による潤滑剤とを混合して金属粉末組成物とし、
(b) 前記金属粉末組成物を圧縮して圧縮体とし、次いで
(c) 前記圧縮体を焼結する。
(a) 金属粉末と、500〜10,000の重量平均分子量Mwを有するポリオレフィン系重合体を含む本発明による潤滑剤とを混合して金属粉末組成物とし、
(b) 前記金属粉末組成物を圧縮して圧縮体とし、次いで
(c) 前記圧縮体を焼結する。
本発明による冷間圧縮では、工程(c)の前に圧縮体を前記潤滑剤の融点ピークより高い温度へ、圧縮体全体に本質的に同じ温度が得られるのに充分な時間加熱するのが好ましい。この処理で、まだ焼結されていない圧縮体に大きな抗折力が与えられ、それによって亀裂又は他の損傷を起こすことなく圧縮と焼結との間での圧縮体の取扱い及び処理がし易くなる。下に記載する試験から明らかになるように、これらの増大した抗折力は、冷間圧縮のための市販潤滑剤の例を用いたのでは得られず、そのことは本発明による潤滑剤を特別なものにしている。
本発明による熱間圧縮では、金属粉末組成物を予熱圧縮工具へ送る前に予熱しておくのが有利である。そのような金属粉末組成物の予熱では、潤滑剤が軟化又は溶融し始めないことが重要である。なぜなら、それは圧縮工具へ充填する時に粉末組成物を取扱いにくくし、そのことが今度は不均一な密度を持ち、部品重量の再現性を悪くした圧縮体を与える結果になるからである。更に、潤滑剤の部分的早過ぎる溶融が起きないことが重要である。即ち、潤滑剤は均一な生成物になるべきである。従って、多分散性Mw/Mnは2.5より小さく、好ましくは1.5より小さいことが重要である。
熱間圧縮法の工程は次の通りである:
(a) 金属粉末と、1000〜10,000の重量平均分子量Mwを有するポリオレフィン系重合体を含有する本発明による潤滑剤とを混合し、
(b) 前記混合物を予め定められた温度、好ましくは前記潤滑剤の融点ピークより低い温度へ予熱し、
(c) 好ましくは前記潤滑剤の融点ピーク以下の温度へ加熱したダイスへ、前記予熱粉末組成物を移して前記組成物を圧縮し、次いで
(d) 前記圧縮金属粉末組成物を焼結する。
(a) 金属粉末と、1000〜10,000の重量平均分子量Mwを有するポリオレフィン系重合体を含有する本発明による潤滑剤とを混合し、
(b) 前記混合物を予め定められた温度、好ましくは前記潤滑剤の融点ピークより低い温度へ予熱し、
(c) 好ましくは前記潤滑剤の融点ピーク以下の温度へ加熱したダイスへ、前記予熱粉末組成物を移して前記組成物を圧縮し、次いで
(d) 前記圧縮金属粉末組成物を焼結する。
この方法の工程(b)では、金属粉末組成物は重合体の融点より5〜50℃低い温度に予熱されるのが好ましい。
本発明が効果的であり、大きな未焼成密度及び大きな抗折力を持つ生成物を生ずることを例示するため、次に幾つかの試験を記載する。
試験1
下の表1は、幾つかの潤滑剤について、黒鉛 0.5重量%、Cu−200 2重量%、及び潤滑剤 0.6重量%と混合したASC100.29(ヘゲネスABにより市販されている)の、融点ピーク、重量平均分子量Mw、多分散性(Mw/Mn)、測定された未焼成密度(GD)、及び冷間圧縮時の放出力(Ej.F)を示している。圧縮力は600MPaであった。
下の表1は、幾つかの潤滑剤について、黒鉛 0.5重量%、Cu−200 2重量%、及び潤滑剤 0.6重量%と混合したASC100.29(ヘゲネスABにより市販されている)の、融点ピーク、重量平均分子量Mw、多分散性(Mw/Mn)、測定された未焼成密度(GD)、及び冷間圧縮時の放出力(Ej.F)を示している。圧縮力は600MPaであった。
PEW3700は、本発明の範囲に入るポリエチレンワックスである。
PEW2000は、本発明の範囲に入るポリエチレンワックスである。
EBS−ワックスは、エチレン−ビス−ステアルアミド−ワックスである。
PEW2000は、本発明の範囲に入るポリエチレンワックスである。
EBS−ワックスは、エチレン−ビス−ステアルアミド−ワックスである。
未焼成密度は、ISO3927 1985に従って測定し、放出力はヘゲネス法404に従って測定した。
潤滑剤の融点ピークは、溶融曲線のピーク値として示されており、米国デラウエア州ニューキャッスル、197201のTAインストルーメンツ(TA Instruments)から入手することができる912S型DSC装置で、走査示差熱分析(DSC)法を利用して測定した。
表1から明らかなように、同様な未焼成密度を得ることができ、本発明による低いMw/Mn(PEW2000)を有する潤滑剤を用いて、EBS−ワックスを用いた時と同じ低い放出力が得られている。
試験2
下の表2は、焼結前に圧縮した物体の加熱に関し、潤滑剤PEW2000とEBS−ワックスとの比較が示されている。この場合、圧縮体を潤滑剤の融点ピークより高い温度へ、圧縮体の全体が本質的に同じ温度になるのに充分な時間加熱した。
下の表2は、焼結前に圧縮した物体の加熱に関し、潤滑剤PEW2000とEBS−ワックスとの比較が示されている。この場合、圧縮体を潤滑剤の融点ピークより高い温度へ、圧縮体の全体が本質的に同じ温度になるのに充分な時間加熱した。
金属粉末組成物は次の成分を含んでいた:
組成物1(本発明)
ヘゲネスABにより市販されているASC 100.29
Cu−200 2.0重量%
黒鉛 0.5重量%
PEW2000 0.6%
組成物2(EBS−ワックス)
ヘゲネスABにより市販されているASC 100.29
Cu−200 2.0重量%
黒鉛 0.5重量%
EBS−ワックス 0.8%
組成物1(本発明)
ヘゲネスABにより市販されているASC 100.29
Cu−200 2.0重量%
黒鉛 0.5重量%
PEW2000 0.6%
組成物2(EBS−ワックス)
ヘゲネスABにより市販されているASC 100.29
Cu−200 2.0重量%
黒鉛 0.5重量%
EBS−ワックス 0.8%
表2から分かるように、組成物1の未焼成圧縮体の熱処理により抗折力(TRS)はかなり増大したが、組成物2の未焼成圧縮体の抗折力は熱処理によっては大して増大しなかった。
増大した抗折力は、焼結前に取扱い、処理することができる未焼成圧縮体を与えた。この可能性は多くの領域で最も望ましいものである。
試験3
下の表3は、幾つかの潤滑剤について、潤滑剤 0.45重量%及びメタクリレート結合剤 0.15%と混合したASC100.29(ヘゲネスABにより市販されている)の、融点ピーク、重量平均分子量Mw、多分散性(Mw/Mn)、圧縮圧力、測定された未焼成密度(GD)、及び冷間圧縮時の放出エネルギー(Ej.En)を示している。
下の表3は、幾つかの潤滑剤について、潤滑剤 0.45重量%及びメタクリレート結合剤 0.15%と混合したASC100.29(ヘゲネスABにより市販されている)の、融点ピーク、重量平均分子量Mw、多分散性(Mw/Mn)、圧縮圧力、測定された未焼成密度(GD)、及び冷間圧縮時の放出エネルギー(Ej.En)を示している。
PEW655、PEW1000、PEW2000、及びPEW3000は、全て本発明による潤滑剤であり、ポリエチレンワックスである。
表3から分かるように、放出エネルギーは、本発明の範囲外の潤滑剤の場合よりも、本発明による潤滑剤の場合の方が低くなっている。
試験4
下の表4は、幾つかの潤滑剤について、融点ピーク、粉末温度、工具温度、未焼成密度(GD)、及び放出力(Ej.F)を示している。
下の表4は、幾つかの潤滑剤について、融点ピーク、粉末温度、工具温度、未焼成密度(GD)、及び放出力(Ej.F)を示している。
金属粉末組成物は次の成分を含んでいた:
ヘゲネスABから市販されているディスタロイ(登録商標名)AE
黒鉛 0.3重量%
表4による潤滑剤 0.6重量%。
圧縮圧力は600MPaであった。
ヘゲネスABから市販されているディスタロイ(登録商標名)AE
黒鉛 0.3重量%
表4による潤滑剤 0.6重量%。
圧縮圧力は600MPaであった。
表4から分かるように、未焼成密度(GD)は、本発明による潤滑剤を用いた場合よりも幾らか高い。放出力は本発明による潤滑剤よりも高いが、依然として許容できる充分な低さになっている。
EBS−ワックス又は潤滑剤X1を含む材料と比較して、本発明の潤滑剤と混合した材料は、匹敵する未焼成密度(GD)及び放出力(Ej.F)を与える。
材料が本発明による潤滑剤と混合されている冷間圧縮体が、焼結前に熱処理されると、それはEBS−ワックスと混合した材料に比較して、増大した未焼成強度を得る。未焼成強度の増大は、焼結前の圧縮体を亀裂又は他の損傷を与えることなく処理及び取扱うことを可能にする。
Claims (10)
- (a) 金属粉末と潤滑剤とを混合して金属粉末組成物とし、
(b) 前記金属粉末組成物を予め定められた温度へ予熱し、
(c) 前記加熱した金属粉末組成物を、加熱した工具の中で圧縮し、次いで
(d) 前記圧縮した金属粉末組成物を焼結する、
諸工程を含む、焼結物品の製法において、前記潤滑剤が1000〜10,000の重量平均分子量Mwを有するポリオレフィン系重合体を含み、該重合体が、2.5未満の多分散性Mw/Mnを有することを特徴とする、上記製法。 - 工程(b)での金属粉末組成物を、ポリオレフィンの融点ピークより低い温度に予熱する、請求項1記載の方法。
- 工程(b)での金属粉末組成物を、潤滑剤の融点ピークより5〜50℃低い温度に予熱する、請求項1記載の方法。
- 工程(c)の前の工具を、ポリオレフィンの融点ピーク以下の温度に加熱する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 工程(c)の前の工具を、潤滑剤の融点ピークより5〜50℃低い温度に加熱する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 熱間圧縮される冶金粉末組成物中に、1000〜10,000の重量平均分子量Mwを有するポリオレフィン系重合体を含み、該重合体が、2.5未満の多分散性Mw/Mnを有する潤滑剤を使用する方法。
- 重合体が、1.5未満の多分散性Mw/Mnを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 金属粉末組成物が、結合剤、処理助剤、合金元素及び硬質相からなる群から選択された一種以上の添加剤を更に含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 金属粉末組成物が、結合剤と;処理助剤、合金元素及び硬質相からなる群から選択された一種以上の添加剤と;を更に含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 金属粉末組成物が、25〜350μmの範囲の重量平均粒径を有する鉄を主成分とする粉末からなる多量の金属粉末と、500〜10,000の重量平均分子量Mwを有するポリオレフィン系重合体からなる少量の固体潤滑剤とからなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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