JP2003249718A - 半導体レーザ装置、半導体レーザモジュールおよび光ファイバ増幅器 - Google Patents

半導体レーザ装置、半導体レーザモジュールおよび光ファイバ増幅器

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JP2003249718A
JP2003249718A JP2002048679A JP2002048679A JP2003249718A JP 2003249718 A JP2003249718 A JP 2003249718A JP 2002048679 A JP2002048679 A JP 2002048679A JP 2002048679 A JP2002048679 A JP 2002048679A JP 2003249718 A JP2003249718 A JP 2003249718A
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layer
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light
diffraction grating
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Yasushi Oki
泰 大木
Naoki Tsukiji
直樹 築地
Jiyunji Yoshida
順自 吉田
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Furukawa Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高出力の半導体レーザ装置を実現する。 【解決手段】 基板1上に順次下部クラッド層2、下部
SCH層3、量子井戸層4、上部SCH層5、第1の上
部クラッド層6を積層する。第1の上部クラッド層6上
には、ストライプ形状の第2の上部クラッド層8、電流
ブロック層9が積層されている。さらに順次第3の上部
クラッド層10、コンタクト層11が積層され、コンタ
クト層11上にp側電極12が配置され、基板1裏面に
n側電極13が配置されている。電流ブロック層9は第
2の上部クラッド層8と異なる導電型を有することで電
流を狭窄し、電流ブロック層9を含む領域の実効屈折率
が上部クラッド層8を含む領域の実行屈折率よりも低い
値をとることで、水平方向の光閉じ込めをおこなう。第
1の上部クラッド層6内部には回折格子7が配置され、
複数の発振縦モードを有する光を選択する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体基板上に積
層された下部クラッド層および上部クラッド層と、該二
つのクラッド層間に積層された活性層とを備えた半導体
レーザ装置、半導体レーザ装置を含む半導体レーザモジ
ュール、光ファイバ増幅器に関し、特に、水平方向の光
閉じ込めを制御し、発振縦モードを選択する半導体レー
ザ装置、半導体レーザ装置を含む半導体レーザモジュー
ル、光ファイバ増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、インターネットをはじめとする光
通信の発展に伴い、長距離に渡って信号光を伝送するた
めに、伝送用光ファイバの途中に光ファイバ増幅器を配
置することが広くおこなわれている。この光ファイバ増
幅器は、光ファイバ中を信号光が伝送する途上におい
て、強度の低下した信号光を増幅することによって信号
光の強度を回復する。具体的には、エルビウムを添加し
た光ファイバ(以下、「EDF」と言う)を用いて増幅
する光ファイバ増幅器や、ラマン増幅を利用した光ファ
イバ増幅器などが提案され、実用化されている。また、
EDFにおいて、海底に敷設された伝送用光ファイバの
途中で信号光の増幅をおこなう場合に、励起光源を陸上
に配置し、励起光源から励起光伝送用光ファイバによっ
て励起光をEDFに入射させるいわゆるリモートポンプ
式の光ファイバ増幅器が提案されている。リモートポン
プ式の光ファイバ増幅器では、励起光源を陸上に配置す
ることで、励起光源の保守・交換を容易におこなうこと
ができる。
【0003】ここで、いずれの光ファイバ増幅器でも、
励起光源に半導体レーザ装置を使用して信号光を励起す
る構造を有し、光ファイバ増幅器の増幅利得は、励起光
源の光出力とともに増加する。そのため、励起光源とし
て使用される半導体レーザ装置は、発光効率が高く、高
出力のものが必要とされている。また、ラマン用励起光
源として使用される半導体レーザ装置には、低い相対強
度雑音(RIN:Relative Intensity Noise)が要求さ
れる。このような観点から励起光源に使用する半導体レ
ーザ装置として、埋め込みヘテロ構造レーザ(以下、
「BHレーザ」と言う)や、リッジ構造レーザが実用化
されている。
【0004】光出力を向上させるためには、光が導波す
る体積を大きくする必要がある。体積を大きくするに
は、半導体レーザ装置の層方向、光出射方向、水平方向
の領域を広げることが考えられる。層方向の領域は、主
にSCH(Separate Confinement Heterostructure: 分
離閉じ込めヘテロ構造)層などの電流閉じ込め構造によ
って決定される。そのため、光の閉じ込め領域のみを電
流閉じ込めとは別に層方向に広げることは困難である。
次に光出射方向について考える。共振器長を長くするこ
とにより導波領域を広げることは必須の技術で、これま
で多く用いられてきた。しかし、共振器長を延ばすとそ
れに伴い内部損失も増加してしまうというトレードオフ
関係にあり、ある駆動条件内で長共振器化による光出力
の向上を図ることにも限界がある。以上のようなことか
ら、さらなる光出力向上のためには水平方向の導波領域
を広げることが重要となる。水平方向の領域を広げると
素子抵抗、熱抵抗が低減し、熱による光出力の飽和が抑
制される。水平方向の領域の上限は、高次の水平方向の
導波モードがカットオフされる幅Wcで決定される。W
c以上の幅を持つ半導体レーザ装置では、高次の水平方
向の導波モードが存在し、出射する遠視野像(FFP:
Far Field Pattern)の単峰性が損なわれる、電流・光
出力特性においてキンクが発生するだけでなく、さらに
光ファイバへの結合効率が著しく劣化する等の問題が生
じる。
【0005】図3に示す第1領域18と第2領域19も
しくは第2領域20との実効屈折率の差をΔnとおく。
幅Wcは発振波長、Δnで決定され、Δnが小さいほど
Wcを大きくすることができる。したがって、幅Wcを
大きくするためにはΔnの制御が重要となってくる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のBHレ
ーザやリッジ構造レーザでは実効屈折率の制御が困難
で、結果として水平方向の領域拡大が困難であるという
問題が存在する。以下、BHレーザおよびリッジ構造レ
ーザについて水平方向の光強度分布領域の拡大が困難で
ある理由について説明する。
【0007】BHレーザは、活性層に隣接して電流ブロ
ック層が配置されている。活性層と電流ブロック層とは
一般に異なる半導体材料で構成される。活性層を含んだ
第1領域の実効屈折率が層方向の電流閉じ込めから決定
されると、実効屈折率差は第2領域である電流ブロック
層の半導体材料で決定されることになる。屈折率を操作
するパラメータが材料の選択ということしかないので、
実効屈折率の微妙な制御には適さない。また、電流ブロ
ック層の半導体材料は、埋め込み成長の容易さ、熱抵抗
などから決定され、材料選択の自由度は少ない。
【0008】InP基板を用いたBHレーザを例にとっ
てみると、電流ブロック層には、InPが用いられるこ
とがほとんどである。InPは、InP基板に格子整合
する半導体材料の中でもっとも屈折率が小さいので、実
効屈折率差を小さくするには限界があり、結果としてW
cを大きくするにも制約が生じ、高出力化に最適とは言
えない。
【0009】一方、実効屈折率差を小さくするために
は、活性層を含んだ第1領域の実効屈折率を小さくする
こともできる。しかし、その場合には、層方向の光の閉
じ込め、電流の閉じ込めが弱くなり、高電流注入時のキ
ャリアオーバーフローが顕著になるなど高出力化の妨げ
となる現象が現れる。
【0010】一方、リッジ構造レーザは、上部クラッド
層がリッジ状に形成された構造を有する。したがって、
リッジストライプに隣接した領域には半導体層は存在し
ない。リッジ構造レーザでは、リッジ領域以外の上部ク
ラッド層の膜厚で実効屈折率を制御している。上部クラ
ッド層の膜厚とリッジ幅を個別に制御するのは容易では
ないため、実効屈折率差の微妙な調整が困難という問題
が生じる。
【0011】また、高出力化には、活性層近傍で発生し
た熱の放熱が問題である。半導体レーザ装置は、放熱性
を向上させるため、ジャンクションダウン方式でレーザ
マウントに固定されることが好ましい。リッジ構造レー
ザでは、電極下に配置される絶縁層の熱抵抗が大きいた
め、ジャンクションダウン方式とした場合の放熱性向上
の効果が小さい。また、リッジ部分自体がジャンクショ
ンダウン方式に不都合となる場合もある。以上のように
リッジ構造レーザでは、高出力化に重要な放熱性に問題
が生じる場合がある。
【0012】さらに、高出力化には別の問題も有する。
励起光源から出射された励起光は光ファイバ中を伝送し
て増幅用光ファイバに入射するが、一定の閾値よりも高
い強度を有する光が光ファイバに入射した場合、誘導ブ
リルアン散乱が発生する。誘導ブリルアン散乱は、入射
した光が音響波(フォノン)と交互作用することによっ
て散乱(反射)が生ずる非線形光学現象である。フォノ
ンのエネルギー相当を失うことにより、約11GHz低
い周波数の光が入射光と逆方向に反射される現象として
観測される。
【0013】ラマン増幅を用いた光ファイバ増幅器で
は、上述のように励起光の誘導ブリルアン散乱が発生す
る際には、入射した励起光の一部は、後方に反射されて
しまい、ラマン利得生成に寄与しなくなる。また、この
散乱光が意図しない雑音を生成する可能性がある。この
励起光強度の低下は、励起光の伝送距離が短い場合はそ
れほど問題とはならない。しかし、上述のリモートポン
プを用いた光ファイバ増幅器においては、励起光源から
増幅用光ファイバに到達するまでに励起光の長距離伝送
が必要であるため、光強度の低下を無視することはでき
ない。リモートポンプを用いた光ファイバ増幅器の場
合、通常の光ファイバ中における光損失よりも高い割合
で励起光の強度が低下することとなるため、増幅用光フ
ァイバにおいて、増幅利得が低下するという問題が生じ
る。
【0014】また、特にラマン増幅を用いた光ファイバ
増幅器では、RINの抑制も重要である。従来の半導体
レーザ装置を励起光源に使用した場合、波長選択はファ
イバグレーティングによっておこなわれていた。しか
し、ファイバグレーティングと半導体レーザ装置との間
隔が長いため、ファイバグレーティングと半導体レーザ
装置の端面との間の共振によって相対強度雑音(RI
N:Relative Intensity Noise)が大きくなる。ラマン
増幅では、増幅の生じる過程が速いため、励起光強度が
揺らいでいると、ラマン利得も揺らぐことになり、この
ラマン利得の揺らぎがそのまま増幅された信号強度の揺
らぎとして出力されてしまい、安定したラマン増幅を行
わせることができないという問題点があった。
【0015】また、ラマン増幅器としては、信号光に対
して後方から励起する後方励起方式のほかに、信号光に
対して前方から励起する前方励起方式および双方向から
励起する双方向励起方式がある。現在、ラマン増幅器と
して多用されているのは、後方励起方式である。その理
由は、信号光が強い励起光とともに同方向に進行する前
方励起方式では、励起光強度の揺らぎが信号光強度の揺
らぎに影響を与えるという問題があるからである。した
がって、前方励起方式にも適用できる安定した励起光源
の出現が要望されている。すなわち、従来のファイバグ
レーティングを用いた半導体レーザモジュールを用いる
と、適用できる励起方式が制限されるという問題点があ
った。
【0016】さらに、ラマン増幅では、増幅利得の偏波
依存性があり、信号光の偏波方向と励起光の偏波方向と
のずれによる影響を小さくする必要がある。そのために
は、励起光の直交偏波合成、デポラライズなどによって
偏光度(DOP:Degree OfPolarization)を小さくす
る必要がある。
【0017】本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みてな
されたものであって、高い光出力を実現でき、RINを
抑制するとともに発振波長の固定をおこなうことが可能
で、誘導ブリルアン散乱の抑制および偏光度の低減が可
能な半導体レーザ装置、半導体レーザ装置を利用した半
導体レーザモジュールおよび半導体レーザ装置を励起光
源とした光ファイバ増幅器を提供することを目的とす
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1にかかる半導体レーザ装置は、半導体基板
上に積層された下部クラッド層および上部クラッド層
と、該二つのクラッド層間に積層された活性層とを備え
た半導体レーザ装置であって、発振縦モードを選択する
回折格子と、前記下部クラッド層および前記上部クラッ
ド層の少なくとも一方の内部領域に配置され、電流を遮
蔽する電流ブロック層と、該電流ブロック層に隣接して
配置され、前記レーザ光の出射方向にストライプ形状を
有し、電流を通過させる電流通過層とを備え、前記電流
ブロック層によって水平方向の光分布を制御することを
特徴とする。ここで、回折格子によって選択される発振
縦モードは単数であっても、複数であっても良い。
【0019】この請求項1の発明によれば、電流ブロッ
ク層が電流遮蔽機能とともに水平方向の光分布を制御す
ることとしたため、水平方向の光閉じ込めが弱い半導体
レーザ装置を実現できるとともに、回折格子が配置され
たため、発振縦モードを選択することができる。また、
回折格子によって波長選択をおこなうこととしたため、
ファイバグレーティングによって波長選択をおこなう場
合に比してRINを低減することができる。
【0020】また、請求項2にかかる半導体レーザ装置
は、上記の発明において、前記回折格子は、複数の発振
縦モードを選択することを特徴とする。
【0021】この請求項2の発明によれば、回折格子が
複数の発振縦モードを選択することとしたため、各発振
縦モードの強度を抑制することで誘導ブリルアン散乱の
発生を抑制することができる。また、複数の発振縦モー
ドを出射することでコヒーレント長が短くなり、デポラ
ライズによってDOPを小さくし、偏波依存性をなくす
ことができる。
【0022】また、請求項3にかかる半導体レーザ装置
は、上記の発明において、レーザ発振時における出射レ
ーザ光が1200nm以上、1600nm以下の波長を
有することを特徴とする。
【0023】また、請求項4にかかる半導体レーザ装置
は、上記の発明において、光出射方向の長さが800μ
m以上、3200μm以下であることを特徴とする。
【0024】また、請求項5にかかる半導体レーザ装置
は、上記の発明において、レーザ発振時における光出力
強度が80mW以上であることを特徴とする。
【0025】また、請求項6にかかる半導体レーザ装置
は、上記の発明において、前記半導体基板がInP基板
であり、前記電流ブロック層がGaxIn1-xAsy1-y
(0<x≦1、0<y≦1)を含むことを特徴とする。
【0026】また、請求項7にかかる半導体レーザ装置
は、上記の発明において、前記半導体基板がInP基板
であり、前記電流ブロック層がInPを含むことを特徴
とする。
【0027】また、請求項8にかかる半導体レーザ装置
は、上記の発明において、前記電流通過層を含む領域の
実効屈折率と前記電流ブロック層を含む領域の実効屈折
率の差分値は、8×10-3以下であることを特徴とす
る。
【0028】また、請求項9にかかる半導体レーザ装置
は、上記の発明において、前記電流ブロック層は、前記
電流通過層の導電型と異なる導電型の半導体層を含むこ
とを特徴とする。
【0029】また、請求項10にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記電流ブロック層は、前
記電流通過層の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有す
ることを特徴とする。
【0030】また、請求項11にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記電流ブロック層の不純
物濃度は、1.5×1018cm-3以上、9×1018cm
-3以下であることを特徴とする。
【0031】また、請求項12にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記電流ブロック層に含ま
れる半導体材料は、出射されるレーザ光のエネルギーよ
りも大きな禁制帯幅を有することを特徴とする。
【0032】また、請求項13にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記電流ブロック層は、レ
ーザ光出射方向側面近傍における屈折率が前記第2のク
ラッド層近傍における屈折率よりも低いことを特徴とす
る。
【0033】また、請求項14にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記電流ブロック層は、半
導体絶縁層を含むことを特徴とする。
【0034】また、請求項15にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記回折格子は、回折格子
長が300μm以下であることを特徴とする。
【0035】また、請求項16にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記回折格子の回折格子長
は、前記共振器長の(300/1300)倍の値以下で
あることを特徴とする。
【0036】また、請求項17にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記回折格子の結合係数と
回折格子長との乗算値が0.3以下であることを特徴と
する。
【0037】また、請求項18にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記回折格子は、グレーテ
ィング周期に所定の周期揺らぎを持たせたことを特徴と
する。
【0038】また、請求項19にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記回折格子は、グレーテ
ィング周期をランダムあるいは所定周期で変化させたこ
とを特徴とする。
【0039】また、請求項20にかかる半導体レーザ装
置は、上記の発明において、前記回折格子は、前記電流
ブロック層の上部領域、下部領域若しくは前記電流ブロ
ック層内部に配置されたことを特徴とする。
【0040】また、請求項21にかかる半導体レーザモ
ジュールは、請求項1〜20のいずれか一つに記載の半
導体レーザ装置と、前記半導体レーザ装置から出射され
たレーザ光を外部に導波する光ファイバと、前記半導体
レーザ装置と前記光ファイバとを光結合する光結合レン
ズ系と、少なくとも前記半導体レーザ装置と前記光結合
レンズ系とを収納するパッケージとを備えたことを特徴
とする。
【0041】また、請求項22にかかる半導体レーザモ
ジュールは、上記の発明において、前記半導体レーザ装
置の光出力を測定する光検出器と、該半導体レーザ装置
の温度を制御する温調モジュールと、アイソレータとを
さらに備えたことを特徴とする。
【0042】また、請求項23にかかる光ファイバ増幅
器は、請求項1〜20のいずれか一つに記載の半導体レ
ーザ装置若しくは請求項21または22に記載の半導体
レーザモジュールを備えた励起光源と、信号光を伝送す
る光ファイバと、該光ファイバと接続された増幅用光フ
ァイバと、前記励起光源から出射される励起光を増幅用
光ファイバに入射させるためのカプラとを備えたことを
特徴とする。
【0043】また、請求項24にかかる光ファイバ増幅
器は、上記の発明において、前記増幅用光ファイバは、
ラマン増幅により光を増幅することを特徴とする。
【0044】また、請求項25にかかる光ファイバ増幅
器は、上記の発明において、前記増幅用光ファイバは、
エルビウム添加光ファイバであって、前記励起光源と前
記増幅用光ファイバとは遠隔に配置されることを特徴と
する。
【0045】
【発明の実施の形態】以下に図面を参照して、本発明に
かかる半導体レーザ装置、半導体レーザモジュールおよ
び光ファイバ増幅器の好適な実施の形態について説明す
る。図面の記載において同一または類似部分には同一あ
るいは類似な符号を付している。また、図面は模式的な
ものであり、層の厚みと幅との関係、各層の厚みの比率
などは現実のものとは異なることに留意する必要があ
る。さらに、図面の相互間においても互いの寸法の関係
や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんであ
る。
【0046】(実施の形態1)実施の形態1にかかる半
導体レーザ装置について説明する。本実施の形態1にか
かる半導体レーザ装置は、いわゆるSAS(Self Align
ed Structure:自己整合構造)型レーザであり、電流ブ
ロック層が電流狭窄機能のみならず、水平方向の光閉じ
込めを制御する機能を有する。図1は、実施の形態1に
かかる半導体レーザ装置の正面図を示し、図2は、図1
のA−A線における断面図である。以下、実施の形態1
にかかる半導体レーザ装置の構造について、図1および
図2を参照して説明する。
【0047】実施の形態1にかかる半導体レーザ装置
は、基板1上に順次下部クラッド層2、下部SCH層
3、量子井戸層4、上部SCH層5、第1の上部クラッ
ド層6を積層した構造を有する。第1の上部クラッド層
6上の一部領域上には、レーザ光出射方向に長手方向を
有するストライプ形状であって電流通過層として機能す
る第2の上部クラッド層8が積層され、第1の上部クラ
ッド層6上であって、第2の上部クラッド層8が積層さ
れていない領域には、電流ブロック層9が積層されてい
る。第2の上部クラッド層8および電流ブロック層9の
上には順次第3の上部クラッド層10、コンタクト層1
1が積層され、コンタクト層11上にはp側電極12が
配置されている。また、基板1裏面にはn側電極13が
配置されている。そして、第1の上部クラッド層6内で
あって第2の上部クラッド層8の下部領域には、回折格
子7が配置されている。さらに、図2で示すように、光
出射側端面(図2における右側端面)上には低反射膜1
5が配置され、光出射側端面と対向した反射側端面(図
2における左側端面)には高反射膜16が配置されてい
る。
【0048】基板1および下部クラッド層2は、n型の
不純物がドープされたInPからなり、下部クラッド層
2は、クラッド層としての機能の他に、バッファ層とし
ての機能も有する。
【0049】量子井戸層4は少なくとも1つ以上の量子
井戸構造を有し、下部SCH層3、量子井戸層4、上部
SCH層5は、1つの量子井戸層の場合は、全体でグレ
ーテッドインデックス分離閉じ込め単一量子井戸(GR
IN−SCH−SQW)活性層、2つ以上の量子井戸層
の場合は、全体でグレーテッドインデックス分離閉じ込
め多重量子井戸(GRIN−SCH−MQW)活性層を
構成する。GRIN−SCH構造は、好ましくはリニア
GRIN−SCHであるとし、下部SCH層3および上
部SCH層5の膜厚は30〜40nmである。GRIN
−SCH構造を有することで、キャリアがより効率的に
層方向に閉じ込められ、活性層により効率的にキャリア
を注入することが可能となる。多重量子井戸構造の量子
井戸層は5層からなり、基板に対して1パーセントの圧
縮歪みを有するものからなっている。なお、バリア層に
は引張り歪み構造を採用した補償構造を用いることで、
より大きな量子井戸層の歪に対しても結晶性を損なうこ
とがない半導体レーザ装置を実現することができる。ま
た、量子井戸層4から出射されるレーザ光の波長は12
00nm〜1600nmである。さらに、レーザ光の強
度は80mW以上、望ましくは150mW以上、さらに
望ましくは250mW以上である。これは、後述する光
ファイバ増幅器の励起光源として本実施の形態1にかか
る半導体レーザ装置を使用することを可能にするためで
ある。
【0050】第1の上部クラッド層6、第2の上部クラ
ッド層8、第3の上部クラッド層10はそれぞれ上部ク
ラッド層として機能する。また、本実施の形態1にかか
る半導体レーザ装置において、第1の上部クラッド層
6、第2の上部クラッド層8、第3の上部クラッド層1
0はいずれもp型の導電型を有するInPからなる。第
2の上部クラッド層8は、上記したように電流通過層と
しての機能も有する。電流通過層とは、外部から注入さ
れた電流を層方向に通過させる領域のことであり、注入
された電流は、活性層のうち電流通過層、すなわち第2
の上部クラッド層8の下部領域に流入する。
【0051】回折格子7は、p型の導電型を有するGa
InAsPからなる。周囲の第1の上部クラッド層6と
は異なる半導体材料から構成されるため、量子井戸層4
から発生した光のうち、所定波長を有する成分について
は回折格子7によって反射されることとなる。回折格子
7の有する機能については、後に詳説する。
【0052】コンタクト層11は、第3の上部クラッド
層10とp側電極12とをオーミック接触させるための
ものである。コンタクト層11は、高濃度のp型不純物
がドープされており、これによりオーミック接触を実現
している。
【0053】図2に示す高反射膜16は、共振器を構成
するためのものである。したがって、高反射膜16は、
反射率80パーセント以上、好ましくは90パーセント
以上、さらに好ましくは98パーセント以上の光反射率
を有する。一方、低反射膜15は、出射側端面における
レーザ光の反射を防止するためのものである。したがっ
て、低反射膜15は反射率の低い膜構造からなり、光反
射率は5パーセント以下、望ましくは1パーセント以
下、より好ましくは0.1パーセント程度の膜構造から
なる。
【0054】電流ブロック層9は、p側電極12から注
入された電流を狭窄し、水平方向に関して量子井戸層4
におけるキャリア密度を向上させるためのものである。
p側電極12から注入された電流が内部を通過すること
を防止するため、電流ブロック層9の導電型はn型であ
る。電流ブロック層9の導電型がn型であるため、第1
の上部クラッド層6、電流ブロック層9、第3の上部ク
ラッド層10による積層構造はpnp接合となることか
ら、電流ブロック層9に電流が流れこむことはない。本
実施の形態1においては、電流ブロック層9の膜厚は、
0.5μm程度である。
【0055】電流ブロック層9は、高ドープなn型の導
電型を有するInPによって形成されている。実施の形
態1において、電流ブロック層9は、第2の上部クラッ
ド層8と同様にInPを材料とする。ただし、ドープし
た不純物の濃度が、電流ブロック層9の方が、第2の上
部クラッド層8よりも大きくなるように形成されてい
る。そのため、出射されるレーザ光に対する実効屈折率
も異なる。ここで、電流ブロック層9が存在する領域の
実効屈折率と第2の上部クラッド層8が存在する領域の
実効屈折率との差分値が8×10-3以下となるよう、電
流ブロック層9の不純物濃度を制御することが望まし
い。なお、電流ブロック層9にドープされる不純物濃度
は1.5×1018cm-3〜9×1018cm-3であること
が望ましい。
【0056】次に、本実施の形態1にかかる半導体レー
ザ装置の動作について説明する。実施の形態1にかかる
半導体レーザ装置は、実効屈折率差による水平方向の光
閉じ込めと、回折格子7による波長選択機能を有する。
まず、水平方向の光閉じ込めについて説明する。
【0057】本実施の形態1にかかる半導体レーザ装置
において、光閉じ込めは、主として実効屈折率の差によ
っておこなわれる。ここで、量子井戸層4から出射され
るレーザ光は、層方向にある程度の広がりを有するた
め、水平方向の閉じ込めを考える際には、下部SCH層
3、量子井戸層4、上部SCH層5のみならず、それら
の上下の領域における水平方向の屈折率分布についても
考慮する必要がある。特に、第1の上部クラッド層6の
膜厚は0.1μm程度であるため、電流ブロック層9は
量子井戸層4の近傍に位置し、量子井戸層4から等距離
にある第2の上部クラッド層8とは屈折率が異なれば、
水平方向の光閉じ込めについて影響を与える。
【0058】半導体層の屈折率は、半導体層を構成する
材料の組成のみならず、ドープされた不純物濃度の大き
さによっても変化することが知られている。したがっ
て、第2の上部クラッド層8と電流ブロック層9とが同
じ材料から構成されていても、不純物濃度を変化させる
ことで水平方向の光閉じ込めをおこなうことができる。
具体的には、不純物濃度が上昇すると、キャリアのプラ
ズマ効果により屈折率が低減するため、電流ブロック層
9の屈折率は、第2の上部クラッド層8の屈折率よりも
低い値となる。したがって、実施の形態1にかかる半導
体レーザ装置は、水平方向に関して光を閉じ込める構造
となっている。
【0059】図3に示すように半導体レーザ装置の断面
を3つの領域に分け、それぞれの実効屈折率を対比する
ことで水平方向の光の閉じ込めについて解析することが
できる。図3に示すように半導体レーザ装置の断面を3
つの領域に分け導波モードを解析する手法を等価屈折率
法という。これは、水平方向の光閉じ込めを第1領域1
8、第2領域19、20の実効屈折率を持つプレーナ導
波路に等価的に置き換えて評価する方法である。この手
法は近似ではあるが、導波路が層方向の厚さに比べて水
平方向に広く、水平方向には比較的穏やかな変化をする
場合には精度の高い解析ができることが知られている。
ここで、第2領域19および第2領域20は、同一の構
造からなるため、実効屈折率も同一の値を有する。ま
た、第2領域19および第2領域20を第1領域18と
比較すると、第1領域18における第2の上部クラッド
層8に対応した領域に、さらに屈折率の低い電流ブロッ
ク層9が配置されている。したがって、実効屈折率を比
較した場合、第1領域18に比べて第2領域19および
第2領域20の実効屈折率は低くなる。
【0060】本実施の形態1にかかる半導体レーザ装置
における水平方向の光強度分布について、図4を参照し
て説明する。図4(a)は、従来のBHレーザにおける
水平方向の光強度分布を模式的に表し、図4(b)は、
本実施の形態1にかかる半導体レーザ装置における水平
方向の光強度分布を模式的に表している。また、曲線l
1および曲線l1’は実効屈折率の水平方向の分布を示
し、曲線l2および曲線l2’は水平方向の光強度分布を
示す。
【0061】上述したように、水平方向の光閉じ込め
は、水平方向における実効屈折率の差に起因して生じ
る。また、光閉じ込めの程度は、第1領域18の実効屈
折率と、第2領域19および第2領域20の実効屈折率
との差分値によって決定される。ここで、第1領域18
と第2領域19および第2領域20との構造上の差異
は、第2の上部クラッド層8が電流ブロック層9に置き
換えられたのみである。したがって、実効屈折率の差分
値は、電流ブロック層9が配置される位置、電流ブロッ
ク層9の膜厚および屈折率によって決定され、水平方向
の光閉じ込めの程度もこれらによって決定される。一般
に、実効屈折率の差分値が大きい値をとる場合には水平
方向の光閉じ込めが強くなり、高次の水平方向の導波モ
ードがカットオフされる幅Wcが小さくなるため、高出
力化が困難となる。一方、実効屈折率の差分値が小さな
値をとる場合には水平方向の光閉じ込めが弱くなり、W
cが大きくなるため、高出力化が可能となる。
【0062】また、本実施の形態1にかかる半導体レー
ザ装置は、電流ブロック層9が周囲のクラッド層と同様
にInPを材料として形成されている。このことによる
利点について、以下に説明する。
【0063】一般に、半導体層の禁制帯幅は半導体の組
成によって決定され、導電型とは無関係であることか
ら、電流ブロック層9と第2の上部クラッド層8の禁制
帯幅は等しい値となる。本実施の形態1にかかる半導体
レーザ装置は、量子井戸層4がGaInAsPによって
構成されており、出射するレーザ波長は、量子井戸層4
における量子準位に基づいて決定される。電流ブロック
層9の禁制帯幅が出射光のエネルギーよりも狭い場合、
電流ブロック層9に漏れ出した光は吸収される。本実施
の形態1では、電流ブロック層9がInPで形成される
ため、量子準位が出射光のエネルギーよりも広く、光が
吸収されることなく外部に出射され、高出力の半導体レ
ーザ装置を実現することが可能となる。さらに、光吸収
による水平方向の光閉じ込めの効果を考慮する必要がな
いため、半導体レーザ装置の構造を設計する際に電流ブ
ロック層9の不純物濃度および位置、膜厚についてのみ
パラメータを変化させることで弱い光閉じ込めを実現す
ることができる。
【0064】また、電流ブロック層9と第2の上部クラ
ッド層8とがともにGaInAsPと比較して熱抵抗の
小さいInPからなるため、電流注入によって生じる熱
を効率的に拡散することが可能となる。一般に半導体レ
ーザ装置はジャンクションダウン方式により、レーザマ
ウントとp側電極12とが接触するように固定され、発
生した熱は主としてp側電極12を介して放出される。
ここで、熱の通り道となる第2の上部クラッド層8およ
び電流ブロック層9とが熱抵抗の小さい材料からなるこ
とから、効率良く熱を外部に排出することができる。効
率良く熱を排出できる場合には、量子井戸層4の温度上
昇を抑制することができ、大電流を注入しても、もはや
光出力が増大しなくなる熱飽和を抑制することができ
る。したがって、効率良く熱を放出する機能を有するこ
とで、高出力の半導体レーザ装置を提供することができ
る。
【0065】なお、従来のBHレーザやリッジ構造レー
ザのように、水平方向の光閉じ込めを弱めるために他の
特性を犠牲にすることは望ましくない。以下で、本実施
の形態1にかかる半導体レーザ装置が水平方向の光閉じ
込めを弱くする施策を取ったときでも、電流ブロック層
9の電流狭窄機能が低下したり、層方向の光閉じ込めに
影響を与えたりすることがないことを説明する。
【0066】本実施の形態1にかかる半導体レーザ装置
において、電流ブロック層9は、電流狭窄機能を発揮す
るために設けられたものである。ここで、上述したよう
に、電流ブロック層9はn型不純物がドープされ、p型
不純物がドープされた第3の上部クラッド層10、第1
の上部クラッド層6との間でpnp接合が成立してい
る。また、電流ブロック層9の屈折率を変化させるため
に、不純物の濃度を変化させるが、同一導電型のドーパ
ントを使用する限り電流ブロック層9の導電型が変化す
ることはない。pnp接合の存在により、p側電極12
から注入された電流は、電流ブロック層9には流入せ
ず、第2の上部クラッド層8のみを通過して量子井戸層
4に到達する。
【0067】電流狭窄機能の制御のためには、電流ブロ
ック層9と第1、第3の上部クラッド層6、10の膜
厚、不純物濃度を操作する。一方、水平方向の光閉じ込
め制御のために、本実施の形態1では、電流ブロック層
9の膜厚と不純物濃度、第1の上部クラッド層6の膜厚
という3つのパラメータを主に操作する。このように、
操作できるパラメータが多いため、まず電流狭窄機能の
ためのパラメータを決め、その後、光閉じ込め制御のた
めにパラメータを操作しても比較的自由に、かつ電流狭
窄機能を損なうことなく操作することができる。したが
って、pnp接合が成立する限り、電流ブロック層9が
注入電流を狭窄することは可能であり、電流ブロック層
9の位置、膜厚を変化させることによって電流ブロック
層9に電流が流入することはない。
【0068】もっとも、たとえば、第1の上部クラッド
層6を省略して電流ブロック層9、第2の上部クラッド
層8を上部SCH層5と接触した構造とした場合、電流
ブロック層9が配置された領域における層方向のpnp
接合は成立しなくなり、電流を狭窄することはできなく
なる。ただし、第3の上部クラッド層10を省略した場
合には、電流ブロック層9と第1の上部クラッド層6の
間で層方向にnp接合が成立する。本実施の形態1にか
かる半導体レーザ装置は、p側電極12を陽極としてい
るため、np接合には逆バイアスが印加されることとな
り、電流ブロック層9に電流が流入することはない。よ
って、第1の上部クラッド層6を省略することはできな
いが、第3の上部クラッド層10を省略することは可能
である。
【0069】次に、電流ブロック層9の位置、膜厚およ
び屈折率を変化した場合の、層方向の光閉じ込めに与え
る影響について説明する。光が発生する量子井戸層4に
対して電流ブロック層9は上方に配置されているため、
電流ブロック層9の構造を変化させた場合には層方向の
光閉じ込めに対しても影響が及ぶ。しかし、上述した等
価屈折率法では、導波路が層方向の厚さに比べて水平方
向に広く、水平方向には比較的穏やかな変化をする場合
には精度の高い解析ができることが知られている。よっ
てこの等価屈折率法にしたがって導波モードを考える限
りでは、電流ブロック層9が第1領域の実効屈折率に及
ぼす影響はほとんどなく、層方向の光閉じ込めの変化も
ほとんどないと近似できる。
【0070】以上の説明から、水平方向の光閉じ込めを
低減するために電流ブロック層9の位置、膜厚、屈折率
を最適化した場合に半導体レーザ装置の他の特性に影響
を与えることはない。したがって、本発明によれば、層
方向の光閉じ込めとは独立に水平方向の光閉じ込めを設
計できるという特徴を有しているので、高出力動作時に
適した層構造を用いることで素子の性能を最大限に発揮
することが可能である。
【0071】次に、回折格子7によって発振縦モードの
選択がおこなわれることについて説明する。なお、本実
施の形態1において回折格子7によって選択される発振
縦モードは単数であっても良いが、ここでは複数の発振
縦モードを選択する場合について説明し、あわせて複数
の発振縦モードを選択することによる利点についても説
明する。
【0072】回折格子7は、膜厚20nmを有し、低反
射膜15の反射端面から高反射膜16側に向けて長さL
g=50μmの回折格子7が設けられ、この回折格子7
は、ピッチ約220nmで周期的に形成され、中心波長
1.48μmのレーザ光を波長選択する。ここで、回折
格子7は、回折格子の結合係数κと回折格子長Lgとの
乗算値を0.3以下とすることによって、駆動電流−光
出力特性の線形性を良好にし、光出力の安定性を高めて
いる(特願2001−134545参照)。また、共振
器長Lが1300μmの場合、回折格子長Lgが約30
0μm以下のときに複数の発振縦モード数で発振するの
で、回折格子長Lgは300μm以下とすることが好ま
しい。ところで、共振器長Lの長短に比例して、発振縦
モード間隔も変化するため、回折格子長Lgは、共振器
長Lに比例した値となる。すなわち、(回折格子長L
g):(共振器長L)=300:1300の関係を維持
するため、回折格子長Lgが300μm以下で複数の発
振縦モードが得られる関係は、 Lg×(1300(μm)/L)≦300(μm) として拡張することができる。すなわち、回折格子長L
gは、共振器長Lとの比を保つように設定され、共振器
長Lの(300/1300)倍の値以下としている(特
願2001−134545参照)。
【0073】一般に、半導体レーザ装置の共振器によっ
て発生する縦モードのモード間隔Δλは、実効屈折率を
「n」とすると、次式で表すことができる。すなわち、 Δλ=λ0 2/(2・n・L) である。ここで、発振波長λ0を1480μmとし、実
効屈折率nを3.5とすると、共振器長Lが800μm
のとき、縦モードのモード間隔Δλは、約0.39nm
となり、共振器長が3200μmのとき、縦モードのモ
ード間隔Δλは、約0.1nmとなる。すなわち、共振
器長Lを長くすればするほど、縦モードのモード間隔Δ
λは狭くなり、単一発振縦モードのレーザ光を発振する
ための選択条件が厳しくなる。
【0074】一方、回折格子7は、そのブラッグ波長に
よって縦モードを選択する。この回折格子7による選択
波長特性は、図5に示す発振波長スペクトル21として
表される。
【0075】図5に示すように、この実施の形態1で
は、回折格子7を有した半導体レーザ装置による発振波
長スペクトル21の半値幅Δλhで示される波長選択特
性内に、発振縦モードを複数存在させるようにしてい
る。従来のDBR(DistributedBragg Reflector)半導
体レーザ装置あるいはDFB(Distributed Feedback)
半導体レーザ装置では、共振器長Lを800μm以上と
すると、単一発振縦モード発振が困難であったため、か
かる共振器長Lを有した半導体レーザ装置は用いられな
かった。しかしながら、この実施の形態1の半導体レー
ザ装置では、共振器長Lを積極的に800μm以上とす
ることによって、発振波長スペクトル21の半値幅Δλ
h内に複数の発振縦モードを含ませてレーザ出力するよ
うにしている。図5では、発振波長スペクトル21の半
値幅Δλh内に3つの発振縦モード22〜24を有して
いる。
【0076】複数の発振縦モードを有するレーザ光を用
いると、単一縦モードのレーザ光を用いた場合に比し
て、各発振縦モードのレーザ出力のピーク値を抑えつ
つ、発振波長スペクトル全体で高いレーザ出力値を得る
ことができる。たとえば、この実施の形態1に示した半
導体レーザ装置では、図6(b)に示すプロファイルを
有し、低いピーク値で高レーザ出力を得ることができ
る。これに対し、図6(a)は、同じレーザ出力を得る
場合の単一縦モード発振の半導体レーザ装置のプロファ
イルであり、高いピーク値を有している。
【0077】ここで、半導体レーザ装置をラマン増幅器
の励起用光源として用いる場合、ラマン利得を大きくす
るために励起光出力パワーを増大することが好ましい
が、そのピーク値が高いと、誘導ブリルアン散乱が発生
し、雑音が増加するという不具合が発生する。誘導ブリ
ルアン散乱の発生は、誘導ブリルアン散乱が発生する閾
値Pthを有し、同じレーザ出力パワーを得る場合、図
6(b)に示すように、複数の発振縦モードを持たせ、
そのピーク値を抑えることによって、誘導ブリルアン散
乱の閾値Pth内で、高い励起光出力パワーを得ること
ができ、その結果、高いラマン利得を得ることが可能と
なる。
【0078】また、発振縦モード22〜24の波長間隔
(モード間隔)Δλは、0.1nm以上としている。こ
れは、半導体レーザ装置をラマン増幅器の励起用光源と
して用いる場合、モード間隔Δλが0.1nm以上であ
ると、誘導ブリルアン散乱が抑えられる。この結果、上
述したモード間隔Δλの式によって、上述した共振器長
Lが3200μm以下であることが好ましいことにな
る。
【0079】次に、本実施の形態1にかかる半導体レー
ザ装置の製造方法について、図7および図8を参照して
説明する。図7および図8は、本実施の形態1にかかる
半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【0080】まず、基板1上に順次下部クラッド層2、
下部SCH層3、量子井戸層4、上部SCH層5、第1
の上部クラッド層6、p型GaInAsP層を積層す
る。これらの半導体層を積層するにあたっては、MOC
VD(Metal Organic ChemicalVapor Deposition)法を用
いるが、その他にCVD(Chemical Vapor Deposition)
法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法等を用いてエピ
タキシャル成長してもよい。
【0081】そして、図7(a)に示すように、p型G
aInAsP層25上に、回折格子7を形成するための
マスクパターン26を形成する。具体的には、フォトリ
ソグラフィ法を用いてEB露光によりマスクパターン2
6を形成する。ここで、マスクパターン26を構成する
レジストは、ネガレジストを使用することが好ましい。
ネガレジストを使用する場合、マスクパターン26を形
成する領域のみにEB露光をおこなえばよいため、ポジ
レジストを使用してレジスト全面に渡ってEB露光をお
こなった場合と比較して露光に要する時間を大幅に短縮
することができるためである。
【0082】その後、図7(b)に示すように、エッチ
ングによってp型GaInAsP層の余剰部分を除去し
て、回折格子7を形成する。回折格子7を形成後、マス
クパターン26を除去して順次第1の上部クラッド層6
の残りの部分、エッチングストップ層14、n型InP
層27を積層して図7(c)に示すような半導体薄膜構
造体を得る。
【0083】そして、図8(a)に示すように、第2の
上部クラッド層8を形成する予定の領域に開口部を有す
るSiNxマスクパターン28を形成する。具体的に
は、まず、プラズマCVD法等を用いて、厚さ100〜
200nm程度のSiNx膜をn型InP層27の全面
に成膜する。そして、スピンコート法によってSiNx
膜の全面にレジストを塗布する。レジストを塗布した
後、フォトリソグラフィ法により所望の開口部を有する
レジストパターンを形成する。レジストパターンを形成
後、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッ
チング)装置を用いて、開口部に露出したSiNxをエ
ッチングする。SiNx膜をエッチング後、有機溶媒洗
浄、酸素プラズマアッシングをおこない、レジストを除
去すると開口部を有するSiNxマスクパターン28が
現れる。
【0084】その後、SiNxマスクパターン28をマ
スクとしてn型InP層27をエッチングする。エッチ
ングの態様はケミカルエッチングとするが、RIE装置
によるドライエッチングその他の手段をとることも可能
である。本実施の形態1においては、InPに選択性を
有するエッチャントを用いてケミカルエッチングをおこ
なう。エッチングストップ層14は、厚さ5nm程度、
バンドギャップ組成波長1.1μm程度のGaInAs
Pから構成されているため、本工程ではエッチングスト
ップ層14はエッチングされず、下層に位置する第1の
上部クラッド層6がエッチングされることはない。その
後、GaInAsPに選択性を有するエッチャント、ま
たは選択性のないエッチャントを時間制御して用いて、
第2の上部クラッド層8を形成する予定の領域に残存す
るエッチングストップ層14を除去することが好まし
い。これにより、図8(b)に示すように、電流ブロッ
ク層9が形成され、第2の上部クラッド層8を積層する
ための空隙が形成される。そして、以後の工程で第1の
上部クラッド層6および電流ブロック層9上に半導体層
を積層するために、SiNxマスクパターン28を除去
するとともに、第1の上部クラッド層6および電流ブロ
ック層9の表面を清浄化する。なお、上述した工程では
SiNxをマスクパターンとして用いたが、レジストを
マスクに用いても良い。
【0085】そして、第1の上部クラッド層6および電
流ブロック層9上にp型InPを積層する。本工程によ
って、図8(c)に示すように、電流ブロック層9に挟
まれた領域に第2の上部クラッド層8が形成され、第2
の上部クラッド層8および電流ブロック層9上に第3の
上部クラッド層10が形成される。
【0086】その後、第3の上部クラッド層10上にコ
ンタクト層11を積層する。また、蒸着またはスパッタ
法等によって金属膜を堆積することによって、p側電極
12およびn側電極13を形成する。なお、n側電極1
3を形成する前に、素子の厚さ調整のため、基板裏面の
研磨をおこなう。以上で、実施の形態1にかかる半導体
レーザ装置を製造することができる。
【0087】ところで、図7および図8で示す製造工程
において、電流通過層(第2の上部クラッド層8)と回
折格子7の水平方向の位置あわせはフォトリソグラフィ
の精度で決まる。よって、電流通過層と回折格子7電流
通過層と回折格子7の位置を正確に一致させることは一
般に困難である。よって、あらかじめ回折格子7の水平
方向の幅を電流通過層の幅よりも余分に確保することが
好ましい。
【0088】なお、電流ブロック層9および第2の上部
クラッド層8は以下のように形成しても良い。図9は、
本実施の形態1にかかる半導体レーザ装置の他の製造方
法の工程の一部について示す図である。上記した製造工
程と同様に第1の上部クラッド層6まで積層したあと、
さらにp型InP層30を積層する。その後、図9
(a)に示すように、p型InP層30上に電流ブロッ
ク層9形成予定領域に開口部を有するSiNxマスクパ
ターン29を形成してp型InP層30をエッチングす
る。これにより、図9(b)に示すようにp型InP層
30はメサ形状に加工され、第2の上部クラッド層8が
形成される。
【0089】その後、第1の上部クラッド層6上に電流
ブロック層を積層し、残存するSiNxマスクパターン
29を除去することで、図9(c)に示すような構造を
得る。その後、順次第3の上部クラッド層10、コンタ
クト層11、p側電極12、n側電極13を形成するこ
とで実施の形態1にかかる半導体レーザ装置が得られ
る。
【0090】図7および図8で示した製造工程と、図9
で示した製造工程について、本実施の形態1においては
いずれを採用しても製造することが可能である。ただ
し、後述するように回折格子の配置を変更した構造の場
合には、それぞれの構造に適した製造工程を選択するこ
とが好ましい。たとえば、図10に示す半導体レーザ装
置の場合、図9で示した製造工程を用いることがより好
ましい。図10に示す半導体レーザ装置では、回折格子
31が第2の上部クラッド層8内に配置された構造を有
する。したがって、あらかじめ第2の上部クラッド層8
の水平方向の幅よりも広めに回折格子31を形成してお
き、その後第2の上部クラッド層8を形成する際に余剰
部分を併せて除去することで、フォトリソグラフィの精
度の良否にかかわらず、回折格子31の位置を正確に制
御することが可能となる。
【0091】この他にも、イオン注入によって電流ブロ
ック層9を形成する方法がある。この場合、電流ブロッ
ク層9の不純物濃度を水平方向に変化させることで、水
平方向に弱い光閉じ込めをおこなうのに適した屈折率分
布を水平方向に与えることができる。不純物をイオン注
入によってドープした場合、たとえばマスキングパター
ンを変えて数回イオン注入して、水平方向に不純物濃度
を容易に変化させることができるためである。これによ
り、たとえば、電流ブロック層9内において、第2の上
部クラッド層8との境界近傍では第2の上部クラッド層
8と同じ不純物濃度にして、光出射方向側面近傍に不純
物を高い濃度でドープして低屈折率領域を設けることも
可能である。また、端部に近づくにしたがって、不純物
濃度が連続的に高くなる構造とすることも可能である。
【0092】また、イオン注入を用いた場合、エッチン
グ工程を省略することができること、コンタクト層11
まで真空雰囲気中で連続成長させることが可能であるこ
とから、製造工程を簡略化することができる。同時に、
各層を積層する途上において、結晶表面が大気中にさら
されることを極力抑制することが可能となり、不純物が
付着することを防止でき、良質の結晶を得ることができ
る。
【0093】以上、本実施の形態1にかかる半導体レー
ザ装置について説明したが、本発明は必ずしも上記のよ
うな構造に限定されず、電流ブロック層9を他の材料で
形成することで上記した効果を得ることが可能である。
たとえば、電流ブロック層9をn型の導電型を有するG
xIn1-xAsy1-y(0<x≦1、0<y≦1)によ
って形成することが可能である。
【0094】さらに、電流ブロック層9を半導体絶縁層
によって形成してもよい。この場合、InPに不純物と
して鉄をドープすることによって電流ブロック層9を形
成することができる。また、AlInAsなどAlを含
む材料を選択酸化することにより形成したAlOxで電
流ブロック層9を形成することもできる。
【0095】また、電流ブロック層を配置する領域とし
て、上部クラッド層中ではなく、量子井戸層4よりも下
部に配置された下部クラッド層2中としても良い。さら
に、上部クラッド層中と下部クラッド層2中双方に電流
ブロック層を設ける構造としても良い。このような構造
とした場合であっても、水平方向の光閉じ込めを制御す
ることが可能であり、高出力の半導体レーザ装置を実現
することが可能である。
【0096】また、本実施の形態1にかかる半導体レー
ザ装置を構成する各層の導電型を逆にしても良い。すな
わち、基板1、下部クラッド層2、電流ブロック層9を
p型とし、第1の上部クラッド層6、第2の上部クラッ
ド層8、第3の上部クラッド層10、コンタクト層11
をn型の半導体材料からなるものとしても良い。
【0097】また、第2の上部クラッド層8を配置する
位置について、必ずしも中央付近に配置する必要はな
い。第2の上部クラッド層8を中央から移動した領域に
配置しても水平方向の光閉じ込めが弱い半導体レーザ装
置を実現することは可能である。ただし、出射光の対称
性の観点からは、第2の上部クラッド層8を中央に配置
し、中心に対して対称な位置に電流ブロック層9が配置
されることが望ましい。
【0098】さらに、第1の上部クラッド層6、第2の
上部クラッド層8、第3の上部クラッド層10の出射波
長に対する屈折率を、互いに異なる構造としても良い。
たとえば、層方向の光閉じ込めの程度を制御するため
に、第1の上部クラッド層6、第2の上部クラッド層
8、第3の上部クラッド層10の順に屈折率が低くなる
よう各クラッド層を構成する材料を選択しても良い。こ
のように各クラッド層の屈折率を変化させた場合でも、
水平方向の光閉じ込めを電流ブロック層9によって制御
することが可能である。
【0099】さらに、回折格子7について、図2で示す
ように、低反射膜15の近傍に配置することが望ましい
が、これ以外にも、高反射膜16近傍に回折格子7を配
置する構造としても良い。また、光出射方向に関して、
回折格子7を全面に配置した構造としても良い。レーザ
発振時に光が分布する領域であれば、低反射膜15およ
び高反射膜16の反射率等を最適化することで複数の発
振縦モードを有する光を選択することが可能である。ま
た、光出射方向に回折格子7を移動して配置しても、図
3に示す第2領域19、20に関しては実効屈折率が変
化することがないため、水平方向の光閉じ込めに影響を
与えることもない。
【0100】また、回折格子7について、図1で示した
位置から、層方向に関して異なる位置に配置することも
可能である。具体的には、図10に示すように、第2の
上部クラッド層8の内部に回折格子31を配置する構造
としても良いし、図11に示すように、第3の上部クラ
ッド層10内に回折格子32を配置しても良い。さら
に、量子井戸層4に対して上部に配置するのではなく、
図12に示すように量子井戸層4の下部に位置する下部
クラッド層2中に回折格子33を配置する構造としても
良い。図10〜図12のいずれの場合であっても、レー
ザ光出射時に光が分布する領域に回折格子が配置される
のであれば、複数の発振縦モードを有する光を選択する
ことが可能である。
【0101】さらに、回折格子7について、部分的に設
けるのではなく、図13に示すように、水平方向に関し
て全面に渡って回折格子34を配置する構造としても良
い。この場合、半導体レーザ装置を製造するにあたって
は、回折格子形成に要する時間を短縮化するため、EB
露光法ではなく、二光束干渉露光法等を用いることが好
ましい。
【0102】(実施の形態2)次に、実施の形態2にか
かる半導体レーザ装置について説明する。図14は、実
施の形態2にかかる半導体レーザ装置の構造を示す正面
図であり、図15は、図14のB−B線における断面図
である。実施の形態2にかかる半導体レーザ装置は、回
折格子が、図3でいう第2領域19、20、すなわちレ
ーザ光出射時において弱い光が分布する領域に配置され
た構造を有する。
【0103】実施の形態2にかかる半導体レーザ装置
は、基板1上に順次下部クラッド層2、下部SCH層
3、量子井戸層4、上部SCH層5、第1の上部クラッ
ド層6を積層した構造を有する。第1の上部クラッド層
6上の一部領域上には、レーザ光出射方向に長手方向を
有するストライプ形状であって電流通過層として機能す
る第2の上部クラッド層8が積層され、第1の上部クラ
ッド層6上であって、第2の上部クラッド層8が積層さ
れていない領域には、電流ブロック層9a、9bが積層
されている。第2の上部クラッド層8および電流ブロッ
ク層9a、9bの上には順次第3の上部クラッド層1
0、コンタクト層11が積層され、コンタクト層11上
にはp側電極12が配置されている。また、基板1裏面
にはn側電極13が配置されている。そして、第1の上
部クラッド層6内部であって、電流ブロック層9a下に
は回折格子37aが、電流ブロック層9b下には回折格
子37bが配置されている。
【0104】なお、回折格子37a、37bは、層方向
の中心軸に対して、互いに対称の位置に配置され、回折
格子長、水平方向の幅が互いに同一であることが好まし
い。水平方向の光閉じ込めを電流ブロック層9a、9b
によって制御する場合、半導体レーザ装置が水平方向の
中心軸に対して対称の構造となることが望ましいためで
ある。
【0105】図15は、この発明の実施の形態2である
半導体レーザ装置の概要構成を示す長手方向の側面断面
図である。この半導体レーザ装置では、グレーティング
周期を周期的に変化させたチャープドグレーティングで
ある回折格子37a、37bを有している。なお、実施
の形態1と同一または類似の構成部分には、同一または
類似の符号を付している。
【0106】図17は、回折格子37aのグレーティン
グ周期の周期的変化を示す図である。図17に示すよう
に、この回折格子37aは、平均周期が220nmであ
り、±0.02nmの周期揺らぎ(偏差)を周期Cで繰
り返す構造を有している。この±0.02nmの周期揺
らぎによって回折格子37aの反射帯域は、約2nmの
半値幅を有し、これによって、図16に示すように、発
振波長スペクトルの半値幅Δλh内に3〜6本程度の発
振縦モードを持たせることができる。
【0107】また、上述した実施の形態2では、一定の
周期Cでグレーティング周期を変化させるチャープドグ
レーティングとしたが、これに限らず、グレーティング
周期を、周期Λ1(220nm+0.02nm)と周期
Λ2(220nm−0.02nm)との間で、ランダム
に変化させるようにしてもよい。
【0108】さらに、図18(a)に示すように、周期
Λ1と周期Λ2とを1回ずつ交互に繰り返す回折格子とし
て、周期揺らぎを持たせるようにしてもよい。また、図
18(b)に示すように、周期Λ3と周期Λ4とをそれぞ
れ複数回、交互に繰り返す回折格子として、周期揺らぎ
を持たせるようにしてもよい。さらに、図18(c)に
示すように、連続する複数回の周期Λ5と連続する複数
回の周期Λ6とをもつ回折格子として、周期揺らぎを持
たせるようにしてもよい。また、周期Λ1、Λ3、Λ5
周期Λ2、Λ4、Λ6との間の離散的な異なる値をもつ周
期をそれぞれ補完して配置するようにしてもよい。
【0109】この実施の形態2では、半導体レーザ装置
に設けられる回折格子をチャープドグレーティングなど
によって、平均周期に対して±0.01〜0.2nm程
度の周期揺らぎを持たせ、これによって、反射帯域の半
値幅を所望の値に設定し、最終的に発振波長スペクトル
の半値幅Δλhを決定し、半値幅Δλh内に複数の発振
縦モードが含まれるレーザ光を出力するようにし、実施
の形態1あるいは実施の形態2と同様な作用効果をもっ
た半導体レーザ装置を実現することができる。
【0110】実施の形態2において、回折格子37a、
37bを上記の構造とする利点について説明する。既に
述べたように、実施の形態2においては回折格子37
a、37bがそれぞれ電流ブロック層9a、電流ブロッ
ク層9bの下に配置された構造を有する。このため、回
折格子37a、37bが配置された領域においては弱い
光が分布している。一般に、結合係数κの値は分布する
光に依存するため、弱い光が分布する領域において、結
合係数κは小さな値となる。一方、回折格子37a、3
7bによって所望の発振縦モードを選択するためには、
結合係数κと回折格子長Lgとの積κ・Lgは一定以上
の値を有する必要がある。そこで、実施の形態2におい
ては、結合係数κの減少を補うため必然的に回折格子長
Lgの値は大きくなる。
【0111】しかし、回折格子長Lgが増大するにした
がって、別種の問題が生じる。すなわち、発振波長スペ
クトルの半値幅Δλhは、回折格子長Lgが増大するに
つれ狭くなるため、発振縦モードの本数が減少する。そ
こで、回折格子37a、37bについてその周期を周期
的に変化させたり、ランダムに変化させたりすることに
よって半値幅Δλhを拡大させ、十分な半値幅Δλhを
確保し、発振縦モードの本数を確保している。
【0112】なお、回折格子37a、37bが第2領域
に配置されたことで、水平方向の光閉じ込めに影響を与
えるのではないかとの懸念もあるが、これは回折格子3
7a、37bの存在を前提として電流ブロック層9a、
9bの構造を決定すれば問題はない。したがって、本実
施の形態2においても、電流ブロック層9a、9bの存
在により実施の形態1の場合と同様に、水平方向の光閉
じ込めを制御することができ、高出力、高信頼性の半導
体レーザ装置を実現することが可能である。
【0113】回折格子37a、37bを配置する領域に
ついては、図14に示す領域のみならず、図19に示す
ように電流ブロック層9a、9bに接触する位置として
も良いし、図20に示すように電流ブロック層9a、9
b内部の領域でも良い。本実施の形態2にかかる半導体
レーザ装置は水平方向の光閉じ込めが弱いため、図1
9、図20に示すような領域であっても十分波長選択が
可能な程度のκ・Lgを確保することが可能なためであ
る。また、図示は省略したが、下部クラッド層2内部で
あって第2領域内部に回折格子を配置しても良い。さら
に、第1領域18と第2領域19、20との境界付近の
みでなく、離隔した領域であってもκ・Lgの値が確保
できるならば回折格子を配置することが可能である。
【0114】なお、実施の形態1にかかる半導体レーザ
装置についても、図17および図18で示した構造の回
折格子を適用することが可能である。特に、層方向の光
分布は主として下部SCH層3および上部SCH層5に
よって決定されるため、これらの構造によっては層方向
の光閉じ込めの強度が大きく、第1領域18内部であっ
ても弱い光が分布する領域が存在する場合がある。この
ような場合には、図17および図18に示す構造の回折
格子を用いることで、大きな回折格子長Lgを有するに
も関わらず、十分な半値幅Δλhを有し、十分な本数の
発振縦モードを有する半導体レーザ装置を実現すること
ができる。
【0115】(実施の形態3)次に、実施の形態3にか
かる半導体レーザモジュールについて説明する。本実施
の形態3では、実施の形態1または実施の形態2にかか
る半導体レーザ装置を用いて半導体レーザモジュールを
構成している。
【0116】図21は、この発明の実施の形態3である
半導体レーザモジュールの構成を示す側面断面図であ
る。本実施の形態3にかかる半導体レーザモジュール
は、上述した実施の形態1または実施の形態2で示した
半導体レーザ装置に対応する半導体レーザ装置52を有
する。なお、この半導体レーザ装置52は、基板と反対
側がレーザマウント48に接合されるジャンクションダ
ウン構成としている。半導体レーザモジュールの筐体と
して、セラミックなどによって形成されたパッケージ5
1の内部底面上に、温度制御装置としての温調モジュー
ル50が配置される。温調モジュール50上にはベース
47が配置され、このベース47上にはレーザマウント
48が配置される。温調モジュール50には、図示しな
い電流が与えられ、その極性によって冷却および加熱を
おこなうが、主として冷却器として機能する。温度制御
は、具体的に、レーザマウント48上であって、半導体
レーザ装置52近傍に配置されたサーミスタ49の検出
値を基に制御され、図示しない制御装置は、通常、レー
ザマウント48の温度が一定に保たれるように温調モジ
ュール50を制御する。
【0117】実施の形態1または2にかかる半導体レー
ザ装置では、回折格子により発振波長を選択しており、
駆動電流による発振波長の変動が、回折格子のないファ
ブリペロー(FP)レーザに比べて非常に小さい。しか
し、それでも駆動電流が上昇するにしたがって、発光領
域の温度が上昇し、発振波長が長波化する。そのような
半導体レーザ装置52の温度による発振波長ずれを防止
するように温調モジュール50を制御することもでき
る。すなわち、温調モジュール50は、レーザ光が所望
の波長に比して長い波長である場合には、冷却して低い
温度に制御し、レーザ光が所望の波長に比して短い波長
である場合には、加熱して高い温度に制御する。本発明
では、波長ずれ補正のために温調モジュールに与える電
流が、FPレーザに比べて小さくてすみ、消費電力の削
減につながり好適である。
【0118】このような温度制御をおこなうことによっ
て、半導体レーザ装置52の出力安定性を向上させるこ
とができ、歩留まりの向上にも有効となる。なお、レー
ザマウント48は、たとえばダイヤモンドなどの高熱伝
導率をもつ材質によって形成することが望ましい。これ
は、レーザマウント48がダイヤモンドで形成される
と、高電流印加時の発熱が抑制されるからである。
【0119】ベース47上には、半導体レーザ装置52
およびサーミスタ49を配置したレーザマウント48、
第1レンズ53、および光検出器46が配置される。半
導体レーザ装置52から出射されたレーザ光は、第1レ
ンズ53、アイソレータ54、および第2レンズ44を
介し、光ファイバ45上に導波される。第2レンズ44
は、レーザ光の光軸上であって、パッケージ51上に設
けられ、外部接続される光ファイバ45に光結合され
る。なお、光検出器46は、半導体レーザ装置52の高
反射膜側から漏れた光をモニタ検出する。光結合系は図
21に示されたような2つのレンズを用いた方式でも良
いし、ファイバの先端をレンズ加工したものを用いるこ
ともできる。
【0120】ここで、この半導体レーザモジュールで
は、他の光学部品などによる反射戻り光が共振器内に戻
らないように、半導体レーザ装置52と光ファイバ45
との間にアイソレータ54を介在させている。
【0121】(実施の形態4)次に、実施の形態4にか
かる光ファイバ増幅器について説明する。この実施の形
態4では、上述した実施の形態3に示した半導体レーザ
モジュールをラマン増幅器に適用したものである。
【0122】図22は、この発明の実施の形態4である
ラマン増幅器の構成を示すブロック図である。このラマ
ン増幅器は、WDM通信システムに用いられる。図22
において、このラマン増幅器は、上述した実施の形態3
に示した半導体レーザモジュールと同一構成の半導体レ
ーザモジュール60a〜60dを用いた構成となってい
る。
【0123】各半導体レーザモジュール60a、60b
は、偏波面保持ファイバ71を介して、複数の発振縦モ
ードを有するレーザ光を偏波合成カプラ61aに出力
し、各半導体レーザモジュール60c、60dは、偏波
面保持ファイバ71を介して、複数の発振縦モードを有
するレーザ光を偏波合成カプラ61bに出力する。ここ
で、半導体レーザモジュール60a、60bが発振する
レーザ光は、同一波長である。また、半導体レーザモジ
ュール60c、60dが発振するレーザ光は、同一波長
であるが半導体レーザモジュール60a、60bが発振
するレーザ光の波長とは異なる。これは、ラマン増幅が
偏波依存性を有するためであり、偏波合成カプラ61
a、61bによって偏波依存性が解消されたレーザ光と
して出力するようにしている。
【0124】各偏波合成カプラ61a、61bから出力
された、異なる波長をもったレーザ光は、WDMカプラ
62によって合成され、合成されたレーザ光は、WDM
カプラ65を介してラマン増幅用の励起光として増幅用
ファイバ64に出力される。この励起光が入力された増
幅用ファイバ64には、増幅対象の信号光が入力され、
ラマン増幅される。
【0125】増幅用ファイバ64内においてラマン増幅
された信号光(増幅信号光)は、WDMカプラ65およ
びアイソレータ66を介してモニタ光分配用カプラ67
に入力される。モニタ光分配用カプラ67は、増幅信号
光の一部を制御回路68に出力し、残りの増幅信号光を
出力レーザ光として信号光出力ファイバ70に出力す
る。
【0126】制御回路68は、入力された一部の増幅信
号光をもとに各半導体レーザモジュール60a〜60d
のレーザ出力状態、たとえば光強度を制御し、ラマン増
幅の利得帯域が平坦な特性となるようにフィードバック
制御する。
【0127】この実施の形態4に示したラマン増幅器で
は、実施の形態1または実施の形態2で示した半導体レ
ーザ装置が内蔵された半導体レーザモジュール60aを
用いるようにしているので、半導体レーザモジュールか
ら出射されるレーザ光の強度を高めることができる。ま
た、半導体レーザ装置とファイバグレーティングとが偏
波面保持ファイバで結合された半導体レーザモジュール
を用いず、実施の形態1、2で示した半導体レーザ装置
が内蔵された半導体レーザモジュール60aを用いるよ
うにしているので、偏波面保持ファイバ71の使用を削
減することができる。すなわち、各半導体レーザモジュ
ール60a〜60dは、複数の発振縦モードを有してい
るため、偏波面保持ファイバ長を短くすることができ
る。この結果、ラマン増幅器の小型軽量化とコスト低減
を実現することができる。
【0128】なお、図22に示したラマン増幅器では、
偏波合成カプラ61a、61bを用いているが、図23
に示すように半導体レーザモジュール60a、60cか
ら、それぞれ偏波面保持ファイバ71を介して直接WD
Mカプラ62に光出力するようにしてもよい。この場
合、半導体レーザモジュール60a、60cの偏波面
は、偏波面保持ファイバ71に対して45度となるよう
に入射する。これによって、偏波面保持ファイバ71か
ら出力される光出力の偏波依存性がなくすことができ、
一層、小型かつ部品点数の少ないラマン増幅器を実現す
ることができる。
【0129】さらに、発振縦モードの本数が増大する
と、コヒーレント長が短くなり、デポラライズによって
偏光度(DOP:Degree Of Polarization)が小さくな
り、偏波依存性をなくすことが可能となるため、これに
よっても、ラマン増幅器の簡素化と小型化とを一層促進
することができる。
【0130】また、上述した実施の形態1、2の半導体
レーザ装置では、回折格子によって波長選択をおこなう
ためファイバグレーティングを必要とせず、ファイバグ
レーティングを用いた半導体レーザモジュールに比して
相対強度雑音(RIN)を低減することができるので、
ラマン利得の揺らぎを抑えることができ、安定したラマ
ン増幅を行うことができる。
【0131】さらに、上述した実施の形態1,2の半導
体レーザ装置では、複数の発振モードを有しているた
め、誘導ブリルアン散乱を発生させずに、高出力の励起
光を発生することができるので、安定し、かつ高いラマ
ン利得を得ることができる。
【0132】また、図22および図23に示したラマン
増幅器は、後方励起方式であるが、上述したように、半
導体レーザモジュール60a〜60dが安定した励起光
を出力するため、前方励起方式であっても、双方向励起
方式であっても、安定したラマン増幅をおこなうことが
できる。
【0133】たとえば、図24は、前方励起方式を採用
したラマン増幅器の構成を示すブロック図である。図2
4に示したラマン増幅器は、図22に示したラマン増幅
器にWDMカプラ65’をアイソレータ63の近傍に設
けている。このWDMカプラ65’には、半導体レーザ
モジュール60a〜60d、偏波合成カプラ61a、6
1bおよびWDMカプラ62にそれぞれ対応した半導体
レーザモジュール60a’〜60d’、偏波合成カプラ
61a’、61b’およびWDMカプラ62’を有した
回路が接続され、WDMカプラ62’から出力される励
起光を信号光と同じ方向に出力する前方励起をおこな
う。
【0134】同様に、図25は、前方励起方式を採用し
たラマン増幅器の構成を示すブロック図である。図25
に示したラマン増幅器は、図23に示したラマン増幅器
にWDMカプラ65’をアイソレータ63の近傍に設け
ている。このWDMカプラ65’には、半導体レーザモ
ジュール60a、60cおよびWDMカプラ62にそれ
ぞれ対応した半導体レーザモジュール60a’、60
c’およびWDMカプラ62’を有した回路が接続さ
れ、WDMカプラ62’から出力される励起光を信号光
と同じ方向に出力する前方励起をおこなう。
【0135】また、図26は、双方向励起方式を採用し
たラマン増幅器の構成を示すブロック図である。図26
に示したラマン増幅器は、図22に示したラマン増幅器
の構成に、図24に示したWDMカプラ65’、半導体
レーザモジュール60a’〜60d’、偏波合成カプラ
61a’、61b’およびWDMカプラ62’をさらに
設け、後方励起と前方励起とをおこなう。
【0136】同様に、図27は、双方向励起方式を採用
したラマン増幅器の構成を示すブロック図である。図2
7に示したラマン増幅器は、図23に示したラマン増幅
器の構成に、図25に示したWDMカプラ65’、半導
体レーザモジュール60a’、60c’およびWDMカ
プラ62’をさらに設け、後方励起と前方励起とをおこ
なう。
【0137】上述した図22〜図27に示したラマン増
幅器は、上述したようにWDM通信システムに適用する
ことができる。図28は、図22〜図27に示したラマ
ン増幅器を適用したWDM通信システムの概要構成を示
すブロック図である。
【0138】図28において、複数の送信機Tx1〜T
xnから送出された波長λ1〜λnの光信号は、光合波器
80によって合波され、1つの光ファイバ85に集約さ
れる。この光ファイバ85の伝送路上には、図24〜図
27に示したラマン増幅器に対応した複数のラマン増幅
器81、83が距離に応じて配置され、減衰した光信号
を増幅する。この光ファイバ85上を伝送した信号は、
光分波器84によって、複数の波長λ1〜λnの光信号
に分波され、複数の受信機Rx1〜Rxnに受信され
る。なお、光ファイバ85上には、任意の波長の光信号
を付加し、取り出したりするADM(Add/Drop Multipl
exer)が挿入される場合もある。
【0139】なお、上述した実施の形態4では、実施の
形態1または実施の形態2に示した半導体レーザ装置あ
るいは実施の形態3に示した半導体レーザモジュール
を、ラマン増幅用の励起光源に用いる場合を示したが、
これに限らず、たとえば、EDFAなどの励起用光源と
して用いることができるのは明らかである。特に、励起
光のEDFまでの伝送距離が数km〜数十km以上とな
るようなEDFAにおいては、実施の形態1〜3にかか
る半導体レーザ装置を励起光源に用いることで、伝送中
の誘導ブリルアン散乱に起因した増幅利得の低下を効果
的に抑制することができる。
【0140】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1、請求項
3〜20の発明によれば、電流ブロック層が電流遮蔽機
能とともに水平方向の光分布を制御することとしたた
め、電流ブロック層によって水平方向の光閉じ込めが弱
い半導体レーザ装置を実現できる。したがって、水平方
向に光強度分布領域を拡大することができるため、高出
力化が容易であるという効果を奏する。また、層方向の
光閉じ込めとは無関係に水平方向の屈折率を制御するこ
とができるため、水平方向の光強度分布を自由に拡大す
ることができるという効果も奏する。また、素子抵抗、
熱抵抗を小さくできることにより、発光領域の温度上昇
を抑制し、低消費電力、高い信頼性の半導体レーザ装置
を実現できるという効果も奏する。
【0141】さらに、高出力の半導体レーザ装置におい
ては、COD(Catastrophic Optical Damage)の発生を
抑制することも重要である。そのためには、半導体レー
ザ装置内部における光密度を低減することが望ましい。
あまりにも強く光を閉じ込めた場合、一部に光が集中す
ることで光が集中した領域における光密度が所定の値を
超えることによって、CODが発生するおそれがあるた
めである。請求項1、請求項3〜20の発明によれば、
水平方向の光閉じ込めが弱い半導体レーザ装置を実現で
きるため、発光領域における光密度を低くすることがで
き、CODの発生を抑制することができる。CODの発
生を抑制することで、高出力、高信頼性の半導体レーザ
装置を実現できるという効果を奏する。また、回折格子
によって波長選択をおこなうこととしたため、ファイバ
グレーティングによって波長選択をおこなう場合に比し
てRINを低減することができるという効果も奏する。
【0142】また、請求項2の発明によれば、回折格子
が複数の発振縦モードを選択することとしたため、複数
の発振縦モードを有するレーザ光を出射することができ
る。このため、出射光を光ファイバに導波した場合に、
光ファイバ中において誘導ブリルアン散乱を生じること
を抑制し、高出力の半導体レーザ装置を実現できるとい
う効果を奏する。また、複数の発振縦モードを有するレ
ーザ光を出射することでコヒーレント長が短くなり、デ
ポラライズによってDOPを小さくし、偏波依存性をな
くすことができるという効果も奏する。
【0143】また、請求項21、22の発明によれば、
請求項1〜20にかかる半導体レーザ装置を用いている
ため、高出力、高信頼性を有し、誘導ブリルアン散乱の
発生およびRINを抑制し、DOPの低減が可能な半導
体レーザモジュールを実現できるという効果を奏する。
【0144】また、請求項23〜25の発明によれば、
上記の半導体レーザ装置または半導体レーザモジュール
を使用することで高出力の励起光源を有し、増幅利得が
安定し、高利得であって誘導ブリルアン散乱の発生およ
びRINを抑制し、DOPの低減が可能な光ファイバ増
幅器を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1にかかる半導体レーザ装置の構造
を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】実施の形態1にかかる半導体レーザ装置の水平
方向の光閉じ込めを説明するための図である。
【図4】(a)は、従来の半導体レーザ装置の水平方向
の光強度分布について示すグラフ図であり、(b)は、
本実施の形態1にかかる半導体レーザ装置の水平方向の
光強度分布について示すグラフ図である。
【図5】回折格子を備えたことにより実施の形態1にか
かる半導体レーザ装置から出射されるレーザ光の波形を
示す模式的なグラフである。
【図6】(a)は、従来の単一発振縦モードを有する半
導体レーザ装置から出射されるレーザ光の波形を示す模
式的なグラフであり、(b)は、本実施の形態1にかか
る半導体レーザ装置から出射されるレーザ光の波形を示
す模式的なグラフである。
【図7】(a)〜(c)は、実施の形態1にかかる半導
体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は、実施の形態1にかかる半導
体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図9】(a)〜(c)は、実施の形態1にかかる半導
体レーザ装置の別の製造方法について、一部の工程を示
す図である。
【図10】実施の形態1の変形例にかかる半導体レーザ
装置の構造を示す正面図である。
【図11】実施の形態1の別の変形例にかかる半導体レ
ーザ装置の構造を示す正面図である。
【図12】実施の形態1の別の変形例にかかる半導体レ
ーザ装置の構造を示す正面図である。
【図13】実施の形態1の別の変形例にかかる半導体レ
ーザ装置の構造を示す正面図である。
【図14】実施の形態2にかかる半導体レーザ装置の構
造を示す正面図である。
【図15】図14のB−B線における断面図である。
【図16】実施の形態2にかかる半導体レーザ装置から
出射されるレーザ光の波形を示す模式的なグラフであ
る。
【図17】実施の形態2における回折格子の構造を示す
模式図である。
【図18】実施の形態2における回折格子の構造の変形
例を示す模式図である。
【図19】実施の形態2の変形例にかかる半導体レーザ
装置の構造を示す正面図である。
【図20】実施の形態2の別の変形例にかかる半導体レ
ーザ装置の構造を示す正面図である。
【図21】実施の形態3にかかる半導体レーザモジュー
ルの構造を示す側面断面図である。
【図22】実施の形態4にかかる光ファイバ増幅器の構
成を示すブロック図である。
【図23】実施の形態4にかかる光ファイバ増幅器の応
用例を示すブロック図である。
【図24】実施の形態4にかかる光ファイバ増幅器の変
形例であって、前方励起方式を採用した光ファイバ増幅
器の構成を示すブロック図である。
【図25】図24に示した光ファイバ増幅器の応用例を
示すブロック図である。
【図26】実施の形態4にかかる光ファイバ増幅器の変
形例であって、双方向励起方式を採用した光ファイバ増
幅器の構成を示すブロック図である。
【図27】図26に示した光ファイバ増幅器の応用例を
示すブロック図である。
【図28】実施の形態4にかかる光ファイバ増幅器を用
いたWDM通信システムの概要構成を示すブロック図で
ある。
【符号の説明】
1 基板 2 下部クラッド層 3 下部SCH層 4 量子井戸層 5 上部SCH層 6 第1の上部クラッド層 7 回折格子 8 第2の上部クラッド層 9、9a、9b 電流ブロック層 10 第3の上部クラッド層 11 コンタクト層 12 p側電極 13 n側電極 14 エッチングストップ層 15 低反射膜 16 高反射膜 17 発振縦モード 18 第1領域 19、20 第2領域 21 発振波長スペクトル 22〜24 発振縦モード 25 p型GaInAsP層 26 マスクパターン 27 n型InP層 28、29 SiNxマスクパターン 30 p型InP層 31、32、33、34、37a、37b、39a、3
9b、40a、40b回折格子 44 第2レンズ 45 光ファイバ 46 光検出器 47 ベース 48 レーザマウント 49 サーミスタ 50 温調モジュール 51 パッケージ 52 半導体レーザ装置 53 第1レンズ 54 アイソレータ 60a〜60d 半導体レーザモジュール 61a、61b 偏波合成カプラ 62 カプラ 63 アイソレータ 64 増幅用ファイバ 65 WDMカプラ 66 アイソレータ 67 モニタ光分配用カプラ 68 制御回路 70 信号光出力ファイバ 71 偏波面保持ファイバ 80 光合波器 81 ラマン増幅器 84 光分波器 85 光ファイバ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H04B 10/17 10/28 (72)発明者 吉田 順自 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河電気工業株式会社内 Fターム(参考) 2H037 AA01 BA03 CA13 DA03 DA04 DA05 DA06 DA15 DA36 DA38 5F072 AB07 AB09 AK06 KK30 PP07 QQ07 YY17 5F073 AA46 AA64 AA65 AA73 AA74 AB06 AB27 AB28 BA03 CB02 DA05 DA22 EA01 EA28 FA02 FA25 GA12 5K102 AA56 AD01 MA03 MB06 MC17 MD01 MH04 MH12 MH22 PB01 PB17 PC03 PH14

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体基板上に積層された下部クラッド
    層および上部クラッド層と、該二つのクラッド層間に積
    層された活性層とを備えた半導体レーザ装置であって、 発振縦モードを選択する回折格子と、 前記下部クラッド層および前記上部クラッド層の少なく
    とも一方の内部領域に配置され、電流を遮蔽する電流ブ
    ロック層と、 該電流ブロック層に隣接して配置され、前記レーザ光の
    出射方向にストライプ形状を有し、電流を通過させる電
    流通過層と、 を備え、前記電流ブロック層によって水平方向の光分布
    を制御することを特徴とする半導体レーザ装置。
  2. 【請求項2】 前記回折格子は、複数の発振縦モードを
    選択することを特徴とする請求項1に記載の半導体レー
    ザ装置。
  3. 【請求項3】 レーザ発振時における出射レーザ光が1
    200nm以上、1600nm以下の波長を有すること
    を特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ装
    置。
  4. 【請求項4】 光出射方向の長さが800μm以上、3
    200μm以下であることを特徴とする請求項1〜3の
    いずれか一つに記載の半導体レーザ装置。
  5. 【請求項5】 レーザ発振時における光出力強度が80
    mW以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれ
    か一つに記載の半導体レーザ装置。
  6. 【請求項6】 前記半導体基板がInP基板であり、前
    記電流ブロック層がGaxIn1-xAsy1-y(0<x≦
    1、0<y≦1)を含むことを特徴とする請求項1〜5
    のいずれか一つに記載の半導体レーザ装置。
  7. 【請求項7】 前記半導体基板がInP基板であり、前
    記電流ブロック層がInPを含むことを特徴とする請求
    項1〜6のいずれか一つに記載の半導体レーザ装置。
  8. 【請求項8】 前記電流通過層を含む領域の実効屈折率
    と前記電流ブロック層を含む領域の実効屈折率の差分値
    は、8×10-3以下であることを特徴とする請求項1〜
    7のいずれか一つに記載の半導体レーザ装置。
  9. 【請求項9】 前記電流ブロック層は、前記電流通過層
    の導電型と異なる導電型の半導体層を含むことを特徴と
    する請求項1〜8のいずれか一つに記載の半導体レーザ
    装置。
  10. 【請求項10】 前記電流ブロック層は、前記電流通過
    層の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有することを特
    徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の半導体レ
    ーザ装置。
  11. 【請求項11】 前記電流ブロック層の不純物濃度は、
    1.5×1018cm -3以上、9×1018cm-3以下であ
    ることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記
    載の半導体レーザ装置。
  12. 【請求項12】 前記電流ブロック層に含まれる半導体
    材料は、出射されるレーザ光のエネルギーよりも大きな
    禁制帯幅を有することを特徴とする請求項1〜11のい
    ずれか一つに記載の半導体レーザ装置。
  13. 【請求項13】 前記電流ブロック層は、レーザ光出射
    方向側面近傍における屈折率が前記第2のクラッド層近
    傍における屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1
    〜12のいずれか一つに記載の半導体レーザ装置。
  14. 【請求項14】 前記電流ブロック層は、半導体絶縁層
    を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つ
    に記載の半導体レーザ装置。
  15. 【請求項15】 前記回折格子は、回折格子長が300
    μm以下であることを特徴とする請求項1〜14のいず
    れか一つに記載の半導体レーザ装置。
  16. 【請求項16】 前記回折格子の回折格子長は、前記共
    振器長の(300/1300)倍の値以下であることを
    特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の半導
    体レーザ装置。
  17. 【請求項17】 前記回折格子の結合係数と回折格子長
    との乗算値が0.3以下であることを特徴とする請求項
    1〜16のいずれか一つに記載の半導体レーザ装置。
  18. 【請求項18】 前記回折格子は、グレーティング周期
    に所定の周期揺らぎを持たせたことを特徴とする請求項
    1〜17のいずれか一つに記載の半導体レーザ装置。
  19. 【請求項19】 前記回折格子は、前記グレーティング
    周期をランダムあるいは所定周期で変化させたことを特
    徴とする請求項18に記載の半導体レーザ装置。
  20. 【請求項20】 前記回折格子は、前記電流ブロック層
    の上部領域、下部領域若しくは前記電流ブロック層内部
    に配置されたことを特徴とする請求項1〜19のいずれ
    か一つに記載の半導体レーザ装置。
  21. 【請求項21】 請求項1〜20のいずれか一つに記載
    の半導体レーザ装置と、 前記半導体レーザ装置から出射されたレーザ光を外部に
    導波する光ファイバと、 前記半導体レーザ装置と前記光ファイバとを光結合する
    光結合レンズ系と、 少なくとも前記半導体レーザ装置と前記光結合レンズ系
    とを収納するパッケージと、 を備えたことを特徴とする半導体レーザモジュール。
  22. 【請求項22】 前記半導体レーザ装置の光出力を測定
    する光検出器と、 該半導体レーザ装置の温度を制御する温調モジュール
    と、 アイソレータと、 をさらに備えたことを特徴とする請求項21に記載の半
    導体レーザモジュール。
  23. 【請求項23】 請求項1〜20のいずれか一つに記載
    の半導体レーザ装置若しくは請求項21または22に記
    載の半導体レーザモジュールを備えた励起光源と、 信号光を伝送する光ファイバと、 該光ファイバと接続された増幅用光ファイバと、 前記励起光源から出射される励起光を増幅用光ファイバ
    に入射させるためのカプラと、 を備えたことを特徴とする光ファイバ増幅器。
  24. 【請求項24】 前記増幅用光ファイバは、ラマン増幅
    により光を増幅することを特徴とする請求項23に記載
    の光ファイバ増幅器。
  25. 【請求項25】 前記増幅用光ファイバは、エルビウム
    添加光ファイバであって、前記励起光源と前記増幅用光
    ファイバとは遠隔に配置されることを特徴とする請求項
    23に記載の光ファイバ増幅器。
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JP2010199219A (ja) * 2009-02-24 2010-09-09 Hamamatsu Photonics Kk 分布帰還型半導体レーザ及びその製造方法

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