JP2003248202A - 黄変色覚補正用眼鏡 - Google Patents
黄変色覚補正用眼鏡Info
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Abstract
黄色に変化した透光体による色覚変化を元の色覚に補正
する方法と、該色覚変化を矯正してより自然な色覚に補
正する眼鏡レンズのマルチコーティングおよび黄変色覚
補正用鏡眼に関し、色覚上の誤認を減らし、黄変色覚変
調を矯正するための眼鏡を開発することを目的とする。 【解決手段】 眼球の透光体が黄色に変色する黄変に対
して色覚補正する黄変色覚補正用眼鏡において、眼鏡レ
ンズ表面に、前記黄変を補償するスペクトル反射率を備
えた多重薄膜干渉コーティング膜を備えたことを特徴と
する黄変色覚補正用眼鏡である。
Description
化した透光体による色覚変化を元の色覚に補正する方法
と、該色覚変化を矯正してより自然な色覚に補正する眼
鏡レンズのマルチコーティングおよび黄変色覚補正用鏡
眼に関する。 【0002】 【従来の技術】人間の目は年を重ねるごとに濁りが生じ
る。カメラのレンズに相当する水晶体が白く濁る場合を
白内障という。本来は透明な水晶体が濁ると、光が眼底
に届く前に散乱され、網膜に像を結ぶ働きが弱り、かす
んで見えたりする。視力の衰えと思っていたものが、実
は白内障が視力に影響している場合も少なくない。最近
は眼鏡店でも視力検査のほかに眼球検査を行っていると
ころも増え、早期に白内障が発見されるようになってき
ている。白内障の症状が進んでいる場合には、簡単な手
術で元の視力に回復することができる。 【0003】白内障は年齢とともに進むものであるが、
同様に透光体(角膜・水晶体・硝子体のうち主に水晶
体)の黄色変化(黄変)も年齢とともに進行している。
一般に白内障ほどの自覚症状もなく、影響も大きくない
ために、日常生活では白内障ほど問題視されていない。
しかし加齢による透光体の黄変に伴い、商品表示の誤認
や物体色の認識誤認は本人にも周囲にも老化として意識
されるようになってきてはいる。透光体の黄変による弊
害としては、商品の価格表示が読みにくくなったり、類
似した色の商品が低照度下で誤認されるなどの症状が挙
げられる。 【0004】CIE(国際照明委員会)のRGB表色系
では、原色(原刺激)の波長がR700nm、G546.3nm、B
435.8nmで定められている(1nm=10億分の1メータ
ー)。ある原刺激を多く用いれば他の原刺激は少なくて
すむので、3刺激値r、g、bの和は一定となる。すな
わち、 F=rR+gG+bB(ただし、r+g+b=1) としたとき、分光組成の異なる2つの色彩刺激が等色と
判断される現象を条件等色という。したがって等色を表
すには、r、g、bの値をいろいろ取れることを意味す
る。 【0005】屈折率の違う物体を光が通過するとき、光
の反射が起きる。この反射率は素材によって異なるが、
プラスチックレンズの場合には8%(透過率は92%)
である。反射によって明るさが奪われることになるが、
眼鏡レンズにおいて92%の透過率は一応問題のない範
囲である。しかし、レンズ表面の反射像は眼鏡装用者に
は気になるものであり、これをなくすためには表面の反
射率をさらに抑える必要がある。そこでレンズ表面に干
渉薄膜コーティングが行われる。このコーティングは特
定波長の反射率を制御するので、可視光全般の反射を抑
えるためには多重薄膜干渉いわゆるマルチコーティング
がなされる。現在の技術では反射防止コートによって透
過率は99%にまで引き上げられている。 【0006】目が老化し、黄変した高齢者の視界を健常
者が擬似体験する装置として『老化視界体験装置』(特
開平10-111641)がある。この発明では、明度差の大き
な表示物と明度差の小さな表示物を接近させて並べ、そ
の両方の表示物を黄変させて見せることにより、目が老
化した際の視界の黄変を健常者に擬似体験させるという
ものである。擬似体験を目的としたものであるから、当
然ながら該公開特許では、その解決方法については述べ
られていない。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】眼球の黄変に対して、
本人が色の見にくさを訴えた場合に限り、眼鏡製作のと
きにレンズカラーのブルーでレンズを着色することによ
り青色を強調して補正することが行われている。しか
し、ブルーに着色したレンズは顔色と補色関係になり、
目立って、美観を大きく損ねるために、購買意欲を大き
く減退させる。そこで、カラーレンズの眼鏡は敬遠され
る傾向にある。 【0008】また、単純な着色では、黄変が進行してい
るような場合、透過光の減少により、明るさが不足し
て、ものが見えにくい状況が起こる場合がある。すなわ
ち、色覚は補償されるが、眼鏡によって覆われた視界の
照度低下で形状の認知が困難になってしまう。 【0009】本発明が解決しようとする課題は、色覚上
の誤認を減らすことを目的とし、黄変色覚変調を矯正す
るための眼鏡を開発することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記の発明が解決しよう
とする課題を解決するために、請求項1に記載された発
明は、眼球の透光体が黄色に変色する黄変に対して色覚
補正する黄変色覚補正用眼鏡において、眼鏡レンズ表面
に、前記黄変を補償するスペクトル反射率を備えた多重
薄膜干渉コーティング膜(マルチコーティング)を備え
たことを特徴とする黄変色覚補正用眼鏡である。 【0011】多重薄膜干渉コーティング膜(マルチコー
ティング)のスペクトル反射率は眼球の透光体の黄変の
度合いに応じて調整するが、黄変の程度によっては、補
償のために黄色光を減らすことで全体の光量が落ちすぎ
てしまう場合もある。そのような場合、黄色光の減少を
ある程度にとどめて他の色光に対する透過率を調整する
ことで、色覚をある程度補償するとともに、明度をも保
つような設計ができる。 【0012】たとえば、黄色のスペクトル感度曲線が最
大値を示す波長付近の透過率と、青色のスペクトル感度
曲線が最大値を示す波長付近の透過率をそれぞれ85%
〜95%に設定し、短波長近辺の透過率を意図的に多く
透過させる分光透過率曲線を持つ多重薄膜干渉コーティ
ング膜を備えた黄変色覚補正用眼鏡とする。 【0013】黄色および青色の波長をカット(反射)
し、眼球の透光体の黄変による黄色変調を効果的に矯正
することができる。 【0014】黄色の波長のみをカットするとその補色で
ある青色(とくに感度曲線ピークである440nm付近の
色)が強調されることになるために、青色のスペクトル
を平均化するためにピークをカットすることもできる。
さらに短波長光の分光透過率を高め、全体的に短波長光
付近の色を底上げして白色方向に近づけて、青色全体を
見やすい方向に移動させることにより、照度を落とすこ
となく、黄変に対応させることができる。 【0015】上記の方法でマルチコーティングされたレ
ンズを使用した眼鏡を用いれば、透光体の黄変に対し
て、照度を落とさず、色覚補正が行える。しかもカラー
コーティングではないから、外見からも通常の透明なレ
ンズを使用した眼鏡と同じ感覚で利用できる。また応用
範囲も広い。 【0016】 【発明の実施の形態】本発明の実施の一例を図を用いて
説明する。人間が色を感じる光を可視光といい、波長範
囲は380nm〜780nmである。可視光線は、短波長域(380n
m〜500nm:青紫、藍、青といった青色光)、中波長域
(500nm〜600nm:緑、黄といった緑色光)、長波長域
(600nm〜780nm:橙、赤といった赤色光)に分けられ、
一番長い波長が赤、一番短い波長が青紫である。図1
は、人間の波長弁別閾値を示した実験結果である。色の
弁別とは、視覚系の基本的な性質として人間がどのくら
い色の違いを見分けられるかを示すものである。たとえ
ば、車のボディーにかすり傷がついて、その部分だけを
塗装して修理する場合、修理用の塗料の色は元の色と同
じである必要はないが、明かな差があってはならない
(弁別閾値以下でなければならない)。こうした差を定
量的に測定したものが色弁別閾値である。図の(a)は
5人の被験者の結果をグラフにしたものであり、(b)
はその平均値を取ったものである。個人差はあるが、人
間の波長弁別がよい所、言い換えるなら△λ<弁別でき
る波長差限界値=閾値>が小さい所は、440nm(青)付
近、490nm(緑青〜青緑)付近、および590nm(黄)付近
である。 【0017】従来技術でも述べたように、色F(テスト
光)は F=rR+gG+bB で表される。老化により透光体が黄変するということ
は、rR+gG付近が強められ、相対的にbBの光が弱
められことを意味する。したがって、rR+gGの光を
減らし、bBを増やせば、元の色(等色)が得られるこ
とになる。 【0018】光源の分光分布をS(λ)、2つの物体の
分光反射率をρ1(λ)としたとき、2つの物体色の3
刺激値は、RGB表色系にかえて原刺激XYZ表色系を
用いると次式のようになる。 【0019】 【数1】 ・・・・・・(1) 【0020】と表せる。ここで 【0021】 【数2】 【0022】であり、Y1、Y2は反射率単位で表現され
ている。条件等色は次式の成立するときにおこる。 X1=X2 Y1=Y2 Z1=Z2 ・・・・・(2) 数式(1)と数式(2)より次の関係が成立する。 【0023】 【数3】 【0024】コーティングによって変えられる値は反射
率ρ(λ)であり、ある特定の波長の反射率(=1−透
過率)を変化させることによって等色が得られることを
意味している。本発明では、マルチコーティングによっ
て特定な光の反射率を調整し、黄変した透光体による色
覚変化を補正する。具体的には黄色の波長をカットし、
短波長光を多く入光させる。 【0025】老化により黄変した透光体では短波長光が
弱められていることから、短波長光を多く入光させる。
人の目に見える色は、対象物の環境が変わったときにも
変化する。図2は、太陽光が照明光(白熱灯)に変わっ
たときに、どのように色相が変化したかを示したもので
ある。全体的に見ると、見える光の波長が長くなる方向
に変化している。すなわち青は緑に、緑は黄に、黄は赤
へと変化している。とくに短波長の光ほど、その変化量
が大きい。 【0026】本発明では照明光の代わりにレンズに工夫
を加え、眼内で色相の変化を実現させる。本発明では、
黄色のスペクトル感度曲線が最大値を示す波長付近と、
青色のスペクトル感度曲線が最大値を示す波長付近の透
過率をそれぞれ85%〜95%に設定し、なおかつ短波
長付近の透過率を意図的に多く透過させる分光透過率を
設計し、黄色光のカットと青色光を強調する方法で黄変
に対処する。 【0027】本発明の一つの例では、青色付近の色に対
して2段階の対処を行っているのが特徴である。すなわ
ち1つは青色のスペクトル感度曲線の最大値付近(440n
m付近)の透過率を抑える。もう1つは短波長付近(420
nm〜480nm付近、青紫〜青色)の光を多く透過するよう
にする。 【0028】青色のスペクトル感度曲線が最大値を示す
波長付近の透過率をあえて下げているのは、人の弁別閾
ピークの1つが440nm付近にあるためである。すなわち
この部分を若干下げることにより、他の弁別感度の弱い
部分と感度の良好な部分とを均質化させることになる。
そのあとで短波長付近の全体的な光の分光透過率を高
め、短波長全体の感度を平均化して底上げすることにな
る。さらに、純粋な黄色部分の波長光を軽減することに
よって黄色の影響を減らし、なおかつ青みを強調させる
ことができる。以上の対処により、黄変した透光体によ
る黄色みを助長しないようにすることができる。また短
波長光の分光透過率を上げることによって元の色覚に近
づけ、しかも全体の照度の低下も防いでいる。 【0029】図3は、上記の補正方法を用いてデザイン
したレンズの分光透過率曲線の一例である。人間の可視
光線の下限は380nmと言われているが、一般には400nm以
下の波長を認識することは難しい。そこで図3に示すよ
うに、本発明の黄変色覚補正方法を用いてデザインした
分光透過率曲線は、420nm付近から立ち上げ、560nm付近
までの光(紫から緑の光)を強調(透過率増加)し、58
0nm〜610nm辺りの光(黄色から橙色の光)をカット(透
過率低下)するようにしている。 【0030】図4は色盲検査表パネルD-15の色相を、正
常者が見た(色度座標1)場合と、正常者が図3の分光透
過率特性を持つ眼鏡を掛けて見た(色度座標2)場合の
色相変移をプロットしたものである。言い換えれば、透
光体が黄変した人が本発明の色覚補正用眼鏡を掛けてパ
ネルD-15を見たとき、色度座標2から色度座標1に変移
することを表している。すなわち、黄変した色覚者の色
覚が黄変色覚補正用眼鏡で補正されたことを、図は表し
ている。なお色度図の色度座標(x,y)は、等色条件
より3刺激値X、Y、Z(数式(1)参照)が求められ
るから、この3刺激値を色度座標の計算式に代入して得
られた値である。 【0031】図3に示すような短波長付近の分光透過率
を特性を持つレンズを製作するには、マルチコーティン
グ(多層膜)による光の干渉を利用する。接触する2種
類の媒質の境界面では反射が起きる。密度が疎の媒質か
ら入射した光は、密度が密の媒質で反射されるとき、π
(波長にして半波長λ/2)だけ位相がずれる。レンズ
の密度よりも疎な薄膜をコーティングしてある場合に
は、レンズ面で反射される光の位相はλ/2ずれる。一
方、密の媒質を通過して疎の媒質で反射される光には位
相のズレは生じないから、膜で反射される光には位相の
ズレは生じない。 【0032】屈折率n1、膜の厚さt1としたとき、ある
面から入射されて次の面で反射され、再び前の面に戻っ
てきた光線の通過した光学的光路は2n1t1である。い
ま膜の厚さt1をn1t1=λ/4になるようにコーティ
ングした場合、2n1t1=λ/2となる。このように各
膜をコーティングすることにより、前の面で反射される
光と他の膜での反射光が同じズレの位相になるようにす
れば、光は強め合うことになる。多層膜を同様な設計で
コーティングすれば、膜数分だけ反射光線を全部同じ位
相にすることが可能であるから、特定の波長λを互いに
強め合うようにすることができる。このような特定な波
長λを短波長付近の光に集中すれば、目的とする短波長
付近の光を強調でき、図3に示したような分光透過曲線
をもつレンズが制作できる。 【0033】上記のような分光透過率特性を持つレンズ
コーティングを行うことによって得られたレンズを眼鏡
に用いれば、本発明の最終目的が達成されたことにな
る。すなわち、黄色の光を抑え、青色付近の光を強める
ことによって、黄変色覚補正用眼鏡が製作できる。 【0034】図5は後天性色盲検査表SPP2で検査した、
色文字の誤認の減少率を調べた結果である。図の「表番
号」はSPP2のページ数、「SPP2正常読み」欄のR、G、
B、Yは赤、緑、青、黄を表し、Sは錐体(色を弁別す
る細胞)異常をチェックするための文字であることを意
味している。たとえば、‘BY RG’は検査用の文字とし
て、左に青色と黄色の文字(実際には数字を使用)、右
に赤色と緑色の文字(実際には数字を使用)を表してい
る。空の部分(たとえば‘BY __ ’)は、実際には文字
が書かれているが、テストの対象でないことを意味して
いる。また丸印で囲まれたものは読みやすい文字、丸印
のないものは読みにくい文字にしてあることを意味して
いる。「表番号」と「SPP2正常読み」欄が黒く塗られて
いる部分は色盲異常のテスト文字であり、被験者の結果
欄の黒塗りは黄変色覚補正用眼鏡では逆に結果が悪くな
っていることを表している。テスト結果の、×△○◎は
「読めない」、「誤った比較を行った」、「差がないあ
るいは差がないのに差を言う」、「正常な読みが行われ
た」ことを表す。左右の眼に対してテストが行われ、
“通常”とあるのが一般の視力補正用眼鏡を使用した場
合のテスト、“補正”とあるのは本発明の黄変色覚補正
用眼鏡を使用した場合のテストであることを示してい
る。 【0035】表番号12において、男性70歳近用(近
視用眼鏡)、女性66歳近用では、左右の眼で著しい改
良が認められた(読めない文字が補正により正しく読め
るようになった)。女性57歳近用では右眼で改良が認
められたが、左眼では逆転している。ただし、この現象
は、レンズによって透過した光が青みを帯びているた
め、SPP2検査表に用いられている配色上の問題で、彩度
対比を起こして見づらくなっているためと思われる。ま
た、年齢が55歳を越えると、改善率が飛躍的に上昇す
るため、一定以上の高齢の方に有効であると考えられ
る。 【0036】現在までの実験の結果、8名16眼に対し
ての実験であったが、全体的に本発明で予想したような
良い結果が導かれた。今回のテストでは、改善率が50.7
9%(誤認率が約半数減少)となった。もちろん、改善
されなかったり、補正による逆転現象(補正したために
結果が悪くなる現象<たとえば○→△、◎→○などの結
果:数として6件>)もあった。これは、黄変の進み具
合と補正の度合いが合わなかったことや、単に黄変が原
因でない色覚異常のある被験者が存在したことなどが原
因として挙げられる。また今回は限られた分光透過率特
性の眼鏡を使用したために、黄変の度合いに対応しきれ
なかった部分もあるかと思われる。したがって今後、黄
変の進行度合いに応じた黄変色覚補正の眼鏡をいくつか
用意すれば、さらに改善率がアップするものと期待され
る。 【0037】 【発明の効果】本発明は眼鏡レンズに多重薄膜干渉・マ
ルチコーティングを施すことによって特定な色の透過率
を調整し、黄変した透光体による色覚変調の補正を行っ
ている。したがって、染料でレンズをブルー(黄色光吸
収)に着色する一般的な色覚補償とは異なる効果があ
る。 【0038】本発明の眼鏡レンズは従来の着色補償レン
ズのブルーがかった色とは異なり、レンズからの反射光
は黄色光の多いものになる。そのため、外観は薄黄色の
レンズ色になる。したがって、ブルー色に比べて人の顔
の色に近い色となり、レンズの着色が目立たない。 【0039】また、フレームレス眼鏡のように、レンズ
側面が外から見える眼鏡の場合、染料による着色された
レンズは、側面からレンズの着色の様子が見えるが、本
発明の多重薄膜干渉によって色覚補償したレンズでは、
原理的に側面からはレンズの着色の様子は見えない。こ
のレンズを側面から見たときの着色は、薄い着色でも光
が透過する距離が長いので濃い色に見えてしまうので、
重要な外観上の問題である。 【0040】本発明では、単に黄色光のカットだけでな
く、短波長の光を強めることによって青色全体を強調さ
せ、元の色覚に近い色覚補正を実現することもできる。
本発明では黄色の透過率のカット度合いと青色の強調度
合いを様々に変化させることができ、着色したときほ
ど、照度を落とさずに黄変度数に対応することができ
る。
した図である。 【図2】太陽光を白熱灯に変えたときの色相変化を示す
色度図である。 【図3】本発明の黄変色覚補正方法を用いて設計された
分光透過率曲線の一例をグラフ化した図である。 【図4】色盲検査表パネルD-15に対して、本発明の分光
透過率曲線を持つ眼鏡を装用した場合と装用しなかった
場合の色相変移を説明するための色度図である。 【図5】後天性色盲検査表SPP2を用いて、本発明の黄変
色覚補正用眼鏡を装用した場合と一般の眼鏡を装用した
場合の色文字誤認率の比較を行った結果(一部)を表に
した図である。 【符号の説明】 1 正常者の色相、または黄変色覚者が黄変色覚補正
用眼鏡を装用したときの色相 2 正常者が本発明の黄変色覚補正用眼鏡を装用した
ときの色相、または黄変色覚者が黄変色覚補正用眼鏡を
装用しなかったときの色相
【手続補正書】 【提出日】平成14年12月5日(2002.12.
5) 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】全文 【補正方法】変更 【補正内容】 【書類名】 明細書 【発明の名称】 黄変色覚補正用眼鏡 【特許請求の範囲】 【請求項1】 眼球の透光体が黄色に変色する黄変に対
して色覚補正する黄変色覚補正用眼鏡において、 眼鏡レンズ表面に、前記黄変を補償するスペクトル反射
率を備えた多重薄膜干渉コーティング膜を備えたことを
特徴とする黄変色覚補正用眼鏡。 【請求項2】 前記黄変を補償するスペクトル反射率
が、黄色のスペクトル感度曲線が最大値を示す波長付近
の透過率と、青色のスペクトル感度曲線が最大値を示す
波長付近の透過率をそれぞれ85%〜95%に設定し、
なおかつ短波長付近の透過率を意図的に多く透過させる
分光透過率を持つようにしたことを特徴とする請求項1
記載の黄変色覚補正用眼鏡。 【請求項3】 前記黄変を補償するスペクトル反射率
が、青色のスペクトル感度曲線の最大値付近(440nm付
近)の透過率を抑え、短波長付近(420nm〜480nm付近、
青紫〜青色)の光を多く透過するようにしたことを特徴
とする請求項1記載の黄変色覚補正用眼鏡。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は、高齢者の黄色に変
化した透光体による色覚変化を元の色覚に補正する方法
と、該色覚変化を矯正してより自然な色覚に補正する眼
鏡レンズのマルチコーティングおよび黄変色覚補正用鏡
眼に関する。 【0002】 【従来の技術】人間の目は年を重ねるごとに濁りが生じ
る。カメラのレンズに相当する水晶体が白く濁る場合を
白内障という。本来は透明な水晶体が濁ると、光が眼底
に届く前に散乱され、網膜に像を結ぶ働きが弱り、かす
んで見えたりする。視力の衰えと思っていたものが、実
は白内障が視力に影響している場合も少なくない。最近
は眼鏡店でも視力検査のほかに眼球検査を行っていると
ころも増え、早期に白内障が発見されるようになってき
ている。白内障の症状が進んでいる場合には、簡単な手
術で元の視力に回復することができる。 【0003】白内障は年齢とともに進むものであるが、
同様に透光体(角膜・水晶体・硝子体のうち主に水晶
体)の黄色変化(黄変)も年齢とともに進行している。
一般に白内障ほどの自覚症状もなく、影響も大きくない
ために、日常生活では白内障ほど問題視されていない。
しかし加齢による透光体の黄変に伴い、商品表示の誤認
や物体色の認識誤認は本人にも周囲にも老化として意識
されるようになってきてはいる。透光体の黄変による弊
害としては、商品の価格表示が読みにくくなったり、類
似した色の商品が低照度下で誤認されるなどの症状が挙
げられる。 【0004】CIE(国際照明委員会)のRGB表色系
では、原色(原刺激)の波長がR700nm、G546.3nm、B
435.8nmで定められている(1nm=10億分の1メータ
ー)。ある原刺激を多く用いれば他の原刺激は少なくて
すむので、3刺激値r、g、bの和は一定となる。すな
わち、 F=rR+gG+bB(ただし、r+g+b=1) としたとき、分光組織の異なる2つの色彩刺激が等色と
判断される現象を条件等色という。したがって等色を表
すには、r、g、bの値をいろいろ取れることを意味す
る。 【0005】屈折率の違う物体を光が通過するとき、光
の反射が起きる。この反射率は素材によって異なるが、
プラスチックレンズの場合には8%(透過率は92%)
である。反射によって明るさが奪われることになるが、
眼鏡レンズにおいて92%の透過率は一応問題のない範
囲である。しかし、レンズ表面の反射像は眼鏡装用者に
は気になるものであり、これをなくすためには表面の反
射率をさらに抑える必要がある。そこでレンズ表面に干
渉薄膜コーティングが行われる。このコーティングは特
定波長の反射率を制御するので、可視光全般の反射を抑
えるためには多重薄膜干渉いわゆるマルチコーティング
がなされる。現在の技術では反射防止コートによって透
過率は99%にまで引き上げられている。 【0006】目が老化し、黄変した高齢者の視界を健常
者が擬似体験する装置として『老化視界体験装置』(特
開平10-111641)がある。この発明では、明度差の大き
な表示物と明度差の小さな表示物を接近させて並べ、そ
の両方の表示物を黄変させて見せることにより、目が老
化した際の視界の黄変を健常者に擬似体験させるという
ものである。擬似体験を目的としたものであるから、当
然ながら該公開特許では、その解決方法については述べ
られていない。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】眼球の黄変に対して、
本人が色の見にくさを訴えた場合に限り、眼鏡製作のと
きにレンズカラーのブルーでレンズを着色することによ
り青色を強調して補正することが行われている。しか
し、ブルーに着色したレンズは顔色と補色関係になり、
目立って、美観を大きく損ねるために、購買意欲を大き
く減退させる。そこで、カラーレンズの眼鏡は敬遠され
る傾向にある。 【0008】また、単純な着色では、黄変が進行してい
るような場合、透過光の減少により、明るさが不足し
て、ものが見えにくい状況が起こる場合がある。すなわ
ち、色覚は補償されるが、眼鏡によって覆われた視界の
照度低下で形状の認知が困難になってしまう。 【0009】本発明が解決しようとする課題は、色覚上
の誤認を減らすことを目的とし、黄変色覚変調を矯正す
るための眼鏡を開発することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記の発明が解決しよう
とする課題を解決するために、請求項1に記載された発
明は、眼球の透光体が黄色に変色する黄変に対して色覚
補正する黄変色覚補正用眼鏡において、眼鏡レンズ表面
に、前記黄変を補償するスペクトル反射率を備えた多重
薄膜干渉コーティング膜(マルチコーティング)を備え
たことを特徴とする黄変色覚補正用眼鏡である。 【0011】請求項2に記載された発明は、前記黄変を
補償するスペクトル反射率が、黄色のスペクトル感度曲
線が最大値を示す波長付近の透過率と、青色のスペクト
ル感度曲線が最大値を示す波長付近の透過率をそれぞれ
85%〜95%に設定し、なおかつ短波長付近の透過率
を意図的に多く透過させる分光透過率を持つようにした
ことを特徴とする請求項1記載の黄変色覚補正用眼鏡で
ある。 【0012】請求項3に記載された発明は、前記黄変を
補償するスペクトル反射率が、青色のスペクトル感度曲
線の最大値付近(440nm付近)の透過率を抑え、短波長
付近(420nm〜480nm付近、青紫〜青色)の光を多く透過
するようにしたことを特徴とする請求項1記載の黄変色
覚補正用眼鏡である。 【0013】多重薄膜干渉コーティング膜(マルチコー
ティング)のスペクトル反射率は眼球の透光体の黄変の
度合いに応じて調整するが、黄変の程度によっては、補
償のために黄色光を減らすことで全体の光量が落ちすぎ
てしまう場合もある。そのような場合、黄色光の減少を
ある程度にとどめて他の色光に対する透過率を調整する
ことで、色覚をある程度補償するとともに、明度をも保
つような設計ができる。 【0014】たとえば、黄色のスペクトル感度曲線が最
大値を示す波長付近の透過率と、青色のスペクトル感度
曲線が最大値を示す波長付近の透過率をそれぞれ85%
〜95%に設定し、短波長近辺の透過率を意図的に多く
透過させる分光透過率曲線を持つ多重薄膜干渉コーティ
ング膜を備えた黄変色覚補正用眼鏡とする。 【0015】黄色および青色の波長をカット(反射)
し、眼球の透光体の黄変による黄色変調を効果的に矯正
することができる。 【0016】黄色の波長のみをカットするとその補色で
ある青色(とくに感度曲線ピークである440nm付近の
色)が強調されることになるために、青色のスペクトル
を平均化するためにピークをカットすることもできる。
さらに短波長光の分光透過率を高め、全体的に短波長光
付近の色を底上げして白色方向に近づけて、青色全体を
見やすい方向に移動させることにより、照度を落とすこ
となく、黄変に対応させることができる。 【0017】上記の方法でマルチコーティングされたレ
ンズを使用した眼鏡を用いれば、透光体の黄変に対し
て、照度を落とさず、色覚補正が行える。しかもカラー
コーティングではないから、外見からも通常の透明なレ
ンズを使用した眼鏡と同じ感覚で利用できる。また応用
範囲も広い。 【0018】 【発明の実施の形態】本発明の実施の一例を図を用いて
説明する。人間が色を感じる光を可視光といい、波長範
囲は380nm〜780nmである。可視光線は、短波長域(380n
m〜500nm:青紫、藍、青といった青色光)、中波長域
(500nm〜600nm:緑、黄といった緑色光)、長波長域
(600nm〜780nm:橙、赤といった赤色光)に分けられ、
一番長い波長が赤、一番短い波長が青紫である。図1
は、人間の波長弁別閾値を示した実験結果である。色の
弁別とは、視覚系の基本的な性質として人間がどのくら
い色の違いを見分けられるかを示すものである。たとえ
ば、車のボディーにかすり傷がついて、その部分だけを
塗装して修理する場合、修理用の塗料の色は元の色と同
じである必要はないが、明かな差があってはならない
(弁別閾値以下でなければならない)。こうした差を定
量的に測定したものが色弁別閾値である。図の(a)は
5人の被験者の結果をグラフにしたものであり、(b)
はその平均値を取ったものである。個人差はあるが、人
間の波長弁別がよい所、言い換えるなら△λ<弁別でき
る波長差限界値=閾値>が小さい所は、440nm(青)付
近、490nm(緑青〜青緑)付近、および590nm(黄)付近
である。 【0019】従来技術でも述べたように、色F(テスト
光)はF=rR+gG+bBで表される。老化により透
光体が黄変するということは、rR+gG付近が強めら
れ、相対的にbBの光が弱められことを意味する。した
がって、rR+gGの光を減らし、bBを増やせば、元
の色(等色)が得られることになる。 【0020】光源の分光分布をS(λ)、2つの物体の
分光反射率をρ1(λ)としたとき、2つの物体色の3
刺激値は、RGB表色系にかえて原刺激XYZ表色系を
用いると次式のようになる。 【0021】 【数1】 ・・・・・・(1) 【0022】と表せる。ここで 【0023】 【数2】 【0024】であり、Y1、Y2は反射率単位で表現され
ている。条件等色は次式の成立するときにおこる。 X1=X2 Y1=Y2 Z1=Z2 ・・・・・(2) 数式(1)と数式(2)より次の関係が成立する。 【0025】 【数3】 【0026】コーティングによって変えられる値は反射
率ρ(λ)であり、ある特定の波長の反射率(=1−透
過率)を変化させることによって等色が得られることを
意味している。本発明では、マルチコーティングによっ
て特定な光の反射率を調整し、黄変した透光体による色
覚変化を補正する。具体的には黄色の波長をカットし、
短波長光を多く入光させる。 【0027】老化により黄変した透光体では短波長光が
弱められていることから、短波長光を多く入光させる。
人の目に見える色は、対象物の環境が変わったときにも
変化する。図2は、太陽光が照明光(白熱灯)に変わっ
たときに、どのように色相が変化したかを示したもので
ある。全体的に見ると、見える光の波長が長くなる方向
に変化している。すなわち青は緑に、緑は黄に、黄は赤
へと変化している。とくに短波長の光ほど、その変化量
が大きい。 【0028】本発明では照明光の代わりにレンズに工夫
を加え、眼内で色相の変化を実現させる。本発明では、
黄色のスペクトル感度曲線が最大値を示す波長付近と、
青色のスペクトル感度曲線が最大値を示す波長付近の透
過率をそれぞれ85%〜95%に設定し、なおかつ短波
長付近の透過率を意図的に多く透過させる分光透過率を
設計し、黄色光のカットと青色光を強調する方法で黄変
に対処する。 【0029】本発明の一つの例では、青色付近の色に対
して2段階の対処を行っているのが特徴である。すなわ
ち1つは青色のスペクトル感度曲線の最大値付近(440n
m付近)の透過率を抑える。もう1つは短波長付近(420
nm〜480nm付近、青紫〜青色)の光を多く透過するよう
にする。 【0030】青色のスペクトル感度曲線が最大値を示す
波長付近の透過率をあえて下げているのは、人の弁別閾
ピークの1つが440nm付近にあるためである。すなわち
この部分を若干下げることにより、他の弁別感度の弱い
部分と感度の良好な部分とを均質化させることになる。
そのあとで短波長付近の全体的な光の分光透過率を高
め、短波長全体の感度を平均化して底上げすることにな
る。さらに、純粋な黄色部分の波長光を軽減することに
よって黄色の影響を減らし、なおかつ青みを強調させる
ことができる。以上の対処により、黄変した透光体によ
る黄色みを助長しないようにすることができる。また短
波長光の分光透過率を上げることによって元の色覚に近
づけ、しかも全体の照度の低下も防いでいる。 【0031】図3は、上記の補正方法を用いてデザイン
したレンズの分光透過率曲線の一例である。人間の可視
光線の下限は380nmと言われているが、一般には400nm以
下の波長を認識することは難しい。そこで図3に示すよ
うに、本発明の黄変色覚補正方法を用いてデザインした
分光透過率曲線は、420nm付近から立ち上げ、560nm付近
までの光(紫から緑の光)を強調(透過率増加)し、58
0nm〜610nm辺りの光(黄色から橙色の光)をカット(透
過率低下)するようにしている。 【0032】図4は色盲検査表パネルD-15の色相を、正
常者が見た(色度座標1)場合と、正常者が図3の分光透
過率特性を持つ眼鏡を掛けて見た(色度座標2)場合の
色相変移をプロットしたものである。言い換えれば、透
光体が黄変した人が本発明の色覚補正用眼鏡を掛けてパ
ネルD-15を見たとき、色度座標2から色度座標1に変移
することを表している。すなわち、黄変した色覚者の色
覚が黄変色覚補正用眼鏡で補正されたことを、図は表し
ている。なお色度図の色度座標(x,y)は、等色条件
より3刺激値X、Y、Z(数式(1)参照)が求められ
るから、この3刺激値を色度座標の計算式に代入して得
られた値である。 【0033】図3に示すような短波長付近の分光透過率
を特性を持つレンズを製作するには、マルチコーティン
グ(多層膜)による光の干渉を利用する。接触する2種
類の媒質の境界面では反射が起きる。密度が疎の媒質か
ら入射した光は、密度が密の媒質で反射されるとき、π
(波長にして半波長λ/2)だけ位相がずれる。レンズ
の密度よりも疎な薄膜をコーティングしてある場合に
は、レンズ面で反射される光の位相はλ/2ずれる。一
方、密の媒質を通過して疎の媒質で反射される光には位
相のズレは生じないから、膜で反射される光には位相の
ズレは生じない。 【0034】屈折率n1、膜の厚さt1としたとき、ある
面から入射されて次の面で反射され、再び前の面に戻っ
てきた光線の通過した光学的光路は2n1t1である。い
ま膜の厚さt1をn1t1=λ/4になるようにコーティ
ングした場合、2n1t1=λ/2となる。このように各
膜をコーティングすることにより、前の面で反射される
光と他の膜での反射光が同じズレの位相になるようにす
れば、光は強め合うことになる。多層膜を同様な設計で
コーティングすれば、膜数分だけ反射光線を全部同じ位
相にすることが可能であるから、特定の波長λを互いに
強め合うようにすることができる。このような特定な波
長λを短波長付近の光に集中すれば、目的とする短波長
付近の光を強調でき、図3に示しような分光透過曲線を
もつレンズが制作できる。 【0035】上記のような分光透過率特性を持つレンズ
コーティングを行うことによって得られたレンズを眼鏡
に用いれば、本発明の最終目的が達成されたことにな
る。すなわち、黄色の光を抑え、青色付近の光を強める
ことによって、黄変色覚補正用眼鏡が製作できる。 【0036】図5は後天性色盲検査表SPP2で検査した、
色文字の誤認の減少率を調べた結果である。図の「表番
号」はSPP2のページ数、「SPP2正常読み」欄のR、G、
B、Yは赤、緑、青、黄を表し、Sは錐体(色を弁別す
る細胞)異常をチェックするための文字であることを意
味している。たとえば、‘BY RG’は検査用の文字とし
て、左に青色と黄色の文字(実際には数字を使用)、右
に赤色と緑色の文字(実際には数字を使用)を表してい
る。空の部分(たとえば‘BY __ ’)は、実際には文字
が書かれているが、テストの対象でないことを意味して
いる。また丸印で囲まれたものは読みやすい文字、丸印
のないものは読みにくい文字にしてあることを意味して
いる。「表番号」と「SPP2正常読み」欄が黒く塗られて
いる部分は色盲異常のテスト文字であり、被験者の結果
欄の黒塗りは黄変色覚補正用眼鏡では逆に結果が悪くな
っていることを表している。テスト結果の、×△○◎は
「読めない」、「誤った比較を行った」、「差がないあ
るいは差がないのに差を言う」、「正常な読みが行われ
た」ことを表す。左右の眼に対してテストが行われ、
“通常”とあるのが一般の視力補正用眼鏡を使用した場
合のテスト、“補正”とあるのは本発明の黄変色覚補正
用眼鏡を使用した場合のテストであることを示してい
る。 【0037】表番号12において、男性70歳近用(近
視用眼鏡)、女性66歳近用では、左右の眼で著しい改
良が認められた(読めない文字が補正により正しく読め
るようになった)。女性57歳近用では右眼で改良が認
められたが、左眼では逆転している。ただし、この現象
は、レンズによって透過した光が青みを帯びているた
め、SPP2検査表に用いられている配色上の問題で、彩度
対比を起こして見づらくなっているためと思われる。ま
た、年齢が55歳を越えると、改善率が飛躍的に上昇す
るため、一定以上の高齢の方に有効であると考えられ
る。 【0038】現在までの実験の結果、8名16眼に対し
ての実験であったが、全体的に本発明で予想したような
良い結果が導かれた。今回のテストでは、改善率が50.7
9%(誤認率が約半数減少)となった。もちろん、改善
されなかったり、補正による逆転現象(補正したために
結果が悪くなる現象<たとえば○→△、◎→○などの結
果:数として6件>)もあった。これは、黄変の進み具
合と補正の度合いが合わなかったことや、単に黄変が原
因でない色覚異常のある被験者が存在したことなどが原
因として挙げられる。また今回は限られた分光透過率特
性の眼鏡を使用したために、黄変の度合いに対応しきれ
なかった部分もあるかと思われる。したがって今後、黄
変の進行度合いに応じた黄変色覚補正の眼鏡をいくつか
用意すれば、さらに改善率がアップするものと期待され
る。 【0039】 【発明の効果】本発明は眼鏡レンズに多重薄膜干渉・マ
ルチコーティングを施すことによって特定な色の透過率
を調整し、黄変した透光体による色覚変調の補正を行っ
ている。したがって、染料でレンズをブルー(黄色光吸
収)に着色する一般的な色覚補償とは異なる効果があ
る。 【0040】本発明の眼鏡レンズは従来の着色補償レン
ズのブルーがかった色とは異なり、レンズからの反射光
は黄色光の多いものになる。そのため、外観は薄黄色の
レンズ色になる。したがって、ブルー色に比べて人の顔
の色に近い色となり、レンズの着色が目立たない。 【0041】また、フレームレス眼鏡のように、レンズ
側面が外から見える眼鏡の場合、染料による着色された
レンズは、側面からレンズの着色の様子が見えるが、本
発明の多重薄膜干渉によって色覚補償したレンズでは、
原理的に側面からはレンズの着色の様子は見えない。こ
のレンズを側面から見たときの着色は、薄い着色でも光
が透過する距離が長いので濃い色に見えてしまうので、
重要な外観上の問題である。 【0042】本発明では、単に黄色光のカットだけでな
く、短波長の光を強めることによって青色全体を強調さ
せ、元の色覚に近い色覚補正を実現することもできる。
本発明では黄色の透過率のカット度合いと青色の強調度
合いを様々に変化させることができ、着色したときほ
ど、照度を落とさずに黄変度数に対応することができ
る。 【図面の簡単な説明】 【図1】波長弁別閾値特性を求める実験結果をグラフ化
した図である。 【図2】太陽光を白熱灯に変えたときの色相変化を示す
色度図である。 【図3】本発明の黄変色覚補正方法を用いて設計された
分光透過率曲線の一例をグラフ化した図である。 【図4】色盲検査表パネルD-15に対して、本発明の分光
透過率曲線を持つ眼鏡を装用した場合と装用しなかった
場合の色相変移を説明するための色度図である。 【図5】後天性色盲検査表SPP2を用いて、本発明の黄変
色覚補正用眼鏡を装用した場合と一般の眼鏡を装用した
場合の色文字誤認率の比較を行った結果(一部)を表に
した図である。 【符号の説明】 1 正常者の色相、または黄変色覚者が黄変色覚補正
用眼鏡を装用したときの色相 2 正常者が本発明の黄変色覚補正用眼鏡を装用した
ときの色相、または黄変色覚者が黄変色覚補正用眼鏡を
装用しなかったときの色相
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 眼球の透光体が黄色に変色する黄変に対
して色覚補正する黄変色覚補正用眼鏡において、 眼鏡レンズ表面に、前記黄変を補償するスペクトル反射
率を備えた多重薄膜干渉コーティング膜を備えたことを
特徴とする黄変色覚補正用眼鏡。
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