JP2003245787A - 溶接金属部靱性に優れた高エネルギービーム溶接継手およびその製造方法 - Google Patents

溶接金属部靱性に優れた高エネルギービーム溶接継手およびその製造方法

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JP2003245787A
JP2003245787A JP2002363526A JP2002363526A JP2003245787A JP 2003245787 A JP2003245787 A JP 2003245787A JP 2002363526 A JP2002363526 A JP 2002363526A JP 2002363526 A JP2002363526 A JP 2002363526A JP 2003245787 A JP2003245787 A JP 2003245787A
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energy beam
steel
welded joint
welding
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JP2002363526A
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English (en)
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Yasuaki Okita
泰明 沖田
Nobutaka Kurosawa
伸隆 黒澤
Koichi Yasuda
功一 安田
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JFE Steel Corp
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JFE Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課 題】 健全な溶接部を得ることができ、さらに溶
接金属部靭性に優れた高エネルギービーム溶接継手の製
造方法を提案する。 【解決手段】 Ti:0.005 〜0.080 %、B:0.0003〜0.
0040%含有し、かつCeqが0.18〜0.42%の範囲である組
成を有し、かつミルスケール厚さtm が鋼材板厚tp
の関係で 0.75tp ×10-3≦ tm ≦2tp ×10-3
を満足するように調整された鋼材を、突合せ面を機械加
工仕上げした開先として、高エネルギービーム溶接によ
り溶接接合して溶接継手とする。鋼材表面のミルスケー
ルを除去することなく溶接することが好ましい。これに
より溶接金属部の組織を、靭性に富むアシキュラーフェ
ライト相を主体とする組織とすることができる。なお、
溶接金属のO含有量を0.01〜0.03%、Al/Oを0.5 〜1.
5 とすることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶、建築、鉄鋼
構造物等の溶接構造物に用いて好適な鋼材の溶接に係
り、とくに高エネルギービームを用いて溶接接合した高
エネルギービーム溶接継手部における靱性改善に関す
る。
【0002】
【従来の技術】レーザ溶接や電子ビーム溶接などの高エ
ネルギービーム溶接は高いエネルギー密度を得ることが
できるため、深溶け込みの高速溶接が可能であり、高能
率溶接法として期待されている。高エネルギービーム溶
接では、極めて局所的な溶融となるため、溶接時に鋼板
に加わる熱の影響が小さく、したがって、溶接歪の小さ
な高品質な溶接継手を得ることができる。特にレーザ溶
接は大気中でも溶接が可能であることもあり、高能率で
高品質の溶接方法として、薄板分野においてはすでに実
用化されている。近年は、レーザ出力の増大により適用
可能板厚が増大し、レーザ溶接の厚板分野における適用
も本格的に考慮されるまでになってきている。
【0003】しかし、高エネルギービーム溶接は、極め
て局所的な溶接であるため、板厚あたりに投入される熱
量が従来アーク溶接に比べて著しく小さい、いわゆる小
入熱溶接となる。このため、冷却速度が速くなり、例え
ば、溶接金属は著しく硬化し、溶接金属部靱性が劣化し
やすいという問題がある。このような問題に対し、例え
ば、特許文献1には、鋼の酸素量を高め、鋼の焼入れ性
を低減することにより、冷却速度が速くなる低入熱溶接
における溶接金属の硬化性を低下させる技術が提案され
ている。しかしながら、鋼中酸素量の増加は母材靱性を
著しく劣化させる場合があるため、実用的な改善策とは
いい難い。
【0004】また、特許文献2には、開先をガス切断あ
るいはレーザ切断により形成し、開先突合せ面のスケー
ルを除去せずに、また、被溶接材(鋼板)表面のミルス
ケールを除去せずに、高エネルギービームにより溶接接
合する高エネルギービーム溶接方法が提案されている。
しかし、高エネルギービーム溶接ではビーム径が非常に
小さく、ルートギャップが大きな場合はビームがそのま
ま通り抜けてしまうため、厳しい開先精度が要求され
る。したがって、突合せ面がレーザ切断やガス切断のま
まの開先を使用する、特許文献2に記載された技術で
は、表面の凹凸が大きく、健全な突合せ面を形成するの
が困難であり、健全な溶接部を得ることができないとい
う問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−64486 号公報
【特許文献2】特開2000-288754 号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従
来技術の問題点を有利に解決し、健全な溶接部を得るこ
とができ、さらに溶接金属部靭性に優れた高エネルギー
ビーム溶接継手の製造方法を提案することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成するため、高エネルギービーム溶接継手部靭
性に及ぼす各種要因について鋭意検討した。溶接継手部
靭性の向上には、溶接金属部の組織をアシキュラーフェ
ライトを主体とする組織とする必要があり、そのために
は、(1)被溶接材である鋼材を、Ti,Bの適正量を含
み、あるいはさらに適正量のAlを含み、かつ適正範囲の
炭素当量となる組成を有するとともに、表面に鋼材板厚
に関連した適正厚みに調整したミルスケールを残存させ
た鋼材とすること、(2)溶接接合に際しては鋼材表面
のミルスケールの除去を行わないこと、また、健全な溶
接部を得るためには、(3)開先面を機械加工仕上げす
ること、が肝要であることを知見した。
【0008】本発明は、上記した知見に基づき、さらに
検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明
は、鋼材を高エネルギービーム溶接により貫通溶接接合
し溶接金属部と溶接熱影響部とを有する溶接継手を製造
するにあたり、前記鋼材を、mass%で、Ti:0.005 〜0.
080 %、B:0.0003〜0.0040%含有し、かつ次(1)式 Ceq =C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ………(1) ここで、Ceq :炭素当量(mass%) C,Mn,Cr,Mo,V,Cu,Ni:各元素の含有量(mass
%) で定義される炭素当量Ceq が0.18〜0.42%の範囲である
組成を有し、かつミルスケール厚さtm を鋼材板厚tp
との関係で次(2)式 0.75tp ×10-3≦ tm ≦2tp ×10-3 ………(2) ここで、tp :鋼材板厚(mm) tm :ミルスケール厚さ(mm) を満足するように調整された鋼材とし、かつ前記溶接接
合の開先面を機械加工仕上げすることを特徴とする溶接
金属部の靱性に優れた高エネルギービーム溶接継手の製
造方法である。
【0009】また、本発明では、前記溶接金属部の組織
が、面積率で50%以上のアシキュラーフェライト相を含
むことが好ましい。また、本発明では、前記溶接金属部
の酸素含有量が、mass%で、0.01〜0.03%であることが
好ましい。また、本発明では、前記溶接金属部のAl含有
量(mass%)と酸素含有量(mass%)との比Al/Oが、
0.5 以上1.5 以下であることが好ましい。
【0010】また、本発明では、前記鋼材が、mass%
で、Ti:0.005 〜0.080 %、B:0.0003〜0.0040%を含
有し、さらに、C:0.01〜0.1 %、Si:1.0 %以下、M
n:1.7%以下、P:0.030 %以下、S:0.030 %以下、
Al:0.05%以下好ましくは0.005 〜0.03%、N:0.0035
%以下、O:0.0035%以下を、前記(1)式で定義され
る炭素当量Ceq が0.18〜0.42%の範囲を満足するように
含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有す
ることが好ましい。また、本発明では、前記組成に加え
てさらに、Cu:1.0 %以下、Ni:5.0 %以下、Cr:1.0
%以下、Mo:1.5%以下、Nb:0.2 %以下およびV:0.2
%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、およ
び/またはCa:0.007 %以下、希土類元素(REM ):0.
02%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有して
もよい。
【0011】また、本発明は鋼材を高エネルギービーム
溶接により溶接接合された溶接金属部と溶接熱影響部を
有する溶接継手であって、前記鋼材を、mass%で、Ti:
0.005 〜0.080 %、B:0.0003〜0.0040%含有し、かつ
前記(1)式で定義される炭素当量 Ceqが0.18〜0.42%
の範囲である組成を有し、かつミルスケール厚さt m
鋼板厚さt p との関係で前記(2)式を満足するように
調整された鋼材とすることを特徴とする溶接金属部の靱
性に優れた高エネルギービーム溶接継手である。
【0012】
【発明の実施の形態】まず、本発明において使用する鋼
材の化学組成限定理由について説明する。なお、以下、
組成におけるmass%は、単に%で記す。使用する鋼材
は、Ti:0.005 〜0.080 %、B:0.0003〜0.0040%を含
有し、かつ次(1)式 Ceq =C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ………(1) (ここで、Ceq :炭素当量(mass%)、C,Mn,Cr,M
o,V,Cu,Ni:各元素の含有量(mass%))で定義さ
れる炭素当量Ceq が0.18〜0.42%の範囲である組成を有
する。Ti、B以外の元素の含有量については特に限定す
る必要はなく、炭素当量Ceq が0.18〜0.42%の範囲とな
るように調整するだけでよい。
【0013】Ti:0.005 〜0.080 % Tiは、Nとの結合力が大きく、TiN として析出し、HAZ
組織の粗大化を抑制しHAZ 靱性を向上させる効果を有し
ている。これらの効果は0.005 %以上の含有で認められ
る。一方、0.080 %を超えて含有しても効果が飽和する
うえ、不要な析出物が増加する。このため、Tiは0.005
〜0.080 %に限定した。
【0014】なお、鋼材中に含有されるTiは、溶接時に
溶融する鋼材から溶接金属に移行し、溶接金属の高靱性
化にも寄与する。Tiは酸素との親和力が強いために、本
発明においてはスケールから溶接金属中に添加された酸
素によって酸化され、酸素との親和力の大きな他の元素
と共に複合酸化物を形成する。このTi系複合酸化物はフ
ェライトとの整合性に優れるため、アシキュラーフェラ
イトの核生成サイトとして有効に働き、溶接金属組織を
微細なアシキュラーフェライト主体の組織とすることが
できる。これにより高靭性の溶接金属が得られる。
【0015】B:0.0003〜0.0040% Bは、オーステナイト粒界に偏析し、粒界フェライトの
析出を抑制することにより、鋼の焼入れ性を向上させ、
強度を増加させる元素である。本発明では、鋼材の強度
増加に加えて、溶接金属の靭性向上のために鋼材に適量
含有させる。Bは、溶接時に溶融する鋼材から溶接金属
に移行し、溶接金属のオーステナイト粒界に偏析し、粒
界フェライトの析出を抑制することにより溶接金属の靱
性向上に寄与する。このような効果を得るためには、鋼
材中に0.0003%以上含有させることが必要となる。一
方、0.0040%を超えて鋼材中に含有させると、HAZ の焼
入れ性が高まり、HAZ 靱性が大きく劣化する。このた
め、Bは0.0003〜0.0040%の範囲に限定した。なお、好
ましくは、0.0015〜0.0030%である。
【0016】Ceq :0.18〜0.42% 炭素当量Ceq は、鋼材の強度および焼入れ性に及ぼす化
学成分の影響を示す指標であり、Ceq の値が高くなるほ
ど焼入れ性が増加し、鋼材の強度が高くなりやすい。本
発明では、Ceq は前記(1)式で定義される値を用い
る。Ceq が0.18%未満では焼入れ性が不足し、所望の鋼
材強度が確保できないうえ、粒界フェライトが発達し優
れた鋼材靱性が得られない。一方、Ceq が0.42%を超え
ると、レーザ等の高エネルギービーム溶接を行った場合
にHAZ 組織がマルテンサイト組織となり、優れたHAZ 靱
性が得られない。このため、鋼材のCeq は0.18〜0.42%
とした。なお、好ましくは0.20〜0.42%、より好ましく
は0.24〜0.29%である。
【0017】本発明では、上記した、Ti、B以外の元素
の含有量については特に限定する必要はなく、炭素当量
Ceq が0.18〜0.42%の範囲となるように調整するだけで
よい。なお、好ましい組成としては、上記した範囲のT
i、Bを含有し、さらに、高強度でかつ高靭性を確保す
るために、C:0.01〜0.1 %、Si:1.0 %以下、Mn:1.
7 %以下、P:0.030 %以下、S:0.030 %以下、Al:
0.05%以下、N:0.0035%以下、O:0.0035%以下、を
含み、残部Feおよび不可避的不純物である組成とするこ
とが好ましい。
【0018】C:0.01〜0.1 % Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度に
応じ含有できる。本発明では、0.01%以上含有すること
が好ましい。しかし、0.1 %を超えてCを含有すると、
溶接熱影響部の硬さが増加し、耐溶接割れ性、靭性を劣
化させる。このため、Cは0.01〜0.1 %の範囲とするこ
とが好ましい。なお、より好ましくは、0.02〜0.07%で
ある。
【0019】Si:1.0 %以下 Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼の強度を増加
させる作用を有する元素である。このような効果は、0.
01%以上の含有で顕著となる。一方、1.0 %を超えて含
有すると、鋼材靱性が低下する。このため、Siは1.0 %
以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは、0.
2 〜 0.4%である。
【0020】Mn:1.7 %以下 Mnは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、
他の強化元素の含有量とのバランスをとりつつ含有する
ことができる。本発明では所望の強度を確保するために
0.5 %以上含有することが好ましい。一方、 1.7%を超
えて含有すると、鋼材靱性が低下する。このため、Mnは
1.7 %以下とすることが好ましい。なお、 より好ましく
は 0.8〜 1.4%である。
【0021】P:0.030 %以下 Pは、不純物として鋼の靱性を劣化させるため、できる
だけ低減することが好ましい。一方、0.030 %を超えて
含有すると、溶接割れを起こしやすくするため、Pは0.
030 %以下に限定することが好ましい。なお、 より好ま
しくは 0.005%以下である。
【0022】S:0.030 %以下 Sは、不純物として鋼の靱性を劣化させるため、できる
だけ低減することが好ましい。一方、0.030 %を超えて
含有すると、溶接割れを起こしやすくするため、Sは0.
030 %以下に限定することが好ましい。なお、 より好ま
しくは 0.005%以下である。
【0023】Al:0.05%以下 Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒の微細化
に寄与する元素であり0.005 %以上含有することが好ま
しいが、0.05%を超えて多量に含有すると介在物中のAl
2 3 濃度が増加し、大型クラスター介在物を生成し、
鋼材の延性、靭性を低下させる。なお、溶接に際し、鋼
材中のAlの一部が溶接金属中に溶け込み、溶接金属中の
酸素と結合し、酸化物Al2O3 を形成する場合がある。酸
化物Al2O 3 はアシキュラーフェライトの核生成サイトと
して有効に作用しない酸化物であり、溶接金属中のアシ
キュラーフェライトの生成に寄与する酸素量を低減す
る。このため、アシキュラーフェライトの生成の観点か
らは、溶接金属中に溶け込む鋼材中のAlは、できるだけ
低減することが好ましい。しかし、溶接金属中の酸素量
が多くなりすぎると溶接金属靭性が低下するため、溶接
金属中のAl量は適正量範囲に調整することが好ましい。
このようなことから、鋼材中のAlは0.05%以下、好まし
くは0.005 %以上に限定することが好ましい。なお、よ
り好ましくは 0.005〜 0.030%である。さらに好ましく
は、0.010 〜0.030 %である。
【0024】N:0.0035%以下 Nは、オーステナイト中に固溶して、 オーステナイトを
安定化し、 島状マルテンサイトのような微視的な硬質相
の生成を助長し、鋼材靭性、HAZ の靭性を劣化させる。
このため、本発明では、Nはできるだけ低減することが
好ましい。しかし、極端な低減は製造コストの高騰を招
く。このようなことから、Nの許容上限を0.0035%とす
ることが好ましい。
【0025】O:0.0035%以下 Oは、鋼中では酸化物として存在するため、清浄度を低
下させ、鋼材の延性、靭性等を劣化させるなど、鋼材特
性に悪影響を及ぼす。このため、本発明では鋼材中のO
含有量は0.0035%以下できるだけ低減することが好まし
い。本発明で使用する鋼材は、上記した組成に加えてさ
らに、下記の成分を含有することが好ましい。
【0026】Cu:1.0 %以下、Ni:5.0 %以下、Cr:1.
0 %以下、Mo:1.5 %以下、Nb:0.2 %以下およびV:
0.2 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上 Cu,Ni,Cr,Mo,Nb,Vは、いずれも鋼の強度を増加さ
せる作用を有し、必要に応じて選択して1種または2種
以上を含有させることができる。しかし、Cu:1.0 %、
Ni:5.0 %、Cr:1.0 %、Mo:1.5 %、Nb:0.2 %、
V:0.2 %をそれぞれ超えて含有しても、効果が飽和
し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、コスト上
昇を招き経済的に不利となる。
【0027】Ca:0.007 %以下、希土類元素(REM ):
0.02%以下のうちから選ばれた1種または2種 Ca、REM は、いずれも介在物の形態制御を介し、鋼材の
延性、靭性向上に寄与するとともに、HAZ の粗粒化を抑
制する作用を有し、必要に応じ、選択して含有できる。
このような効果は、Ca:0.0005%以上、REM :0.0020%
以上の含有で顕著に認められる。一方、Ca:0.007 %、
REM :0.02%を超える含有は、介在物が過剰となるとと
もに、クラスター状となり靭性に悪影響を及ぼす。
【0028】上記した成分以外の残部は、Feおよび不可
避的不純物である。本発明で使用する鋼材は、上記した
組成を有し、さらに表面に次(2)式 0.75tp ×10-3≦ tm ≦2tp ×10-3 ………(2) ここで、tp :鋼材板厚(mm) tm :ミルスケール厚さ(mm) を満足するように厚さを調整されたミルスケールを有す
る。
【0029】本発明では、溶接金属組織を、靭性に富
む、アシキュラーフェライト主体の微細な組織とするた
め、溶接金属中に適正量の酸素を供給し、フェライトの
核形成サイトとして有効なTi系複合酸化物を形成させ
る。このためには、溶接金属の酸素含有量を0.01〜0.03
mass%に調整し、あるいはさらに溶接金属のAl含有量を
調整して溶接金属中のAl含有量と酸素含有量の比Al/O
を0.5 以上1.5 以下に調整することが好ましい。
【0030】本発明では、溶接金属への酸素供給源とし
て、鋼板表面のミルスケールを利用する。また、溶接金
属中のAl含有量の調整は、鋼材に含まれるAl含有量を調
整して溶接に際し鋼材からの希釈により行うことが好ま
しい。なお、本発明でいう、「アシキュラーフェライト
主体の組織」とは、アシキュラーフェライト相が50%以
上存在する組織をいうものとする。微細な組織とは、具
体的にアシキュラーフェライトが平均粒径で4μm 以下
のものをいうものとする。
【0031】溶接金属の酸素含有量を上記した範囲内と
するためには、ミルスケール厚さt m (mm)を、鋼材板
厚tp (mm)との関係で前記(2)式を満足するように
調整する必要がある。ミルスケール厚さtm が0.75tp
×10-3(mm)未満では溶接金属中酸素量が少なすぎて、
溶接金属組織がマルテンサイトあるいはベイナイト主体
の組織となり、溶接金属部靱性が劣化する。一方、ミル
スケール厚さtm が2tp ×10-3(mm)を超えると、溶
接金属中酸素量が過剰となり、粒界フェライトが大量に
形成され、溶接金属部靱性が劣化する。なお、ミルスケ
ール厚さの変化は、圧延温度、スケール除去条件等の圧
延条件の変化により行うことが好ましい。
【0032】このように、溶接金属中への酸素の供給を
鋼材表面のミルスケールから行うことにより、真空中で
溶接を行う電子ビーム溶接にも適用でき、溶接金属組織
をアシキュラーフェライト主体の組織とすることがで
き、溶接金属部靱性の顕著な向上を図ることができるよ
うになる。また、溶接金属中のAl含有量と酸素含有量の
比Al/Oを、上記した0.5 以上1.5 以下の範囲に調整す
るためには、鋼材のAl含有量に応じ、溶接金属中のAl/
Oが0.5 以上1.5 以下となるように、鋼材ミルスケール
厚さtm (mm)を、鋼材板厚tp (mm)との関係で前記
(2)式を満足するように調整し、溶接金属中の酸素含
有量を調整することが好ましい。
【0033】溶接金属におけるアシキュラーフェライト
の生成に寄与できる酸素量は溶接金属中のAl含有量によ
り支配される。Alは、Ti、Mnなどより酸素との親和力が
強く、溶接金属の凝固過程の初期にAl2O3 を形成する。
このAl2O3 は、アシキュラーフェライトの核生成サイト
としては有効に作用しない酸化物である。溶接金属組織
のアシキュラーフェライト化に有効に作用するTi系酸化
物、Mn系酸化物を形成させるためには、溶接金属中の酸
素含有量を、Al2O3 としてAlに消費される以上の酸素含
有量とする必要がある。このため、本発明では、溶接金
属中のAl/Oを1.5 以下に調整することが好ましい。一
方、Al/Oが0.5 未満では、溶接金属中の酸素含有量が
多くなりすぎ、粒界フェライトの発生を抑制するBが酸
化され、溶接金属の靭性が低下する。また、溶接金属中
の酸素含有量が多すぎると、溶接金属中に多量の酸化物
が形成され、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが低
下する。酸化物は、延性破壊の起点となり、シャルピー
衝撃試験の吸収エネルギーを低下させる原因となるため
である。このようなことから、溶接金属中のAl含有量と
酸素含有量の比Al/Oが0.5 以上1.5 以下になるよう
に、鋼材組成、鋼材ミルスケール厚さを調整することが
好ましい。
【0034】本発明では、上記した組成、ミルスケール
厚さを有する鋼材を、溶接材料を用いることなく高エネ
ルギービーム溶接による貫通溶接により接合して高エネ
ルギービーム溶接継手を製造する。本発明で使用する高
エネルギービーム溶接のビーム源としては、レーザビー
ム、電子ビームが例示できるが、これに限定されるもの
ではない。
【0035】貫通溶接するに際し、被溶接材である鋼材
に形成される開先はI開先とし、開先面は、機械加工仕
上げとする。開先面を機械加工とすることにより、突合
せ部が平坦となり、ギャップをほぼなくすことが可能と
なり、安定した溶接が可能となる。なお、鋼材表面に残
存するミルスケールの除去は行わないことはいうまでも
ない。
【0036】なお、開先面を、レーザ切断面あるいはガ
ス切断面とすると、切断面の凹凸が大きいためギャップ
が大きくなり、健全な溶接ビードを得ることが困難にな
る。また、高エネルギービーム溶接では深溶け込みの細
いビードとなるため、鋼材母材による希釈が少なく、切
断面に付着したスケールから供給される酸素が多くな
り、溶接金属中の酸素量が非常に高くなりやすい。
【0037】例えば、ミルスケールを除去した板厚7mm
の600MPa級TPCP鋼板をレーザ切断し、厚さ約7μmのス
ケールが付着する切断面同士を突合せ、Heをシールドガ
スに用いてレーザ溶接を行った。レーザ出力は5.5 kW、
溶接速度は1.0m/minであり、貫通溶接している。この時
の溶接金属中に含まれる酸素量を測定した結果、0.076
mass%と非常に大量の酸素が含有されていることがわか
った。このように過剰な酸素が含有されると、溶接金属
の靱性は著しく低下することはいうまでもない。
【0038】
【実施例】表1に示す化学組成の溶鋼を転炉で溶製し、
連続鋳造法でスラブとした。ついで、これらスラブを再
加熱し熱間圧延により、板厚:6mm、8mm、12mmの鋼板
とした。なお、熱間圧延条件のうち圧延温度、スケール
除去条件を変化させることにより、鋼板表面に形成され
るミルスケールの厚さを表2に示すように変化させた。
【0039】これらの鋼板から溶接継手製造用試験片を
ガス切断により採取し、端部の切断面を、I型開先の開
先面とするため、切削加工(機械加工仕上げ)により平
坦化した。このI開先の開先面を突合せ面として、レー
ザビーム溶接により突合せ溶接を行った。レーザビーム
溶接は表2に示す溶接条件(溶接速度、シールドガス)
で行った。なお、溶接装置はレーザ出力5.5kW、12kWの
レーザ溶接装置を用いた。
【0040】得られた溶接継手について、溶接金属の組
織、酸素含有量、Al含有量および靭性を調査した。な
お、溶接金属の靭性は、溶接金属中央部からJIS Z 2202
の規定に準拠してシャルピー衝撃試験片を採取し、0℃
における吸収エネルギーおよび延性−脆性破面遷移温度
V Trs )を求め、評価した。なお、シャルピー衝撃試
験片は、鋼板の厚さの制限と、衝撃試験時に亀裂が母材
側に逃れる現象(Fracture Pass Deviation )を防止す
るため、深さ0.5mm のサイドノッチを付与したハーフサ
イズ2mmVノッチシャルピー衝撃試験片とした。
【0041】また、溶接金属部の組織観察は、光学顕微
鏡( 400倍)で少なくとも5視野観察して、画像解析装
置により各視野におけるアシキュラーフェライト等各相
の面積率を計測し、観察した視野における各相の平均値
を求め、溶接金属中の各相の存在比率とした。得られた
結果を表3に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】本発明例はいずれも、溶接金属部の0℃に
おける吸収エネルギー(vE0 )が50J を超え、非常に優
れた溶接金属部靱性を有する高エネルギービーム溶接継
手となっている。これに対し、本発明の範囲から外れる
比較例では、溶接金属部靭性が低下している。
【0046】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、溶接金
属靭性に優れた高エネルギービーム溶接継手を、安価に
しかも安定して製造でき、産業上格段の効果を奏する。
また、本発明によれば、優れた溶接部靱性が要求される
船舶、建築、鉄鋼構造物等の分野へ、高エネルギービー
ム溶接を適用することが可能となり、工業的意義は極め
て大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安田 功一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4E066 CB00 4E068 BE03 DB01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼材を高エネルギービーム溶接により溶
    接接合し溶接金属部と溶接熱影響部を有する溶接継手を
    製造するにあたり、前記鋼材を、mass%で、Ti:0.005
    〜0.080 %、B:0.0003〜0.0040%含有し、かつ下記
    (1)式で定義される炭素当量Ceq が0.18〜0.42%の範
    囲である組成を有し、かつミルスケール厚さtm が鋼板
    厚さtp との関係で下記(2)式を満足するように調整
    された鋼材とし、かつ前記溶接接合の開先面を機械加工
    仕上げすることを特徴とする溶接金属部の靱性に優れた
    高エネルギービーム溶接継手の製造方法。記 Ceq =C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ………(1) 0.75tp ×10-3≦ tm ≦2tp ×10-3 ………(2) ここで、Ceq :炭素当量(mass%) C,Mn,Cr,Mo,V,Cu,Ni:各元素の含有量(mass
    %) tp :鋼材板厚(mm) tm :ミルスケール厚さ(mm)
  2. 【請求項2】 前記溶接金属部の組織が、面積率で50%
    以上のアシキュラーフェライト相を含むことを特徴とす
    る請求項1に記載の溶接金属部の靱性に優れた高エネル
    ギービーム溶接継手の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記溶接金属部の酸素含有量が、mass%
    で、0.01〜0.03%であることを特徴とする請求項1また
    は2に記載の溶接金属部の靱性に優れた高エネルギービ
    ーム溶接継手の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記溶接金属部のAl含有量(mass%)と
    酸素含有量(mass%)との比Al/Oが、0.5 以上1.5 以
    下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか
    に記載の溶接金属部の靱性に優れた高エネルギービーム
    溶接継手の製造方法。
  5. 【請求項5】 鋼材を高エネルギービーム溶接により溶
    接接合された溶接金属部と溶接熱影響部を有する溶接継
    手であって、前記鋼材を、mass%で、Ti:0.005 〜0.08
    0 %、B:0.0003%〜0.0040%含有し、かつ下記(1)
    式で定義される炭素当量 Ceqが0.18〜0.42%の範囲であ
    る組成を有し、かつミルスケール厚さt m が鋼板厚さt
    p との関係で下記(2)式を満足するように調整された
    鋼材とすることを特徴とする溶接金属部の靱性に優れた
    高エネルギービーム溶接継手。 記 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15 ・・・(1) 0.75t p ×10-3≦tm≦2tp×10-3 ・・・(2) ここで、 Ceq:炭素当量(mass%) C、Mn、Cr、Mo、V、Cu、Ni:各元素の含有量(mass
    %) t p :鋼材板厚(mm) t m :ミルスケール厚さ(mm)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008088504A (ja) * 2006-10-02 2008-04-17 Nippon Steel Corp 耐脆性破壊発生特性に優れた電子ビーム溶接継手
US8114528B2 (en) 2006-10-02 2012-02-14 Nippon Steel Corporation Electron beam welded joint excellent in brittle fracture resistance
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