JP2003231169A - 熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法及びポリスチレン系樹脂発泡シート - Google Patents

熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法及びポリスチレン系樹脂発泡シート

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JP2003231169A JP2002028740A JP2002028740A JP2003231169A JP 2003231169 A JP2003231169 A JP 2003231169A JP 2002028740 A JP2002028740 A JP 2002028740A JP 2002028740 A JP2002028740 A JP 2002028740A JP 2003231169 A JP2003231169 A JP 2003231169A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 冬季であっても2週間程度の熟成期間で熱成
形が可能になると共に、ロール状に巻いた発泡シートの
巻き方向及び幅方向における熱成形性が安定し、一定の
二次厚みの成形品を得ることができ、しかもシートライ
フが長い熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造
方法およびシートを提供する。 【解決手段】ポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを押出
機にて加熱、混練して発泡性溶融樹脂とし、これを押出
発泡することにより熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シ
ートを得る方法において、該物理発泡剤が、イソブタ
ン、ノルマルペンタン、イソペンタンの中から選択され
る1種以上の発泡剤が合計50〜95モル%と炭酸ガ
ス、水、沸点140℃以下のエーテル、沸点140℃以
下のジアルキルカーボネートの中から選択される1種以
上の発泡剤が合計5〜50モル%とからなる混合物理発
泡剤(発泡剤量の合計は100モル%)を主成分とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱成形用ポリスチ
レン系樹脂発泡シートの製造方法、及びポリスチレン系
樹脂発泡シートに関する。
【0002】
【従来の技術】ポリスチレン系樹脂発泡シートは熱成形
性に優れ、得られた成形品の外観が美麗で、しかも軽量
で断熱性に優れる等の特徴を有するため、食品容器の熱
成形用発泡シートとして近年大量に使用されている。
【0003】かかるポリスチレン系樹脂発泡シートは、
押出機内でポリスチレン系樹脂を加熱し溶融し、これに
発泡剤やタルク等の気泡調節剤を添加して前記溶融樹脂
と混練した後、押出機から大気圧中に押出して発泡させ
る等の方法によって製造されている。
【0004】上記発泡剤としては、安価である上、発泡
シートを熱成形する際の二次成形性に優れる等の理由か
ら工業用ブタンが広く使用されてきた。
【0005】しかしながら、工業用ブタンを発泡剤とし
て用いたポリスチレン系樹脂発泡シートの場合、発泡シ
ート中の発泡剤に含まれるノルマルブタンの逸散速度が
速いので、発泡シート中の発泡剤残存量が短期間で低下
しすぎるという欠点があった。即ち、発泡シート中の発
泡剤残存量が低下しすぎると、発泡シートの熱成形時に
おける加熱による厚みの膨張が少なくなり目的とする厚
み(以下、熱成形時の加熱による発泡シートの膨張を
「二次発泡」といい、発泡シートが膨張した後の厚みを
「二次発泡厚」という。)の成形品が得られなくなると
いう現象が起きていた。
【0006】このため、発泡シートを熱成形した時に目
的とする厚みの成形品を得ることができる熱成形適性期
間(以下、シートライフと呼ぶ。)が短くなるという問
題があった。かかる問題を解決し、シートライフが長い
発泡シートを製造するための方法が、特公平5−429
77号に開示されている。該方法は、発泡シートからの
逸散が遅いイソブタン70〜100重量%と、逸散が早
いノルマルブタン0〜30重量%とからなる混合発泡剤
を用いることにより、発泡シートのシートライフの長期
化を図るというものである。
【0007】しかしながら、特公平5−42977号の
方法で製造した発泡シートは、製造してから加熱成形が
可能になるまでの熟成期間が長くなりすぎるという欠点
があった。その結果、長期間在庫しておかなくてはなら
ないので、収益性が悪化するという問題が新たに発生し
た。
【0008】即ち、特公平5−42977号の方法で製
造した発泡シートはイソブタンを多量に用いて製造され
ているため、イソブタンの含有量が熱成形可能になるま
で減少する期間が長くなり、その期間内に熱成形を行な
うとイソブタンの可塑化効果により、発泡シートを熱成
形して得られる成形品に表面荒れが発生するという欠点
を有していた。その結果、熱成形時の表面荒れが起きな
くなるまで、発泡シートを倉庫に保管しなければなら
ず、保管にかかる費用が多大なものとなっていた。
【0009】尚、表面荒れが生じた成形品は、外観が損
われる上に成形品表面への印刷適性も低下し、商品とし
て通用しないものであった。
【0010】これらの問題を解決して、十分なライフサ
イクルの確保と、熟成期間の短縮化とを同時に満足する
ために、特開平7−165969号の方法が開示されて
いる。
【0011】特開平7−165969号の方法は、発泡
剤中のイソブタンの含有量を50〜70重量%とし、ノ
ルマルブタンの含有量を30〜50重量%とし、発泡シ
ートの全体密度に対して表層密度を特定範囲内に制御し
ながら押出発泡することにより、製造後から2週間程度
の熟成期間で熱成形を可能にすると共に、充分なシート
ライフを確保することを可能にした。
【0012】尚、特開平7−165969号の方法にお
いて、イソブタンに対するノルマルブタンの含有量を特
公平5−42977号記載の方法よりも増やしたのは、
ポリスチレン系樹脂に対する透過速度がイソブタンより
速いノルマルブタンの含有量を増やすことにより、発泡
シート中の発泡剤の減少の促進を図るためである。又、
発泡シートの全体密度に対して表層密度を特定範囲内に
制御しているのは、表層密度を相対的に高めることによ
り熱成形時の発泡シートの表面荒れを防ぐためである。
【0013】しかしながら、特開平7−165969号
の方法は十分なものではなく、次のような二つの問題点
を残していた。第一の問題は、冬季においては2週間程
度の熟成期間では足りずに3〜4週間が必要であるとい
う問題である。この問題は、ノルマルブタンはイソブタ
ンに比較すると、ポリスチレン系樹脂に対する透過速度
が速いとはいっても、空気のポリスチレン系樹脂に対す
る透過速度に比較すると1/8程度の速さであることに
起因するものである。その結果、夏季には2週間程度の
熟成期間で熱成形可能な範囲まで減少するが、冬季には
熱成形可能な範囲まで減少するには3〜4週間かかって
いた。
【0014】第二の問題は、2週間程度の熟成ではロー
ル状に巻かれている発泡シートの巻き方向及び幅方向に
おいて、二次厚や成形条件が大きく変化し、熱成形の安
定性に欠ける上に、得られた成形品の二次厚みが異なり
品質安定性に欠けるというものである。
【0015】第二の問題は、ロール状に巻かれている発
泡シートの外側部分においては発泡剤の残存量が低下し
ているのに対し、ロール内部に巻き込まれている部分に
おいては発泡剤の残存量が多いことが原因として考えら
れる。また、発泡シートの幅方向端部の発泡剤の残存量
が低下しているのに対し、幅方向中央部においては発泡
剤の残存量が多いことも原因として考えられる。
【0016】即ち、イソブタンはポリスチレン系樹脂に
対する透過速度が空気に対して非常に遅いために熟成期
間中においてもほとんど発泡シート外に散逸することが
ないのに対し、ノルマルブタンは熟成期間中に徐々に発
泡シート外へ散逸するために、ロール状に巻かれた外側
(外気と接している)とロール状に巻き込まれている内
側の部分で発泡剤の残存量に大きな差が生じることが、
熱成形性や二次厚みの違いが生じる原因であると考えら
れる。
【0017】又、ノルマルブタンのポリスチレン系樹脂
に対する透過速度が空気の1/8程度なので、発泡シー
ト中のノルマルブタンが減少する速度より、空気が発泡
シート中に侵入してくる速度が速いため、発泡シートの
気泡中の内圧が大気圧以上となることも、ロール状に巻
かれた発泡シートの外側と内部側で二次厚や熱成形性が
変化することの原因であると考えられる。
【0018】即ち、ロール状に巻かれた発泡シートの幅
方向外側における気泡中の内圧が大気圧以上になると、
隣合う発泡シートどうしが互いに締め付けあってシール
されたような状態になり、気体が発泡シートどうしの間
を通って流通することが妨げられるようになる。その結
果、ロール状内部のノルマルブタンは発泡シートどうし
の間を通って逸散しにくくなり、空気がロール外部から
発泡シートどうしの間を通って内部に入りにくくなり、
ロール状に巻かれた発泡シートの外側と内部側でノルマ
ルブタン含有量と空気含有量が大きく異なることになる
と考えられる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、冬季であっ
ても2週間程度の熟成期間で熱成形が可能になると共
に、ロール状に巻いた発泡シートの巻き方向及び幅方向
における熱成形性が安定し、一定の二次厚みの成形品を
得ることができ、しかもシートライフが長い熱成形用ポ
リスチレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供すること
を目的とする。又、本発明は、冬季であっても2週間程
度の熟成期間で熱成形が可能であると共にシートライフ
が長いポリスチレン系樹脂発泡シートを提供することを
目的とする。
【0020】
【課題を解決する手段】本発明は、(1)ポリスチレン
系樹脂と物理発泡剤とを押出機にて加熱、混練して発泡
性溶融樹脂とし、該発泡性溶融樹脂を押出発泡すること
により発泡シートを得る方法において、該物理発泡剤
が、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンの中
から選択される1種以上の発泡剤が合計50〜95モル
%と炭酸ガス、水、沸点140℃以下のエーテル、沸点
140℃以下のジアルキルカーボネートの中から選択さ
れる1種以上の発泡剤が合計5〜50モル%とからなる
混合物理発泡剤(但し、前記発泡剤からなる混合物理発
泡剤に含まれる発泡剤量の合計は100モル%であ
る。)を主成分とするものであることを特徴とする熱成
形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法、(2)
物理発泡剤が、イソブタン50〜95モル%と炭酸ガ
ス、水、沸点140℃以下のエーテルの中から選択され
る1種以上の発泡剤が合計5〜50モル%とからなる混
合物理発泡剤(但し、前記発泡剤からなる混合物理発泡
剤に含まれる発泡剤量の合計は100モル%である。)
を主成分とするものであることを特徴とする前記(1)
記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方
法(3)混合物理発泡剤がイソブタン70〜95モル%
と水5〜30モル%とを少なくとも含むことを特徴とす
る前記(1)または(2)記載の熱成形用ポリスチレン
系樹脂発泡シートの製造方法、(4)下記(1)式を満
足する量の物理発泡剤を押出機内に圧入することを特徴
とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の熱成形
用ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法、
【0021】
【数2】 50(モル/m)≦α・d≦90(モル/m)……(1)
【0022】但し、αはポリスチレン系樹脂1kgに対
する物理発泡剤の合計モル数(モル/kg)、dはポリ
スチレン系樹脂発泡シートの見かけ密度(kg/m
である。
【0023】(5)有機系物理発泡剤の合計残存量が、
得られるポリスチレン系樹脂発泡シート1kgに対して
0.45〜0.70モルとなるように、発泡性溶融樹脂
を押出発泡することを特徴とする前記(1)乃至(4)
のいずれかに記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シ
ートの製造方法、(6)厚みが0.5〜5mmであり、
見かけ密度が70〜150kg/mであり、有機系物
理発泡剤の合計残存量がポリスチレン系樹脂発泡シート
1kgに対して0.60モル超0.70モル以下であ
り、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンの中
から選択される1種以上の発泡剤の合計残存量が有機系
物理発泡剤の合計残存量に対して90〜100モル%で
あることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シート、
を要旨とする。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の熱成形用ポリスチレン系
樹脂発泡シートの製造方法においては、ポリスチレン系
樹脂を押出機にて加熱、熔融、混練し、更に物理発泡剤
を押出機内に圧入して混練して発泡性溶融樹脂とし、該
発泡性溶融樹脂を押出機内の高圧域から低圧域に押出す
ことにより、熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シート
(以下、単に発泡シートという。)が形成される。
【0025】前記発泡性溶融樹脂は、押出機先端に取り
付けた環状ダイを通して、押出機内の高圧域から低圧域
に押出して円筒状に発泡させた後、この円筒状発泡体を
押出方向に切り開いてシート状とすることが、発泡シー
トを効率的に製造できるので好ましい。但し、本発明に
おいては、押出機先端に取り付けたTダイを通して、発
泡性溶融樹脂を押出発泡してもよい。
【0026】本発明方法において用いられるポリスチレ
ン系樹脂は、スチレンの単独重合体及び共重合体を包含
する。該共重合体は、下記の一般式(1)で表されるス
チレン系モノマーを共重合成分として含有するものが好
ましく、該共重合成分のモノマー単位の含有量は、25
重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好まし
く、75重量%以上が特に好ましい。
【0027】
【化1】 上記一般式(1)において、Rは水素原子またはメチル
基を示し、Zはハロゲン原子またはメチル基を示し、p
は0または1〜3の整数である。
【0028】上記スチレンの単独重合体や共重合体は、
ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレン−アク
リロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリ
ロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、
スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリ
ル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共
重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレ
ン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイ
ン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル
共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの
混合物などが例示される。
【0029】上記ポリスチレン系樹脂は、ビカット軟化
点が100℃以上のものを使用することが、発泡シート
の耐熱性を向上させることができるので好ましい。ビカ
ット軟化点の上限は、特に制限はないが通常は130℃
である。尚、該ビカット軟化点はJISK7206(1
991)(試験荷重はA法、液体加熱法の昇温速度は5
0℃/時)にて求められる。
【0030】前記ポリスチレン系樹脂として、脆性改善
等が要求される場合は、耐衝撃性ポリスチレン、スチレ
ン−共役ジエンブロック共重合体や、該共重合体の水添
物を用いることが好ましい。
【0031】又、前記ポリスチレン系樹脂には、本発明
の目的を著しく損なわない範囲で、必要に応じて各種の
添加剤、例えば、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電
防止剤、導電性付与剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃
剤、無機充填剤、化学発泡剤等を添加することができ、
又その他の熱可塑性樹脂を混合することもできる。
【0032】本発明方法においては、通常、前記ポリス
チレン系樹脂に気泡調整剤を添加することにより、得ら
れる発泡シートの気泡径の調整が行われる。該気泡調整
剤としては、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸
カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、酸化
アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉
末、又は重炭酸ナトリウム、クエン酸モノナトリウム塩
等が例示される。これらの気泡調整剤は、通常は単独で
使用されるが2種以上組合せて用いてもよい。
【0033】気泡調整剤として用いる無機物粉末は、粒
子系が小さいほど発泡シートの気泡径を小さくする効果
が大きいので、使用量が少なくても気泡径を小さくする
ことができる。かかる観点から無機物粉末の平均粒子径
(遠心沈降法)は30μm以下であることが好ましく、
20μm以下であることがより好ましく、15μm以下
であることが更に好ましい。但し、平均粒子径が小さく
なるほど加工に費用がかかり、無機物粉末の価格が高く
なるので、0.1μmを下限とすることが好ましい。上
記無機物粉末の中でも、タルクが気泡径を小さくする効
果が大きいと共に安価なので最も好ましい。
【0034】本発明方法において用いられる前記物理発
泡剤としては、(i)イソブタン、ノルマルペンタン、
イソペンタンの中から選択される1種以上の発泡剤が合
計50〜95モル%、(ii)炭酸ガス、水、沸点140
℃以下のエーテル、沸点140℃以下のジアルキルカー
ボネートの中から選択される1種以上の発泡剤が合計5
〜50モル%、これら(i)の発泡剤と(ii)の発泡剤
との混合物理発泡剤(但し、混合物理発泡剤に含まれる
(i)の発泡剤と(ii)の発泡剤との発泡剤量の合計は
100モル%である。)を主成分とするものが使用され
る。
【0035】また、好ましくは前記物理発泡剤として、
(iii)イソブタン50〜95モル%、(iv)炭酸ガ
ス、水、沸点140℃以下のエーテルの中から選択され
る1種以上の発泡剤が合計5〜50モル%、これら(ii
i)の発泡剤と(iv)の発泡剤との混合物理発泡剤(但
し、混合物理発泡剤に含まれる(iii)の発泡剤と(i
v)の発泡剤との発泡剤量の合計は100モル%であ
る。)を主成分とするものが使用される。
【0036】尚、本発明において混合物理発泡剤を物理
発泡剤の主成分とするとは、本発明の目的、効果を阻害
しない範囲でその他の物理発泡剤を併用することができ
ることを意味するものであり、前記混合物理発泡剤は物
理発泡剤に対して概ね80モル%以上、好ましくは85
モル%以上、更に好ましくは90モル%以上含有され
る。上記その他の物理発泡剤としては、例えば、プロパ
ン、ノルマルブタン、イソペンタン等が挙げられる。但
し、ノルマルブタンのような、ポリスチレン系樹脂に対
する透過速度が空気の約1/8の発泡剤の含有量は少な
いほど好ましく、具体的には、押出発泡に使用される物
理発泡剤100重量部に対して0〜10重量部の範囲内
とすることが好ましい。
【0037】上記の通り特定される物理発泡剤を用いる
と、驚くべきことに冬季であっても夏季よりも速い熟成
期間(例えば2週間以下)で熱成形が可能になると共
に、短い熟成期間であっても、ロール状に巻いた発泡シ
ートの巻き方向及び幅方向における熱成形性が安定し、
一定の二次厚みの成形品を得ることができ、しかもシー
トライフが長い発泡シートを製造することができる。
【0038】前記混合物理発泡剤は、50〜95モル%
のイソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンの中か
ら選択される1種以上の発泡剤(以下、残留発泡剤とも
いう。)を含有する。残留発泡剤の含有量が50%未満
の場合は、得られる発泡シートの二次発泡厚が小さなも
のとなる。シートライフが長く、製造後40日経過後で
も十分な二次発泡厚を得ることができるという点から
は、混合物理発泡剤が残留発泡剤、特にイソブタンを7
0〜95モル%含むことが好ましい。
【0039】一方、混合物理発泡剤が残留発泡剤を95
モル%超含む場合は、残留発泡剤の可塑化効果により発
泡シートの熱成形可能な加熱温度や加熱時間の範囲が狭
くなる虞がある。即ち、わずかでも加熱しすぎると発泡
シートの表面荒れが発生するのに対し、加熱しすぎを警
戒して加熱時間を短めにすると加熱不足になり、発泡シ
ートが破れたり、金型形状通りの成形品を得ることがで
きなくなるという不都合が発生しやすくなる。かかる不
都合を回避するためには、混合物理発泡剤に含まれる残
留発泡剤が90モル%以下であることが好ましい。
【0040】尚、前記の残留発泡剤の効果は、残留発泡
剤のポリスチレン系樹脂に対する透過速度が極めて遅い
(空気のポリスチレン系樹脂に対する透過速度の(1/
10)以下である。)ことに起因するものである。
【0041】従って、本発明の技術に基づいて、残留発
泡剤の代わりにポリスチレン系樹脂に対する透過速度が
極めて遅い発泡剤を用いることができることが想起さ
れ、前記のもの以外にも存在してくることが予想され
る。よって、本発明の技術によれば、ポリスチレン系樹
脂に対する透過速度が空気に対して極めて遅いものであ
って、ポリスチレン系樹脂と共に押出機にて加熱、混練
して発泡性溶融樹脂とし、該発泡性溶融樹脂を押出発泡
すことさえできれば、残留発泡剤の代わりに、いかなる
発泡剤であっても使用することができるといえる。
【0042】本発明方法で用いる混合物理発泡剤は、炭
酸ガス、水、沸点140℃以下のエーテル、沸点140
℃以下のジアルキルカーボネートの中から選択される1
種以上からなる発泡剤(以下、早期逸散発泡剤とい
う。)を5〜50モル%含む。これらの発泡剤のポリス
チレン系樹脂に対する透過速度は極めて速く、ポリスチ
レン系樹脂に対する空気の透過速度よりも数倍速い(空
気のポリスチレン系樹脂に対する透過速度の5倍を超え
る)ので、大部分が発泡シート製造直後に発泡シートか
ら逸散し、たとえ該発泡剤が多少発泡シート中に残った
としても製造後極めて早期に発泡シートから逸散する。
従って、ノルマルブタンのように、熟成期間中徐々に発
泡シート外へ散逸することにより、ロール状の外側と内
部で発泡剤量が大きく異なるということがないので、ロ
ール状の巻き方向及び幅方向における発泡剤量が均一な
ものとなる。
【0043】又、多少の早期逸散発泡剤が発泡シート中
に残ったとしても早期逸散発泡剤はポリスチレン系樹脂
に対する透過速度が空気より速いため、空気が気泡内に
入ってくるより早期逸散発泡剤が気泡から出て行く速度
が速いので、発泡シートの気泡内部の圧力が大きく高ま
ることはない。従って、従来のロール状に巻かれた発泡
シートのように、養生初期において発泡シートどうしが
互いにきつく締め付けあって、ロール状に巻かれた発泡
シート内からの物理発泡剤の流出、発泡シート外からの
空気の流入を妨げるような状態になることがない。むし
ろ、従来のロール巻きの締付け状態と比較すると、発泡
シートどうしの締付け状態が多少緩めになるので、発泡
シートどうしの間を通って空気が効率よく流通すること
となるものと考えられる。
【0044】また、熟成期間中に発泡シート内部への空
気透過により気泡内圧が上昇し、ロール巻きされた発泡
シートどうしの締め付けがきつくなるという現象が、冬
季においては発泡体の剛性の増加により抑制されるた
め、更に空気が効率よく流通することが期待される。
【0045】前記沸点140℃以下のエーテルとして、
沸点が−30〜100℃のエーテルを用いることが好ま
しく、沸点が−30〜40℃のエーテルを用いることが
より好ましく、エチルメチルエーテル、ジメチルエーテ
ル、ジエチルエーテルを用いることが更に好ましい。
【0046】前記沸点140℃以下のジアルキルカーボ
ネートとして、沸点が−10〜130℃のジアルキルカ
ーボネートを用いることが好ましく、ジメチルカーボネ
ート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネ
ートを用いることが更に好ましい。
【0047】尚、前記早期逸散発泡剤は、安全性の点か
らは水、炭酸ガスを用いて構成されていることが好まし
い。
【0048】本発明の混合物理発泡剤は、前記早期逸散
発泡剤を5〜50モル%含み、好ましくは7〜40モル
%、より好ましくは10〜25モル%含むものである。
該早期逸散発泡剤の含有量が5モル%未満の場合は、得
られる発泡シートの熱成形性が低下する。一方、早期逸
散発泡剤の含有量が50モル%を超えると、得られる発
泡シートの二次発泡厚が小さなものとなる。
【0049】本発明方法においては、前記混合物理発泡
剤を主成分とする物理発泡剤を使用して発泡シートを製
造するので、従来技術において多量に併用していたノル
マルブタンが発泡シートから徐々に逸散するのとは異な
り、押出発泡後急速に早期逸散発泡剤が逸散する。従っ
て、製造後短期間で気泡内部の発泡剤或いは発泡シート
を構成するポリスチレン系樹脂に溶け込んでいる発泡剤
の大部分が残留発泡剤となる。従って、その後の熟成工
程において空気が気泡内部に取り込まれるだけで、充分
且つ均一な二次発泡性を示す発泡シートとなる。
【0050】本発明方法により得られた発泡シートは、
イソブタンを多量に使用する公知技術によって得られる
発泡シートの抱えていた二つの問題、熱成形時に表面が
荒れやすくなる、熟成期間が長くなるという問題を、残
留発泡剤と早期逸散発泡剤とが特定範囲内で配合された
混合物理発泡剤を用いて解決したものである。即ち、必
要以上のイソブタンが発泡シート中に含まれないように
することにより、熱成形時の表面荒れを防ぎ、熟成工程
においては空気が気泡中に取り込まれるだけで熱成形が
可能になる。更に、ロール巻きにされた内側の発泡シー
トの内部にも容易に空気が取り込まれるようになってい
ると考えられ、そのことによっても熟成工程の短縮化が
図られていると思われる。しかも、発泡シート中に含ま
れるガスが残留発泡剤と空気のみになので、シートライ
フが長い発泡シートとなる。
【0051】本発明方法により得られた発泡シートは、
以上説明したように、気泡内に残留発泡剤と空気を含有
するので長期間に亘り良好な二次発泡性を示すのでシー
トライフが長くなる。また、早期逸散発泡剤が製造後直
ちに逸散するので、該早期逸散発泡剤の使用量に対応し
てロール状に巻かれた発泡シートどうしの締付けが抑制
されていると考えられ、結果として空気がロール巻きに
された内側の発泡シートの内部にも早期に取り込まれる
こととなり、熟成期間が短縮される。
【0052】尚、本発明方法の技術に基づいて用いるこ
とができる早期逸散発泡剤は前記のもの以外にも存在し
てくることが予想される。従って、ポリスチレン系樹脂
に対する透過速度が空気に対して数倍速いものであっ
て、ポリスチレン系樹脂と共に押出機にて加熱、混練し
て発泡性溶融樹脂とし、該発泡性溶融樹脂を押出機内の
高圧域から低圧域に押出すことさえできれば、いかなる
発泡剤であっても使用することができる。参考として、
空気のポリスチレン系樹脂に対する透過速度を100と
した場合の各種発泡剤の透過速度を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】本発明方法においては、下記(1)式を満
足する量の物理発泡剤を押出機内に圧入することが好ま
しい。
【0055】
【数3】 50(モル/m)≦α・d≦90(モル/m)……(1)
【0056】但し、αは押出発泡に使用するポリスチレ
ン系樹脂1kgに対する物理発泡剤の合計モル数(モル
/kg)、dは押出発泡にて得られる発泡シートの見か
け密度(kg/m)である。
【0057】α・dが50(モル/m)未満の場合
は、目的とする見かけ密度の発泡シートを得ても、熱成
形時における十分な二次発泡厚が得られないものとなる
虞がある。一方、90(モル/m)を超える場合は、
目的とする見かけ密度の発泡シートを得ても、熱成形性
に劣るものとなる虞がある。
【0058】本発明方法によって得られる発泡シートの
見かけ密度は、好ましくは70〜300(kg/m
であり、更に好ましくは70〜150(kg/m)で
あり、特に好ましくは90〜150(kg/m)であ
る。見かけ密度が小さすぎる場合は、熱成形性が悪くな
り、金型通りの形状の成形品を得ることができなくなる
虞がある上に、得られる成形品の強度も低下する虞があ
る。一方、見かけ密度が大きすぎる場合は、軽量性、断
熱性、緩衝性等の発泡体の特徴が失われる虞がある。
【0059】本明細書における発泡シートの見かけ密度
は、発泡シートの単位面積あたりの重量を、発泡シート
の厚みにより除した値を単位換算することにより求めら
れる。
【0060】本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート
は、前述した本発明方法により製造することができる。
該発泡シートの厚みは、0.5〜5mmであり、好まし
くは0.5〜3.5mmであり、より好ましくは0.7
〜3mmである。厚みが薄すぎる場合は、熱成形によっ
て得られる成形品の強度が低下しすぎる虞があり、厚み
が厚すぎる場合は、熱成形性が悪くなり、成形品に厚み
むらが発生する虞がある。
【0061】本明細書における発泡シートの厚みの測定
は、発泡シートの全幅に沿って等間隔に10個所厚みを
測定し、求められた各測定値の算術平均値を発泡シート
の厚みとする。
【0062】本発明発泡シートの見かけ密度が特に70
〜150(kg/m)である場合は、熱成形性に優れ
ると共に、軽量性、断熱性、緩衝性が特に優れたものと
なる。
【0063】本発明発泡シートにおいては、有機系物理
発泡剤の合計残存量が発泡シート1kgに対して0.4
5〜0.70モル、更に0.60〜0.70モルである
ことが好ましい。該合計残存量が少なすぎる場合は、熟
成工程において大気と等しい圧力の空気が発泡シートに
取り込まれても、二次発泡厚が不十分な発泡シートにな
る。一方、多すぎる場合は、熱成形時に発泡シートの表
面荒れが発生する等の熱成形性が劣るものとなる。
【0064】本発明発泡シートにおいては、前記有機系
物理発泡剤の合計残存量の条件に加えて、イソブタン、
ノルマルペンタン、イソペンタンから選択される残留発
泡剤の合計残存量が有機系物理発泡剤の合計残存量に対
して90〜100モル%であることが好ましい。該残留
発泡剤の合計残存量が少なすぎる場合は、熟成工程に要
する時間の短縮、発泡シートのロングライフ化、発泡シ
ートの巻き方向及び幅方向における熱成形性が安定する
という効果を同時に達成できない虞がある。
【0065】本明細書における有機物理発泡剤の残存量
の測定は、発泡シートから採取した測定試料を、トルエ
ンを入れた蓋付の試料ビンの中に入れ、撹拌して発泡シ
ート中の発泡剤をトルエンに溶解させた後、発泡剤を溶
解したトルエンをマイクロシリンジで採取してガスクロ
マトグラフィー分析にかけて、内部標準法により求める
ことができる。
【0066】本発明の発泡シートはその連続気泡率が0
〜15%、更に0〜10%であることが、熱成形時の二
次発泡性に優れたものとなり、得られる成形品の機械的
強度、厚みの均一性において特に良好なものとなる点か
ら好ましい。
【0067】本明細書における連続気泡率の測定は、A
STM D−2856−70(手順C)に準じて次の様に
行なわれる。エアピクノメーターを使用して測定試料の
真の体積Vx(cm3)を求め、測定試料の外寸から見
掛けの体積Va(cm3)を求め、下記(2)式により
連続気泡率(%)を計算する。尚、真の体積Vxとは、
測定試料中の樹脂の体積と独立気泡部分の体積との和で
ある。
【0068】
【数4】 連続気泡率(%)={(Va−Vx)/(Va−W/ρ)}×100 …… (2)
【0069】(2)式において、Wは測定試料の重量
(g)、ρは発泡シートを構成する基材樹脂の密度(g
/cm3)である。
【0070】連続気泡率の測定における測定試料の寸法
は縦25mm、横25mm、厚み40mmである。本発
明においては、1枚のサンプルでは上記測定試料の寸法
に適合した寸法のものが得られないので、複数のサンプ
ルを重ね合わせて1つの測定試料を調製する。
【0071】上記測定試料のサンプリング箇所は複数と
し(10箇所以上が好ましい)、得られた複数の測定試
料についてそれぞれ連続気泡率を求めると共にそれらの
算術平均値を算出し、その値をもって本発明発泡シート
の連続気泡率とする。
【0072】本発明発泡シートにおいては、スキン層を
含む表層部分の密度が0.08〜0.35g/cm3
更に0.12〜0.28g/cm3、特に0.14〜
0.25g/cm3であること好ましい。かかる発泡シ
ートは、前記本発明の方法による特定混合比の発泡剤を
使用すると共に、発泡シート押出直後に冷却エアー等を
用いて発泡シート表面を冷却することにより調整でき
る。また、発泡シートの表層部分の密度を調整すること
により発泡シート自体の見かけ密度の調整も可能とな
る。上記範囲の表層部分の密度を有する発泡シートは成
形性が良好で、得られた成形品は機械的物性及び印刷適
性に優れたものとなるので好ましい。
【0073】また、上記の通り表層部分の密度を調整す
ることは、発泡シートの見かけ密度を調整(単に周知の
発泡剤量による調整方法だけによることなく上記方法に
て微調整できる)することに繋がる。そしてこのこと
は、本発明の方法による特定混合比の発泡剤の使用量
を、得られる発泡シートの見かけ密度に大きく制約され
ることなく、発泡シートの早期熟成完了を考慮した設計
に合わせて、発泡シート製造直後における発泡シート中
の残留発泡剤の残存量を容易に変更できる素晴らしい効
果をもたらす。
【0074】前記発泡シートのスキン層を含む表層部分
の密度の測定は、次のように行う。まず発泡シートから
縦20mm、横5mm、厚みが発泡シート厚みの短冊状
の発泡体を切り出す。次に該発泡体の表面から深さ20
0μmまでの部分をスライスして、縦20mm、横5m
m、厚み200μmのスキン層を含む表層部分の試験片
を得る。この操作によって測定しようとする発泡シート
の表面及び裏面において各々10個、合計20個の試験
片を得る。得られた20個の試験片について、各々重量
(g)を読み取り、重量を測定した試験片の外形寸法
(cm)から算出される体積(cm)にて割り算する
ことにより、各試験片の表層部分の密度を算出する。そ
して、20個の試験片の表層部分の密度の算術平均値を
もって、発泡シートのスキン層を含む表層部分の密度と
する。
【0075】本発明発泡シートにおいては、発泡シート
の厚み方向の平均気泡径:X、発泡シートの押出方向
(MD)の平均気泡径:Y、発泡シートの幅方向の平均
気泡径:Zとの間に、下記(a)〜(c)式で現される
関系が成り立つものが好ましい。
【0076】
【数5】 0.4≦X/Z≦0.9 ……(a)
【0077】
【数6】 0.4≦X/Y≦0.9 ……(b)
【0078】
【数7】 150μm≦(X+Y+Z)/3≦270μm ……(c)
【0079】発泡シートの厚み方向の平均気泡径:Xと
押出方向の平均気泡径の比:X/Y、厚み方向の平均気
泡径:Xと幅方向の平均気泡径:Zの比X/Zは、各々
0.5〜0.8であることがより好ましい。
【0080】X/Y、X/Zの一方又は両方が0.4未
満の場合は、扁平な形状の気泡となるため、発泡シート
を熱成形して得られる成形品の機械的強度が低下する虞
がある。一方、X/Y、X/Zが0.9を超える発泡シ
ートは、熱成形時のシートのドローダウンが大きなもの
となる虞がある。したがって、X/Y、X/Zの値が上
記範囲を満足するような形状の気泡を有する発泡シート
は、熱成形性、得られる成形品の機械的強度において優
れたものとなる。
【0081】前記厚み方向の平均気泡径:X、押出方向
の平均気泡径:Y、幅方向の平均気泡径:Zは、発泡シ
ートの押出方向の垂直断面及び、幅方向の垂直断面を顕
微鏡で観察して求めることができる。具体的には、次の
ようにして行う。
【0082】押出方向の平均気泡径:Yは、発泡シート
の押出方向に沿った垂直断面を顕微鏡等で拡大撮影し、
得られた垂直断面拡大図中において、発泡シート表面付
近、中央部及び裏面付近に、それぞれ、拡大前の長さが
5000μmに相当する水平な線を引く。次に、各線分
と交差する気泡の数n(nは、該線分上に気泡の一部が
交差するものも含む。)を求め、計算式:[5000/
(n−1)]により各線分上の気泡1個あたりの平均気
泡径を、表面付近、厚み方向中央部、裏面付近に引いた
計3本の線分の各々から求め、求められた気泡1個当た
りの各平均気泡径の算術平均値をもってY(μm)とす
る。
【0083】前記Zについては、発泡シートの幅方向に
沿った垂直断面を顕微鏡等で拡大撮影し、得られた幅方
向垂直断面拡大図中に、発泡シート表面付近、中央部及
び、裏面付近に、拡大前の長さが5000μmに相当す
る水平な線を引き、Yを求める操作と同様の操作により
求められる値をZ(μm)とする。
【0084】前記Xについては、押出方向垂直断面拡大
図によって求める。まず測定用試料の押出方向垂直断面
拡大図中に、発泡シートの全厚みに亘って垂直な直線を
引き、該直線と交差する気泡の数nを求め、計算式:
[発泡シートの厚み(μm)/n]により求められる
値をX(μm)とする。
【0085】本発明の発泡シートは、その片面又は両面
に非発泡のシートやフィルムを積層することにより、熱
成形性、剛性、引裂き強度等が改良された積層発泡シー
トとして構成することが好ましい。上記シート、フィル
ムを構成する熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレ
ン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、
エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹
脂、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン等のポリスチ
レン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹
脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、接着
層を設けなくても積層可能なポリスチレン系樹脂が好ま
しい。
【0086】前記積層されるシートやフィルムの厚みに
制限はないが、通常0.01〜0.3mmである。該厚
みが薄すぎる場合は、非発泡のシートやフィルムを積層
することによるシート物性等の向上効果が不十分となる
虞があり、厚すぎると軽量性が低下し、経済性が悪くな
る虞がある。
【0087】前記シートやフィルムの積層は、発泡シー
トのみを製造した後、別工程で製造されたフィルムやシ
ートを熱又は接着剤にて積層する方法、押出発泡した発
泡シートに他の押出機からフィルムやシートを押出して
積層するエクストルージョンラミネート法、発泡性溶融
樹脂と非発泡性熱可塑性溶融樹脂とを共押出する共押出
法により行なうことができる。
【0088】本発明の発泡シートは、雄型及び/又は雌
型からなる金型を用いて熱成形することができる。該熱
成形法としては、真空成形や圧空成形、更にこれらの応
用としてフリードローイング成形、プラグ・アンド・リ
ッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、スト
レート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エア
スリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリ
バースドロー成形等やこれらを組み合わせた成形方法等
が挙げられる。これらの熱成形法は、短時間に連続して
容器を得ることができるので、好ましい方法である。
【0089】本発明の発泡シートから熱成形によって得
られた成形品は、トレイ、丼、弁当箱、カップ等の用途
に好適に用いられる。
【0090】
【実施例】以下、実施例、比較例を挙げて本発明を更に
説明する。
【0091】実施例1 出光石油化学株式会社製スチレン系樹脂:HH32(M
I:1.6g/10分(200℃、49.03N))1
00重量部と、タルク1重量部とを直径90mmの第一
押出機に投入して加熱溶融混練した後、表2に示した物
理発泡剤を第一押出機内に圧入して混練した。次いで第
一押出機と接続された直径120mmの第二押出機内で
上記溶融混練物を冷却し、表2に示す樹脂温度で直径9
0mmの環状ダイから押出して円筒状に発泡させた。次
いでこの円筒状の発泡体を直径333mmの冷却された
円柱状の冷却装置の側面に沿わせて引き取り、押出方向
に切り開いて発泡シートを得た。
【0092】実施例2〜6、比較例1〜5 表2又は表3に示した発泡剤を押出機内に圧入して溶融
混練したこと、第二押出機内で溶融混練物を表2又は表
3に示す樹脂温度まで冷却したこと以外は、実施例1と
同様に発泡シートを得た。
【0093】実施例1〜6、及び比較例1〜5において
得られた発泡シートの厚み(mm)、坪量(g/
)、見かけ密度(g/cm)、有機系物理発泡剤
の全残存量、イソブタンの残存量、二次発泡倍率A、二
次発泡倍率B、熱成形時の発泡シートの表面荒れ、熱成
形時の発泡シート品質安定性Q及びQ’、α・d(モル
/m)等を表2又は3に併せて示す。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】有機系物理発泡剤の残存量の測定 発泡シートの有機系物理発泡剤の残存発泡剤量は、発泡
シート製造後30分間経過後に発泡シートから切り出し
たサンプルをトルエンの入った蓋付きの試料ビンの中に
入れ、内部標準としてシクロペンタンを加え、蓋を閉め
た後十分に攪拌して発泡シート中の有機系物理発泡剤を
トルエンに溶解させ、ガスクロマトグラフィー分析を行
なうことより求めた。
【0097】ガスクロマトグラフィー分析により得られ
たガスクロマトグラムのピーク面積から下記(3)式を
用いて試料中における各物理発泡剤の濃度(重量%)を
計算し、単位換算して有機系物理発泡剤の残存発泡剤量
(モル/kg)を求めた。
【0098】
【数8】 x=(F×A×W×100)÷(A×Wsm)……(3)
【0099】 x:試料中における各有機系物理発泡剤の重量%濃度 F:補正係数 A:標準物質のピーク面積 A:発泡剤のピーク面積 W:標準物質の重量 Wsm:試料重量
【0100】測定機は(株)島津製作所製GC-14Bを用
い、次の条件で測定した。 カラム:(株)島津製作所製カラムSilicone DC 550 20
% on Chromosorb W AW-DMCS 60/80mesh 4.1m×3.2m
m カラム温度:40℃ 検出器温度:180℃ 注入口温度:180℃ 検出器:FID キャリアガス:窒素140ml/min 試料量:2μl
【0101】二次発泡倍率の測定 長さ200mの発泡シートをロールに巻いた状態で温度
23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、製造直後から1
0日間熟成した。熟成終了後、ロール巻の最外周部から
260mm×260mmの試験片を切り出し、厚みを測
定した。次に、タバイエスペック(株)製恒温器:パー
フェクトオーブンオリジナルPH−200を用い、上記
試験片の周囲を内寸が縦200mm、横200mmの木
枠に固定した状態で、145℃で27秒間加熱し、室温
まで冷却してから厚みを測定した。加熱後の試験片の厚
みを加熱前の試験片の厚みで除した値を、二次発泡倍率
Aとした。
【0102】また、ロール巻の中間部(長さ200mの
発泡シートをロールの巻外から発泡シート長さ120m
の部分)の発泡シート幅方向中央部から260mm×2
60mmの試験片を切り出し、該試験片について二次発
泡倍率Aの測定と同様にして二次発泡倍率Bを求めた。
また、ロール巻の中間部の発泡シート幅方向端部から2
60mm×260mmの試験片を切り出し、該試験片に
ついて二次発泡倍率Aの測定と同様にして二次発泡倍率
Cを求めた。
【0103】品質安定性Q及びQ’ ロール巻の最外周部の二次発泡倍率Aとロール巻の中間
部の二次発泡倍率Bとの差「A−B」を求め、下記
(4)式により発泡シートをロールに巻いた状態での品
質安定性Qを求めた。また、ロール巻の中間部の幅方向
端部の二次発泡倍率Cとロール巻の中間部の幅方向中央
部の二次発泡倍率Bとの差「C−B」を求め、下記
(5)式により発泡シートをロールに巻いた状態での品
質安定性Q’を求めた。尚、品質安定性Q及びQ’は絶
対値が小さいほど、二次発泡倍率の差が小さく品質が安
定していることを意味する。
【0104】
【数9】 品質安定性Q=((A−B)/A)×100 ……(4)
【0105】
【数10】 品質安定性Q’=((C−B)/C)×100 ……(5)
【0106】熱成形時の発泡シートの表面荒れ 発泡シートを温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に
置き、製造から7日間熟成後、前記二次発泡倍率の測定
と同様の条件で二次発泡させた後、試験片表面を観察
し、表面荒れのないものを○、表面荒れのあるものを×
として評価した。
【0107】
【発明の効果】本発明の熱成形用ポリスチレン系樹脂発
泡シートの製造方法においては、発泡剤としてポリスチ
レン系樹脂に対する透過速度が空気よりも極めて遅い特
定量の発泡剤と、ポリスチレン系樹脂に対する透過速度
が空気よりも数倍速い特定量の発泡剤とからなる混合物
理発泡剤とを用いているので、本発明方法によって得ら
れる発泡シートは、熟成期間が短縮され冬季であっても
2週間程度の熟成期間で熱成形が可能になる。しかも、
2週間程度の熟成期間であっても、ロール状に巻いた発
泡シートの巻き方向及び幅方向における熱成形性が安定
し、一定の品質の成形品を得ることができ、しかもシー
トライフが長い。
【0108】本願発明のポリスチレン系樹脂発泡シート
は、特定範囲の厚み、特定範囲の見掛け密度、特定範囲
の物理発泡剤の合計残存量、特定範囲のイソブタンの残
存量を有している。従って、本発明の発泡シートはシー
トライフが長い上に、ロール状に巻かれた発泡シート全
体において、熱成形時の発泡シートの浪打を抑制するこ
とができると共に、熱成形時の発泡シートの表面荒れが
なく、良好な二次発泡性を示す一定の品質の容器などの
成形品を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B29K 105:04 B29K 105:04 B29L 7:00 B29L 7:00 C08L 25:04 C08L 25:04 (72)発明者 川田 卓 栃木県鹿沼市さつき町10−3 株式会社ジ ェイエスピー鹿沼研究所内 (72)発明者 太田 肇 栃木県鹿沼市さつき町10−3 株式会社ジ ェイエスピー鹿沼研究所内 Fターム(参考) 4F074 AA32 AC36 BA32 BA34 BA38 BA39 BA72 BA75 BA95 CA22 CC04X CC04Y CC05X CC22X CC61 DA02 DA03 DA06 DA12 DA23 DA24 DA34 4F207 AA13 AB02 AG01 AG20 AH55 AH56 KA01 KA11 KF04 4F208 AA13 AB02 AG01 AR15 MA01 MA02 MA03 MA05 MB01 MG01 MG05 MG13 MG22 MH06

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを押
    出機にて加熱、混練して発泡性溶融樹脂とし、該発泡性
    溶融樹脂を押出発泡することにより発泡シートを得る方
    法において、該物理発泡剤が、イソブタン、ノルマルペ
    ンタン、イソペンタンの中から選択される1種以上の発
    泡剤が合計50〜95モル%と炭酸ガス、水、沸点14
    0℃以下のエーテル、沸点140℃以下のジアルキルカ
    ーボネートの中から選択される1種以上の発泡剤が合計
    5〜50モル%とからなる混合物理発泡剤(但し、前記
    発泡剤からなる混合物理発泡剤に含まれる発泡剤量の合
    計は100モル%である。)を主成分とするものである
    ことを特徴とする熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シー
    トの製造方法。
  2. 【請求項2】 物理発泡剤が、イソブタン50〜95モ
    ル%と炭酸ガス、水、沸点140℃以下のエーテルの中
    から選択される1種以上の発泡剤が合計5〜50モル%
    とからなる混合物理発泡剤(但し、前記発泡剤からなる
    混合物理発泡剤に含まれる発泡剤量の合計は100モル
    %である。)を主成分とするものであることを特徴とす
    る請求項1記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シー
    トの製造方法。
  3. 【請求項3】 混合物理発泡剤がイソブタン70〜95
    モル%と水5〜30モル%とを少なくとも含むことを特
    徴とする請求項1または2記載の熱成形用ポリスチレン
    系樹脂発泡シートの製造方法。
  4. 【請求項4】 下記(1)式を満足する量の物理発泡剤
    を押出機内に圧入することを特徴とする請求項1乃至3
    のいずれかに記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シ
    ートの製造方法。 【数1】 50(モル/m)≦α・d≦90(モル/m)……(1) 但し、αはポリスチレン系樹脂1kgに対する物理発泡
    剤の合計モル数(モル/kg)、dはポリスチレン系樹
    脂発泡シートの見かけ密度(kg/m)である。
  5. 【請求項5】 有機系物理発泡剤の合計残存量が、得ら
    れるポリスチレン系樹脂発泡シート1kgに対して0.
    45〜0.70モルとなるように、発泡性溶融樹脂を押
    出発泡することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか
    に記載の熱成形用ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造
    方法。
  6. 【請求項6】 厚みが0.5〜5mmであり、見かけ密
    度が70〜150kg/mであり、有機系物理発泡剤
    の合計残存量がポリスチレン系樹脂発泡シート1kgに
    対して0.60モル超0.70モル以下であり、イソブ
    タン、ノルマルペンタン、イソペンタンの中から選択さ
    れる1種以上の発泡剤の合計残存量が有機系物理発泡剤
    の合計残存量に対して90〜100モル%であることを
    特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シート。
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