JP2003213168A - インク組成物、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インク組成物、及びインクジェット記録方法

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JP2003213168A JP2002012868A JP2002012868A JP2003213168A JP 2003213168 A JP2003213168 A JP 2003213168A JP 2002012868 A JP2002012868 A JP 2002012868A JP 2002012868 A JP2002012868 A JP 2002012868A JP 2003213168 A JP2003213168 A JP 2003213168A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光、熱、湿度及び環境中の活性ガスに対して
十分な堅牢性を有する新規な化合物、該化合物を用いた
着色組成物、特に光及び環境中のオゾンガスに対して堅
牢性の高い画像を形成することができるインクジェット
記録用インク、インクジェット記録方法及び形成画像保
存性改良方法を提供すること。 【解決手段】 化合物中に不斉炭素を少なくとも一つ有
する特定構造の置換基を有するフタロシアニン化合物、
それを用いた着色組成物、インク組成物、インクジェッ
ト記録方法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フタロシアニン化
合物を含むインク組成物、特にシアン色インクジェット
記録用水溶性インクと、そのインク保存安定性の改良方
法、フタロシアニン化合物の析出防止方法及びインクジ
ェット記録方法並びインクジェット記録の利用による画
像記録物のオゾンガス褪色耐性の改良方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、画像記録材料としては、特にカラ
ー画像を形成するための材料が主流であり、具体的に
は、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記
録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀
感光材料、印刷インク、記録ペン等が盛んに利用されて
いる。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子におい
て、ディスプレーではLCDやPDPにおいて、カラー画像を
記録・再現するためにカラーフィルターが使用されてい
る。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターで
は、フルカラー画像を再現あるいは記録する為に、いわ
ゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔
料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現出来
る吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件、環境条件
に耐えうる堅牢な色素がないのが実状であり、改善が強
く望まれている。
【0003】インクジェット記録方法は、材料費が安価
であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少
ないこと、更にカラー記録が容易であることから、急速
に普及し、更に発展しつつある。インクジェット記録方
法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方
式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマン
ド方式が有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力
を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気
泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた
方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式
がある。また、インクジェット用インクとしては、水性
インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが
用いられる。
【0004】このようなインクジェット用インクに用い
られる色素に対しては、溶剤に対する溶解性あるいは分
散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、イン
ク保存安定性に優れること、色相が良好であること、
光、熱、環境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性
ガスの他SOxなど)に対して堅牢であること、水や薬
品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して
定着性が良く滲みにくいこと、インクとして長期保存性
に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、
更には、安価に入手できることが要求されている。
【0005】良好なシアン色相を有し、光、湿度、熱に
対して堅牢な色素であること、中でも多孔質の白色無機
顔料粒子を含有するインク受容層を有する受像材料上に
印字する際には環境中のオゾンなどの酸化性ガスに対し
て堅牢であることが望まれているが、特にインク保存安
定性との両立が強く望まれている。
【0006】これまでシアン色素としては、殆どの場
合、色相と光堅牢性に優れたフタロシアニン化合物が使
用されているが、酸化性ガス、特にオゾンに対しては充
分な堅牢性を有しておらず、インク安定性をも満足でき
ていないので改良が望まれている。
【0007】最も広範囲に報告され、利用されている代
表的なフタロシアニン化合物としては、以下の〜で
分類されるフタロシアニン誘導体が挙げられる。
【0008】Direct Blue 86又はDi
rect Blue 199のような銅フタロシアニン化
合物[例えば、Cu-Pc-(SO3Na)m:m=1〜4の
混合物](以下,Pcはフタロシアニン骨格を意味す
る)。
【0009】特開昭62−190273号、特開昭6
3−28690号、特開昭63−306075号、特開
昭63−306076号、特開平2−131983号、
特開平3−122171号、特開平3−200883
号、特開平7−138511号等に記載のフタロシアニ
ン色素[例えば、Cu-Pc-(SO3Na)m(SO2NH
2n:m+n=1〜4の混合物]
【0010】特開昭63−210175号、特開昭6
3−37176号、特開昭63−304071号、特開
平5−171085号、特開平10−36741号等に
記載のフタロシアニン色素〔例えば、Cu-Pc-(CO
2H)m(CONR12n:m+n=0〜4の混合物〕
【0011】特開昭59−30874号、特開平1−
126381号、特開平1−190770号、特開平6
−16982号、特開平7−82499号、特開平8−
34942号、特開平8−60053号、特開平8−1
13745号、特開平8−310116号、特開平10
−140063号、特開平10−298463号、特開
平11−29729号、特開平11−320921号、
EP173476A2号、EP468649A1号、E
P559309A2号、EP596383A1号、DE
3411476号、US6086955号、WO 99
/13009号、GB2341868A号等に記載のフ
タロシアニン色素[例えば、Cu-Pc-(SO3H)
m(SO2NR12n:m+n=0〜4の混合物、且
つ、m≠0]
【0012】特開昭60−208365号、特開昭6
1−2772号、特開平6−57653号、特開平8−
60052号、特開平8−295819号、特開平10
−130517号、特開平11−72614号、特表平
11−515047号、特表平11−515048号、
EP196901A2号、WO 95/29208号、
WO 98/49239号、WO 98/49240
号、WO 99/50363号、WO 99/6733
4号等に記載のフタロシアニン色素〔例えば、Cu-P
c-(SO3H)l(SO2NH2m(SO2NR12n
l+m+n=0〜4の混合物〕
【0013】特開昭59−22967号、特開昭61
−185576号、特開平1−95093号、特開平3
−195783号、EP649881A1号、WO 0
0/08101号、WO 00/08103号等に記載
のフタロシアニン色素〔例えば、Cu-Pc-(SO2
12n:n=1〜5の混合物〕
【0014】ところで、現在一般に広く用いられている
Direct Blue 87又はDirect Blu
e 199に代表されるフタロシアニン色素について
は、一般に知られているマゼンタ色素やイエロー色素、
トリフェニルメタン系シアン色素に比べ耐光性に優れる
という特徴がある。しかしながら、フタロシアニン色素
は酸性条件下ではグリーン味の色相であり、シアンイン
クには不適当である。そのためこれらの色素をシアンイ
ンクとして用いる場合は中性からアルカリ性の条件下で
使用するのが最も適している。しかしながら、インクが
中性からアルカリ性でも、用いる被記録材料が酸性紙で
ある場合印刷物の色相が大きく変化する可能性がある。
さらに、昨今環境問題として取りあげられることの多い
酸化窒素ガスやオゾン等の酸化性ガスによってもグリー
ン味に変色及び消色し、同時に印字濃度も低下してしま
う。今後、使用分野が拡大して、広告等の展示物に広く
使用されると、光や環境中の活性ガスに曝される場合が
多くなるため、特に良好な色相を有し、光堅牢性及び環
境中の活性ガス(NOx、オゾン等の酸化性ガスの他S
Oxなど)堅牢性に優れた色素及びインク組成物がます
ます強く望まれるようになる。
【0015】一方、インクジェット記録方式のインク
(以下、後者をインクジェット記録用インクともいう)
としては水系のインクが主に用いられている。水系イン
クは、基本的に色素、水及び有機溶剤から構成されてお
り、臭気、人体及び周辺環境への安全性の配慮から、水
を主溶媒とする。また、色素としては、一般的には酸性
染料、塩基性染料、反応性染料及び直接染料等の水溶性
染料が使用されている。
【0016】このようなインクジェット記録用インク
(及び色素)に関しては、以下に示す様々な要求特性が
挙げられる。
【0017】すなわち、(1)インクの粘度、表面張
力、比電導度、密度、pH等の物性値が適当であるこ
と、(2)インクの長期保存安定性が良好であること、
(3)溶解成分の溶解安定性が高く、ノズルを目詰まり
させないこと、(4)被記録材での速乾性が良好である
こと、(5)記録画像が鮮明であり、耐光性、耐水性が
良好であること、などであるが、従来のインクはこれら
全ての特性を満足するには至っていない。
【0018】通常使用されている水系インクの場合、水
溶性染料を使用している。このため、記録画像に水が掛
かった場合は染料が溶出し、記録画像が滲んだり、消失
してしまうなど耐水性に大きな問題がある。特にインク
ジェット記録方式におけるヘッドの目詰まりが課題であ
り、現在、インク保存安定性を主眼とした様々の検討が
なされている。
【0019】例えば、顔料あるいは油溶性染料を色素と
して用いたインクや、水溶性染料を用いた水性インクに
有機溶剤や樹脂等を添加する方法などが検討されてい
る。しかしながら、顔料を用いたインクは分散安定性が
悪く保存安定性が劣ったり、ノズルの目詰まりを引き起
こす等の問題がある。また、油溶性染料を用いたインク
では有機溶剤が使用されているため、臭気など環境衛生
等に問題があったり、インクの滲みが大きく画像品位の
低下を招くなどの問題があった。また、添加剤を加えた
インクの場合でも、保存安定性が劣ったり、ノズルの目
詰まり、あるいはインクが高粘度化しインクの飛翔が悪
い等の問題点もあった。
【0020】特開2000−303014号、特開20
00−313837号等に開示のものは、分散安定性が
良化され、優れた保存安定性を示すフタロシアニン顔料
に関するものであるが、いずれも色相と光及び酸化性ガ
ス堅牢性を両立させるには至っておらず、市場の要求を
充分に満足する製品を提供するには至っていない。
【0021】最近では特開平6−340835号公報、
特開平12−239584号公報、WO00/08102号等に染
料又は顔料によって着色されたポリエステル樹脂を分散
質とする水系分散体を用いたインクが記載されている。
しかしながら、この方法を利用しても前記課題が未だ充
分に解決されておらず、他方、染料についても、画像濃
度の低下、耐水性の低下、保存安定性、ノズルの目詰ま
り等に直接関与する樹脂との相溶性や着色樹脂微粒子の
平均粒径の制御が課題であると記されている。
【0022】従来、使用されているインクジェット用の
水性シアン色インクには、銅フタロシアニン化合物をス
ルホン化したスルホ基やスルホ基の塩を置換基とする銅
フタロシアニン化合物等の水溶性染料が用いられてい
る。このような化合物の合成法においては、スルホ基の
導入数をコントロールすることが難しく、スルホ基が分
子中に1又は2個導入された水溶性の低い副生成物が混
入してくる。そのため、インク保存安定性は不充分とな
り目詰まりを生じる。
【0023】また、油溶性染料としては、スルファモイ
ル基及び/又はスルホ基とアミン化合物とのイオン対を
含むスルホン酸のアンモニウム塩を有するフタロシアニ
ン化合物が知られている。このフタロシアニン化合物
は、金属フタロシアニン化合物をクロルスルホン酸でク
ロロスルホン化した後、取り出して得られたフタロシア
ニン化合物のクロロスルホン化体とアミン化合物とを反
応させて製造される(例えば、細田豊著「理論製造染料
化学」昭和43年7月15日5版発行、(株)技報堂発
行、798〜799頁)。この製造法ではフタロシアニ
ン化合物のクロルスルホン体とアミン化合物との反応に
おいて、スルホン酸アミド基が形成される他に、クロロ
スルホニル基が一部加水分解して、スルホ基として残存
したり、スルホ基とアミン化合物との対イオンを形成し
たスルホン酸のアンモニウム塩を含むフタロシアニン化
合物が得られる。
【0024】このようにして得られたフタロシアニン化
合物をインクジェット記録用色素として用いた場合、イ
ンクの溶媒に対する溶解性が低くインクの調製ができな
かったり、必要な濃度のインクが作製できないなどの問
題点がある。また、残存スルホ基の影響で、普通紙に印
字した時に滲みが生じたり、記録画像の耐水性が悪くな
ったり、その他の諸特性に好ましくない影響を与えるこ
とがあった。
【0025】このようにインク、特にインクジェット記
録方式に用いられるインクの諸特性は、色素固有の特性
に依存するところが大きく、前記の諸条件を満たす色素
を選択することが極めて重要である。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来に
おける問題を解決し、以下の目的を達成することを課題
とする。即ち、本発明の目的は、(1)色再現性に優れ
た吸収特性を有し、且つ光,熱,湿度及び環境中の活性
ガスに対して十分な堅牢性を有する新規な着色組成物を
提供すること、(2)とりわけ、上記(1)に記載の特
性を有し,かつ、インクジェット記録などの印刷用のイ
ンクなどに用いられる各種着色組成物を提供すること、
(3)更に、該フタロシアニン色素誘導体の使用により
良好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾ
ンガスに対して堅牢性が高く、耐水性に優れた画像を形
成することができ、特にインクの長期保存安定性に優れ
た、インクジェット記録用インク及びインクジェット記
録方法及び形成画像の保存安定性の改良方法を提供する
こと、及び(4)上記のインクジェット記録方法を利用
することによって、画像記録物のオゾンガス褪色耐性を
向上させる画像堅牢化方法を提供することを目的とす
る。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、良好な色
相と光、ガス(特にオゾンガス)に対し高堅牢でインク
の長期保存安定性の高いフタロシアニン化合物を詳細に
検討したところ、従来知られていない(1)特定の吸収
特性、(2)特定の酸化電位、(3)特定の色素構造、
(4)インク中での結晶析出がなく高い水溶性、また耐
水性を有する下記一般式(I)、好ましくは一般式(I
I)、特に一般式(III)で表されるフタロシアニン化合
物を含有する着色組成物により、上記目的が達成される
ことを見出し、この新規な知見をもちに、本発明を完成
するに至った。すなわち、上記の本発明の課題は、下記
の手段によって達せられる。
【0028】すなわち、本発明は、下記の着色組成物、
インクジェット用インク、インクジェット記録方法及び
オゾンガス褪色耐性の改良方法、中でもインク保存安定
性改良方法によって達せられる。 1.酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であ
るフタロシアニン化合物において、不斉炭素が少なくと
も一つ含有することを特徴とする着色組成物。 2.酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であ
るフタロシアニン化合物において、不斉炭素が少なくと
も一つ含有することを特徴とする着色組成物を用いる事
による画像のオソ゛ン耐性改良方法。 3.酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であ
り、分子量が680〜3500の範囲のフタロシアニン
において、不斉炭素が少なくとも一つ含有することを特
徴とする着色組成物。 4.酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であ
り、分子量が680〜3500の範囲のフタロシアニン
において、不斉炭素が少なくとも一つ含有することを特
徴とする着色組成物を用いる事による画像のオソ゛ン耐性改
良方法。 5.下記一般式(I)で表される化合物中に不斉炭素を
少なくとも一つ有することを特徴とするインク。
【0029】
【化4】
【0030】一般式(I)中、X1、X2、X3及びX4
それぞれ独立に−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR
12、スルホ基、−CONR12、−CO21又は−C
OR1を表す。Zはそれぞれ独立に置換もしくは無置換
のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル
基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは
無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール
基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R1、R2
それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアル
キル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換
もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換の
アラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換
もしくは無置換の複素環基を表す。 Y1、Y2、Y3及び
4はそれぞれ独立に、一価の置換基を表す。但し、
1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4のいずれか
に少なくとも一つの不斉炭素を有する。a1〜a4、b1
〜b4は、それぞれX1〜X4、及びY1〜Y4の置換基数
を表す。a1〜a4はそれぞれ独立に0〜4の数を表す
が、全てが同時に0になることはない。 b1〜b4はそれ
ぞれ独立に0〜4の数を表す。なお、a1〜a4及びb1
〜b4が2以上の数を表す時、複数のX 1〜X4、及びY1
〜Y4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは水素
原子、金属原子又はその酸化物、水酸化物もしくはハロ
ゲン化物である。 6.前記一般式(I)が下記一般式(II)で表される化
合物であることを特徴とする前記5に記載のインク。
【0031】
【化5】
【0032】前記一般式(II)において、X1〜X4、Y
1〜Y8、Mは一般式(I)の中のX1〜X4、Y1〜Y4
Mとそれぞれ同義である。a1〜a4はそれぞれ独立に1
又は2の整数を表す。 7.前記一般式(II)が下記一般式(III)で表される
化合物であることを特徴とする前記6に記載のインク。
【0033】
【化6】
【0034】前記一般式(III)において、X1〜X4
Mは一般式(I)の中のX1〜X4、Mとそれぞれ同義で
ある。a1〜a4はそれぞれ独立に1又は2の整数を表
す。 8.支持体上に白色無機顔料粒子を含有する受像層を有
する受像材料にインク滴を記録信号に応じて吐出させ、
受像材料上に画像を記録するインクジェット記録方法で
あって、前記5〜7のいずれかに記載のインクを用いる
ことを特徴とするインクジェット記録方法。 9.一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物の
水溶液の分光吸収において、分光吸収曲線における66
0nmから680nmに至る吸収帯内の最大吸光度b
と、600nmから640nmに至る吸収帯内の最大吸
光度aとの吸光度比b/aが1未満であるフタロシアニ
ン化合物を含有する着色組成物。
【0035】
【発明の実施の形態】以下に、本発明についてさらに詳
細に説明する。
【0036】[フタロシアニン化合物]本発明に用いるフ
タロシアニン化合物(本発明の化合物と称する)は、分
子内に少なくとも一つの不斉炭素を含有することから、
同一構造に対して複数の立体異性体が存在するが、本発
明においては、可能性のある全ての立体異性体を包含し
ている。本発明のインクは複数の立体異性体の一種、又
はその複数を混合物として含有する。また、本発明の化
合物において、不斉炭素が複数の場合、1つの置換基に
2つ以上存在してもよく、また別々の置換基に跨って存
在しても良い。
【0037】一般に、分子に不斉炭素を導入すること
で、複数の立体異性体が存在するようになると、立体異
性体間の積み重なりは不可能なので、結晶化を阻害する
ことができ、インク中における色素の保存安定性の改良
が期待できる。
【0038】本発明者らは、数種のフタロシアニン化合
物の結晶性、保存安定性について検討したところ、不斉
炭素を導入することで、上記課題を解決でき、導入前か
ら有していた物性(良好な色相、堅牢性等)と両立可能
なことを見出した。
【0039】本発明では、求電子剤であるオゾンとの反
応性を下げるために、フタロシアニン骨格に電子求引性
基を導入して酸化電位を1.0V(vs SCE)より
も貴とすることが望ましい。酸化電位は貴であるほど好
ましく、酸化電位が1.1V(vs SCE)よりも貴
であるものがより好ましく、1.2V(vs SCE)
より貴であるものが最も好ましい。
【0040】本発明者らは着色画像のオゾンガス堅牢性
について研究したところ、着色画像に用いる化合物の酸
化電位とオゾンガス堅牢性との間に相関があり、酸化電
位の値が飽和カロメル電極(SCE)に対して1.0V
よりも貴であるフタロシアニン化合物を用いてオゾンガ
ス堅牢性がより改良されることが分かった。
【0041】着色画像のオゾンガス堅牢性が改良される
理由としては、化合物とオゾンガスのHOMO(最高被占軌
道)及びLUMO(最低空軌道)の関係によって説明でき
る。すなわち、着色化合物のHOMOとオゾンガスのLUMOと
の反応により着色化合物が酸化されて、その結果着色画
像のオゾンガス堅牢性が低下していると考えられるた
め、オゾンガス堅牢性を向上させるには、化合物のHOMO
を下げてオゾンガスとの反応性を低下させればよい。
【0042】酸化電位の値は、試料から電極への電子の
移りやすさを表わし、その値が大きい(酸化電位が貴で
ある)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換
えれば、酸化されにくいことを表わす。化合物の構造と
の関連では、電子求引性基を導入することにより酸化電
位はより貴となり、電子供与性基を導入することにより
酸化電位はより卑となる。
【0043】酸化電位の測定方法は下記に詳述するが、
化合物がボルタンメトリーにおいて陽極で、化合物の電
子が引き抜かれる電位を意味し、その化合物の基底状態
におけるHOMOのエネルギーレベルと近似的に一致す
ると考えられている。
【0044】酸化電位の値(Eox)は当業者が容易に測
定することができる。この方法に関しては、例えばP.
Delahay著“New Instrumental
Methods in Electrochemist
ry”(1954年 Interscience Pu
blishers社刊)やA.J.Bard他著“El
ectrochemical Methods”(19
80年 JohnWiley & Sons社刊)、藤
嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版
社刊)に記載されている。
【0045】酸化電位の測定について具体的に説明す
る。酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラ
プロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチ
ルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被
験試料を1×10-4〜1×10 -6mol・dm-3の濃度
に溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポー
ラログラフィーを用いてSCE(飽和カロメル電極)に
対する値として測定する。また、用いる支持電解質や溶
媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを
選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶
媒については藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年
技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
【0046】酸化電位の値は、液間電位差や試料溶液の
液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位するこ
とがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を用い
て校正することにより、測定された電位の値の再現性を
保証することができる。
【0047】本発明における酸化電位は、0.1mol
・dm-3の過塩素酸テトラプロピルアンモニウムを支持
電解質として含むN,N−ジメチルホルムアミド中(化
合物の濃度は1×10-3mol・dm-3)で、参照電極
としてSCE(飽和カロメル電極)、作用極としてグラ
ファイト電極、対極として白金電極を使用し、直流ポー
ラログラフィーにより測定した値を使用する。
【0048】また、化合物の構造によっても酸化電位は
異なるため、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げる
ためには、元々酸化電位が貴である色素構造を選択した
ほうが、オゾンガス堅牢性の観点だけでなく、その他の
堅牢性、色相、物性などを調節するために電子求引性基
又は電子供与性基を任意に導入することができるため、
分子設計の観点からもより好ましいと言える。
【0049】例えば、求電子剤であるオゾンとの反応性
を下げるために、化合物の構造のうち任意の位置に電子
求引性基を導入して酸化電位をより貴とすることが好ま
しい。従って、置換基の電子求引性や電子供与性の尺度
であるハメットの置換基定数σp値を用いれば、σp値
が大きい置換基を導入することにより酸化電位をより貴
とすることができる。
【0050】ハメットの置換基定数σp値について説明
する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に
及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.
P. Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今
日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められ
た置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は
多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、
J. A. Dean編“Lange's Handbook of Chemistry”第12
版(1979年 McGraw-Hill)や「化学の領域」増刊、122
号、96〜103頁(1979年 南光堂)に詳しい。
【0051】本発明に用いるフタロシアニン化合物は、
溶液の分光吸収曲線における660nmから680nm
に至る吸収帯内の最大吸光度bと、600nmから64
0nmに至る吸収帯内の最大吸光度aとの吸光度比b/
aが1未満であって、かつ一般式(I)で表されるフタ
ロシアニン化合物である。本明細書においては、吸光度
比は下記の条件のもとで得られる吸光度比を指してい
る。すなわち、JIS Z8120-86の定義に準拠する分光光
度計によって、測定温度を15〜30℃の範囲から選択
し、測定セル長10mmとし、本発明のフタロシアニン
化合物を2.5mg〜3.5mgの範囲でメスフラスコ
に秤量した後に、蒸留水を加え溶解させながら100m
lになるまで蒸留水を添加して得られた溶液で分光吸収
曲線を求め、求めた分光曲線の660nmから680n
mに至る吸収帯内の最大吸光度bと、600nmから6
40nmに至る吸収帯内の最大吸光度aとの比b/aを
もって吸光度比とする。
【0052】上記の吸光度比の求め方を説明する。上記
分光光度計,測定セル長、pHの条件のもとで、縦軸を
吸光度(ABS)、横軸を波長(nm)にとったフタロ
シアニン化合物水溶液の分光吸収曲線において、660
nmから680nmにおける最大吸光度bが1.0
(0.8〜1.0であればよい)になるように蒸留水で
希釈して測定されており、このときの600nm〜64
0nmにおける最大吸光度aを読みとって本発明で規定
した条件下での吸光度比b/aが容易に求められる。な
お、水溶液の調製や希釈に用いる上記の蒸留水としては
pHが5〜8内にある蒸留水を用いるものとする。
【0053】この吸光度比b/aの値が1未満の水溶性
フタロシアニン化合物であると、着色剤としての形成画
像の堅牢性(特に、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性)が
より良好な特性を有する。吸光度比b/aの値が0.8
未満であることが好ましく、0.6以下であることが特
に好ましい。
【0054】次に本発明のインクに用いられる下記一般
式(I)で表されるフタロシアニン化合物について詳細
に説明する。本発明のインクは、着色剤として下記一般
式(I)で表されるフタロシアニン化合物を含有する。
【0055】
【化7】
【0056】一般式(I)中、X1、X2、X3及びX4
それぞれ独立に−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR
12、スルホ基、−CONR12、−CO21又は−C
OR1を表す。これらの不斉炭素を有する置換基は、フ
タロシアニンの各ベンゼン環に少なくとも一つずつ有す
ることが好ましく、フタロシアニン骨格全体の置換基の
σp値の合計で1.6以上となるように導入することが好
ましい。これらの置換基の中でも、−SO−Z、−SO
2−Z、−SO2NR12、又は−CONR12が好まし
く、特に−SO2−Z、又は−SO2NR12が最も好ま
しい。ここで、前述のように、その置換基数を表すa1
〜a4が2以上の数を表す時、複数のX1〜X4はそれぞ
れ同一でも異なっていても良く、それぞれ独立に上記の
いずれかの基を表す。
【0057】Zはそれぞれ独立に置換もしくは無置換の
アルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置
換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、
置換もしくは無置換の複素環基を表す。好ましくは、置
換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の
アリール基、置換もしくは無置換の複素環基であり、そ
の中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換複素環
基が最も好ましい。
【0058】R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子、置
換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の
シクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル
基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは
無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を
表す。好ましくは水素原子、置換もしくは無置換のアル
キル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしく
は無置換の複素環基であり、その中でも水素原子、置換
アルキル基、置換アリール基、置換複素環基が最も好ま
しい。但し、R1,R2がいずれも水素原子であることは
好ましくない。
【0059】R1、R2及びZが表す置換もしくは無置換
のアルキル基としては、炭素原子数が1〜30のアルキ
ル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高
めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、特
に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好
ましい。置換基の例としては、後述のZ,R1,R2
1,Y2,Y3,及びY4が更に置換基を持つことが可能
な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも水酸
基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、ス
ルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させ
るので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親
水性基を有していても良い。
【0060】R1、R2及びZが表す置換もしくは無置換
のシクロアルキル基としては、炭素原子数が5〜30の
シクロアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やイン
ク安定性を高めるという理由から、不斉炭素を有する場
合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例と
しては、後述のZ,R1,R2,Y1,Y2,Y3,及びY 4
が更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じも
のが挙げられる。中でも水酸基、エーテル基、エステル
基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会
合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この
他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良
い。
【0061】R1、R2及びZが表す置換もしくは無置換
のアルケニル基としては、炭素原子数が2〜30のアル
ケニル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性
を高めるという理由から、分岐のアルケニル基が好まし
く、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が
特に好ましい。置換基の例としては、後述のZ,R1,R
2,Y1,Y2,Y3,及びY4が更に置換基を持つことが
可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも水
酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、
スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上さ
せるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性
親水性基を有していても良い。
【0062】R1、R2及びZが表す置換もしくは無置換
のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアル
キル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を
高めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、
特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に
好ましい。置換基の例としては、後述のZ,R1,R2
1,Y2,Y3,及びY4が更に置換基を持つことが可能
な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも水酸
基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、ス
ルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させ
るので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親
水性基を有していても良い。
【0063】R1、R2及びZが表す置換もしくは無置換
のアリール基としては、炭素原子数が6〜30のアリー
ル基が好ましい。置換基の例としては、後述のZ,R1
2,Y1,Y2,Y3,及びY4が更に置換基を持つこと
が可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも
染料の酸化電位を貴とし堅牢性を向上させるので電子吸
引性基が特に好ましい。電子吸引性基としては、ハメッ
トの置換基定数σpが正のものを挙げることが出来る。
中でも、ハロゲン原子、複素環基、シアノ基、カルボキ
シル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルファ
モイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、
アシル基、スルホ基、4級アンモニウム基好ましく、シ
アノ基、カルボキシル基、スルファモイル基、カルバモ
イル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホ
基、4級アンモニウム基が更に好ましい。
【0064】R1、R2及びZが表す複素環基としては、
5員又は6員環のものが好ましく、それらは更に縮環し
ていてもよい。また、芳香族複素環であっても非芳香族
複素環であっても良い。以下にR1、R2及びZで表され
る複素環基を、置換位置を省略して複素環の形で例示す
るが、置換位置は限定されるものではなく、例えばピリ
ジンであれば、2位、3位、4位で置換することが可能
である。ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジ
ン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリ
ン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロー
ル、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、
ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズ
イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオ
キサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチア
ゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソ
オキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、
ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリン
などが挙げられる。中でも芳香族複素環基が好ましく、
その好ましい例を先と同様に例示すると、ピリジン、ピ
ラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾ
ール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾー
ル、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、
ベンズイソチアゾール、チアジアゾールが挙げられる。
それらは置換基を有していても良く、置換基の例として
は、後述のZ,R1,R2,Y1,Y2,Y3,及びY4が更
に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが
挙げられる。好ましい置換基は前記アリール基の置換基
と、更に好ましい置換基は、前記アリール基の更に好ま
しい置換基とそれぞれ同じである。
【0065】Y1、Y2、Y3及びY4はそれぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル
基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環
基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、
アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、
アシルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スル
ファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ
基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド
基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル
基、アルコキシカルボニル基、複素環オキシ基、アゾ
基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオ
キシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシ
カルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、ホスホ
リル基、アシル基、カルボキシル基、又はスルホ基を挙
げる事ができ、各々はさらに置換基を有していてもよ
い。
【0066】中でも、水素原子、ハロゲン原子、アルキ
ル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド
基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、
スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、カルボキ
シル基、及びスルホ基が好ましく、特に水素原子、ハロ
ゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、及びスルホ基が
好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0067】Z、R1、R2、Y1、Y2、Y3及びY4が更
に置換基を有することが可能な基であるときは、以下に
挙げたような置換基を更に有してもよい。
【0068】炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル
基、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭
素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2
〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12
の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3〜12の
直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基(以上の各基は分岐
鎖を有するものが染料の溶解性及びインクの安定性を向
上させる理由から好ましく、不斉炭素を有するものが特
に好ましい。例えばメチル、エチル、プロピル、イソプ
ロピル、sec-ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシ
ル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロ
ピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲ
ン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基
(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4
−ジ−t−アミルフェニル)、複素環基(例えば、イミ
ダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2
−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリ
ル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキ
シ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキ
シ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスル
ホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノ
キシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキ
シ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカル
バモイルフェノキシ、3−メトキシカルバモイル)、ア
シルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、
4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブ
タンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミ
ノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミ
ノ)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロ
ロアニリノ、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、
メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルフ
ァモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルフ
ァモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチ
オ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリ
ールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5
−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニル
チオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、
メトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例え
ば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、
p−トルエンスルホンアミド)、カルバモイル基(例え
ば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバ
モイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスル
ファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−
フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メ
タンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホ
ニル、トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニ
ル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカル
ボニル)、複素環オキシ基(例えば、1−フェニルテト
ラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキ
シ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフ
ェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−
ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシル
オキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ
基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェ
ニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、
トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキ
シ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フ
ェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−
スクシンイミド、N−フタルイミド)、複素環チオ基
(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フ
ェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−
ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノ
キシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、
フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フ
ェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例
えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、ア
セチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イ
オン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、
ホスホノ基及び4級アンモニウム基)が挙げられる。
【0069】前記一般式(I)で表される化合物が水溶
性である場合には、イオン性親水性基を有することが好
ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシ
ル基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基等が含まれ
る。前記イオン性親水性基は、カルボキシル基、ホスホ
ノ基、及びスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、
スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基及び
スルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イ
オンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオ
ン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウム
イオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニ
ウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、テト
ラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でも
アルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は染料の溶
解性を高めインク安定性を向上させるため特に好まし
い。イオン性親水性基の数としては、フタロシアニン系
染料1分子中少なくとも2個以上有するものが好まし
く、特にスルホ基及び/又はカルボキシル基を少なくと
も2個以上有するものが特に好ましい。
【0070】前記一般式(I)において、X1、X2
3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4は、いずれかに少なく
とも一つの不斉炭素を有する。不斉炭素は、イオン性親
水性基を有しない置換基に導入するのが好ましく、不斉
炭素の導入数は1以上16以下の範囲にあり、好ましく
は1以上8以下で、更に好ましくは1以上4以下であ
る。
【0071】a1〜a4、b1〜b4は、それぞれX1
4、及びY1〜Y4の置換基数を表す。a1〜a4はそれ
ぞれ独立に0〜4の数を表すが、全てが同時に0になる
ことはない。 b1〜b4はそれぞれ独立に0〜4の数を表
す。なお、a1〜a4及びb1〜b4が2以上の数を表す
時、複数のX1〜X4、及びY1〜Y4はそれぞれそれぞれ
同一でも異なっていてもよい。
【0072】a1、b1は、a1+b1=4の関係を満たす
それぞれ独立の0〜4の数を表し、特に好ましいのは、
1が1又は2を表し、b1が3又は2を表す組合せであ
り、その中でもa1が1を表し、b1が3を表す組合せが
最も好ましい。
【0073】(a2,b2)、(a3,b3)、(a4
4)の各組合せにおいても、a1,b1と同様の関係で
あり、好ましい組合せも同様である。
【0074】Mは、水素原子、金属元素又はその酸化
物、水酸化物もしくはハロゲン化物を表す。Mとして好
ましい物は、水素原子、金属原子としては、Li、Na、
K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、C
o、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、C
d、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げ
られる。酸化物としては、VO、GeO等が挙げられる。 ま
た、水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(O
H)2等が挙げられる。さらに、ハロゲン化物としては、
AlCl、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が
挙げられる。なかでも特に、Cu、Ni、Zn、Al等が好ま
しく、Cuが最も好ましい。
【0075】本発明の化合物において、L(2価の連結
基)を介してPc(フタロシアニン環)が2量体(例え
ば、Pc−M−L-M−Pc)又は3量体を形成しても
よく、その時のMはそれぞれ同一であっても異なるもの
であってもよい。
【0076】Lで表される2価の連結基は、オキシ基−
O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニ
ル基−SO2−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH2
−、及びこれらを組合せて形成される基が好ましい。
【0077】前記一般式(I)で表される化合物の好ま
しい置換基の組合せについては、種々の置換基の少なく
とも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、
より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物
がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である
化合物が最も好ましい。
【0078】前記一般式(I)で表される化合物は、下
記一般式(II)で表される化合物がより好ましい。以下
に本発明の一般式(II)で表されるフタロシアニン染料
について詳しく述べる。
【0079】
【化8】
【0080】前記一般式(II)において、X1〜X4、Y
1〜Y8は一般式(I)の中のX1〜X 4、Y1〜Y4とそれ
ぞれ同義であり、好ましい例も同じである。また、Mは
一般式(I)中のMと同義であり、好ましい例も同様で
ある。
【0081】一般式(II)中、a1〜a4はそれぞれ独立
に1又は2の整数を表し、特に好ましいのは、4≦a1
+a2+a3+a4≦6であり、その中でも特に好ましい
のはa 1=a2=a3=a4=1のときである。
【0082】一般式(II)で表される化合物の中でも、
特に好ましい置換基の組合せは、以下の通りである。
【0083】X1〜X4としては、それぞれ独立に−SO
2−Z又は−SO2NR12が特に好ましい。
【0084】Zはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換
のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換
もしくは無置換の複素環基が好ましく、その中でも置換
アルキル基、置換アリール基、置換複素環基が最も好ま
しい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという
理由から、置換基中に不斉炭素を有する場合(ラセミ体
での使用)が好ましい。また、会合性を高め堅牢性を向
上させるという理由から、水酸基、エーテル基、エステ
ル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が置換基
中に有する場合が好ましい。
【0085】R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子、置
換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の
アリール基、置換もしくは無置換の複素環基が好まし
く、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリー
ル基、置換複素環基が最も好ましい。ただしR1、R2
共に水素原子であることは好ましくない。特に染料の溶
解性やインク安定性を高めるという理由から、置換基中
に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が好まし
い。また、会合性を高め堅牢性を向上させるという理由
から、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、ア
ミド基、スルホンアミド基が置換基中に有する場合が好
ましい。
【0086】Y1〜Y8は水素原子、ハロゲン原子、アル
キル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミド
基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、
スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、カルボキ
シル基、及びスルホ基が好ましく、特に水素原子、ハロ
ゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、及びスルホ基が
好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0087】X1、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3及び
4はいずれかに少なくとも一つの不斉炭素を有する。
その不斉炭素の導入数は、1以上16以下の範囲にあ
り、好ましくは1以上8以下で、更に好ましくは、1以
上4以下である。
【0088】a1〜a4はそれぞれ独立に1又は2である
ことが好ましく、特に全てが1であることが好ましい。
【0089】Mは、水素原子、金属元素又はその酸化
物、水酸化物もしくはハロゲン化物を表し、特にCu、
Ni、Zn、Alが好ましく、なかでも特に特にCuが最も好
ましい。
【0090】前記一般式(II)で表される化合物が水溶
性である場合には、イオン性親水性基を有することが好
ましい。イオン性親水性基の例示、及びその好ましい範
囲は、前記一般式(I)で表される化合物が水溶性であ
る場合と同様である。前記イオン性親水性基としてカル
ボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であっ
てもよく、塩を形成する対イオンの例、及びその好まし
い範囲は、前記一般式(I)で表される化合物が水溶性
である場合と同様である。イオン性親水性基の数は前記
一般式(I)で表される化合物が水溶性である場合と同
様である。
【0091】前記一般式(II)で表される化合物の好ま
しい置換基の組合せについては、種々の置換基の少なく
とも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、
より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物
がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である
化合物が最も好ましい。
【0092】前記一般式(II)で表される化合物の中で
も、下記一般式(III)で表される化合物が更に好まし
い。以下に本発明の一般式(III)で表される化合物に
ついて詳しく述べる。
【0093】
【化9】
【0094】前記一般式(III)において、X1〜X4
一般式(I)の中のX1〜X4とそれぞれ同義であり、好
ましい例も同じである。また、Mは一般式(I)中のM
と同義であり、好ましい例も同様である。
【0095】X1〜X4は、いずれかに少なくとも一つの
不斉炭素を有する。その不斉炭素の導入数は、1以上1
6以下の範囲にあり、好ましくは1以上8以下で、更に
好ましくは、1以上4以下である。
【0096】一般式(III)中、a1〜a4はそれぞれ独
立に1又は2の整数を表し、特に好ましいのは4≦a1
+a2+a3+a4≦6であり、その中でも特に好ましい
のはa 1=a2=a3=a4=1のときである。
【0097】一般式(III)で表される化合物の中で
も、特に好ましい置換基の組合せは、以下の通りであ
る。
【0098】X1〜X4としては、それぞれ独立に−SO
2−Z又は−SO2NR12が特に好ましい。
【0099】Zはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換
のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換
もしくは無置換の複素環基が好ましく、その中でも置換
アルキル基、置換アリール基、置換複素環基が最も好ま
しい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという
理由から、置換基中に不斉炭素を有する場合(ラセミ体
での使用)が好ましい。また、会合性を高め堅牢性を向
上させるという理由から、水酸基、エーテル基、エステ
ル基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基が置換基
中に有する場合が好ましい。
【0100】R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子、置
換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の
アリール基、置換もしくは無置換の複素環基が好まし
く、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリー
ル基、置換複素環基が最も好ましい。ただしR1、R2
共に水素原子であることは好ましくない。特に染料の溶
解性やインク安定性を高めるという理由から、置換基中
に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が好まし
い。また、会合性を高め堅牢性を向上させるという理由
から、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、ア
ミド基、スルホンアミド基が置換基中に有する場合が好
ましい。
【0101】a1〜a4はそれぞれ独立に1又は2である
ことが好ましく、特に全てが1であることが好ましい。
【0102】Mは、水素原子、金属元素又はその酸化
物、水酸化物もしくはハロゲン化物を表し、特にCu、
Ni、Zn、Alが好ましく、なかでも特に特にCuが最も好
ましい。
【0103】前記一般式(III)で表される化合物が水
溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが
好ましい。イオン性親水性基の例示、及びその好ましい
範囲は、前記一般式(I)で表される化合物が水溶性で
ある場合と同様である。前記イオン性親水性基としてカ
ルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であ
ってもよく、塩を形成する対イオンの例、及びその好ま
しい範囲は、前記一般式(I)で表される化合物が水溶
性である場合と同様である。イオン性親水性基の数は前
記一般式(I)で表される化合物が水溶性である場合と
同様である。
【0104】前記一般式(III)で表される化合物の好
ましい置換基の組合せについては、種々の置換基の少な
くとも1つが前記の好ましい基である化合物が好まし
く、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化
合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基で
ある化合物が最も好ましい。
【0105】下記一般式(IV)で表されるフタロシアニ
ン誘導体は、その合成時において不可避的に置換基Rn
(n=1〜16)の置換位置(R1:1位〜R16:16
位とここで定義する)異性体を含む場合があるが、これ
ら置換位置異性体は互いに区別することなく同一誘導体
として見なしている場合が多い。また、Rの置換基に異
性体が含まれる場合も、これらを区別することなく、同
一のフタロシアニン誘導体として見なしている場合が多
い。
【0106】
【化10】
【0107】本明細書中で定義するフタロシアニン化合
物において構造が異なる場合とは、一般式(IV)で説明
すると、置換基Rn(n=1〜16)の構成原子種が異
なる場合、置換基Rnの数が異なる場合又は置換基Rn
の位置が異なる場合の何れかである。
【0108】前記一般式(I)で表されるフタロシアニ
ン誘導体は、その合成法によって不可避的に置換基Xn
(n=1〜4)及びYm(m=1〜4)の導入位置及び
導入個数が異なる類縁体混合物である場合が一般的であ
り、これら類縁体混合物を統計的に平均化して表してい
る場合が多い。本発明は、これらの類縁体混合物を以下
に示す三種類に分類すると、特定の混合物が特に好まし
いことを見出したものである。すなわち前記一般式
(I)、(II)及び(III)で表されるフタロシアニン系
染料類縁体混合物を置換位置に基づいて以下の三種類に
分類して定義する。
【0109】(1)β-位置換型:2及び又は3位、6
及び又は7位、10及び又は11位、14及び又は15
位に特定の置換基を有するフタロシアニン染料。
【0110】(2)α-位置換型:1及び又は4位、5及
び又は8位、9及び又は12位、13及び又は16位に
特定の置換基を有するフタロシアニン染料
【0111】(3)α,β-位混合置換型:1〜16位に
規則性なく、特定の置換基を有するフタロシアニン染料
【0112】本明細書中において、構造が異なる(特
に、置換位置が異なる)フタロシアニン化合物の誘導体
を説明する場合、上記β-位置換型、α-位置換型、α,
β-位混合置換型を使用する。
【0113】本発明に用いられるフタロシアニン誘導体
は、例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行
「フタロシアニン−化学と機能−」(P.1〜62)、
C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共
著、VCH発行‘Phthalocyanines−P
roperties and Application
s’(P.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに
類似の方法を組合せて合成することができる。
【0114】本発明の一般式(I)で表されるフタロシ
アニン化合物は、世界特許00/17275、同00/
08103、同00/08101、同98/4185
3、特開平10−36471号などに記載されているよ
うに、例えば無置換のフタロシアニン化合物のスルホン
化、スルホニルクロライド化、アミド化反応を経て合成
することができる。この場合、スルホン化がフタロシア
ニン核のどの位置でも起こり得る上にスルホン化される
個数も制御が困難である。従って、このような反応条件
でスルホ基を導入した場合には、生成物に導入されたス
ルホ基の位置と個数は特定できず、必ず置換基の個数や
置換位置の異なる混合物を与える。従ってそれを原料と
して本発明の化合物を合成する時には、複素環置換スル
ファモイル基の個数や置換位置は特定できないので、本
発明の化合物としては置換基の個数や置換位置の異なる
化合物が何種類か含まれるα,β-位混合置換型混合物
として得られる。
【0115】前述したように、例えばスルファモイル基
のような電子求引性基を数多くフタロシアニン核に導入
すると酸化電位がより貴となり、オゾン耐性が高まる。
上記の合成法に従うと、電子求引性基が導入されている
個数が少ない、即ち酸化電位がより卑であるフタロシア
ニン染料が混入してくることが避けられない。従って、
オゾン耐性を向上させるためには、酸化電位がより卑で
ある化合物の生成を抑えるような合成法を用いることが
より好ましい。
【0116】本発明の一般式(III)で表されるフタロ
シアニン化合物は、例えば下記式で表されるフタロニト
リル誘導体(化合物P)及び/又はジイミノイソインド
リン誘導体(化合物Q)を一般式(V)で表される金属
誘導体と反応させるか、或いは下記式で表される4-ス
ルホフタロニトリル誘導体(化合物R)と一般式(V)
で表される金属誘導体を反応させて得られるテトラスル
ホフタロシアニン化合物から誘導することができる。
【0117】
【化11】
【0118】前記各式中、Xpは上記一般式(III)に
おけるX1〜X4に相当する。Yqは水素原子を表わす。
また、化合物Rにおいて、M’はカチオンを表す。
【0119】一般式(V):M−(Y)d 一般式(V)中、Mは前記一般式(I)、(II)及び(II
I)のMと同一であり、Yはハロゲン原子、酢酸陰イオ
ン、アセチルアセトネート、酸素などの1価又は2価の
配位子を示し、dは1〜4の整数である。 一般式(V)
で示される金属誘導体としては、Al、Si、Ti、
V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、R
u、Rh、Pd、In、Sn、Pt、Pbのハロゲン化
物、カルボン酸誘導体、硫酸塩、硝酸塩、カルボニル化
合物、酸化物、錯体等が挙げられる。具体例としては塩
化銅、臭化銅、沃化銅、塩化ニッケル、臭化ニッケル、
酢酸ニッケル、塩化コバルト、臭化コバルト、酢酸コバ
ルト、塩化鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、酢酸亜
鉛、塩化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、塩化パ
ラジウム、酢酸パラジウム、塩化アルミニウム、塩化マ
ンガン、酢酸マンガン、アセチルアセトンマンガン、塩
化マンガン、塩化鉛、酢酸鉛、塩化インジウム、塩化チ
タン、塩化スズ等が挙げられる。
【0120】金属誘導体と一般式(III)で示されるフ
タロニトリル化合物の使用量は、モル比で1:3〜1:
6が好ましい。また、金属誘導体と一般式(III)で示
されるジイミノインドリン誘導体の使用量は、モル比で
1:3〜1:6が好ましい。
【0121】反応は、通常、溶媒の存在下に行われる。
溶媒としては、沸点80℃以上、好ましくは130℃以
上の有機溶媒が用いられる。例えばn−アミルアルコー
ル、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチ
ル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタ
ノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、
ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレン
グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリ
コール、ポリエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロ
パノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノー
ル、ブトキシエタノール、ジメチルアミノエタノール、
ジエチルアミノエタノール、トリクロロベンゼン、クロ
ロナフタレン、スルフォラン、ニトロベンゼン、キノリ
ン、尿素等がある。溶媒の使用量はフタロニトリル化合
物の1〜100質量倍、好ましくは5〜20質量倍であ
る。
【0122】反応において、触媒として1,8−ジアザ
ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)或
いはモリブデン酸アンモニウムを添加しても良い。添加
量はフタロニトリル化合物及び/又はジイミノイソイン
ドリン誘導体1モルに対して、0.01〜10倍モル好
ましくは0.01〜2倍モルである。
【0123】反応温度は70〜300℃、好ましくは7
0〜250℃の反応温度の範囲にて行なうのが好まし
く、70〜190℃の反応温度の範囲にて行なうのが特
に好ましい。60℃未満では反応速度が極端に遅い。3
00℃を超えるとフタロシアニン化合物の分解が起こる
可能性がある。
【0124】反応時間は0.5〜20時間、好ましくは
0.5〜15時間の反応時間の範囲にて行なうのが好ま
しく、0.5〜10時間の反応時間の範囲にて行なうの
が特に好ましい。0.5時間未満では未反応原料が多く
存在し、20時間以上ではフタロシアニン化合物の分解
が起こる可能性がある。
【0125】これらの反応によって得られる生成物は通
常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精
製してあるいは精製せずに製品として用いられる。即
ち、例えば、反応系から遊離したものを精製せずに、あ
るいは再結晶やカラムクロマトグラフィー(例えば、ゲ
ルパーメーションクロマトグラフィ(SEPHADEX
TMLH−20:Pharmacia製)等にて精製する
操作を単独、あるいは組合せて行ない、製品として提供
することができる。また、反応終了後、反応溶媒を留去
して、あるいは留去せずに水、氷、又は有機溶媒に投入
し、中和してあるいは中和せずに遊離したものを精製せ
ずに、あるいは再結晶、カラムクロマトグラフィー等に
て精製する操作を単独に、あるいは組合せて行なった
後、製品として提供することができる。また、反応終了
後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、氷、
又は有機溶媒に投入し、中和してあるいは中和せずに、
有機溶媒/水溶液にて抽出したものを精製せずに、ある
いは晶析、カラムクロマトグラフィーにて精製する操作
を単独あるいは組合せて行なった後、製品として提供す
ることができる。
【0126】上記の合成法に従えば望みの置換基を特定
の数だけ導入することができるのである。特に本発明の
ように酸化電位を貴とするために電子求引性基を数多く
導入したい場合には、上記の合成法は一般式(I)の合
成法と比較して極めて優れたものである。
【0127】得られる前記一般式(III)で表される化
合物は、通常、Xpの各置換位置における異性体である
下記一般式(a)−1〜(a)−4で表される化合物の
混合物、すなわちβ-位置換型となっている。
【0128】
【化12】
【0129】上記一般式(a)−1〜(a)−4で表さ
れる化合物は、β-位置換型(2及び又は3位、6及び
又は7位、10及び又は11位、14及び又は15位に
特定の置換基を有するフタロシアニン化合物)であり、
α位置換型及びα,β−位混合置換型とは全く構造の異
なる(特定の置換基の導入位置が異なる)化合物であ
り、本発明の目的を達成する手段として極めて重要な構
造上の特徴である。
【0130】以下に、本発明のフタロシアニン化合物の
構造と性能の相関について、(1)画像形成用着色組成
物に用いられる色素に対する要求特性、(2)画像形成
用着色組成物(インク)に対する要求特性;(1)と
(2)に分けて説明する。
【0131】(1)画像形成用着色組成物に用いられる
色素(本発明のフタロシアニン化合物):
【0132】<1>本発明では、例えば一般式(I)中
のX1、X2、X3、及びX4で表される、特定の置換基が
堅牢性の向上に非常に重要である。
【0133】酸化電位(Eox)の値は試料から電極への
電子の移りやすさを表わし、その値が大きい(酸化電位
が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、
言い換えれば、酸化されにくいことを表す。
【0134】フタロシアニン化合物の構造との関連で
は、電子求引性基を導入することにより酸化電位はより
貴となり、電子供与性基を導入することにより酸化電位
はより卑となる。
【0135】本発明では、例えば求電子剤であるオゾン
との反応性を下げるために、フタロシアニン骨格に電子
求引性基を導入して酸化電位をより貴とすることが望ま
しい。
【0136】従って、電子求引性としての上記特定の置
換基X1、X2、X3、及びX4を、特定の位置(β-位置
換型)に特定の数{例えば、一般式(III)で表される
フタロシアニン母核で説明すると、(2位及び又は3
位)、(6位及び又は7位)、(10位及び又は11
位)、(14位及び又は15位)の各組に少なくとも上
記の特定の置換基を1個以上含有する}、フタロシアニ
ン母核に選択的に導入した化合物が、対応するフタロシ
アニン化合物の酸化電位をより貴とすることができると
言える。
【0137】すなわち、本発明の目的の一つである形成
画像の保存性改良(耐光性・耐オゾンガス性等)を達成
する手段として極めて重要な構造上の特徴(フタロシア
ニン化合物の酸化電位を支配する)である。
【0138】<2>本発明の一般式(I)、一般式(I
I)及び一般式(III)で表されるフタロシアニン化合物
は上記β-位置換型(2及び又は3位、6及び又は7
位、10及び又は11位、14及び又は15位に特定の
置換基を有するフタロシアニン化合物)にあたる。
【0139】本発明は、上記β-位置換型(2及び又は
3位、6及び又は7位、10及び又は11位、14及び
又は15位に特定の置換基を有するフタロシアニン化合
物)に由来する、水溶性フタロシアニン化合物の会合体
を有効利用している。フタロシアニン化合物の会合体と
は、2分子以上のフタロシアニン分子が会合体を形成し
たものをいう。
【0140】本明細書において、オゾンガス耐性と称し
ているのは、オゾンガスに対する耐性を代表させて称し
ているのであって、オゾンガス以外の酸化性雰囲気に対
する耐性をも含んでいる。すなわち、上記の本発明に係
る一般式(I)で示されるフタロシアニン化合物は、自
動車の排気ガスに多い窒素酸化物、火力発電所や工場の
排気に多い硫黄酸化物、これらが太陽光によって光化学
的にラジカル連鎖反応して生じたオゾンガスや酸素−窒
素や酸素−水素ラジカルに富む光化学スモッグ、美容院
などの特殊な薬液を使用する場所から発生する過酸化水
素ラジカルなど、一般環境中に存在する酸化性ガスに対
する耐性が強いことが特長である。したがって、屋外広
告や、鉄道施設内の案内など画像の酸化劣化が画像寿命
を制約している場合には、本発明に係るフタロシアニン
化合物を画像形成材料として用いることによって、酸化
性雰囲気耐性、すなわち、いわゆるオゾンガス耐性を向
上させることができる。
【0141】本発明者は、前記フタロシアニン化合物の
会合体を利用することにより、単分子分分散状態におけ
るよりも光や熱及び酸化性ガス(特にオゾンガス)に対
する安定性が著しく向上することを見いだした。
【0142】<3>更に、会合体を形成することで形成
画像のスペクトル特性(シアン色相:画像形成材料用シ
アン染料として優れた吸収特性)が著しく良化し、且
つ、各種被記録材差(例えば、普通紙、インクジェット
用専用紙等)に起因する紙依存性が極めて小さい{色相
(色再現性)良好・耐水性向上;例えば、強固な会合体
により、存在状態又は媒染状態の差が小さいことに起因
する}ことも見いだした。
【0143】尚、染料が会合しているか否かは、例えば
Wright,J.D.著(江口太郎訳)「分子結晶」(化学同
人) で説明されているように、吸収スペクトルにおけ
る吸収極大(λmax)のシフトから容易に判断すること
ができ、一般的には、長波側にシフトするJ会合体、短
波側にシフトするH会合体の2つに分類される。本発明
においては、水溶性フタロシアニン会合体は吸収極大が
短波側にシフトすることで会合体を形成し、この会合体
を利用している。
【0144】故に、本発明のフタロシアニン化合物の構
造上の特徴、すなわち、特定の置換基を特定の位置(β
-位置換型)に特定の数、フタロシアニン母核に導入し
た化合物が、会合状態を促進して形成画像の堅牢性と色
相において最も好ましい構造であることを見出すに至っ
た。
【0145】すなわち上述のフタロシアニン化合物の構
造上の特徴は、フタロシアニン化合物の会合性促進と有
機溶剤に対する溶解安定性の両立が可能で、本発明の目
的の一つである(1)形成画像の保存性改良を達成する
手段、及び、もう一つの目的である(2)形成画像の極
めて良好なスペクトル特性(シアン色相:画像形成材料
用シアン染料として優れた吸収特性)を有し、且つ、
(3)各種被記録材(例えば、普通紙、インクジェット
用専用紙等)差に起因する紙依存性が小さいことを達成
するための極めて重要な構造の特徴である。
【0146】以上纏めると、本発明ではいずれの置換型
においても、例えば一般式(I)中のX1、X2、X3、及
びX4で表される、特定の置換基が堅牢性の向上(高酸
化電位)に非常に重要であることが見出され、更に、特
定の置換基を特定の位置(例えば、α-位置換型及び又
はα,β-位混合置換型よりは圧倒的にβ-位置換型の方
がより好ましい)に特定の数{例えば、フタロシアニン
化合物1分子あたり4個以上8個以下でかつ一般式(II
I)で表されるフタロシアニン母核で説明すると、(2
位及び又は3位)、(6位及び又は7位)、(10位及
び又は11位)、(14位及び又は15位)の各組に少
なくとも特定の置換基を1個以上含有する}、フタロシ
アニン母核に選択的に導入した誘導体(会合性促進)
が、本発明の目的を達成する手段として極めて重要な構
造上の特徴を有するフタロシアニン化合物であることを
確認した。
【0147】すなわち、本発明の推定される機構として
は、良好な分光吸収特性(フタロシアニン化合物の会
合状態の促進);高い画像堅牢性(高酸化電位と強固
な会合状態の促進により、例えば、フタロシアニン化合
物と親電子試薬であるオゾンガスとの酸化反応による褪
色を抑制する)を有する本発明のフタロシアニン化合物
の、特定の置換基を特定の置換位置に特定の数だけ選択
的に導入による、高酸化電位で且つ完全β-位置換型フ
タロシアニン化合物会合体によると推測される。
【0148】(2)画像形成用着色組成物(本発明のフ
タロシアニン化合物を含有するインクジェット用イン
ク)
【0149】上述したように、画像形成用着色組成物
(例えば、インクジェット用インク)に対する要求特性
は、(1)インクの粘度、表面張力、比電導度、密度、
pH等の物性値が適当であること;(2)溶解成分の溶
解安定性が高く、ノズルを目詰まりさせないこと;
(3)被記録材での速乾性が良好であること;(4)記
録画像が鮮明であり、耐光性、耐水性が良好であるこ
と;(5)インクの長期保存安定性が良好であることな
どである。
【0150】インクカートリッジ中のインクは色素化合
物が高濃度で調液されているため、長期にわたる保存
や、高温・低温下に曝されることで色素化合物が析出す
るなどの大きな問題がある。
【0151】現在まで、上述(1)〜(4)及び(5)
インク保存安定性の向上;を主眼とした様々の検討がな
されているが、従来のインクはこれら全ての特性を満足
するには至っていなかった。
【0152】<1>本発明のフタロシアニン化合物を用
いた着色組成物(以下、インクジェット記録用インクと
もいう)は、上記要求特性(1)〜(5)を満足させる
狙いで、本発明のフタロシアニン化合物の好ましいフタ
ロシアニン母核に導入する特定の置換基(位置選択的に
導入する機能性基)の種類を規定した。
【0153】先述したように、鋭意検討の結果、各種堅
牢性(光、オゾンガス等)、色相を満足するためには、
フタロシアニン化合物の会合を促進することが解決の手
段の一つであった。しかし、フタロシアニン化合物に限
らず全ての有機物では、会合が成長すると分子の集合体
は巨大化し、やがて結晶化する傾向にある。
【0154】水溶性フタロシアニンの分子一つ一つが会
合することなく水中に存在する場合、分子の周りを取り
囲むようにして多くの水分子が存在するようになる。す
なわち分子は水の溶媒和を受けており、分子が溶解す
る。しかし、フタロシアニン化合物が分子同士で相互作
用し(会合し)凝集し始めると、水の溶媒和を受けにく
くなり、やがて不溶化する。
【0155】すなわち、この分子の凝集体が巨大化しな
いように制御すれば、分子の結晶析出を防ぐことが可能
となる。不斉炭素の導入によって立体異性体を生じ、結
晶の成長に重要な分子同士の積み重なりが困難になり、
凝集体の成長すなわちフタロシアニン化合物の結晶析出
が抑制できることが予想される。
【0156】ここで、上述の画像形成用着色組成物に用
いられる色素に対する要求特性との両立の関係から、例
えば、上記一般式(I)中の特定の置換基X1、X2
3、及びX4に注目し、結晶化を抑制する狙いで、フタ
ロシアニン化合物に不斉炭素を導入したところ、前記課
題を解決できることが分かった。
【0157】更に詳しくは上記一般式(III)中の特定
の置換基{-(X)a}に着目して、鋭意検討した結
果、前述の好ましい置換基例で挙げた特定の置換基種を
用いることにより、上記要求特性(1)〜(5)を満足
させるに至った。
【0158】<2>本発明のフタロシアニン化合物を用
いた着色組成物(以下、インクジェット記録用インクと
もいう)は、上記要求特性(1)〜(5)を満足させる
狙いで、本発明のフタロシアニン化合物の好ましい分子
量の範囲を規定した。
【0159】すなわち、フタロシアニン化合物の母核に
画像形成用着色組成物としての最適な機能性基を導入す
るため、フタロシアニン化合物の分子量は必然的に増加
する。
【0160】一方、シアン色素(シアン画像形成用着色
組成物に用いる色素)としてのフタロシアニン化合物の
発色団(特定のフタロシアニン色素母核)に起因するモ
ル吸光係数(ε)は、分子量増加と共に減少する。
【0161】例えば、インクジェット記録用インクとし
て上記フタロシアニン化合物を用いる場合、シアン画像
は鮮明で発色濃度が高く且つマゼンタ、イエロー及びブ
ラック染料とともに用いた場合の広い可視領域の色調を
色出しすることができる(色再現域が広い)が必要であ
る。
【0162】故に、ある領域以上の分子量を有する上記
フタロシアニン化合物を用いる場合、例えば水性インク
ジェット記録用インクを調整時、水を媒体として調整す
るが、上記フタロシアニン化合物を該水性インクジェッ
ト記録用インク中に含有する最適な重量%の範囲を超え
て使用しなければならない。
【0163】そこで、本発明のフタロシアニン化合物
(フタロシアニン化合物の母核に画像形成用着色組成物
としての最適な機能性基を導入した誘導体)の最適な分
子量の範囲は、シアン画像形成用着色組成物に用いる色
素の使用量から算出して、インクの要求特性を満足させ
るべく検討した結果、本発明のフタロシアニン化合物を
前記記載の分子量の範囲に規定することにより上記要求
特性(1)〜(5)を満足させるに至った。
【0164】以上、本発明のフタロシアニン化合物の構
造と性能の相関について、(1)画像形成用着色組成物
に用いられる色素に対する要求特性、(2)画像形成用
着色組成物(インク)に対する要求特性;(1)と
(2)に分けて説明したが、これらの特定の置換基によ
る構造上の特徴によってもたらされる色相・光堅牢性・
オゾンガス耐性等の向上効果並び画像形成用着色組成物
(インク)に対する要求特性、特にインク保存安定性の
付与は、前記先行技術から全く予想することができない
ものである。
【0165】本発明では、いずれの置換型においても酸
化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であることが堅
牢性の向上に非常に重要で、フタロシアニン化合物中に
一つ以上の不斉炭素を有することでインク安定性が際立
って改良されることが見出され、その効果の大きさは前
記先行技術から全く予想することができないものであっ
た。また、原因は詳細には不明であるが、中でもα,β
-位混合置換型よりはβ-位置換型の方が色相・光堅牢性
・オゾンガス耐性等において明らかに優れている傾向に
あった。
【0166】本発明のフタロシアニン化合物の具体例
を、下記表1〜表9(例示化合物101〜190)に示
すが、本発明に用いられるフタロシアニン化合物は、下
記の例に限定されるものではない。
【0167】下記表1〜表9中、一般式(IV)は(m+
n)価のフタロシアニン基(置換基Xの導入位置は、本
発明で定義したβ位置換型である)を表す。Xは、X1
及び/又はX2を表し、aは1〜2の数を表す。mは0〜
8の数を表し、nは0〜8の数を表す。但し、m及びn
はそれぞれ独立に、0<m+n≦8を満たす数を表す。
【0168】
【化13】
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
【表4】
【0173】
【表5】
【0174】
【表6】
【0175】
【表7】
【0176】
【表8】
【0177】
【表9】
【0178】上記フタロシアニン化合物の用途として
は、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材
料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェ
ット方式記録材料を始めとして、感熱転写型画像記録材
料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転
写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等で
あり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱転
写型画像記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であ
り、更に好ましくはインクジェット方式記録材料であ
る。また、米国特許4808501号明細書、特開平6
−35182号公報などに記載されているLCDやCC
Dなどの固体撮像素子で用いられているカラーフィルタ
ー、各種繊維の染色のための染色液にも適用できる。本
発明の色素は、その用途に適した溶解性、熱移動性など
の物性を、置換基により調整して使用する。また、上記
フタロシアニン化合物は、用いられる系に応じて均一な
溶解状態、乳化分散のような分散された溶解状態、固体
分散状態で使用する事が出来る。
【0179】[インク組成物]本発明のインク組成物、
及びインクジェット用インクは、前記本発明の化合物を
含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の
添加剤を含有してなる。該インク組成物に含有される本
発明の化合物は、被記録材料などに対して染料、及び着
色剤などとして作用する。該インク組成物は、インクや
塗料などの画像形成用着色組成物として好ましく用いら
れ、とりわけインクジェット記録用インクとして好適に
用いられる。インクジェット記録用インクは、親油性媒
体や水性媒体中に本発明の化合物を溶解及び/又は分散
させることによって作製することができる。好ましく
は、水性媒体を用いたインクである。必要に応じてその
他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において
含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防
止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進
剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面
張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定
剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられ
る。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはイ
ンク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用い
る場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが
一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよ
い。
【0180】乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用
いるノズルのインク噴射口において該インクジェット用
インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で
好適に使用される。
【0181】前記乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の
低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエ
チレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレン
グリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコー
ル、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパ
ンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチ
レングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプ
ロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリ
コールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレン
グリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエ
チレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等
の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロ
リドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチ
ル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の
複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−ス
ルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジ
エタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げ
られる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコー
ル等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥
防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良
い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%
含有することが好ましい。
【0182】浸透促進剤は、インクジェット用インクを
紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。浸透
促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノ
ール,ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテ
ル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウ
リル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン
性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク
中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、
印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添
加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0183】紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させ
る目的で使用される。紫外線吸収剤としては特開昭58
−185677号公報、同61−190537号公報、
特開平2−782号公報、同5−197075号公報、
同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾ
ール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5
−194483号公報、米国特許第3214463号明
細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭4
8−30492号公報、同56−21141号公報、特
開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化
合物、特開平4−298503号公報、同8−5342
7号公報、同8−239368号公報、同10−182
621号公報、特表平8−501291号公報等に記載
されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャ
ーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン
系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を
吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用
いることができる。
【0184】褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる
目的で使用される。前記褪色防止剤としては、各種の有
機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができ
る。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アル
コキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェ
ノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマ
ン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、
金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17
643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、
同No.18716の650頁左欄、同No.3654
4の527頁、同No.307105の872頁、同N
o.15162に引用された特許に記載された化合物や
特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁
に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含ま
れる化合物を使用することができる。
【0185】防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウ
ム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−
1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステ
ル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその
塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.
00質量%使用するのが好ましい。
【0186】pH調整剤としては前記中和剤(有機塩
基、無機アルカリ)を用いることができる。前記pH調
整剤はインクジェット記録用インクの保存安定性を向上
させる目的で、該インクジェット記録用インクがpH6
〜10と夏用に添加するのが好ましく、pH7〜10と
なるように添加するのがより好ましい。
【0187】表面張力調整剤としてはノニオン、カチオ
ンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。界面活性
剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、
アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンス
ルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリ
ン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合
物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のア
ニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエ
ーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸
エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステ
ル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂
肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロッ
クコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。ま
た、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性
剤であるSURFYNOLS(AirProducts
&Chemicals社)も好ましく用いられる。ま
た、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドの
ようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好まし
い。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(3
8)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.30811
9(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使
うことができる。
【0188】消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系
化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応
じて使用することができる。
【0189】本発明のフタロシアニン化合物を水性媒体
に分散させる場合は、特開平11-286637号、特願平2000-
78491号、同2000-80259号、同2000-62370号等の各公報
に記載されるように、色素と油溶性ポリマーとを含有す
る着色微粒子を水性媒体に分散したり、特願平2000-784
54号、同2000-78491号、同2000-203856号、同2000-2038
57号の各明細書のように高沸点有機溶媒に溶解した本発
明の化合物を水性媒体中に分散することが好ましい。本
発明の化合物を水性媒体に分散させる場合の具体的な方
法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤
及びそれらの使用量は、上記特許公報等に記載されたも
のを好ましく使用することができる。あるいは、前記フ
タロシアニン化合物を固体のまま微粒子状態に分散して
もよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用するこ
とができる。分散装置としては、簡単なスターラーやイ
ンペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例
えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトラ
イター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方
式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な
市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフ
ルイダイザー、DeBEE2000等)を使用すること
ができる。上記のインクジェット記録用インクの調製方
法については、先述の特許以外にも特開平5−1484
36号、同5−295312号、同7−97541号、
同7−82515号、同7−118584号、特開平1
1−286637号、特願2000−87539号の各
公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット
記録用インクの調製にも利用できる。
【0190】水性媒体は、水を主成分とし、所望によ
り、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることが
できる。前記水混和性有機溶剤の例には、アルコール
(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イ
ソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec
−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサ
ノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、
多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエ
チレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチ
レングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレン
グリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリ
コール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセ
リン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリ
コール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチル
エーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エ
チレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングル
コールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ
ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエー
テル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプ
ロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレン
グリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジ
アセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルア
セテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテ
ル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチ
レングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例え
ば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタ
ノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エ
チルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモル
ホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ト
リエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメ
チルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例え
ば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、
N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシ
ド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピ
ロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾ
リドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ア
セトニトリル、アセトン)が含まれる。尚、前記水混和
性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0191】本発明のインクジェット記録用インク10
0質量部中は、前記フタロシアニン化合物を0.1質量
部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質
量部以上10質量部以下含有するのがより好ましい。ま
た、本発明のインクジェット用インクには、前記フタロ
シアニン化合物とともに、他の色素を併用してもよい。
2種類以上の色素を併用する場合は、色素の含有量の合
計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0192】本発明のインクジェット記録用インクは、
粘度が40cp以下であるのが好ましい。また、その表
面張力は20mN/m以上70mN/m以下であるのが
好ましい。粘度及び表面張力は、種々の添加剤、例え
ば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜
調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防黴
剤、防錆剤、分散剤及び界面活性剤を添加することによ
って、調整できる。
【0193】本発明のインクジェット記録用インクは、
単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用
いることができる。フルカラー画像を形成するために、
マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー
色調インクを用いることができ、また、色調を整えるた
めに、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0194】適用できるイエロー染料としては、任意の
ものを使用することが出来る。例えばカップリング成分
(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類、ナフ
トール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のよう
なヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類、などを有
するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラ
ー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有する
アゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチン
オキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフト
キノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染
料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン
染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリ
ジノン染料等を挙げることができる。
【0195】適用できるマゼンタ染料としては、任意の
ものを使用することが出来る。例えばカプラー成分とし
てフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有す
るアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー
成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類など
を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、ス
チリル染料、メロシアニン染料、シアニン染料、オキソ
ノール染料などのようなメチン染料;ジフェニルメタン
染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などの
ようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アント
ラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン染料、
例えばジオキサジン染料等のような縮合多環染料等を挙
げることができる。
【0196】適用できるシアン染料としては、任意のも
のを使用する事が出来る。例えばカプラー成分としてフ
ェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するア
リールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分
としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾー
ルのようなヘテロ環類などを有するアゾメチン染料;シ
アニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料など
のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリ
フェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカル
ボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染
料;インジゴ・チオインジゴ染料などを挙げることがで
きる。
【0197】前記の各染料は、クロモフォアの一部が解
離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈す
るものであってもよく、その場合のカウンターカチオン
はアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオ
ンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム
塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそ
れらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよ
い。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスア
ゾ、テトラアゾ染料のほか、カーボンブラックの分散体
を挙げることができる。
【0198】[インクジェット記録方法]本発明のイン
クジェット記録方法は、前記インクジェット記録用イン
クにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通
紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公
報、同8−27693号公報、同2−276670号公
報、同7−276789号公報、同9−323475号
公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−
153989号公報、同10−217473号公報、同
10−235995号公報、同10−337947号公
報、同10−217597号公報、同10−33794
7号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フ
イルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器
等に画像を形成する。
【0199】画像を形成する際に、光沢性や耐水性を与
えたり耐候性を改善する目的からポリマー微粒子分散物
(ポリマーラテックスともいう)を併用してもよい。ポ
リマーラテックスを受像材料に付与する時期について
は、着色剤を付与する前であっても、後であっても、ま
た同時であってもよく、したがって添加する場所も受像
紙中であっても、インク中であってもよく、あるいはポ
リマーラテックス単独の液状物として使用しても良い。
具体的には、特願2000−363090号、同200
0−315231号、同2000−354380号、同
2000−343944号、同2000−268952
号、同2000−299465号、同2000−297
365号等の各明細書に記載された方法を好ましく用い
ることが出きる。
【0200】以下に、本発明のインクを用いてインクジ
ェットプリントをするのに用いられる記録紙及び記録フ
ィルムについて説明する。記録紙及び記録フィルムにお
ける支持体は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、G
P、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CG
P等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、
必要に応じて従来公知の顔料、バインダー、サイズ剤、
定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、
長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの
等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プ
ラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支
持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g
/m2が望ましい。支持体には、そのままインク受容層
及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリ
ビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層
を設けた後、インク受容層及びバックコー卜層を設けて
もよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレ
ンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平
坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体として、両
面をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリスチ
レン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそ
れらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチッ
クフィルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン
中に、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛)又は
色味付け染料(例えば、コバルトブルー、群青、酸化ネ
オジウム)を添加することが好ましい。
【0201】支持体上に設けられるインク受容層には、
顔料や水性バインダーが含有される。顔料としては、白
色顔料が好ましく、白色顔料としては、炭酸カルシウ
ム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シ
リカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カル
シウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼ
オライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタ
ン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の白色無機顔料、スチレン系
ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミ
ン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。インク受容層に含
有される白色顔料としては、多孔性無機顔料が好まし
く、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適で
ある。合成非晶質シリカは、乾式製造法によって得られ
る無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸の
いずれも使用可能であるが、特に含水珪酸を使用するこ
とが望ましい。
【0202】インク受容層に含有される水性バインダー
としては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリ
ビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カ
ゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒド
ロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ
アルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導
体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、
アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられ
る。これらの水性バインダーは単独又は2種以上併用し
て用いることができる。本発明においては、これらの中
でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビ
ニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の
耐剥離性の点で好適である。インク受容層は、顔料及び
水性結着剤の他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、界
面活性剤、その他の添加剤を含有することができる。
【0203】インク受容層中に添加する媒染剤は、不動
化されていることが好ましい。そのためには、ポリマー
媒染剤が好ましく用いられる。ポリマー媒染剤について
は、特開昭48−28325号、同54−74430
号、同54−124726号、同55−22766号、
同55−142339号、同60−23850号、同6
0−23851号、同60−23852号、同60−2
3853号、同60−57836号、同60−6064
3号、同60−118834号、同60−122940
号、同60−122941号、同60−122942
号、同60−235134号、特開平1−161236
号の各公報、米国特許2484430号、同25485
64号、同3148061号、同3309690号、同
4115124号、同4124386号、同41938
00号、同4273853号、同4282305号、同
4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−
161236号公報の212〜215頁に記載のポリマ
ー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記
載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得
られ、かつ画像の耐光性が改善される。
【0204】耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、
これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が望まし
い。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリ
アミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリ
アミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロラ
イド重合物、カチオンポリアクリルアミド、コロイダル
シリカ等が挙げられ、これらのカチオン樹脂の中で特に
ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンが好適であ
る。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の
全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜
10質量%であることが好ましい。
【0205】耐光性向上剤としては、硫酸亜鉛、酸化亜
鉛、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ベンゾフェノン系
やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤等が挙げられ
る。これらの中で特に硫酸亜鉛が好適である。
【0206】界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、
スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。界
面活性剤については、特開昭62−173463号、同
62−183457号の各公報に記載がある。界面活性
剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機
フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機
フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル
状フッ素系化合物(例えば、フッ素油)及び固体状フッ
素化合物樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂)が含ま
れる。有機フルオロ化合物については、特公昭57−9
053号(第8〜17欄)、特開昭61−20994
号、同62−135826号の各公報に記載がある。そ
の他のインク受容層に添加される添加剤としては、顔料
分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、
pH調整剤、マット剤、硬膜剤等が挙げられる。なお、
インク受容層は1層でも2層でもよい。
【0207】記録紙及び記録フィルムには、バックコー
ト層を設けることもでき、この層に添加可能な成分とし
ては、白色顔料、水性バインダー、その他の成分が挙げ
られる。バックコート層に含有される白色顔料として
は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウ
ム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウ
ム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サ
チンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カ
ルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロ
イダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬べーマイト、水
酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、
加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシ
ウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメ
ント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレ
ン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有
機顔料等が挙げられる。
【0208】バックコート層に含有される水性バインダ
ーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレ
ン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シ
ラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオ
ン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチル
セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニル
ピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテ
ックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が
挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分
としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐
剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0209】インクジェット記録紙及び記録フィルムの
構成層(バックコート層を含む)には、ポリマーラテッ
クスを添加してもよい。ポリマーラテックスは、寸度安
定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のよう
な膜物性改良の目的で使用される。ポリマーラテックス
については、特開昭62−245258号、同62−1
36648号、同62−110066号の各公報に記載
がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマ
ーラテックスを媒染剤を含む層に添加すると、層のひび
割れやカールを防止することができる。また、ガラス転
移温度が高いポリマーラテックスをバックコート層に添
加しても、カールを防止することができる。
【0210】本発明のインクは、インクジェットの記録
方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利
用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の
振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パ
ルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射
して、放射圧を利用してインクを吐出させる音響インク
ジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生
じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等に用
いられる。インクジェット記録方式には、フォトインク
と称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する
方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを
用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる
方式が含まれる。
【0211】
【実施例】以下、本発明を実施例にもとづいて具体的に
説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定される
ものではない。
【0212】前記一般式(I)で表される化合物は、上
述の方法に従えば合成することが可能である。また、一
般式(II)、一般式(III)で表されるフタロシアニン
染料は、(特願2001-24352、、同2001-96610、同2001-5
7063、及び同2001-47013)に記載の方法により合成する
ことができる。また、出発物質、染料中間体及び合成ル
ートについてはこれらにより限定されるものでない。
【0213】(合成例)以下、実施例に本発明のフタロシ
アニン色素誘導体の合成法を詳しく説明するが、出発物
質、色素中間体及び合成ルートについて限定されるもの
でない。
【0214】本発明の代表的なフタロシアニン化合物
は、例えば下記合成ルートから誘導することができる。
以下の実施例において、λmaxは吸収極大波長であり、
εmaxは吸収極大波長におけるモル吸光係数を意味す
る。
【0215】合成例1: 化合物Aの合成 窒素気流下、4−ニトロフタロニトリル(東京化成)2
6.0gを200mLのDMSO(ジメチルスルホキシ
ド)に溶解し、内温20℃で攪拌しているところへ、3
0.3gの3−メルカプト−プロパン−スルホン酸ナト
リウム(アルドリッチ)を添加した。続いて、内温20
℃で攪拌しているところへ、24.4gの無水炭酸ナト
リウムを徐々に加えた。反応液を攪拌しながら、30℃
まで加温し、同温度で1時間撹拌した。20℃まで冷却
した後、反応液をヌッチェでろ過し、ろ液を15000
mLの酢酸エチルにあけて晶析し、引き続き室温で30
分間撹拌して、析出した粗結晶をヌッチェでろ過し、酢
酸エチルで洗浄し、乾燥した。得られた粗結晶を、メタ
ノール/酢酸エチルから再結晶した(収量42.5g) その内、42.4gを300mLの酢酸に溶解し、内温
20℃で攪拌しているところへ、2.5gNa2WO4
2H2Oを添加した後、氷浴中、内温10℃まで冷却し
た。引き続き、35mLの過酸化水素水(30%)を発
熱に注意しながら徐々に滴下した。内温15〜20℃で
30分間撹拌した後に、反応液を内温60℃まで加温し
て、同温度で1時間撹拌した。20℃まで冷却した後、
反応液に1500mLの酢酸エチルを注入し、引き続き
同温度にて30分間撹拌した後に、析出した粗結晶をヌ
ッチェでろ過し、200mLの酢酸エチルで洗浄し、乾
燥した。得られた粗結晶を、メタノール/酢酸エチルを
用いて加熱洗浄して精製して、41.0gの化合物Aを
得た。1H-NMR(DMSO-d6),δ値TMS基
準:1.8〜1.9(2H,t);2.4〜2.5(2
H,m);3.6〜3.7(2H,t);8.3〜8.
4(1H,d);8.4〜8.5(1H,d);8.6
〜8.7(1H,s)。
【0216】化合物Bの合成 化合物Aの30.27gを70ml のジメチルホルム
アセトアミドに懸濁させ、アセトにトリル500mLを
添加した。そこに塩化スルホニル 19mLを15分間
で滴下した。その後内温70℃で2時間攪拌した。室温
まで冷却し、不溶物をろ過後、1.5Lの氷水に添加し
た。析出物を濾取し、その固体をイソプロパノール20
0mL に添加して、15分間攪拌した。固体を濾過
し、イソパノールで洗浄した。その固体を減圧下で乾燥
した(収量 66.40g)。D/L−1−アミノ−2
−プロパノール5.64gをジメチルホルムアセトアミ
ド50mL に溶解し、氷浴で内温4℃に保った。そこ
へ、先の固体10.0gを内温が12℃を越えないよう
に徐々に添加した。添加後、1時間室温で攪拌した。そ
の反応混合物を、1N−塩酸150mL、氷150gの
混合液に添加した。析出した固体を濾取し、充分な蒸留
水で洗浄した。その固体をアセトンで再結晶した(収量
6.31g)。同定は1H−NMRで行った。1H-NM
R(DMSO-d6),δ値TMS基準:1.0〜1.
1(3H,d);1.8〜2.0(2H,m);2.7
〜2.9(2H,t);3.0〜3.2(2H,t);
3.5〜3.7(4H,m);4.7〜4.8(1H,
d);7.1〜7.2(1H,t);8.3〜8.5
(2H,dd);8.6〜8.7(1H,s)。
【0217】合成例2:具体的化合物例154の合成 窒素気流下、化合物A 4.0 g 、化合物B 1
0.9gをエチレングリコール45mLに80℃で溶解
させた。そこに塩化銅 1.45 gを添加し内温を1
20℃まで加温し、そのまま2時間、温度を保ち攪拌し
た。過熱したままメタノール150mLを徐々に加え、
還流を30分続けた。室温まで冷却後、析出物を濾取
し、150mLの水に溶解した。不溶物を濾別後、内温
60℃まで加温し、そこに15.7gの水酸化リチウム
を添加した。内温を80℃に保ち、エタノール300m
Lを徐々に加え、30分間還流させた。析出物を濾下
し、加熱したエタノールで洗浄した。精製はゲルパーメ
ーションクロマトグラフィ(SEPHADEXTMLH−
20:Pharmacia製、展開溶媒:水)で行っ
た。収量 4.25 g 収率 28 %。同定は以下
の方法で行った。質量分析法:FAB−MS(NEGA
1395)、元素分析(実測値C, 39.02;
H, 3.40; N, 8.72;計算値C4841
uLi312143・3H2OとしてC:38.94、
H:3.48、N:8.69)。
【0218】[比較化合物の合成例] a)比較化合物1の合成 冷却管の付いた三つ口フラスコに、クロロスルホン酸1
50mLを加え、攪拌しながら引き続き20℃を超えな
い温度を保ちながら25.0g の銅フタロシアニンをゆ
っくり分割添加した。(発熱するため冷却を同時に実施
した) 次いでこの混合物を100℃まで、1時間かけて加温
し、更に135℃まで1時間かけて加温を続け、ガスの
発生が終了するまで同温度で5時間撹拌した。その後こ
の反応液を10℃まで冷却した後、次いで、反応液を1
500mLの飽和食塩水と500gの氷との混合物にゆ
っくり添加して青色結晶の目的物を析出させた。懸濁液
内の温度は、氷を補足的に添加することによって0〜5
℃に保った。更に室温で1時間攪拌した後に、ヌッチェ
でろ過し、1000mLの冷飽和食塩水で洗浄した。得
られた固体を700mLの0.1M水酸化ナトリウム水
溶液に溶解させた。溶液を攪拌しながら80℃まで加温
し、同温度で1時間撹拌した。水溶液を熱時ゴミ取りろ
過した後、ろ液を攪拌しながら塩化ナトリウム270m
Lを徐々に添加した塩析した。この塩析液を攪拌しなが
ら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。室温ま
で冷却した後、析出した結晶をろ過し、150mLの2
0%食塩水で洗浄した。引き続き、80%エタノール2
00mLに得られた結晶を加え、1時間還流下撹拌し、
室温まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、更に、6
0%エタノール水溶液200mLに得られた結晶を加
え、1時間還流撹拌し、室温まで冷却した後、析出した
結晶をろ過し、エタノ−ル300mLで洗浄後乾燥し
て、34.2gの下記比較化合物1を青色結晶として得
た。λmax : 624.8nm;εmax=3.40×1
4;λmax : 663.8nm;εmax=3.57×
104(水溶液中)。得られた化合物を分析した結果、
本明細書中で定義したフタロシアニン銅(II)-置換位
置が、フタロシアニン銅(II)-置換位置がα,β−混合
型で且つスルホ基置換数比、約4個:3個:2個=1:
3:1の混合物(ESI−MS)}であることが確認で
きた。
【0219】b)比較化合物2の合成 冷却管の付いた三つ口フラスコに、ニトロベンゼン10
0mL加え、180℃まで1時間かけて昇温し、そこに
4−スルホフタル酸一ナトリウム塩43.2g、塩化ア
ンモニウム4.7g、尿素58g、モリブデン酸アンモ
ニウム0.68g、塩化銅(II)6.93gを加え、同
温度で6時間撹拌した。反応液を40℃まで冷却したの
ち、50℃の加温したメタノ−ル200mLを注入し
て、生成した固形物を粉砕してながら室温で1時間攪拌
した。得られた分散物をヌッチェでろ過し、400mL
のメタノールで洗浄した。続いて得られた固体を塩化ナ
トリウムで飽和した1000mLの1M塩酸水溶液を加
え、煮沸して未反応の銅塩を溶かし出した。冷却後沈殿
した固体をヌッチェでろ過し、100mLの1M塩酸飽
和食塩水溶液で洗浄した。得られた固体を700mLの
0.1M水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。溶液を
攪拌しながら80℃まで加温し、同温度で1時間撹拌し
た。水溶液を熱時ゴミ取りろ過した後、ろ液を攪拌しな
がら塩化ナトリウム270mLを徐々に添加した塩析し
た。この塩析液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温
度で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した結
晶をろ過し、150mLの20%食塩水で洗浄した。引
き続き、80%エタノール200mLに得られた結晶を
加え、1時間還流下撹拌し、室温まで冷却した後、析出
した結晶をろ過し、更に、60%エタノール水溶液20
0mLに得られた結晶を加え、1時間還流撹拌し、室温
まで冷却した後、析出した結晶をろ過し、エタノール3
00mLで洗浄後乾燥して、29.25gの青色結晶と
して得た。λmax :629.9nm;εmax=6.1
1×104(水溶液中)。得られた化合物を分析(質量
分析法:ESI−MS、元素分析、中和滴定等種々の機
器解析方法により測定)した結果、本明細書中で定義し
たフタロシアニン銅(II)-置換位置が、β-位置換型{そ
れぞれの各ベンゼン核の(2又は3位)、(6又は7
位)、(10又は11位)、(14又は15位)にスル
ホ基を1個、銅フタロシアニン一分子中スルホ基を合計
4個有する}であることが確認できた。
【0220】c)比較化合物3の合成 冷却管の付いた三つ口フラスコに、クロロスルホン酸1
50mLを加え、攪拌しながら引き続き20℃を超えな
い温度を保ちながら25.0g の銅フタロシアニンをゆ
っくり分割添加した。(発熱するため冷却を同時に実施
した) 次いでこの混合物を100℃まで、1時間かけて加温
し、更に135℃まで1時間かけて加温を続け、ガスの
発生が終了するまで同温度で5時間撹拌した。その後こ
の反応液を10℃まで冷却した後、次いで、反応液を1
500mLの飽和食塩水と500gの氷との混合物にゆ
っくり添加して青色結晶の目的物を析出させた。懸濁液
内の温度は、氷を補足的に添加することによって0〜5
℃に保った。更に室温で1時間攪拌した後に、ヌッチェ
でろ過し、1000mLの冷飽和食塩水で洗浄した。得
られた固体を700mLの0.1Mのアンモニア水に溶
解させた。溶液を攪拌しながら80℃まで加温し、同温
度で1時間撹拌した。水溶液を熱時ゴミ取りろ過した
後、ろ液を攪拌しながら塩化ナトリウム270mLを徐
々に添加した塩析した。この塩析液を攪拌しながら80
℃まで加温し、同温度で1時間撹拌した。室温まで冷却
した後、析出した結晶をろ過し、150mLの20%食
塩水で洗浄した。引き続き、80%エタノール200m
Lに得られた結晶を加え、1時間還流下撹拌し、室温ま
で冷却した後、析出した結晶をろ過し、更に、60%エ
タノール水溶液200mLに得られた結晶を加え、1時
間還流撹拌し、室温まで冷却した後、析出した結晶をろ
過し、エタノ−ル300mLで洗浄後乾燥して、34.
2gの下記比較化合物3を青色結晶として得た。λmax
: 624.8nm;εmax=3.40×104;λma
x : 663.8nm;εmax=3.57×104(水
溶液中)。得られた化合物を分析した結果、本明細書中
で定義したフタロシアニン銅(II)-置換位置が、フタ
ロシアニン銅(II)-置換位置がα,β−混合型で且つス
ルホ基置換数比、約4個:3個:2個=1:3:1の混
合物(ESI−MS)}であることが確認できた。
【0221】d)比較化合物4の合成 窒素気流下、トリメリット酸無水物 5.00 g、尿
素 15.63 g、塩化銅 2.10 g、モリブデ
ン酸アンモニウム四水和物 0.64 g、をニトロベ
ンゼン 75 mLに懸濁させた。攪拌しながら、内温
180℃まで加温し、そのまま5時間、温度を保ち攪拌
した。室温まで冷却後、不溶物を濾別後、濾液に酢酸ナ
トリウム 10 gのメタノール溶液を添加し、目的物
を沈殿させた。固体を濾取し、メタノールでたき洗いす
ることで精製した。収量 8.5g 収率 15 %。
同定は以下の方法で行った。質量分析法:FAB−MS
(NEGA 835)、元素分析(実測値C, 49.
55; H, 1.93; N, 12.95;計算値
3612CuN8Na48・2H2OとしてC:49.3
6; H:1.84;N:12.79)。
【0222】
【化14】
【0223】[実施例1]下記の成分に脱イオン水を加
え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1
時時間撹拌した。その後KOH 10mol/Lにてp
H=9に調製し、平均孔径0.25μmのミクロフィル
ターで減圧濾過しシアン用インク液を調製した。
【0224】 インク液Aの組成: 本発明のフタロシアニン化合物(例示化合物154) 6.80g ジエチレングリコール 10.65g グリセリン 14.70g ジエチレングリコールモノブチルエーテル 12.70g トリエタノールアミン 0.65g オルフィンE1010 0.9g
【0225】フタロシアニン化合物を、下記表10に示
すように変更した以外は、インク液Aの調製と同様にし
て、インク液B〜E、比較用のインク液として、以下の
化合物を用いてインク液101,102を調整した。染
料を変更する場合は、添加量がインク液Aに用いた染料
に対して等モルとなるように使用した。染料を2種以上
併用する場合は等モルずつ使用した。
【0226】(画像記録及び評価)以上の各実施例(イ
ンク液A〜E)及び比較例(インク液101、102)
のインクジェット用インクについて、下記評価を行っ
た。その結果を表−9に示した。なお、表−10におい
て、「色調」、「紙依存性」、「耐水性」及び「耐光
性」は、各インクジェット用インクを、インクジェット
プリンター(EPSON(株)社製;PM−700C)
でフォト光沢紙(EPSON社製PM写真紙<光沢>(K
A420PSK、EPSON)に画像を記録した後で評
価したものである。
【0227】<色調>フォト光沢紙に形成した画像を、
390〜730nm領域のインターバル10nmによる
反射スペクトルをGRETAG SPM100−II(G
RETAG社製)を用いて測色し、これをCIE(国際
照明委員会) L*a*b*色空間系に基づいて、a
*、b*を算出した。JNC(社団法人日本印刷産業機
械工業会)のJAPAN Colour (日本印刷産
業連合会のメンバー21社から提供された、各社の校正
刷りのベタパッチを測色し、その平均値に対して色差
(ΔE)が最小になるように、Japan Colou
r Ink SF−90及びJapan Paperを
使用して印刷したときの色)の標準シアンのカラーサン
プルと比較してシアンとして好ましい色調を下記のよう
に定義した。 L* : 53.6±0.2の範囲において、 ○: a*(−35.9±6の範囲)、及び、b*(−
50.4±6の範囲) △: a*、b*の一方のみ(上記○で定義した好まし
い領域) ×: a*、b*のいずれも(上記○で定義した好まし
い領域外) ここで、参考に用いた JAPAN Colorの標準
シアンのカラーサンプルの測色値を以下に示す。 L*: 53.6±0.2 a*:−37.4±0.2 b*:−50.2±0.2 ΔE: 0.4(0.1〜0.7) (1)印刷機:マンローランドR−704, インキ:J
apan ColourSF−90,用紙:特菱アー
ト。 (2)測色 :測色計;X−rite 938, 0/4
5,D50,2deg.,black backin
g。
【0228】<紙依存性>フォト光沢紙に形成した画像
と、別途にプロフェショナルフォトペーパーPR101
(CANON社製;QBJPRA4)に形成した画像と
の色調を比較し、両画像間の差が小さい場合をA(良
好)、両画像間の差が大きい場合をB(不良)として、
二段階で評価した。
【0229】<耐水性>画像を形成したフォト光沢紙
を、1時間室温乾燥した後、10秒間脱イオン水に浸漬
し、室温にて自然乾燥させ、滲みを観察した。滲みが無
いものをA、滲みが僅かに生じたものをB、滲みが多い
ものをCとして、三段階で評価した。
【0230】<耐光性>前記画像を形成したフォト光沢
紙に、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用い
て、キセノン光(85000lx)を14日間照射し、
キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite3
10TR)を用いて測定し、色素残存率として評価し
た。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3
点で測定した。何れの濃度でも色素残存率が70%以上
の場合をA、1又は2点が70%未満をB、全ての濃度
で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
【0231】<暗熱保存性>前記画像を形成したフォト
光沢紙を、80℃−15%RHの条件下で7日間試料を
保存し、保存前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite3
10TR)を用いて測定し、色素残存率として評価し
た。色素残存率について反射濃度が1,1.5,2の3
点にて評価し、いずれの濃度でも色素残存率が90%以
上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃
度で90%未満の場合をCとした。
【0232】<耐オゾンガス性>シーメンス型オゾナイ
ザーの二重ガラス管内に乾燥空気を通しながら、5kV
交流電圧を印加し、これを用いてオゾンガス濃度が0.
5±0.1ppm、室温、暗所に設定されたボックス内
に、前記画像を形成したフォト光沢紙を14日間放置
し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X
-Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として
評価した。なお、前記反射濃度は、1.0、1.5及び
2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度
は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:O
ZG−EM−01)を用いて設定した。何れの濃度でも
色素残存率が70%以上の場合をA、1又は2点が70
%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとし
て、三段階で評価した。
【0233】<インク保存安定性>インクについて保存
安定性及び目詰まり回復性の試験を実施することで染料
の溶解性を評価した。インク保存安定性は、インク液A
〜Kをポリエチレン製容器に入れ、−15℃条件下24
時間保存後、引き続き、60℃の条件下で24時間保存
する;−15℃(24hr.)⇒60℃(24hr.)
の繰り返しを10サイクル繰り返して、保存前後の不溶
物析出の有無を調べ、下記基準で評価した。
【0234】[判定基準]経時後の記録液を試験管にと
り目視で観察した。 ○:不溶分が全く認められない状態である。 △:不溶分が少量認められる状態である。 ×:不溶分が目立ち、実用レベルでない状態である。
【0235】<目詰まり回復性>プリンターに各インク
を充填し、キャップをしない状態で40℃の環境に1ヶ
月間放置し、放置後、全ノズルが正常吐出するまでに要
するクリーニングの動作回数から、下記基準で評価し
た。
【0236】[判定基準] A;クリーニング2回以内で復帰する。 B;クリーニング3〜5回で復帰する。 C;クリーニング6回以上で復帰する。 NG;復帰しない。 表10に示すように、本発明の不斉炭素を含有したフタ
ロシアニン化合物を用いると、上記の試験では全く析出
物はなくインク保存安定性の改良ができた。
【0237】<溶解度>蒸留水5mlに対して、染料を
混合させ、マグネティックスターラーで30分間攪拌し
た。攪拌後、染料が溶媒に完溶したかどうかを確認し
た。評価は、以下に示されるように定義し、3段階で行
った 染料0.5gが溶媒5mlに完溶する:○ 染料0.5gは完溶しないが、染料0.2gでは溶媒5
mlに完溶する:△ 染料0.2gは溶媒5mlに完溶しない:×
【0238】
【表10】
【0239】表10に示すように、インク液A〜Eから
得られたシアン画像は、インク液F〜Iから得られたシ
アン画像よりも堅牢性が高く、特に耐オゾンガス性には
顕著な差が認められた。また、本発明の調製法によるイ
ンク液は、厳しい保存条件に曝されても低溶解成分の析
出による印字の悪化が無く、インク保存安定性、及び目
詰まり回復性に優れる事が判った。
【0240】<分光吸収性>本発明のフタロシアニン化
合物を2.5mg〜3.5mgの範囲でメスフラスコに
秤量した後に、蒸留水を加え溶解させながら100ml
になるまで蒸留水を添加して目的吸光度内(吸光度a及
び吸光度bのいずれか大きい値が0.85〜1.00の
範囲内)に入るように調整した後下記の測定条件で分光
光度計により分析を実施した。 (測定条件) 使用装置:島津自記分光光度計UV−260 セル:石英セル、光路長10mm; 測定温度:20℃; 希釈液 :蒸留水(pH=7.0)
【0241】インク液A〜Eに使用した本発明の化合物
の例示化合物101、117、126、154、159
及び比較化合物1〜4の溶液中の分光吸収を測定した。
測定は、水溶液の最大吸光度bが1.0になるように蒸
留水で希釈して行った。
【0242】上記の分光吸収曲線から求めた吸光度比b
/aが1.0未満ならば○、それ以上ならば×とした。
【0243】<酸化電位>酸化電位の値は、本発明のフ
タロシアニン化合物を10.0mgから25.0mgの
範囲で秤量し、0.1mol・dm-3の過塩素酸テトラ
プロピルアンモニウムを支持電解質として含むN,N−
ジメチルホルムアミド 5mlから15ml(色素の濃
度は約0.001mol・dm-3)で直流ポーラログラ
フィーにより測定した。ポーラログラフィ装置には、作
用極として炭素(GC)電極を、対極として回転白金電
極を用いて、酸化側(貴側)に掃引して得た酸化波を直
線近似してそのピーク値との交点と残余電流値との交点
の中点を酸化電位の値(vsSCE)とした。評価は酸化
電位が1.0以上ならば○、それ未満ならば×とした。
【0244】表10から明らかなように、本発明のイン
クジェット用インクは色調に優れ、紙依存性が小さく、
耐水性及び耐光性並びに耐オゾン性に優れるものであっ
た。さらに耐光性、耐オゾン性等の画像保存性、特にイ
ンク保存安定性に優れることは明らかである。
【0245】[実施例2]実施例1で作製した同じイン
クを用いて、実施例1の同機にて画像を富士写真フイル
ム製インクジェットペーパーフォト光沢紙EXにプリン
トし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例1
と同様な結果が得られた。
【0246】[実施例3]実施例1で作製した同じイン
クを、インクジェットプリンターBJ−F850(CA
NON社製)のカートリッジに詰め、同機にて同社のフ
ォト光沢紙GP−301に画像をプリントし、実施例1
と同様な評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が
得られた。
【0247】[実施例4]実施例1の試験方法を、下記
の環境試験方法に変更した以外は、実施例1と同じ操作
を用いて試験を行なった。すなわち、自動車の排気ガス
などの酸化性ガスと太陽光の照射を受ける屋外環境をシ
ミュレートした酸化性ガス耐性試験方法として、 H.Iw
ano, et al; Journal of Imaging Science and Technol
ogy ,38巻、140-142(1944)に記載の相対湿度80%、過
酸化水素濃度120ppm、蛍光灯照射チャンバーを用
いた酸化耐性試験方法を用いて試験した。試験の結果
は、実施例1と同様の結果であった。
【0248】
【発明の効果】本発明によれば、(1)着色剤として特
定構造のフタロシアニン化合物を使用することにより、
色再現性に優れた吸収特性を有し、かつ光、熱、湿度及
び環境中の活性ガスに対して十分な堅牢性を有し、イン
クジェット記録などの印刷用のインクなどに用いられる
着色組成物が提供され、(2)上記の着色組成物は、イ
ンクの長期保存安定性が良好で、溶解成分の溶解安定性
が高く、ノズルを目詰まりさせることなく、被記録材で
の速乾性に優れ、(3)上記着色組成物の使用により良
好な色相を有し、光及び環境中の活性ガス、特にオゾン
ガスに対して堅牢性の高い画像を形成することができる
インクジェット用インク及びインクジェット記録方法が
提供され、さらに(4)上記のインクジェット記録方法
を利用することによって、画像記録物のオゾンガス褪色
耐性を改良する方法が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢吹 嘉治 神奈川県南足柄市中沼210番地 富士写真 フイルム株式会社内 Fターム(参考) 2C056 EA13 FC01 2H086 BA15 BA33 BA56 4J039 BC60 BC64 BC71 BC75 BC79 CA06 EA16 EA40 EA44 GA24

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I)で表される化合物中に
    不斉炭素を少なくとも一つ有することを特徴とするイン
    ク組成物。 【化1】 一般式(I)中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立
    に−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR12、スルホ
    基、−CONR12、−CO21又は−COR1を表
    す。Zはそれぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル
    基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もし
    くは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラ
    ルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もし
    くは無置換の複素環基を表す。R1、R2はそれぞれ独立
    に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換
    もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置
    換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル
    基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無
    置換の複素環基を表す。 Y1、Y2、Y3及びY4はそれ
    ぞれ独立に、一価の置換基を表す。但し、X1、X2、X
    3、X4、Y1、Y2、Y3及びY4のいずれかに少なくとも
    一つの不斉炭素を有する。a1〜a4、b1〜b4は、それ
    ぞれX1〜X4、及びY1〜Y4の置換基数を表す。 a1
    4はそれぞれ独立に0〜4の数を表すが、全てが同時
    に0になることはない。 b1〜b4はそれぞれ独立に0〜
    4の数を表す。なお、a1〜a4及びb1〜b4が2以上の
    数を表す時、複数のX1〜X4、及びY1〜Y4はそれぞれ
    同一でも異なっていてもよい。Mは水素原子、金属原子
    又はその酸化物、水酸化物もしくはハロゲン化物である。
  2. 【請求項2】 前記一般式(I)が下記一般式(II)で
    表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載
    のインク組成物。 【化2】 前記一般式(II)において、X1〜X4、Y1〜Y8、Mは
    一般式(I)の中のX1〜X4、Y1〜Y4、Mとそれぞれ
    同義である。a1〜a4はそれぞれ独立に1又は2の整数
    を表す。
  3. 【請求項3】 前記一般式(II)が下記一般式(III)
    で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記
    載のインク組成物。 【化3】 前記一般式(III)において、X1〜X4、Mは一般式
    (I)の中のX1〜X4、Mとそれぞれ同義である。a1
    4はそれぞれ独立に1又は2の整数を表す。
  4. 【請求項4】 支持体上に白色無機顔料粒子を含有する
    受像層を有する受像材料にインク滴を記録信号に応じて
    吐出させ、受像材料上に画像を記録するインクジェット
    記録方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載のイ
    ンク組成物を用いることを特徴とするインクジェット記
    録方法。
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