JP2003194749A - 光電子測定装置 - Google Patents

光電子測定装置

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JP2003194749A
JP2003194749A JP2001393480A JP2001393480A JP2003194749A JP 2003194749 A JP2003194749 A JP 2003194749A JP 2001393480 A JP2001393480 A JP 2001393480A JP 2001393480 A JP2001393480 A JP 2001393480A JP 2003194749 A JP2003194749 A JP 2003194749A
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photoelectrons
photoelectron
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Takashi Iwamoto
岩本  隆
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Shimadzu Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 飛行時間型光電子分光において、光電子分光
と光電子回折測定とを一つの装置で行い、また、光電子
分光と光電子回折測定とを同時に行う。 【解決手段】 パルスX線を試料に照射し当該照射によ
って試料から発生する光電子の飛行時間を測定する光電
子測定装置であって、光電子の発生立体角を制御する立
体角制御手段10を備える構成とし、飛行時間を測定す
ることによって光電子回折測定を行うと共に、立体角制
御手段によって光電子の発生立体角を制御することによ
って光電子分光を行い、光電子分光と光電子回折測定と
を同一の装置で同時に行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光電子測定装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】固体表面の構成元素や化学結合状態を分
析する一分析方法として、光電子分光法がある。この光
電子分光法では、固体試料表面にX線を照射し、X線に
よって励起された原子から放出される光電子を測定す
る。この光電子スペクトルを観測することによって構成
元素の同定を行うことができ、また、結合エネルギーの
変化から化学結合状態を分析することができる。
【0003】従来、光電子分光装置はAl線やMgKα
線、シンクロトロン放射光等のX線源を備え、検出器と
してCHA(静電半球型アナライザ)やCMA(円筒鏡
型分析器)等を用いて所定の出射角度で放出された光電
子を検出する構成や、運動エネルギーを飛行時間に変換
して検出する構成が知られている。
【0004】一方、結晶等の原子の配列に関する情報を
得る手法として、光電子回折測定がある。この光電子回
折測定装置は、検出器としてチャンネル型電子増倍管
(チャンネルトロン)やファラデーカップ、MCP(マ
イクロチャネルプレート)等の検出器を用い、検出器に
捕らえられる光電子の位置を走査することによって光電
子回折測定を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】光電子分光を、飛行時
間に基づいて行う飛行時間型光電子分光では、飛行管と
この飛行管を内部に含む真空容器を使用するという装置
の構成上の特徴から、検出器の角度がほとんど変えられ
ない状態にある。そのため、光電子の全出射角度での積
分値で測定が行われることになる。そのため、飛行時間
型光電子分光では、光電子回折測定を行うことが困難で
あり、光電子回折測定を行うためには別の回折測定装置
を必要とするという問題がある。
【0006】また、光電子分光と光電子回折測定とを同
時に行うことができないため、試料や測定条件を同一と
する光電子分光データと光電子回折測定データを得るこ
とができないという問題がある。そこで、本発明は前記
した従来の問題点を解決し、飛行時間型光電子分光にお
いて、光電子分光と光電子回折測定とを一つの装置で行
うことを目的とし、また、光電子分光と光電子回折測定
とを同時に行うことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、パルスX線を
試料に照射し当該照射によって試料から発生する光電子
の飛行時間を測定する光電子測定装置であって、光電子
の発生立体角を制御する立体角制御手段を備える構成と
し、飛行時間を測定することによって光電子回折測定を
行うと共に、立体角制御手段によって光電子の発生立体
角を制御することによって光電子分光を行う。これによ
って、光電子分光と光電子回折測定とを同一の装置で同
時に行うことができる。
【0008】本発明の立体角制御手段は、光電子の通過
・非通過を機械的に制御する態様、光電子の飛行方向を
磁場によって制御する態様、光電子の飛行方向を電場に
よって制御する態様等の各態様とすることができる。
【0009】機械的な制御態様では、光電子が通過する
開口部の位置や大きさを制御することによって光電子の
発生立体角を機械的に選択する試料ホルダを備える。こ
の試料ホルダは、平面状の遮蔽カバー上で開口面積を可
変とする可変ピンホールを移動する構成、半球状の遮蔽
カバー上で開口面積を可変とする可変ピンホールを移動
する構成、半球状の遮蔽カバーの蛇腹を開閉することに
よって開口面積や開口位置を可変とする可変スリットを
備える構成、箱状の遮蔽カバーの一部をスライドさせる
ことによって開口面積や開口位置を可変とするスライド
スリットを備える構成等とすることができる。
【0010】磁場による制御態様では、試料側に電磁石
を設け、飛行管にコイルを設け、この電磁石に供給する
電流やコイルに供給する電流を制御する構成とし、これ
によって光電子の収集効率を向上させ、光電子の飛行方
向を光電子検出器方向に揃えるために磁場強度を制御す
る。電場による制御態様では、試料及び/又は試料ホル
ダに印加する電位を制御することによって電場を制御
し、光電子の飛行方向を選択する。
【0011】また、飛行管内に任意に電位を印加できる
メッシュ及び減速管を配置することでエネルギー分解能
を高めた光電子分光を行うことが可能である。従来の飛
行時間型光電子分光装置では特定の光電子出射角でのみ
光電子分光を行い、光電子回折測定を行うことができな
いが、本発明の光電子測定装置によれば可変ピンホール
や制御した磁場、電場を用いることによって、光電子の
出射角を自由に選択することで光電子分光及び光電子回
折測定を同時に行うことが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、光電子の通過・非通過を機械的に制御する態様、光
電子の飛行方向を磁場によって制御する態様、光電子の
飛行方向を電場によって制御する態様等の各態につい
て、図を参照しながら詳細に説明する。はじめに、本発
明の光電子測定装置の概略構成を図1の概略ブロック図
を用いて説明する。なお、図1に示す構成例は、光電子
の立体角を機械的、磁場及び電場により制御する構成を
含む。
【0013】光電子測定装置1は、X線を発生させるパ
ルスX線源5(例えば、レーザープラズマX線源)と、
発生した光電子の持つ運動エネルギーを計算するために
必要な飛行時間を発生させるための飛行管2と、光電子
の運動エネルギーを制御してエネルギー分解能を向上さ
せるための減速管6及びメッシュ7(7a,7b)と、
その減速管6及びメッシュ7に任意の電位を供給するた
めの可変電圧源8(8a,8b)と、光電子の到着時間
を検出するための光電子検出器3及び光電子検出器3に
電圧を印加する電源3aと、光電子の飛行時間を測定す
るための高速オシロスコープ4とを備え、この飛行時間
を測定することによって光電子回折測定を行う。
【0014】さらに、光電子測定装置1は、光電子の立
体角を制御する立体角制御手段10として、試料Sを内
部に収納すると共に光電子の出射立体角を制御するため
の立体角可変試料ホルダ11と、試料Sから出射した光
電子を光電子検出器3に集めて光電子の飛行方向を検出
器方向に揃えるための磁場を発生させる試料側コイル1
2a、飛行管側コイル12c及び各コイル12a,12
cに電流を供給する各電流源12b,12dを含む磁場
制御手段12と、光電子の飛行方向を選択する電場を発
生させるために試料及び/又は試料ホルダに印加する電
位を制御する電圧源13aを含む電場制御手段13を備
える。
【0015】なお、機械的制御を行う立体角可変試料ホ
ルダ11、磁場制御を行う磁場制御手段12、及び電場
制御を行う電場制御手段13は、少なくとも何れか一つ
あるいは任意の組み合わせとすることができる。図2は
本発明の光電子測定装置による光電子分光及び光電子回
折測定の原理を説明するための概略図である。
【0016】図2において、光電子測定装置1は、パル
スX線源5から発生させたパルスX線を試料Sに照射す
る。このパルスX線により試料から発生した光電子は、
電場制御手段13で形成される電場によって光電子の飛
行方向が選択され、立体角制御手段10によって出射角
度が選択されると共に、試料側コイル12a及び飛行管
側コイル12c等の磁場制御手段12で形成される発散
磁場により光電子の飛行方向を少しずつ光電子検出器3
の方向に揃えながら飛行管2内に入る。
【0017】飛行管2内に入った光電子は、メッシュ7
及び減速管6により運動エネルギーを制御されることで
光電子の飛行時間を最適化してエネルギー分解能を向上
させて光電子分光を行う。なお、図1では、立体角制御
手段10として、可変ピンホール11cを備える立体角
可変試料ホルダ11の例を示している。
【0018】光電子が光電子検出器3に到達すると、パ
ルスX線源5のトリガ信号からの時間測定により高速オ
シロスコープ4で光電子の飛行時間が測定される。飛行
時間は光電子の運動エネルギーに換算によって光電子分
光を行うことができるため、立体角可変試料ホルダ11
Aによる立体角情報と合わせることによって、光電子分
光と共に光電子回折測定を同時に行うことができる。
【0019】なお、立体角可変試料ホルダ11は、外枠
が高透磁率材料で作られた高透磁率カバー11aで覆わ
れているため、ホルダ内には磁場制御手段12で形成さ
れる発散磁場が入らないようになっている。高透磁率カ
バー11aには可変ピンホール11cが設けられ、この
可変ピンホール11cの径や位置を変えることによっ
て、試料から放出される光電子の発生立体角を選択す
る。
【0020】以下、光電子の通過・非通過を機械的に制
御する立体角可変試料ホルダの態様について図3〜図5
を用いて説明し、光電子の飛行方向を磁場によって制御
する態様について図6,7を用いて説明し、光電子の飛
行方向を電場によって制御する態様について図8〜図1
0を用いて説明する。はじめに、立体角可変試料ホルダ
の構成について説明する。図3は可変ピンホールを備え
る構成であり、可変ピンホールは平面状の遮蔽カバー上
で開口面積を可変とする。
【0021】立体角可変試料ホルダ11Aは、試料Sを
内部に収納し、コイル12aが形成する発散磁場を入れ
ないための高透磁率カバー11aと、試料SにX線を照
射するために高透磁率カバー11aに開けたX線照射用
開口部11bと、試料Sをのせる試料台11dと、試料
Sを走査するための試料スキャン用可変軸11e及び試
料スキャン用の超高真空用モータ11fと、発生した光
電子の試料Sからの立体角を制御するための可変ピンホ
ール11c、可変ピンホールの径を制御するためのピン
ホール径可変軸11g及び超高真空用モータ11hと、
可変ピンホール11cの位置を制御するためのピンホー
ル位置可変軸11i及び超高真空用モータ11jを備え
る。
【0022】なお、高透磁率カバー11aの外周部分に
は、立体角可変試料ホルダ11の外に出射した光電子の
飛行方向を制御するための磁場を発生するためのコイル
12a、及びコイル12aに適切な電流を供給するため
の電流源12bが設けられる。
【0023】上記構成の立体角可変試料ホルダ11Aの
機能を説明する。試料Sに照射されたX線により発生し
た光電子を、高透磁率カバー11aにより周囲の磁場か
ら影響を受けないようにし、可変ピンホール11cの開
口部から出射させる。高透磁率カバー11a内において
は、光電子は外部磁場の影響を受けないため、高透磁率
カバー11aに到達した光電子は、試料Sから放出され
たときの角度情報を含んでいる。このとき、可変ピンホ
ール11cの開口量を、ピンホール径可変軸11gによ
って可変ピンホールの径を制御することで設定し、ま
た、可変ピンホール11cの位置は、ピンホール位置可
変軸11iにより任意の立体角になるよう調整する。こ
れによって、可変ピンホール11cから出射した光電子
は、可変ピンホール11cが設定される位置に対応した
角度情報を備える。
【0024】光電子は可変ピンホール11cから出射し
た後,立体角可変試料ホルダ11の周りに巻いたコイル
12aにより発生させた磁場によって光電子の飛行方向
を制御し、光電子の収集効率及び光電子スペクトルのエ
ネルギー分解能を向上させる機能を持つ。
【0025】図4は、本発明の可変ピンホール11cを
備える立体角可変試料ホルダ11による光電子スペクト
ル例を模式的に示している。立体角可変試料ホルダ11
の可変ピンホール11cの位置を変えることによって光
電子の出射角を変更し、光電子検出器によって光電子を
検出すると、各出射角の光電子スペクトルを得ることが
できる。例えば、図4(a)は出射角が0°の光電子ス
ペクトルの概略例であり、図4(b)は出射角が30°
の光電子スペクトルの概略例である。このように、可変
ピンホールを走査することで光電子立体角を変化させ、
光電子回折測定を行う。
【0026】なお、図3に示す構成の立体角可変試料ホ
ルダ11Aにおいて、ピンホール径可変軸11gの調整
によって可変ピンホール11cの径を変更することで出
射角の角度幅を選択することができる。また、ピンホー
ル位置可変軸11iの調整によって可変ピンホール11
cの位置を変更することで出射角の角度位置を選択する
ことができる。このとき、可変ピンホール11cの位置
を、試料Sの中心軸からの距離、及び角度を変えて走査
することによって、光電子の発生強度の3次元的分布を
求めることができる。
【0027】次に、光電子の通過・非通過を機械的に制
御する他の構成について図5を用いて説明する。図5
(a)は半球状の遮蔽カバー上で開口面積を可変とする
可変ピンホールを移動する構成例を示し、図5(b)は
半球状の遮蔽カバーの蛇腹を開閉することによって開口
面積や開口位置を可変とする可変スリットを備える構成
例を示し、図5(c)は箱状の遮蔽カバーの一部をスラ
イドさせることによって開口面積や開口位置を可変とす
るスライドスリットを備える構成例を示している。
【0028】図5(a)に示す立体角可変試料ホルダ1
1Bは、試料Sを内部に収納すると共に、外部磁場の影
響を阻止するための半球状の高透磁率カバー11aと、
試料SにX線を照射するためのX線照射用開口部11b
と、発生した光電子の試料からの立体角を制御するため
の可変ピンホール11cと、その可変ピンホール11c
の半球状の高透磁率カバー11a上での位置を制御する
ためのスライド軸11k、及び超高真空用モータ11
l,11mを備える。なお、超高真空用モータ11lは
スライド軸11kを駆動するためのモータであり、超高
真空用モータ11mは半球状の高透磁率カバー11aを
回動させるモータであり、これらモータによって、可変
ピンホール11cの軸中心からの角度及び周方向の角度
を制御する。また、立体角可変試料ホルダ11Bの外に
出射した光電子の飛行方向を制御する磁場を発生のため
の円筒型電磁石13Aを備える。
【0029】立体角可変試料ホルダ11Bは、X線をX
線照射用開口部11bのX線入射窓(例えば、Tiフィ
ルムなどのX線を透過させる窓材が貼られている)を通
し、内部に収納する試料S上に照射する。X線照射によ
って発生した光電子は、高透磁率カバー11aにより周
囲の磁場から影響を受けることなく、試料Sから発せら
れた発生角度のまま高透磁率カバー11aに達する。高
透磁率カバー11aに到達した光電子は、高透磁率カバ
ー11aによって外部への出射は阻止され、可変ピンホ
ール11cからのみ出射させる。可変ピンホール11c
から出射される光電子は、試料Sから放出される光電子
の角度情報を含んでおり、この角度情報から回折情報を
得ることができる。
【0030】そのとき、可変ピンホール11cをスライ
ド軸11k、及び2つの超高真空用モータ11l、11
mにより任意の取り出し立体角になるよう調整する。ま
た、可変ピンホール11cから光電子が出射した後、円
筒型電磁石13Aが発生する磁場によって光電子の飛行
方向を制御し、光電子の収集効率及び光電子スペクトル
のエネルギー分解能を向上させる。
【0031】図5(b)に示す立体角可変試料ホルダ1
1Cは、可変ピンホール11cに代えて、可変スリット
11nを用い、可変スリット11nの位置や開口量を半
球状の蛇腹ガード11oによって可変とする構成であ
り、その他の構成及び機能は、前記した半球スライド型
の立体角可変試料ホルダ11Bとほぼ同じである。
【0032】立体角可変試料ホルダ11Cでは、可変ス
リット11nを用いて光電子の立体角を大きくとること
で光電子量を増加させることができ、また、蛇腹ガード
11oを用いることによって、隙間無く可変スリット1
1nを走査することができる。なお、蛇腹ガード11o
は、回転軸11p及び超高真空用モータ11qによって
駆動させることができる。
【0033】図5(c)に示す立体角可変試料ホルダ1
1Dは、可変スリットの位置や開口量を、箱状の高透磁
率カバー11aに対してスライドスリット11rをスラ
イドさせることによって可変とする構成であり、その他
の構成及び機能は、前記した半球スライド型の立体角可
変試料ホルダ11B,Cとほぼ同じである。
【0034】立体角可変試料ホルダ11Dでは、可変ス
リット11nのスライドによって光電子の立体角を大き
くとることで光電子量を増加させることができる。ま
た、半球型スライド型に比べて全体のサイズを小さくす
ることが可能で、動作構造が簡単化され,試料とカバー
との距離が近くなる分だけ光電子の立体角を大きくとる
ことができる。なお、スライドスリット11rのスライ
ドは、スライド軸11s及び超高真空用モータ11tに
よって駆動させることができる。
【0035】次に、光電子の飛行方向を磁場によって制
御する態様について図6を用いて説明する。磁場制御手
段12は、前記図1,2に示したように、試料Sから出
射した光電子を光電子検出器3に集めて光電子の飛行方
向を検出器方向に揃えるため磁場を発生させる試料側コ
イル12a、飛行管側コイル12c、及び各コイル12
a,12cに電流を供給する各電流源12b,12d、
及び電流源12b,12dを制御する電流コントローラ
12eを備える。
【0036】電流コントローラ12eは、電流源12b
及び/又は電流源12dを制御し、試料側コイル12a
及び/又は飛行管側コイル12cが発生する磁場を制御
する。この磁場を制御することによって、光電子検出器
3に入射する光電子の立体角を制御する。
【0037】なお、試料Sが高透磁率カバー11aで囲
まれている場合には、試料側コイル12a及び/又は飛
行管側コイル12cが発生する磁場は、高透磁率カバー
11aから外部に出射した光電子に対して作用し飛行方
向を調整する。高透磁率カバー11a内において、試料
Sから出射した光電子は磁場に影響されることなく、試
料Sから出射した角度情報を保持したまま高透磁率カバ
ー11aに到達する。
【0038】図7は、本発明の磁場制御手段12を用い
て立体角を選択した場合の光電子スペクトル例を模式的
に示している。磁場制御手段12の発生磁場を変えるこ
とによって光電子の出射角を変更し、光電子検出器によ
って光電子を検出すると、各出射角の光電子スペクトル
を得ることができる。例えば、図7(a)は、試料側コ
イル12a及び飛行管側コイル12cに供給する電流を
共に小さくした場合における、飛行時間に対する光電子
強度の概略例である。このときの立体角は、図7(d)
中の斜線部Aに対応する。なお、図7(d)の円形の中
心は試料位置に対応し、図7(d)の円形のx軸方向は
光電子検出器方向を示している。
【0039】また、図7(b)は試料側コイル12a及
び飛行管側コイル12cに供給する電流を共に大きくし
た場合における、飛行時間に対する光電子強度の概略例
である。このときの立体角は、図7(b)中の斜線部B
に対応する。ここで、図7(a)に示す光電子スペクト
ルと図7(b)に示す光電子スペクトルとの差を求める
ことによって、図7(c)に示すような立体角の差によ
る光電子スペクトルを得ることができる。このときの立
体角は、図7(b)中の斜線部Cに対応する。
【0040】このように発生させた磁場を強めることに
より、より大きな立体角分の光電子を収集することがで
き、変化させた立体角分の光電子スペクトルを分析する
ことで光電子回折測定を行うことができる。また、任意
の角度範囲の立体角分の光電子を収集することができ
る。
【0041】次に、光電子の飛行方向を電場によって制
御する態様について図8を用いて説明する。電場制御手
段13は、前記図1,2に示したように、試料Sから出
射した光電子の飛行方向を選択する電場を発生させるた
めに試料及び/又は試料ホルダに印加する電位を制御す
る電圧源13a、及び電流コントローラ13bを含む電
場制御手段13を備える。
【0042】電流コントローラ13bは、電圧源13a
を制御する他、可変電圧源8a,8bを制御する。電圧
源13aは、試料Sや試料台11dに電圧を印加するこ
とで電場を形成する。なお、電場の形成は、試料Sや試
料台11dに電圧を印加する構成の他、発生した光電子
に電界を作用させる構成であれば他の既存する部材や新
たに配置した部材に電圧を印加する構成とすることもで
きる。試料や試料ホルダの電位を制御することで光電子
の出射角度を制御し、試料から発生する光電子の立体角
をコントロールする。また、可変電圧源8a,8bは、
光電子の運動エネルギーを制御してエネルギー分解能を
向上させるための減速管6及びメッシュ7(7a,7
b)に電圧を印加する。
【0043】図9は電場が光電子に作用する状態を説明
するための概略図である。図9において、試料Sから出
射した光電子の飛行方向を示している。電場によって、
試料Sから出射角度θを有して出射する光電子は水平方
向に加速される。これによって、印加する電位Vを強め
ることにより、出射角度の浅い光電子は試料からの出射
が抑制され、ある出射角度以上の光電子のみを検出する
ことができる。
【0044】図10(a)は、印加する電圧Vを零とし
た場合における光電子の飛行時間に対する光電子強度を
示している。この光電子スペクトルには、出射角度の浅
い光電子についても検出する。これに対して、図10
(b)は、印加する電圧Vを強めた場合における光電子
の飛行時間に対する光電子強度を示している。この光電
子スペクトルには、出射角度θ以上の光電子のみを検出
し、出射角度θ以下の光電子の検出を抑制する。なお、
出射角度θと印加する電圧Vとの関係は、V=(1/
q)・m(v・cosθ)/2で表される。なお、qは
素電荷、mは電子質量、Ekは光電子の運動エネルギ
ー、vは光電子の速度ベクトルを表している。これによ
って、光電子の出射角度を走査することで変化させた立
体角分の光電子スペクトルピークを分析し,光電子回折
測定を行うことができる。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の光電子測
定装置によれば、飛行時間型光電子分光において、光電
子分光と光電子回折測定とを一つの装置で行うことがで
き、また、光電子分光と光電子回折測定とを同時に行う
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電子測定装置の概略構成を説明する
ための概略ブロック図である。
【図2】本発明の光電子測定装置による光電子分光及び
光電子回折測定の原理を説明するための概略図である。
【図3】本発明の光電子の通過・非通過を機械的に制御
する構成例を説明するための概略図である。
【図4】本発明の光電子の通過・非通過を機械的に制御
する構成による光電子スペクトル例を示す図である。
【図5】本発明の光電子の通過・非通過を機械的に制御
する他の構成例を説明するための概略図である。
【図6】本発明の光電子の飛行方向を磁場によって制御
する構成例を説明するための概略図である。
【図7】本発明の磁場制御で得られる光電子スペクトル
例を示す図である。
【図8】本発明の光電子の飛行方向を電場によって制御
する構成例を説明するための概略図である。
【図9】本発明の電場が光電子に作用する状態を説明す
るための概略図である。
【図10】本発明の磁場制御で得られる光電子スペクト
ル例を示す図である。
【符号の説明】
1…光電子測定装置、2…飛行管、3…光電子検出器、
3a…電源、4…高速オシロスコープ、5…パルスX線
源、6…減速管、7,7a,7b…メッシュ、8,8
a,8b…可変電圧源、10…立体角制御手段、11,
11A〜11D…立体角可変試料ホルダ、11a…高透
磁率カバー、11b…X線照射用開口部、11c…可変
ピンホール、11d…試料台、11e…試料スキャン用
可変軸、11f…超高真空用モータ、11g…ピンホー
ル径可変軸、11h…超高真空用モータ、11i…ピン
ホール位置可変軸、11j…超高真空用モータ、11k
…スライド軸、11l,11m…超高真空用モータ、1
1n…可変スリット、11o…蛇腹ガード、11p…回
転軸、11q…超高真空用モータ、11r…スライドス
リット、11s…スライド軸、11t…超高真空用モー
タ、12a,12c…コイル、12b,12d…電流
源、12e…電流コントローラ、13…電場制御手段、
13a…電圧源、13b…電流コントローラ、S…試
料。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パルスX線を試料に照射し当該照射によ
    って試料から発生する光電子の飛行時間を測定する光電
    子測定装置であって、前記光電子の発生立体角を制御す
    る立体角制御手段を備え、前記飛行時間を測定すること
    によって光電子回折測定を行い、前記発生立体角を制御
    することによって光電子分光を行うことを特徴とする、
    光電子測定装置。
  2. 【請求項2】 前記立体角制御手段は、光電子が通過す
    る開口部の位置及び/又は大きさを制御して発生立体角
    を選択することを特徴とする、請求項1記載の光電子測
    定装置。
  3. 【請求項3】 前記立体角制御手段は、光電子の飛行経
    路上に形成する磁場及び/又は電場の制御によって発生
    立体角を選択することを特徴とする、請求項1記載の光
    電子測定装置。
  4. 【請求項4】 前記立体角制御手段による磁場制御は、
    試料側に設けた電磁石に供給する電流、及び飛行管に設
    けたコイルに供給する電流の制御であり、前記立体角制
    御手段による電場制御は、試料及び/又は試料ホルダに
    印加する電位の制御であることを特徴とする、請求項3
    記載の光電子測定装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20150114039A (ko) * 2014-03-31 2015-10-12 한국표준과학연구원 패러데이컵 어셈블리
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