JP3273844B2 - 散乱イオンによる分析装置 - Google Patents

散乱イオンによる分析装置

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JP3273844B2
JP3273844B2 JP33095393A JP33095393A JP3273844B2 JP 3273844 B2 JP3273844 B2 JP 3273844B2 JP 33095393 A JP33095393 A JP 33095393A JP 33095393 A JP33095393 A JP 33095393A JP 3273844 B2 JP3273844 B2 JP 3273844B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,イオンビーム照射によ
る分析装置に係り,詳しくは,ヘリウムや水素等の単一
エネルギーのイオンを試料に照射して,試料中の成分原
子によって弾性散乱されたイオンのエネルギースペクト
ルを測定することにより,試料成分元素の同定や深さ方
向の組成分析を行うイオン散乱分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】イオンビーム照射による分析装置におい
て,百万電子ボルト程度に加速された軽イオン(水素や
ヘリウム)を試料に照射したとき,入射イオンと試料内
原子核との衝突は,ほとんど弾性散乱とみなすことがで
きる。即ち,質量M1 のイオンをエネルギーE0 で加速
し,質量M2 の原子で構成される固体に照射すると,表
面で弾性散乱され跳ね返される入射イオンのエネルギー
1 は,次式で与えられる。 E1 =KM1・E0 …(1)
【数1】 ここで,KM1はKinematical Factorと呼ばれる。上記
(2)式で示されるように,弾性散乱で跳ね返された入
射イオンのエネルギーは試料内原子核の質量M2 の関数
となり,散乱イオンのエネルギースペクトルから試料を
構成する元素の質量が推定できる。とりわけ後方(θ=
180°)に散乱される散乱イオンを利用するときが最
も分解能が高く,これがラザフォード後方散乱法(Ruth
erford Backscattering Spectroscopy:RBS)として
分析に用いられる。上記RBS分析において,試料表面
からΔxだけ深いところで散乱されるイオンは,入射/
出射のとき,固体中の軌道電子とのノックオン散乱(非
弾性散乱)によりエネルギーを失い,散乱されたイオン
のエネルギーはE1 より更にΔEだけ低くなる。固体中
ではΔEは深さΔxにほぼ線形に比例するため,このシ
フト量からイオンが衝突した原子核の深さを知ることが
できる。例えば,試料が薄膜形成された基板の場合に
は,スペクトルは帯状に広がり,その幅が膜厚に対応す
る。従って,多層の薄膜でも1回の照射で全ての膜厚を
測定することができる。この非破壊で深さ方向の元素分
布が測定できる能力は,スパッターで表面を削らなけれ
ばならなかった従来の分析とは,比較にならない高精度
と高スループットを実現させた。
【0003】上記RBS分析において,通常のRBS分
析装置では,散乱イオンの検出に表面障壁型半導体検出
器が用いられる。この検出器のエネルギー分解能は高々
ΔE〜15keV程度で,入射エネルギー(1〜3Me
V)に対して1.5〜0.5%のため,Si基板(試
料)に換算して24〜8nm程度の分解能にとどまる。
そこで,表層部分を更に精度よく測定するために,より
エネルギー分解能が高いトロイダル静電分析器(TE
A)がオランダのFOM研究所で開発された。このTE
Aは,散乱イオンを2つの球面電極の間隙に生じさせた
強静電場で偏向させてエネルギーを分離させ,分解能が
散乱イオンエネルギーに対する比で得られるのが特徴で
あり,実現された装置でΔE/E〜4×10-3程度の分
解能が得られる。上記TEAの概略構成を図6に示す。
図6において,加速器21に内蔵されたイオン源22に
よって作り出された軽イオンは加速管23で加速され,
ビームダクト24を通りコリメータ25によって絞られ
て測定室26内に配置された試料27に照射される。試
料27の表面又は内部で散乱されたイオンのうち,2つ
のトロイダル電極28,29の球面で挟まれた狭い間隙
に飛び込んだイオンだけが高電圧電源30から印加され
た静電場によって偏向され,更に,そのうちの或るエネ
ルギーのイオンだけがスリット31で選別されてマルチ
チャンネルプレート32に到達する。このマルチチャン
ネルプレート32でイオンが多数の二次電子に変換・増
幅され,ポジション・センシティブ検出器33で検出さ
れる。上記トロイダル電極11,12に印加する電圧を
変化させることによって,散乱イオンのエネルギースペ
クトルを上記ポジション・センシティブ検出器33で測
定することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記TEAは,前述の
半導体検出器の分解能の低いことを改善するものであ
る。しかし,半導体検出器のそれとは異なり,一定比の
エネルギー分解能をもつので,低エネルギー領域におい
て優位性を示すが,低エネルギーになると散乱現象がよ
り複雑になり,RBS分析装置として実用的なのは入射
エネルギーが400〜700MeVの領域となる。これ
以上の高エネルギー領域に対応できるTEAとするに
は,過大な電圧が印加できる大きな電極を必要とし,真
空容器(測定室)に収容することを考慮すると,その製
作が困難である問題点があった。又,アクセプタンスは
2つの球面電極の狭い間隙で限定されるため,検出立体
角が小さい問題点を有する。更に,上記のように低エネ
ルギーの入射ビームで使用されるため,試料表面の汚染
の影響を受けやすいこと,測定室内を超高真空に保つ必
要があるため,試料の出し入れの時間を要すること,散
乱現象が複雑化して解析結果に曖昧さが残ること,高エ
ネルギービームによる照射に対応できないため,試料の
より深い位置の情報を得ることができない等の問題点が
あった。そこで,本発明が目的とするところは,高エネ
ルギーイオンビームを用いて,より深い位置の情報を高
いエネルギー分解能で得ることができるRBS分析によ
る分析装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明が採用する第1の手段は,加速されたイオンビ
ームを真空容器内に配置された試料に照射して,上記試
料から散乱した散乱イオンのエネルギースペクトルを測
定することにより,上記試料の分析を行う散乱イオンに
よる分析装置において,上記試料近傍から入射ビームの
入射方向上流側の所定範囲内に,上記入射ビームと平行
な磁場を発生させる磁場発生手段と,上記試料よりも入
射ビームの入射方向上流側の所定位置に配置され,上記
入射イオンを通過させると共に,上記磁場により収束さ
れた上記散乱イオンを上記イオンビームの入射方向と反
対方向に通過させる開口部を中心部に有するアパーチャ
と,上記アパーチャよりも上記入射ビームの上流側に所
定距離離して配置され,中心部に上記入射イオンを通過
させる開口部を有する散乱イオン検出器とを具備してな
ることを特徴とする散乱イオンによる分析装置として構
成される。又,第2の手段は,加速されたイオンビーム
を真空容器内に配置された試料に照射して,上記試料か
ら散乱した散乱イオンのエネルギースペクトルを測定す
ることにより,上記試料の分析を行う散乱イオンによる
分析装置において,上記試料近傍から入射ビームの入射
方向上流側の所定範囲内に,上記入射ビームと平行な磁
場を発生させる磁場発生手段と,上記試料よりも入射ビ
ームの入射方向上流側の所定位置に配置され,上記入射
イオンを通過させると共に,上記磁場により収束された
上記散乱イオンを上記イオンビームの入射方向と反対方
向に通過させる開口部を中心部に有するアパーチャと,
上記アパーチャよりも上記入射ビームの上流側に所定距
離離れて配置され,中心部に上記入射イオンを通過させ
る開口部を有する散乱イオン検出器と,上記磁場発生手
段よりも上記入射ビームの入射方向上流側に配設された
収束レンズと,該収束レンズよりも更に上流側に配設さ
れた対物コリメータとを備えたイオンビーム収束手段と
を具備してなることを特徴とする散乱イオンによる分析
装置として構成される。更に,第3の手段は,加速され
たイオンビームを真空容器内に配置された試料に照射し
て,上記試料から散乱した散乱イオンのエネルギースペ
クトルを測定することにより,上記試料の分析を行う散
乱イオンによる分析装置において,上記試料近傍から入
射ビームの入射方向上流側の所定範囲内に,上記入射ビ
ームと平行な磁場を発生させる磁場発生手段と,上記試
料よりも入射ビームの入射方向上流側の所定位置に配置
され,上記入射イオンを通過させると共に,上記磁場に
より収束された上記散乱イオンを上記イオンビームの入
射方向と反対方向に通過させる開口部を中心部に有する
アパーチャと,上記アパーチャよりも上記入射ビームの
上流側に所定距離離れて配置され,中心部に上記入射イ
オンを通過させる開口部を有する散乱イオン検出器と,
上記アパーチャよりも上記入射ビームの入射方向上流側
に配設された入射イオンの偏向手段とを具備してなるこ
とを特徴とする散乱イオンによる分析装置として構成さ
れる。上記各分析装置において,上記磁場発生手段の磁
場強度を可変として構成,あるいは,上記試料の配設位
置を可変として構成,あるいは,上記アパーチャ及び検
出器の配設位置を可変として構成することができる。
又,上記磁場発生手段は超伝導マグネットにより構成す
ることができる。更に,上記第2及び第3の手段におい
て,上記アパーチャに印加された引き込み電圧により,
イオンビームにより照射された試料から放出される二次
電子を捕捉し,上記二次電子を検出することができる。
【0006】
【作用】本発明の第1の手段によれば,イオンビームの
入射軸に入射方向上流側から散乱イオン検出器,アパー
チャ,試料が配設され,これらの配設位置を含む所定範
囲内に入射ビーム軸に平行な磁場が印加される。上記散
乱イオン検出器及びアパーチャには,その中心部に開口
部を有しており,入射ビームは上記開口部を通過して上
記試料を照射することができる。イオンビームで照射さ
れた試料から後方散乱した散乱イオンは磁場により収束
され,アパーチャの開口部を抜けた散乱イオンが検出器
で検出される。請求項1がこれに対応する。上記構成に
おいて,磁場強度を変化させると,あるエネルギーを有
する散乱イオンのみがアパーチャの開口部を抜けて検出
器に到達できることになるため,磁場強度を変化させる
毎の検出器出力を得ることによって散乱イオンのエネル
ギースペクトルを測定することができる。請求項4がこ
れに対応する。又,磁場強度を一定に保ち,試料の配設
位置を変化させると,散乱イオンのエネルギーによりア
パーチャを通り抜けることができる散乱イオンのエネル
ギーを選別することができる。請求項6がこれに対応す
る。更に,試料の配設位置を固定し,磁場強度を一定に
保った状態で,アパーチャと検出器との配設位置を変化
させると,散乱イオンの散乱角度によりアパーチャを通
り抜けることができる散乱イオンの散乱角を選別するこ
とができる。請求項7がこれに対応する。更に,磁場発
生手段を超伝導マグネットにより構成すると,強磁場に
より散乱イオンのエネルギーの選別を高分解能に高める
ことができる。請求項5がこれに該当する。本発明の第
2の手段では,上記第1の手段による構成の磁場発生手
段の入射ビームの入射方向上流側に収束レンズと,更に
上流側に対物コリメータが配設される。この構成によ
り,対物コリメータにより絞られたイオンビームを収束
レンズで収束してビームスポットをマイクロ化すること
ができるので,試料の局所分析が可能となる。請求項2
がこれに対応する。本発明の第3の手段では,上記第2
の手段による構成に加え,上記収束レンズと磁場発生手
段との間に偏向手段が配設される。この構成により,マ
イクロイオンビームを偏向させることができるので,試
料上へのイオンビームの入射位置を移動,走査させるこ
とができ,任意位置の局所分析が可能となる。請求項3
がこれに該当する。又,上記第3の手段の構成により,
マイクロイオンビームで試料を走査したとき,試料から
発生する二次電子が磁場に束縛されてイオンビームの入
射方向に遡ってくるので,この二次電子を上記アパーチ
ャに印加した引き込み電圧によって捕捉すると,マイク
ロイオンビームに走査された試料表面の二次電子像を得
ることができる。即ち,マイクロイオンビーム分析装置
として利用することも可能な装置が構成できることにな
る。請求項8がこれに該当する。
【0007】
【実施例】以下,添付図面を参照して,本発明を具体化
した実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,
以下の実施例は本発明を具体化した一例であって,本発
明の技術的範囲を限定するものではない。ここに,図1
は本発明の第1実施例に係る分析装置の構成を示す模式
図,図2は散乱イオンの軌道を示す説明図,図3は散乱
イオンのエネルギーによる軌道の変化を示す説明図,図
4は本発明の第2実施例に係る分析装置の構成を示す模
式図,図5は本発明の第2実施例に係る分析装置の構成
を示す模式図である。図1において,第1実施例に係る
分析装置1は,イオン源5と加速管6とを備えてイオン
ビーム18を投射する加速器5と,対物コリメータ7に
よって絞られた上記イオンビーム18が通過するビーム
ダクト19に連通して設けられる測定室8と,該測定室
8内に配設される試料9の近傍から散乱イオンの検出に
必要な所定範囲内にイオンビーム18の入射方向上流に
向けてビーム軸に平行且つ均一な磁場を発生させるソレ
ノイドコイル10及びマグネットヨーク11(磁場発生
手段)と,測定室8内の磁場領域内のビーム入射方向上
流側に配設されたアパーチャ12及び検出器13とを具
備して構成されている。上記アパーチャ12及び検出器
13は,それぞれの中心部に開口部を有する円環状に形
成されており,上記開口部をイオンビーム18の入射軸
に一致させて配設される。又,上記試料9は,試料交換
ポート44から測定室8内に挿入されて,試料位置移動
ロッド43の先端に固定され,上記試料位置移動ロッド
43によりイオンビーム18の入射軸方向に配設位置を
変化できるように配置される。上記構成において,測定
室8内に試料9を配設し,測定室8内をターボ分子ポン
プ45とロータリポンプ46とを備えた排気手段により
所定真空度に真空排気し,上記ソレノイドコイル10に
コイル励磁電源42から励磁電流を印加して測定室8内
に磁場を印加した状態で,上記加速器4からイオンビー
ム18を入射させる。イオンビーム18は,検出器13
の開口部及びアパーチャ12の開口部を通過して試料9
を照射する。イオンビーム18に照射された試料9から
発生した散乱イオン17は磁場によって収束され,特定
条件にある散乱イオン17がアパーチャ12の開口部を
抜けて検出器13に到達する。検出器13で検出された
散乱イオン17の検出出力は,プリアンプ14及びリニ
アアンプ15によって増幅され,マルチチャンネルアナ
ライザ16によって計数される。
【0008】上記試料9から散乱される散乱イオンか
ら,特定のエネルギーを有する散乱イオン17のみが選
別できる仕組みを以下に説明する。図2(a)は,イオ
ンビーム18で照射された試料9から散乱角θで散乱さ
れた散乱イオン17の軌道を立体的に示し,図2(b)
(c)(d)は,ビーム軸をzとして,散乱イオン17
の軌道をx−z,y−z,x−y平面に射影した図であ
る。磁場はz軸に平行なので,散乱イオン17はx−y
平面ではサイクロトロン周波数ωc の角速度で円軌道を
描く。質量m,電荷qe,エネルギーE[eV]の散乱
イオン17の各3軸方向の運動は,次式で与えられる。 x=R sin(ωc t) y=R{1−cos (ωc t)} z=v cosθt ここで,ωc =qe/m・B,R=v sinθ/ωc ,q
eE=1/2mv2 である。いま,ビーム軸,即ちz軸
からの距離rを求めると, r=2R sin(ωc /2・t) となり,同じ質量,電荷の散乱イオン17は,どんなエ
ネルギーで散乱されても,t=2π/ωc 秒後又はその
整数倍後には再びz軸に戻ってくるが,z軸に接する位
置の間隔Lは, L=2πv cosθ/ωc =1.8 cosθ√(E MeV )/B Tesla [m]…H
+ イオンの場合 で与えられ,散乱イオン17のエネルギーに依存してz
軸に接する点が異なる。その様子を図3に示す。上記散
乱イオン17がz軸に接する点の位置に,小さな開口部
を有するアパーチャ12を配置することによって,特定
のエネルギーの散乱イオン17を選別することができ
る。又,この位置では散乱角θも保存されているので,
上記アパーチャ12のビーム入射方向上流側に,アパー
チャ12の開口部中心に向けて一定角度で円環状に形成
された検出器13を配置すると,ある散乱角度に散乱さ
れた散乱イオンを全て検出することができる。
【0009】従って,分析装置1では,アパーチャ12
の位置で散乱イオン17のエネルギーを,検出器13の
位置及び大きさによって散乱角度を,同時に選別でき,
しかも,その条件を満たす全ての散乱イオン17を検出
することができる。上記考察から,磁場強度又は試料9
とアパーチャ12との間の距離を変化させることによっ
て,散乱イオン17のエネルギースペクトルを測定する
ことができる。具体的な測定方法としては,試料9の配
設位置,アパーチャ12及び検出器13の配設位置を固
定して,磁場強度を変化させる方法,あるいは,磁場強
度,アパーチャ12及び検出器13の配設位置を固定し
て,試料9の配設位置を変化させる方法,あるいは,磁
場強度,試料9の配設位置を固定して,アパーチャ12
及び検出器13の配設位置を変化させる方法によって,
散乱イオン17のエネルギースペクトルを測定すること
ができる。上記構成及び測定方法により,高いエネルギ
ー分解能が得られ,数nmの深さ方向分解能を有するR
BS分析が可能となった。更に,磁場発生手段として超
伝導マグネットによる強磁場を採用し,〜1mmφの開口
部を有するアパーチャ12との組み合わせにより,ΔE
/E〜10-3の分解能の実現も可能である。又,本構成
では,高エネルギー(1MeV以上)の入射ビームに対
応させることができ,従来のトロイダル型の装置による
高エネルギービームへの対応の困難さを解決することが
でき,より深い位置からの情報を得る分析装置が実現さ
れる。次に,本発明の第2実施例について説明する。
尚,上記第1実施例構成と同一の要素には同一の符号を
付して,その説明は省略する。図4において,第2実施
例に係る分析装置2は,上記第1実施例の構成に加え
て,磁場発生手段と対物コリメータ7との間に収束レン
ズ(イオンビーム収束手段)41を配設して構成されて
いる。この構成では,加速管4から投射され対物コリメ
ータ7で絞られたイオンビーム18を上記収束レンズ4
1で収束させる。磁場発生手段のソレノイドコイル10
の入口での収束効果を考慮したレンズ条件を設定するこ
とにより,対物コリメータ7の開口を試料9の表面に縮
小投影する光学系が構成でき,試料9表面に0.1mmφ
以下のビームスポットを形成するマイクロイオンビーム
で試料9を照射することができ,試料9の局所分析を実
行することができる。
【0010】本構成では,上記のようにマイクロイオン
ビームによるイオン電流の少ない分析状態でも,散乱イ
オンが無駄なく検出される構成にあるため,少ない散乱
イオンを効率よく検出でき,測定時間が最小限で済む利
点を有している。続いて,本発明の第3実施例について
説明する。尚,上記第1実施例及び第2実施例の構成と
同一の要素には同一の符号を付して,その説明は省略す
る。図5において,第3実施例に係る分析装置3は,上
記第2実施例の構成に加えて,収束レンズ41とアパー
チャ12との間に偏向電極(偏向手段)40を配設して
構成されている。上記偏向電極40は,2方向に対向配
置された2組の偏向電極により構成され,収束レンズ4
1によってビーム径が縮小されたマイクロイオンビーム
の投射方向を1mm以下の距離で偏向させることができ
る。2組の電極に印加する電圧を制御することによっ
て,試料9への照射位置を移動,あるいは走査させるこ
とができ,収束レンズ41でマイクロ化されたイオンビ
ーム18により局所分析を可能にする。上記偏向電極4
0は,偏向コイルに置き換えることもでき,偏向コイル
への励磁電流を調整することによって,イオンビーム1
8の移動,走査を実行することができる。イオンビーム
18で試料9が照射されたとき,試料9から二次電子が
発生し,この二次電子は磁場に束縛されてイオンビーム
18の入射方向に遡ってくる。そこで,図示するように
アパーチャ12に二次電子引き込み電源47から引き込
み電圧を印加しておくと,二次電子を捕捉・測定するこ
とができる。アパーチャ12に捕捉される二次電子を二
次電子電流検出器48で検出することにより,収束レン
ズ41によりマイクロ化されたイオンビーム18を偏向
電極40で走査した試料9表面の二次電子像を得ること
ができる。即ち,本構成によれば,RBS分析装置を容
易にマイクロイオンビーム分析装置として発展させるこ
とができる。
【0011】
【発明の効果】以上の説明の通り本発明によれば,イオ
ンビームの入射軸に入射方向上流側から散乱イオン検出
器,アパーチャ,試料が配設され,これらの配設位置を
含む所定範囲内に入射ビーム軸に平行な磁場が印加され
る。上記散乱イオン検出器及びアパーチャには,その中
心部に開口部を有しており,入射ビームは上記開口部を
通過して上記試料を照射することができる。イオンビー
ムで照射された試料から後方散乱した散乱イオンは磁場
により収束され,アパーチャの開口部を抜けた散乱イオ
ンが検出器で検出される。この構成により,高いエネル
ギー分解能が得られ,数nmの深さ方向に高分解能を有
するRBS分析が実現される。又,高エネルギーイオン
ビームにも対応させることができるので,試料のより深
い位置からの情報を得ることができる。(請求項1) 又,磁場発生手段を超伝導マグネットにより構成し,強
磁場により散乱イオンのエネルギーの選別を高分解能に
高めることができる。(請求項5) 上記構成において,磁場強度を変化させると,あるエネ
ルギーを有する散乱イオンのみがアパーチャの開口部を
抜けて検出器に到達できることになるため,磁場強度を
変化させる毎の検出器出力を得ることによって散乱イオ
ンのエネルギースペクトルを測定することができる。
(請求項4) 又,磁場強度を一定に保ち,試料の配設位置を変化させ
ると,散乱イオンのエネルギーによりアパーチャを通り
抜けることができる散乱イオンのエネルギーを選別する
ことができる。(請求項6) 更に,試料の配設位置を固定し,磁場強度を一定に保っ
た状態で,アパーチャと検出器との配設位置を変化させ
ると,散乱イオンのエネルギーによりアパーチャを通り
抜けることができる散乱イオンのエネルギーを選別する
ことができる。(請求項7) 更に,以上の構成に加えて,磁場発生手段の入射ビーム
の上流側に収束レンズと,更に上流側に対物コリメータ
を配設することにより,対物コリメータにより絞られた
イオンビームを収束レンズで収束してビームスポットを
マイクロ化することができるので,試料の局所分析が可
能となる。(請求項2) 更に,上記収束レンズと磁場発生手段との間に偏向手段
を配設して構成することにより,マイクロイオンビーム
を偏向させることができるので,試料上へのイオンビー
ムの入射位置を移動,走査させることができ,任意位置
の局所分析が可能となる。(請求項3) 上記構成により,マイクロイオンビームで試料を走査し
たとき,試料から発生する二次電子が磁場に束縛されて
イオンビームの入射方向に遡ってくるので,この二次電
子を上記アパーチャに印加した引き込み電圧によって捕
捉すると,マイクロイオンビームに走査された試料表面
の二次電子像を得ることができる。即ち,マイクロイオ
ンビーム分析装置として利用することも可能な装置が構
成できる。(請求項8)
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例に係る分析装置の構成を
示す模式図。
【図2】 散乱イオンの軌道を示す説明図。
【図3】 散乱イオンのエネルギーによる特定イオン選
別の仕組みを説明する説明図。
【図4】 本発明の第2実施例に係る分析装置の構成を
示す模式図。
【図5】 本発明の第3実施例に係る分析装置の構成を
示す模式図。
【図6】 従来例に係るトロイダル型分析装置の構成を
示す模式図。
【符号の説明】
1,2,3…分析装置 4…加速器 7…対物コリメータ(収束手段) 8…測定室(真空容器) 9…試料 10…ソレノイドコイル(磁場発生手段) 11…マグネットヨーク(磁場発生手段) 12…アパーチャ 13…散乱イオン検出器 17…散乱イオン 18…イオンビーム(入射イオン) 40…偏向電極(偏向手段) 41…収束レンズ(収束手段) 47…二次電子引き込み電源 48…二次電子電流検出器
フロントページの続き (72)発明者 横山 和司 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所 神戸総合技術研 究所内 (56)参考文献 特開 平5−273154(JP,A) 特開 昭63−102150(JP,A) 特開 昭64−50353(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 23/225 H01J 37/244 H01J 37/252

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加速されたイオンビームを真空容器内に
    配置された試料に照射して,上記試料から散乱した散乱
    イオンのエネルギースペクトルを測定することにより,
    上記試料の分析を行う散乱イオンによる分析装置におい
    て, 上記試料近傍から入射ビームの入射方向上流側の所定範
    囲内に,上記入射ビームと平行な磁場を発生させる磁場
    発生手段と, 上記試料よりも入射ビームの入射方向上流側の所定位置
    に配置され,上記入射イオンを通過させると共に,上記
    磁場により収束された上記散乱イオンを上記イオンビー
    ムの入射方向と反対方向に通過させる開口部を中心部に
    有するアパーチャと, 上記アパーチャよりも上記入射ビームの入射方向上流側
    に所定距離離して配置され,中心部に上記入射イオンを
    通過させる開口部を有する散乱イオン検出器とを具備し
    てなることを特徴とする散乱イオンによる分析装置。
  2. 【請求項2】 加速されたイオンビームを真空容器内に
    配置された試料に照射して,上記試料から散乱した散乱
    イオンのエネルギースペクトルを測定することにより,
    上記試料の分析を行う散乱イオンによる分析装置におい
    て, 上記試料近傍から入射ビームの入射方向上流側の所定範
    囲内に,上記入射ビームと平行な磁場を発生させる磁場
    発生手段と, 上記試料よりも入射ビームの入射方向上流側の所定位置
    に配置され,上記入射イオンを通過させると共に,上記
    磁場により収束された上記散乱イオンを上記イオンビー
    ムの入射方向と反対方向に通過させる開口部を中心部に
    有するアパーチャと, 上記アパーチャよりも上記入射ビームの入射方向上流側
    に所定距離離して配置され,中心部に上記入射イオンを
    通過させる開口部を有する散乱イオン検出器と, 上記磁場発生手段よりも上記入射ビームの入射方向上流
    側に配設された収束レンズと,該収束レンズよりも更に
    上流側に配設された対物コリメータとを備えたイオンビ
    ーム収束手段とを具備してなることを特徴とする散乱イ
    オンによる分析装置。
  3. 【請求項3】 加速されたイオンビームを真空容器内に
    配置された試料に照射して,上記試料から散乱した散乱
    イオンのエネルギースペクトルを測定することにより,
    上記試料の分析を行う散乱イオンによる分析装置におい
    て, 上記試料近傍から入射ビームの入射方向上流側の所定範
    囲内に,上記入射ビームと平行な磁場を発生させる磁場
    発生手段と, 上記試料よりも入射ビームの入射方向上流側の所定位置
    に配置され,上記入射イオンを通過させると共に,上記
    磁場により収束された上記散乱イオンを上記イオンビー
    ムの入射方向と反対方向に通過させる開口部を中心部に
    有するアパーチャと, 上記アパーチャよりも上記入射ビームの入射方向上流側
    に所定距離離れて配置され,中心部に上記入射イオンを
    通過させる開口部を有する散乱イオン検出器と, 上記磁場発生手段よりも上記入射ビームの入射方向上流
    側に配設された収束レンズと,該収束レンズよりも更に
    上流側に配設された対物コリメータとを備えたイオンビ
    ーム収束手段と, 上記収束レンズと上記磁場発生手段との間に配設された
    入射イオンの偏向手段とを具備してなることを特徴とす
    る散乱イオンによる分析装置。
  4. 【請求項4】 上記磁場発生手段の磁場強度を可変とし
    請求項1,2若しくは3のいずれかに記載の分析装
    置。
  5. 【請求項5】 上記磁場発生手段が,超伝導コイルから
    なる請求項1,2若しくは3のいずれかに記載の分析装
    置。
  6. 【請求項6】 上記試料の配設位置を可変とした請求項
    1,2若しくは3のいずれかに記載の分析装置。
  7. 【請求項7】 上記アパーチャ及び検出器の配設位置を
    可変とした請求項1,2若しくは3のいずれかに記載の
    分析装置。
  8. 【請求項8】 上記アパーチャに引き込み電圧を印加し
    て,イオンビームに照射された試料から放出される二次
    電子を捕捉して上記二次電子を検出するようにした請求
    項1,2若しくは3のいずれかに記載の分析装置。
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