JP2000292380A - 陽電子消滅分析装置 - Google Patents

陽電子消滅分析装置

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JP2000292380A
JP2000292380A JP11097205A JP9720599A JP2000292380A JP 2000292380 A JP2000292380 A JP 2000292380A JP 11097205 A JP11097205 A JP 11097205A JP 9720599 A JP9720599 A JP 9720599A JP 2000292380 A JP2000292380 A JP 2000292380A
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Takao Kusaka
貴生 日下
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 試料表面の変化をリアルタイムに観察し、必
要なときに分析領域を指定して陽電子消滅分析を行うこ
とができる装置を提供する。 【解決手段】 陽電子ビーム発生装置3と、陽電子ビー
ムを試料表面上に集束し走査するためのレンズ鏡筒と、
陽電子ビームの照射により試料5から放出されたγ線も
しくは二次電子を検出する手段と、検出された信号の強
度を陽電子ビームの走査と同期して表示する手段を有す
る陽電子消滅分析装置に、更に、試料5への紫外線照射
装置7、試料5から放出された電子を結像し、結像面で
の電子強度分布を検出する手段と、検出された強度信号
を表示する手段を設けたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表面分析技術に係わ
り、特に陽電子消滅分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】陽電子消滅分析法は低速陽電子ビームを
試料に照射し、この照射陽電子を試料中の電子と対消滅
させ、この際に発生するγ線を検出することで、電子構
造や格子欠陥、仕事関数、元素組成、結晶構造などの情
報を得る方法として知られている。たとえばγ線のエネ
ルギースペクトルからは試料中の電子の運動量分布が分
かり、また陽電子の寿命からは金属試料中の空格子点濃
度が分かる。
【0003】また陽電子消滅分析において、分析対象試
料表面上の測定領域を決定する必要性から、陽電子消滅
分析に加えて試料の表面形状に関する情報も同時に収集
する分析法が提案されている。
【0004】その分析法の一つとして、電子顕微鏡等
で試料表面の形状に関する情報を測定した後に、試料に
陽電子ビームを照射して欠陥等の陽電子分析情報を測定
し、これら二種の測定で得られた情報を測定後に対応さ
せる方法がある。
【0005】また、他の方法として、透過電子顕微鏡
(TEM:Transmission Electro
n Microscopy)または走査電子顕微鏡(S
EM:Scanning Electron Micr
oscope)を用い、これらの顕微鏡において電子ビ
ームが通過する経路と同一経路上に陽電子ビームを通過
させて試料に照射することにより、電子顕微鏡像とこれ
に対応する陽電子顕微鏡像を得る方法も提案されている
(特公平6−16014号、特公平6−16408
号)。
【0006】さらに、他の方法として、陽電子ビーム
で試料表面を走査し、その際に発生する二次電子で試料
表面の形状に関する情報をも得る方法が提案されている
(特開平9−033461号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】固体表面で変化する現
象、たとえば触媒等の化学反応、物質の表面拡散、ある
いは電子放出素子からの電子放出現象を評価するにはリ
アルタイムで形態や状態を観察出来る必要がある。これ
は、表面の動的現象を観察する場合、変化を引き起こす
ために基板加熱やガス導入、あるいは試料への電圧印加
等を行うことがあるが、場面によっては試料表面に変化
が起こった瞬間に変化を一旦停止させて、陽電子消滅分
析を行いたいという要求があるためである。
【0008】ところが前記,の分析法において走査
電子顕微鏡を観察方法として採用すると、リアルタイム
の観察はできない。走査電子顕微鏡では一本の集束電子
ビームがサンプル面上をラスター走査される。同表面か
ら発せられた二次電子はラスター位置と相関的に検出さ
れる。上記二次電子信号は電子的に処理されて表面の位
相的な特徴の様相もしくは映像を提供する。走査電子顕
微鏡では空間分解能を上げるために電子線を細く絞る
が、一方で十分な二次電子の信号量を検出する必要があ
り、そのために観察領域を走査して1つの像を形成する
のに数分程度の時間を要するためである。
【0009】また走査電子顕微鏡を陽電子消滅分析装置
と同じ高真空チャンバー内に設置するためには、電子線
源や二次電子検出器の増設のみならず、多くの可動部品
を高真空対応にする必要があり、非常に高額の装置とな
ってしまうという問題点がある。さらに電子ビームの照
射は試料表面ヘダメージを与える可能性が高い。
【0010】また前記の分析法では、分析前に陽電子
ビームの光軸と二次電子像の位置合わせを十分に行わな
いと、二次電子像と陽電子ビーム照射位置との対応付け
が困難となり、正確な分析データを得ることができな
い。
【0011】一方、前記,の分析法において透過電
子顕微鏡を観察方法として採用すると、リアルタイム観
察は可能ではあるが、試料形状に制約があり、より一般
的な試料について固体表面を観察する目的には不適であ
る。
【0012】さらに、前記の分析法によると、二次元
情報と陽電子ビーム照射位置との対応付けは良いが、陽
電子ビームが電子顕微鏡の光学系を通過する過程で、こ
の光学系のレンズや絞り等により陽電子の大部分が失わ
れるため、十分な信号強度を得ることが難しく、S/N
が極めて悪い陽電子分析像しか得られない。また、十分
な信号強度を得ようとするには膨大な測定時間を必要と
する。
【0013】前記の分析法では陽電子分析像を得る目
的ではよりも速いが、やはり陽電子ビームを走査しな
がら像を形成するために、測定領域のリアルタイム観察
には不向きである。
【0014】そこで本発明では一つの装置で試料表面の
リアルタイム観察と陽電子消滅分析を可能とし、上記従
来法の制限を克服することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】平坦な表面からの電子放
出像を観察する方法として、光電子顕微鏡に代表される
エミッション顕微鏡法が知られている(W.Enge
l,M.E.Kordesch,H.H.Roterm
und,S.Kubala and A.vonOer
tzen,Ultramicroscopy,36(1
991)148−153.)。エミッション顕微鏡法は
平面状の試料表面から放出される電子(熱電子、光電子
等)を加速し、電子レンズで結像して表面を観察する方
法であり、その空間分解能は走査電子顕微鏡等には及ば
ないが、光学顕微鏡よりは拡大率が高く、リアルタイム
で像を観察できるので、放出強度の空間分布のみなら
ず、時間変化も高い時間分解能で観測できることが大き
な特徴である(M.Mundschau,M.E.Ko
rdesch,B.Rausenberger,W.E
ngel,A.M.Bradshaw and E.Z
eitler,Surface Science,22
7(1990)246−260.)。
【0016】本発明は、陽電子消滅分析装置に上記エミ
ッション顕微鏡の原理を応用して、上記の問題を解決す
る手段を提供するものである。
【0017】すなわち、本発明は、陽電子ビームを発生
する手段と、該陽電子ビームを試料表面上に集束し走査
する手段と、該陽電子ビームの照射により試料から放出
されたγ線もしくは二次電子を検出する手段と、検出さ
れた信号の強度を前記陽電子ビームの走査と同期して表
示する手段を有する陽電子消滅分析装置において、試料
に光を照射する手段と、該試料から放出された電子を結
像する手段と、結像面での電子強度分布を検出する手段
と、検出された強度信号を表示する手段を有することを
特徴としているものである。
【0018】本発明の陽電子消滅分析装置は、さらなる
特徴として、「前記陽電子ビームを試料表面上に集束し
走査する手段と、前記試料から放出された電子を結像す
る手段が、陽電子消滅分析時に陽電子ビームを集束する
作用を持つ電子レンズ系と、放出電子像観察時に電子を
結像する作用を持つ電子レンズ系と、口径可変型のアパ
ーチャーと、陽電子ビームを走査するための偏向コイル
とを備えたレンズ鏡筒を有する」こと、「前記陽電子ビ
ームを集束する作用を持つ電子レンズ系と、前記試料か
ら放出された電子を結像するための電子レンズ系が、同
一の光軸を有するレンズ系によって共有されている」こ
と、「前記結像面での電子強度分布を検出する手段が、
前記陽電子ビーム発生手段と前記レンズ鏡筒の境に設置
された、放出電子像観察用のマルチチャンネルプレー
ト、蛍光体、CCDの3つを一体化した二次元検出器で
あり、かつ、該二次元検出器が陽電子消滅分析時に前記
陽電子ビーム発生装置で生成した陽電子ビームを前記レ
ンズ鏡筒に導く際の入射スリットを兼ねている」こと、
「前記二次元検出器の入射スリットの前記陽電子ビーム
発生手段側にビームシャッタを設け、陽電子ビーム照射
時のみ該ビームシャッタを開く構造とした」こと、「前
記陽電子ビーム発生手段は、陽電子を放出する陽電子源
と、該陽電子源から放出された陽電子を単色低速陽電子
に変換する減速材と、該減速材から再放出された陽電子
を加速する加速管と、加速された陽電子を前記二次元検
出器の入射スリットヘ導くために集束させる集束レンズ
とを備えた」こと、「前記陽電子ビーム発生手段と前記
レンズ鏡筒は、試料設置部を含む本装置全体の排気系と
は別個に、それぞれ差動排気システムに繋がっている」
こと、「前記γ線を検出する手段が、前記試料を搭載す
る試料ステージの裏面に設置されたγ線検出器である
か、もしくは該試料ステージと一体化させたγ線検出器
である」こと、「前記試料から放出された電子が、固体
試料表面から放出された光電子であり、光電子像観察と
陽電子消滅分析が可能である」こと、「前記試料に光を
照射する手段が、単色化していない紫外線照射装置であ
り、前記光電子が紫外線励起によるものである」こと、
「前記試料から放出された電子が、熱電子放出、電界放
出、表面伝導型電子放出のいずれかにより固体試料表面
から放出された電子である」こと、「装置の設定条件を
変更することにより、試料を移動することなく、試料表
面の放出電子像観察と陽電子消滅分析の両方が出来る」
こと、をも含む。
【0019】本発明の陽電子消滅分析装置によれば、試
料表面の変化をエミッション顕微鏡でリアルタイムに観
察し、必要なときに分析領域を指定して陽電子消滅分析
を行うことができる。また、陽電子ビームの光軸と光電
子像の結像用電子レンズの光軸を同一にすることによ
り、分析位置の決定が容易にできる。さらに、光電子顕
微鏡観察と陽電子消滅分析は装置の電気的設定を切り替
えるだけで測定可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の陽電子消滅分析装置の好
ましい実施形態を図1を参照して説明する。
【0021】本発明における分析装置の鏡筒本体は大別
して光軸の上部に配置された陽電子ビーム発生装置3と
その下部に配置されたレンズ鏡筒2から構成されてい
る。
【0022】陽電子ビーム発生装置3には陽電子源1
9、減速材20、加速管21、集束レンズ22が装備さ
れ、レンズ鏡筒2には複数の電子レンズ11、16、1
7等や偏向コイル14、15、さらに放出電子像を検出
するための二次元検出器18等が装備されている。
【0023】レンズ鏡筒2のレンズ系は陽電子消滅分析
に対しては陽電子ビームを集束し走査する手段として働
き、エミッション顕微鏡観察に対しては放出電子を結像
する手段として働く。
【0024】試料ステージ4は鏡筒下部の対物レンズ1
1に対向して配置され、さらに試料ステージ近傍には二
次電子を検出するための二次電子検出器9が、試料ステ
ージ裏面にはγ線を検出するためのγ線検出器10が配
置されている。
【0025】本装置を陽電子消滅分析装置として使用す
るときの陽電子は陽電子ビーム発生装置3内で加速さ
れ、エミッション顕微鏡として使用するときの放出電子
は試料5表面からレンズ鏡筒2までの空間で加速される
ので、陽電子ビーム発生装置3とレンズ鏡筒2は試料ス
テージ4に対して独立に加速電圧を設定出来るようにな
っている。
【0026】上記全体の構成は適当な排気システムによ
って真空に保持されるが、光電子を発生させる際の光照
射装置7は通常真空容器1の外に置かれ、光は適当なポ
ート8を通して試料表面に照射される。
【0027】本装置をエミッション顕微鏡として用いる
場合、レンズ鏡筒2は試料ステージ4に対して正の加速
電圧Vaが印加される。たとえば、紫外線の照射により
試料5の表面から放出された光電子は加速電圧Vaによ
って加速され、レンズ鏡筒2に配置された電子レンズに
よりプレート型の二次元検出器18上に結像される。こ
の拡大像は二次元検出器18により電気信号に変えられ
表示装置(不図示)上に光電子顕微鏡像として表示され
る。
【0028】光電子顕微鏡像観察の際、陽電子ビーム発
生装置3の動作条件に特に制限はないが、陽電子ビーム
発生装置を稼動させないか、あるいはビーム発生条件の
設定などにより陽電子ビームがレンズ鏡筒2に入らない
ようになっている。
【0029】本装置を陽電子消滅分析に用いる場合、ま
ず陽電子ビーム発生装置3において単色の低速陽電子ビ
ームを生成する。これはβ+ 崩壊する22Na,55Cu,
64Co等のRI(ラジオアイソトープ)から発生した連
続エネルギー分布の陽電子を減速材20に入射し、減速
材20から再放出された単色の低速陽電子を加速管21
で加速することで得られる。(なお、減速材と加速管に
よる単色陽電子ビームの発生方法は公知である。[“物
理学最前線5”(共立出版)p94(1983)])こ
の陽電子ビームを集束してレンズ鏡筒2に導き、レンズ
鏡筒2内に配置された電子レンズにより陽電子ビームは
試料表面上に集光され、偏向コイル15、14により指
定した分析領域を走査される。陽電子ビーム照射領域か
ら発生した二次電子は二次電子検出器9により電気信号
に変換され、表示装置(不図示)上に二次電子像として
表示される。また発生したγ線は試料ステージ裏面に設
置されたγ線検出用の高純度Ge検出器、もしくはシン
チレータと光電子倍増管を組み合わせた検出器により検
出され、増幅器を介して電気信号として取り出される。
このγ線検出器10は試料ステージ4と一体化したもの
でもよいが、試料加熱装置等の機構を増設する場合には
独立に設置した方がよい。
【0030】本発明における陽電子消滅分析とは、陽電
子消滅を利用した各種測定や陽電子エネルギ損失分光を
含むエネルギ分光、陽電子回折など全般を対象とする。
【0031】電子レンズ等の条件は外部の制御装置によ
って電気的に制御されているので、エミッション顕微鏡
観察と陽電子消滅分析の切り替えは、この制御装置の設
定を変更することによって実行される。このように本発
明の陽電子消滅分析装置を用いれば、装置の電気的設定
を変えるだけで試料表面の放出電子像観察と陽電子消滅
分析が可能となる。
【0032】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0033】[実施例1]本実施例の陽電子消滅分析装
置の構成は図1に示した構成と同様である。まず、本装
置の構成を説明する。
【0034】1は高真空チャンバーであり、排気部26
から真空ポンプ(不図示)により排気して、レンズ鏡筒
2、陽電子ビーム発生装置3、試料ステージ4、試料
5、二次電子検出器9、γ線検出器10を1.3×10
-7Pa〜1.3×10-9Paの真空度に保っている。ま
たレンズ鏡筒2の内部および陽電子ビーム発生装置3の
内部は、独立した排気部27,28から別系統の差動排
気システム(不図示)により1.3×10-8Paより良
い真空度に保持されている。試料ステージ4はマニピュ
レータ6により3軸方向の粗動および微動と回転動作、
傾斜動作ができるようになっている。7は水銀ランプを
有する紫外線照射装置であり、石英ポート8を通して試
料5に紫外線光を照射する。
【0035】レンズ鏡筒2には磁界型の電子レンズとし
ての対物レンズ11、中間レンズ16、投影レンズ17
が設置されており、放出電子像の観察時と陽電子ビーム
の照射時で設定を切り替えて使用する。つまり電子レン
ズ16と17は、放出電子像観察時に対しては中間レン
ズと投影レンズとして作用し、陽電子ビーム照射時には
陽電子ビームの集束レンズとして作用する。またレンズ
鏡筒2内にはさらに、陽電子ビーム走査用の上下2段の
偏向コイル15,14と非点補正用スティグマトール1
3、口径可変型対物アパーチャー12が設置されてい
る。ここで15はX方向とY方向の偏向コイルで、14
は15と逆接続された偏向コイルを表す。
【0036】二次元検出器18はマルチチャンネルプレ
ート、蛍光膜、CCDから構成されたプレート型検出器
である。本検出器はφ50mmの有効面積を有し、中央
に陽電子ビームが通過出来るようにφ0.5mmのスリ
ットが形成されている。またこのスリットの陽電子ビー
ム発生装置3側にはビームシャッタ23が設けられてお
り、陽電子ビームが必要なときのみシャッタ23を開い
てレンズ鏡筒2へ陽電子ビームを入射する。
【0037】(エミッション顕微鏡観察)放出電子像、
特に光電子像観察時には、単色化されておらずエネルギ
ーの低い水銀ランプの紫外線を使用する。HeやNeの
共鳴線などの単色化した紫外線を使用すると、エネルギ
ーが高いため、拡大像の空間分解能が低下してしまう。
単色化されていない紫外線の照射では、表面の仕事関数
の場所的変化によって、光電子放出が変わるため、表面
状態の差をコントラストとした拡大像を得ることが出来
る。また真空外に紫外線照射装置7を設置出来るため、
シャッターなどの機構をつければ簡単に紫外線照射のオ
ンオフが可能になる。
【0038】紫外線照射により試料5より放出された光
電子は、試料5とレンズ鏡筒2の間に印加される加速電
圧により数keVから数十keVに加速され、対物レン
ズ11の後焦点面に配置されたアパーチャー12を通過
した電子が中間レンズ16、投影レンズ17によって拡
大され、二次元検出器18上に像を形成する。電子レン
ズにより結像された光電子は二次元検出器18で電気信
号に変換され、その信号は真空外に設置されたコンピュ
ータ(不図示)に送られ、表示および記録される。
【0039】本装置の光電子顕微鏡としての空間分解能
を調べるために、走査プローブ顕微鏡用のスタンダード
サンプル(Siウエハー表面の酸化膜にグリッド状パタ
ーンをエッチングした後で薄膜の白金を表面コートした
試料)を観察用試料として用いた。まず試料ステージ4
に対するレンズ鏡筒2の電位、すなわち加速電圧を15
kVに設定し、紫外線照射装置7により水銀ランプから
の紫外線を石英ポート8を通して本試料表面に照射し
た。各々のレンズ条件を適宜設定した後、二次元検出器
18からコンピュータに送られた光電子像を観察しなが
ら各レンズを調整して、光電子像のフォーカスと倍率を
設定した。この時、対物レンズ11は主としてフォーカ
ス調整用として、中間レンズ16と投影レンズ17は主
として倍率設定用として機能する。試料表面のグリッド
パターンのエッジプロファイルのコントラスト差が10
%から90%に変化するまでの間隔を空間分解能と定義
して測定した結果、光電子顕微鏡としての分解能約70
nmが得られた。また、試料を移動しながら光電子顕微
鏡像をビデオ録画し、コマ送りで再生することにより、
少なくともTVレート(60フィールド/秒)を上回る
時間分解能を持つことが実証された。
【0040】(陽電子消滅分析)本装置を陽電子消滅分
析に用いる場合、まず陽電子ビーム発生装置3において
単色の低速陽電子ビームを生成する。陽電子源19は22
Na,55Cu,64Co等の放射性同位元素をSUSの基
体に保持したもので、SUS基体の裏面は放射性同位元
素から発生する高速の陽電子が突き抜けない様に鉛の厚
板で遮蔽する。陽電子源19から発生した白色の陽電子
は、タングステンやニッケル,銅,シリコン等の単結晶
の箔で構成された減速材20に入射し、減速材20中の
電子と非弾性衝突をしながらエネルギーを失い、熱エネ
ルギー程度に減速される。減速された陽電子のうち減速
材20表面の電子と対消滅せずに表面に到達したものの
一部が真空中に再放出される。再放出された単色の低速
陽電子は加速管21で加速され、集束レンズ22で集束
された上で二次元検出器18中央のφ0.5mmのスリ
ットからレンズ鏡筒2へ入射する。
【0041】レンズ鏡筒2において、入射した陽電子は
集束レンズとして動作させた投影レンズ17と中間レン
ズ16により集束ビームとなり試料表面上に集光され、
さらに偏向コイル15,14により試料5表面の分析領
域を走査する。この時、レンズ鏡筒2の鏡筒電位は試料
5(試料ステージ4)と同電位に設定している。
【0042】試料5への陽電子ビーム照射によって発生
したγ線は、試料ステージ裏面に設置された、もしくは
試料ステージと一体化したγ線検出器10により検出さ
れ、その検出信号は増幅器25を介して信号処理用のコ
ンピュータ(不図示)に記録される。γ線検出器10は
高純度Ge検出器、もしくはシンチレータと光電子倍増
管を組み合わせた検出器を使用する。また陽電子ビーム
照射により試料表面から放出される二次電子は、二次電
子検出器9により検出され、その検出信号は増幅器24
を介して信号処理用のコンピュータ(不図示)に送られ
る。その信号強度は試料表面の形状や材質により変化す
るため、ビーム走査用の偏向コイル15,14の制御信
号と同期させて表示することで二次電子像(試料表面の
形状に関する情報を含む)が得られる。一方、γ線検出
器10の信号をビーム走査用の偏向コイルの制御信号と
同期させて表示することでマッピングデータを得ること
も出来るが、信号強度やS/Nの程度によってはマッピ
ングデータの積算測定をする必要がある。
【0043】本装置の陽電子励起走査電子顕微鏡として
の空間分解能を調べるために、グラファイト(HOP
G)基板にAuをストライプ状パターンに蒸着した試料
を観察用試料として用いた。まずレンズ鏡筒2の鏡筒電
位を試料ステージ4と同電位に設定する。陽電子源19
22Naを、減速材20にSiを使用して単色陽電子ビ
ームを発生し、加速管21で加速電圧を20kVに設定
した。各部のレンズ条件を適宜設定した後、偏向コイル
15,14を用いて試料表面上の矩形領域を走査した。
表示装置(不図示)上に現れた二次電子像を観察しなが
ら、対物レンズ11を調整してフォーカスを合わせる
と、同一の試料を光電子顕微鏡で観察したときと同一の
視野を観察できることが確認された。観察されたAuス
トライプのエッジプロファイルのコントラスト差が10
%から90%に変化するまでの間隔を空間分解能と定義
して測定した結果、陽電子励起走査電子顕微鏡としての
分解能約90nmが得られた。
【0044】[実施例2]実施例1と同様の装置を用い
て、スピント型の電子放出素子を観察した。スピント型
電子源は微小な構造ながら電子を電界放出させる素子で
あり、フラットディスプレーを実現する有力候補として
研究されているものである。本素子を試料ステージ4に
追加装備した電極を通して駆動することにより、光電子
像に加えて素子からの電界放出による電子放出像をも観
察し、その輝度や形状の時間変化を評価出来るようにな
った。また駆動中に光電子像が変化した時や、電子放出
像の揺らぎが変化した瞬間をとらえて駆動を停止し、任
意領域における陽電子消滅分析を行うことで、素子の劣
化メカニズムを解析することができるようになった。さ
らにレンズ鏡筒2と陽電子ビーム発生装置3の差動排気
システムを使うことで、ガス導入や基板加熱が素子に及
ばす影響を詳しく検討することも可能となった。なお陽
電子励起の二次電子像も撮影可能ではあるが、変化の速
い表面現象の解析には、リアルタイムのエミッション顕
微鏡観察を組み合わせることが有効な評価方法となるこ
とが実証された。
【0045】以上説明してきた本発明の実施形態および
実施例において、陽電子ビーム発生装置3内の構成およ
び材料、γ線検出器10に関する記述があるが、同様の
効果が得られる装置や材料であれば、これは記述内容の
みに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しな
い範囲で変えても差し支えない。また、試料5および試
料ステージ4周辺の構成は図1に限定されるものではな
く、様々な陽電子消滅分析に必要な検出器などを配置し
ても構わない。ただしその際には、光電子顕微鏡として
使用する時に試料5とレンズ鏡筒2の間に形成される電
場や磁場を乱さないことが条件となる。
【0046】
【発明の効果】以上詳述した様に、本発明の陽電子消滅
分析装置によれば、試料表面の変化をでリアルタイムに
観察し、必要なときに分析領域を指定して陽電子消滅分
析を行うことができる。また、陽電子ビームの光軸と光
電子像の結像用電子レンズの光軸を同一にしたことによ
り、分析位置の決定が容易にできる。さらに、光電子顕
微鏡観察と陽電子消滅分析は装置の電気的設定を切り替
えるだけで測定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施例を説明する陽電子消滅分
析装置の概略図である。
【符号の説明】
1 高真空チャンバー 2 レンズ鏡筒 3 陽電子ビーム発生装置 4 試料ステージ 5 試料 6 5軸マニピュレータ 7 紫外線照射装置 8 石英ポート 9 2次電子検出器 10 γ線検出器 11 対物レンズ 12 アパーチャー 13 スティグマトール 14、15 偏向コイル 16 中間レンズ 17 投影レンズ 18 二次元検出器 19 陽電子源 20 減速材 21 加速管 22 集束レンズ 23 ビームシャッタ 24、25 増幅器 26 排気部 27、28 差動排気部 紫外線 γ線 二次電子
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Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽電子ビームを発生する手段と、該陽電
    子ビームを試料表面上に集束し走査する手段と、該陽電
    子ビームの照射により試料から放出されたγ線もしくは
    二次電子を検出する手段と、検出された信号の強度を前
    記陽電子ビームの走査と同期して表示する手段を有する
    陽電子消滅分析装置において、 試料に光を照射する手段と、該試料から放出された電子
    を結像する手段と、結像面での電子強度分布を検出する
    手段と、検出された強度信号を表示する手段を有するこ
    とを特徴とする陽電子消滅分析装置。
  2. 【請求項2】 前記陽電子ビームを試料表面上に集束し
    走査する手段と、前記試料から放出された電子を結像す
    る手段が、陽電子消滅分析時に陽電子ビームを集束する
    作用を持つ電子レンズ系と、放出電子像観察時に電子を
    結像する作用を持つ電子レンズ系と、口径可変型のアパ
    ーチャーと、陽電子ビームを走査するための偏向コイル
    とを備えたレンズ鏡筒を有することを特徴とする、請求
    項1に記載の陽電子消滅分析装置。
  3. 【請求項3】 前記陽電子ビームを集束する作用を持つ
    電子レンズ系と、前記試料から放出された電子を結像す
    るための電子レンズ系が、同一の光軸を有するレンズ系
    によって共有されていることを特徴とする、請求項2に
    記載の陽電子消滅分析装置。
  4. 【請求項4】 前記結像面での電子強度分布を検出する
    手段が、前記陽電子ビーム発生手段と前記レンズ鏡筒の
    境に設置された、放出電子像観察用のマルチチャンネル
    プレート、蛍光体、CCDの3つを一体化した二次元検
    出器であり、かつ、該二次元検出器が陽電子消滅分析時
    に前記陽電子ビーム発生装置で生成した陽電子ビームを
    前記レンズ鏡筒に導く際の入射スリットを兼ねているこ
    とを特徴とする、請求項2又は3に記載の陽電子消滅分
    析装置。
  5. 【請求項5】 前記二次元検出器の入射スリットの前記
    陽電子ビーム発生手段側にビームシャッタを設け、陽電
    子ビーム照射時のみ該ビームシャッタを開く構造とした
    ことを特徴とする、請求項4に記載の陽電子消滅分析装
    置。
  6. 【請求項6】 前記陽電子ビーム発生手段は、陽電子を
    放出する陽電子源と、該陽電子源から放出された陽電子
    を単色低速陽電子に変換する減速材と、該減速材から再
    放出された陽電子を加速する加速管と、加速された陽電
    子を前記二次元検出器の入射スリットヘ導くために集束
    させる集束レンズとを備えたことを特徴とする、請求項
    4又は5に記載の陽電子消滅分析装置。
  7. 【請求項7】 前記陽電子ビーム発生手段と前記レンズ
    鏡筒は、試料設置部を含む本装置全体の排気系とは別個
    に、それぞれ差動排気システムに繋がっていることを特
    徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の陽電子消滅
    分析装置。
  8. 【請求項8】 前記γ線を検出する手段が、前記試料を
    搭載する試料ステージの裏面に設置されたγ線検出器で
    あるか、もしくは該試料ステージと一体化させたγ線検
    出器であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか
    に記載の陽電子消滅分析装置。
  9. 【請求項9】 前記試料から放出された電子が、固体試
    料表面から放出された光電子であり、光電子像観察と陽
    電子消滅分析が可能であることを特徴とする、請求項1
    〜8のいずれかに記載の陽電子消滅分析装置。
  10. 【請求項10】 前記試料に光を照射する手段が、単色
    化していない紫外線照射装置であり、前記光電子が紫外
    線励起によるものであることを特徴とする、請求項9に
    記載の陽電子消滅分析装置。
  11. 【請求項11】 前記試料から放出された電子が、熱電
    子放出、電界放出、表面伝導型電子放出のいずれかによ
    り固体試料表面から放出された電子であることを特徴と
    する、請求項1〜8のいずれかに記載の陽電子消滅分析
    装置。
  12. 【請求項12】 装置の設定条件を変更することによ
    り、試料を移動することなく、試料表面の放出電子像観
    察と陽電子消滅分析の両方が出来ることを特徴とする、
    請求項1〜11のいずれかに記載の陽電子消滅分析装
    置。
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