JP2003193135A - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法

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JP2003193135A JP2001393814A JP2001393814A JP2003193135A JP 2003193135 A JP2003193135 A JP 2003193135A JP 2001393814 A JP2001393814 A JP 2001393814A JP 2001393814 A JP2001393814 A JP 2001393814A JP 2003193135 A JP2003193135 A JP 2003193135A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 インヒビター成分を含有しない素材を用い
て、ゴス方位結晶粒を二次再結晶させる場合に、一次再
結晶の集合組織の制御を安定化することによって、磁気
特性に優れた方向性電磁鋼板を安定して得る。 【解決手段】 質量%で、C:0.08%以下, Si:2.0 〜
8.0 %およびMn:0.005〜3.0 %を含み、Alを 100 ppm
未満、N, S, Seをそれぞれ 50ppm以下に低減した溶鋼
を用いて製造したスラブを用いて、方向性電磁鋼板を製
造するに際し、最終冷間圧延前の鋼板について、全板厚
の平均結晶粒径に対する厚さ方向各位置での平均結晶粒
径の変動幅を、全板厚にわたり、−50〜50%の範囲内に
制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、変圧器の鉄心など
に使用して好適な磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板の製造に際しては、イン
ヒビターと呼ばれる析出物を使用して、最終仕上焼鈍中
にゴス方位粒と呼ばれる{110}<001>方位粒を
優先的に二次再結晶させることが、一般的な技術として
使用されている。例えば、特公昭40−15644 号公報に
は、インヒビターとしてAlN,MnSを使用する方法が、
また特公昭51−13469 号公報には、インヒビターとして
MnS, MnSeを使用する方法が開示され、いずれも工業的
に実用化されている。これらとは別に、CuSeとBNを添
加する技術が特公昭58−42244 号公報に、またTi,Zr,
V等の窒化物を使用する方法が特公昭46−40855 号公報
に開示されている。
【0003】これらのインヒビターを用いる方法は、安
定して二次再結晶粒を発達させるのに有用な方法である
が、析出物を微細に分散させなければならないので、熱
延前のスラブ加熱を1300℃以上の高温で行うことが必要
とされる。しかしながら、スラブの高温加熱は、設備コ
ストが嵩むことの他、熱延時に生成するスケール量も増
大することから歩留りが低下し、また設備のメンテナン
スが煩雑になる等の問題がある。
【0004】これに対して、インヒビターを使用しない
で方向性電磁鋼板を製造する方法が、特開昭64−55339
号、特開平2−57635 号、特開平7−76732 号および特
開平7−197126号各公報に開示されている。これらの技
術に共通していることは、表面エネルギー差を駆動力と
して{110}面を優先的に成長させることを意図して
いることである。表面エネルギー差を有効に利用するた
めには、表面の寄与を大きくするために板厚を薄くする
ことが必然的に要求される。例えば、特開昭64−55339
号公報に開示の技術では板厚が 0.2mm以下に、また特開
平2−57635 号公報に開示の技術では板厚が0.15mm以下
に、それぞれ制限されている。しかしながら、現在使用
されている方向性電磁鋼板の板厚は0.20mm以上がほとん
どであるため、上記したような表面エネルギーを利用し
た方法で通常の方向性電磁鋼板を製造することは難し
い。
【0005】その他にも、インヒビター成分を使用しな
いで、熱延圧下率を30%以上、熱延板厚を 1.5mm以下と
することによって二次再結晶させる技術が、特開平11−
61263 号公報で提案されているが、この技術で得られる
ゴス方位の集積度は、従来のインヒビターを使用する技
術に比較すると、低いものでしかなかった。
【0006】この点、発明者らは、上記したような、熱
延前の高温スラブ加熱に付随する問題点を回避したイン
ヒビターを使用しない製造技術であって、しかもインヒ
ビターを使用せず、表面エネルギー差を利用する方法に
必然的に付随する、鋼板板厚が限定されるという問題点
をも解決した、方向性電磁鋼板の新規な製造技術を開発
し、特開2000−129356号公報において提案した。
【0007】この技術は、インヒビター成分を含有しな
い素材を用いて、ゴス方位結晶粒を二次再結晶により発
達させる技術であり、一次再結晶後の集合組織を制御す
ることによって二次再結晶を発現させるという思想に立
脚したものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記特開20
00−129356号公報に開示した方向性電磁鋼板の製造技術
の改良に係り、一次再結晶後の集合組織の制御を安定化
することによって、より安定して磁気特性に優れた方向
性電磁鋼板を製造しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
構成は次のとおりである。 1.質量%で、C:0.08%以下, Si:2.0 〜8.0 %およ
びMn:0.005 〜3.0 %を含み、Alを 100 ppm未満、N,
S, Seをそれぞれ 50ppm以下に低減した溶鋼を用いて製
造した鋼スラブを、熱間圧延し、ついで熱延板焼鈍を行
ったのち1回の冷間圧延を行うか、あるいは熱延板焼鈍
を行うかまたは行わずに中間焼鈍を挟む2回以上の冷間
圧延を行ったのち、一次再結晶焼鈍を行い、ついで必要
に応じて焼鈍分離剤を適用して最終仕上焼鈍を施す方向
性電磁鋼板の製造方法において、最終冷間圧延前の鋼板
について、全板厚の平均結晶粒径に対する厚さ方向各位
置での平均結晶粒径の変動幅を、全板厚にわたり、−50
〜50%の範囲内に制御することを特徴とする方向性電磁
鋼板の製造方法。
【0010】2.鋼スラブが、さらに、質量%で、Ni:
0.005 〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005 〜0.50
%、Cu:0.01〜1.50%、P:0.005 〜0.50%およびCr:
0.01〜1.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含
有することを特徴とする上記1記載の方向性電磁鋼板の
製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明す
る。本発明では、インヒビターを使用しないで二次再結
晶を発現させる方法を利用する。さて、発明者らは、ゴ
ス方位粒が二次再結晶する理由について鋭意研究を重ね
た結果、一次再結晶組織における方位差角が20〜45°で
ある粒界が重要な役割を果たしていることを発見し、Ac
ta Material 45巻(1997)1285頁に報告した。
【0012】すなわち、方向性電磁鋼板の二次再結晶直
前の状態である一次再結晶組織を解析し、様々な結晶方
位を持つ各々の結晶粒の周囲の粒界について、粒界方位
差角が20〜45°である粒界の全体に対する割合を調査し
たところ、ゴス方位が最も高い頻度を持つことが解明さ
れた。方位差角が20〜45°の粒界は、C. G. Dunnらによ
る実験データ(AIME Transaction 188巻(1949)368
頁)によれば、高エネルギー粒界である。この高エネル
ギー粒界は粒界内の自由空間が大きく乱雑な構造をして
いる。粒界拡散は粒界を通じて原子が移動する過程であ
るので、粒界中の自由空間の大きい、高エネルギー粒界
の方が粒界拡散は速い。二次再結晶は、インヒビターと
呼ばれる析出物の拡散律速による成長に伴って発現する
ことが知られている。高エネルギー粒界上の析出物は、
仕上焼鈍中に優先的に粗大化が進行するので、優先的に
ピン止めがはずれて粒界移動を開始し、ゴス粒が成長す
る機構を示した。
【0013】発明者らは、この研究をさらに発展させ
て、ゴス方位粒の二次再結晶の本質的要因は、一次再結
晶組織中の高エネルギー粒界の分布状態にあり、インヒ
ビターの役割は、高エネルギー粒界と他の粒界の移動速
度差を生じさせることにあることを見い出した。従っ
て、この理論に従えば、インヒビターを用いなくとも、
粒界の移動速度差を生じさせることができれば、二次再
結晶させることが可能となる。
【0014】さて、鋼中に存在する不純物元素は、粒界
とくに高エネルギー粒界に偏析し易いため、不純物元素
を多く含む場合には、高エネルギー粒界と他の粒界の移
動速度に差がなくなっているものと考えられる。この
点、素材の高純度化によって、上記したような不純物元
素の影響を排除することができれば、高エネルギー粒界
の構造に依存する本来的な移動速度差が顕在化して、ゴ
ス方位粒の二次再結晶が可能になるものと考えられる。
【0015】さらに、粒界移動速度差を利用して安定し
た二次再結晶を可能とするためには、一次再結晶組織を
できる限り均一な粒径分布に保つことが肝要である。と
いうのは、均一な粒径分布が保たれている場合には、ゴ
ス方位粒以外の結晶粒は粒界移動速度の小さい低エネル
ギー粒界の頻度が大きいため、粒成長が抑制されている
状態、いわゆるTexture Inhibition効果の発揮により、
粒界移動速度が大きい高エネルギー粒界の頻度が最大で
あるゴス方位粒の選択的粒成長としての二次再結晶が進
行するからである。これに対し、粒径分布が一様でない
場合には、隣接する結晶粒同士の粒径差を駆動力とする
正常粒成長が起こるため、粒界移動速度差と異なる要因
で成長する結晶粒が選択されるために、Texture Inhibi
tion効果が発揮されずに、ゴス方位粒の選択的粒成長が
起こらなくなる。
【0016】ところが、工業生産の上では、インヒビタ
ー成分を完全に除去することは実用上困難なので、不可
避的に含有されてしまうが、熱延加熱温度が高い場合に
は、加熱後に固溶した微量不純物としてのインヒビター
成分が熱延時に不均一に微細析出する結果、粒界移動が
局所的に抑制されて粒径分布が極めて不均一になり、二
次再結晶の発達が阻害される。そのためインヒビター成
分を低減することが第一であるが、不可避的に混入する
微量のインヒビター成分の微細析出を回避して無害化す
るためには、熱延前の加熱温度を圧延可能な範囲で、で
きる限り低めに抑えることが有効である。
【0017】さらに、発明者らは、一次再結晶の粒径分
布を一様にするために必要な製造条件について鋭意研究
を行った結果、最終の冷間圧延前の結晶粒径の一様性が
極めて重要であることが判明した。すなわち、発明者ら
は、インヒビターを使用しない技術による一方向性電磁
鋼板の製造条件を種々に変化させたところ、最終製品の
磁気特性を大きく劣化させる条件があることを見出し
た。その多くは、二次再結晶が生じないか、生じても鋼
板全面を覆いつくしていない状態であった。
【0018】そこで、その原因を解明すべく鋭意検討を
重ねた結果、その原因は一次再結晶の粒径分布が不均一
でTexture Inhibition効果が不十分であったためである
ことが判明した。このような問題には、スラブ成分、ス
ラブ加熱温度、熱間圧延仕上げ圧延時の鋼板温度、熱延
板焼鈍温度および均熱時間、中間焼延温度および均熱時
間など種々の条件が影響を及ぼしていると考えられる。
しかしながら、さらなる発明者らの研究により、かよう
な弊害の有無は、最終冷延前の焼鈍後における結晶粒の
板厚方向の均一性で整理できることが解明された。
【0019】すなわち、発明者らは、最終冷間圧延前の
鋼板の断面を圧延方向から観察した結果、不適切な製造
条件で製造されたものは、鋼板の表層に粗大な結晶粒が
形成されていたり、中心部に繊細な結晶粒が多い領域が
あるなど、板厚方向の結晶粒の均一性が損なわれている
ことを突き止めた。そして、このような鋼板を冷間圧延
して最終製品の板厚とし、さらに一次再結晶焼鈍を行っ
たとき、表層の粗大粒の領域での一次再結晶が粗大かつ
不均一なものになったり、中心部の微細結晶粒領域にや
はり粗大な一次再結晶粒が成長するなどして、Texture
Inhibition効果が損なわれてしまうことが判明した。
【0020】上記の知見は、逆に、最終冷延前の結晶粒
径を一様に制御するような製造条件を採用すれば、製品
としたときの磁気特性を有利に改善できることを示唆し
ており、この結晶粒径の板厚方向の一様性を確保するこ
とがインヒビターを使用しない一方向性電磁鋼板の製造
方法において極めて重要となる。
【0021】さて、本発明では、結晶粒径の板厚方向の
均一性は次のように評価した。まず、最終冷間圧延前の
鋼板の断面の結晶組織を圧延方向から光学顕微鏡で観察
し、写真撮影する。次に、この写真上の結晶組織を板厚
の20%毎に層状に区分し、それぞれの領域における結晶
粒径を、観察面積を結晶粒の個数で割った面積に相当す
る円の直径として算出する。この時、測定誤差を防止す
る意味から、観察領域の結晶粒の個数は1000個以上にな
るようにした。従って、1枚の顕微鏡写真で結晶粒の個
数が1000個に満たない場合は、複数枚の別視野の写真で
計数して合計した。このようにして、全板厚において5
層の領域の個々の平均結晶粒径を求め、さらに全板厚で
の平均結晶粒径を、5層の個々の平均結晶粒径をさらに
平均することにより求めた。ついで、各層の平均結晶粒
径から全板厚の平均結晶粒径を減じ、その全板厚の平均
結晶粒径に対する割合を百分率で求め、これを変動幅と
して定義した。例えば、板厚方向の各層の結晶粒径の平
均値が127, 113, 105, 108, 143 μm であった場合、全
厚の平均値は 119.2μm であり、これに対する各層の変
動幅は 6.5, −5.2, −11.9, −9.4, 20.0 %となる。
【0022】そして、この変動幅と得られる磁気特性と
の関係について綿密な調査を行った結果、この平均結晶
粒径の変動幅が−50〜50%の範囲内であれば優れた磁気
特性の製品を安定して製造できることが究明されたので
ある。
【0023】次に、本発明において、素材であるスラブ
の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明す
る。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り
質量%(mass%)を意味する。 C:0.08%以下 C量が0.08%を超えると、磁気時効の起こらない 50ppm
以下まで低減することが困難になるので、Cは0.08%以
下に制限した。 Si:2.0 〜8.0 % Siは、鋼の電気抵抗を増大し鉄損を低減するのに有用な
元素であるので、2.0%以上含有させる。しかしなが
ら、含有量が 8.0%を超えると加工性が著しく低下して
冷間圧延が困難となる。そこでSi量は 2.0〜8.0 %の範
囲に限定した。 Mn:0.005 〜3.0 % Mnは、熱間加工性を改善するために有用な元素である
が、含有量が 0.005%未満ではその添加効果に乏しく、
一方 3.0%を超えると磁束密度の低下を招くので、Mn量
は 0.005〜3.0 %の範囲とする。
【0024】Al:100 ppm 未満、N, S, Seはそれぞれ
50ppm以下 また、不純物元素であるAlは 100 ppm未満、N, S, Se
についても 50ppm以下、好ましくは 30ppm以下に低減す
ることが、良好に二次再結晶させる上で不可欠である。
その他、窒化物形成元素であるTi, Nb, B, Ta, V等に
ついても、それぞれ 50ppm以下に低減することが鉄損の
劣化を防止し、良好な加工性を確保する上で有効であ
る。
【0025】以上、必須成分および抑制成分について説
明したが、本発明では、その他にも以下に述べる元素を
適宜含有させることができる。 Ni:0.005 〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005 〜
0.50%、Cu:0.01〜1.50%、P:0.005 〜0.50%、Cr:
0.01〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種 Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させる有用
元素である。しかしながら、含有量が0.01%未満では磁
気特性の向上量が小さく、一方1.50%を超えると二次再
結晶が不安定になり磁気特性が劣化するので、Ni量は
0.005〜1.50%とした。また、Sn,Sb,Cu, P, Crはそ
れぞれ、鉄損の向上に有用な元素であるが、いずれも上
記範囲の下限値に満たないと鉄損の向上効果が小さく、
一方上限量を超えると二次再結晶粒の発達が阻害される
ので、それぞれSn:0.01〜0.50%,Sb:0.005 〜0.50
%,Cu:0.01〜1.50%,P:0.005 〜0.50%,Cr:0.01
〜1.5 %の範囲で含有させる必要がある。このうち、Sb
は、Texture Inhibition効果を高めるので、特に有用で
ある。
【0026】次に、本発明の製造工程について説明す
る。上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、転炉、電気
炉などを用いる公知の方法で精錬し、必要があれば真空
処理などを施したのち、通常の造塊法や連続鋳造法を用
いてスラブを製造する。また、直接鋳造法を用いて 100
mm以下の厚さの薄鋳片を直接製造してもよい。スラブ
は、通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後、加
熱せずに直ちに熱延に供してもよい。また、薄鋳片の場
合には、熱間圧延を行っても良いし、熱間圧延を省略し
てそのまま以後の工程に進めてもよい。熱間圧延前のス
ラブ加熱温度は1250℃以下に抑えることが、熱延時に生
成するスケール量を低減する上で特に望ましい。また、
結晶組織の微細化および不可避的に混入するインヒビタ
ー成分の弊害を無害化して、均一な整粒一次再結晶組織
を実現する意味でもスラブ加熱温度の低温化が望まし
い。
【0027】ついで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。
冷間圧延を1回しか行わない場合には、この熱延板焼鈍
は不可欠である。ゴス組織を製品板において高度に発達
させるためには、熱延板焼鈍温度は 800〜1100℃の範囲
が好適である。というのは、熱延板焼鈍温度が 800℃未
満では熱延でのバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶
組織を実現することが困難になり、二次再結晶の発達が
阻害され、一方熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、不
可避的に混入するインヒビター成分が固溶し冷却時に不
均一に再析出するために、整粒一次再結晶組繊を実現す
ることが困難となり、やはり二次再結晶の発達が阻害さ
れるからである。また、熱延板焼鈍温度が1100℃を超え
ると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎることも、整
粒の一次再結晶組織を実現する上で極めて不利である。
【0028】冷間圧延が1回の場合には、この熱延板焼
鈍後の鋼板の平均結晶粒径が、一方2回以上の場合に
は、最終冷間圧延前の中間焼鈍後の鋼板の平均結晶粒径
が、先に述べたように、全板厚の平均結晶粒径に対する
厚さ方向各位置での平均結晶粒径の変動幅で、−50〜50
%の範囲を満足していないと、仕上焼鈍後に良好な磁気
特性が得られない。例えば、熱延板焼鈍温度が低温の場
合には、板厚中央付近のバンド組織の再結晶が促進され
ず、表層付近の結晶粒が大きく、中央付近の結晶粒が小
さくなる。また、C添加量が0.03%よりも多く、熱延板
焼鈍温度が1000℃以下の場合には、板厚の 1/4付近の結
晶粒が小さく、表層が大きくなる場合がある。さらに、
熱延仕上げ圧延温度が低い場合や、熱延後の板の形状矯
正や熱延板焼鈍での粒成長性の向上等のためにスキンパ
ス圧延を行った場合には、板厚中央付近の結晶粒の成長
が促進され、表層よりも大きい結晶粒となる傾向があ
る。
【0029】これら以外にも、不純物元素であるAl,
S, N等の残存量とスラブ加熱温度など、板厚方向の特
定の領域の結晶粒の成長を促進または抑制する条件があ
る。これらの条件を適宜組み合わせることにより、板厚
方向の平均結晶粒径の分布を上記の範囲に制御すること
が必要である。
【0030】なお、最終冷間圧延前の平均結晶粒径の測
定については、少なくとも全厚を5層以上に区分し、そ
れぞれの層について平均結晶粒径を求める。さらに全厚
についての平均結晶粒径を求め、各層の平均結晶粒径か
ら全板厚の平均結晶粒径を減じ、これを全厚の平均結晶
粒径で除し、100 倍することにより各層の平均結晶粒径
の全厚に対する変動幅とする。この変動幅がすべての区
域で−50〜50%の範囲に収まるように、上述した条件を
組み合わせて制御する必要がある。
【0031】最終冷延後の脱炭焼鈍は、湿潤雰囲気を使
用して 700〜1000℃の温度で行うことが好適である。ま
た、脱炭焼鈍後に浸珪法によってにSi量を増加させる技
術を併用してもよい。その後、MgOを主体とする焼鈍分
離剤を適用して、最終仕上焼鈍を施すことにより二次再
結晶組織を発達させるとともにフォルステライト被膜を
形成させる。あるいは、焼鈍分離剤をMgO以外の無機鉱
物、例えばアルミナやシリカ等にして最終仕上焼鈍を行
い、フォルステライト被膜を形成させずに、打ち抜き加
工を向上させることもできる。最終仕上焼鈍は、二次再
結晶発現のために 800℃以上で行う必要があるが、800
℃までの加熱速度は磁気特性に大きな影響を与えないの
で任意の条件でよい。
【0032】その後、平坦化焼鈍を施して形状を矯正す
る。上記の平坦化焼鈍の前または後に、鉄損の改善を目
的として、鋼板表面に張力を付与する絶縁コーティング
を施すことが有利である。さらに、公知の磁区細分化技
術を適用できることはいうまでもない。
【0033】
【実施例】実施例1 表1に種々の成分組成になる鋼スラブを、1120〜1380℃
の範囲の種々の温度に加熱したのち、熱間圧延により
2.1mm厚の熱延板とした。この際、仕上げ圧延温度を 85
0〜980 ℃の範囲内で変化させ、さらに熱延板焼鈍を 96
0, 1000, 1050℃で30秒保持する条件とを種々組み合わ
せて実施した。得られた鋼板の断面を顕微鏡観察し、結
晶粒径を求めたところ、熱延仕上げ温度と熱延板焼鈍温
度との組み合わせで、鋼板の断面の板厚方向の結晶粒径
の分布が均一あるいは不均一になることが確認された。
ついで、酸洗後、冷間圧延によって0.30mmの最終板厚に
仕上げたのち、脱脂し、湿潤水素雰囲気中にて 840℃,
120 秒の一次再結晶焼鈍を行った。この一次再結晶焼鈍
後、C量は 0.003%以下まで低減されていた。その後、
最高温度:1200℃の仕上焼鈍を施したのち、張力コーテ
ィングの形成と平坦化焼鈍を行って製品とした。かくし
て得られた製品板の磁束密度(B8 )および鉄損(W
17/50 )を測定した結果を表1に併記する。
【0034】
【表1】
【0035】同表に示したとおり、熱延板焼鈍後の鋼板
板厚方向にわたる平均結晶粒径の変動幅が−50〜50%の
範囲を満足している場合にのみ、良好な磁気特性を得る
ことができた。
【0036】実施例2 種々の成分組成になる鋼スラブを、1180℃に加熱後、熱
間圧延によって 2.2mm厚の熱延板とした。この際、仕上
げ圧延温度を 850〜980 ℃の範囲内で変化させた。つい
で、1000℃, 30秒間の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、冷延
圧延により 1.8mmの中間板厚に仕上げたのち、1050℃,
60秒間の中間焼鈍を施し、この中間焼鈍後の鋼板の結晶
を観察して平均結晶粒径を求めた。ここで板厚平均の結
晶粒径の変動幅が−50〜50%の範囲にあるものだけを選
んだところ、表2に示す成分のみが残った。ついで、18
0 ℃の温間での圧延によって0.23mmの最終板厚に仕上げ
たのち、磁区細分化のために電解エッチングによって鋼
板の片面に幅方向に溝を形成し、脱脂後、湿潤水素雰囲
気中にて 840℃, 120 秒の一次再結晶焼鈍を行った。こ
の一次再結晶焼鈍後、C量は 0.003%以下まで低減され
ていた。その後、最高温度:1200℃の仕上焼鈍を施した
のち、張力コーティングの形成と平坦化焼鈍を行って製
品とした。かくして得られた製品板の磁束密度(B8
および鉄損(W17/50 )を測定した結果を表2に併記す
る。
【0037】
【表2】
【0038】同表に示したとおり、本発明の成分組成範
囲を満足するもののみが良好な磁気特性を示した。
【0039】
【発明の効果】かくして、本発明に従い、最終冷間圧延
前の鋼板の板厚方向にわたる平均結晶粒径を適正に制御
することにより、インヒビターを使用せずに方向性電磁
鋼板を製造する場合に、より安定して優れた磁気特性を
得ることができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/60 C22C 38/60 (72)発明者 早川 康之 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 4K033 AA02 CA01 CA02 CA03 CA05 CA06 CA07 CA08 CA09 DA02 FA01 FA03 FA13 FA14 HA01 HA03 MA02 PA04 TA04 5E041 AA02 AA19 CA02 HB07 HB11 HB19

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.08%以下, Si:2.0 〜
    8.0 %およびMn:0.005〜3.0 %を含み、Alを 100 ppm
    未満、N, S, Seをそれぞれ 50ppm以下に低減した溶鋼
    を用いて製造した鋼スラブを、熱間圧延し、ついで熱延
    板焼鈍を行ったのち1回の冷間圧延を行うか、あるいは
    熱延板焼鈍を行うかまたは行わずに中間焼鈍を挟む2回
    以上の冷間圧延を行ったのち、一次再結晶焼鈍を行い、
    ついで必要に応じて焼鈍分離剤を適用して最終仕上焼鈍
    を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、 最終冷間圧延前の鋼板について、全板厚の平均結晶粒径
    に対する厚さ方向各位置での平均結晶粒径の変動幅を、
    全板厚にわたり、−50〜50%の範囲内に制御することを
    特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 鋼スラブが、さらに、質量%で、Ni:0.
    005 〜1.50%、Sn:0.01〜0.50%、Sb:0.005 〜0.50
    %、Cu:0.01〜1.50%、P:0.005 〜0.50%およびCr:
    0.01〜1.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含
    有することを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板
    の製造方法。
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