JP2003190259A - 人工臓器用チャンバー - Google Patents

人工臓器用チャンバー

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JP2003190259A
JP2003190259A JP2001400511A JP2001400511A JP2003190259A JP 2003190259 A JP2003190259 A JP 2003190259A JP 2001400511 A JP2001400511 A JP 2001400511A JP 2001400511 A JP2001400511 A JP 2001400511A JP 2003190259 A JP2003190259 A JP 2003190259A
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久子 大河原
Koushirou Satou
耕司郎 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 膵細胞の機能低下、すなわちインスリンの分
泌量低下を防止する。 【解決手段】 シリコーンゴムリング２の両開口端面に
ポリカーボネイト製の免疫隔離膜３を接着してなる容器
Ｖの中に失われた本来の膵臓の代替となりうる膵細胞４
とその機能を維持する細胞培養床５を封入してなる人工
臓器用チャンバー１において、前記容器Ｖの中に、前記
膵細胞４の担体としてスポンジ状キチン６を充填したこ
とを特徴とする人工臓器用チャンバー。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】この発明は、病気や遺伝など
によって、その機能の全部あるいは一部が失われた内分
泌器官の代わりをなす人工臓器用チャンバーに関するも
のである。
【０００２】
【従来の技術】従来の人工臓器用チャンバーとしては、
シリコーンゴムリングの両端面に高分子多孔質膜（免疫
隔離膜）を接着した容器の中にインスリン分泌細胞とそ
の機能を維持する細胞培養床（基質）を封入したものが
知られている（実公平６−１３７３９号公報、特開平１
０−５７４０５号公報参照）。
【０００３】このチャンバーは、ラットや小型犬等の動
物実験において、長期間の体内留置でも異物反応が生じ
ないだけでなく、チャンバーの周囲に新しく血管が生じ
て、インスリンの体内における効率的な循環を可能に
し、血糖値を下げることに成功している。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
人工臓器用チャンバーは、発明者が「医学のあゆみ（１
９６巻５号 ２００１年２月）」において発表している
とおり、細胞培養床（基質）にインスリン分泌細胞を分
散させたものであるため、長時間の使用によって、基質
の膨潤及び再凝集が生じ、細胞の機能（インスリン分泌
量）が徐々に低下するだけでなく、膜が破損するという
問題があった。
【０００５】この問題を解決するには、動物の体重に合
わせて、チャンバーを大きくすればよい。しかし、チャ
ンバーは、いくらこれに用いたシリコーンゴムやメンブ
レンの生体適合性が良いと言っても、生体にとって「異
物」であることは避けられない事実であるので、チャン
バーを大きくすれば、それだけ異物反応も強くなり、危
険性が高くなることは明白である。
【０００６】この発明は、このような従来の問題を解決
するためになされたもので、チャンバーを大きくせず
に、細胞の機能低下を防止することができる人工臓器用
チャンバーを提供することを目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】この発明が提供する人工
臓器用チャンバーは、次の（１）〜（３）に記載のもの
である。
【０００８】（１）シリコーンゴムリングの両開口端面
に高分子多孔質膜を接着してなる容器の中に失われた本
来の内分泌器官の代替となりうる細胞とその機能を維持
する細胞培養床を封入してなる人工臓器用チャンバーに
おいて、前記容器の中に、前記細胞の担体としてキチン
を充填したことを特徴とする人工臓器用チャンバー（以
下第１のチャンバーという）。
【０００９】（２）第１のチャンバーにおけるキチンの
充填量を、充填したキチンが細胞培養床の水分によって
膨潤して容器の形状を保持し安定化させる量としたこと
を特徴とする人工臓器用チャンバー（以下第２のチャン
バーという）。
【００１０】（３）第１又は第２のチャンバーにおける
キチンとして、シート状、スポンジ状又は繊維状のもの
を使用した人工臓器用チャンバー（以下、第３のチャン
バーという）。
【００１１】上記容器の中に封入する細胞は、膵臓、腎
臓、副腎（皮質、髄質共可）、胸腺、甲状腺、副甲状
腺、下垂体、松果体等の内分泌器官の細胞である。
【００１２】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を実
施例によって説明する。
【００１３】図１は実施例の人工臓器用チャンバーの斜
視図、図２はその断面を模式的に示した図である。
【００１４】図において、１は人工臓器用チャンバーで
ある。このチャンバーは、外径約５０ｍｍ、内径約３０
ｍｍ、厚み約２ｍｍのシリコーンゴムリング２の両開口
端面に、平均膜厚６μｍのポリカーボネイト製の免疫隔
離膜３を接着した容器Ｖの中に、ブタの膵臓より単離し
た膵細胞４と細胞培養床（基質）５と円板形をしたスポ
ンジ状のキチン６を封入したものである。
【００１５】膵細胞４と細胞培養床（基質）５とスポン
ジ状キチン６の封入は、次の要領で行った。
【００１６】（１）容器Ｖを作る途中で、直径約３０ｍ
ｍ、厚み約２ｍｍの円板形のスポンジ状キチン６を入れ
た。
【００１７】（２）ついで、膵細胞４を基質５とともに
容器Ｖ内に少しずつ、シリコーンゴムリング２の壁体の
注入口７より挿入した注入針８を介して、キチン６に含
浸させるようにしながら注入した。このとき、スポンジ
状キチン６は見かけの体積に殆ど変化はなかった。な
お、直径約３０ｍｍ、厚み約０．６ｍｍの円形のシート
状キチンを使用した場合は、約３倍の厚みに膨潤した。
【００１８】（３）注入量が規定した量に達したところ
で、容器Ｖを培養液の中にしばらく放置して安定化させ
た。
【００１９】得られた人工臓器用チャンバーの有用性を
実証するために、これを２匹のサルの腹腔内に移植し
た。
【００２０】移植した２匹のサルのうち１匹は、糖尿病
歴が長く、その間に体重の減少が著しいＬｉｐｏａｔｒ
ｏｐｈｉｃ ｄｉａｂｅｔｅｓ（脂肪組織萎縮型糖尿
病）の症状を呈し、移植前では血中インスリン値は３．
４μＵ／ｍｌ、血糖値は３００ｍｇ／ｄｌで高血糖を呈
し、１型糖尿病に類似であった。
【００２１】このサルは、移植１週間後、血中インスリ
ン値は３６．３μＵ／ｍｌと高くなったが、Ｌｉｐｏａ
ｔｒｏｐｈｉｃ ｄｉａｂｅｔｅｓ（脂肪組織萎縮型糖
尿病）の症状で、血糖値は２００ｍｇ／ｍｇでインスリ
ン抵抗性を示した。１ヶ月後には代謝の改善に伴って、
インスリン抵抗性が弱まり、空腹時の血糖値は１３８ｍ
ｇ／ｄｌと改善傾向を示し、移植した細胞からのインス
リン分泌が良好であることが示された。さらに２ヶ月後
には、定常的に血糖値は１００ｍｇ／ｄｌ以下となり、
実施例の人工臓器用チャンバーの有効性が認められた。
【００２２】移植した他の１匹は、糖尿病歴が短く、肥
満（インスリン過分泌で、一時的なインスリン抵抗性を
示す）からインスリン分泌が低下し、高血糖を呈し、２
型の糖尿病であった。
【００２３】このサルの移植前の血糖値は３００ｍｇ／
ｄｌ以上であったが、移植１ヶ月には血糖値が１１８−
１６５ｍｇ／ｄｌに低下し、実施例の人工臓器用チャン
バーの有効性が認められた。
【００２４】
【発明の効果】（１）第１、第２及び第３のチャンバー
によれば、キチンを充填するので、細胞培養床の膨潤と
再凝集を防止し、細胞の破損や細胞の機能低下を防止で
きる。
【００２５】（２）第２のチャンバーによれば、細胞培
養床の水分によって膨潤して容器の形状を安定させる量
のキチンを充填するので、キチン充填後の容器を変形し
にくい安定した形状にすることができる。
【００２６】（３）第３のチャンバーによれば、キチン
としてシート状、スポンジ状又は繊維状のものを使用す
るので、人工臓器用チャンバーの製造時におけるキチン
の取扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 実施例の人工臓器用チャンバーの斜視図
【図２】 図１のＡ−Ａ断面拡大図
【符号の説明】
１ 人工臓器用チャンバー ２ シリコーンゴムリング ３ ポリカーボネイト製の免疫隔離膜 Ｖ 容器 ４ 膵細胞 ５ 細胞培養床（基質） ６ スポンジ状のキチン ８ 注入針
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） // Ｃ１２Ｎ 5/06 Ｃ１２Ｎ 5/00 Ｅ (72)発明者 佐藤 耕司郎 神奈川県横浜市戸塚区秋葉町472 富士シ ステムズ株式会社研究所内 Ｆターム(参考） 4B029 AA08 BB11 CC02 CC10 GA08 GB10 4B065 AA90X BC42 CA44 4C077 AA09 CC01 DD30 PP07 4C081 AB35 BA13 BB07 BB08 CD092 CD34 CD35 DA01 DB03 DC14 4C097 AA30 BB01 CC01 EE16 FF05 FF17 MM04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 シリコーンゴムリングの両開口端面に高
    分子多孔質膜を接着してなる容器の中に失われた本来の
    内分泌器官の代替となりうる細胞とその機能を維持する
    細胞培養床を封入してなる人工臓器用チャンバーにおい
    て、前記容器の中に、前記細胞の担体としてキチンを充
    填したことを特徴とする人工臓器用チャンバー。
  2. 【請求項２】 前記キチンの充填量は、充填したキチン
    が細胞培養床の水分によって膨潤して容器の形状を保持
    し安定化させる量としたことを特徴とする請求項１記載
    の人工臓器用チャンバー。
  3. 【請求項３】 前記キチンが、シート状、スポンジ状又
    は繊維状であることを特徴とする請求項１又は２記載の
    人工臓器用チャンバー。
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