JP2007222391A - バイオ人工臓器 - Google Patents

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Abstract

【課題】動物細胞が充填されたバイオ人工臓器およびバイオ人工臓器の製造方法の提供。
【解決手段】バイオ人工臓器は、バイオ人工臓器用モジュールと該バイオ人工臓器用モジュール内に固定化された動物細胞7からなる。バイオ人工臓器用モジュールは、体液導入口2、体液導出口3および少なくとも1つの細胞導入口5を有するチャンバー6と、半透性を有する中空糸膜1と、細胞固定基材4と、を備え、かつ、該分離膜1および該細胞固定基材4が該チャンバー6内に収容され、該分離膜1が、該チャンバー6内に空間(I)および(II)が形成されるように配置され、該空間(I)が、該体液導入口2および該体液導出口3と連通し、かつ該体液導入口2から導入される体液が該体液導出口3から導出されるような体液の流路を形成し、該空間(II)が、該細胞導入口5と連通し、かつ該細胞固定基材4(細胞収容部)を収容する、構造を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、動物細胞が充填されたバイオ人工臓器およびバイオ人工臓器の製造方法に関する。
近年、人工材料と生きている細胞とを組み合わせ、それらの長所を活かしたバイオ人工臓器が研究されている。例えば、肝細胞と人工材料とを組み合わせたバイオ人工肝臓(例えば、非特許文献1参照)、膵細胞と人工材料とを組み合わせたバイオ人工膵臓(例えば、特許文献2参照)、腎細胞と人工材料とを組み合わせたバイオ人工腎臓(例えば、非特許文献2参照)などが知られている。
例えば、肝不全の治療においては、血漿分離器を用いる血漿交換法や、血漿分離器とビリルビン吸着器を用いる血漿吸着法などが行われてきた。しかしながら、血漿分離膜や吸着材のような人工材料だけを用いた従来の血液浄化法では患者の救命率は低く、バイオ人工肝臓に対する期待が集まっている。
バイオ人工臓器は、細胞がバイオ人工臓器用モジュールに充填されて使用されるが、従来、充填される細胞は、モジュール外で増殖させた後、その細胞を回収してモジュールに充填し、バイオ人工臓器として使用されるのが一般的であった。
バイオ人工臓器に充填される細胞として、従来種々の細胞が検討されてきた。例えば、バイオ人工肝臓の場合、初代ブタ肝細胞(例えば、非特許文献1参照)、肝癌由来のヒト肝細胞(例えば、非特許文献3、特許文献1参照)、可逆性不死化ヒト肝細胞(例えば、非特許文献4参照)、可逆性不死化ヒト肝細胞から可逆性不死化遺伝子を切り出して生じた細胞(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
初代ブタ肝細胞の場合、ブタの新鮮な肝臓を摘出した後、コラゲナーゼやトリプシンのようなタンパク質分解酵素を用いて細胞に分離し、モジュールに充填される。
また、肝癌由来のヒト肝細胞、可逆性不死化ヒト肝細胞、可逆性不死化ヒト肝細胞から可逆性不死化遺伝子を切り出して生じた細胞の場合も、上記と同様に、タンパク質分解酵素を用いて細胞を培養皿から剥離させ、回収された細胞がモジュールに充填される。ここで、可逆性不死化ヒト肝細胞から可逆性不死化遺伝子を切り出して生じた細胞では、培地を入れた培養皿等に可逆性不死化ヒト肝細胞を播種し、インキュベーター等の中で培養して増殖させた後、可逆性不死化遺伝子を切り出し、次いで剥離・モジュール内充填が行われる。なお、肝癌由来のヒト肝細胞の場合には、モジュール中に充填後、インキュベートしたものを人工肝臓として使用する試みがなされている。
特表平5−508312号公報 特開平7−246211号公報 特許第3454818号公報 デメトリオウ(A.A.Demetriou)ら、Annals of Surgery、第239巻、第660頁〜第670頁(2004年) ヒュームズ(H.D.Humes)ら、Nature Biotechnology,第17巻,第451頁〜第455頁(1999年) サスマン(N.L.Sussman)ら、Artificial Organs、第18巻、第390頁〜第396頁(1994年) コバヤシ(N.Kobayashi)ら、J.Artif.Organs、第6巻、第236頁〜第244頁(2003年)
従来、一般的に採用されているバイオ人工臓器の製造方法では、タンパク質分解酵素を用いた細胞回収時に一部の細胞の死滅を避けることができないため、モジュール内に充填された細胞の生存率を高くすることができない。このことは、得られたバイオ人工臓器の機能を高める上で障害となる。一方、肝癌由来の肝細胞をモジュール中でインキュベートして製造されたバイオ人工肝臓では、モジュール内の細胞の生存率が高まるものの、不死化細胞が充填されたバイオ人工臓器は安全性に対する懸念を払拭することができない。
本発明は、1つの側面では、バイオ人工臓器として使用する際に、高い細胞生存率を示すこと、バイオ人工臓器として使用する際に、細胞の機能を高度に維持していること、バイオ人工臓器としての機能を十分に発揮すること等の少なくとも1つを解決し、かつ安全性の高いバイオ人工臓器を提供することにある。また、本発明は、他の側面では、製造時における細胞の損失を実質的に伴わないこと、製造時における細胞の機能の低下を実質的に伴わないこと、容易に製造できること、バイオ人工臓器中において、機能するに十分な細胞を維持すること、製造に要する時間を実質的に短縮できること等の少なくとも1つを解決する、安全性の高いバイオ人工臓器の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は、
[1] (A)バイオ人工臓器用モジュールと、
(B)動物細胞と、
を備えてなり、該動物細胞(B)が、該バイオ人工臓器用モジュール(A)内に固定化されたものであり、かつ該動物細胞(B)が、該バイオ人工臓器用モジュール(A)内に固定化された動物由来の可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子を該バイオ人工臓器用モジュール(A)内で切り出して生じた細胞である、バイオ人工臓器、及び
[2] (a)体液導入口、体液導出口および少なくとも1つの細胞導入口を有するチャンバーと、
(b)半透性を有する分離膜と、
(c)細胞固定基材と、
を少なくとも備えてなり、かつ、
(1)該分離膜(b)および該細胞固定基材(c)が該チャンバー(a)内に収容され、
(2)該分離膜(b)が、該チャンバー(a)内に空間(I)および(II)が形成されるように配置され、
(3)該空間(I)が、該体液導入口および該体液導出口と連通し、かつ該体液導入口から導入される体液が該体液導出口から導出されるような体液の流路を形成し、
(4)該空間(II)が、該細胞導入口と連通し、かつ該細胞固定基材(c)を収容する、
構造を有するバイオ人工臓器用モジュール(A)内に、動物由来の可逆性不死化細胞を該細胞導入口から導入して該細胞固定基材(c)に固定化し、増殖させ、ついで、該可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子を該バイオ人工臓器用モジュール(A)内で切り出すことを特徴とする、バイオ人工臓器の製造方法
に関する。
本発明のバイオ人工臓器によれば、バイオ人工臓器として使用する際に、高い細胞生存率を示し、細胞の機能を高度に維持するため、治療等の用途において、細胞の機能を十分に効率よく発揮させることができ、バイオ人工臓器としての機能を十分に発揮し、かつ安全性が高いという優れた効果を奏する。また、本発明のバイオ人工臓器の製造方法によれば、製造時における細胞の損失、細胞の機能の低下等を実質的に伴わず、バイオ人工臓器中において、機能を発揮するに十分な細胞数を保持することができ、容易に、かつ製造に要する時間を実質的に短縮して、前記バイオ人工臓器を製造することができるという優れた効果を奏する。
本発明は、1つの側面では、(A)バイオ人工臓器用モジュールと、(B)動物細胞とを備え、該動物細胞(B)が、該バイオ人工臓器用モジュール(A)内に固定化されたものであり、かつ該動物細胞(B)が、該バイオ人工臓器用モジュール(A)内に固定化された動物由来の可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子を該バイオ人工臓器用モジュール(A)内で切り出して生じた細胞である、バイオ人工臓器に関する。
本発明のバイオ人工臓器は、バイオ人工臓器用モジュール内に固定化された動物細胞であって、かつ該バイオ人工臓器用モジュール内に固定化された動物由来の可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子を切り出して生じた細胞が用いられていることに1つの大きな特徴がある。
したがって、本発明のバイオ人工臓器によれば、製造時において、バイオ人工臓器用モジュール内で細胞を十分に増殖させることができるため、人工臓器として使用するに十分な細胞数を維持することができる。
また、本発明のバイオ人工臓器によれば、前記動物細胞が用いられているため、バイオ人工臓器用モジュール内で可逆性不死化細胞を十分に増殖させた後、可逆性不死化遺伝子を切り出すことにより製造されうる。したがって、本発明のバイオ人工臓器によれば、増殖した細胞を人工臓器に用いるための容器に充填する操作を使用直前に行なう必要がないという優れた効果を発揮する。さらには、本発明のバイオ人工臓器によれば、動物細胞の増殖完了後、トリプシン、コラゲナーゼ等のタンパク質分解酵素による該細胞の処理を実質的に行なう必要がないという優れた効果を発揮する。したがって、本発明のバイオ人工臓器は、治療等の用途において、利便性が高く、かつ人工臓器として使用するに十分な量の細胞を保持できる。
また、本発明のバイオ人工臓器は、製造時において、動物細胞の増殖完了後、トリプシン、コラゲナーゼ等のタンパク質分解酵素による該細胞の処理を実質的に行なう必要がないため、細胞の損失を実質的に生じないという優れた効果を発揮する。そのため、本発明のバイオ人工臓器によれば、治療等の用途において、人工臓器として使用するに適した細胞の機能を十分に発揮させることができるという優れた効果を発揮する。
すなわち、本発明のバイオ人工臓器においては、前記動物細胞は、好ましくは、該バイオ人工臓器用モジュール内で増殖した可逆性不死化細胞を含むことが望ましい。
本発明は、可逆性不死化細胞をバイオ人工臓器用モジュールに充填した後、該モジュール内で該可逆性不死化細胞を増殖させる操作および増殖した該可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子を切り出す操作を行い、それにより得られる「可逆性不死化遺伝子が切り出された細胞」を保持したモジュールを用いるバイオ人工臓器が、バイオ人工臓器として使用する時の細胞の生存率と機能が高く維持されているという本発明者の知見に基づく。
本発明でいう「バイオ人工臓器」とは、例えば、血液や血漿中の有害物質を代謝、解毒するもの、アルブミン、血液凝固因子等を産生、供給するもの、インスリン等の生理活性物質を産生、供給するもの等であればよく、バイオ人工肝臓、バイオ人工腎臓、バイオ人工膵臓、バイオ人工免疫系、バイオ人工内分泌システム等が挙げられる。
本発明でいう「可逆性不死化細胞」とは、不死化を引き起こしうる因子をコードする核酸(以下、「可逆性不死化遺伝子」ともいう)を、人為的に除去可能に保持または該核酸の発現産物による機能を欠損可能に保持する細胞をいう。より具体的には、前記「可逆性不死化細胞」は、例えば、遺伝子工学技術を利用し正常細胞に一時的に前記可逆性不死化遺伝子を導入することにより増殖が可能な細胞を構築し、その後、組み込まれた可逆性不死化遺伝子を特異的に切り出すことで正常細胞に戻すことが可能な細胞をいう。
本明細書において、前記「可逆性不死化遺伝子」とは、細胞の分裂、増殖を促進する作用を示す遺伝子をいう。前記可逆性不死化遺伝子としては、特に限定されないが、例えば、シミアンウイルス40 large T抗原遺伝子(SV40Tag)、ラス遺伝子、myc遺伝子、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)などを使用することができる。なかでも、前記hTERTは、ヒトの血液、皮膚、腸管粘膜、子宮粘膜等のヒトの一生において再生を繰り返している臓器の幹・前駆細胞において通常に発現している遺伝子であり、好適に用いられる。
前記可逆性不死化細胞は、バイオ人工臓器をヒトに対して用いる場合には、可逆性不死化ヒト細胞が好ましい。
前記可逆性不死化細胞は、例えば、Cre/loxP部位特異的組換え反応を利用した技術により作製することができる。かかる技術により作製された可逆性不死化細胞としては、可逆性不死化ヒト細胞等が挙げられる。前記可逆性不死化ヒト細胞としては、特に限定されないが、例えば、可逆性不死化ヒト肝細胞〔例えば、コバヤシ(N.Kobayashi)ら、Science、第287巻、第1258頁〜第1262頁(2000年)および特許第3454818号公報(特許文献3)に記載されたヒト不死化肝細胞株TTNT−1細胞(受託番号:FERM BP−7498)〕、可逆性不死化ヒト肝臓星細胞〔例えば、ワタナベ(T.Watanabe)ら、Transplantation、第75巻、第1873頁〜第1880頁(2003年)参照〕、可逆性不死化ヒト間葉系骨髄細胞〔例えば、特開2003−174870号公報;芝良昭ら、化学工学論文集、第27巻、第134頁〜第136頁参照〕等が挙げられる。また、本発明においては、バイオ人工臓器の使用目的等に応じて、適宜、前記Cre/loxP部位特異的組換え反応を利用した技術等により、適切な細胞を可逆的に不死化させ、得られた細胞を用いてもよい。
前記バイオ人工臓器用モジュールは、可逆性不死化細胞を充填した後、モジュール内で該細胞を増殖させ、さらにその後、該細胞から可逆性不死化遺伝子を切り出す操作を行なうことができるものであればよく、
(a)体液導入口、体液導出口および少なくとも1つの細胞導入口を有するチャンバーと、
(b)半透性を有する分離膜と、
(c)細胞固定基材と、
を少なくとも備えたものであることが好ましい。
本発明でいう「体液」とは、バイオ人工臓器を適用される個体、例えば、治療される患者(患畜)の血液、血漿、血清を含む液体であり、血液を血漿分離器に供して得られる血漿であってもよい。
前記「体液導入口」、「体液導出口」、および「細胞導入口」の形状としては、特に制限はないが、好ましくは、例えば、栓、三方活栓等により封をされうる形状を有する。
前記「チャンバー」は、既存の高分子材料から作製されうるが、内部の細胞や体液の通過状況の観察を容易にする観点から、内部が観察可能な程度の透明性を有するのが好ましい。前記高分子材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。チャンバー(a)は、分離膜(b)および細胞固定基材(c)を収容することが好ましい。
本発明でいう「半透性を有する分離膜」とは、前記バイオ人工臓器用モジュール内の細胞を、通過させることがなく、一方で、バイオ人工臓器として必要な物質の透過性を有する「半透性」を示す膜であればよい。
前記分離膜は、バイオ人工臓器が、例えば、バイオ人工肝臓の場合、被代謝物質であるアンモニア等を透過させる性質等を有する分離膜であればよく、バイオ人工膵臓の場合、細胞から分泌されるインスリン等を透過させる性質等を有する分離膜であればよい。
前記分離膜の材料は、細胞の維持および機能の発現に適したものであればよく、例えば、再生セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が好適に使用できる。
前記分離膜は、ポリビリルピロリドン、ポリエチレングリコール等の親水性を付与する添加剤が添加されていてもよい。
また、前記分離膜の膜孔径は、バイオ人工臓器として必要な物質は分離膜を通過しうるが、細胞は分離膜を通過しない孔径であればよく、バイオ人工臓器の目的に応じて選択されるが、分離膜を介して患者(患畜)の血液、血漿等と細胞との間の物質交換を適切に行なう観点から、好ましくは、1nm以上、より好ましくは、5nm以上であり、分離膜を介する細胞の漏れを抑制する観点から、好ましくは、1μm以下、より好ましくは、400nm以下である。
本発明において、前記分離膜の形態には特に制限はなく、平膜、中空糸膜等が使用できる。細胞の充填密度を高め、かつ小型のバイオ人工臓器を作製できる観点から、中空糸膜型の分離膜がより好ましい。
前記中空糸膜の膜厚は、特に限定されないが、中空糸膜の耐圧性能を十分に得る観点から、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上であり、細胞の充填密度を高める観点から、好ましくは、300μm以下、より好ましくは、100μm以下である。
また、前記中空糸膜の内径は、特に限定されないが、中空糸膜内における体液等の流体の通過性の観点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上であり、中空糸膜内外への物質の透過及び拡散の観点から、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは200μm以下である。
分離膜(b)が体液導入口と体液導出口とを前記チャンバー(a)の内部において連結させるように配置されることにより、該チャンバー(a)内に空間(I)および(II)が形成されうる。かかる場合、空間(I)は、体液導入口から導入される体液が体液導出口から導出されるような体液の流路を形成し、空間(II)は、細胞導入口と連通し、かつ細胞固定基材(c)を収容しうる。体液を偏流なく通過させ、空間(I)と(II)の間における物質交換の効率を良好にするという観点から、分離膜(b)が中空糸膜である場合、該中空糸膜の内部に該空間(I)が形成され、かつ、該中空糸膜の外部に該空間(II)が形成されることが好ましい。
前記細胞固定基材(c)は、空間(II)(例えば、中空糸膜外空間)に挿入することができ、表面に可逆性不死化細胞が接着して機能を果たすことができる細胞固定基材であればよく、細胞を高密度に培養できる観点から、繊維からなる細胞固定基材がより好ましい。前記細胞固定基材には、例えば、不織布や綿状の繊維集合体等が好適に使用できる。
なお、本発明の一態様において、前記「空間(II)」とは、前記チャンバー(a)内における中空糸膜の外側の空間でありうる。
細胞固定基材の材料としては、動物細胞、例えば、ヒト細胞が接着し、該細胞の増殖に適したものであればよく、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
本発明で使用する細胞固定基材としては、少なくとも表面部がポリアミノ酸ウレタンで構成される繊維を含む細胞固定基材が、細胞との接着性の観点から、より好ましい。
本発明でいうポリアミノ酸ウレタンとは、ポリアミノ酸セグメントとポリウレタンセグメントとを有する共重合体をいい、より具体的には、アミノ酸ユニットが平均4個以上連続して結合されたポリアミノ酸とウレタンとの共重合体をいう(例えば、芝良昭ら、化学工学論文集、第27巻、第134頁〜第136頁;特開2001−136960号公報等を参照)。
なお、前記バイオ人工臓器用モジュールは、主として人体に使用されるものであるため、該モジュールの材料は、安全性(例えば、低溶出物、耐滅菌性等)、体液適合性、特に、体液、例えば、血液、血漿等と接触する部分における適合性等に優れたものであることが好ましい。
本発明のバイオ人工臓器は、製造の際、バイオ人工臓器用モジュール内で可逆性不死化細胞の増殖と、可逆性不死化遺伝子の切り出しとを行なうことができるため、大量の細胞を充填する必要があるバイオ人工肝臓に特に好適である。すなわち、細胞として可逆性不死化肝細胞から可逆性不死化遺伝子を切り出して生じたヒト細胞を有する本発明のバイオ人工臓器、すなわち、バイオ人工肝臓は、生存率と機能が高く維持された前記ヒト細胞が大量に充填されたバイオ人工肝臓として得られ、肝不全の治療に好適である。
本発明のバイオ人工臓器は、体内に埋め込む体内用バイオ人工臓器として、あるいは体外に装着する体外用バイオ人工臓器として使用されうる。
なお、本発明によれば、前記バイオ人工臓器用モジュール内に、動物由来の可逆性不死化細胞を細胞導入口から導入して細胞固定基材に固定化し、増殖させ、ついで、該可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子を前記バイオ人工臓器用モジュール内で切り出すことを特徴とする、バイオ人工臓器の製造方法も提供される。
従来の多くの製造方法では、バイオ人工臓器を治療に使用する直前に、培養された細胞に対し前記タンパク質分解酵素を作用させて細胞と培養皿との間の接着や細胞同士の接着を切断するという操作と、それに引続く、取得された細胞をバイオ人工臓器用モジュール内に充填するという操作が必要である。一方、本発明の製造方法では、バイオ人工臓器を治療に使用する直前での切断操作および充填操作を、いずれも必要としないという優れた効果が奏される。また、本発明の製造方法によれば、増殖完了後の細胞に対する切断操作および充填操作がないため、切断操作および充填操作に伴う細胞の生存率および該細胞の機能低下等の、バイオ人工臓器中に維持される細胞に対する悪影響を解消または低減させることができるという優れた効果も発揮される。したがって、本発明の製造方法により得られたバイオ人工臓器によれば、治療等の用途において、人工臓器として使用される際にも、人工臓器として使用するに十分な高い生存率で細胞が維持され、人工臓器として使用するに適した高い細胞の機能を発現するという優れた効果が発揮される。
本発明の製造方法において、バイオ人工臓器用モジュールへの可逆性不死化細胞の導入は、例えば、前記細胞導入口から該可逆性不死化細胞を導入することにより行なわれうる。ここで、導入に際しては、前記可逆性不死化細胞は、バイオ人工臓器用モジュール内に均等に存在させる観点から、細胞同士が解離された状態で、培地等に懸濁されていることが望ましい。なお、細胞が導入されるバイオ人工臓器用モジュールとしては、通常、滅菌処理が施されたものが使用される。
前記可逆性不死化細胞を、バイオ人工臓器用モジュールに導入した後、前記細胞導入口は、栓、三方活栓等で封をすればよい。
前記バイオ人工臓器用モジュール内に導入された可逆性不死化細胞を、細胞の種類、細胞固定基材の種類等に応じた適切な固定化条件に付することにより、前記可逆性不死化細胞の細胞固定基材への固定化(または接着)を行うことができ、さらに、固定化された可逆性不死化細胞を、細胞の種類等に応じた適切な培養条件下に維持することにより、前記可逆性不死化細胞の増殖が行なわれうる。高い細胞機能を発現させる観点から、好ましくは、バイオ人工臓器用モジュール内において、可逆性不死化細胞が、数個〜数百個程度の細胞塊を形成した状態となるように増殖させることが望ましい。
前記固定化条件は、特に限定されないが、例えば、バイオ人工臓器用モジュールに細胞を充填した後、該モジュールを振盪しながら固定する方法、静置しながら固定する方法、これらを併用した方法などを採用することができる。なかでも、モジュール内に細胞を均一に充填した後、静置下に固定する方法が好ましい。固定に際しての温度、時間などの条件は特に限定されず、用いた細胞の特性などを考慮して適宜選択することができる。必ずしも限定されるものではないが、一般的に、温度は37℃近傍が好ましく、時間は10分間から12時間が好ましい。また、必要に応じて、炭酸ガスを含む空気や栄養分を系内に供給してもよい。
前記培養条件は、特に限定されないが、可逆性不死化ヒト細胞の場合、例えば、37℃で、5容積%の炭酸ガスを含む空気中、培養する際に必要な栄養分を含む培地で行なうこと等が挙げられる。
可逆性不死化細胞からの可逆性不死化遺伝子の切り出しは、例えば、前記Cre/loxP部位特異的組換え反応を用いる技術等により行なわれうる。また、かかる可逆性不死化細胞からの可逆性不死化遺伝子の切り出しは、例えば、一対のLoxP配列の間に、可逆性不死化遺伝子とともに、マーカーとなるタンパク質をコードする核酸、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸を挿入した系を用いることにより、マーカーとなるタンパク質が発現しないことを指標として確認されうる。
また、本発明のバイオ人工臓器の評価は、例えば、バイオ人工肝臓の場合、例えば、in vitro実験では培地をバイオ人工肝臓に循環させ、あるいは、動物実験や臨床試験では動物または患者の血液や血漿をバイオ人工肝臓に循環させ、これらの循環中において、アンモニアの代謝、尿素の合成、リドカインの代謝、アルブミンの合成等を経時的に測定すること等により行なわれうる。
本発明のバイオ人工臓器の形態の一例(態様1)としては、血液等の流路が半透性の中空糸膜の中空部で形成され、該中空糸膜の外周側の領域に、不織布等の細胞固定基材が配置されており、該中空糸膜と細胞固定基材とがチャンバーに収容されたバイオ人工臓器が挙げられる。前記態様1のバイオ人工臓器において、前記中空糸膜の一端は、血液等の体液を導入するための体液導入口に、他端は、処理後の血液等の処理後の体液を導出するための体液導出口に接続されている。また、前記チャンバーには、細胞収容部を占める前記細胞固定基材へ可逆性不死化細胞を播種するための細胞導入口が少なくとも1つ、好ましくは2つ設けられている。
例えば、態様1の具体例としては、図1に示されるバイオ人工臓器等が挙げられる。以下、説明の容易性の観点から、図1のバイオ人工臓器を例に挙げて説明する。
図1のバイオ人工臓器は、バイオ人工臓器用モジュールと該バイオ人工臓器用モジュール内に固定化された動物細胞7からなる。ここで、該動物細胞7は、該バイオ人工臓器用モジュール内に固定化された動物由来の可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子を該バイオ人工臓器用モジュール内で切り出して生じた細胞である。一方、該バイオ人工臓器用モジュールは、
体液導入口2、体液導出口3および少なくとも1つの細胞導入口5を有するチャンバー6と、
半透性を有する分離膜(例えば、中空糸膜)1と、
細胞固定基材4と、
を少なくとも備えてなり、かつ、
該分離膜1および該細胞固定基材4が該チャンバー6内に収容され、
該分離膜1が、該チャンバー6内に空間(I)および(II)が形成されるように配置され、
該空間(I)が、該体液導入口2および該体液導出口3と連通し、かつ該体液導入口2から導入される体液が該体液導出口3から導出されるような体液の流路を形成し、
該空間(II)が、該細胞導入口5と連通し、かつ該細胞固定基材4(細胞収容部)を収容する、
構造を有するものである。ここで、前記細胞導入口5は、該チャンバー6の外側から該細胞固定基材4への細胞の移動が可能なように配置されたものである。前記体液導入口2および体液導出口3と、分離膜1とは、例えば、ポリウレタンにより連結される。
以下、本発明を実施例等により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔可逆性不死化細胞の調製例〕
ヒト不死化肝細胞株TTNT−1細胞(受託番号:FERM BP−7498)(岡山大学大学院医歯学総合研究科消化器腫瘍外科学 小林直哉博士より供与された)を用いた。最終濃度10wt% ウシ胎仔血清(三光純薬)、最終濃度100U/mL ペニシリン、最終濃度0.1mg/mL ストレプトマイシン〔ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(商品名:P071、シグマ社製)〕を含有するグルコース濃度450mg/dLのDMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地)(商品名:D5790、シグマ社製)を、ローラーボトル型培養器(カタログ番号:480853、コーニング社製、培養面積1700cm)に入れた。前記ローラーボトル型培養器に、前記TTNT−1細胞 3.0×10個を播種し、37℃、炭酸ガス濃度5%のインキュベーター中で、72時間培養した。培養後、トリプシンEDTA溶液(商品名:T4049、シグマ社製)により細胞を培養容器から剥離し、300×g、5分間の遠心分離により細胞を回収した。得られた細胞を、DMEM培地(液体)に分散させ、300×g、5分間の遠心分離により沈殿の操作を行ない、トリプシンを除去した。得られたTTNT−1細胞を、DMEM培地 20mlに懸濁し、TTNT−1細胞懸濁液を得た。
〔バイオ人工臓器用モジュールの作製〕
分離膜としてポリスルホン中空糸膜、細胞固定基材としてポリアミノ酸ウレタンで表面被覆されたポリテトラフルオロエチレン繊維からなる不織布シートを用いて図1と同様の形態を有するモジュールAを作製した。ポリスルホン中空糸膜は、特開平6−165926号公報に記載の実施例2に記載の方法に従って作製されたものである。また、ポリアミノ酸ウレタンで表面被覆されたポリテトラフルオロエチレン繊維からなる不織布シートは、ポリテトラフルオロエチレン繊維製不織布シート〔(株)巴川製紙所、トミーファイレックF、R−125〕を用い、その繊維表面を特開2001−136960号公報に記載の実施例1に記載の方法に従ってポリアミノ酸ウレタンで被覆することにより、作製されたものである。なお、モジュールA中の中空糸膜の本数は500本、中空糸膜の有効長は10cm、細胞固定基材の表面積は、140cm2 (10cm×14cm)とした。充填液として注射用蒸留水を該モジュールAに満たし、該モジュールAを、オートクレーブ滅菌器により121℃で20分間滅菌処理した。滅菌後のモジュールAを滅菌生理食塩水でプライミング処理し、細胞を充填可能な状態にした。
〔実施例1〕
モジュールAにおける細胞導入口5より、前記調製例記載の方法により得られたTTNT−1細胞縣濁液(細胞数:2.3×108個)を注入、充填し、細胞導入口5を三方活栓で封じた。なお、この細胞充填操作は、クリーンベンチ内で無菌的に行なった。体液導入口2と体液導出口3も装着した活栓により閉じ、その状態で37℃のインキュベーター中で4時間静置し、TTNT−1細胞を細胞固定基材4に接着させた。その後、TTNT−1細胞を充填したモジュールAにおける体液導入口2と体液導出口3にチューブ(商品名:JMSエキステンションチューブET−3、内径:3.5mm、ジェイ・エム・エス社製)をそれぞれ接続し、各チューブの先を、DMEM培地 500mLを入れた容器に浸した。チューブの途中には、ペリスタポンプを設置し、培地をモジュールAに循環できるようにした。
前記モジュールA、チューブ、DMEM培地を入れた容器およびペリスタポンプを、炭酸ガス濃度5%、温度37℃のインキュベーターに入れ、流速20mL/分で、モジュールAにDMEM培地を循環し、モジュールA内でのTTNT−1細胞の増殖を行なった。
24時間毎に前記容器の培地を交換し、培地の循環を継続した。なお、交換した培地中のグルコース濃度を、商品名:GLU2 Lタイプワコー(和光純薬株式会社製)により測定し、細胞の増殖の指標とした。
4日後、TTNT−1細胞のゲノム中の可逆性不死化遺伝子(hTERT)を特異的に切り出すことができるアデノベクターAxCANCre(理研ジーンバンク、RDB No.1748) MOI=50を、細胞導入口5から添加し、さらに同様のインキュベーションを3日間行ない、TTNT−1細胞のゲノムから可逆性不死化遺伝子を特異的に切り出した。なお、この3日間についても細胞数の指標としてグルコース消費量を測定した。また、TTNT−1細胞からの可逆性不死化遺伝子の切り出しは、細胞からの蛍光の消失により確認した。
その後、モジュールAを分解し、細胞が接着した細胞固定基材4を取り出し、前記DMEM培地 50mL中に移した。取り出した細胞固定基材4の一部を培地中に移した後、トリパンブルー染色法により細胞固定基材4に接着している細胞の生存率を測定した。また取り出した細胞固定基材4の一部から、トリプシン溶液(シグマ社製)を用いて、細胞を回収し、回収した細胞数を顕微鏡にて観察することで細胞固定基材4に接着していた細胞数(「固定細胞数」)を測定した。
〔比較例1〕
前記調製例の方法により得られたTTNT−1細胞懸濁液を、前記調製例と同様のローラーボトル型培養器中で実施例1と同様の炭酸ガス5%、温度37℃のインキュベーション操作条件で、24時間毎に培地を交換しながら、培養した。4日後、ローラーボトル型培養容器中にアデノベクターAxCANCreを添加して、さらに3日間培養を続け、TTNT−1細胞から可逆性不死化遺伝子を切り出した。その後、コラゲナーゼ(シグマ社製)で処理して細胞をローラーボトル型培養器から取り出し、可逆性不死化遺伝子が切除されたTTNT−1細胞を得た。
得られた可逆性不死化遺伝子切除後のTTNT−1細胞 4.1×108個を、モジュールAに注入して充填し、細胞導入口5を三方活栓で封じた。体液の導入口と導出口も装着した活栓により閉じ、その状態で37℃のインキュベーター中で4時間静置して細胞固定基材に細胞を接着させた。その後、直ちにモジュールAを分解して細胞が接着した細胞固定基材を取り出して培地中に移した後、実施例1と同様にして細胞生存率と固定細胞数を測定した。
〔比較例2〕
初代ブタ肝細胞を常法のコラゲナーゼ法により採取した。すなわち、麻酔下の体重18kgのブタに、門脈に挿入したカテーテルから、EDTA 0.02容積%溶液を注入して肝臓を潅流し、その後、コラゲナーゼ液(シグマ社製) 1000mLを肝臓に20分間潅流して肝臓を消化した。その後、肝臓を摘出し、肝細胞を遊離させ、4℃のハンクス液 500mlに分散させた。得られた分散液を、メッシュで濾過後、300×g、5分間遠心分離して上清を捨てた。沈殿した細胞にハンクス液 500mlを添加して分散させ、300×g、5分間遠心分離して上清を捨てる操作を2回繰り返してコラゲナーゼを除去した。得られた初代ブタ肝細胞をハンクス液に分散させて初代ブタ肝細胞縣濁液を調製した。得られた初代ブタ肝細胞の生存率をトリパンブルー染色法で測定した。その結果、初代ブタ肝細胞の生存率は、88%であった。
得られた初代ブタ肝細胞(細胞数:4×108個)をモジュールAに充填し、37℃で4時間静置して初代ブタ肝細胞を細胞固定基材に接着させた。その後、直ちにモジュールを分解して初代ブタ肝細胞が接着した細胞固定基材を取り出して培養液中に移した後、実施例1と同様にして細胞生存率と固定細胞数を測定した。
〔試験例1〕
実施例1、比較例1および比較例2におけるモジュールA内の細胞固定基材に固定化されていた細胞数および細胞生存率の結果を表1に示す。
なお、実施例1の結果は、モジュールA内で可逆性不死化ヒト肝細胞の増殖と不死化遺伝子の切り出しを行なったバイオ人工肝臓について、バイオ人工臓器として使用する直前の細胞数と細胞生存率を示す。また、比較例1の結果は、モジュールAの外で可逆性不死化遺伝子が切除された可逆性不死化ヒト肝細胞が充填されたバイオ人工臓器の使用直前の細胞数と細胞生存率に相当する。比較例2の結果は、初代ブタ肝細胞を充填したバイオ人工臓器の使用直前の細胞数と細胞生存率に相当する。
Figure 2007222391
その結果、表1に示されるように、実施例1では、充填から7日後の細胞数は3.9×108個であった。初めに充填した細胞数が2.3×108個であったので、7日間で可逆性不死化ヒト肝細胞がモジュール中でほぼ1.7倍に増殖したことが示された。
実施例1の細胞生存率は、比較例1および比較例2の細胞生存率と比較して高く、モジュール内で可逆性不死化細胞を増殖させ、モジュール内で該可逆性不死化細胞のゲノム中の可逆性不死化遺伝子を切り出すことにより、細胞生存率の高い良好なバイオ人工臓器を提供できることを示す。すなわち、比較例1や比較例2のように、バイオ人工臓器として使用に供する数時間前にトリプシン処理やコラゲナーゼ処理を行うことがないため、実施例1のバイオ人工臓器においては細胞生存率が高く維持されていた。
〔実施例2〕
モジュールA内において、合計7日間のインキュベーションが終了するところまで実施例1と同様の操作を行ない、可逆性不死化遺伝子が切除されたTTNT−1細胞をモジュールA内で調製したバイオ人工臓器Aを作製した。
得られたバイオ人工臓器Aに、塩化アンモニウムを添加してアンモニウムイオン濃度が500μg/dLになるように調製したDMEM培地 500mLを、炭酸ガス濃度5%、温度37℃のインキュベーター中でペリスタポンプを用いて流速20mL/分で24時間循環させた。
24時間循環前後の培地中のアンモニア濃度を臨床検査キットであるアンモニアテストワコー(和光純薬工業株式会社製、藤井・奥田法変法による比色法)を用いて測定し、バイオ人工臓器Aのアンモニア処理機能を評価した。
また、循環後のバイオ人工臓器Aを分解し細胞固定基材を取り出し、トリプシン溶液(シグマ社製)を用いて、可逆性不死化遺伝子が切除されたTTNT−1細胞を回収し、細胞固定基材に接着していた細胞数(「固定細胞数」)を計測した。また、細胞固定基材に接着していなかったモジュール内の細胞数を併せて計測し、それと固定細胞数との和を、「モジュール内総細胞数」として記録した。
〔実施例3〕
ポリアミノ酸ウレタンでコーティングされていない細胞固定基材を使用したこと以外は実施例2と同様の操作を行い、バイオ人工臓器Bを作製した。バイオ人工臓器Bについて、実施例2と同様にアンモニア処理機能と細胞数(固定細胞数およびモジュール内総細胞数)を測定した。
〔比較例3〕
前記比較例1と同様に、ローラーボトル型培養器内においてTTNT−1細胞の増殖と可逆性不死化遺伝子の切り出しを行ない、さらにトリプシン処理することにより、可逆性不死化遺伝子が切除された細胞を得た。得られた細胞をモジュールAに充填し、4時間静置して細胞を細胞固定基材に接着させるところまで比較例1と同様に行ない、バイオ人工臓器Cを作製した。
バイオ人工臓器Cについて、実施例2と同様に、アンモニア処理機能の評価と細胞数(固定細胞数およびモジュール内総細胞数)の計測を行なった。
〔試験例2〕
実施例2、実施例3および比較例3のアンモニア処理機能の評価結果および計測された細胞数(固定細胞数およびモジュール内総細胞数)を表2に示す。
Figure 2007222391
その結果、表2に示されるように、塩化アンモニウムを濃度が500μg/dLになるように添加した培地を実施例2のバイオ人工臓器Aに24時間循環したとき循環後の培地中のアンモニウムイオン濃度は、245μg/dLに低下し、アンモニア濃度低下率は、51%の優れた低下率を示した。
また、表2に示されるように、実施例3におけるバイオ人工臓器Bの場合もアンモニア濃度低下率は、39%であり、実施例2のバイオ人工臓器Aよりはやや劣るものの、優れたアンモニア処理機能を示した。
一方、比較例3のバイオ人工臓器Cでは、アンモニア低下率は、11%にとどまり、十分なアンモニア処理機能を有していなかった。
これらの結果より、モジュール内で可逆性不死化ヒト肝細胞から可逆性不死化遺伝子を切除することにより作製されたバイオ人工臓器AおよびBでは、使用直前にトリプシン処理する必要が無いため、該細胞の機能が高く維持されており、高いアンモニア処理機能を有していることが示された。また、表面部がポリアミノ酸ウレタンで構成される繊維を含む細胞固定基材を使用することにより、臓器としての機能において、より優れたバイオ人工臓器が作製され得ることが示された。
本発明により、例えば、肝不全患者の治療具として好適に使用することができるバイオ人工肝臓、糖尿病患者の治療具として好適に使用することができるバイオ人工膵臓等のバイオ人工臓器が提供される。
図1は、本発明に従うバイオ人工臓器の一例を示す模式図である。
符号の説明
1. 分離膜(例えば、中空糸膜)
2. 体液導入口
3. 体液導出口
4. 細胞固定基材(細胞収容部)
5. 細胞導入口
6. チャンバー
7. 動物細胞(動物由来の可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子が切り出されて生じた細胞)

Claims (8)

  1. (A)バイオ人工臓器用モジュールと、
    (B)動物細胞と、
    を備えてなり、該動物細胞(B)が、該バイオ人工臓器用モジュール(A)内に固定化されたものであり、かつ該動物細胞(B)が、該バイオ人工臓器用モジュール(A)内に固定化された動物由来の可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子を該バイオ人工臓器用モジュール(A)内で切り出して生じた細胞である、バイオ人工臓器。
  2. 該可逆性不死化細胞が該バイオ人工臓器用モジュール(A)内で増殖した細胞を含む、請求項1記載のバイオ人工臓器。
  3. 該可逆性不死化細胞が可逆性不死化ヒト細胞である、請求項1または2記載のバイオ人工臓器。
  4. 該バイオ人工臓器用モジュール(A)が、
    (a)体液導入口、体液導出口および少なくとも1つの細胞導入口を有するチャンバーと、
    (b)半透性を有する分離膜と、
    (c)細胞固定基材と、
    を少なくとも備えてなり、かつ、
    (1)該分離膜(b)および該細胞固定基材(c)が該チャンバー(a)内に収容され、
    (2)該分離膜(b)が、該チャンバー(a)内に空間(I)および(II)が形成されるように配置され、
    (3)該空間(I)が、該体液導入口および該体液導出口と連通し、かつ該体液導入口から導入される体液が該体液導出口から導出されるような体液の流路を形成し、
    (4)該空間(II)が、該細胞導入口と連通し、かつ該細胞固定基材(c)を収容する、
    構造を有する、請求項1〜3いずれか1項に記載のバイオ人工臓器。
  5. 該分離膜(b)が中空糸膜であり、該中空糸膜の内部に該空間(I)が形成され、かつ、該中空糸膜の外部に該空間(II)が形成されている、請求項4記載のバイオ人工臓器。
  6. 該細胞固定基材(c)が、少なくとも表面部がポリアミノ酸ウレタンで構成される繊維を含む、請求項4または5記載のバイオ人工臓器。
  7. (a)体液導入口、体液導出口および少なくとも1つの細胞導入口を有するチャンバーと、
    (b)半透性を有する分離膜と、
    (c)細胞固定基材と、
    を少なくとも備えてなり、かつ、
    (1)該分離膜(b)および該細胞固定基材(c)が該チャンバー(a)内に収容され、
    (2)該分離膜(b)が、該チャンバー(a)内に空間(I)および(II)が形成されるように配置され、
    (3)該空間(I)が、該体液導入口および該体液導出口と連通し、かつ該体液導入口から導入される体液が該体液導出口から導出されるような体液の流路を形成し、
    (4)該空間(II)が、該細胞導入口と連通し、かつ該細胞固定基材(c)を収容する、
    構造を有するバイオ人工臓器用モジュール(A)内に、動物由来の可逆性不死化細胞を該細胞導入口から導入して該細胞固定基材(c)に固定化し、増殖させ、ついで、該可逆性不死化細胞から可逆性不死化遺伝子を該バイオ人工臓器用モジュール(A)内で切り出すことを特徴とする、バイオ人工臓器の製造方法。
  8. 該分離膜(b)が中空糸膜であり、該中空糸膜の内部に該空間(I)が形成され、かつ、該中空糸膜の外部に該空間(II)が形成されている、請求項7記載の製造方法。
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