JP2003176688A - バッキング防止装置および支持装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、推進施工中の推進管設置時に発生す
る推進管列を後方に押し戻すバッキングを阻止する防止
装置と推進管の曲げや変形を防止する支持装置を提供す
るものである。 【構成】本発明は、発進坑口壁後方の推進管外周に推進
管の外径よりも大きな内径を有し内面が後方に向かって
傾斜して縮径した断面が梯形の環状体を固設し、前記環
状体と推進管が形成する隙間に円周方向の複数個所に配
置した上面が後方に向かって傾斜して小さくなった断面
梯形の楔形体を環状体の前方から挿入し、推進管の接続
時に前方の推進管列が後方に戻ろうとするのを防止する
バッキング防止装置である。また、バッキング防止装置
の楔形体の位置に対向する推進管の内面に、楔形体とほ
ぼ同面積の支持板が当接するように伸縮手段を備えた支
持装置である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、推進工事の管接続
中に先端掘進機の面板に作用する水圧や土圧によって発
生する推進管列の後方への戻りを防止するバッキング防
止装置と支持装置に関するものである。

【０００２】

【従来技術】推進工法は、推進管の先頭に設置した掘進
機によって、発進立坑側から地山を掘削しながら推進管
を地中に推進埋設していく方法である。施工条件が地下
水の多い軟弱な土質や大深度での推進施工では、掘進機
先端の面板に大きな水圧や土圧が作用し、後方の推進管
列には大きな押し戻し力（以下、バッキング力という）
が発生する。推進管１本分の推進施工が完了し、発進立
坑内に設置した元押しジャッキを縮小させると、掘進機
からのバッキング力が推進管列に作用し、推進管列が後
方へと押し戻される。このため、元押しジャッキの縮小
によって得られた空間がなくなり、次の推進管の据え付
けや接続が出来なくなる。

【０００３】このため、発進立坑内の前方で推進管の外
周をワイヤー等で締め付けて固定する方法や推進管の外
壁に複数個のインサートを埋め込んで、インサート部に
ボルト等でストッパーを固定する方法が用いられてい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記したバッ
キング防止方法で、ワイヤー等を用いる方法では大きな
バッキング力が得られず、完全に推進管列の後退を防止
できないという問題がある。また、インサート部にスト
ッパーを固定する方法は、発進立坑の後方から支柱等に
よりストッパーを支持する方法を用いると、比較的大き
な力を得ることが出来るが、複数個のストッパーを固定
するボルトが均等に作用することがなく、どれか１本に
集中して作用するためにあまり大きな力が得られないと
いう問題があった。

【０００５】このため、本発明は、大きなバッキング力
でも効率良く、安全に防止できるバッキング防止装置を
提供するものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、発進
立坑内の土留め壁に固設された発進坑口壁の後方部に設
置されるバッキング防止装置であって、発進坑口壁後方
の推進管外周に推進管の外径よりも大きな内径を有し内
面が後方に向かって傾斜して縮径した断面が梯形の環状
体を固設し、前記環状体と推進管が形成する隙間に円周
方向の複数個所に配置した上面が後方に向かって傾斜し
て小さくなった断面梯形の楔形体を環状体の前方から挿
入し、推進管の接続時に前方の推進管列が後方に戻ろう
とするのを防止するバッキング防止装置である。また、
バッキング防止装置の楔形体の位置に対向する推進管の
内面に、楔形体とほぼ同面積の支持板が当接するように
伸縮手段を備えた支持装置である。

【０００７】断面が梯形の環状体は、比較的強度の大き
い鋼材で製作され、内面に挿入される楔形体によって変
形したり破損しないように大きな断面を必要とする。単
に梯形断面で厚さを大きくする構造としても良いが、非
常に重量が大きくなって設置、撤去の作業環境が悪くな
ることから、Ｈ型鋼等をリング状に製作した補強体に固
設する構造とすることによって重量の軽減が行える。

【０００８】楔形体の材質は、環状体と推進管の外部に
形成された隙間に挿入されたときに、変形したり破損し
ないように強度のある鋼材で製作される。楔形体の上面
は、前記した環状体の内面と当接して摺動するように同
じ勾配で後方に向かって傾斜している。楔形体の下面に
は、推進管の外壁面との摩擦抵抗力を増大させるため
に、コンクリート管ではゴム等を接着させたり、鋼材と
コンクリートの合成管では下面にネジ状の凹凸をつける
方法を用いると、推進管への大きな保持力を得ることが
できる。

【０００９】環状体の推進方向への固設方法は、発進立
坑前方の土留め壁に固定具を取り付けて、環状体と緊結
材で連結して保持させる方法を用いても良いが、土留め
壁に大きな保持力が期待できないために、環状体と発進
立坑後方の土留め壁の間に鋼材や鋼管を設置して固設し
て支持する方法を用いると有効である。

【００１０】推進管内に設置される支持装置の位置は、
推進管の外周に挿入された楔形体と支持板の位置が合う
ように、決定される。支持板は、油圧ジャッキ等の伸縮
手段に支持されて放射方向に稼働可能となっている。伸
縮手段は、リング状の枠体に支持されている。枠体外部
の下方の両側面には、車輪が装着されて推進管内を移動
可能としている。

【００１１】本バッキング防止装置および支持装置の作
業手順としては、推進管１本分の推進施工が完了する
と、推進管内の支持装置の支持板を、推進管の外周に挿
入した楔形体位置に合わせるために移動させる。支持板
の位置が合致すると伸縮手段を伸長させて支持板を推進
管の内壁に当接させる。支持装置の設置が完了すると、
元押しジャッキが縮小される。元押しジャッキの縮小に
より、地中に推進埋設された推進管列は掘進機先端の面
板に作用するバッキング力によって後方へと移動しよう
とする。発進立坑前方の推進管外壁に当接した複数個の
楔形体は、推進管の外壁とともに後方に移動しようとす
るが、楔形体の後方に設けられた環状体の内面に食い込
み、推進管の外壁を加圧して摩擦力を発生させて推進管
の後方移動を阻止する。そして、推進管列の後退が防止
されて、推進管列後端に次の推進管を据え付けるスペー
スを確保できる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を
基に説明する。図１は、本発明のバッキング防止装置を
詳細に説明する断面図である。推進管４の外周には、推
進管４の外径よりも大きな径を有した環状体２が設けら
れている。前記環状体２は、内面が後方に向かって傾斜
して縮径した断面が梯形を有している。環状体２の外周
には、Ｈ型鋼等をリング状に製作した補強体５が固設さ
れ、環状体２の変形や破損を防止する。環状体２と推進
管４によって形成される隙間に、上面が後方に向かって
傾斜して小さくなった断面梯形の梯形体３が円周方向の
複数個所に前方から挿入される。この時、環状体２の内
面と楔形体３の上面は全面で当接して摺動できるように
同じ勾配で製作されている。円周方向に配置される楔形
体３の数は、バッキング力の大きさによって自由に増減
させることができる。バッキング力が比較的小さい場合
は、推進管４と梯形体３の摩擦力が均等に伝達できる２
箇所または３箇所が有効である。バッキング力が大きな
場合は、配置する梯形体３の数を多くし推進管４の外壁
にかかる力を分散させることによって、推進管４の破損
を防止することができる。バッキング防止装置１は以上
によって構成されている。

【００１３】環状体２および梯形体３の材質は、環状体
２と推進管４の隙間に梯形体３が挿入した時、双方に大
きな力が作用するため、変形や破損を生じないように比
較的強度のある鋼材によって製作されている。梯形体３
の下面には、推進管４の外周面との大きな摩擦抵抗力を
得るために、コンクリート管ではゴム等を接着させた
り、鋼材との合成管では下面にネジ状の凹凸を設けると
有効である。

【００１４】図２は、バッキング防止装置の全体を説明
する横断面図である。推進管４の外周には、所定の間隔
を置いてリング状の環状体２が設置されている。環状体
２の外周には、環状体の変形や破損を防止するために、
鋼材による補強体５が固設されている。推進管４と環状
体２の隙間には、３個の楔形体３が円周方向に均等に挿
入されている。

【００１５】図３は、本発明のバッキング防止装置の取
り付け状況を説明する平面図である。発進立坑前方の土
留め壁６には、推進管４の埋設位置に合わせて発進坑口
壁７が設置されている。前記発進坑口壁７の後方の推進
管４外周には、リング状の環状体２が設置されている。
推進管４の頂部には、環状体２と推進管４の隙間に前方
から楔形体３が挿入されている。環状体２は、環状体２
を支持して固定するために支持桿８によって、発進立坑
後方の土留め壁６から後端部が連結されている。

【００１６】図４は、本発明のバッキング防止装置と併
用して使用する支持装置を説明する横断面図である。推
進管４内には、バッキング防止装置１の楔形体３とほぼ
同じ面積を有した支持板１０が放射方向に伸縮できる伸
縮手段１１を備えた支持装置９が設置されている。支持
装置９は、車輪１２によって推進管４内を移動でき、支
持板１０が梯形体３の位置に対向する位置に合うように
移動させる。そして、伸縮手段１１である油圧ジャッキ
等を伸長して推進管４の内壁に当接させて支持させる構
造となっている。

【００１７】次に、本発明のバッキング防止装置と支持
装置の使用状況について説明する。推進管４の１本分の
推進施工が完了すると、先端掘進機の面板に作用する水
圧や土圧によって、推進管４列を後方に押しやるバッキ
ング力が作用する。バッキング力により推進管４は発進
坑側に後退しようとするが、推進管４の外壁に当接した
梯形体３が環状体２と推進管４の隙間に噛み込み、推進
管４列の後退を大きな摩擦力で阻止する。梯形体３が当
接する推進管４の外壁には、比較的大きな垂直力が作用
するため、推進管４の材質がコンクリート管等の曲げや
引っ張りに弱い管材では、梯形体３部分のコンクリート
に曲げや変形によるひび割れや破損が発生しないよう
に、梯形体３の位置と対向する推進管４に支持板１０を
当接させて推進管４に曲げや変形を起こさせない支持装
置９を併用して使用する。

【００１８】

【発明の効果】以上のように、本発明のバッキング防止
装置および支持装置により、推進管外周の円周方向に設
置した複数個の梯形体が推進管の外壁に有効に当接して
大きな摩擦力を得ることができ、大きなバッキング力に
対しても確実に防止することができるようになった。ま
た、梯形体から推進管にかかる大きな垂直力に対しても
推進管内壁に当接された支持装置の支持板により、推進
管に曲げや変形が発生せず、コンクリート管でも安全に
推進施工が行えるようになった。

【００１９】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のバッキング防止装置を詳細に説明する
断面図である。

【図２】バッキング防止装置の全体を説明する横断面図
である。

【図３】本発明のバッキング防止装置の取り付け状況を
説明する平面図である。

【図４】バッキング防止装置と併用して使用する支持装
置を説明する横断面図である。

【符号の説明】

１ バッキング防止装置 ２ 環状体 ３ 梯形体 ４ 推進管 ５ 補強体 ６ 土留め壁 ７ 発進坑口壁 ８ 支持桿 ９ 支持装置 １０ 支持板 １１ 伸縮手段 １２ 車輪 １３ 組立枠

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】発進立坑内の土留め壁に固設された発進坑
   口壁の後方部に設置されるバッキング防止装置であっ
   て、 発進坑口壁後方の推進管外周に推進管の外径よりも大き
   な内径を有し内面が後方に向かって傾斜して縮径した断
   面が梯形の環状体を固設し、前記環状体と推進管が形成
   する隙間に円周方向の複数個所に配置した上面が後方に
   向かって傾斜して小さくなった断面梯形の楔形体を環状
   体の前方から挿入し、推進管の接続時に前方の推進管列
   が後方に戻ろうとするのを防止することを特徴としたバ
   ッキング防止装置。
2. 【請求項２】請求項１記載のバッキング防止装置の楔形
   体の位置に対向する推進管の内面に、楔形体とほぼ同面
   積の支持板が当接するように伸縮手段を備えたことを特
   徴とする支持装置。