JP3735411B2 - トンネルの覆工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は覆工ライナーを地山に密着させることでトンネルの地山を覆工するトンネルの覆工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
トンネルの覆工はトンネルボーリングマシンを用いる方法とシールドマシンを用いる方法に大別される。
【0003】
前者の方法はマシンが移動した後に、地山形状に合う形鋼を親杭として地山に長さ方向に間隔をおいて周方向に配置し、形鋼間に横矢板を差し込むことにより、または形鋼間にコンクリートを吹き付けることにより覆工が行われるが、作業が人力で行われるため能率が悪い上、覆工前の地山の下での作業になるため地山の肌落ちの可能性があり、危険性が高い。
【0004】
後者の方法はシールドマシンのテール内で組み立てられた覆工ライナーをシールドマシンの掘進毎に既設のライナーに接合する作業を繰り返して行われるが、トンネルの削孔径がシールドマシンの外径より大きいことから、テール内で組み立てられた円筒状のライナーをそのままの状態で既設のライナーに接続するとすれば、ライナーと地山間に隙間が生じるため、ライナーと地山間にグラウト材を充填する必要がある。
【0005】
この発明は上記従来方法の問題を解消する覆工方法を提案するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明ではシールドマシンのテール内において、周方向に複数個に分割された形の覆工ライナーを円筒状に仮組みした状態でシールドマシンを掘進させる毎に、テール後方の、既にトンネルの地山に設置済みの覆工ライナーの前方に、仮組みされた円筒状の覆工ライナーを拡径して接続する作業を繰り返すことにより従来方法の問題を解消する。
【0007】
覆工ライナーを円筒状に仮組みする前に、テール位置の地山の底面にインバートライナーが設置される。インバートライナーの周方向の両端には下部覆工ライナーが仮止めされ、各下部覆工ライナーの他端に上部覆工ライナーが連結され、各上部覆工ライナーは既設の上部覆工ライナーに仮接続される。この状態でシールドマシンが掘進させられる。
【0008】
シールドマシンの掘進後、下部覆工ライナーのインバートライナーへの仮止めが解除され、下部覆工ライナーが地山に押し付けられてインバートライナーに接続される。上部覆工ライナーの、既設の上部覆工ライナーへの仮接続も解除され、周方向に隣接する上部覆工ライナー間の間隔が拡張させられ、上部覆工ライナーが地山に押し付けられる。
【0009】
この状態で周方向に互いに隣接する上部覆工ライナー間に間隔保持材が設置され、各上部覆工ライナーが間隔保持材に接続される。下部覆工ライナーと上部覆工ライナーは間隔保持材によって周方向に圧縮力が与えられることにより地山に密着する。
【0010】
その後、下部覆工ライナーが既設の下部覆工ライナーに接続され、上部覆工ライナーが既設の上部覆工ライナーに接続されることにより1サイクルの施工が終了する。
【0011】
覆工ライナーの仮組みがシールドマシン内で行われることにより地山の肌落ちによる危険は発生しない。
【0012】
地山の覆工作業は円筒状に仮組みされた覆工ライナーを、その径を拡大した状態で既設の覆工ライナーに接続するのみで完了するため、能率が向上する。
【0013】
またシールドマシンの内径より施工後の覆工ライナーの内径が拡大するため、トンネルの削孔径と覆工ライナーの内径との差が覆工ライナーの板厚の大きさだけになり、同一径の覆工を行うのに必要なトンネルの削孔径が縮小される。
【0014】
覆工ライナーが地山に密着した状態で覆工が完了することによりまた、覆工ライナーと地山間の隙間の発生はなく、覆工ライナーと地山間にグラウト材を充填する必要はない。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明は図1に示すようなシールドマシン1のテール2内において、周方向に複数個に分割された形の覆工ライナー4を円筒状に仮組みした状態でシールドマシン1を掘進させる毎に、テール2後方の、既にトンネルの地山に設置済みの覆工ライナー4の前方に、仮組みされた覆工ライナー4を拡径して接続する作業を繰り返すことでトンネルの地山を覆工する方法である。
【0016】
円筒状の覆工ライナー4は図10に示すように地山の底面に設置されるインバートライナー41と、これに隣接する2個の下部覆工ライナー42,42と、各下部ライナー42に隣接する2個の上部覆工ライナー43,43から構成される。
【0017】
図2〜図17により、シールドマシン1が1度に掘進する間に行われる1サイクルの施工手順を説明する。図2,図5,図10においては外周の円弧がトンネルの地山を、ハッチを施した円弧がテール2の断面を示す。
【0018】
シールドマシン1を一施工区間掘進させた後、図2に示すようにテール2位置の地山の底面にインバートライナー41を設置し、既設のインバートライナー41に接続する。インバートライナー41,41の接続は図3,図4に示す、シールドマシン1側の端面に形成された突起411 を反対側の端面に形成された溝412 に嵌合させることにより行われる。
【0019】
図3,図4にインバートライナー41の詳細を示すが、インバートライナー41には、シールドマシン1のシールド本体3の半径方向に螺入してインバートライナー41の外周から突出し、地山底面からの高さを調整する高さ調整ボルト5が付属する。図3中、破線は既設のインバートライナー41に反力を取りながらシールドマシン1を掘進させるスプレッダー6の位置を示す。
【0020】
インバートライナー41の設置に続いて図5に示すようにインバートライナー41の周方向の両端に下部覆工ライナー42,42を接合金具7により仮止めし、各下部覆工ライナー42の他端に、エレクター8で支持した状態で上部覆工ライナー43を連結金具9により連結する。上部覆工ライナー43は下部覆工ライナー42にトンネルの軸に平行な軸の回りに回転自在に連結される。図5のA部の詳細を図6に、B部の詳細を図7に示す。
【0021】
接合金具7はインバートライナー41と下部覆工ライナー42に跨る形をし、双方にボルト10,10で接合されることにより、テール2内で覆工ライナー4を円筒状に組み立てるときに下部覆工ライナー42をインバートライナー41に仮止めする働きをする。シールドマシン1の掘進後には接合金具7による下部覆工ライナー42の仮止めが解除される。
【0022】
連結金具9は下部覆工ライナー42と上部覆工ライナー43のそれぞれに重なる2枚の板がピンで回転自在に連結された蝶番状の形をし、覆工ライナー4の組み立て以後、下部覆工ライナー42と上部覆工ライナー43を互いにピン接合した状態に保つ。
【0023】
各上部覆工ライナー43は図5のC部の詳細図である図8及びその側面図である図9に示すように既設の上部覆工ライナー43との間に跨る支持金具11に仮接続されることにより既設の上部覆工ライナー43に支持される。
【0024】
支持金具11は両上部覆工ライナー43,43間で段差が付いたZ字状の形をし、それぞれにボルト10により接合され、後述のジャッキ12により周方向に隣接する上部覆工ライナー43,43間の間隔を拡張するまでの間、テール2内の上部覆工ライナー43の荷重を既設の上部覆工ライナー43に負担させる。
【0025】
テール2内での覆工ライナー4の仮組みは図10に示すように両上部覆工ライナー43,43が支持金具11により支持された状態で完了する。
【0026】
ここでシールドマシン1を掘進させ、仮組みされた上部覆工ライナー43を支持金具11に止めている仮組み側のボルト10を抜き取り、そのまま上部覆工ライナー43を支持金具11に支持させた状態で、図11及びそのD部の詳細図である図12に示すように接合金具7を貫通し、下部覆工ライナー42に螺入しているボルト10を利用して下部覆工ライナー42を地山に押し付ける。
【0027】
続いて図13及びそのE部の詳細図である図14に示すように周方向に隣接する上部覆工ライナー43,43間にジャッキ12を設置し、ジャッキ12により両上部覆工ライナー43,43間の間隔を拡張する。図15は図14の平面図であるが、図15中、下側に既設の上部覆工ライナー43を、上側に新設の上部覆工ライナー43を示す。上部覆工ライナー43,43間の間隔の拡張により各上部覆工ライナー43が地山に押し付けられ、それに伴い、ピン接合された下部覆工ライナー42も地山に押し付けられる。
【0028】
ジャッキ12により両上部覆工ライナー43,43間の間隔を拡張した状態で、図16に示すようにエレクター8によって両者間に間隔保持材13を設置し、図15に示すように各上部覆工ライナー43を間隔保持材13と既設の上部覆工ライナー43に接続すると共に、下部覆工ライナー42をインバートライナー41と既設の下部覆工ライナー42に接続して1サイクルの作業が終了する。
【0029】
下部覆工ライナー42は図16のF部の詳細図である図17に示すように下部覆工ライナー42の内周側からインバートライナー41の側面に鋼棒14やボルト10を螺入させ、鋼棒14やボルト10と下部覆工ライナー42の内周面間に楔状のプレート15を打ち込むことによりインバートライナー41からシールド本体3の外周側に反力を受け、地山に密着した状態でインバートライナー41に接続される。図3,図16中、16は枕木を示す。
【0030】
各下部覆工ライナー42が地山に密着した状態で、鋼棒14とプレート15によってインバートライナー41に接続されると同時に、上部覆工ライナー43,43間の間隔保持材13によって上部覆工ライナー43と下部覆工ライナー42に周方向に圧縮力が加えられることにより既設の覆工ライナー4に接続された覆工ライナー4は水圧に対して円筒状の形態を維持する。
【0031】
【発明の効果】
シールドマシンのテール内において、周方向に複数個に分割された形の覆工ライナーを円筒状に仮組みした状態で、シールドマシンを掘進させる毎に設置済みの覆工ライナーの前方に、仮組みされた円筒状の覆工ライナーを拡径して接続する作業を繰り返して地山の覆工を行う方法であり、覆工ライナーの仮組みをシールドマシン内で行うため、地山の肌落ちによる危険は発生しない。
【0032】
地山の覆工作業はテール内で円筒状に仮組みされた覆工ライナーを、その径を拡大した状態で既設の覆工ライナーに接続するのみで完了するため、能率が向上する。
【0033】
またシールドマシンの内径より施工後の覆工ライナーの内径が拡大するため、同一径の覆工を行うのに必要なトンネルの削孔径が縮小される。
【0034】
加えて覆工ライナーが地山に密着した状態で覆工が完了するため、覆工ライナーと地山間にグラウト材を充填する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】シールドマシンと覆工ライナーの関係を示した断面図である。
【図2】1サイクルの施工開始時の様子を示した断面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図2の次の工程を示した断面図である。
【図6】図5のA部の拡大図である。
【図7】図5のB部の拡大図である。
【図8】図5のC部の拡大図である。
【図9】図8の側面図である。
【図10】図5の次の工程を示した断面図である。
【図11】図10の次の工程を示した断面図である。
【図12】図11のD部の拡大図である。
【図13】図11の次の工程を示した断面図である。
【図14】図13のE部の拡大図である。
【図15】図14の平面図である。
【図16】図13の次の工程を示した断面図である。
【図17】図16のF部の拡大図である。
【符号の説明】
1……シールドマシン、2……テール、3……シールド本体、4……覆工ライナー、41……インバートライナー、411 ……突起、412 ……溝、42……下部覆工ライナー、43……上部覆工ライナー、5……高さ調整ボルト、6……スプレッダー、7……接合金具、8……エレクター、9……連結金具、10……ボルト、11……支持金具、12……ジャッキ、13……間隔保持材、14……鋼棒、15……プレート、16……枕木。
Claims (1)
- シールドマシンのテール内において、周方向に複数個に分割された形の覆工ライナーを円筒状に仮組みした状態でシールドマシンを掘進させる毎に、テール後方の、既にトンネルの地山に設置済みの覆工ライナーの前方に接続する作業を繰り返して地山を覆工する覆工方法であり、テール位置の地山の底面にインバートライナーを設置し、その周方向の両端に下部覆工ライナーを仮止めし、各下部覆工ライナーの他端に上部覆工ライナーを連結すると共に、各上部覆工ライナーを既設の上部覆工ライナーに仮接続した状態で、シールドマシンを掘進させた後、下部覆工ライナーのインバートライナーへの仮止めと、上部覆工ライナーの、既設の上部覆工ライナーへの仮接続を共に解除し、下部覆工ライナーを地山に押し付けてインバートライナーに接続し、周方向に互いに隣接する上部覆工ライナー間の間隔を拡張して上部覆工ライナーを地山に押し付け、その状態で周方向に隣接する上部覆工ライナー間に間隔保持材を設置して各上部覆工ライナーを間隔保持材に接続し、下部覆工ライナーを既設の下部覆工ライナーに接続すると共に、上部覆工ライナーを既設の上部覆工ライナーに接続するトンネルの覆工方法。
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