JP2003171736A - 加工性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

加工性に優れた高強度鋼板およびその製造方法

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JP2003171736A
JP2003171736A JP2002054606A JP2002054606A JP2003171736A JP 2003171736 A JP2003171736 A JP 2003171736A JP 2002054606 A JP2002054606 A JP 2002054606A JP 2002054606 A JP2002054606 A JP 2002054606A JP 2003171736 A JP2003171736 A JP 2003171736A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 約500〜1400MPa級の高強度及び超
高強度域において、優れた伸びフランジ性および全伸び
の両特性を兼ね備えた加工性に優れた高強度鋼板を提供
する。 【解決手段】 質量%で、C :0.06〜0.6%、
Si+Al:0.5〜3%、Mn:0.5〜3%、P
:0.15%以下(0%を含まない)、S :0.0
2%以下(0%を含まない)を含有し、且つ、母相組織
は、焼戻ベイナイトを全組織に対して占積率で15%以
上、及びフェライトを含有し、第2相組織は、残留オー
ステナイトを全組織に対して占積率で3〜30%含有す
ると共に、該残留オーステナイト中のC濃度(CγR
は0.8%以上であり、更にベイナイト/マルテンサイ
トを含有しても良い高強度鋼板である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は加工性に優れた高強
度鋼板に関し、詳細には、500〜1400MPa級の
高強度及び超高強度域において、優れた伸びフランジ性
および全伸びを兼ね備えた高強度鋼板に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】自動車や産業用機械等にプレス成形して
使用される鋼板は、優れた強度と延性を兼ね備えている
ことが要求され、この様な要求特性は近年、益々、高ま
っている。
【0003】従来より、強度と延性の両立を図った鋼板
として、フェライト素地中に主としてマルテンサイトか
らなる低温変態組織を含むフェライト・マルテンサイト
の複合組織鋼板[デュアルフェイズ(DP)鋼板]が知
られている(特開昭55−122820等)。上記鋼板
は、延性が良好なだけでなく、マルテンサイト生成域に
導入された多量の自由転位のために降伏伸びが現れず、
降伏応力が低くなる為、加工時の形状凍結特性が良好で
ある。上記組織に制御することにより、引張強度(T
S)が高く、伸び(El)特性にも優れた鋼板が得られ
るが、伸びフランジ性(局部的な延性)に劣るものであ
った。
【0004】一方、伸びフランジ性に優れる鋼板として
は、フェライト・ベイナイトの2相組織鋼板が知られて
いる(特開昭57−145965等)。これによれば、
上述したDP鋼板に比べ、伸びフランジ性に優れること
は勿論のこと、抵抗溶接性(特に熱影響部の軟化がな
く)、及び疲労特性にも優れる。しかしながら、伸び特
性に劣るという問題がある。
【0005】その他、組織中に残留オーステナイト(γ
R)を生成させ、加工変形中にγRが誘起変態(歪み誘起
変態:TRIP)して延性を向上させる残留オーステナ
イト鋼板が知られている。例えば特開昭60−4342
5には、複合組織鋼板としての組織を、体積分率で10
%以上のフェライトと10%以上のγRを有し、残部が
ベイナイトまたはマルテンサイトまたはそれらの混合組
織に制御することにより、高強度で、且つ極めて延性に
優れた鋼板が開示されている。上記組織とすることによ
り、γRの加工誘起変態効果に加えて、軟質のフェライ
トによる高延性が発揮される結果、延性はフェライト及
びγRによって、強度はベイナイトまたはマルテンサイ
トによって確保される旨記載されている。しかしなが
ら、上記鋼板においても、前記DP鋼と同様、伸びフラ
ンジ性に劣るという問題があった。
【0006】そこで、γRによる優れた強度・延性バラ
ンスを維持しつつ、しかも、伸びフランジ性(穴広げ
性)等の成形性にも優れた鋼板を提供すべく、種々の検
討がなされている。例えば特開平9−104947に
は、ミクロ組織として、フェライト、ベイナイト、γR
の3相で構成され、且つ、フェライト占有率とフェライ
ト粒径の比、及びγRの占有率を所定範囲に制御した鋼
板が開示されている。これは、「γRの増加は、強度−
延性バランスの向上、全伸びの向上をもたらすが、その
効果は、γRの微細化により高まること;更にγRが微細
化すると、伸びフランジ性などの成形性も向上する」と
いう知見に基づいてなされたものである。しかしなが
ら、伸びフランジ性の向上効果は低く、更に一層優れた
伸びフランジ性を有する高強度鋼板の提供が切望されて
いる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであり、その目的は、優れた伸びフ
ランジ性及び全伸びを兼ね備えた加工性に優れた高強度
鋼板、及び、この様な鋼板を効率よく製造することので
きる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し得た本
発明の加工性に優れた高強度鋼板とは、質量%で、C
:0.06〜0.6%、Si+Al:0.5〜3%、
Mn:0.5〜3%、P :0.15%以下(0%を含
まない)、S :0.02%以下(0%を含まない)を
含有し、且つ、母相組織は、焼戻ベイナイトを全組織に
対して占積率で15%以上、及びフェライトを含有し、
第2相組織は、残留オーステナイトを全組織に対して占
積率で3〜30%含有すると共に、該残留オーステナイ
ト中のC濃度(CγR)は0.8%以上であり、更にベ
イナイト/マルテンサイトを含有しても良いものである
ところに要旨を有するものである。
【0009】更に、本発明において、質量%で、 Mo:1%以下(0%を含まない),Ni:0.5%
以下(0%を含まない),Cu:0.5%以下(0%を
含まない),Cr:1%以下(0%を含まない)の少な
くとも一種を含有するもの; Ti:0.1%以下(0%を含まない),Nb:0.
1%以下(0%を含まない),V:0.1%以下(0%
を含まない)の少なくとも一種を含有するもの; Ca:30ppm以下(0ppmを含まない)、及び
/又はREM:30ppm以下(0ppmを含まない)
を含有するものは、いずれも本発明の好ましい態様であ
る。
【0010】また、上記残留オーステナイトがラス状を
呈しているものは、本発明の作用が一層高められるので
好ましい態様である。特に残留オーステナイト中に占め
るラス状残留オーステナイトの占積率が60%以上に制
御されたものが推奨される。
【0011】更に上記課題を解決し得た本発明鋼板の製
造方法は、上記(1)または(2)を包含するところに
要旨を有するものである。
【0012】(1)熱延工程、及び連続焼鈍工程または
めっき工程を施すことにより上記鋼板を製造する方法で
あって、該熱延工程は、(Ar3−50)℃以上の温度で
仕上圧延を終了する工程;及び10℃/s以上の平均冷
却速度で、Ms点以上Bs点以下まで冷却して巻取る工
程を包含し、該連続焼鈍工程またはめっき工程は、A1
点以上A3点以下の温度で10〜600秒加熱保持する
工程;3℃/s以上の平均冷却速度で、300℃以上4
80℃以下の温度まで冷却する工程;及び該温度域で1
秒以上保持する工程を包含する方法; (2)熱延工程、冷延工程、第一の連続焼鈍工程、及び
第二の連続焼鈍工程またはめっき工程を施すことにより
上記鋼板を製造する方法であって、該第一の連続焼鈍工
程は、A1点以上A3点以下の温度に加熱保持する工程;
及び10℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以上Bs
点以下の温度まで冷却する工程を包含し、該第二の連続
焼鈍工程またはめっき工程は、A1点以上A3点以下の温
度で10〜600秒加熱保持する工程;3℃/s以上の
平均冷却速度で、300℃以上480℃以下の温度まで
冷却する工程;及び該温度域で1秒以上保持する工程を
包含する方法。
【0013】ここで、上記(1)の熱延工程において、
(Ar3−50)℃以上の温度で熱延を終了する工程;7
00±100℃の範囲の温度域まで、30℃/s以上の
平均冷却速度で冷却する工程;該温度域で空冷を1〜3
0秒間行う工程;空冷後、Ms点以上Bs点以下の温度
まで、30℃/s以上の平均冷却速度で冷却して巻取る
工程を包含するものは、本発明の好ましい態様である。
【0014】また、上記(1)の連続焼鈍工程、または
上記(2)の第二の連続焼鈍工程において、A1点以上
3点以下の温度で10〜600秒加熱保持する工程;
(A1点〜600℃)の温度まで、15℃/s以下の平
均冷却速度で冷却する工程;300℃以上480℃以下
の温度まで、20℃/s以上の平均冷却速度で冷却する
工程;及び該温度域で1秒以上保持する工程を包含する
ものは本発明の好ましい態様である。
【0015】更に上記(1)または(2)のめっき工程
に入る前に、下記関係式(1)を満足する条件でFe系
プレめっき処理する工程を包含するものも本発明の好ま
しい態様である。
【0016】0.06W≦X … (1) [式中、Wは溶融Znめっきの付着量 (g/m2)、
XはFe系プレめっきの付着量(g/m2)を夫々意味
する] 尚、本発明における「加工性」とは、主に、伸びフラン
ジ性及び全伸びを意味するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明者らは、高い伸びフランジ
性を維持したまま、しかも、大きな全伸びを有する低合
金TRIP鋼板を提供すべく鋭意検討してきた。その結
果、転位密度の低い軟質ラス組織からなる焼戻ベイナイ
トとフェライトの混合組織を母相とし、第2相として、
残留オーステナイト(γR)相を有する組織に制御すれ
ば、所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完
成した。
【0018】まず、本発明を最も特徴付ける組織につい
て説明する。
【0019】上述したとおり、本発明の鋼板は、母相組
織として、焼戻ベイナイトを全組織に対して占積率で1
5%以上、及びフェライトを含有し;第2相組織とし
て、γ Rを全組織に対して占積率で3〜30%含有する
と共に、γR中のC濃度(CγR)は0.8%以上であ
り、更にベイナイト/マルテンサイトを含有しても良い
ものである。本発明組織の特徴について、従来の残留オ
ーステナイト鋼板と対比して説明すると、従来の残留オ
ーステナイト鋼板は、硬質相の周りの軟質相(母相)の
変形が進むと、該軟質相との界面にボイドが発生し易く
なる結果、伸びフランジ性が劣化するというデメリット
があった。これに対し、母相を従来のフェライトではな
く、本発明の如く、焼戻ベイナイトとフェライトの混合
組織とすることにより、伸びフランジ性が向上する。ま
た、本発明では、γR中のC濃度(CγR量)が0.8%
以上と高いため、TRIP(歪誘起変態加工)効果が、
より効果的に発揮され、伸び特性が向上する、というメ
リットもある。更にγRの形態を所定の軸比となる様に
制御されたラス状γRとすれば、従来のγRに比べ、伸び
や、特に伸びフランジ性の向上が可能となる。
【0020】以下、各組織について説明する。
【0021】焼戻ベイナイト:15%以上 本発明における「焼戻ベイナイト」は、以下の特徴を有
するものである。
【0022】第一に、本発明における「焼戻ベイナイ
ト」は、転位密度が少なく軟質であり、しかも、ラス状
組織を有するものを意味する。これに対し、マルテンサ
イトは転位密度の多い硬質組織である点で、上記焼戻ベ
イナイトとは相違し、両者は、例えば透過型電子顕微鏡
(TEM)観察などによって区別することができる。ま
た、従来のγR鋼板は、転位密度の少ない軟質のブロッ
ク状フェライト組織を有する点で、上記焼戻ベイナイト
を母相とする本発明鋼板とはやはり相違するものであ
る。
【0023】第二に、上記焼戻ベイナイトは、同一成分
系(基本成分であるC,Si,Mnを同じにした系)に
おけるポリゴナルフェライトに比べ、ビッカース硬さ
(Hv)が概して高いという傾向を有する。図1は、同
一成分の鋼種(C:0.1〜0.3%、Mn:1.0〜
2.0%、Si:1.0〜2.0%の範囲)における焼
戻ベイナイト及び焼戻マルテンサイトの硬度(縦軸)
と、ポリゴナルフェライトの硬度(横軸)とを対比した
グラフである。尚、ビッカース硬さは、レペラー腐食に
よる光学顕微鏡観察を行い、母相(灰色)部のビッカー
ス硬さ(Hv)を測定したものである(荷重1g)。参
考までに、同図に、y=xの直線を点線で示したが、こ
れにより、焼戻ベイナイトの硬度は、ポリゴナルフェラ
イトに比べて高いこと;この様な傾向は硬度が高くなる
につれ、顕著に見られることが分かる。
【0024】また、図2は、図1のデータを、C量:
0.1%、0.2%、0.3%の各場合に分けて整理し
たものであり、焼戻ベイナイト、焼戻マルテンサイト、
及びポリゴナルフェライトの硬度に及ぼすC量の影響を
表したものである。図2より、C量が同一のとき、焼戻
ベイナイトの硬度はポリゴナルフェライトに比べて高く
なる傾向があること:この様な傾向は、C量が高くなる
につれ、顕著に見られることが分かる。
【0025】これらの結果に基づき、焼戻ベイナイト及
び焼戻マルテンサイト、並びにポリゴナルフェライトに
おける硬度を、C,Mn,Siの基本成分との関係で表
すと、概ね、下記の関係式が得られる。
【0026】焼戻ベイナイトの硬度(Hv)≧500[C]+3
0[Si]+3[Mn]+50 ポリゴナルフェライの硬度(Hv)≒200[C]+30[Si]+3
[Mn]+50 式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。
【0027】ちなみに、上記関係式により得られる硬度
(計算値)は、実測値をほぼ反映したものとなっている
ことを確認している。また、上記関係式により得られる
硬度は、C量が0.1〜0.3%の場合のみならず、
0.3〜0.6%の場合、更には0.06〜0.1%の
場合においても同様に実測値を反映したものであること
を確認している。尚、焼戻ベイナイト硬度の上限は、成
分組成等によっても変化し得るが、概ね、500[C]+30[S
i]+3[Mn]+200、好ましくは500[C]+30[Si]+3[Mn]+150と
することが推奨される。
【0028】この様な特徴を有する焼戻ベイナイトは、
後記する通り、A3点以上(γ域)よりMs点以上Bs
点以下で焼入れされたベイナイトを、A1点以上(約7
00℃以上)、A3点以下の温度で焼鈍する等して得ら
れるものである。
【0029】そして、本発明では、上記焼戻ベイナイト
とフェライトの混合組織が、伸びフランジ性及び全伸び
の向上に極めて有効であることを見出したところに最大
の特徴があり、後記するγRと相俟って、従来の残留オ
ーステナイト鋼板における優れた強度・延性バランスを
確保しつつ、伸びフランジ性も著しく改善し得るという
メリットを奏するものである。特にC量を0.25〜
0.6%に調整すると、伸び特性が更に向上することも
分かった。
【0030】この様な作用を有効に発揮させる為には、
全組織に対して占積率で焼戻ベイナイトを15%以上有
することが必要である。尚、焼戻ベイナイトの量は、後
記するフェライト及びγRとのバランスによって定めら
れるものであり、所望の特性を発揮し得る様、適切に制
御することが推奨されるが、伸びフランジ性の向上とい
う観点からすれば、焼戻ベイナイトを40%以上、より
好ましくは50%以上、更により好ましくは60%以上
に制御することが推奨される。
【0031】フェライト 本発明における「フェライト」とは、ポリゴナルフェラ
イト、即ち、転位密度の少ないフェライトを意味する。
このフェライトについては、ポリゴナルフェライトを母
相とするTRIP型複合組織鋼板(PF鋼)が知られて
おり、伸び特性に優れる等のメリットはあるが、伸びフ
ランジ性に劣るという欠点がある。これに対し、上記フ
ェライトと焼戻ベイナイトの混合組織を有する本発明鋼
板は、優れた伸び特性を維持しつつ、しかも伸びフラン
ジ性も改善されている点で、従来の上記TRIP鋼板と
は、構成組織も特性も異なるものである。
【0032】本発明による作用を有効に発揮させる為に
は、フェライトは5%以上存在することが推奨される。
好ましくは10%以上である。特に伸び特性の向上とい
う観点からすれば、フェライトは多いことが好ましく、
30%以上、より好ましくは40%以上、更により好ま
しくは50%以上とすることが推奨される。但し、60
%を超えると、必要な強度を確保するのが困難となる
他、従来の複合組織やTRIP鋼と同様、フェライトと
第2相の界面より多くのボイドが発生し、伸びフランジ
性が劣化するため、その上限を60%とすることが推奨
される。尚、上限を30%未満に制御すると、フェライ
トと、焼戻ベイナイトや第2相(γR、マルテンサイト
/ベイナイト)との界面が減少し、ボイドの発生源が抑
えられるため、伸びフランジ性が向上するので、非常に
好ましい。
【0033】残留オーステナイト(γR):3〜30% γRは全伸びの向上に有用であり、この様な作用を有効
に発揮させる為には、全組織に対して占積率で3%以上
(好ましくは5%以上)存在することが必要である。一
方、多量に存在すると伸びフランジ性が劣化するので、
上限を30%に定めた。より好ましくは25%である。
【0034】ここで、従来のTRIP型鋼板におけるγ
Rは、旧オーステナイト粒界内にランダムな方位のγR
存在しているのに対し、本発明におけるγRは、同一パ
ケット内のブロック境界などに沿って同一方位を有する
γRが存在し易いという特徴がある。図3に、本発明に
おけるγRの特徴を模式化して表す。図3中、1は旧オ
ーステナイト粒界、2はパケット粒界、3はブロック境
界、4はベイナイトラスを夫々、示す。
【0035】このことを一層明らかにする目的で、図4
及び図5に、本発明鋼板(後記する表2のNo.3)及
び従来のγR鋼板(後記する表3のNo.2)におけ
る、板厚方向断面のEBSP写真(カラーマップ:倍率
1000倍)の結果を、夫々示す。ここで、EBSPと
は、Electron Back Scatter Diffraction Patternのこ
とであり、EBSP解析装置としてはTexSEM Laborato
ries社製の装置を使用した。
【0036】この写真によれば、結晶方位差の異なる板
厚方向のγRを色調差によって識別することができる。
即ち、通常の組織観察とは異なるEBSPによる結晶方
位観察手法でγRを調べると、見掛け上はほぼ同一の組
織を有しているにもかかわらず、従来鋼板(図5)で
は、旧オーステナイト粒界内にランダムな方位のγR
多数存在するのに対し、本発明鋼板(図4)では、或る
一定の領域内に、同一方位を有するγRが多数存在して
いることが確認できる。本発明鋼板のγRは、ブロック
境界等に沿って、同一方位を有するγRが生成するもの
と思われ、この点で、従来鋼板のγRとは、異なる形態
を有している。
【0037】また、本発明におけるγRの形態は、ラス
状であることが好ましい。ここで、「形態がラス状であ
る」とは、平均軸比(長軸/短軸)が2以上(好ましく
は4以上、より好ましくは6以上である)のものを意味
する。この様なラス状のγRは、従来のγRと同様のTR
IP効果を奏するのみならず、更に顕著な伸びフランジ
性向上効果を奏する点で極めて有用である。尚、上記平
均軸比の上限は特に規定されないが、TRIPの効果を
有効に発揮させる為には、γRの厚さが或る程度必要で
あること等を考慮すると、好ましい上限は30、より好
ましくは20である。
【0038】また、上記ラス状γRによる効果を有効に
発揮させる為には、γR中に占めるラス状γRの占積率は
多ければ多い程良い。具体的には、上述した焼戻ベイナ
イトやフェライトとのバランスによって定められるもの
であり、所望の特性を発揮し得る様、適切に制御するこ
とが推奨されるが、伸びフランジ性の向上という観点か
らすれば、ラス状γRの占積率を50%以上、より好ま
しくは60%以上、更により好ましくは70%以上、更
に一層好ましくは80%以上、更により一層好ましくは
85%以上とすることが推奨される。尚、γRのすべて
がラス状γRで構成されていても良いが、加熱設備や冷
却設備の制約等を考慮すると、実用レベルで、その上限
を95%程度とすることが推奨される。
【0039】更に上記γR中のC濃度(CγR)は0.8
%以上であることが推奨される。このCγRは、TRI
P(歪誘起変態加工)の特性に大きく影響し、0.8%
以上に制御すると、特に、伸び等の向上に有効である。
好ましくは1%以上、より好ましくは1.2%以上であ
る。尚、上記CγRの含有量は多い程好ましいが、実操
業上、調整可能な上限は、概ね1.6%と考えられる。
【0040】その他:ベイナイト及び/又はマルテンサ
イト(0%を含む) 本発明の鋼板は、上記組織のみ(即ち、焼戻ベイナイト
と、フェライトと、γ Rの混合組織)からなっていても
良いが、本発明の作用を損なわない範囲で、他の異種組
織として、ベイナイト及び/又はマルテンサイトを有し
ていても良い。これらの組織は本発明の製造過程で必然
的に残存し得るものであるが、少なければ少ない程、好
ましい。
【0041】次に、本発明鋼板を構成する基本成分につ
いて説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%で
ある。
【0042】C:0.06〜0.6% Cは、高強度を確保し、且つ、γRを確保するために必
須の元素である。詳細には、γ相中に充分なC量を含
み、室温でも所望のγ相を残留させる為に重要な元素で
あり、強度−伸びフランジ性のバランスを高めるのに有
用である。特にC量を0.25%以上添加すると、γR
量が増加し、更にγRへのC濃縮が高くなるので、極め
て高い強度−伸びバランスを得ることができる。
【0043】但し、0.6%を超えて添加すると、その
効果が飽和するのみならず、鋳造中への中心偏析などに
よる欠陥などが見られる。また、0.25%以上添加す
ると溶接性が劣化する。
【0044】従って、溶接性を主に考慮すれば、C:
0.06〜0.25%(より好ましくは0.2%以下、
更により好ましくは0.15%以下)に制御することが
好ましく、一方、点溶接を必要とせず高い伸び等が要求
される場合には、C:0.25〜0.6%(より好まし
くは0.3%以上)に制御することが推奨される。
【0045】Si+Al:0.5〜3% Si及びAlは、γRが分解して炭化物が生成するのを
有効に抑える元素である。特にSiは、固溶強化元素と
しても有用である。この様な作用を有効に発揮させる為
には、Si及びAlを合計で0.5%以上添加すること
が必要である。好ましくは0.7%以上、より好ましく
は1%以上である。但し、上記元素を合計で、3%を超
えて添加しても上記効果は飽和してしまい、経済的に無
駄である他、多量に添加すると、熱間脆性を起こす為、
その上限を3%とする。好ましくは2.5%以下、より
好ましくは2%以下である。
【0046】Mn:0.5〜3% Mnは、γを安定化し、所望のγRを得る為に必要な元
素である。この様な作用を有効に発揮させる為には、
0.5%以上添加することが必要である。好ましくは
0.7%以上、より好ましくは1%以上である。但し、
3%を超えて添加すると、鋳片割れが生じる等の悪影響
が見られる。好ましくは2.5%以下、より好ましくは
2%以下である。
【0047】P:0.15%以下(0%を含まない) Pは、所望のγRを確保するのに有効な元素である。こ
の様な作用を有効に発揮させる為には、0.03%以上
(より好ましくは0.05%以上)添加することが推奨
される。但し、0.1%を超えて添加すると二次加工性
が劣化する。より好ましくは0.1%以下である。
【0048】S:0.02%以下(0%を含む) SはMnS等の硫化物系介在物を形成し、割れの起点と
なって加工性を劣化させる元素である。好ましくは0.
02%以下、より好ましくは0.015%以下である。
尚、Sの低減化による加工性劣化の抑制作用は、Sを
0.003%以下まで低減すると飽和してしまい、逆に
Sを低減する為のコストが高くつくことを考慮すると、
下限は0.003%超、より好ましくは0.005%以
上にすることが推奨される。
【0049】本発明の鋼は上記成分を基本的に含有し、
残部:実質的に鉄及び不純物であるが、その他、本発明
の作用を損なわない範囲で、以下の許容成分を添加する
ことができる。
【0050】Mo:1%以下(0%を含まない),N
i:0.5%以下(0%を含まない),Cu:0.5%
以下(0%を含まない),Cr:1%以下(0%を含ま
ない)の少なくとも一種 これらの元素は、鋼の強化元素として有用であると共
に、γRの安定化や所定量の確保に有効な元素である。
この様な作用を有効に発揮させる為には、Mo:0.0
5%以上(より好ましくは0.1%以上)、Ni:0.
05%以上(より好ましくは0.1%以上)、Cu:
0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)、C
r:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)
を、夫々添加することが推奨される。但し、Mo及びC
rは1%、Ni及びCuは0.5%を超えて添加しても
上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より
好ましくはMo:0.8%以下、Ni:0.4%以下、
Cu:0.4%以下、Cr:0.8%以下である。
【0051】Ti:0.1%以下(0%を含まない),
Nb:0.1%以下(0%を含まない),V:0.1%
以下(0%を含まない)の少なくとも一種 これらの元素は、析出強化及び組織微細化効果があり、
高強度化に有用な元素である。この様な作用を有効に発
揮させる為には、Ti:0.01%以上(より好ましく
は0.02%以上)、Nb:0.01%以上(より好ま
しくは0.02%以上)、V:0.01%以上(より好
ましくは0.02%以上)を、夫々添加することが推奨
される。但し、いずれの元素も0.1%を超えて添加す
ると上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。
より好ましくはTi:0.08%以下、Nb:0.08
%以下、V:0.08%以下である。
【0052】Ca:30ppm以下、及び/又はRE
M:30ppm以下(0ppmを含まない) Ca及びREM(希土類元素)は、鋼中硫化物の形態を
制御し、加工性向上に有効な元素である。ここで、本発
明に用いられる希土類元素としては、Sc、Y、ランタ
ノイド等が挙げられる。上記作用を有効に発揮させる為
には、夫々、3ppm以上(より好ましくは5ppm以
上)添加することが推奨される。但し、30ppmを超
えて添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無
駄である。より好ましくは25ppm以下である。
【0053】次に、本発明鋼板を製造する方法について
説明する。
【0054】本発明の製造方法は、代表的に下記二つの
方法を包含するものである。
【0055】(1)[熱延工程]→[連続焼鈍工程また
はめっき工程] この方法は、熱延工程、及び連続焼鈍工程またはめ
っき工程を経由して所望の鋼板を製造する方法である。
このうち熱延工程の説明図を図6に、連続焼鈍また
はめっき工程の説明図を図7に、夫々示す。
【0056】熱延工程 上記熱延工程は、(Ar3−50)℃以上の温度で仕上圧
延を終了する工程;及び10℃/s以上の平均冷却速度
で、Ms点以上Bs点以下まで冷却して巻取る工程を包
含するものである。この熱延条件は、所望の母相組織
(焼入ベイナイトとフェライトの混合組織)を得る為に
設定されたものである。
【0057】まず、熱延仕上温度(FDT)は(Ar3
50)℃以上、好ましくはAr3点以上の温度とすること
が推奨される。これは、引続き実施される「Ms点以上
Bs点以下の冷却」と共に、所望の母相組織を得る為で
ある。
【0058】尚、第2相組織であるγRの形態をラス状
にする為には、熱延時の加熱温度(SRT)を高めに制
御することが推奨される。特に、γR中に占めるγRの占
積率を本発明の好ましい範囲に制御するには、熱延工程
における加熱温度(SRT)を1150℃以上(より好
ましくは1200℃以上、更により好ましくは1250
℃以上)とすることが有効である。ラス状γRは、熱延
時に形成される焼入母相組織のラス間隔が細かく、且
つ、該母相組織のラス界面の歪エネルギーが大きい程、
生成され易いことから、上記の如く熱延時の加熱温度
(SRT)を高温に設定すれば所望の形態に制御し易く
なる。上記SRTの制御に加え、熱延後の平均冷却速度
を速くする(焼入性を高める)ことも有効な形態制御方
法である(後記する)。これにより、熱延中または熱延
仕上後のオーステナイト粒径が大きくなり、焼入性が高
まる結果、その後の焼戻焼鈍工程及びオーステンパ処理
によって生成するγRの形態がラス状となる比率が一層
高まるからである。更に、熱延仕上温度(FDT)をA
r3点以上の温度に制御すれば、熱延全般にわたって高温
となり、焼入性が一層高められる為、ラス状γRの生成
が一層促進される。
【0059】尚、上記加熱温度の上限は特に限定されな
いが、設備上の制約等を考慮すると、1350℃以下
(より好ましくは1300℃以下)に制御することが推
奨される。
【0060】上記熱延仕上げの後、冷却する。本発明で
は、冷却速度(CR)を制御することにより、冷却中に
フェライトを一部生成させて(α+γ)の2相域とし、
更にMs点以上Bs点以下の温度まで冷却することによ
り、所望の混合組織を得ることができる。
【0061】ここで、上記冷却条件としては、下記
(a)、好ましくは(b)の方法が挙げられる。
【0062】(a)一段冷却:即ち、10℃/s以上
(好ましくは20℃/s以上)の平均冷却速度で、パー
ライト変態を避けてMs点以上Bs点以下の温度まで冷
却する。このとき、平均冷却速度を適切に制御すること
により、所望の混合組織(焼入ベイナイト+フェライ
ト)を得ることができる。尚、本発明では、フェライト
を5%以上30%未満に制御することが推奨されるが、
この場合には、平均冷却速度を30℃/s以上に制御す
ることが好ましい。
【0063】また、上述した通り、熱延後の平均冷却速
度は、フェライトの生成のみならず、最後のγRの形態
にも影響を与え、平均冷却速度が速ければ(好ましくは
30℃/s以上、より好ましくは50℃/s以上)、ラ
ス状を呈することになる。尚、平均冷却速度の上限は特
に限定されず、大きければ大きい程良いが、実操業レベ
ルとの関係で、適切に制御することが推奨される。
【0064】更に、冷却中に所望の混合組織を一層効率
よく生成させる為には、(b)二段冷却:即ち、70
0±100℃の範囲の温度域(好ましくは700±50
℃)まで、30℃/s以上の平均冷却速度(CR1)で
冷却する工程;該温度域で空冷を1〜30秒間行う工
程;空冷後、Ms点以上Bs点以下の温度まで、30
℃/s以上の平均冷却速度(CR2)で冷却して巻取る
工程を包含することが推奨される。この様に段階的に冷
却することにより、転位密度の低いポリゴナル・フェラ
イトを一層確実に生成させることができる。
【0065】ここで、の温度域及びの温度域では、
共に、30℃/s以上、好ましくは40℃/s以上の平
均冷却速度で冷却することが推奨される。これにより、
ラス状γRの生成も促進されるからである。尚、当該平
均冷却速度の上限は特に限定されず、大きければ大きい
程良いが、実操業レベルとの関係で、適切に制御するこ
とが推奨される。
【0066】また、の温度域では、空冷を1秒以上、
好ましくは3秒以上行うことが好ましく、これにより所
定のフェライト量が効率よく得られる。但し、空冷時間
が30秒を超えると、フェライト量が好ましい範囲を超
えて生成され、所望の強度が得られない他、伸びフラン
ジ性も劣化する。好ましくは20秒以下である。
【0067】また、巻取温度(CT)は、Ms点以上B
s点以下[計算式:Ms=561−474×[C]−3
3×[Mn]−17×[Ni]−17×[Cr]−21
×[Mo];Bs=830−270×[C]−90×
[Mn]−37×[Ni]−70×[Cr]−80×
[Mo];式中、[ ]は各元素の質量%である]にす
ることが必要である。Bs点を超えると所望の焼入ベイ
ナイトが得られず、一方、Ms点を下回ると焼戻マルテ
ンサイトが生成するからである。
【0068】尚、熱延工程では、所望の母相組織を得る
為に、上記の各工程を適切に制御することが推奨される
が、その他の工程、例えば加熱温度等は、通常実施され
る条件(例えば約1000〜1300℃)を適宜選択す
れば良い。
【0069】続焼鈍工程またはめっき工程 上記の熱延に引続き、連続焼鈍またはめっきを行う。
但し、熱延後の形状が悪いときには形状修正の目的で、
上記の熱延を行った後、当該の連続焼鈍またはめっ
きを行う前に、冷延処理しても良い。ここで、冷延率は
1〜30%とすることが推奨される。30%を超えて冷
間圧延すると、圧延荷重が増大し、冷間圧延が困難とな
るからである。
【0070】上記連続焼鈍またはめっきは、A1点以上
3点以下の温度で10〜600秒加熱保持する工程;
3℃/s以上の平均冷却速度で、300℃以上480℃
以下の温度まで冷却する工程;及び該温度域で1秒以上
保持する工程を包含する。これらの条件は、熱延工程で
生成した母相組織を焼戻して所望の混合組織(焼戻ベイ
ナイトとフェライトの混合組織)を得ると共に、第2相
(γR)を得る為に設定されたものである。
【0071】まず、A1点以上A3点以下の温度(図7
中、T3)で10〜600秒(図7中、t3)均熱する
ことにより、所望の混合組織及びγRを生成させる(2
相域焼鈍)。上記温度を超えると、すべてγとなってし
まい、一方、上記温度を下回ると、所望のγ量が得られ
ないからである。更に、上記加熱保持時間(t3)の制
御は、所望の組織を得る為に、特に重要である。10秒
未満では、焼戻が不足し、所望の母相組織及びγ量が得
られないからである。好ましくは20秒以上、より好ま
しくは30秒以上である。尚、600秒を超えると、焼
戻ベイナイトの特徴であるラス状組織が維持できなくな
り、機械的特性が劣化する。好ましくは500秒以下、
より好ましくは400秒以下である。
【0072】次いで、平均冷却速度(CR)を、3℃/
s以上(好ましくは5℃/s以上)に制御し、パーライ
ト変態を避けながら、300℃以上(好ましくは350
℃以上)480℃以下(好ましくは450℃以下)の温
度(ベイナイト変態:図7中、T4)まで冷却し、更
に、この温度域で1秒以上(好ましくは5秒以上:図7
中、t4)保持する(オーステンパ処理)。これによ
り、γRへのC濃縮を、多量に且つ極めて短時間に得る
ことができる。
【0073】ここで、平均冷却速度が上記範囲を下回る
と、所望の組織が得られず、パーライト等が生成する。
尚、その上限は特に規定されず、大きければ大きい程良
いが、実操業レベルとの関係で、適切に制御することが
推奨される。
【0074】尚、冷却中に所望のCγR量を一層効率よ
く生成させる為には、上記冷却工程を、(A1点〜6
00℃)の温度(Tq)まで、15℃/s以下の平均冷
却速度で冷却する工程;及び300℃以上480℃以
下の温度まで、20℃/s以上の平均冷却速度で冷却す
る工程を包含する二段冷却法を採用することが推奨され
る。
【0075】このうち、上記の温度域まで、15℃/
s以下(好ましくは10℃/s以下)の平均冷却速度で
冷却すると、まず、フェライトが生成し、フェライト中
のCがγに濃縮される。次に、上記の温度域まで、2
0℃/s以上(好ましくは30℃/s以上、より好まし
くは40℃/s以上)の平均冷却速度で冷却すると、γ
がパーライトに変態することが抑制され、γが低温でも
残留する結果、所望のγR組織が得られる。尚、当該平
均冷却速度の上限は特に限定されず、大きければ大きい
程好ましいが、実操業レベルとの関係で、適切に制御す
ることが推奨される。
【0076】上記の如く冷却し、オーステンパ処理する
が、特にオーステンパ処理温度(T4)は、所望の組織
を確保して本発明の作用を発揮させるのに重要である。
上記温度範囲に制御すれば、安定且つ多量のγRが得ら
れ、これにより、γRによるTRIP効果が発揮され
る。これに対し、300℃未満では、マルテンサイト相
が存在し、一方、480℃を超えるとベイナイト相が多
量に増加する。
【0077】尚、上記保持時間(t4)の上限は特に限
定されないが、オーステナイトがベイナイトに変態する
時間を考慮すると、3000秒以下、好ましくは200
0秒以下に制御することが推奨される。
【0078】また、上記工程では、所望の混合組織及び
γRの他、本発明の作用を損なわない範囲で、更にベイ
ナイト及び/又はマルテンサイト組織が生成していても
構わない。また、所望の組織を著しく分解させることな
く、本発明の作用を損なわない範囲で、めっき、更には
合金化処理しても良い。
【0079】尚、合金化溶融Znめっき鋼板を製造する
場合には、前記のめっきを行う前に、所定のFe系プ
レめっきを行うことが推奨される。これにより、鋼板表
面に、Siの表面濃化による悪影響を受けないFe系め
っき層が形成され、合金化溶融Znめっき層表面に存在
する粗大なZn−Fe合金結晶粒の数が著しく低減する
結果、低温でも鋼板とZnめっき層との拡散による合金
化処理が迅速に行われ、安定して高い伸び特性を得るの
に有効なγRが効率よく得られるのみならず、Siの多
量添加による弊害[Si系酸化物による耐パウダリング
性劣化、不めっき、めっき表面の摺動性(滑り特性)低
下等]等も防止できるからである。
【0080】ここで、合金化溶融Znめっき層表面に存
在する粗大なZn−Fe合金結晶粒とは、具体的には、
Zn−Fe合金結晶粒の長片の長さが短片の長さの2倍
以下であり、且つ、平均粒径4μm以上の結晶粒を意味
する。Fe系プレめっきにより、この様な粗大な結晶粒
の個数を5個以下(好ましくは3個以下)/70μm×
50μmに抑制することができる。尚、上記Zn−Fe
合金結晶粒の平均粒径は、合金めっき層表面をSEM
(走査型電子顕微鏡)観察(1500倍)し、70μm
×50μmの視野中に存在する該結晶粒の最大長さ方向
に測定される長さと、該長さ方向と直交する方向の長さ
との平均長さを算出して定められるものである。
【0081】具体的には、上記(イ)Fe系プレめっき
は、連続めっきライン[CGL:焼鈍→(ロ)溶融Zn
めっき(前記と同じ)→(ハ)合金化という一連のラ
イン]通板の前に行われる。
【0082】以下、上記(イ)〜(ハ)の各工程につい
て説明する。
【0083】(イ)Fe系プレめっき工程 上記(イ)のFe系プレめっきは、下記関係式(1)を
満足する条件で処理するものである。
【0084】0.06W≦X … (1) [式中、Wは溶融Znめっきの付着量 (g/m2)、
XはFe系プレめっきの付着量(g/m2)を夫々意味
する] まず、Fe系プレめっきの付着量(X)は、溶融Znめ
っきの付着量(W)との関係で、Xを0.06W以上に
制御する。これは、Xが0.06W未満になると、合金
化の進行に伴い、Siが鋼板表面に濃化する為、めっき
表面の摺動性に悪影響を及ぼす粗大なZn−Fe合金結
晶粒の生成を招くからである。好ましくは0.08W以
上、より好ましくは0.10W以上である。その上限
は、めっき表面の摺動性向上という観点からすれば特に
限定されないが、Xが多過ぎるとコストが上昇し、生産
性も低下することから、上限を0.30W、好ましくは
0.28W以下、より好ましくは0.25W以下に制御
することが推奨される。
【0085】上記関係式(1)を満足する条件でFe系
プレめっきする為には、特に電解時間に留意しながら、
通常のめっき処理を行うことが推奨される。具体的に
は、めっき浴の組成(FeSO4・7H2O:300〜4
50g/L)、めっき浴pH(1.7〜2.6)、めっ
き液温:40〜70℃、電流密度:10〜250A/d
2とし、所望のめっき付着量に応じて、電解時間を適
切に制御することが推奨される。
【0086】上記のFe系プレめっきを行った後、溶融
Znめっきをし、更に合金化処理しているので、めっき
表層部分には、該Fe系プレめっきは消失するが、鋼板
と合金化溶融Znめっき層の界面には、本発明の作用を
損なわない範囲で該Fe系プレめっき層が残存していて
も良い。
【0087】(ロ)溶融Znめっき工程 上記Fe系めっきを行った後、焼鈍してから、上記の
溶融Znめっきを行うが、その詳細は、前述のに記載
した通りである。
【0088】尚、上記溶融Znめっき工程では、めっき
浴中有効Al濃度を0.08〜0.12質量%に、めっ
き浴温度を445〜500℃の範囲に夫々、制御するこ
とが推奨される。これにより、合金化が促進され、耐パ
ウダリング性も著しく向上するからである。
【0089】まず、めっき浴中有効Al濃度は0.08
〜0.12%とすることが好ましい。ここで、「めっき
浴中有効Al濃度」とは、めっき浴中に含まれるフリー
のAlを意味し、詳細には下記式で表されるものであ
る。
【0090】[有効Al濃度]=[Total Al濃度]−
[めっき浴中Fe濃度(%)] 一般に溶融Znめっき工程では、めっき浴有効Al濃度
を約0.08〜0.14%の範囲に制御している。しか
しながら、上記(イ)〜(ハ)の一連の方法では、所望
のγRを得る目的で合金化温度を低く設定している(後
記する)為、Al濃度が高くなると合金化しなくなる。
従って、本発明ではAl濃度の上限を、好ましくは0.
12%(より好ましくは0.11%)に制御する。但
し、Al濃度が0.08%未満になると耐パウダリング
性が低下する。より好ましくは0.09%以上である。
【0091】更に、めっき浴温度は445〜500℃の
範囲に制御することが好ましい。一般的なめっき浴温度
は430〜500℃であるが、本発明では、合金化を抑
制するSiを多量に添加している為、合金化を促進し、
且つ、耐パウダリング性を高める目的で、上記範囲に設
定した次第である。445℃未満では表面にη層(純亜
鉛)が残存してしまう。より好ましくは450℃以上で
ある。一方、500℃を超えると耐パウダリング性が低
下する。より好ましくは490℃以下である。
【0092】(ハ)合金化処理工程 合金化処理は、400〜470℃で5〜100秒間行う
ことが推奨される。合金化温度が低くなると合金化速度
が遅く、生産性が低下する。一方、合金化温度が高くな
ると、生成したγRが消失してしまう。また、合金化処
理時間が短いと合金化せず、表面にη層(純亜鉛)が残
存してしまう。逆に合金化時間が長くなると生産性が低
下する。
【0093】以上、合金化溶融Znめっき鋼板の製造に
当たり、Fe系プレめっきを経由する好ましい態様につ
いて説明したが、このFe系プレめっきは、合金化溶融
Znめっき鋼板を製造する場合のみならず、溶融Znめ
っき鋼板を製造する場合においても適用することができ
る。即ち、溶融Znめっき鋼板を製造する場合におい
て、前述した(イ)Fe系プレめっき、及び(ロ)溶融
Znめっきを行えば、鋼板表面に、Siの表面濃化によ
る悪影響を受けないFe系めっき層が形成される結果、
安定して高い伸び特性を得るのに有効なγRが効率よく
得られるのみならず、Siの多量添加による弊害等を防
止できる点で、極めて有用である。
【0094】(2)[熱延工程]→[冷延工程]→[第
一の連続焼鈍工程]→[第二の連続焼鈍工程またはめっ
き工程] 上記(2)の方法は、熱延工程、冷延工程、第一の連続
焼鈍工程、および第二の連続焼鈍工程またはめっき工程
を経て、所望の鋼板を製造する方法である。このうち上
記方法を特徴付ける第一の連続焼鈍工程の説明図を図8
に示す。
【0095】まず、熱延工程、および冷延工程を実施す
るが、これらの工程は特に限定されず、通常、実施され
る条件を適宜選択して採用することができる。上記
(2)の方法では、これら熱延工程や冷延工程により、
所望の組織を確保するものではなく、その後に実施する
第一の連続焼鈍工程、および第二の連続焼鈍工程または
めっき工程を制御して所望の組織を得るところに特徴が
あるからである。
【0096】具体的には、上記熱延工程としては、Ar3
点以上で熱延終了後、平均冷却速度約30℃/sで冷却
し、約500〜600℃の温度で巻取る等の条件を採用
することができる。また、冷延工程では、約30〜70
%の冷延率の冷間圧延を施すことが推奨される。勿論、
これに限定する趣旨では決してない。
【0097】次に、上記(2)の方法を特徴付ける第
一の連続焼鈍工程、および第二の連続焼鈍工程または
めっき工程について説明する。
【0098】第一の連続焼鈍工程(最初の連続焼鈍工
程) 上記工程は、A1点以上A3点以下の温度に加熱保持する
工程;及び10℃/s以上の平均冷却速度で、Ms点以
上Bs点以下の温度まで冷却する工程を包含する。これ
らの条件は、所望の母相組織を得る為に設定されたもの
である。
【0099】まず、A1点以上A3点以下の温度(図8
中、T1)に均熱した後、平均冷却速度(CR)を10
℃/s以上(好ましくは20℃/s以上)に制御し、M
s点以上Bs点以下の温度(図8中、T2)まで冷却す
ることにより、パーライト変態を避けながら、所望の混
合組織(焼入ベイナイト+フェライト)を得る。尚、本
発明では、フェライトを5%以上30%未満に制御する
ことが推奨されるが、この場合には、平均冷却速度を3
0℃/s以上に制御することが好ましい。
【0100】また、上記平均冷却速度は、フェライトの
生成のみならず、最後のγRの形態にも影響を与え、平
均冷却速度が速ければ(好ましくは30℃/s以上、よ
り好ましくは50℃/s以上)、ラス状を呈することに
なる。尚、平均冷却速度の上限は特に限定されず、大き
ければ大きい程良いが、実操業レベルとの関係で、適切
に制御することが推奨される。
【0101】第二の連続焼鈍工程(後の連続焼鈍工
程)またはめっき工程 上記工程は、A1点以上A3点以下の温度で10〜600
秒加熱保持する工程;3℃/s以上の平均冷却速度で、
300℃以上480℃以下の温度まで冷却する工程;及
び該温度域で1秒以上保持する工程を包含する。
【0102】上記工程は、前述した(1)の方法におけ
る連続焼鈍工程またはめっき工程と同じであり、前記
第一の連続焼鈍工程で生成した混合母相組織を焼戻し
て所望の(焼戻ベイナイト+フェライト)組織を得ると
共に、第2相(γR)を生成させる為に設定されたもの
である。
【0103】尚、合金化溶融Znめっき鋼板を製造する
場合には、前述した(イ)〜(ハ)の一連の方法を採用
することが推奨される。これにより、合金化溶融Znめ
っき層の表面に存在する「粗大な結晶粒」の個数が抑制
される結果、γRによる延性向上作用を維持しつつ、め
っき表面の摺動性にも優れた鋼板が得られるからであ
る。その詳細は前述した方法を参照すれば良い。
【0104】以下実施例に基づいて本発明を詳述する。
ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、
前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは
全て本発明の技術範囲に包含される。
【0105】
【実施例】実施例1:成分組成の検討(その1) 本実施例では、C量が0.25%以下の低C成分系鋼種
[強度(TS)×伸びフランジ性(λ)が高く、且つ、
溶接性も考慮した系]を中心に、成分組成を変化させた
場合における機械的特性の影響について調べた。具体的
には、表1に記載の成分組成からなる供試鋼(表中の単
位は質量%)を真空溶製し、実験用スラブとした後に、
前述した(1)の方法(熱延→連続焼鈍)に従って、板
厚2.0mmの熱延鋼板を得た。
【0106】具体的には、各スラブを1150℃で30
分間加熱した後、熱延時の加熱温度(SRT)を115
0℃、熱延時の仕上温度(FDT)を850℃とし、5
0℃/sの平均冷却速度で室温まで冷却した(熱延工
程)後、2相域にて120秒焼鈍し、次いで、平均冷却
速度30℃/sで、400℃まで冷却して30秒保持
(オーステンパ処理)する条件を基本条件として実施し
た。
【0107】この様にして得られた鋼板について、引張
強度(TS)、伸び[全伸びのこと(EI)]、降伏強
度(YP)、及び伸びフランジ性(穴広げ性:λ)を、
下記要領で夫々測定した。
【0108】まず、引張試験はJIS5号試験片を用
い、引張強度(TS)、伸び(EI)、及び降伏強度
(YP)を測定した。尚、引張試験の歪速度は1mm/
secとした。
【0109】また、伸びフランジ性試験は、直径100
mm、板厚2.0mmの円盤状試験片を用いた。具体的
には、φ10mmの穴をパンチ打抜き後、60°円錐パ
ンチでばり上にて穴広げ加工することにより、亀裂貫通
時点での穴広げ率(λ)を測定した(鉄鋼連盟規格JF
ST 1001)。
【0110】更に、上記鋼板中組織の面積率は、鋼板を
レペラー腐食し、透過型電子顕微鏡(TEM;倍率15
000倍)観察により組織を同定した後、光学顕微鏡観
察(倍率1000倍)により組織の占積率を測定した。
尚、γRの占積率及びγR中のC濃度は、鋼板の1/4の
厚さまで研削した後、化学研磨してからX線回折法によ
り測定した(ISIJ Int.Vol.33.(1933),No.7,P.776)。
【0111】これらの結果を表2に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】これらの結果より、以下の様に考察するこ
とができる(以下のNo.はすべて、表2中の実験N
o.を意味する)。
【0115】まず、No.3〜6、8〜18、及び20
〜26はいずれも、本発明で特定する要件を満足してい
るので、良好な特性の鋼板が得られた。
【0116】尚、本実施例は主に、成分組成と機械的特
性との関係を明らかにすべく実験を行ったものである
が、特に第2相組織であるγRの形態等が機械的特性に
どの様な影響を及ぼすか調べる目的で、同一鋼種を用
い、製造条件を変化させた実験も行い、これらの結果も
表2に併記している。
【0117】例えば表2のNo.2、3及び16はいず
れも同一鋼種(表1のNo.2)を使用し、製造条件を
変えた例[No.2はオーステンパ温度が低い為、γR
中のC濃縮が充分行われなかった例;No.3は、熱延
で仕上圧延後、700℃において空冷を10秒間行った
為、最終組織のフェライト(F)分量が47%と高くな
った例;No.16は熱延で仕上圧延後、巻取まで急冷
(平均冷却速度40℃/s)した為、No.3に比べ、
最終組織のフェライト(F)量が少ない例]であるが、
No.3及び16の如く、γR中のCγRが本発明の好ま
しい範囲(0.8%以上)に制御されたものは、好まし
い範囲を外れるNo.2に比べ、伸びが向上している。
【0118】また、表2のNo.5、18及び20はい
ずれも同一鋼種(表1のNo.4)を使用し、製造条件
を変えた例[No.5は、前記No.3と同じ条件で製
造した例;No.18は、前記No.16と同じ条件で
製造した例;No.20は、前記No.5と同様の熱延
を行った後、焼鈍する際、オーステンパ処理温度(T
4)で保持した後、30℃/sの平均冷却速度で室温ま
で冷却した例]であるが、No.5及び20に比べて焼
戻ベイナイトの占積率が多いNo.18は、伸びフラン
ジ性に優れている。
【0119】更にNo.21〜23は、いずれも同一鋼
種(表1のNo.3)を用い、熱延時の加熱温度(SR
T)を低くした例(No.21は1100℃、No.2
2は1050℃、No.23は1000℃)であり、熱
延時の加熱温度を高温に制御したNo.17に比べ、γ
R中に占めるラス状γRの面積率は減少し、伸びフランジ
性が低下した。
【0120】またNo.24〜26は、いずれも同一鋼
種(表1のNo.3)を用い、SRT及び熱延時の平均
冷却速度を変えた例(No.24はSRT:1200
℃、平均冷却速度:60℃/s、No.25はSRT:
1200℃、平均冷却速度:20℃/s、No.26は
SRT:1000℃、平均冷却速度:20℃/s)であ
る。このうちNo.25はSRTを高めに設定している
ので、γR中に占めるラス状γRの面積率は76%と、好
ましい範囲を満足している。また、No.24はSRT
も高く、冷却速度も著しく速い為、ラス状γRの面積率
は96%にまで上昇し、伸びフランジ性も極めて良好で
あった。これに対し、No.26は、SRTも低く、冷
却速度も遅い為、ラス状γRの面積率は30%と低下し
た。
【0121】参考までに、図9に、本発明鋼板(No.
3)のTEM写真(倍率:15000倍)を示す。この
写真より、本発明鋼板は、明確なラス状組織を呈する焼
戻ベイナイト及びフェライトを有していることが分か
る。
【0122】これに対し、本発明で特定する要件のいず
れかを満足しない下記例は夫々、以下の不具合を有して
いる。
【0123】まず、No.1はC量が少ない例であり、
所望のElを確保することができなかった。
【0124】No.2はCγR量が0.8%未満の例で
あり、所望のElを確保することができなかった。
【0125】No.7は、Mn量、及び(Si+Al)
の合計量が少ない例であり、所望のγRが得られない
為、Elが低かった。
【0126】また、No.19は、T3均熱以降の平均
冷却速度を3℃/sと遅くして製造した為、パーライト
組織が多く、所定の焼戻ベイナイトが得られなかった例
であり、所定の焼戻ベイナイトが得られたNo.4及び
17[No.4は熱延で仕上圧延後、700℃において
空冷を10秒間行った例;No.17は熱延で仕上圧延
後、巻取まで急冷(平均冷却速度40℃/s)した例]
に比べ、El及びλが低下した。
【0127】尚、参考までに、従来のTRIP鋼板にお
ける各特性評価の結果を表3に示す。このうち.No.
21は、表1のNo.2の供試鋼を用いたフェライト・
マルテンサイトのDP鋼板;No.22は、表1のN
o.3の供試鋼を用いたポリゴナルフェライトを母相と
する従来のTRIP鋼板;及びNo.23は、表1のN
o.2の供試鋼を用いた、従来のフェライト・ベイナイ
トの2相組織鋼板である。
【0128】
【表3】
【0129】表3より、No.21は、伸び、及び伸び
フランジ性が劣化し、No.22は伸びフランジ性が劣
化し、No.23は伸びが劣化する、といった不具合を
夫々有している。
【0130】実施例2:成分組成の検討(その2) 本実施例では、C量が0.25〜0.6%以の高C成分
系鋼種[強度(TS)×伸びフランジ性(λ)が高く、
且つ、TS×伸び(El)も高い系]を中心に、成分組
成を変化させた場合における機械的特性の影響について
調べた。具体的には、表4に記載の成分組成からなる供
試鋼(表中の単位は質量%)を真空溶製し、実施例1と
同様にして熱延鋼板を製造し、実施例に記載の方法で、
各特性等を評価した。
【0131】これらの結果を表5に示す。
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】これらの結果より、以下の様に考察するこ
とができる(以下のNo.はすべて、表5中の実験N
o.を意味する)。
【0135】まず、No.3〜6、8〜18、及び20
〜26はいずれも、本発明で特定する要件を満足してい
るので、良好な特性の鋼板が得られた。
【0136】尚、本実施例は主に、成分組成と機械的特
性との関係を明らかにすべく実験を行ったものである
が、特に第2相組織であるγRが機械的特性にどの様な
影響を及ぼすか調べる目的で、同一鋼種を用い、製造条
件を変化させた実験も行い、これらの結果も表5に併記
している。
【0137】例えば表5のNo.3、及び16はいずれ
も同一鋼種(表4のNo.3)を使用し、製造条件を変
えた例[No.3は熱延で仕上圧延後、700℃におい
て空冷を10秒間行った例;No.16は熱延で仕上圧
延後、巻取まで急冷(平均冷却速度40℃/s)した
為、No.3に比べ、最終組織のフェライト(F)量が
少ない例]であるが、No.3に比べ、焼戻ベイナイト
の占積率が多いNo.16は伸びフランジ性に優れてい
る。
【0138】また、表5のNo.6及び18はいずれも
同一鋼種(表4のNo.6)を使用し、製造条件を変え
た例(No.6は前記No.4と同じ条件で製造した
例;No.18は前記No.17と同じ条件で製造した
例)であるが、No.6に比べて焼戻ベイナイトの占積
率が多いNo.18は、伸びフランジ性に優れている。
【0139】更にNo.21〜23は、いずれも同一鋼
種(表4のNo.4)を用い、熱延時の加熱温度を低く
した例(No.21は1100℃、No.22は105
0℃、No.23は1000℃)であり、熱延時の加熱
温度を高温に制御したNo.17に比べ、γR中に占め
るラス状γRの面積率は減少し、伸びフランジ性が低下
した。
【0140】またNo.24〜26は、いずれも同一鋼
種(表4のNo.4)を用い、SRT及び熱延時の平均
冷却速度を変えた例(No.24はSRT:1200
℃、平均冷却速度:60℃/s、No.25はSRT:
1200℃、平均冷却速度:20℃/s、No.26は
SRT:1000℃、平均冷却速度:20℃/s)であ
る。このうちNo.25はSRTを高めに設定している
ので、γR中に占めるラス状γRの面積率は78%と、好
ましい範囲を満足している。また、No.24はSRT
も高く、冷却速度も著しく速い為、ラス状γRの面積率
は87%に上昇し、伸びフランジ性も極めて良好であっ
た。これに対し、No.26は、SRTも低く、冷却速
度も遅い為、ラス状γRの面積率は35%と低下した。
【0141】これに対し、本発明で特定する要件のいず
れかを満足しない下記例は夫々、以下の不具合を有して
いる。
【0142】まず、No.1はC量が0.15%と、他
の例(C量が0.4%以上)に比べて少ないため、El
が低い。
【0143】No.2もC量が0.20%と少なく、且
つ、オーステンパ温度が低い為、γ R中のC濃縮が充分
行われなかった為、CγR量が0.8%未満の例であ
り、Elが低い。
【0144】No.7は、Mn量、及び(Si+Al)
の合計量が少ない例であり、所望のγRが得られない
為、Elが低かった。
【0145】また、No.19は、T3均熱以降の平均
冷却速度を3℃/sと遅くして製造した為、パーライト
組織が多く、所定の焼戻ベイナイトが得られなかった例
であり、所定の焼戻ベイナイトが得られたNo.4及び
17[No.4は熱延で仕上圧延後、700℃において
空冷を10秒間行った例;No.17は熱延で仕上圧延
後、巻取まで急冷(平均冷却速度40℃/s)した例]
に比べ、El及びλが低下した。
【0146】実施例3:製造条件の検討 本実施例では、表1のNo.4、及び表4のNo.4の
実験用スラブを用い、表6及び表7に示す種々の製造条
件を行った。熱延板の板厚は2.0mmとし、これをベ
ースとして実施例を行った。
【0147】次に、実施例1と同様の方法で、該鋼板の
組織を調べた。これらの結果を表6及び7に併記する。
尚、本実施例に用いた上記鋼種は、C量が相違するのみ
(表1のNo.4はC:0.2 0%;及び表4のN
o.4はC:0.48%)で他の成分含有量は概ね同じ
である為、得られた組織構成(第2相の種類)はすべて
同じであった。
【0148】
【表6】
【0149】
【表7】
【0150】まず、表6のNo.1〜25は、前述した
(1)の方法に従って製造したものである。詳細には、
No.1〜23は熱延→連続焼鈍を施した例であり、こ
のうちNo.5〜7及びNo.25は熱延工程で一段冷
却を行った例、その他は二段冷却を行った例である。ま
た、No.24〜25は熱延→めっき(更に合金化処
理)を施した例であり、このうちNo.24は熱延工程
で二段冷却を行った例であり、No.25は一段冷却を
行った例である。
【0151】これらのうちNo.1〜3、7、9〜1
1、13、14、16、18、19、及び22〜25
は、本発明で特定する条件で製造した例であり、所望の
組織が得られた。
【0152】尚、Fe系プレめっき処理によるめっき特
性の改善効果を確認すべく、表6のNo.24を用い、
プレめっき処理を施したこと以外は表6に示す条件で熱
処理し、合金化溶融Znめっき鋼板を得た。詳細には、
表6に示す条件で熱延した後、以下の条件でFe系プレ
めっきを行い(Fe系プレめっき付着量4.0g/
2,溶融Znめっき付着量52g/m2)、次いでめっ
きし[めっき浴:Zn−0.10%Al(有効Al濃
度),浴温:460℃]、引続き、合金化処理した(合
金化温度450℃、合金化時間45秒)。
【0153】[Fe系プレめっきの条件] めっき浴:FeSo4・7H2O(400g/L) 液pH :2.0 液温 :60℃ 電流密度:50A/dm2 この様にFe系プレめっき処理した合金化溶融Znめっ
き鋼板は、プレめっき処理をしない場合と同じ、良好な
組織が得られると共に、不めっきも見られず、めっき表
面の摺動性及び耐パウダリング性にも優れる等、めっき
特性も極めて良好であった(表には示さず)。
【0154】これに対し、本発明で特定するいずれかの
条件を満足せずに製造した下記例は、夫々、以下の不具
合を有している。
【0155】No.4は、熱延時の巻取温度(CT)が
低い例であり、フェライト及び焼戻ベイナイトが生成し
た。
【0156】No.5は、上記CTが高い例であり、従
来のTRIP鋼(ポリゴナルフェライトを母相とするT
RIP鋼)と同じ組織となり、所望の組織が得られなか
った。
【0157】No.6は、熱延時の平均冷却速度(C
R)が低い例であり、熱延ままの組織中に焼入ベイナイ
トがないため、所望の組織が得られず、従来のTRIP
鋼組織が生成した。
【0158】No.8は、連続焼鈍時の2相域温度(T
3)が高い例であり、所望の組織が得られず、従来のT
RIP鋼組織が生成した。
【0159】No.12は、上記T3が低い例であり、
γR組織が得られなかった。
【0160】No.15は、連続焼鈍時の2相域温度で
の保持時間(t3)が短い例であり、焼戻不足となって
所望の焼戻ベイナイトが得られなかった。
【0161】No.17は、連続焼鈍時における平均冷
却速度(CR)が小さい例であり、パーライトが生成し
た。
【0162】No.20及び21は、オーステンパ処理
温度(T4)が低い(即ち、オーステンパ処理を施さな
い)例であり、所望の組織が得られず、マルテンサイト
が生成した。
【0163】次に、表6のNo.26〜30は、前述し
た(1)の方法において、冷延処理を施した例である。
詳細には、No.26〜28は熱延→冷延→連続焼鈍
を、No.29〜30は熱延→冷延→めっき(更に合金
化処理)を施した例であり、このうちNo.28及び3
0は、熱延工程で一段冷却を行った例、その他は二段冷
却を行った例である。
【0164】これらのうちNo.26、28〜30は、
本発明で特定する条件で製造した例であり、所望の組織
が得られた。
【0165】これに対し、No.27は冷延率が高い例
であり、所望の焼戻ベイナイトが得られなかった。
【0166】最後に、表7のNo.31〜57は、前述
した(2)の方法に従って製造したものである。詳細に
は、No.31〜56は熱延→冷延→第一の連続焼鈍→
第二の連続焼鈍を、No.57は熱延→冷延→第一の連
続焼鈍→めっき(更に合金化処理)を施した例である。
【0167】このうちNo.32〜34、36、37、
39、41〜43、46〜47、49、51〜52、及
び55〜57は、本発明で特定する条件で製造した例で
あり、所望の組織が得られた。
【0168】尚、Fe系プレめっき処理によるめっき特
性の改善効果を確認すべく、表7のNo.57を用い、
前述した表6のNo.24と同じ条件でFe系プレめっ
き及び合金化処理を行った。その結果、Fe系プレめっ
き処理した合金化溶融Znめっき鋼板は、プレめっき処
理をしない場合と同じ、良好な組織が得られると共に、
不めっきも見られず、めっき表面の摺動性及び耐パウダ
リング性にも優れる等、めっき特性も極めて良好であっ
た(表には示さず)。
【0169】これに対し、本発明で特定する条件のいず
れかを満足せずに製造した下記例は、夫々、以下の不具
合を有している。
【0170】No.31は、第一の連続焼鈍時における
γ域の温度(T1)が高い例であり、焼戻ベイナイトで
はなく、フェライト+焼戻マルテンサイトとなった。
【0171】No.35は、上記T1が低い例であり、
所望のγRが得られなかった。
【0172】No.38は、第一の連続焼鈍時における
平均冷却速度(CR)が小さい例であり、ポリゴナルフ
ェライト及びパーライトが生成した。
【0173】No.40は、第二の連続焼鈍時における
2相温度域温度(T3)が高い例であり、従来のTRI
P鋼組織となった。
【0174】No.44は、上記T3が低い例であり、
所望のγRが得られなかった。
【0175】No.45は、第二の連続焼鈍時における
2相温度域での保持時間(t3)が長い例であり、母相
がフェライト組織となり、焼戻ベイナイトは消失した。
【0176】No.48は、上記t3が短い例であり、
焼戻不足となり、所望の焼戻ベイナイトが得られなかっ
た。
【0177】No.50は、第二の連続焼鈍時における
平均冷却速度(CR)が小さい例であり、パーライトが
生成した。
【0178】No.53及び54は、オーステンパ処理
温度(T4)が低い(即ち、オーステンパ処理を施さな
い)例であり、マルテンサイトが生成し、所望の組織が
得られなかった。
【0179】
【発明の効果】本発明は上記の様に構成されているの
で、約500〜1400MPa級の高強度及び超高強度
域において、優れた伸びフランジ性および全伸びの両特
性を兼ね備えた高強度鋼板、及び、この様な鋼板を効率
よく製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】同一成分系における焼戻ベイナイトの硬度と、
ポリゴナルフェライトの硬度を対比したグラフである。
【図2】焼戻ベイナイト及びポリゴナルフェライトの硬
度に及ぼすC量の影響を示すグラフである。
【図3】本発明における残留オーステナイト(γR)の
特徴を模式化した図である。
【図4】本発明鋼板のEBSP写真(×1000)であ
る。
【図5】従来の残留オーステナイト鋼板のEBSP写真
(×1000)である。
【図6】(1)の方法における熱延工程を説明した図で
ある。
【図7】(1)の方法における連続焼鈍またはめっき工
程を説明した図である。
【図8】(2)の方法における第一の連続焼鈍工程を説
明した図である。
【図9】実施例1におけるNo.3のTEM写真であ
る。
【符号の簡単な説明】
1 旧オーステナイト粒界 2 パケット粒界 3 ブロック境界 4 ベイナイトラス
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/58 C22C 38/58 C23C 2/02 C23C 2/02 2/06 2/06 特許法第30条第1項適用申請有り 平成12年9月1日 社団法人日本鉄鋼協会発行の「日本鉄鋼協会講演論文集 材料とプロセス,Vol.13(2000)No.6」に発 表 (72)発明者 池田 周之 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 Fターム(参考) 4K027 AA05 AA23 AB02 AB05 AB43 AC18 AC73 4K037 EA01 EA05 EA06 EA07 EA09 EA11 EA13 EA17 EA19 EA20 EA23 EA25 EA27 EA28 EA31 EA32 EA36 EB01 EB05 EB08 EB09 EB12 FC00 FD03 FD04 FF00 GA05

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.06〜0.6%、 Si+Al:0.5〜3%、 Mn:0.5〜3%、 P :0.15%以下(0%を含まない)、 S :0.02%以下(0%を含まない) を含有し、且つ、 母相組織は、焼戻ベイナイトを全組織に対して占積率で
    15%以上、及びフェライトを含有し、 第2相組織は、残留オーステナイトを全組織に対して占
    積率で3〜30%含有すると共に、該残留オーステナイ
    ト中のC濃度(CγR)は0.8%以上であり、更にベ
    イナイト/マルテンサイトを含有しても良いものである
    ことを特徴とする加工性に優れた高強度鋼板。
  2. 【請求項2】 前記残留オーステナイトはラス状を呈し
    ているものである請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. 【請求項3】 残留オーステナイト中に占める前記ラス
    状の残留オーステナイトは、占積率で60%以上である
    請求項2に記載の高強度鋼板。
  4. 【請求項4】 前記フェライトを全組織に対して占積率
    で5〜60%含有するものである請求項1〜3のいずれ
    かに記載の高強度鋼板。
  5. 【請求項5】 前記フェライトを全組織に対して占積率
    で5%以上30%未満含有するものである請求項4に記
    載の高強度鋼板。
  6. 【請求項6】 更に、質量%で、 Mo:1%以下 (0%を含まない), Ni:0.5%以下(0%を含まない), Cu:0.5%以下(0%を含まない), Cr:1%以下 (0%を含まない) の少なくとも一種を含有するものである請求項1〜5の
    いずれかに記載の高強度鋼板。
  7. 【請求項7】 更に、質量%で、 Ti:0.1%以下(0%を含まない), Nb:0.1%以下(0%を含まない), V :0.1%以下(0%を含まない) の少なくとも一種を含有するものである請求項6に記載
    の高強度鋼板。
  8. 【請求項8】 更に、質量%で、 Ca :30ppm以下(0ppmを含まない)、及び
    /又は REM:30ppm以下(0ppmを含まない) を含有するものである請求項6または7に記載の高強度
    鋼板。
  9. 【請求項9】 熱延工程、及び連続焼鈍工程またはめっ
    き工程を施すことにより、請求項1〜8のいずれかに記
    載の高強度鋼板を製造する方法であって、 該熱延工程は、(Ar3−50)℃以上の温度で仕上圧延
    を終了する工程;及び10℃/s以上の平均冷却速度
    で、Ms点以上Bs点以下まで冷却して巻取る工程を包
    含し、 該連続焼鈍工程またはめっき工程は、A1点以上A3点以
    下の温度で10〜600秒加熱保持する工程;3℃/s
    以上の平均冷却速度で、300℃以上480℃以下の温
    度まで冷却する工程;及び該温度域で1秒以上保持する
    工程を包含することを特徴とする高強度鋼板の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 前記熱延工程は、 (Ar3−50)℃以上の温度で熱延を終了する工程;7
    00±100℃の範囲の温度域まで、30℃/s以上の
    平均冷却速度で冷却する工程;該温度域で空冷を1〜3
    0秒間行う工程;空冷後、Ms点以上Bs点以下の温度
    まで、30℃/s以上の平均冷却速度で冷却して巻取る
    工程を包含するものである請求項9に記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記連続焼鈍工程は、 A1点以上A3点以下の温度で10〜600秒加熱保持す
    る工程;(A1点〜600℃)の温度まで、15℃/s
    以下の平均冷却速度で冷却する工程;300℃以上48
    0℃以下の温度まで、20℃/s以上の平均冷却速度で
    冷却する工程;及び該温度域で1秒以上保持する工程を
    包含するものである請求項9または10に記載の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 前記めっき工程の前に、下記関係式
    (1)を満足する条件でFe系プレめっき処理する工程
    を包含するものである請求項9〜11のいずれかに記載
    の製造方法。 0.06W≦X … (1) [式中、Wは溶融Znめっきの付着量 (g/m2)、 XはFe系プレめっきの付着量(g/m2)を夫々意味
    する]
  13. 【請求項13】 熱延工程、冷延工程、第一の連続焼鈍
    工程、及び第二の連続焼鈍工程またはめっき工程を施す
    ことにより、請求項1〜8のいずれかに記載の高強度鋼
    板を製造する方法であって、 該第一の連続焼鈍工程は、A1点以上A3点以下の温度で
    加熱保持する工程;及び10℃/s以上の平均冷却速度
    で、Ms点以上Bs点以下の温度まで冷却する工程を包
    含し、 該第二の連続焼鈍工程またはめっき工程は、A1点以上
    3点以下の温度で10〜600秒加熱保持する工程;
    3℃/s以上の平均冷却速度で、300℃以上480℃
    以下の温度まで冷却する工程;及び該温度域で1秒以上
    保持する工程を包含することを特徴とする高強度鋼板の
    製造方法。
  14. 【請求項14】 前記第二の連続焼鈍工程は、 A1点以上A3点以下の温度で10〜600秒加熱保持す
    る工程;(A1点〜600℃)の温度まで、15℃/s
    以下の平均冷却速度で冷却する工程;300℃以上48
    0℃以下の温度まで、20℃/s以上の平均冷却速度で
    冷却する工程;及び該温度域で1秒以上保持する工程を
    包含するものである請求項13に記載の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記めっき工程の前に、下記関係式
    (1)を満足する条件でFe系プレめっき処理する工程
    を包含するものである請求項13または14に記載の製
    造方法。 0.06W≦X … (1) [式中、Wは溶融Znめっきの付着量 (g/m2)、 XはFe系プレめっきの付着量(g/m2)を夫々意味
    する]
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