JP2005330584A - 成形性に優れた高強度冷延鋼板およびめっき鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 鋼中成分は、質量%で(以下、化学成分について同じ)、
C :0.10〜0.28%、
Si:1.0〜2.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
Nb:0.03〜0.10%
を含有し、
Al:0.5%以下、
P :0.15%以下、
S :0.02%以下
に抑制されていると共に、
組織は、全組織に対する占積率で、
残留オーステナイト:5〜20%、
ベイニティック・フェライト:50%以上、
ポリゴナル・フェライト:30%以下(0%を含む)を満たし、且つ、
該残留オーステナイトは、EBSP(Electron Back Scatter Diffraction Pattern)により任意の面積(15μm×15μm)を観察したときの平均個数が20個以上である
高強度冷延鋼板である。
Description
NISSHIN STEEL TECHNICAL REPORT(日新製鋼技報)、No. 43、Dec. 1980、p.1-10 長坂明彦、他5名,「Nb−Mo添加TRIP型ベイニティック・フェライト鋼板の成形性」,CAMP-ISIJ,2004年,第17巻,p.330
C:0.10〜0.28%、
Si:1.0〜2.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
Nb:0.03〜0.10%
を含有し、
Al:0.5%以下、
P :0.15%以下、
S :0.02%以下
に抑制されていると共に、
組織が、全組織に対する占積率で、
残留オーステナイト:5〜20%、
ベイニティック・フェライト:50%以上、
ポリゴナル・フェライト:30%以下(0%を含む)を満たし、且つ、
該残留オーステナイトは、EBSP(Electron Back Scatter Diffraction Pattern)により任意の面積(15μm×15μm)を観察したときの平均個数が20個以上である
ところに要旨を有するものである。
本発明鋼板は、第2相組織として後述する残留オーステナイトを含有しており、母相組織は、ベイニティック・フェライト主体の金属組織で構成されている(従って、後記するポリゴナル・フェライトの占積率は少ない方が好ましく、当該ポリゴナル・フェライトの占積率は0%であっても良い)。
残留γは、TRIP(変態誘起塑性)効果を発揮するための本質的な組織であり、伸びの向上に有用である。この様な作用を有効に発揮させるには、残留γを全組織に対する占積率で5%以上とする。より優れた延性(伸び等)を確保する為には、好ましくは7%以上である。一方、多量に存在すると局部変形能や伸びフランジ性が劣化するので、上限を20%に定めた。より好ましくは17%以下である。
更に本発明では残留γに関し、上述した占積率の他に、EBSPにて任意の測定面積中に観察される平均個数の下限を定めている。残留γの平均個数が上記要件を満足するということは、換言すれば「非常に微細な残留γを含有する[厳密には、ベイニティック・フェライト内(特に旧オーステナイト粒内)に微細な残留γを含有する]ことを意味しており、この様な残留γ(微細な残留γ)は、特に伸びフランジ性の向上に寄与するものである。実際のところ、残留γの占積率が本発明の範囲を満足していても微細な残留γが得られないものは、特にTS×λの積が所望レベル(40,000以上)を満足しないことを、後記する実施例において確認している。本発明によれば、残留γの占積率を制御すると共に、更に微細な残留γも生成させている為に、従来のTBF鋼に比べて、引張強度と伸びのバランス、引張強度と伸びフランジ性のバランスを格段に向上させることが可能になった。
前述した通り、本発明は、母相組織をベイニティック・フェライト主体とし、微細な残留オーステナイトを含むTRIP鋼板とすることにより、高強度鋼板の伸びおよび伸びフランジ性を高めると共に、ポリゴナル・フェライトの生成を抑制して当該鋼板の伸びフランジ性を一層向上させるというものである。従って、ポリゴナル・フェライトの占積率は少ない方がよく、本発明では、その上限を30%とする。好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下であり、最も好ましくは0%である。
本発明の鋼板は、上記組織のみ(即ち、ベイニティック・フェライトと残留γの混合組織;或いは、ベイニティック・フェライトと、残留γと、ポリゴナル・フェライトの混合組織)で構成されていても良いが、本発明の製造過程で残存し得る他の組織(パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等)の混入を一切排除するものではなく、本発明の作用を損なわない範囲で、これら他の組織を含有する鋼板も本発明の範囲内に包含される。但し、これら組織の占積率は少なければ少ないほど好ましく、その合計量を10%以下(より好ましくは5%以下)に制御することが推奨される。
Cは、高強度を確保し、且つ残留γを確保するのに必要な元素である。詳細には、γ相中に充分なC量を含ませ、室温でも所望のγ相を残留させる為に重要な元素である。この様な作用を有効に発揮させるには、Cを0.10%以上含有させることが必要であり、好ましくは0.12%以上、より好ましくは0.15%以上である。但し、溶接性確保の観点から0.28%以下に抑えるのがよく、好ましくは0.25%以下、より好ましくは0.23%以下、更により好ましくは0.20%以下である。
Siは、残留γが分解して炭化物が生成するのを有効に抑える元素であり、また固溶強化元素としても有用である。この様な作用を有効に発揮させるには、Siを1.0%以上含有させることが必要である。好ましくは1.2%以上である。但しSi量が過剰になると、上記効果は飽和し、熱間脆性を起こすなど却って問題が生じるため、その上限を2.0%とする。好ましくは1.8%以下である。
Mnは、γを安定化し、所望の残留γを得る為に必要な元素である。この様な作用を有効に発揮させるには、1.0%以上含有させるのがよい。好ましくは1.3%以上、より好ましくは1.6%以上である。但し3.0%を超えると、鋳片割れが生じる等の悪影響が現れる。好ましくは2.5%以下に抑える。
本発明鋼板は前述した通り、残留γを微細化させ、特に引張強度と伸びフランジ性のバランスを著しく高めたところに特徴があり、この様な作用を有効に発揮させる為の成分として、Nbは極めて重要である。Nb添加により残留γが微細化されるメカニズムは詳細には不明であるが、以下の様に推定される。即ち、Nbは析出強化作用及び組織微細化作用を有する元素として知られているが、本発明では特に、熱延時の加熱開始温度(SRT)を従来法よりも高く制御してNbを完全に固溶させている為、上記作用が極めて有効に発揮される結果、熱延工程(熱延→巻取)では、ポリゴナル・フェライト(またはベイナイト)組織中に微細なNb系炭化物(NbC;更には、必要に応じて鋼中に添加されるMoとの間で形成されるNbMoC等)が多数析出した熱延板が得られることになる。この様な微細な炭化物は、熱延後に冷延して冷延鋼板とした場合も、略そのまま残存すると考えられ、その結果、引続いて行なわれる焼鈍工程またはめっき工程にて、Ar3点以上に加熱してフェライト→オーステナイトへ逆変態する際、所望とする微細な残留γが得られるものと思料される。
Al含有量が増加すると、ポリゴナル・フェライトが生成し易くなって伸びフランジ性を十分に高めることができない。また、AlはA3点を高める作用があり、生産性が低下する。よってポリゴナル・フェライトの生成を抑えて伸びフランジ性を高めるには、Al量の低減を図ることが有効であり、本発明では0.5%以下に抑える。好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。
Pは、残留γを確保し、強度を高めるのに有効な元素である為、含んでいてもよいが、P量が過剰になると加工性が劣化するので、0.15%以下に抑える。好ましくは0.1%以下である。
Sは、MnS等の硫化物系介在物を形成し、割れの起点となって加工性を劣化させる有害な元素である。よってS量は0.02%以下、好ましくは0.015%以下に抑える。
これらの元素は、鋼の強化元素として有用であると共に、残留γの安定化や所定量の確保に有効な元素である。上記元素は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても構わない。このうち特にMoを添加すれば、熱延段階にて微細なNb系炭化物(NbMoC)が生成し、残留オーステナイトの微細化作用が一層促進される為、所望の特性発揮に極めて有効である。この様な作用を有効に発揮させる為には、Mo:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)、Ni:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)、Cu:0.05%以上(より好ましくは0.1%以上)を含有させることが推奨される。但し、過剰に添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である為、その上限を夫々、Mo:1.0%、Ni:0.5%、Cu:0.5%と定めた。より好ましくはMo:0.8%以下、Ni:0.4%以下、Cu:0.4%以下である。
Ca及びREM(希土類元素)は、鋼中硫化物の形態を制御し、加工性向上に有効な元素であり、単独で、若しくは併用することができる。ここで本発明に用いられる希土類元素としては、Sc、Y、ランタノイド等が挙げられる。上記作用を有効に発揮させるには、夫々、0.0003%以上(より好ましくは0.0005%以上)含有させるのがよい。但し、0.003%を超えて添加しても上記効果は飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくは0.0025%以下である。
これらの元素は、Nbと同様、析出強化作用及び組織微細化作用を有しており(但し、その程度は、Nbに比べてやや劣ると考えられる)、高強度化に有用な元素である。この様な作用を有効に発揮させる為には、Ti:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、V:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)を、夫々添加することが推奨される。但し、いずれの元素も0.1%を超えて添加すると上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくはTi:0.08%以下、V:0.08%以下である。
まず、本発明では、所望の「微細化された残留γ」を得る為に、特に熱延時の加熱開始温度(SRT)を1250〜1350℃と、従来に比べて高く制御したところに特徴がある。Nbは一般に、約1100℃以上の温度で加熱することにより鋼中に固溶し始めると考えられており、従来は、製造コスト等を考慮してSRTを通常、1100〜1150℃の範囲か、高くても1200℃に制御していた。しかしながら、上記温度範囲ではNbを完全に固溶させることはできない為、Nb添加による残留γ微細化作用を充分有効に発揮させることができず、所望とする強度−伸びフランジ性の特性(TS×λ≧40,000)が得られないことが本発明者らの検討結果により明らかになった(後記する実施例を参照)。従って、本発明では、SRTを1250〜1350℃とする。ここでSRTの上限を1350℃と定めたのは、SRTが高過ぎるとスラブが劣化してしまうからである。好ましくは1270℃以上、1330℃以下である。
上記熱延工程に引続き、冷延するが、冷延率は特に限定されず、通常実施される条件(約30〜75%の冷延率)にて冷間圧延すれば良い。但し、再結晶の不均一化を防止するという観点からすれば、特に好ましくは冷延率を40%以上、70%以下に制御することが推奨される。
この工程は、最終的に所望の組織(母相組織をベイニティック・フェライト主体の組織とし、残留γを含むTBF鋼)を確保する為に重要であり、特に本発明では、均熱温度(後記するT1)及びオーステンパ処理温度(後記するT2)を適切に制御することにより、所望のベイニティック・フェライトを得るところに特徴がある。
(i)A3点以上の温度(T1)で10〜200秒間温度保持(均熱)すること、
(ii)10℃/秒以上の平均冷却速度(CR)でフェライト変態およびパーライト変態を避けながら、温度(T1)からベイナイト変態温度域(T2;約450〜320℃)まで冷却すること、および
(iii)該温度域(T2)で60〜600秒間保持すること(オーステンパ処理)が推奨される。
本実施例では、表1に示す種々の成分組成からなる鋼種A〜J(残部:Fe及び不可避不純物)を溶製してスラブを得た後、該スラブに熱間圧延を施した。熱間圧延に際しては、SRTを1300℃、FDTを900℃に制御して圧延を行い、500℃で巻き取り、板厚2.4mmの熱延鋼板を得た。更に、得られた熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧延(圧延率:50%)を施して板厚1.2mmの冷延鋼板とした。
まず、表2のNo.6の鋼板と比較鋼板を用いてそれぞれ図4に示す様な部品(試験体,ハットチャンネル部品)1を作成し、次の様にして圧壊性試験を行なった。即ち、図4に示す部品のスポット溶接位置2に、先端径6mmの電極から、チリ発生電流よりも0.5kA低い電流を流して、図4に示す通り35mmピッチでスポット溶接を行った。そして図5に示す様に、部品1の長手方向中央部の上方から金型3を押し付けて最大荷重を求めた。また荷重−変位線図の面積から吸収エネルギーを求めた。その結果を表3に示す。
表2のNo.6の鋼板と比較鋼板を用いてそれぞれ図6に示す様な部品(試験体,ハットチャンネル部品)4を作成し、次の様にして耐衝撃特性試験を行なった。尚、図7は、前記図6における部品4のA−A断面図を示している。耐衝撃特性試験は、上記耐圧壊性試験の場合と同様に部品4のスポット溶接位置5にスポット溶接を行った後、図8に模式的に示す通り部品4を土台7にセットし、該部品4の上方から、落錘(質量:110kg)6を高さ11mの位置から落下させて、部品4が40mm変形(高さ方向が収縮)するまでの吸収エネルギーを求めた。その結果を表4に示す。
本実施例では、表1の鋼種F(本発明の範囲を満足する鋼種)を用い、実施例1の製造方法において、熱処理条件のいずれかが本発明の要件を外れて作成した冷延鋼板(No.11〜17)における、組織や機械的特性に及ぼす影響について調べた。本実施例における熱処理条件の変更点は表5に示す通りであり、それ以外の条件は、実施例1に記載した通りである。具体的にはNo.11は、熱延時の加熱開始温度SRTを変えた例であり、No.12〜17は焼鈍時の熱処理条件を変えた例である。
本参考例は、前述した実施例1とは異なり、Nbを添加しないNb無添加鋼(但し、鋼中の基本成分は、本発明の範囲を満足する)を用いても残留γの平均個数を20個以上に制御でき、成形性に優れた高強度冷延鋼板が得られることを実証すべく(ちなみに本参考例では、冷延率を高くしている)、実施したものである。
2,5 スポット溶接位置
3 金型
4 耐衝撃特性試験用部品(試験体)
6 落錘
7 (耐衝撃特性試験用)土台
Claims (5)
- 鋼中成分は、質量%で(以下、化学成分について同じ)、
C :0.10〜0.28%、
Si:1.0〜2.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
Nb:0.03〜0.10%
を含有し、
Al:0.5%以下、
P :0.15%以下、
S :0.02%以下
に抑制されていると共に、
組織は、全組織に対する占積率で、
残留オーステナイト:5〜20%、
ベイニティック・フェライト:50%以上、
ポリゴナル・フェライト:30%以下(0%を含む)を満たし、且つ、
該残留オーステナイトは、EBSP(Electron Back Scatter Diffraction Pattern)により任意の面積(15μm×15μm)を観察したときの平均個数が20個以上である
ことを特徴とする成形性に優れた高強度冷延鋼板。 - 更に他の元素として、
Mo:1.0%以下(0%を含まない)、
Ni:0.5%以下(0%を含まない)、及び
Cu:0.5%以下(0%を含まない)
よりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含有する請求項1に記載の高強度冷延鋼板。 - 更に他の元素として、
Ca :0.003%以下(0%を含まない)、及び/又は
REM:0.003%以下(0%を含まない)
を含有する請求項1または2に記載の高強度冷延鋼板。 - 更に他の元素として、
Ti:0.1%以下(0%を含まない)、及び/又は
V :0.1%以下(0%を含まない)
を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高強度冷延鋼板。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の高強度冷延鋼板にめっきが施されたものであることを特徴とするめっき鋼板。
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