JP2012148305A - 高強度鋼部材の成形方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】TBF鋼を加熱下でプレス成形して高強度鋼部材に成形するにあたり、その加熱下での成形性および成形後の高強度鋼部材の機械的特性をともに改善しうる高強度鋼部材の成形方法を提供する。
【解決手段】TBF鋼板を450〜600℃の温度T℃に加熱し、その温度T℃において下記式で定義されるPt秒以下の保持時間でプレス成形する。
【数1】
Figure 2012148305

【選択図】 なし

Description

本発明は、自動車部品等に用いられる高強度鋼部材の成形方法に関し、詳細には、TBF鋼板を温間加工して高強度鋼部材を成形する方法に関する。
高強度鋼板をプレス成形して例えば自動車の骨格部品などの高強度鋼部材に成形するにあたり、成形後の高強度鋼部材には、衝突安全性や車体軽量化による燃費軽減などを目的とする980MPa以上の高強度と、製品としての高い形状精度の兼備が求められるとともに、プレス成形に際して、成形荷重の低減化やより複雑な形状の骨格部品(センターピラーなど)に加工する場合にも割れが発生しない成形方法が求められている。
このようなニーズを有する成形方法に適した高強度鋼板としてTRIP(TRansformation Indeced Plasticity;変態誘起塑性)鋼を使用した鋼板が注目されている。
TRIP鋼は、オーステナイト組織が残留しており、加工変形させると、応力によって残留オーステナイト(以下、「残留γ」と略称することあり。)がマルテンサイトに加工誘起変態して大きな伸びが得られる鋼板である。その種類として幾つか挙げられ、例えば、ポリゴナルフェライト(以下、単に「フェライト」と略称することあり。)を母相とし、残留オーステナイトを含むTRIP型複合組織鋼(TPF鋼);焼戻マルテンサイトを母相とし、残留オーステナイトを含むTRIP型焼戻マルテンサイト鋼(TAM鋼);ベイニティックフェライトを母相とし、残留オーステナイトを含むTRIP型ベイナイト鋼(TBF鋼)等が知られている。
このうち、TBF鋼は、硬質のベイナイト組織によって高強度が得られやすく、また、このベイナイト組織中にはラス状のベイニティックフェライトの境界に微細な残留オーステナイトが生成しやすいことから、非常に優れた伸びが得られるといった特徴がある。また、TBF鋼は1回の熱処理(連続焼鈍工程またはめっき工程)によって容易に製造できるという製造上のメリットもある。
このような特性を改良することによって、冷間でのプレス成形により適したTBF鋼が種々提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
さらに、複雑な形状への成形性を高めるため、高強度鋼を温間成形する技術の開発も進められており、温間成形に適したTBF鋼も種々提案されている(例えば特許文献3〜5参照)。
また、鋼板の組織に関係なく、さらに高温の700〜1200℃の温度領域でプレス成形を行うことにより成形性を確保する、いわゆるホットスタンプ技術の開発も進められている(例えば特許文献6参照)。
しかしながら、TBF鋼を加熱下でプレス成形して高強度鋼部材に成形するにあたり、その加熱下での成形性および成形後の高強度鋼部材の機械的特性をともに改善しうる適正な成形条件の範囲についてはいまだ明確になっていなかった。
特開2006−274417号公報 特開2006−274418号公報 特開2002−256388号公報 特開2003−113442号公報 特開2004−190050号公報 特許3663145号公報
そこで本発明の目的は、TBF鋼を加熱下でプレス成形して高強度鋼部材に成形するにあたり、その加熱下での成形性および成形後の高強度鋼部材の機械的特性をともに改善しうる高強度鋼部材の成形方法を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.05〜0.3%、
Si:0.5〜3.0%、
Mn:0.2〜3.0%、
P:0.1%以下(0%を含む)、
S:0.01%以下(0%を含む)、
Al:0.001〜0.1%、
N:0.01%以下(0%を含む)、
残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、
面積率で、
ベイニティックフェライト:50〜90%、
残留オーステナイト:5%以上、
マルテンサイト:40%以下(0%を含む)、
ポリゴナルフェライト:40%以下(0%を含む)からなる組織を有する鋼板を、
450〜600℃の温度T℃に加熱し、その温度T℃において下記式(1)で定義されるPt秒以下の保持時間でプレス成形することを特徴とする高強度鋼部材の成形方法である。
Figure 2012148305
請求項2に記載の発明は、
前記鋼板の成分組成が、更に、
Cr:0.01〜3.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.01〜2.0%、
Ni:0.01〜2.0%
の1種または2種以上
を含むものである請求項1に記載の高強度鋼部材の成形方法である。
請求項3に記載の発明は、
前記鋼板の成分組成が、更に、
B:0.00001〜0.001%、および/または
Ti:0.01以下(0%を含まない)
を含むものである請求項1または2に記載の高強度鋼部材の成形方法である。
請求項4に記載の発明は、
前記鋼板の成分組成が、更に、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0001〜0.01%
の1種または2種以上
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼部材の成形方法である。
本発明によれば、所定の化学組成およびミクロ組織を有するTBF鋼を、450〜600℃で所定の保持時間以内で成形することにより、加熱下での成形性を改善しつつ、成形後の高強度鋼部材の機械的特性(強度、伸び)を確保できるようになった。これにより、TBF鋼を用いて、センターピラーなどの複雑な形状の高強度鋼部材を成形する場合であっても、成形中に割れを発生させることなく、より小さいプレス荷重で成形できるとともに、スプリングバックの小さい、形状精度に優れた高強度鋼部材が確実に得られるようになった。
本発明者らは、TBF鋼を加熱下でプレス成形(以下、「加熱プレス成形」ともいう。)して高強度鋼部材に成形するにあたり、成形中に割れを発生させることなく、より小さいプレス荷重で成形できるとともに、スプリングバックの小さい、形状精度に優れた高強度鋼部材を確実に得るためには、プレス成形時の温度とその保持時間を適正範囲に制御することが重要であると考えた。そこで、その適正範囲を見出すべく、プレス成形時の温度とその保持時間を種々変更して成形実験を行うとともに、その実験結果に基づいて理論的考察を加えることにより、本発明法を完成させた。
以下、まず本発明法に用いるTBF鋼板の成分組成について説明する。以下、化学成分の単位の%はすべて質量%である。
〔TBF鋼板の成分組成〕
C:0.05〜0.3%
Cは、残留γの面積率やその残留γ中の炭素量を高める効果を有し、強度と伸びのバランスを向上させるのに有用な元素である。またCは、鋼板製造時のオーステンパ処理直前の熱処理段階でのマルテンサイトの面積率を高める効果も有し、これにより、加熱下でのプレス成形時にマルテンサイトから残留γにCが流入することで、残留γ中の炭素量がさらに高められ、伸びが改善する。0.05%未満では上記効果が十分に発揮されない。一方、0.3%超では溶接性が劣化する。C含有量の範囲は、好ましくは0.08〜0.25%、さらに好ましくは0.1〜0.2%である。
Si:0.5〜3.0%、
Siは、鋼板製造時のオーステンパ処理中および加熱下でのプレス成形中にセメンタイトが形成されることを抑制することで、残留γを残存させ、強度と伸びのバランスを改善するのに寄与する。0.5%未満では上記効果が十分に発揮されない。一方、3.0%超とすると、Siは強力なフェライト形成元素であるため、鋼板製造時にフェライトが過剰に生成し、もともとの鋼板強度が確保できなくなる。Si含有量の範囲は、好ましくは0.7〜2.5%、さらに好ましくは1.0〜2.0%である。
Mn:0.2〜3.0%
Mnは、焼入れ性を高めて、フェライトやパーライトといった拡散変態を抑制し、強度や残留γの面積率の確保に寄与することで、強度と伸びのバランスを改善する有用な元素である。1.0%未満では上記効果が十分に発揮されない。一方、3.0%超とすると逆変態温度が低くなりすぎ、再結晶ができなくなるため、強度と伸びのバランスが確保できなくなる。Mn含有量の範囲は、好ましくは_0.5〜3.0%、さらに好ましくは1.0〜2.5%である。
P:0.1%以下(0%を含む)
Pは不純物元素として不可避的に存在し、固溶強化により強度の上昇に寄与するが、旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させることで伸びフランジ性を劣化させるので、0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。
S:0.01%以下(0%を含む)
Sも不純物元素として不可避的に存在し、MnS介在物を形成し、穴拡げ時に亀裂の起点となることで伸びフランジ性を低下させるので、0.01%以下とする。より好ましくは0.005%以下である。
Al:0.001〜0.1%、
AlはSiと同様、鋼板製造時のオーステンパ処理中および加熱下でのプレス成形中にセメンタイトが形成されることを抑制することで、残留γを残存させ、強度と伸びのバランスを改善するのに寄与する。0.001%未満では上記効果が十分に発揮されない。一方、0.1%超とすると、Alは強力なフェライト形成元素であるため、鋼板製造時にフェライトが過剰に生成し、もともとの鋼板強度が確保できなくなる。Al含有量の範囲は、好ましくは0.01〜0.1%、さらに好ましくは0.02〜0.08%である。
N:0.01%以下(0%を含む)
Nも不純物元素として不可避的に存在し、歪時効により伸びと伸びフランジ性を低下させるので、低い方が好ましく、0.01%以下とする。
本発明法に用いるTBF鋼板は上記成分を基本的に含有し、残部が実質的に鉄及び不純物であるが、その他、本発明法の作用を損なわない範囲で、以下の許容成分を添加することができる。
Cr:0.01〜3.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.01〜2.0%、
Ni:0.01〜2.0%
の1種または2種以上
これらの元素は、上記Mnと同様、焼入れ性を高めて、フェライトやパーライトといった拡散変態を抑制し、強度の確保、残留γの確保に寄与することで強度と伸びのバランスを改善するのに有用な元素である。各元素とも0.01%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも上記各上限値を超える添加ではコストが高くなりすぎる。
B:0.00001〜0.001%、および/または
Ti:0.01以下(0%を含まない)
B、Tiは、オーステンパ処理直前の熱処理中において、フェライトの形成を抑制し、強度と伸びのバランスを改善するのに有用な元素である。Bは0.00001%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、B、Tiは上記各上限値を超える添加では加工性が劣化する。
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0001〜0.01%
の1種または2種以上
これらの元素は、介在物を微細化し、破壊の起点を減少させることで、伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。各元素とも上記各下限値未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも0.01%を超える添加では逆に介在物が粗大化し、伸びフランジ性が低下する。なお、REMは希土類元素であり、本発明法に用いられるTBF鋼板に使用される希土類元素としては、Sc、Y、ランタノイド等が挙げられる。
次に、本発明法に用いるTBF鋼板の組織について説明する。以下、組織の単位はすべて面積率である。
〔TBF鋼板の組織〕
<ベイニティックフェライト:50〜90%>
ベイニティックフェライトは、引張強度TSと全伸びELとをバランス良く向上させるのに適した母相組織であり、このような母相組織による効果が有効に発揮されるためには、全組織に対して面積率で50〜90%(好ましくは60〜90%、より好ましくは60〜80%)とすることが必要である。50%未満では引張強度TSが確保できず、90%を超えると伸びELが確保できない。
なお、本発明法に用いるTBF鋼板における「ベイニティックフェライト」とは、ベイナイト組織が転位密度の高いラス状組織を持った下部組織を有しており、組織内に炭化物を有していない点で、ベイナイト組織とは明らかに異なり、また、転位密度がないかあるいは極めて少ない下部組織を有するポリゴナルフェライト組織、あるいは細かいサブグレイン等の下部組織を持った準ポリゴナルフェライト組織とも異なっている(日本鉄鋼協会 基礎研究会 発行「鋼のベイナイト写真集−1」参照)。この組織は、光学顕微鏡観察やSEM観察するとアシキュラー状を呈しており、区別が困難であるため、ベイナイト組織やポリゴナルフェライト組織等との明確な違いを判定するには、TEM観察による下部組織の同定が必要である。
<残留オーステナイト:5%以上>
残留γは、加工誘起変態により全伸びELを向上させるのに有用であり、このような作用を有効に発揮させるためには、全組織に対して面積率で5%以上(好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上)存在させることが必要である。
<マルテンサイト:40%以下(0%を含む)>
マルテンサイトは、鋼板製造時にオーステンパ処理後の冷却過程で不可避的に生成する。マルテンサイト自体は強度が非常に高いため、鋼板の強度を向上させる効果が大きいが、同時に全伸びELの低下を招くため、全組織に対して面積率で40%以下(好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下)に制限する。
<ポリゴナルフェライト:40%以下(0%を含む)>
ポリゴナルフェライトは、全伸びELの向上に寄与するが、過剰に存在させると引張強度TSが確保できなくなるため、全組織に対して面積率で40%以下(好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下)に制限する。
<その他:ベイナイト(0%を含む)>
本発明法に使用するTBF鋼板は、上記組織のみ(ベイニティックフェライト残留γ、マルテンサイト、ポリゴナルフェライトの混合組織)からなっていてもよいが、本発明法の作用を損なわない範囲で、他の異種組織として、ベイナイトを有していてもよい。この組織は本発明法に用いる鋼板の製造過程で必然的に残存し得るものであるが、少なければ少ない程よく、全組織に対して面積率で5%以下、より好ましくは3%以下に制御することが推奨される。
〔各相の面積率の測定方法〕
ここで、各相の面積率の測定方法について説明する。
ベイニティックフェライトの面積率は、鋼板をレペラ腐食し、透過型電子顕微鏡(TEM;倍率1500倍)観察により組織を同定した後、光学顕微鏡観察(倍率1000倍)により各組織の面積率を測定した。一方、残留γの面積率は、鋼板の1/4の厚さまで研削した後、化学研磨してからX線回折法により測定した。そして、マルテンサイトの面積率は、上記レペラ腐食で同定された白い領域の面積率から上記残留γの面積率を差し引いた値として求めた。また、ポリゴナルフェライトの面積率は、鋼板をナイタール腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM;倍率4000倍)により白い領域の面積率を測定した。
〔TBF鋼板の好ましい製造条件〕
本発明法に使用するTBF鋼板は、その製造条件まで限定されるものではないが、上記成分組成を有する鋼材を、熱延し、冷延した後、下記要領で熱処理することにより製造することが推奨される。すなわち、Ac1点〜950℃の加熱温度で10〜600秒間保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で200〜600℃の温度領域(オーステンパ温度)まで冷却し、この温度領域で10〜1000秒間(オーステンパ時間)保持し、その後2℃/s以上の平均冷却速度で100℃以下まで冷却することが推奨される。
〔TBF鋼板の加熱プレス成形条件〕
そして、上記のようにして得られたTBF鋼板を、450〜600℃の温度T℃に加熱し、その温度T℃において下記再掲式1で定義されるPt秒以下の保持時間でプレス成形して高強度鋼部材を成形する。
Figure 2012148305
加熱下でプレス成形することでプレス荷重が低下する。加熱温度が450℃未満ではプレス荷重低下の効果が不足する一方、600℃を超えると残留γの分解によるフェライト生成量の増加とベイニティックフェライトの焼戻しにより加熱プレス成形後の強度が低下する。
また、保持時間に関しては、本発明の主眼は加熱によるプレス荷重の低下であるため、加熱下でのプレス成形時の保持時間はなくてもよい。保持時間が上記式1のPtを超えると、残留γが分解して減少するため、加熱プレス成形された後の部材が変形荷重を受けた際に加工誘起変態が抑制され、残存伸びが低下してしまう。
ここで、上記Ptを定義した式1は、セメンタイトの成長速度からセメンタイトの析出挙動を表現する式を作成し、これに残留γの量の減少が顕著になるほどセメンタイトが形成されやすくなることを考慮してセメンタイトへの分解の基準となる時間を導出した式であり(杉本孝一ら,「材料組織学」,朝倉書店,1991年4月15日,p.105−107参照)、Ptより保持時間が長いと保持中にセメンタイトが形成されて残留γが分解され、加熱プレス成形後の部材における加工誘起変態が抑制され伸びが低下する。
下記表1に示す成分の鋼を溶製し、厚さ120mmのインゴットを作成した。
これを熱間圧延で厚さ25mmにした後、再度、熱間圧延で厚さ3.2mmとした。これを酸洗した後、厚さ1.6mmに冷間圧延して供試材とし、表2に示す条件にて熱処理を施した。
なお、表1中のAc1およびAc3は下記式2および式3を用いて求め、Ac3C=0は下記式3において[C]=0として求めた(幸田成康監訳,「レスリー鉄鋼材料学」,丸善株式会社,1985年,p.273参照)。
式2:Ac1(℃)=723+29.1[Si]−10.7[Mn]+16.9[Cr]−16.9[Ni]
式3:Ac3(℃)=910−203√[C]+44.7[Si]−30[Mn]+700[P]+400[Al]+400[Ti]+104[V]−11[Cr]+31.5[Mo]−20[Cu]−15.2[Ni]
ただし、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。
上記のようにして得られた鋼板について、上記[発明を実施するための形態]の項で説明した測定方法により各相の面積率を測定し、その測定結果を表2に併記した。
Figure 2012148305
Figure 2012148305
上記表2の条件で熱処理された各鋼板について、加熱プレス成形時における成形性と加熱プレス成形された高強度鋼部材の機械的特性を評価するため、以下のように加熱プレス成形を模擬した試験を実施した。
まず、加熱プレス成形される前の元の鋼板の室温特性および室温でのプレス成形時における成形性を評価するため、各鋼板試験片について、室温における引張試験を行い、その際に測定された引張強度TSおよび伸びELを、元の鋼板の室温特性とすると同時に、室温でのプレス成形時におけるプレス荷重および延性とみなした。
ついで、加熱プレス成形時における成形性を評価するため、各鋼板試験片について、種々の加熱温度と保持時間の組み合わせにて高温引張試験を行い、その際に測定された引張強度TSおよび伸びELを、加熱プレス成形時におけるプレス荷重および延性とみなした。
さらに、加熱プレス成形により成形された高強度鋼部材の室温特性を評価するため、上記表2の条件で熱処理された各鋼板試験片を、変形を与えることなく、上記高温引張試験と同じ加熱条件で加熱だけして室温まで冷却した後、室温にて引張試験を行い、その際に測定された引張強度TSおよび伸びELを、高強度鋼部材の室温特性とみなした。
なお、引張強度TSおよび伸びELの測定は、圧延方向と直角方向に長軸をとってJIS Z 2201に記載の5号試験片を作成し、JIS Z 2241に従って行った。
測定結果を下記表3および表4に示す。なお、これらの表中において、「TS(対室温比)」、「EL(対室温比)」とは、元の鋼板のTS、ELに対する相対値(倍率)で表したものである。また、同表において、CγおよびPtは上記式1を用いて算出したものであるが、同式中のA3、A3C=0は上記表1中のAc3、Ac3C=0にそれぞれ等しいとした。
この試験における判定基準は以下のとおりであり、下記(1)〜(3)の条件をすべて満足する場合を合格(○)とし、ひとつでも満足しない場合を不合格(×)とした。
(1) 元の鋼板の室温特性
TSが980MPa以上
(2) 加熱時の鋼板の特性
TSが元の鋼板の室温でのTSの0.7倍以下、かつ、
ELが元の鋼板の室温でのELの1.5倍以上
(3) 冷却後の鋼板の特性
TSが980MPa以上、かつ、
TSが元の鋼板のTSの0.9倍以上、かつ、
TS×ELが12000MPa・%以上
これらの表に示すように、本発明法の規定(鋼板成分および成形条件)のいずれかを充足しない条件で加熱プレス成形した試験番号4,6,8,14〜18,21,25,26,29,30は、いずれも上記判定基準を満足していない(判定:×)。
例えば、試験番号4は、加熱プレス成形を模擬した工程(成形模擬工程)での保持時間が長すぎるため、鋼板が焼戻され、冷却後のTSが不足している。
また、試験番号6は、成形模擬工程での加熱温度が低すぎるため、加熱時のTSが高く、成形性に劣っている。
一方、試験番号8は、成形模擬工程での加熱温度が高すぎるため、鋼板が焼戻され、冷却後のTSが不足している。
また、試験番号14は、表2の鋼No.7に示すとおり、ベイニティックフェライト量が不足するともに、ポリゴナルフェライト量が過剰なため、元の鋼板のTSが不足している。
また、試験番号15は、表2の鋼No.8に示すとおり、残留γ量が不足するため、冷却後のTS×ELが不足している。
また、試験番号16は、表2の鋼No.9に示すとおり、元の鋼板がベイナイト鋼であるため、冷却後のTSが不足している。
また、試験番号17は、表2の鋼No.10に示すとおり、元の鋼板がDP鋼であるため、冷却後のTSが不足している。
また、試験番号18は、表2の鋼No.11に示すとおり、元の鋼板がマルテンサイト鋼であるため、冷却後のTSが不足している。
また、試験番号21は、表1の鋼種Dに示すとおり、C量が不足するため、元の鋼板のTSが不足している。
また、試験番号25は、表1の鋼種Hに示すとおり、Si量が不足するため、残留γの分解が早く起り、冷却後のELおよびTS×ELが不足している。
また、試験番号26は、表1の鋼種Iに示すとおりSi量が過多のため、表2の鋼No.19に示すとおりフェライト量が多く、元の鋼板のTSが不足している。
また、試験番号29は、表1の鋼種Lに示すとおりMn量が不足するため、元の鋼板のELが不足するとともに、残留γの分解も早く起るため、冷却後のTS×ELが不足している。
また、試験番号30は、表1の鋼種Mに示すとおりMn量が過多のため、冷延で割れが発生し、試験片さえも作製できなかった。
これに対し、本発明法の規定(鋼成分および成形条件)をすべて充足する条件で加熱プレス成形した試験番号1〜3,5,7,9〜13,19,20,23,24,27,28,31〜36は、いずれも上記判定基準を満足している(判定:○)。
なお、試験番号22は、加熱時の成形性および冷却後の鋼板特性に問題はなく、上記判定基準を満足する(判定:○)が、表1の鋼種Eに示すとおり、C量が過多のため、溶接ができない。
また、試験番号30は、表1の鋼種Mに示すとおりMn量が過多のため、冷延で割れが発生し、試験片さえも作製できず、試験を実施できず判定は不能であった。
以上のことから、本発明法は、加熱プレス成形時の成形性に優れるとともに、成形後の高強度鋼部材の特性も十分に確保できることが明らかである。
Figure 2012148305
Figure 2012148305

Claims (4)

  1. 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
    C:0.05〜0.3%、
    Si:0.5〜3.0%、
    Mn:0.2〜3.0%、
    P:0.1%以下(0%を含む)、
    S:0.01%以下(0%を含む)、
    N:0.01%以下(0%を含む)、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、
    面積率で、
    ベイニティックフェライト:50〜90%、
    残留オーステナイト:5%以上、
    マルテンサイト:40%以下(0%を含む)、
    ポリゴナルフェライト:40%以下(0%を含む)からなる組織を有する鋼板を、
    450〜600℃の温度T℃に加熱し、その温度T℃において下記式で定義されるPt秒以下の保持時間でプレス成形することを特徴とする高強度鋼部材の成形方法。
    Figure 2012148305
  2. 前記鋼板の成分組成が、更に、
    Cr:0.01〜3.0%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    Cu:0.01〜2.0%、
    Ni:0.01〜2.0%
    の1種または2種以上
    を含むものである請求項1に記載の高強度鋼部材の成形方法。
  3. 前記鋼板の成分組成が、更に、
    B:0.00001〜0.001%、および/または
    Ti:0.01以下(0%を含まない)
    を含むものである請求項1または2に記載の高強度鋼部材の成形方法。
  4. 前記鋼板の成分組成が、更に、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    Mg:0.0005〜0.01%、
    REM:0.0001〜0.01%
    の1種または2種以上
    を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼部材の成形方法。
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