JP2015145521A - 高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】引張強度:980MPa以上で、異方性の小さい曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性に優れる高強度冷延鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.5〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.020%以下、S:0.0030%以下、Al:0.005〜0.08%およびN:0.008%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成とし、体積分率で、ベイナイト相:80〜94%、マルテンサイト相:1〜5%および残留オーステナイト相:5〜15%であり、かつ、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総体積比率に占める長軸長5μm以下のマルテンサイト相および長軸長5μm以下の残留オーステナイト相の2相の和の体積割合が80〜100%、を含む組織からなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、複雑な形状にプレス成形される自動車車体用骨格構造部品などに供して好適な引張強度が980MPa以上を有する高強度冷延鋼板およびその製造方法に関する。
従来、引張強度(以下、TSと称することもある):980MPa級以上の高強度冷延鋼板は軽加工部品に適用されることが多かった。しかし、最近では、より一層の衝突安全性かつ車体軽量化による燃費向上を両立させるべく、複雑形状のプレス部品への適用が検討されており、加工性に優れる鋼板に対するニーズは高い。
複雑形状のプレス部品への加工様式としては、張出し加工、伸び-フランジ加工、曲げ加工、深絞り加工があるが、TS:980MPa級以上の高強度冷延鋼板においては、加工様式として張出し加工、伸び-フランジ加工、曲げ加工が主体となる。加工性の評価手法の一例としては、張出し加工性に関しては、引張り試験における伸び、伸び-フランジ加工性については穴拡げ試験における穴拡げ率、曲げ加工性については曲げ試験による限界曲げ半径等により評価されている。
しかしながら、一般に、鋼板は高強度化に伴い加工性が低下する傾向にあることから、プレス成形時における割れの回避が高強度鋼板の適用を拡大する上で大きな課題となっている。また、TS:980MPa級以上に高強度化する場合、強度確保の観点からCu、Ni、Cr、Mo、NbおよびVなどの極めて高価な希少元素の積極的な添加が必要とされることが多い。
更には、曲げ性に関しては、自動車用部材をプレス打ち抜きする際に、鋼板の歩留まりからみて、部品形状に応じて採取方向が鋼板の長手方向に部品の長手を採取する場合(L方向採り)や、長手直角方向に部品を採取する場合(C方向採り)も出てくる。その場合、従来技術による鋼板では、C曲げ(鋼板の長手が圧延直角方向に採取されたサンプルを曲げる場合)がL曲げ(鋼板の長手が圧延方向に採取されたサンプルを曲げる場合)に比べて著しく劣るという問題がある。
上記を受けて、例えば特許文献1〜4に、加工性に優れる高強度冷延鋼板を得る技術が開示されている。
特開2004−332100号公報 特開2005−298964号公報 特開2005−179703号公報 特開2011−157583号公報
特許文献1に記載の技術では、Cu、Ni、Cr、Mo、Nbなどの高価な元素を必須としている。そのため、高コストである。また、残留オーステナイトを含まない単相組織であるため、高い穴拡げ率は得られているが、曲げ性向上に関する知見はない。
特許文献2では、高価なMoを必須とし、フェライト相を主相とした伸びフランジ性に優れる鋼板について開示されている。しかしながら、曲げ性の向上に関する知見はない。
特許文献3では、オーステナイト安定化元素として高価なNiやCu等を必須とする。そのため、高コストである。また、残留オーステナイト相を活用してTS:780〜980MPa級で高いElを達成する知見は開示されているが、曲げ性の向上に関する知見はない。
特許文献4では、高温域生成ベイナイト相、低温域生成ベイナイト相および焼戻しマルテンサイト相を主相とした伸びフランジ性に優れる鋼板について開示されている。また、残留オーステナイト相を活用してTS:980〜1270MPa級で優れた伸び、伸びフランジ性および曲げ性のバランスを達成する知見は開示されている。しかしながら組織の均一化を指向するのではなく、強度レベルのことなる複数の組織を得るために、加熱、冷却後の保持工程で、ステップ時間が必要な2段冷却、または温度降下量の大きい徐冷が必要であり、複数の温度保持設備が必要であり高コスト化である。また、特許文献4による曲げ性の評価は試験片を長手方向から採取して、L曲げにより評価しているが、上述したように、部品の板採り方向によっては、C曲げ(試験片を幅手方向から採取して曲げる)となる場合があり、曲げ加工時に割れが発生するケースがある。
本発明は、上記の問題を有利に解決するためになされたもので、高価な合金元素であるCu、Ni、Cr、Mo、Nb、Vを含有させることなく、異方性の小さい曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性に優れる高強度冷延鋼板および製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、加工性の観点から高価な希少金属を含有させなくても、金属組織中、特にオーステナイトから低温変態生成するベイナイト相の体積分率、さらには残留オーステナイト相およびマルテンサイト相の体積分率およびサイズを厳密に制御することにより、異方性の小さい曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性に優れる、引張強度(TS):980MPa以上の高強度冷延鋼板が得られることを知見した。本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.5〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.020%以下、S:0.0030%以下、Al:0.005〜0.08%およびN:0.008%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、体積分率で、ベイナイト相:80〜94%、マルテンサイト相:1〜5%および残留オーステナイト相:5〜15%であり、かつ、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総体積比率に占める長軸長5μm以下のマルテンサイト相および長軸長5μm以下の残留オーステナイト相の2相の和の体積割合が80〜100%を含む組織からなることを特徴とする、高強度冷延鋼板。
(2)前記鋼板が、質量%でさらに、Ca:0.0001〜0.0050%、Sb:0.0001〜0.1%、Ti:0.001〜0.050%、B:0.0001〜0.0050%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の高強度冷延鋼板。
(3)上記(1)または(2)に記載の高強度冷延鋼板の製造方法であって、鋼スラブを、熱間圧延後、400〜800℃で熱処理を行い、酸洗、冷間圧延を行った後、焼鈍温度:860〜960℃、均熱時間:5秒以上50秒未満で焼鈍後、冷却速度:5〜80℃/秒で冷却停止温度:350〜450℃まで冷却し、次いで、350〜450℃の温度域にて100秒以上保持することを特徴とする、高強度冷延鋼板の製造方法。
なお、本発明において、高強度冷延鋼板とは、引張強度(TS)が980MPa以上の冷延鋼板である。
本発明によれば、高価な合金元素を含有させることなしに、異方性の小さい曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性に優れ、しかも引張強度が980MPa以上の高強度冷延鋼板を得ることができる。そして、本発明により得られる高強度冷延鋼板は、特に厳しい形状にプレス成形され、かつ、部品の鋼板からの板採りの自由度がある自動車部品として好適である。
長軸長5μm越えのマルテンサイト、残留オーステナイトを示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明者らは、高強度冷延鋼板の加工性とくに異方性の小さい、優れた曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性の向上に関し、鋭意検討を重ねた。その結果、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、Vを含有しない成分系においても、ベイナイト相の体積分率が80〜94%、マルテンサイト相の体積分率が1〜5%および残留オーステナイト相の体積分率が5〜15%を満たすように組織調整し、更には、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総体積比率に占める長軸長5μm以下のマルテンサイト相および長軸長5μm以下の残留オーステナイト相の2相の和の体積割合を80〜100%の範囲に制御することで、本発明で意図する効果が有利に得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
以下、本発明の成分組成および組織の限定理由について具体的に説明する。なお、鋼板中の元素の含有量の単位は何れも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
まず、本発明における鋼の成分組成の適正範囲およびその限定理由は以下のとおりである。
C:0.05〜0.25%
CはTSに寄与し、0.05%未満では所望の引張強度980MPa以上の確保が困難となる。一方0.25%を超えるとスポット溶接性が著しく劣化するだけでなく、マルテンサイト相が硬質化して本発明で意図する曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性の低下を招く。従って、C量は0.05〜0.25%の範囲とする。なお、本発明で特徴とする残留オーステナイトを安定して生成させるための好ましいC量は0.15%以上である。また、本発明で意図する伸びフランジ性をより高めるための好ましいC量は0.23%以下である。
Si:0.5〜2.0%
Siは、残留オーステナイトを安定化するのに重要な元素である。上記作用を得るには0.5%以上含有させる必要がある。一方、2.0%を超えて添加するとその効果が飽和するばかりでなく、鋼板が脆くなって割れが生じ、本発明で意図する曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性が低下する。また、過度に含有させると、熱延時に難剥離性のスケールが生成して鋼板の表面性状が劣化し、加えて鋼板表面や結晶粒界などに偏析、濃化することにより本発明で意図する曲げ性の劣化を招く。従って、Si量は0.5〜2.0%の範囲とする。好ましいSi量は1.2〜1.8%の範囲である。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、焼入れ性を向上させる元素であり、フェライトおよびパーライトの生成を抑制し強度確保を容易にする作用がある。上記作用を得るには1.0%以上含有させる必要がある。一方、3.0%を超えて含有すると過度に硬質化し、熱間での延性が不足し、スラブ割れが生じるおそれがある。また、Mnの偏析などに起因して部分的に変態点が異なる組織となり、結果としてフェライト相とマルテンサイト相がバンド状で存在する不均一な組織となり、本発明で意図する曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性の低下を招く。さらに、鋼板表面や結晶粒界などに偏析、濃化することにより材質を劣化させる。そのため、Mn量は1.0〜3.0%の範囲とする。好ましいMn量は1.5〜2.5%の範囲である。
P:0.020%以下
Pは、強度に寄与する元素である。一方、スポット溶接性に悪影響を及ぼすため、極力低減することが好ましいが、0.020%までは許容できる。このためP量は0.020%以下とする。スポット溶接性の観点からの好ましいP量の上限は、0.008%以下である。P量を過度に低減することは製鋼工程での生産能率が低下し、高コストとなるため、P量の下限は0.001%とすることが好ましい。
S:0.0030%以下
S量が増加すると、MnSなどの硫化物系介在物を形成し、このMnSが冷間圧延により展伸し、板状の介在物として存在することにより、変形時の割れの起点となり、本発明で意図する曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性を低下させる。そのため、Sは極力低減することが望ましいが、0.0030%までは許容できる。このためS量は0.0030%以下とする。伸びフランジ性をより向上させるための好ましいS量は0.0010%以下である。S量の過度の低減は工業的に困難であり、製鋼工程における脱硫コストの増加を招くので、S量の好ましい範囲は0.0001%程度とする。
Al:0.005〜0.08%
Alは、製鋼工程において脱酸剤として有効であり、曲げ性および伸びフランジ性を低下させる非金属介在物をスラグ中に分離する点でも有用である。上記の目的を達成するには0.005%以上の添加が必要である。一方、0.08%を超えて含有すると、アルミナなどの介在物増加による加工性の劣化という問題が生じる。従って、Al量は0.005〜0.08%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.06%の範囲である。
N:0.008%以下
鋼板の清浄化による伸び向上の観点からN量は少ないほうが好ましい。N量が0.008%以下であれば本発明の効果を損なわれないため、N量の上限は0.008%とする。N量の好ましい範囲は0.0060%以下である。N量の過度の低減は製鋼工程における脱窒コストの増加を招くので、N量の下限は0.0010%とすることが好ましい。
上記以外の成分はFeおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて以下の選択元素を適宜添加することができる。
Ca:0.0001〜0.0050%、Sb:0.0001〜0.1%、Ti:0.001〜0.050%、B:0.0001〜0.0050%のいずれか1種以上Ca:0.0001〜0.0050%
Caは鋼中の硫化物の形態制御を通じ、曲げ性および伸びフランジ性を一層向上させることが可能な元素である。かかる効果を発現するには0.0001%以上含有させることが好ましい。一方で過剰の含有は鋼板表層に多数の介在物が生成し、本発明で意図する曲げ性および伸びフランジ性を低下させる場合がある。従って、Ca量は0.0001〜0.0050%の範囲とすることが好ましい。
Sb:0.0001〜0.1%
Sbは、昇温加熱、均熱焼鈍など熱処理中の鋼板内部からの脱炭を抑制する効果がある。かような脱炭が生じると表層が粗大フェライトとなり、成形後の肌荒れや表面性状の不良の原因となる。また、過度に脱炭されると強度(TS)が低下する原因となる。特にSbは、本発明鋼のようにC含有量が0.05%以上の場合に脱炭抑制効果が顕著となる。これら効果を得るためには、Sb量は0.0001%以上の添加が好ましい。一方、Sb量が0.1%を超えると、上記効果は飽和する。従って、Sb量は0.0001〜0.1%の範囲とすることが好ましい。
Ti:0.001〜0.050%
Tiは、鋼中で炭窒化物や硫化物を形成することにより、熱延板組織ならびに焼鈍後の鋼板組織の細粒化および析出強化による強度向上に有効に寄与する。また、Bを添加する場合、NをTiNとして固定することによりBNの形成を抑制し、Bによる焼入れ性を発現させる上でも有効な元素である。これらの効果を得るには0.001%以上含有させることが好ましい。なお、Ti量が0.050%を超えると、α鉄(フェライトおよびベイナイト)中に過度に析出物が生成し、過度の析出強化により、伸びの低下を招く場合がある。従って、Ti量は0.001〜0.050%の範囲が好ましい。より好ましくは0.010〜0.030%の範囲である。
B:0.0001〜0.0050%
Bは、焼入れ性を高めて焼鈍冷却過程で起こるフェライトの生成を抑制し、所望量のベイナイト相、マルテンサイト相および残留オーステナイト相を確保するのに有効に寄与し、優れた強度と伸びのバランスを得るために有用な元素である。この効果を得るためには、Bを0.0001%以上含有させることが望ましい。一方、B量が0.0050%を超えると、上記の効果は飽和する。従って、B量は0.0001〜0.0050%の範囲とすることが好ましい。
次に、本発明にとって重要な要件の一つである鋼組織の適正範囲およびその限定理由について説明する。
本発明では、焼鈍、冷却、保持過程で、フェライト相およびパーライト相の生成を極力抑制し、保持過程で、オーステナイト相からベイナイト変態を進行させ、オーステナイト相へのC濃化を促進させ、保持後に引き続き室温まで冷却して、最終的に残留オーステナイト相を所定量確保する。とともに、保持後の冷却過程において生成する硬質なマルテンサイト量を調整することにより、軟質なフェライト相を含まないベイナイト相、マルテンサイト相、および残留オーステナイト相を主体とする組織とする。
ベイナイト相体積分率:80〜94%
ベイナイト相は、同じくオーステナイトから変態するマルテンサイト相よりも高温で変態し、マルテンサイト相より軟質である。従って、ベイナイトを有することで、強度を確保しつつ本発明で意図する曲げ性および伸びフランジ性を確保することができ、またベイナイト変態を進行させることによりオーステナイト相中へのC濃化が促進され、最終的に伸びに寄与する残留オーステナイト相を所定量確保することが可能となる。
所望のTS980MPa以上を確保するには、ベイナイト相の体積分率を80%以上とする必要がある。しかしながら、ベイナイト相の体積分率が過度に多い場合には過度に高強度化するだけでなく、所定量の残留オーステナイトを確保することが困難となって伸びが低下するため、ベイナイト相の体積分率は94%以下にする必要がある。ベイナイト相を、体積分率:80〜94%の範囲で含有する組織とすることで、強度、曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性が良好な材質バランスを得ることができる。
マルテンサイト相の体積分率:1〜5%
焼鈍、均熱、冷却後の保持工程を経たのち、室温まで冷却する過程で生成するマルテンサイト相は焼戻しされておらず極めて硬質化しているので、TSの向上に寄与する。かかる効果を得るためには1%以上のマルテンサイト相を必要とする。一方でマルテンサイトが5%を超えて存在すると硬質なマルテンサイト相と他の相の界面が成形時にボイド発生や割れの起点となるため、曲げ性および伸びフランジ性に悪影響を及ぼす。従って、マルテンサイト相の体積分率は1〜5%の範囲とする。
残留オーステナイト相の体積分率:5〜15%
残留オーステナイト相は、歪誘起変態すなわち材料が変形する場合に歪を受けた部分がマルテンサイト相に変態することで、変形部が硬質化し、歪の集中を防ぐことにより延性を向上させる効果があり、高延性化のためには5%以上含有させる必要がある。しかしながら、残留オーステナイト相はC濃度が高く硬質なため、鋼板中に15%を超えて過度に存在すると、局所的に硬質な部分が存在するようになり、本発明で意図する曲げ成形および伸びフランジ成形時の材料の均一な変形を阻害する要因となることから、優れた曲げおよび伸びフランジ性を確保することが困難となる。よって、残留オーステナイト相の体積分率は5〜15%の範囲とする。
マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総体積比率に占める長軸長5μm以下のマルテンサイト相および長軸長5μm以下の残留オーステナイト相の2相の和の体積の割合が80〜100%
マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総体積比率に占める長軸長5μm超えのマルテンサイト相および長軸長5μm超えの残留オーステナイト相の2相の和の体積の割合が20%を超えて存在すると、鋼板中に局所的に硬質な部分が存在し、不均一な組織となり、曲げ加工および伸びフランジ成形時の材料の均一な変形を阻害する要因となることから、本発明で意図する曲げ、かつ伸びフランジ性を確保することが困難となる。よって、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総体積比率に占める長軸長5μm以下のマルテンサイト相および長軸長5μm以下の残留オーステナイト相の2相の和の体積の割合は80〜100%の範囲とする。なお、長軸長5μm越えのマルテンサイト、長軸長5μm越えの残留オーステナイトとは、図1に示すように後述するミクロ組織観察時に直径5μmの円形を超える塊状のマルテンサイトまたは残留オーステナイトである。このような長軸長5μm越えのマルテンサイト、長軸長5μm越えの残留オーステナイトが存在した場合、それらのマルテンサイトまたは残留オーステナイトの体積率をカウントすることにより上記長軸長5μm超えのマルテンサイト相および長軸長5μm超えの残留オーステナイト相の2相の和の体積の割合を求めることができる。
マルテンサイト相、ベイナイト相および残留オーステナイト相の割合の評価方法はたとえば、以下のようなミクロ組織の定量による。
本発明においては、下記のようなミクロ組織の定量は、圧延方向断面での各金属相の面積比率を測定し、得られた面積比率を体積分率とした。
圧延方向断面で、板厚の1/4位置の観察面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。観察はN=5(観察視野5箇所)で実施した。ベイナイト相およびマルテンサイト相および、または残留オーステナイト相の体積分率は、倍率:2000倍の断面組織写真を用い、画像解析により、任意に設定した50μm×50μm四方の正方形領域内に存在する各相の占有面積を求め、これを平均することにより、各相の体積分率とする。各相の体積分率は、SEM観察により、予め、不可避的に生成したフェライト相およびパーライト相が生成している場合は、それらの金属相の体積分率を求め、フェライト相およびパーライト相以外で、比較的平滑な表面を有し粒状、針状および塊状な形状として島状に観察された組織を残留オーステナイト相またはマルテンサイト相とみなして判定し、その他残部をベイナイト相とする。次に、残留オーステナイト相の量は、MoのKα線を用いてX線回折法により求める。すなわち、鋼板の板厚1/4付近の観察面を測定面とする試験片を使用し、オーステナイト相の(211)面および(220)面とフェライト相の(200)面および(220)面のピーク強度から残留オーステナイト相の体積率を算出し、体積比率の値とする。次いで、前記した残留オーステナイト相を含むマルテンサイト相の体積比率から残留オーステナイト相の体積分率の差分をマルテンサイト相の体積分率と判断する。
また、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総体積比率に占める長軸長5μm以下のマルテンサイト相および5μm以下の残留オーステナイト相の2相の和の割合は、前記したSEM写真により比較的平滑な表面を有し粒状、針状および塊状な形状として島状に観察された組織を残留オーステナイト相またはマルテンサイト相とみなした組織のうちで、島状の形態において長い軸方向の長さ(長軸長)が5μmを超えるものについて、それらの面積の総和を計算しその値を総体積とし、前記した島状に観察された残留オーステナイト相およびマルテンサイト相の2相の和の体積で除することにより求めることができる。
上記した相以外の残部として、不可避的に生成される金属相、すなわち、フェライト相、パーライト相などが認められることがあるが、このような不可避的に生成される相の合計が体積分率で3%未満であれば、本発明の効果に影響はない。
次に、本発明の高強度冷延鋼板の製造条件およびその限定理由について説明する。
本発明において、熱間仕上げ圧延前の工程に関しては常法に従って行えばよく、例えば、上記の成分組成範囲に調製した鋼を溶製、鋳造して得られた鋼スラブを用いることができる。また、本発明においては、連続鋳造スラブ、造塊−分塊スラブは勿論のこと、厚み:50〜100mm程度の薄スラブを用いることができ、特に薄スラブの場合は、再加熱なしに直接熱間圧延工程に供することができる。
熱間圧延についても特に制限はなく、従来公知の方法に従って行えばよい。好適条件を述べると次のとおりである。
熱間圧延時の加熱温度は1100℃以上にすることが好ましい。スケール生成を軽減、燃料原単位の低減の観点から上限は1300℃とすることが好ましい。熱間圧延における仕上げ温度は、フェライトとパーライトなど低温変態相の層状組織を回避すべく、850℃以上とするのが好ましい。また、スケール生成の軽減、結晶粒径粗大化の抑制による組織の微細均一化の観点から上限は950℃とするのが好ましい。
熱間圧延終了後の巻取り温度は、冷間圧延性、表面性状の観点から400〜600℃とするのが好ましい。次いで、熱処理を施す。本発明では、この熱間圧延後の熱処理工程が重要である。
熱延後の熱処理温度:400〜800℃
熱延、巻取り後の熱処理温度が400℃に満たない場合、熱延後の焼戻が不十分であり、熱延後の組織の影響を除去することができない。粗大な結晶粒と微細な結晶粒が混在する不均一なベイナイト単相組織やマルテンサイト単相組織、またはフェライト、パーライトから構成される層状の熱延板組織に起因した不均一な組織となる。その結果、冷延、焼鈍後に最終的に得られる組織において均一な結晶粒が得られず、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総体積比率に占める長軸長5μm超えのマルテンサイト相および長軸長5μm超えの残留オーステナイト相の2相の和の体積の割合が20%を超え、鋼板中に局所的に硬質な部分が存在し、不均一な組織となり、本発明で意図する異方性の小さい曲げ性、伸びかつ優れた伸び、伸びフランジ性が得られない。また熱延板は硬質化し冷間圧延の負荷が増大し、高コストとなる。一方、800℃を超えて熱処理すると、パーライトおよび硬質なマルテンサイトが生成し、均一な組織が得られない。また、結晶粒界にPが偏析し、鋼板が脆化し、伸びおよび伸びフランジ性は著しく低下する。400〜800℃の範囲で熱処理することにより、冷延、焼鈍後に最終的に得られる組織は均一な結晶粒となり、異方性の小さい曲げ性、伸び、伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板が得られる。したがって冷間圧延前に極めて均一な組織とするには熱延後の熱処理温度は400〜800℃の範囲とする。
熱延後の熱処理の保持時間が5分に満たない場合、熱延後の焼戻が不十分であり、熱延後の組織の影響を除去することができない場合がある。熱延後の熱処理の保持時間は、長くても構わないが、生産性を阻害するので5分以上5時間以下とするのが好ましい。
熱処理後の鋼板は、常法に従い酸洗後、冷間圧延工程を経て次の工程、すなわち焼鈍に供される。本発明では、この焼鈍工程以降が重要である。
焼鈍温度:860〜960℃
フェライトの生成を抑制するためには、焼鈍によりオーステナイト粒径を粗大化し、フェライトの生成サイトを減らしておくことが重要である。焼鈍温度が860℃以上であれば、ガスジェット冷却で得られる冷却速度レベルにおいても連続冷却中にフェライトの生成が抑制される。焼鈍温度の上限はとくに限定されるものではないが、高コスト、加熱炉の損傷などの観点から960℃とする。一方、焼鈍温度が860℃より低い場合、冷却中にフェライト相が生成し、最終的に得られる組織におけるフェライト相の体積分率が多くなって、TS:980MPaの確保が困難となる。さらに、冷却中にオーステナイト相へのC濃化が促進され、マルテンサイト相が過度に硬質化して、曲げ性および伸びフランジ性が低下する。従って、焼鈍温度は860〜960℃の範囲とする。
均熱時間:5秒以上50秒未満
均熱時間が5秒に満たない場合、焼鈍中のオーステナイト粒径の粗大化が不十分であり、冷却中にフェライトが生成する。一方、均熱時間の上限は生産性の観点から50秒未満とする。従って、均熱時間は5秒以上50秒未満の範囲とする。
冷却速度:5〜80℃/秒
焼鈍後の冷却速度は所望量のベイナイト相、マルテンサイト相および残留オーステナイト相を得るために重要である。この冷却速度が平均で5℃/秒未満の場合、フェライト相が生成し、所定量のベイナイト相およびマルテンサイト相の確保が困難となり、軟質化するため、強度の確保が困難となる。一方、冷却速度が平均で80℃/秒を超えても材質上は問題ないが、冷却停止温度域での過冷却などの制御性の観点から、上限を80℃/秒とする。従って、冷却速度は5〜80℃/秒の範囲とする。量産時の冷却停止温度変動を考慮すると冷却速度の上限は50℃/秒が好ましい。
なお、この場合の冷却は、ガス冷却とすることが好ましいが、その他、炉冷、ミスト冷却、ロール冷却および水冷などの方法を用いることができ、またはそれらを組み合わせて使用することも可能である。
冷却停止温度:350〜450℃
冷却停止温度が350℃を下回る場合、マルテンサイト相の体積分率が過剰となるだけでなく、未変態のオーステナイト相の体積分率が減少するため、保持中のベイナイト変態の進行に伴う残留オーステナイト相の体積分率を所望量確保することが困難となり、異方性の小さい曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性に優れる高強度冷延鋼板の確保が困難となる。一方、冷却停止温度が450℃超の場合、ベイナイト変態の開始、終了が長時間側となり、ベイナイト変態進行に伴う残留オーステナイトの生成が遅延し、所望の体積比率確保が困難となり、優れた延性を得ることが困難となる。また、未変態のオーステナイト相が保持後の冷却過程においてマルテンサイト相へ変態するため過度に高強度化し、曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性が低下する。ベイナイト相を主体とし、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の存在比率を制御し、TS:980MPa級以上の強度を確保すると共に、異方性の小さい曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性をバランス良く得るためには、冷却停止温度は350〜450℃の範囲とする必要がある。冷却停止温度が高い場合、ベイナイト変態開始温度が長時間側となり、冷却停止直後にはオーステナイトのままであることから、特に、より一層ベイナイト変態を促進させ残留オーステナイトを安定して確保し、良好な伸びを得るには冷却停止温度域(保持温度域)の上限は400℃が好ましい。冷却停止温度が低くなりすぎる場合、または冷却停止温度から温度降下し、保持開始前、保持中に保持温度が低下する場合、ベイナイト変態開始温度が長時間側となり、所望のベイナイト相、残留オーステナイト相が得られないばかりか、硬質なマルテンサイト相の体積分率が増加し、高い伸びは得られない。
保持温度:350〜450℃の温度域
保持温度が350℃を下回る場合、マルテンサイト相の体積分率が過剰となるだけでなく、未変態のオーステナイト相の体積分率が減少するため、保持中のベイナイト変態の進行に伴う残留オーステナイト相の体積分率を所望量確保することが困難となり、異方性の小さい曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性に優れる高強度冷延鋼板の確保が困難となる。一方、保持温度が450℃超の場合、ベイナイト変態の開始、終了が長時間側となり、ベイナイト変態進行に伴う残留オーステナイトの生成が遅延し、所望の体積比率確保が困難となり、優れた延性を得ることが困難となる。また、未変態のオーステナイト相が保持後の冷却過程においてマルテンサイト相へ変態するため過度に高強度化し、曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性が低下する。ベイナイト相を主体とし、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の存在比率を制御し、TS:980MPa級以上の強度を確保すると共に、異方性の小さい曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性をバランス良く得るためには、保持温度は350〜450℃の温度域の範囲とする必要がある。
保持時間:100秒以上
上記冷却後、上記した保持温度域で保持するが、この温度域での保持時間が100秒に満たない場合、保持中のベイナイト変態の進行に伴うオーステナイト相へのC濃化が進行する時間が不十分となり、最終的に所望の残留オーステナイト体積分率を得ることが難しく、また保持終了後の冷却過程において未変態のオーステナイトから過度にマルテンサイト相が生成して高強度化し、曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性が低下する。従って、保持時間は100秒以上とする。保持時間の上限は特に定めないが、10,000秒を超えて保持しても残留オーステナイト量は増加せず、伸びの顕著な向上は認められない。特に、より一層ベイナイト変態を促進させ残留オーステナイトを安定して確保し、良好な伸びを得るには保持時間は長いほうが好ましく、150秒〜1,000秒が好ましい。
また、ベイナイト変態を促進させ残留オーステナイトを安定して確保し、より良好な伸びを得るには、前記した冷却停止温度の350〜450℃の温度域で等温保持(冷却停止温度=保持温度)とすることが好ましい。
なお、冷却停止後の鋼板を上記保持温度域に保持する手段としては、例えば、焼鈍後の冷却設備の下流工程に保温装置等を設けて、鋼板の温度を上記保持温度に調整する手段等が挙げられる。また、保持後の鋼板は、従来公知の任意の方法により所望の温度に冷却される。
上記のようにして得られた冷延鋼板に、形状矯正や表面粗度調整の目的から調質圧延(スキンパス圧延)を行ってもかまわないが、過度にスキンパス圧延をすると鋼板に歪が導入されるため、結晶粒が展伸されて圧延加工組織となり、延性が低下するおそれがある。そのため、スキンパス圧延の圧下率は0.05%以上0.5%以下程度とすることが好ましい。
表1に示す成分組成になる鋼を溶製してスラブとし、1180℃に加熱後、仕上げ圧延機出側温度:880℃で熱間圧延を施し、圧延終了後、60℃/秒の速度で冷却して、400℃で巻取り後、表2に示す条件で熱処理を施した。次いで、塩酸酸洗後、冷間圧延を施して板厚:1.4mmの冷延鋼板に仕上げたのち、表2に示す条件で焼鈍処理を施した。前記した各工程での温度の計測は放射温度計で鋼板表面の温度を計測することにより行った。
得られた冷延鋼板について、以下に示す材料試験により材料特性を調査した。
(1)鋼板の組織
圧延方向断面で、板厚の1/4位置の面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより調査した。観察はN=5(観察視野5箇所)で実施した。ベイナイト相およびマルテンサイト相および残留オーステナイト相の体積分率は、倍率:2000倍の断面組織写真を用い、画像解析により、任意に設定した50μm×50μm四方の正方形領域内に存在する各相の占有面積を求め、これを平均することにより、各相の体積分率とした。各相の体積分率は、SEM観察により、予め、不可避的に生成したフェライト相およびパーライト相が生成している場合は、それらの金属相の体積分率を求め、フェライト相およびパーライト相以外で、比較的平滑な表面を有し粒状、針状および塊状な形状として島状に観察された組織を残留オーステナイト相またはマルテンサイト相とみなして判定し、その他残部をベイナイト相とした。次に、残留オーステナイト相の量は、MoのKα線を用いてX線回折法により求めた。すなわち、鋼板の板厚1/4付近の面を測定面とする試験片を使用し、オーステナイト相の(211)面および(220)面とフェライト相の(200)面および(220)面のピーク強度から残留オーステナイト相の体積率を算出し、体積分率の値とした。次いで、前記した残留オーステナイト相を含むマルテンサイト相の体積分率から残留オーステナイト相の体積分率の差分をマルテンサイトの体積分率と判断した。
また、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総面積比率に占める長軸長5μm以下のマルテンサイト相および残留オーステナイト相の2相の和の体積割合は、前記したSEM写真により比較的平滑な表面を有し粒状、針状および塊状な形状として島状に観察された組織を残留オーステナイト相またはマルテンサイト相とみなした組織のうちで、島状の形態において長い軸方向の長さ(長軸長)が5μmを超えるものについて、それらの体積の総和を計算し、前記した島状に観察された残留オーステナイト相またはマルテンサイト相の体積で除することにより求めた(図1参照)。
(2)引張特性
圧延方向と90°の方向を長手方向(引張方向)とするJIS Z 2201に記載の5号試験片を用い、JIS Z 2241に準拠した引張試験を行って評価した。なお、引張特性の評価基準はTS×El≧18000MPa・%以上(TS:引張強度(MPa)、El:全伸び(%))を良好とした。
(3)穴拡げ率
日本鉄鋼連盟規格JFST1001に基づき実施した。初期直径d0=10mmの穴を打抜き、頂角:60°の円錐ポンチを上昇させて穴を拡げた際に、亀裂が板厚を貫通したところでポンチの上昇を停止して、亀裂貫通後の打抜き穴径dを測定し、次式
穴拡げ率(%)=((d−d0)/d0)× 100
で算出した。同一番号の鋼板について3回試験を実施し、穴拡げ率の平均値(λ)を求めた。なお、伸びフランジ性(TS×λ)の評価基準はTS×λ≧46000MPa・%以上を良好とした。
(4)曲げ試験
板厚1.4mmの鋼板を用い、曲げ部の稜線と圧延方向が平行、直角になるように2方向でサンプルを採取し、サンプルサイズは40mm×100mm(サンプルの長手が圧延直角方向(C曲げ)、平行方向(L曲げ))とした。下死点での押し付け荷重88.2kNの90°V曲げを行い、曲げ頂点で割れの有無を目視判定し、割れ、毛割れの発生ない最小の限界曲げ半径(R)を求め、限界曲げ半径R/板厚t≦1.0、かつ-0.5≦R/t(C曲げ)-R/t(L曲げ)≦0.5を満足する場合、異方性の小さい優れた曲げ性であるとした。曲げ試験に用いた金型の最小曲げ半径は0.25mmであり、割れが無い場合、最小曲げ半径/板厚=0.25mm/1.4mm=0.18とし、異方性は0.18/0.18として求めた。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2015145521
Figure 2015145521
Figure 2015145521
表3に示すように、本発明例の冷延鋼板は、曲げ性、伸び、および伸びフランジ性がいずれも良好であった。これに対し、比較例の冷延鋼板は、曲げ性、伸びおよび伸びフランジ性のいずれかにおいて、十分な特性が得られなかった。
本発明の高強度冷延鋼板は、自動車部品として好適であり、それ以外にも、建築および家電分野など厳しい寸法精度、加工性が必要とされる用途にも有用である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.5〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.020%以下、S:0.0030%以下、Al:0.005〜0.08%およびN:0.008%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、体積分率で、ベイナイト相:80〜94%、マルテンサイト相:1〜5%および残留オーステナイト相:5〜15%であり、かつ、マルテンサイト相および残留オーステナイト相の総体積比率に占める長軸長5μm以下のマルテンサイト相および長軸長5μm以下の残留オーステナイト相の2相の和の体積割合が80〜100%を含む組織からなることを特徴とする、高強度冷延鋼板。
  2. 前記鋼板が、質量%でさらに、Ca:0.0001〜0.0050%、Sb:0.0001〜0.1%、Ti:0.001〜0.050%、B:0.0001〜0.0050%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の高強度冷延鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の高強度冷延鋼板の製造方法であって、鋼スラブを、熱間圧延後、400〜800℃で熱処理を行い、酸洗、冷間圧延を行った後、焼鈍温度:860〜960℃、均熱時間:5秒以上50秒未満で焼鈍後、冷却速度:5〜80℃/秒で冷却停止温度:350〜450℃まで冷却し、ついで350〜450℃の温度域にて100秒以上保持することを特徴とする、高強度冷延鋼板の製造方法。
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