JP2003171407A - エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンの製造方法 - Google Patents

エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 乳化重合コントロール性に優れ、しかもホル
ムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド化合物
をほとんどまたはまったく含有せず、さらに臭気もほと
んどない環境負荷の少ないエチレン−酢酸ビニル共重合
体系樹脂エマルジョンの製造方法を提供すること。 【解決手段】 けん化度70モル%以上のビニルアルコ
ール系重合体を分散剤として、エチレン−酢酸ビニル共
重合体を乳化重合する際に、過酸化水素と酒石酸、エリ
ソルビン酸、アスコルビン酸およびこれらの金属塩から
選ばれる少なくとも一種の化合物からなるレドックス系
重合開始剤を用い、鉄化合物を添加して乳化重合し、乳
化重合後、無機系還元剤を添加することを特徴とするエ
チレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンの製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乳化重合コントロ
ール性に優れ、しかもホルムアルデヒド、アセトアルデ
ヒド等のアルデヒド化合物をほとんどまたはまったく含
有しない環境負荷の少ないエチレン−酢酸ビニル共重合
体系樹脂エマルジョンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリビニルアルコール(以下、P
VAと略記することがある)を保護コロイドとするポリ
酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは紙用、木工用およびプ
ラスチック用などの各種接着剤、含浸紙用および不織製
品用などの各種バインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、
紙加工および繊維加工、壁紙などの分野で広く用いられ
ている。PVAを保護コロイドとするポリ酢酸ビニル系
樹脂エマルジョンの一種であるエチレン−酢酸ビニル共
重合体系樹脂エマルジョンの重合には、重合安定性、エ
マルジョンの耐水性などの観点から、過酸化水素が広く
用いられ、過酸化水素とのレドックス反応が鋭敏である
ことから、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート
(通称ロンガリット、以下ロンガリットと記述する)が
頻用されてきた。しかし、ロンガリットは分解時にホル
ムアルデヒドを発生するため、得られるエマルジョン中
にホルムアルデヒドが含まれるという重大な問題点を有
しており、昨今の環境問題から、ロンガリットの使用が
忌避されている。このような状況下、未反応酢酸ビニル
モノマーを低減するためには、重合開始剤、および重合
条件を再構築することが不可欠となっている。特開20
01−163910公報ではエリソルビン酸類、アスコ
ルビン酸類を還元剤として用いることでノンホルムアル
デヒド化しうる旨が報告されているが、酢酸ビニルモノ
マーの加水分解に由来するアセトアルデヒドは依然とし
て系中に含まれているのが現状であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで乳化重合コントロール性に優れ、しかも環
境負荷の少ないエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エ
マルジョンの製造方法を提供することを目的とするもの
である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の好
ましい性質を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹
脂エマルジョンの製造方法を開発すべく鋭意研究を重ね
た結果、けん化度70モル%以上のビニルアルコール系
重合体を分散剤として、エチレンおよび酢酸ビニルを乳
化重合する際に、過酸化水素と酒石酸、エリソルビン
酸、L−アスコルビン酸およびこれらの金属塩から選ば
れる少なくとも一種の化合物とからなるレドックス系重
合開始剤を用い、鉄化合物を添加して乳化重合し、乳化
重合後に無機系還元剤を添加するエチレン−酢酸ビニル
共重合体系樹脂エマルジョンの製造方法を提供すること
によって、上記目的が達成されることを見出した。ま
た、上記レドックス系重合開始剤として、過酸化水素と
酒石酸および/または酒石酸ナトリウムとからなるレド
ックス系重合開始剤を使用することにより、上記目的が
より好適に達成されることを見出した。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明のエチレン−酢酸ビニル共
重合体系樹脂エマルジョンの製造方法において、分散剤
として使用する、けん化度70モル%以上のビニルアル
コール系重合体(以下、PVA系重合体と略記する場合
がある)は、常法により、ビニルエステル系重合体をけ
ん化することにより得ることができる。
【0006】また、該分散剤として使用するPVA系重
合体は、本発明の目的を損なわない範囲で共重合可能な
エチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。こ
のようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エ
チレン、プロピレン、イソブチレンなどのα−オレフィ
ン、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、(無水)マ
レイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロ
ニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメ
チル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)
−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチル
プロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、エチルビ
ニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロ
リドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化
ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレ
ン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナ
トリウムなどが挙げられる。また、上記分散剤として
は、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオ
ール化合物の存在下で、酢酸ビニルを重合するか、また
は酢酸ビニルと上記エチレン性不飽和単量体とを共重合
し、それをけん化することによって得られる末端変性物
を用いることもできる。
【0007】本発明の水性エマルジョンの分散剤として
使用するPVA系重合体は、けん化度が、70モル%以
上であることが必要であり、より好ましくは、80モル
%以上、さらに好ましくは85モル%以上である。けん
化度が70モル%未満の場合には、 PVA系重合体本
来の性質である水溶性が低下するため乳化重合コントロ
ール性が低下する場合がある。また本発明の目的を達成
するためには該PVA系重合体の重合度は、100〜8
000の範囲が好ましく、300〜3000がより好ま
しい。
【0008】分散剤として使用するPVA系重合体の使
用量については特に制限はないが、分散質(エチレン−
酢酸ビニル共重合体系樹脂)100重量部に対して好ま
しくは2〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部
の範囲である。該使用量が2重量部未満および15重量
部を越える場合には、乳化重合コントロール性が低下す
ることがある。
【0009】本発明においては、乳化重合時に単量体と
してエチレンおよび酢酸ビニルを主に使用するが、本発
明の目的を損なわない範囲で、エチレン性不飽和単量体
および/またはジエン系単量体を共重合しても構わな
い。このような単量体としては、プロピレン、イソブチ
レンなどのα−オレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニ
ル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリドなどの
ハロゲン化オレフィン、アクリル酸、アクリル酸メチ
ル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸
2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸
2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸およびそのエス
テル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル
酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチ
ルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−
ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸およびそのエステ
ル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジ
メチルアミノエチルおよびこれらの四級化物、さらに
は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロー
ルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および
そのナトリウム塩などのアクリルアミド系単量体、スチ
レン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸お
よびそのナトリウム、カリウム塩などのスチレン系単量
体、その他N−ビニルピロリドンなど、また、ブタジエ
ン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体、
さらにはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシア
ヌレート、ジアリルフタレートなどの多官能性単量体が
挙げられる。分散質を構成する重合体におけるエチレン
の含有量は、5〜50重量%が好ましく、さらに好まし
くは7〜40重量%、最適には10〜30重量%であ
る。
【0010】本発明の製造方法では、重合開始剤として
過酸化水素と酒石酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸
およびこれらの金属塩から選ばれる少なくとも一種の化
合物とからなるレドックス系重合開始剤を用いる。酒石
酸としては右旋性のL(+)酒石酸、左旋性のD(−)
酒石酸、これらの対掌体のラセミ化合物であるDL酒石
酸があり、特に制限されないが、これらの中でもL
(+)酒石酸を用いた場合、乳化重合コントロール性が
顕著に向上する。また、またこれらの金属塩を用いるこ
とも可能であり、金属の種類は特に制限されないが、酒
石酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、アスコル
ビン酸ナトリウムが好適に用いられる。これらの中でも
L(+)酒石酸ナトリウムが好ましく用いられる。L
(+)酒石酸ナトリウムを用いた場合、上記利点に加え
て、乳化重合時にpH調整を行わない場合でも重合コン
トロール性に優れ、さらには乳化重合後通常行われるア
ンモニア、苛性ソーダ等のアルカリによるpH調整も不
要となる長所がある。過酸化水素の使用量は、全単量体
100重量部に対し0.01〜2重量部であることが好
適であり、さらに好適には0.02〜0.15重量部で
ある。
【0011】過酸化水素と、酒石酸、エリソルビン酸、
アスコルビン酸およびこれらの金属塩から選ばれる少な
くとも一種の化合物との使用割合は特に制限されない
が、通常過酸化水素100重量部に対して、上記化合物
を50〜200重量部、好ましくは70〜180重量
部、より好ましくは80〜170重量部である。上記化
合物をこの範囲で使用することにより、乳化重合コント
ロール性が良好となる。該レドックス系重合開始剤の量
は、未反応酢酸ビニルモノマーが5重量%になるまでに
用いる量を示す。
【0012】本発明の製造方法では、乳化重合系のpH
を3〜7に調整することが好適であり、さらに好ましく
は4〜6に調整する。pHをこの範囲に調整することに
より、乳化重合コントロール性が良好となる。乳化重合
系のpHの調整方法は特に制限されず、任意の緩衝剤を
用いることが可能であるが、通常、酢酸ナトリウム、酢
酸/酢酸ナトリウム系、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリ
ウムなどが好ましく用いられる。本発明において、乳化
重合系のpHとは、重合初期から重合終了までのpHを
言い、本発明においては重合系のどの時点においてもp
Hが3〜7にあることが好適である。
【0013】本発明の製造方法では、乳化重合系に鉄化
合物を添加することが必須である。鉄化合物としては特
に制限されないが、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、塩化第二
鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄から選ばれる少なくとも1
種の鉄化合物が好ましく用いられ、中でも塩化第一鉄、
硫酸第一鉄が特に好ましく用いられる。
【0014】鉄化合物の使用量は特に制限されないが、
通常全単量体に対して1〜100ppm、より好ましく
は5〜50ppmである。鉄化合物をこの範囲で使用す
ることにより、着色が少なく、乳化重合コントロール性
も良好となる。
【0015】前記レドックス系重合開始剤の添加方法は
特に制限されない。過酸化水素は通常の乳化重合で行わ
れる方法、すなわち、重合開始初期にショットで添加す
る方法、重合中に逐次的に添加する方法などが挙げられ
る。酒石酸、エリソルビン酸、アスコルビン酸およびこ
れらの金属塩から選ばれる少なくとも一種の化合物は、
乳化重合初期に全量を添加して用いても良いし、乳化重
合中に逐次的に添加する方法でも構わないが、酒石酸お
よび/またはその金属塩(とくにナトリウム塩)は全量
を乳化重合初期に添加して用い、エリソルビン酸、アス
コルビン酸および/またはその金属塩(とくにナトリウ
ム塩)は逐次的に添加して用いるのが好適である。鉄化
合物の添加方法も特に制限されないが、通常、乳化重合
初期に全量を添加して用いる。
【0016】本発明の製造方法では、無機系還元剤を乳
化重合後に添加することが必須である。ここで乳化重合
後とは、重合系において未反応の酢酸ビニルモノマー量
が5重量%以下、好ましくは4重量%以下になった時点
をいう。好適な無機系還元剤の添加時期は、乳化重合終
了後、脱エチレン操作を行う前あるいは後である。無機
系還元剤としては特に制限されないが、亜硫酸塩類が好
ましく用いられる。亜硫酸塩類としては、亜硫酸ナトリ
ウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アルミニウム、亜硫酸ア
ンモニウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マ
グネシウム、亜硫酸クロム、亜硫酸水素ナトリウム、亜
硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸
水素カリウム、ピロ亜硫酸アンモニウム、ピロ亜硫酸ナ
トリウム、ピロ亜硫酸カリウムなどが挙げられる。これ
らの中でも亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウ
ム、亜硫酸水素アンモニウムなどが好ましく用いられ
る。
【0017】無機系還元剤の添加量は特に制限されない
が、通常、重合後のエマルジョン固形分100重量部に
対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜
5重量部、より好ましくは0.03〜3重量部である。
無機系還元剤をこの範囲で使用することにより、エマル
ジョン中のアルデヒド化合物の残存量を低減させること
ができ、また得られるエマルジョンの臭気を低減させる
ことができる。
【0018】本発明の製造方法では、必要に応じて、重
合系中の未反応酢酸ビニルモノマー量を低減する目的で
ヒドロパーオキサイド類を添加しても構わない。ヒドロ
パーオキサイド類の添加時期は特に限定されないが、通
常、重合後半すなわち残存酢酸ビニルモノマーが10重
量%以下、好ましくは5重量%以下になってから添加さ
れる。この時点でヒドロパーオキサイド類を添加するこ
とにより、着色が少なく、乳化重合コントロール性も良
好となる。ヒドロパーオキサイド類としては、t−ブチ
ルヒドロパーオキサイド、キュメンヒドロパーオキサイ
ド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p
−メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テ
トラメチルブチルヒドロパーオキサイド、過酸化水素な
どが挙げられ、中でもt−ブチルヒドロパーオキサイ
ド、キュメンヒドロパーオキサイドが好ましく用いられ
る。
【0019】本発明の乳化重合は、加圧下、好適には2
0〜70kg/cmの加圧下に行われるが、乳化重合
途中で、たとえば残存酢酸ビニル濃度が10重量%とな
った時点で、最初の重合圧力より5〜35kg/cm
低い圧力下、好適には10〜30kg/cm低い圧力
下に調整してエチレンの一部を放出することが好適であ
る。
【0020】本発明の製造方法により得られるエチレン
−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンは、エマルジ
ョン中に含まれるホルムアルデヒド濃度が1ppm以
下、アセトアルデヒド濃度が1ppm以下である。ここ
でエマルジョン中のホルムアルデヒド濃度及びアセトア
ルデヒド濃度の測定は、ガス検知管を用いて行った数値
をいう。エマルジョン中に含まれるホルムアルデヒド濃
度あるいはアセトアルデヒド濃度が1ppmを超える場
合、いわゆるノンアルデヒドエマルジョンということは
出来ず、本発明の目的を達成することができない。
【0021】本発明の製造方法で得られるエチレン−酢
酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンは、そのままで各
種用途に用いることができるが、必要に応じ、本発明の
効果を損なわない範囲で、従来公知の各種エマルジョン
を添加して用いることができる。なお、本発明に用いる
分散剤としては、上記のPVA系重合体が用いられる
が、必要に応じて、従来公知のアニオン性、ノニオン性
あるいはカチオン性の界面活性剤や、ヒドロキシエチル
セルロースなどを併用することもできる。
【0022】本発明の製造方法により得られるエチレン
−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンは、エマルジ
ョン中にホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのア
ルデヒド化合物を含有せず、また臭気もほとんどないた
め、環境負荷の極めて少ないものであり、壁紙用ベース
エマルジョン、建材特に内装用接着剤、塗料などとして
好ましく用いられ、また紙管、製袋、合紙、段ボール用
等の紙、パルプなどの紙加工用接着剤、一般木工等の木
工用接着剤および各種プラスチック用の接着剤、含浸紙
用、不織製品用のバインダー、セメントモルタル用混和
剤、セメントモルタル用打継ぎ材、紙加工および繊維加
工などの分野でも好適に用いられる。
【0023】
【実施例】次に、実施例および比較例により本発明をさ
らに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例
において「部」および「%」は、特に断らない限り重量
基準を意味する。また、得られたエマルジョン中のホル
ムアルデヒド濃度、アセトアルデヒド濃度などのエマル
ジョン物性、乳化重合のコントロール性などを下記の要
領で評価した。
【0024】(評価方法) (1)ホルムアルデヒド含有量 10mlガラスバイアルにエマルジョンを0.1g採取
し、40℃×1hr加温した後、ガス検知管(No.17
1SB:光明理化学工業製、100ml吸引)で測定。 (2)アセトアルデヒド含有量 10mlガラスバイアルにエマルジョンを0.1g採取
し、40℃×1hr加温した後、ガス検知管(No.13
3SB:光明理化学工業製、100ml吸引)で測定。 (3)乳化重合のコントロール性 過酸化水素の添加を停止した際、速やかに重合による発
熱が停止するか否か、あるいは過酸化水素の添加を開始
した際、速やかに重合が進行し発熱がおこるか否かを観
察し、下記の基準で評価した。すなわち、過酸化水素の
添加、添加停止により、重合温度を調整し、重合温度6
0℃を中心として温度の振れ幅がどの程度になるかによ
り評価した。 ◎ コントロール性非常に良好(温度の振れ幅が◎±1
℃以内) ○ コントロール性良好(温度の振れ幅が◎±3℃以
内) △ コントロール性やや不良(温度の振れ幅が◎±5℃
以内) × コントロール不可(温度の振れ幅が◎±5℃以上) (4)臭気 水性エマルジョンの臭気程度を官能試験により調べ下記
の基準で評価した。 ○:臭気がほとんど感じられない △:僅かに臭気が感じられる ×:臭気が激しく感じられる
【0025】実施例1 窒素吹き込み口、温度計、撹拌機を備えた耐圧50リッ
トルオートクレーブにPVA−1{重合度1700、け
ん化度88モル%、(株)クラレ製PVA−217}を
1061g、イオン交換水19440g、L(+)酒石
酸8.3g、酢酸ナトリウム10g、塩化第一鉄0.4
gを仕込み、95℃で完全に溶解し、その後60℃に冷
却し、窒素置換を行った。水溶液のpHを確認したとこ
ろpH=5.5であった。次に酢酸ビニル22360g
を仕込んだ後、エチレンを45kg/cmまで加圧し
て導入し、0.4%過酸化水素水溶液1000gを5時
間かけて圧入し、60℃で乳化重合を行った。残存酢酸
ビニル濃度が10%となったところで、エチレンを放出
し、エチレン圧力20kg/cmとし、3%過酸化水
素水溶液50gを圧入し、重合を完結させた。冷却後、
pHを確認したところpH=4.1であった。10%水
酸化ナトリウム水溶液を230g添加しエマルジョンの
pHを5.5に調整し、60メッシュのステンレス製金
網を用いてろ過した。その後、エマルジョン100gに
対し、亜硫酸水素ナトリウムを1g配合し、固形分濃度
54.4%、エチレン含量18重量%のエチレン−酢酸
ビニル共重合体系樹脂エマルジョンが得られた。評価を
前述の方法により行った。結果を表1に示す。
【0026】実施例2 実施例1においてL(+)酒石酸8.3gの代わりに、
L(+)酒石酸ナトリウムを12.7g用いた他は、実
施例1と同様にして乳化重合を行い、固形分濃度54.
4%、エチレン含量18重量%のエチレン−酢酸ビニル
共重合体系樹脂エマルジョンを得た。得られたエマルジ
ョンの評価を実施例1と同様に行った結果を表1に併せ
て示す。
【0027】実施例3 実施例1においてL(+)酒石酸8.3gの代わりに、
アスコルビン酸ナトリウムを12.7g用いた他は、実
施例1と同様にして乳化重合を行い、固形分濃度54.
4%、エチレン含量18重量%のエチレン−酢酸ビニル
共重合体系樹脂エマルジョンを得た。得られたエマルジ
ョンの評価を実施例1と同様に行った結果を表1に併せ
て示す。
【0028】比較例1 実施例1においてL(+)酒石酸の代わりにロンガリッ
トを用いた他は、実施例1と同様にして乳化重合を行
い、固形分濃度54.4%、エチレン含量18重量%の
エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンを得
た。得られたエマルジョンの評価を実施例1と同様に行
った結果を表1に併せて示す。
【0029】実施例4 実施例1において亜硫酸水素ナトリウムの代わりにピロ
亜硫酸ナトリウムを用いた他は、実施例1と同様にし
て、固形分濃度54.4%、エチレン含量18重量%の
エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンを得
た。得られたエマルジョンの評価を実施例1と同様に行
った結果を表1に併せて示す。
【0030】実施例5 実施例1において亜硫酸水素ナトリウムの代わりに亜硫
酸水素アンモニウムを用いた他は、実施例1と同様にし
て、固形分濃度54.4%、エチレン含量18重量%の
エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンを得
た。得られたエマルジョンの評価を実施例1と同様に行
った結果を表1に併せて示す。
【0031】比較例2 実施例1において塩化第一鉄を用いなかった他は、実施
例1と同様にして乳化重合を試みたが、重合のコントロ
ール性が乏しく危険であったため途中で中止した。
【0032】比較例3 実施例1において亜硫酸水素ナトリウムを用いなかった
他は、実施例1と同様にして、固形分濃度54.4%、
エチレン含量18重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合
体系樹脂エマルジョンを得た。得られたエマルジョンの
評価を実施例1と同様に行った結果を表1に併せて示
す。なお、表1中のEmはエマルジョンを示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】本発明の製造方法は、乳化重合コントロ
ール性に優れ、また得られるエチレン−酢酸ビニル共重
合体系樹脂エマルジョンは、エマルジョン中にホルムア
ルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド化合物を
ほとんどまたはまったく含有せず、また臭気もほとんど
ないため、環境負荷が少ない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08F 218/08 C08F 218/08 Fターム(参考) 4J011 AA05 AA10 BA03 DA01 KA16 KB22 KB29 NA34 NB04 NB06 PA04 PB24 PC02 PC06 4J015 CA03 CA14 4J100 AA02P AG04Q CA04 EA07 FA00 FA03 FA20 GC35

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 けん化度70モル%以上のビニルアルコ
    ール系重合体を分散剤として、エチレンおよび酢酸ビニ
    ルを乳化重合する際に、過酸化水素と酒石酸、エリソル
    ビン酸、アスコルビン酸およびこれらの金属塩から選ば
    れる少なくとも一種の化合物とからなるレドックス系重
    合開始剤を用い、鉄化合物を添加して乳化重合し、乳化
    重合後に無機系還元剤を添加することを特徴とするエチ
    レン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 無機系還元剤が、亜硫酸塩類である請求
    項1記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマル
    ジョンの製造方法。
  3. 【請求項3】 レドックス系重合開始剤が、過酸化水素
    と酒石酸および/または酒石酸ナトリウムとからなるレ
    ドックス系重合開始剤である請求項1または2記載のエ
    チレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョンの製造
    方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の方法に
    より得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマ
    ルジョンであり、ホルムアルデヒド濃度が1ppm以下
    であり、かつアセトアルデヒド濃度が1ppm以下であ
    るエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョン。
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