JP2003164978A - 軽合金製部材の表面処理方法 - Google Patents

軽合金製部材の表面処理方法

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JP2003164978A
JP2003164978A JP2001360282A JP2001360282A JP2003164978A JP 2003164978 A JP2003164978 A JP 2003164978A JP 2001360282 A JP2001360282 A JP 2001360282A JP 2001360282 A JP2001360282 A JP 2001360282A JP 2003164978 A JP2003164978 A JP 2003164978A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】軽合金製部材を加熱する予熱処理を施した後
に、摩擦撹拌処理を施すことにより、処理部(改質層)と
その周辺の温度勾配(いわゆる温度差)が縮小され、改質
層周辺に発生する残留応力を抑制して、熱疲労度の向上
を図ることができ、また予熱により摩擦撹拌時の軽合金
製部材(いわゆるワーク)の抵抗が小さくなって、撹拌に
要するエネルギの低減を図ることができ、未充填欠陥
(つまり欠肉)の発生を抑制することができると共に、回
転工具の長寿命化を図ることができる軽合金製部材の表
面処理方法の提供を目的とする。 【解決手段】軽合金製部材の表面部に回転工具を押し込
みつつ、該回転工具を回転させることにより上記表面部
に摩擦撹拌処理による改質層を形成する軽合金製部材の
表面処理方法であって、上記軽合金製部材を加熱する予
熱処理S3を施した後、上記摩擦撹拌処理S4を施すこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、軽合金製部材の
表面部に回転工具を押し込みつつ、該回転工具を回転さ
せることにより上記表面部に摩擦撹拌処理による改質層
を形成して、機械的特性および熱疲労強度の向上を図る
ような軽合金製部材の表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アルミ合金、マグネシウム合金な
どの軽合金からなる軽合金製部材(いわゆるワーク)の表
面処理方法としては、図14に示すように加工装置に装
着されて高速で回転する回転工具80のプローブ81を
上記ワーク82の表面部82aに押込みつつ、ショルダ
部83で表面部82aを押圧し、このような押圧状態を
保ちながら回転工具80を表面に沿って移動させること
で、ワーク82の表面およびその近傍領域を改質して、
改質層84を形成し、機械的特性、特に熱疲労強度の向
上を図る、所謂、摩擦撹拌処理が知られている。
【0003】例えば、特開2000−15426号公報
には、エンジンのアルミ合金製シリンダヘッドのシリン
ダブロックに対するシール面(合わせ面)の表面処理に、
上述のような摩擦撹拌処理を適用することが開示されて
いる。
【0004】また、特開2001−32058号公報に
は、ディーゼルエンジンのアルミ合金製のシリンダヘッ
ドにおける燃焼室構成面に上述の如き摩擦撹拌処理を適
用することが開示されている。
【0005】上述の摩擦撹拌処理法では、高速で回転す
る回転工具80をワーク82の表面に当接させ押圧する
ことで、その際に生じる摩擦熱とプローブ81の撹拌作
用により、部材表面の回転工具80当接部分およびその
近傍領域を軟化させて塑性流動を生じさせる。そして、
この塑性状態の材料部分(塑性流動層)が非溶融状態で撹
拌されることにより、該部材の表面およびその近傍領域
が改質される。
【0006】アルミ合金などの軽合金製鋳造部材の表面
部に、この摩擦撹拌処理による表面改質処理を施すと、
表面部の金属組織が微細化され、また鋳巣などによる内
部未充填欠陥を大幅に低減することができ、伸び、靱性
などの機械的特性、並びに疲れ強さ(熱疲労強度)の向上
を図ることができる。
【0007】特に、シリンダヘッドにおける吸排気ポー
ト間のバルブブリッジ部は、エンジン駆動時の気筒での
燃焼による体積膨張と、停止時の冷却による体積収縮と
を繰り返して、この繰り返し応力が付勢されるので、熱
疲労によるクラックが発生しやすい部位であり、このよ
うな部位に上述の摩擦撹拌処理を施して、その熱疲労強
度を高めることは極めて有効である。
【0008】上述の軽合金製鋳造部材の鋳造から摩擦撹
拌処理終了までの工程は、図15に示すように、まず第
1の工程S11で、中空部を形成するためにシェル中子
を用いて軽合金製部材を鋳造し、次に第2の工程S12
で、中子砂を排出するために砂出しを行なう。
【0009】この場合、中子砂を加熱して、該中子砂を
排出しやすくするための処理が実行されるので、鋳造さ
れた軽合金製部材に対してT6処理(溶体化処理および
時効処理)が施されることになる。
【0010】上述の砂出し後、次の第3の工程S13
で、図14で示した回転工具80を用いて摩擦撹拌処理
が施される。この摩擦撹拌処理時に、回転工具80のプ
ローグ81による摩擦撹拌で塑性変形自在となる温度ま
で急激に加熱される処理部(改質層)と、その周辺部との
間では大きい温度勾配が生じ、これに起因して残留応力
が発生する問題点があり、摩擦撹拌処理後において、熱
処理等により、この残留応力を除去する必要があった。
【0011】図16は第1の工程S11、第2の工程S
12終了後のアルミ合金製のシリンダヘッドのバルブブ
リッジ部に対して常温の状態から第3の工程S13によ
る摩擦撹拌処理を行なったものに対して、バルブブリッ
ジ部のシリンダブロックとの合せ面に対面して位置する
ウォータジャケット側の残留応力を実測した結果を示す
ものである。
【0012】図16に示すように従来方法においては、
摩擦撹拌時の拡販により熱(摩擦熱)が発生する処理部
と、その周辺部との温度差により、熱応力(ひずみ)が存
在することになり、これが残留応力となるので該残留応
力は122〜167N/mmと大きく、これにより熱疲労
強度が低下するので、残留応力除去工程が必要となる問
題点があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、軽合金製
部材を加熱する予熱処理を施した後に、摩擦撹拌処理を
施すことにより、処理部(改質層)とその周辺の温度勾配
(いわゆる温度差)が縮小され、改質層周辺に発生する残
留応力を抑制して、熱疲労度の向上を図ることができ、
また予熱により摩擦撹拌時の軽合金製部材(いわゆるワ
ーク)の抵抗が小さくなって、撹拌に要するエネルギの
低減を図ることができ、未充填欠陥(つまり欠肉)の発生
を抑制することができると共に、回転工具の長寿命化を
図ることができる軽合金製部材の表面処理方法の提供を
目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明による軽合金製
部材の表面処理方法は、軽合金製部材の表面部に回転工
具を押し込みつつ、該回転工具を回転させることにより
上記表面部に摩擦撹拌処理による改質層を形成する軽合
金製部材の表面処理方法であって、上記軽合金製部材を
加熱する予熱処理を施した後、上記摩擦撹拌処理を施す
ものである。
【0015】上記構成の軽合金は、アルミ合金やマグネ
シウム合金に設定することができ、また軽合金製部材
(いわゆるワーク)はアルミ合金鋳造物製のガソリンエン
ジン用のシリンダヘッドやアルミ合金鋳造物製のディー
ゼルエンジン用シリンダヘッドに設定することができ
る。
【0016】上記構成によれば、予熱処理を施した後に
上述の摩擦撹拌処理を行なうので、処理部(つまり改質
層)とその周辺の温度勾配(いわゆる温度差)が縮小さ
れ、これにより改質層周辺に発生する残留応力を抑制し
て、熱疲労強度の向上を図ることができ、残留応力除去
工程も不要となる。
【0017】また上述の予熱処理により摩擦撹拌時の軽
合金製部材(ワーク)の抵抗が小さくなるので、撹拌に要
するエネルギの低減を図ることができると共に、未充填
欠陥(いわゆる欠肉)の発生を抑制することができる。
【0018】因に、ワーク温度が低い場合、ワークは塑
性変形しまいとする傾向が大きくなり、摩擦撹拌には余
分なエネルギが必要となるだけでなく、撹拌処理時の抵
抗が大となり、回転工具が移動しにくくなって、未充填
欠陥(いわゆる欠肉)が発生しやすくなる。
【0019】加えて、上記予熱により軽合金製部材の抵
抗が小さくなることで、回転工具先端のプローブに付勢
される曲げモーメントが低くなり、回転工具の寿命延長
を図ることができる。
【0020】この発明の一実施態様においては、上記軽
合金製部材をアルミ合金製部材に設定し、上記アルミ合
金製部材の鋳造後、溶体化処理および時効処理を施した
後に、200℃以下の温度条件で上記予熱処理を行なう
ものである。
【0021】上記構成の溶体化処理および時効処理は、
アルミ合金製部材の組成に対応してT6処理またはT7
処理に設定することができる。上記構成によれば、20
0℃以下の温度条件で予熱処理を行なうので、過時効に
よる部材の軟化を抑制することができる。
【0022】この発明の一実施態様においては、上記予
熱処理の温度は150〜200℃の範囲に設定されたも
のである。上記構成によれば、過時効による部材の軟化
が抑制できると共に、温度範囲の設定により現場での温
度管理性能の向上を図ることができる。因に、予熱処理
温度が200℃を超過すると、溶体化処理およひ時効処
理の効果つまり部材の強度向上、硬さの向上が得られな
くなり、部材が軟化する。
【0023】この発明の一実施態様においては、上記予
熱処理の時間は5〜15分の範囲に設定されたものであ
る。上記構成によれば、予熱時間範囲の設定により消費
エネルギの過大化を防止しつつ、適切な予熱を得ること
ができる。つまり予熱時間が5分未満の場合には予熱不
充分となる一方、予熱時間が15分を超過する場合には
消費エネルギが過大となるので、上記範囲に設定するも
のである。
【0024】この発明の一実施態様においては、上記軽
合金製部材はエンジンのシリンダヘッドに設定され、上
記改質層を吸排気口間に形成するものである。上記構成
によれば、エンジンの燃焼による体積膨張と、冷却によ
る体積収縮との繰返しにより応力が集中されるシリンダ
ヘッドの吸排気口間つまりバルブブリッジ部の熱疲労強
度の向上を図ることができる。
【0025】
【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳
述する。図面は軽合金部材の表面処理方法を示し、図1
に示す工程図の第1の工程S1で軽合金製部材の一例と
してのエンジンのシリンダヘッド1(図2参照)を鋳造す
る。
【0026】図2に示すシリンダヘッド1はディーゼル
エンジン用のシリンダヘッドであって、該シリンダヘッ
ド1を構成するアルミ合金鋳物(JIS規格 AC4D)
の具体的組成は次の通りである。
【0027】Cu:1.0〜1.5wt%、Si:4.5
〜5.5wt%、Mg:0.4〜0.6wt%、Zn:0.
10wt%以下、Fe:0.40wt%以下、Mn:0.1
0wt%以下、Ni:0.20wt%以下、Ti:0.10
wt%以下、Pb:0.10wt%以下、Sn:0.05wt
%以下、Cr:0.15wt%以下、Ca:0.008wt
%以下、Al:残部 なお、上述の鋳造工程では、シリンダヘッド1に中空部
としての吸排気ポート、ウォータジャケットを形成する
ためにシェル中子を用いる。
【0028】また、図2はシリンダヘッド1を燃焼室側
から見た状態で示す平面図であって、この直列4気筒タ
イプのディーゼルエンジンのシリンダヘッド1は各気筒
毎に2つの吸気ポート2,2と、2つの排気ポート3,
3とが形成されている。
【0029】また燃焼室側の表面部1aには、内部のウ
ォータジャケットと連通する開口部4が開口されると共
に、摩擦撹拌処理後において仕上げ加工を施す際の基準
面となる基準穴5,5がシリンダヘッド1の鋳造時に同
時形成されている。
【0030】さらに、図2においてP1,P2,P3,
P4,P5は各気筒において吸排気ポート2,3間のバ
ルブブリッジ部を摩擦撹拌処理するための開始ポイント
である。
【0031】上述のシリンダヘッド1には摩擦撹拌処理
の後に形成されるテンションボルト孔6…が設けられ、
このテンションボルト孔6に挿通されるテンションボル
ト(図示せず)により、シリンダヘッド1とシリンダブロ
ックとが締結される。
【0032】そこで、この実施例では後述する第4の肯
定で上述の開始ポイントP1,P2,P3,P4,P5
から図2に矢印で示す処理経路に沿ってバルブブリッジ
部を摩擦撹拌処理した後に、テンションボルト孔6の位
置で該処理を終了するように設定している。
【0033】次に図1に示す工程図の第2の工程S2
で、中子砂を排出するために砂出しを行なう。この場
合、中子砂を加熱して、該中子砂を排出するための処理
が実行されるので、鋳造とされたシリンダヘッド1に対
してはT6処理(溶体化処理および時効処理)が施される
ことになる。
【0034】ディーゼルエンジン用のシリンダヘッド1
のT6処理は図3、図4に示すように、まず図3の溶体
化処理にあっては535℃±5℃の温度に4〜10時間
加熱した後に、90℃〜99℃に急冷して溶体化する。
次に図4の時効処理においては180℃±5℃の温度に
4〜10時間加熱する所謂人工時効(高温時効)を施し
て、時効化(Aging)を図る。中子砂の加熱温度は、シェ
ル中子の結合剤であるレジンを加熱して炭化させる温度
約400℃以上とする必要がある。
【0035】上述のT6処理により、シリンダヘッド1
の強度向上、硬さ向上を図ることができる。次に上述の
砂出し処理(T6参照)終了後において、図1に示す工程
図の第3の工程S3で、シリンダヘッド1を電気加熱炉
にて予熱処理する。
【0036】この予熱処理の条件は100〜200℃、
望ましくは150〜200℃の温度範囲内で、5〜15
分の予熱時間内においてシリンダヘッド1を加熱する。
予熱温度が約100℃の場合には後述する残留応力の低
減を図ることができるものの、この残留応力のばらつき
が大きくなる可能性があり、逆に予熱温度が200℃を
超える場合には、過時効によりシリンダヘッド1が軟化
するので、この過時効によるシリンダヘッド1の軟化を
抑制することと、温度下限値150℃の設定により現場
での温度管理性能の向上を図ることとを考慮して、15
0〜200℃の温度範囲が好ましい。
【0037】また予熱時間は消費エネルギの過大化を防
止しながら、適切な予熱状態を確保することを目的とし
て5〜15分の範囲に設定する。すなわち、予熱時間が
5分未満の場合には充分な予熱が得られず、予熱時間が
15分を超過する場合は充分な予熱が得られるものの、
予熱に要する消費エネルギが過大となるので、上述の範
囲内に設定するものである。
【0038】次に、上述の予熱処理後に図1に示す工程
図の第4の工程S4で、回転工具7(図5参照)を用いて
シリンダヘッド1の燃焼室側の表面部1aを摩擦撹拌処
理する。
【0039】上述の回転工具7は図5に示すように、加
工装置の主軸8に固定されるシャンク部9と、表面部1
aを押圧するショルダ部10と、摩擦撹拌を行なうプロ
ーブ11とを備えている。またプローブ11の外周には
回転工具7の回転方向とは逆になる左ネジ部が形成され
ている。
【0040】そして、図6に概略的に示すように、加工
装置に装着されて高速で回転する回転工具7のプローグ
11をシリンダヘッド1の表面部1aに押込みつつ、シ
ョルダ部10で表面部1aを押圧し、このような押圧状
態を保ちながら回転工具7を表面に沿って移動させるこ
とで、シリンダヘッド1の表面およびその近傍領域を改
質して、改質層12を形成する。
【0041】なお、摩擦撹拌処理の処理経路は図2に矢
印で示すように、各開始ポイントP1〜P5からスター
トして、バルブブリッジ部を摩擦撹拌処理した後に、テ
ンションボルト孔6の位置で終了するように設定されて
いる。
【0042】図7は図1の各工程終了後において、シリ
ンダヘッド1のバルブブリッジ部のシリンダブロックと
の合せ面に対面して位置するウォータジャケット側の残
留応力を実測した結果を示し、特に予熱温度を150〜
200℃の範囲に設定したものは、残留応力が22〜7
7N/mmと比較して、その値を大幅に低減させることが
できた。
【0043】このように上記実施例の軽合金製部材の表
面処理方法は、軽合金製部材(アルミ合金鋳物製のディ
ーゼルエンジン用のシリンダヘッド1参照)の表面部1
aに回転工具7を押し込みつつ、該回転工具7を回転さ
せることにより上記表面部1aに摩擦撹拌処理による改
質層12を形成する軽合金製部材の表面処理方法であっ
て、上記軽合金製部材(シリンダヘッド1参照)を加熱す
る予熱処理(第3の工程S3参照)を施した後、上記摩擦
撹拌処理(第4の工程S4参照)を施すものである。
【0044】この構成によれば、予熱処理を施した後に
上述の摩擦撹拌処理を行なうので、処理部(つまり改質
層12)とその周辺の温度勾配(いわゆる温度差)が縮小
され、これにより改質層周辺に発生する残留応力を抑制
して、熱疲労強度の向上を図ることができ、残留応力除
去工程も不要となる。
【0045】また上述の予熱処理により摩擦撹拌時の軽
合金製部材(シリンダヘッド1参照)の抵抗が小さくなる
ので、撹拌に要するエネルギの低減を図ることができる
と共に、未充填欠陥(いわゆる欠肉)の発生を抑制するこ
とができる。
【0046】因に、ワーク温度が低い場合、ワークは塑
性変形しまいとする傾向が大きくなり、摩擦撹拌には余
分なエネルギが必要となるだけでなく、撹拌処理時の抵
抗が大となり、回転工具7が移動しにくくなって、未充
填欠陥が発生しやすくなる。
【0047】加えて、上記予熱により軽合金製部材(シ
リンダヘッド1参照)の抵抗が小さくなることで、回転
工具7先端のプローブ11に付勢される曲げモーメント
が低くなり、回転工具7の寿命延長を図ることができ
る。
【0048】しかも、上記軽合金製部材をアルミ合金製
部材(シリンダヘッド1参照)に設定し、上記アルミ合金
製部材の第1の工程S1での鋳造後、溶体化処理および
時効処理(第2の工程S2参照)を施した後に、200℃
以下の温度条件で上記予熱処理(第3の工程S3参照)を
行なうものである。
【0049】この構成によれば、200℃以下の温度条
件で予熱処理を行なうので、過時効による部材の軟化を
抑制することができる。
【0050】また、上記予熱処理の温度は150〜20
0℃の範囲に設定されたものである。この構成によれ
ば、過時効による部材の軟化が抑制できると共に、温度
範囲の設定により現場での温度管理性能の向上を図るこ
とができる。因に、予熱処理温度が200℃を超過する
と、溶体化処理およひ時効処理の効果つまり部材の強度
向上、硬さの向上が得られなくなり、部材が軟化する。
【0051】加えて、上記予熱処理の時間は5〜15分
の範囲に設定されたものである。この構成によれば、予
熱時間範囲の設定により消費エネルギの過大化を防止し
つつ、適切な予熱を得ることができる。つまり予熱時間
が5分未満の場合には予熱不充分となる一方、予熱時間
が15分を超過する場合には消費エネルギが過大となる
ので、上記範囲に設定するものである。
【0052】さらに、上記軽合金製部材はエンジンのシ
リンダヘッド(ディーゼルエンジンのシリンダヘッド1
参照)に設定され、上記改質層12を吸排気口間(吸排気
ポート2,3間参照)に形成するものである。この構成
によれば、エンジンの燃焼による体積膨張と、冷却によ
る体積収縮との繰返しにより応力が集中されるシリンダ
ヘッド1の吸排気口間つまりバルブブリッジ部の熱疲労
強度の向上を図ることができる。
【0053】図8、図9は表面処理方法なかんずく第4
の工程S4の摩擦撹拌処理に用いる回転工具7の他の実
施例を示し、図5の実施例では左ネジ部が形成されたプ
ローブ11と成したが、図8の実施例では先端部を半球
状等の曲面状と成したプローブ11に形成している。ま
た図9の実施例では円柱状のプローブ11に形成してい
る。
【0054】図8、図9に示す回転工具7を用いても、
先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図
8、図9において前図と同一の部分には同一符号を付し
て、その詳しい説明を省略する。
【0055】一方、上述の実施例においてはディーゼル
エンジン用のシリンダヘッド1をワークとして例示した
が、軽合金製部材はガソリンエンジン用のシリンダヘッ
ドであってもよい。
【0056】このガソリンエンジン用のシリンダヘッド
を構成するアルミ合金鋳物(JIS規格AC4D)の具体
的組成は次の通りである。 Cu:1.0〜1.5wt%、Si:4.5〜5.5wt
%、Mg:0.4〜0.6wt%、Zn:0.30wt%以
下、Fe:0.60wt%以下、Mn:0.50wt%以
下、Ni:0.20wt%以下、Ti:0.20wt%以
下、Pb:0.10wt%以下、Sn:0.05wt%以
下、Cr:0.15wt%以下、Al:残部
【0057】このようにディーゼルエンジン用のシリン
ダヘッド1とガソリンエンジン用のシリンダヘッドとで
はアルミ合金鋳物の具体的組成が若干異なるので、この
ガソリンエンジン用のシリンダヘッドをワークとして処
理する場合の第2の工程S2におけるT6処理条件(溶
体化処理および時効処理の条件)は図10、図11に示
すように設定される。
【0058】すなわち、溶体化処理は図10に示すよう
に485℃±5℃の温度に4時間以上加熱した後に、6
0〜75℃に急冷して溶体化する。また時効処理は図1
1に示すように180℃±5℃の温度に4〜10時間加
熱する所謂人工時効(高温時効)を施して、時効化を図
る。
【0059】このようにT6処理条件をガソリンエンジ
ン用のシリンダヘッドに適合させると、図1の各工程S
1〜S4にて先の実施例と同様の表面処理方法にて表面
処理を行なうことができ、その作用、効果についても先
の実施例と略同様になる。
【0060】またガソリンエンジン用のシリンダヘッド
を構成するアルミ合金鋳物はJIS規格AC4Dに代え
て、JIS規格AC2BまたはJIS規格AC4Bのも
のを用いることができる。
【0061】JIS規格AC2Bのアルミ合金鋳物の概
略組成は、Cu:2.0〜4.0wt%、Si:5.0〜
7.0wt%、Mg:0.5wt%以下、Zn:1.0wt%
以下、Fe:1.0wt%以下、Mn:0.5wt%以下、
Ni:0.3wt%以下、Ti:0.2wt%以下、Al:
残部である。
【0062】JIS規格AC4Bのアルミ合金鋳物の概
略組成は、Cu:2.0〜4.0wt%、Si:7.0〜
10.0wt%、Mg:0.6wt%以下、Zn:1.0wt
%以下、Fe:1.2wt%以下、Mn:0.8wt%以
下、Ni:0.5wt%以下、Ti:0.2wt%以下、A
l:残部である。
【0063】このように同じガソリンエンジン用のシリ
ンダヘッドでもJIS規格AC4Dを用いる場合と、J
IS規格AC2BまたはAC4Bを用いる場合とで、ア
ルミ合金鋳物の具体的組成が異なるので、このAC2B
またはAC4Bを用いる場合には第2の工程S2でT7
処理(溶体処理および時効処理)を行なう。
【0064】上述のT7処理のうちの溶体化処理は図1
2に示すように495±5℃の温度に3時間以上加熱し
た後に、90.5℃以上に急冷して溶体化する。またT
7処理のうちの時効処理は図13に示すように240±
5℃の温度に4時間以上加熱する所謂人工時効(高温時
効)を施して、時効化を図る。
【0065】このようにT7処理条件をガソリンエンジ
ン用のシリンダヘッド(JIS規格AC2BまたはAC
4B)に適合させると、図1の各工程S1〜S4にて先
の実施例と同様の表面処理方法にて表面処理を行なうこ
とができ、その作用、効果についても先の実施例とほぼ
同様になる。
【0066】この発明の構成と、上述の実施例との対応
において、この発明の軽合金製部材は、実施例のアルミ
合金鋳物製のディーゼルエンジン用のシリンダヘッド1
に対応し、または、アルミ合金鋳物製のガソリンエンジ
ン用のシリンダヘッドに対応し、以下同様に、溶体化処
理および時効処理は、T6処理またはT7処理に対応
し、吸排気口間は、吸排気ポート2,3間のバルブブリ
ッジ部に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成
のみに限定されるものではない。
【0067】
【発明の効果】この発明によれば、軽合金製部材を加熱
する予熱処理を施した後に、摩擦撹拌処理を施す方法で
あるから、処理部(改質層)とその周辺の温度勾配(いわ
ゆる温度差)が縮小され、改質層周辺に発生する残留応
力を抑制して、熱疲労度の向上を図ることができ、また
予熱により摩擦撹拌時の軽合金製部材(いわゆるワーク)
の抵抗が小さくなって、撹拌に要するエネルギの低減を
図ることができ、未充填欠陥(つまり欠肉)の発生を抑制
することができると共に、回転工具の長寿命化を図るこ
とができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の軽合金製部材の表面処理方法を示す
工程図。
【図2】 軽合金製部材の一例のシリンダヘッドの平面
図。
【図3】 溶体化処理の説明図。
【図4】 時効処理の説明図。
【図5】 表面処理方法に用いる回転工具の側面図。
【図6】 摩擦撹拌処理法の説明図。
【図7】 予熱温度に対する残留応力を示す特性図。
【図8】 回転工具の他の実施例を示す側面図。
【図9】 回転工具のさらに他の実施例を示す側面図。
【図10】 溶体化処理の説明図。
【図11】 時効処理の説明図。
【図12】 溶体化処理の説明図。
【図13】 時効処理の説明図。
【図14】 摩擦撹拌処理法の説明図。
【図15】 従来の表面処理方法を示す工程図。
【図16】 摩擦撹拌処理前のワーク温度に対する残留
応力を示す特性図。
【符号の説明】
1…シリンダヘッド(軽合金製部材) 1a…表面部 7…回転工具 12…改質層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3G024 AA02 AA16 FA00 FA04 FA14 GA04 GA06 GA16 GA21 HA07 4E067 AA05 BG00 DC06 EA07 EB00

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軽合金製部材の表面部に回転工具を押し込
    みつつ、該回転工具を回転させることにより上記表面部
    に摩擦撹拌処理による改質層を形成する軽合金製部材の
    表面処理方法であって、上記軽合金製部材を加熱する予
    熱処理を施した後、上記摩擦撹拌処理を施す軽合金製部
    材の表面処理方法。
  2. 【請求項2】上記軽合金製部材をアルミ合金製部材に設
    定し、上記アルミ合金製部材の鋳造後、溶体化処理およ
    び時効処理を施した後に、200℃以下の温度条件で上
    記予熱処理を行なう請求項1記載の軽合金製部材の表面
    処理方法。
  3. 【請求項3】上記予熱処理の温度は150〜200℃の
    範囲に設定された請求項2記載の軽合金製部材の表面処
    理方法。
  4. 【請求項4】上記予熱処理の時間は5〜15分の範囲に
    設定された請求項2または3記載の軽合金製部材の表面
    処理方法。
  5. 【請求項5】上記軽合金製部材はエンジンのシリンダヘ
    ッドに設定され、上記改質層を吸排気口間に形成する請
    求項1,2,3または4記載の軽合金製部材の表面処理
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014104512A (ja) * 2012-11-26 2014-06-09 Hyundai Motor Company Co Ltd シリンダヘッドの鋳造装置及びシリンダヘッドの熱処理方法
CN105256187A (zh) * 2015-11-19 2016-01-20 合肥工业大学 一种梯度铝硅电子封装材料的制备方法
CN106956074A (zh) * 2017-03-03 2017-07-18 中国人民解放军火箭军工程大学 基于豪克能技术的搅拌摩擦焊方法
CN112921255A (zh) * 2021-01-15 2021-06-08 烟台南山学院 一种消减7000系铝合金厚板淬火残余应力的方法及铝合金板材

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