JP2003160833A - 高靭性高張力非調質厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
高靭性高張力非調質厚鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
優れ、しかも非調質でも高い強度を発揮することのでき
る570MPa級以上の高張力厚鋼板、およびこうした
鋼板を製造する為の有用な方法を提供する。 【解決手段】 本発明の高靭性高張力非調質厚鋼板は、
特定の化学組成を有し、且つ、0.40%≦Ceqおよ
びKV≦0.040%を満足するものである。但し、 Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24
+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+
[V]/4+[Cu]/13 KV(%)=[V]+[Nb] 《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味す
る。》
Description
などの大型構造物に好適に用いられ、引張強さが570
MPa以上の高張力厚鋼板(以下、単に「570MPa
級鋼板」と称すことがある)およびその製造方法に関す
るものであり、殊に溶接性(HAZ靭性および耐溶接割
れ性)に優れ、しかも非調質でも高い強度を発揮するこ
とのできる高靭性高張力非調質厚鋼板、およびこうした
鋼板を製造する為の有用な方法に関するものである。
MPa級鋼板では、母材強度の確保という観点から合金
成分を多量に添加しているので、冷却速度の速い小入熱
溶接条件ではHAZ(溶接熱影響部)が硬化して溶接割
れ(低温割れ)が生じやすく、かかる溶接割れの防止を
目的として、溶接施工時に75℃程度の予熱を行う必要
がある。従って、この予熱工程を省略できれば施工効率
が大幅に向上し、且つコストダウンにもつながるため、
予熱工程を省略しても溶接割れが生じない程度の耐溶接
割れ性に優れた570MPa級鋼板の提供が切望されて
いる。
れるPcm(%)というパラメーターが一般に用いられ
ている。こうした観点から、例えば特開平10‐680
45号公報には、このPcmを0.20以下に制限する
ことによって耐溶接割れ性を改善することが開示されて
いる。但し、 Pcm(%)=[C]+[Mn]/20+[Si]/3
0+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15
+5×[B]+[V]/10 《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味す
る。》。
大入熱溶接時にHAZ靭性が劣化するという問題がある
ことが指摘されている。こうした事態は、入熱が大きく
なるとHAZ部の冷却速度が遅くなり、それに伴いHA
Z部の焼入れ性が低下し、粗大な島状マルテンサイトを
生成することに基づくことによって生じるとされてい
る。こうしたこの問題は厚物、薄物いずれにおいても発
生し、実際の溶接施工時に入熱制限が行われ、溶接効率
が悪かった。
ては、上記特開平10‐68045号公報の他、特開平
10‐121191号公報において、下式で表される炭
素当量(Ceq)を0.35〜0.40(%)と低く制
限することが開示されている。 Ceq=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[N
i]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/1
4 《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を示す》。
ることにより小入熱溶接時の耐溶接割れ性を改善した
り、あるいはCeqを制御することにより大入熱HAZ
靭性を改善すると共に、合金成分の含有量制限に伴う母
材強度低下を、製造プロセスを改良するなどして補って
いた。これにより、570MPa級鋼板において、母材
製造時の焼入れにおける冷却速度が比較的速い薄物では
溶接時の予熱フリーを達成できたが、冷却速度が遅い厚
物では溶接時の予熱フリーと母材強度の両立を達成する
ことが困難であった。また、Cuの析出を利用して母材
強度を確保する方法も開示されているが、冷却速度が遅
い厚物では充分な母材強度が得られなかった。
は高温に加熱された後の冷却速度が速いため、硬化して
溶接割れ(低温割れ)を起こしやすい。一方、母材は板
厚が厚くなるほど冷却速度が遅くなるため、圧延後の焼
入れ効果による強度確保が難しくなる。従って、570
MPa級鋼板の厚物では、小入熱溶接時の溶接割れを防
止するため冷却速度が速くなっても硬くならないように
した上で、鋼板製造時の冷却速度が遅く、焼入れ効果が
得難い場合であっても如何に強度を確保するかが重要課
題となる。
熱溶接においては、HAZ部の冷却速度が遅くなり、そ
れに伴いHAZ部の焼入れ性が低下し、粗大な島状マル
テンサイト組織を生成して靭性が低下するが、このHA
Z靭性を改善するには、冷却速度が遅い場合であっても
島状マルテンサイト組織の生成を如何なる方法で抑制す
るかが重要課題となる。
板では、熱間圧延のままでその後熱処理を施すことなく
(即ち、非調質で)高い強度を達成することも要求され
る。こうした技術として、例えば特開平8−14401
9号公報のような技術も提案されている。この技術で
は、極低C化した上で、NbやBを多量添加して組織を
ベイナイト化することによって、広い冷却速度域でベイ
ナイトを生成させ、耐割れ性を低下させることなく、空
冷ままで高い強度を確保するものである。しかしながら
こうした技術では、極低Cで母材強度を確保する為にN
bやBを比較的多く含有させる必要があり、これによっ
て母材靭性やHAZ靭性が却って劣化するという問題が
あった。
着目してなされたものであり、その目的は、溶接性(H
AZ靭性および耐溶接割れ性)に優れ、しかも非調質で
も高い強度を発揮することのできる570MPa級以上
の高張力厚鋼板、およびこうした鋼板を製造する為の有
用な方法を提供することにある。
発明の高靭性高張力非調質厚鋼板とは、C:0.010
〜0.06%,Mn:0.5〜2.5%,Cr:0.5
超〜2.0%,Mo:0.05〜1.5%,Nb:0.
005〜0.040%,V:0.04%以下(0%を含
む),Ti:0.005〜0.1%,B:0.0006
〜0.005%,を満たす鋼からなり、 0.40%≦CeqおよびKV≦0.040% を満足する点に要旨を有するものである。但し、 Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24
+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+
[V]/4+[Cu]/13 KV(%)=[V]+[Nb] 《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味す
る。》 本発明の高張力厚鋼板は、Pcm≦0.23%を満足す
るものであることが好ましく、こうした要件を満足させ
ることによって耐割れ性を更に改善することができる。
但し、 Pcm(%)=[C]+[Mn]/20+[Si]/3
0+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15
+5×[B]+[V]/10 《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味す
る。》。
ベイナイト分率が90体積%以上であることが好まし
く、こうした要件を満足させることによって、一層の母
材強度の確保が可能となる。
必要によって、(a)Ni:5%以下(0%を含まな
い)、(b)Cu:3%以下(0%を含まない)、
(c)Si:1%以下(0%を含まない)および/また
はAl:0.2%以下(0%を含まない)、(d)N:
0.002〜0.01%、(e)Ca:0.0005〜
0.005%、(f)Mg:0.005%以下(0%を
含まない)、希土類元素:0.02%以下(0%を含ま
ない)およびZr:0.05%以下(0%を含まない)
よりなる群から選ばれる1種以上、等を含有させること
も有効であり、含有される成分の種類に応じて高張力鋼
板の特性が更に改善される。
鋼板を製造するに当たっては、Ac3点〜1350℃の温
度範囲に加熱後、仕上げ温度を650〜950℃で熱間
圧延を終了し、その後0.05〜50℃/秒で冷却する
ようにすればよい。また本発明は、非調質鋼板を想定し
たものであるが、必要によって上記冷却後に、300℃
以上800℃未満の温度域に再加熱保持することも有用
であり、こうした工程を付加することによって、母材靭
性が更に改善されると共に、耐力の向上も期待できる。
に上部ベイナイトを生成させると島状マルテンサイトが
生成し、鋼のHAZ靭性が劣化するため、490〜59
0MPa級の鋼板では、HAZにおいてフェライトを積
極的に生成させることが大入熱HAZ靭性の改善の為の
有効な手段と考えられていた。即ち、前記Ceqを低く
して焼入れ性を低下させることが大入熱HAZ靭性の改
善に有効であるとされてきたのである。特に、Crを多
く含有させるとHAZ靭性が大幅に低下するので、Cr
の含有量は0.5%以下にするのが一般的である。
として、極低C化した上で、NbやBを多量添加して組
織をベイナイト化する方法も技術では、母材靭性やHA
Z靭性が却って劣化するという問題があることも上述し
た通りである。
(HAZ靭性および耐溶接割れ性)に優れ、しかも非調
質でも高い強度を発揮することのできる570MPa級
以上の高張力厚鋼板の開発を目指して様々な角度から検
討した。まず、極低C化した上で、NbやB等の炭化物
形成元素を多量添加して組織をベイナイト化する技術で
母材靭性やHAZ靭性が低下する原因は、ベイナイトブ
ロックサイズが粗大化することによるものであることを
見出した。
づき、更に鋭意研究したところ、C,Nb,BおよびM
oを適量含有させると共にCrを比較的多く含有させ、
且つ上記Ceqを変形し炭素当量Ceqを高めに設定す
れば、高張力鋼板の強度を確保しつつ、ベイナイトブロ
ックサイズを微細化でき、これによって材質のばらつき
も少なく高靭性であり、しかもHAZ靭性および耐割れ
性に優れた高張力非調質厚鋼板が実現できること見出
し、本発明を完成するに至った。
分組成も適切に調整する必要があるが、本発明鋼板にお
ける基本成分であるC,Mn,Cr,Mo,Nb,V,
TiおよびB等の範囲限定理由は次の通りである。
度を両立させ、且つHAZ靭性を改善するために重要な
元素である。こうした効果を発揮させるためには、少な
くとも0.010%以上含有させる必要があるが、0.
06%を超えると高冷却速度側で低温変態ベイナイトで
なくマルテンサイトが生成するようになり、耐溶接割れ
性およびHAZ靭性が改善されない。C含有量の好まし
い下限は0.020%であり、より好ましくは0.02
5%以上とするのが良く、好ましい上限は0.050%
であり、より好ましくは0.045%以下とするのが良
い。
イトブロックを微細化して母材靭性を改善する効果を発
揮する。Mn含有量が0.5%未満であると、所望の焼
入れ性改善作用が発揮されず、母材強度が不足する。し
かしながら、Mn含有量が過剰になって2.5%を超え
ると、HAZ部の耐溶接割れ性が劣化することになる。
Mn含有量の好ましい下限は1.0%であり、より好ま
しくは1.25%以上とするのが良く、好ましい上限は
2.0%であり、より好ましくは1.6%以下とするの
が良い。
る焼入れ性を改善だけでなく、Bによる焼入れ性の改善
効果を安定的に確保させる作用を有する。また、ベイナ
イトブロックの微細化を達成し、母材靭性を改善する効
果も発揮する。Cr含有量が0.5%以下であると、こ
れらの効果が発揮されず、2.0%を超えると、HAZ
部の耐溶接割れ性が劣化することになる。Cr含有量の
好ましい下限は0.6%であり、より好ましくは0.7
%以上とするのが良く、好ましい上限は1.5%であ
り、より好ましくは1.25%以下とするのが良い。
を改善する作用を有する。こうした効果を発揮させる為
には0.05%以上含有させる必要があるが、過剰に含
有されるとHAZ部の耐溶接割れ性が劣化するので、
1.5%を上限とする。Mo含有量の好ましい下限は
0.1%であり、より好ましくは0.15%以上とする
のが良く、好ましい上限は1.0%であり、より好まし
くは0.5%以下とするのが良い。
を改善する作用を有する。こうした効果を発揮させる為
には0.005%以上含有させる必要があるが、0.0
40%を超えて過剰に含有されるとベイナイトブロック
が粗大化し、母材靭性およびHAZ靭性が低下する。N
b含有量の好ましい下限は0.008%であり、より好
ましくは0.010%以上とするのが良く、好ましい上
限は0.030%であり、より好ましくは0.025%
以下とするのが良い。
高める作用がある。但し、0.04%を超えて含有させ
るとHAZ靭性が低下する。V含有量の好ましい上限は
0.03%であり、より好ましくは0.02%以下とす
るのが良い。
Zのγ粒を微細化し、HAZ靭性改善に寄与する点で有
用である。こうした効果を発揮させるためには、Tiは
0.005%以上含有させる必要があるが、Ti含有量
が0.1%を超えるとHAZ靭性および母材靭性が共に
低下することになる。Ti含有量の好ましい下限は0.
007%であり、好ましい上限は0.02%程度であ
り、より好ましくは0.0015%以下とするのが良
い。
改善する作用を有する。B含有量が0.0006%未満
ではこうした効果が期待できず、0.005%を超える
と焼入れ性が却って低下すると共に、母材靭性が劣化す
る。B含有量の好ましい下限は0.0010%であり、
より好ましくは0.0012%以上とするのが良く、好
ましい上限は0.0030%程度であり、より好ましく
は0.0025%以下とするのが良い。
成分の他(残部)は実質的に鉄からなるものであるが、こ
れら以外にも微量成分を含み得るものであり、こうした
高張力鋼板も本発明の範囲に含まれるものである。上記
微量成分としては不純物、特にP,S等の不可避不純物
が挙げられ、これらは本発明の効果を損なわない程度で
許容される。こうした観点から、不可避不純物としての
P,SはP:0.020%以下,S:0.010%以下
に夫々抑制することが好ましい。
ってNi,Cu,Si、Al,N,Ca,Mg,希土類
元素,Zr等を含有させることも有効であり、含有され
る成分の種類に応じて高張力鋼板の特性が更に改善され
る。必要によって含有される元素の範囲限定理由は下記
の通りである。
て添加するとスケール疵が発生しやすくなるため、その
上限を5%とすることが好ましい。より好ましくは3%
以下、更に好ましくは2%以下にするのが良い。
せると共に、焼入れ性向上作用も有する元素である。但
し、3%を超えて含有させると大入熱HAZ靭性が低下
するため、その上限を3%とすることが好ましい。より
好ましくは2%以下、更に好ましくは1.2%以下にす
るのが良い。
/またはAl:0.2%以下(0%を含まない) SiおよびAlは脱酸剤として有用な元素である。また
AlはNを固定して、固溶Bを増加させることにより、
Bに基づく焼入れ性を向上する作用をも発揮する。これ
らの効果は、その含有量が増加するにつれて増大する
が、Siで1%、Alで0.2%を超えて過剰に含有さ
れると母剤靭性(Siでは母材靭性と溶接性)が低下す
る。より好ましくは、Siで0.6%以下、Alで0.
1%以下、更に好ましくはSiで0.3%以下、Alで
0.05%以下とするのが良い。
におけるHAZ靭性改善に寄与する点で有用である。但
し、NはBと結合して固溶Bを減少させ、Bの焼入れ性
向上作用を阻害し、母材の靭性および大入熱HAZ靭性
を低下させる作用も有しており、Nの含有量が0.01
%を超えるとその作用が顕著になる。好ましくは0.0
08%以下である。また、N含有量が0.002%未満
ではTiとの窒化物形成による大入熱HAZ靭性改善の
効果が十分でない。より好ましくは0.0030〜0.
007%とするのが良い。
効果を有する元素である。こうした効果を発揮させるた
めには0.0005%以上添加することが好ましい。よ
り好ましくは0.001%以上である。但し、0.00
5%を超えて過剰に含有させると母材靭性が低下するの
で、その上限を0.005%とすることが好ましい。よ
り好ましくは0.003%以下とするのが良い。
い)、希土類元素:0.02%以下(0%を含まない)
およびZr:0.05%以下(0%を含まない)よりな
る群から選ばれる1種以上 Mg、希土類元素(REM)およびZrは、HAZ靭性
を向上させるのに有用な元素である。しかしながら、過
剰に含有されるとHAZ靭性が却って劣化するので、M
gで0.005%以下、REMで0.02%以下、Zr
で0.05%以下とするのが良い。より好ましくは、M
g:0.003%以下、REM:0.01%以下、Z
r:0.03%以下とするのが良い。尚、本発明で含有
されることのあるREMは、周期律表3族に属するスカ
ンジウム(Sc)、イットリウム(Y)およびランタノ
イド系列希土類元素(原子番号57〜71)の元素のい
ずれをも用いることができる。
に化学成分組成を制御するだけではその目的を達成する
ことができず、前記CeqやKVを適切な範囲に制御す
る必要がある。これらの範囲限定理由は、次の通りであ
る。
ト組織においては、Ceqを上げることによってベイナ
イトブロックが微細化し、母材靭性およびHAZ靭性が
向上するのである。こした観点から、本発明ではCeq
は0.40%以上とする必要があり、より好ましくは
0.46%以上、更に好ましくは0.50%以上とする
のが良い。尚、上記Ceqを規定する式中には、必須成
分でないSi,NiおよびCuの項もあるが、これらは
必要によって含有されたときに考慮すれば良い。
[Nb])を0.040%以下に制御することも必要で
ある。即ち、VおよびNbはベイナイトブロックを粗大
化するので、これらの合計が含有量を上記の範囲とする
ことによってこうした不都合を回避するものである。即
ち、上記KV値が0.040%を超えると、母材靭性お
よびHAZ靭性が大幅に低下することになる。尚、この
KV値は、好ましくは0.035%以下、より好ましく
は0.030%以下とするのが良い。
学成分組成の範囲内であれば耐割れ性に優れたものとな
るが、必要によって、前記Pcmを0.23%以下に制
御すれば、耐割れ性が更に改善されることになるので好
ましい。尚、このPcm値はより好ましくは0.21%
以下であり、更に好ましくは0.20%以下にすること
が推奨される。
おいてその組織は主にフェライト、ベイナイト、マルテ
ンサイトの混合組織、或はその焼戻し組織からなるもの
であるが、ベイナイト分率を90体積%以上とすること
によって、母材強度の一層の確保が可能となるので好ま
しい。このベイナイト分率のより好ましい範囲は95%
以上である。
は、上記のような化学成分組成を有する鋼を用い、通常
採用されている高張力鋼板の製造工程、および条件(温
度、時間など)に従って操業することによって材質ばら
つきの少ない鋼板が得られるのであるが、Ac3点〜13
50℃の温度範囲に加熱後、仕上げ温度を650〜95
0℃で熱間圧延を終了し、その後0.05〜50℃/秒
で冷却する工程を含んで操業することが好ましい。この
製造方法においては、Ac3点〜1350℃の温度範囲に
加熱後、仕上げ温度を650〜950℃で熱間圧延を終
了することによって、母材靭性がより改善できることに
なる。また、その後の冷却速度が0.05℃/秒未満に
なると、強度確保が困難となり、50℃/秒を超えると
材質ばらつきが大きくなる傾向がある。
を想定したものであるが、必要によって上記冷却後に、
300℃以上800℃未満の温度域に再加熱保持するこ
とも有用である。こうした熱処理を必要によって施せ
ば、母材靭性が更に改善されると共に耐力の向上も図れ
ることになる。また、本発明の高張力鋼板では、比較的
厚い鋼板を想定したものであり、例えば肉厚が50mm
以上のものでも良好な溶接性と母材強度を有するものと
なる。
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
溶製し、スラブとした後、下記表2に示す条件で熱間圧
延および熱処理を行って、所定の板厚からなる高張力鋼
板を製造した。
下記の要領で母材特性[0.2%耐力、引張強さおよび
靭性(vE-60)]を評価すると共に、ベイナイト分率
を測定した。また本発明で基準とする母材レベル(57
0MPa≦引張強さ、vE-6 0≧100J)をクリアし
たものについては、さらに溶接性(耐溶接割れ性および
HAZ靭性)を評価した。
験片を採取し、引張試験を行うことにより0.2%耐力
および引張強さを測定した。570MPa≦引張強さを
合格とした。 衝撃試験:各鋼板の板厚1/4部位からJIS4号試
験片を採取し、シャルピー衝撃試験をおこなうことによ
り吸収エネルギー(vE-60)を得た。vE-60≧100
Jを合格とした。
4部位で、圧延方向に平行な断面において、ナイタール
2%液によりエッチングを行い、200μm×150μ
mの範囲を400倍で10箇所撮影し、画像解析装置に
よってベイナイト分率(体積率)を測定した。
00℃から500℃まで120秒で冷却する熱サイクル
(15kJ/mmの入熱でサブマージアーク溶接したと
きのHAZの熱履歴に相当)を施してから、シャルピー
衝撃試験片を採取し、吸収エネルギー(vE-20)を求
めた。vE-20≧47Jを合格とした。 耐溶接割れ性:JIS Z 3158に記載のy形溶
接割れ試験法に基づいて、入熱1.7kJ/mmで被覆
アーク溶接を行い、ルート割れ防止予熱温度を測定し
た。25℃以下を合格とした。
本発明で規定する要件を満足するもの(No.1〜1
5)では、母材特性および溶接性に優れ、しかも非調質
でも高い強度が発揮されていることが分かる。これに対
して、本発明で規定する要件のいずれかを欠くもの(N
o.16〜32)では、耐溶接割れ性、大入熱HAZ靭
性、母材特性(強度,靭性)、強度の少なくともいずれ
かが低下していることが分かる。
溶接性(HAZ靭性および耐溶接割れ性)に優れ、しか
も非調質でも高い強度を発揮することのできる570M
Pa級以上の高張力厚鋼板が実現できた。
Claims (11)
- 【請求項1】C :0.010〜0.06%(質量%の
意味、以下同じ),Mn:0.5〜2.5%,Cr:
0.5超〜2.0%,Mo:0.05〜1.5%,N
b:0.005〜0.040%,V :0.04%以下
(0%を含む),Ti:0.005〜0.1%,B :
0.0006〜0.005%,を満たす鋼からなり、 0.40%≦CeqおよびKV≦0.040% を満足することを特徴とする高靭性高張力非調質厚鋼
板。但し、 Ceq(%)=[C]+[Mn]/6+[Si]/24
+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+
[V]/4+[Cu]/13 KV(%)=[V]+[Nb] 《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味す
る。》 - 【請求項2】 Pcm≦0.23%を満足するものであ
る請求項1に記載の高靭性高張力非調質厚鋼板。但し、 Pcm(%)=[C]+[Mn]/20+[Si]/3
0+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15
+5×[B]+[V]/10 《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味す
る。》 - 【請求項3】 ベイナイト分率が90体積%以上である
請求項1または2に記載の高靭性高張力非調質厚鋼板。 - 【請求項4】 更にNi:5%以下(0%を含まない)
を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の
高靭性高張力非調質厚鋼板。 - 【請求項5】 更にCu:3%以下(0%を含まない)
を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の
高靭性高張力非調質厚鋼板。 - 【請求項6】 更にSi:1%以下(0%を含まない)
および/またはAl:0.2%以下(0%を含まない)
を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の
高靭性高張力非調質厚鋼板。 - 【請求項7】 更にN:0.002〜0.01%を含有
するものである請求項1〜6のいずれかに記載の高靭性
高張力非調質厚鋼板。 - 【請求項8】 更にCa:0.0005〜0.005%
を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の
高靭性高張力非調質厚鋼板。 - 【請求項9】 更にMg:0.005%以下(0%を含
まない)、希土類元素:0.02%以下(0%を含まな
い)およびZr:0.05%以下(0%を含まない)よ
りなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請
求項1〜8のいずれかに記載の高靭性高張力非調質厚鋼
板。 - 【請求項10】 請求項1〜9のいずれかに記載の高靭
性高張力非調質厚鋼板を製造するに当たり、Ac3点〜1
350℃の温度範囲に加熱後、仕上げ温度を650〜9
50℃で熱間圧延を終了し、その後0.05〜50℃/
秒で冷却することを特徴とする高靭性高張力非調質厚鋼
板の製造方法。 - 【請求項11】 冷却後に、300℃以上800℃未満
の温度域に再加熱保持する請求項10に記載の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001358171A JP3863413B2 (ja) | 2001-11-22 | 2001-11-22 | 高靭性高張力非調質厚鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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