JP2003159602A - 切削工具 - Google Patents

切削工具

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JP2003159602A
JP2003159602A JP2001359846A JP2001359846A JP2003159602A JP 2003159602 A JP2003159602 A JP 2003159602A JP 2001359846 A JP2001359846 A JP 2001359846A JP 2001359846 A JP2001359846 A JP 2001359846A JP 2003159602 A JP2003159602 A JP 2003159602A
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outer layer
cutting tool
base material
thermal expansion
compressive stress
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JP2001359846A
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English (en)
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Yutaka Sekiguchi
豊 関口
Yoshihito Igai
良仁 猪飼
Yasuhiro Takagi
保宏 高木
Kazuhiro Urashima
和浩 浦島
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Niterra Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
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  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 積層構造のセラミック焼結体からなり、特に
優れた耐欠損性を有する切削工具を提供する。 【解決手段】 本発明の切削工具は、基材と、この基材
の一面に形成された第1外層及び他面に形成された第2
外層とからなり、これらはいずれもセラミック焼結体に
より形成され、第1外層及び該第2外層の熱膨張係数
が、いずれも基材の熱膨張係数より小さいことを特徴と
する。この切削工具では、第1外層及び第2外層のうち
の少なくとも一方が、すくい面として用いられ、第1外
層及び第2外層が、それぞれ窒化珪素又はアルミナを主
成分とすることが好ましい。また、基材と、第1外層及
び第2外層の各々との熱膨張係数の差が、25〜100
0℃の平均値で、0.1×10−6〜3.0×10−6
/Kであり、第1外層及び第2外層の厚さが0.01〜
2mmであることがより好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミック焼結体
を積層してなる切削工具に関する。更に詳しくは、基材
の両面に、この基材より熱膨張係数の小さい外層を形成
してなり、それによって外層の端縁部に残留圧縮応力が
発生している切削工具に関する。本発明の切削工具は、
耐欠損性及び耐摩耗性等に優れ、高速旋盤、高速フライ
ス盤などの高速工作機械における切削工具として使用す
ることができる。また、フライス工具、エンドミル、ド
リル等として用いることもでき、特に、鋳鉄の加工に用
いる切削工具として有用である。
【0002】
【従来の技術】従来、セラミック焼結体からなる切削工
具は、単一組成のセラミックにより形成されることがほ
とんどであった。そして、組成を最適化することによ
り、強度及び靭性等を向上させ、耐欠損性と耐摩耗性と
の両立を図ってきた。しかし、実際には、十分な耐欠損
性と耐摩耗性とを併せ有する切削工具とすることは困難
であった。
【0003】一方、内部に比べて表面側の熱膨張係数が
小さくなるような構成とし、焼成後の冷却時に表面側に
圧縮応力を残留させることにより、強度及び靭性等を向
上させることも検討されている。例えば、特開平4−1
39065号公報には、窒化珪素マトリックス中に、熱
膨張係数が窒化珪素より大きい異種粒子を分散、含有さ
せ、この異種粒子の含有量をマトリックス表面から内部
に向かって増加させた傾斜組成を有する窒化珪素複合材
料が開示されている。そして、この複合材料によれば、
焼結後の冷却時に表面部分に強い圧縮応力を残すことが
でき、亀裂の発生及び進展に対する抵抗力が高められ、
強度及び靭性を更に向上させることができると説明され
ている。
【0004】更に、特開平4−319435号公報に
は、セラミック焼結体等からなる基材の少なくとも一面
に、基材よりも熱膨張率の小さい最外層を形成する際
に、基材と最外層との熱膨張率の大きな段差を解消する
ため、熱膨張率が漸次変化する傾斜組成を有する中間層
を形成させた積層焼結体が開示されている。そして、こ
の積層焼結体は、機械的強度が大きく、熱衝撃に強く、
摺動材料及び工具材料等、特に、急激に高温に曝され、
又は高温から急冷される切削工具材料として有用である
と説明されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、内部から表面
側へと熱膨張係数を変化させた傾斜組成を有する複合材
料、或いは熱膨張率の異なる基材と外層等との間に傾斜
組成を有する中間層を介在させて積層させた積層焼結体
を切削工具として実際に使用した場合、熱膨張について
特に考慮していない切削工具と比べて、耐欠損性等が必
ずしも向上するとは限らないことが、実験などにより明
らかになっている。これは、ただ単に積層構造としただ
けでは、すくい面の中央部にのみ残留圧縮応力が発生
し、実際の切削時に被切削材と接触する端縁部に十分な
残留圧縮応力を発生させることができないためである。
このように、より確実に耐欠損性等を向上させるために
は、基材及び外層の各々の熱膨張係数、或いはそれぞれ
の厚さなどを最適化する必要がある。本発明は、上記の
従来技術の問題点を解決するものであり、簡易な構造で
あって、且つ優れた耐欠損性及び耐摩耗性等を有する切
削工具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の切削工具は、基
材と、該基材の一面に形成された第1外層と、該基材の
他面に形成された第2外層と、から構成され、上記基材
並びに上記第1外層及び上記第2外層は、いずれもセラ
ミック焼結体からなり、該第1外層及び該第2外層の熱
膨張係数が、いずれも上記基材の熱膨張係数より小さい
ことを特徴とする。
【0007】本発明では、上記第1外層及び上記第2外
層のそれぞれの端縁部の少なくとも一部に残留圧縮応力
が発生している切削工具とすることができる。また、上
記第1外層及び上記第2外層のうちの少なくとも一方
が、すくい面として用いられる切削工具とすることがで
きる。更に、上記第1外層及び上記第2外層が、それぞ
れ窒化珪素又はアルミナを主成分とする切削工具とする
ことができる。また、上記第1外層及び上記第2外層の
それぞれの上記端縁部にビッカース圧子を圧入した場合
に、逃げ面と垂直方向に生成した亀裂の長さに基づき算
出した破壊靭性値が、上記端縁部の少なくとも一部にお
いて、上記第1外層及び上記第2外層の各々を形成する
セラミック焼結体のJIS R 1607により測定し
た破壊靭性値より10%以上大きい切削工具とすること
ができる。更に、上記第1外層及び上記第2外層のそれ
ぞれの上記端縁部の少なくとも一部の上記残留圧縮応力
が30MPa以上である切削工具とすることができる。
また、上記端縁部は、上記第1外層及び上記第2外層の
各々の端縁から3mm以内の部分である切削工具とする
ことができる。更に、上記第1外層及び上記第2外層の
それぞれの厚さが、0.01〜2mmである切削工具と
することができる。
【0008】
【発明の効果】本発明の切削工具は、基材の両面に、こ
の基材と比べて熱膨張係数が小さい外層が形成されてな
り、特に、この外層の少なくとも一部に残留圧縮応力が
発生していることにより、3層の簡易な構造でありなが
ら十分な耐欠損性と耐摩耗性とを併せ有する。この切削
工具は、両外層のうちの少なくとも一方がすくい面とし
て用いられ、これら外層を窒化珪素質焼結体又はアルミ
ナ質焼結体により形成することにより、容易に優れた耐
欠損性と耐摩耗性とを有する切削工具とすることができ
る。また、外層の端縁部、特に、端縁から3mm以内の
部分において、特定の破壊靭性値及び残留圧縮応力を有
する切削工具とすることにより、耐欠損性と耐摩耗性と
が大きく向上する。更に、外層の厚さを限定することに
よっても、耐欠損性と耐摩耗性とをより確実に向上させ
ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
セラミック焼結体からなる切削工具において、熱膨張係
数が内部から表面側へと小さくなっていく傾斜組成構
造、或いは傾斜組成を有する中間層を設けた積層構造と
することなく、基材の両面にセラミック焼結体からなる
外層を形成した3層の簡易な構造であっても、すくい面
となる外層の端縁部において十分な破壊靭性値及び残留
圧縮応力を有しておれば、優れた耐欠損性と耐摩耗性と
を併せ備える切削工具とすることができる。特に、基材
と外層との熱膨張係数の差及び外層の厚さを特定するこ
とによって、熱膨張の差による亀裂の発生等もなく、よ
り確実に十分な耐欠損性等を有する切削工具とすること
ができる。本発明は、このような知見に基づきなされた
ものである。
【0010】上記「基材」並びに上記「第1外層」及び
上記「第2外層」(以下、第1外層と第2外層とを単に
「外層」ということもある。)を構成する上記「セラミ
ック焼結体」としては、一般に切削工具として用いられ
ているセラミック焼結体を使用することができ、特に限
定はされない。そのようなセラミック焼結体としては、
アルミナ、ジルコニア、チタニア等の酸化物系セラミッ
ク焼結体、窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム、窒
化チタン、窒化タンタル等の窒化物系セラミック焼結
体、炭化珪素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化タ
ングステン、炭化タンタル、炭化クロム等の炭化物系セ
ラミック焼結体などが挙げられる。
【0011】基材と、第1外層及び第2外層とは、被切
削材を切削する際に剥離することのないように強固に接
合されていなければならない。そのため、通常、基材と
なる未焼成体と、それぞれ第1外層及び第2外層となる
未焼成体とを一体に積層したうえで、必要に応じて冷間
静水圧プレス処理等により緻密度を高めた後、同時焼成
することによって接合される。従って、基材と外層との
各々の未焼成体は、同時焼成することができ、且つ焼成
により強固に接合されるセラミックからなることが好ま
しい。
【0012】本発明の切削工具では、通常、第1外層及
び第2外層の少なくとも一方がすくい面として用いられ
る。従って、これらの外層は、十分な強度と破壊靭性と
を有している必要があり、そのためには窒化珪素又はア
ルミナを主成分とすることが好ましい。それによって優
れた耐欠損性と耐摩耗性とを併せ備える切削工具とする
ことができる。窒化珪素には少量の窒化アルミニウム、
アルミナ等が含まれていてもよく、アルミナには少量の
ムライト、スピネル等が含まれていてもよい。
【0013】第1外層及び第2外層の各々を100質量
%とした場合に、窒化珪素又はアルミナの含有量は、6
0質量%以上、特に80質量%以上、更には90質量%
以上であることが好ましい。窒化珪素又はアルミナの他
には、炭化チタン、炭化珪素等の耐熱性が高く、硬度の
大きいセラミックが含有されていてもよく、希土類元素
酸化物等の焼結助剤として用いられた酸化物が含有され
ていてもよい。尚、第1外層及び第2外層の全体が窒化
珪素又はアルミナにより形成されていてもよい。
【0014】基材も窒化珪素又はアルミナを含有するこ
とが好ましい。窒化珪素又はアルミナの含有量は、基材
を100質量%とした場合に、20〜80質量%、特に
30〜70質量%であることが好ましい。窒化珪素又は
アルミナの他には、窒化チタン、炭化タングステン、炭
化チタン、炭化珪素、炭化クロム等のセラミックが含有
されていることが好ましく、希土類元素酸化物等の焼結
助剤として用いられた酸化物が含有されていてもよい。
【0015】このように基材と外層、特に外層に窒化珪
素又はアルミナを除く他の耐熱性の高いセラミックを含
有させることによって、より耐熱性等に優れた切削工具
とすることができる。更に、基材及び外層に含有される
窒化珪素又はアルミナ並びにその他のセラミックの量比
によって、基材並びに第1外層及び第2外層の熱膨張係
数を容易に調整することができる。尚、この切削工具に
は、装置に取り付けること等を目的として、貫通孔、切
り欠きなどが設けられていてもよく、また、表面及び端
面等の一部に他のセラミック層などが積層されていても
よい。
【0016】この切削工具では、第1外層及び第2外層
の熱膨張係数が、いずれも基材の熱膨張係数より小さ
い。これにより、焼結後の冷却時に第1外層及び第2外
層に十分な残留圧縮応力が発生し、強度及び靭性が向上
する。基材と第1外層及び第2外層との熱膨張係数の差
は、25〜1000℃の平均値で、0.1×10−6
3.0×10−6/K、特に0.5×10−6〜3.0
×10−6/K、更には1.0×10−6〜3.0−6
/Kであることが好ましい。熱膨張係数の差が0.1×
10−6/K未満であると、十分な残留圧縮応力が発生
せず、耐欠損性等に優れた切削工具とすることができな
い場合がある。一方、熱膨張係数の差が3.0×10
−6/Kを越えると、成形体の焼成時、或いは焼結体を
工具形状に加工する際などに亀裂が発生することがあ
り、好ましくない。
【0017】また、第1外層及び第2外層のそれぞれの
端縁部にビッカース圧子を圧入した場合に、逃げ面と垂
直方向に生成した亀裂の長さに基づき算出される破壊靭
性値(Κ)が、端縁部の少なくとも一部において、J
IS R 1607により測定される第1外層及び第2
外層の各々の破壊靭性値(Κ)より10%以上大きい
ことが好ましい。ΚはΚより25%以上、特に50
%以上(通常、200%以下)大きいことが好ましく、
これにより耐欠損性等に優れた切削工具とすることがで
きる。
【0018】更に、第1外層及び第2外層のそれぞれの
端縁部の少なくとも一部の残留圧縮応力が30MPa以
上であることが好ましい。この残留圧縮応力は50MP
a以上、特に100MPa以上であることが好ましく、
150MPa以上、更には200MPa以上とすること
もできる。残留圧縮応力が30MPa未満であると、耐
欠損性等を十分に向上させることができない場合があ
る。
【0019】上記「端縁部」は、被切削材に接する部位
に近接する部分であり、第1外層及び第2外層の平面方
向の中央部を除く部分である。端縁からの距離は限定さ
れないが、端縁から3mm以内、好ましくは2mm以内
の部分である。特に、端縁部の逃げ面と平行な方向の両
端部、更には逃げ面と平行な方向の端縁から3mm以
内、好ましくは2mm以内において、破壊靭性が向上
し、十分な残留圧縮応力が発生していることがより好ま
しい。この被切削材に接する部位に近接する端縁部であ
り、且つその逃げ面と平行な方向の両端部とは、例え
ば、第1外層及び第2外層の平面方向の形状が正方形で
ある場合に、図1において斜線により表される部分であ
る。
【0020】このように、第1外層及び第2外層、即
ち、すくい面の端縁部の破壊靭性を向上させること、或
いは十分な残留圧縮応力を発生させること、によって切
削工具の耐欠損性等を十分に向上させることができる。
また、すくい面端縁部の逃げ面と平行な方向の両端部の
破壊靭性を向上させ、且つ十分な残留圧縮応力を発生さ
せることにより、切削工具の耐欠損性等を確実に向上さ
せることができる。
【0021】第1外層及び第2外層の厚さは限定されな
いが、0.01〜2mm、特に0.01〜1mm、更に
は0.05〜0.8mmとすることが好ましい。この厚
さが0.01〜2mmであれば、端縁部に十分な残留圧
縮応力を発生させることができる。外層の厚さが0.0
1mm未満であると、基材が耐欠損性に大きく影響を及
ぼし、耐欠損性等を十分に向上させることができない場
合がある。一方、この厚さが2mmを越えると、全厚さ
に渡って十分な残留圧縮応力を発生させることが容易で
はなく、好ましくない。
【0022】本発明の切削工具では、後記の実施例にお
ける耐欠損性の評価方法による加工山数の比を、1を越
え、1.3以下とすることができ、特に1.1〜1.3
とすることもでき、更には1.3を越えて大きくするこ
ともできる。このように特定の積層構造とすることによ
って、簡易な構造でありながら十分に優れた耐欠損性等
を有する切削工具とすることができる。
【0023】この切削工具は、原料粉末を一軸プレスに
より積層する多段プレス法、予め原料粉末を含有するシ
ートを成形し、これを圧着して積層させるシート積層
法、及び原料粉末をホットプレスにより積層させるホッ
トプレス法等によって所定形状の成形体とした後、10
MPa程度の窒素ガス圧下で焼成するガス圧焼結法、1
0〜300MPa程度の圧力下で焼成する熱間静水圧焼
結法、及び機械的に一軸方向に加圧しながら焼成するホ
ットプレス焼結法等により焼成し、得られた焼結体を所
定形状に加工することによって製造することができる。
【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (1)切削工具の製造 実験例1〜14の3層構造の焼結体の作製 基材用及び外層用の各々の原料粉末を、表1に記載の所
定の質量比となるように配合した。その後、水を媒体と
して、窒化珪素製の容器とボールとを使用し、容器の回
転数を50rpmとして40時間湿式粉砕し、混合し
た。次いで、スプレードライヤー法により造粒し、基材
用及び外層用のそれぞれの混合粉末を得た。その後、第
1外層用、基材用、第2外層用の順に各々の混合粉末を
金型に注入し、一軸プレスにより積層する多段プレス法
によって成形した。
【0025】次いで、冷間静水圧プレス処理により高密
度化し、縦17mm×横17mm×高さ7mmの成形体
とした。その後、実験例1〜11では、窒素雰囲気下、
圧力1MPa、温度1900℃で2時間保持して一次焼
成し、その後、窒素雰囲気下、圧力100MPa、温度
1600℃で2時間保持して二次焼成した。また、実験
例12〜14では、大気雰囲気下、温度1300℃で2
時間保持して焼成した。このようにして各々3層構造の
焼結体を得た。
【0026】実験例15の5層構造の焼結体の作製 表3に記載の所定の質量比の原料粉末を使用し、(1)
と同様にして混合粉末とし、同様の方法で同寸法の成形
体とした。その後、窒素雰囲気下、圧力1MPa、温度
1900℃で2時間保持して一次焼成し、その後、窒素
雰囲気下、圧力100MPa、温度1600℃で2時間
保持して二次焼成し、5層構造の焼結体を得た。
【0027】工具形状への加工 上記のようにして作製した実験例1〜15のそれぞれの
焼結体を所定形状の切削工具[ISO SNGN432
に規定された形状、寸法;縦12.7mm×横12.7
mm×厚さ4.76mm(第1及び第2外層は同じ厚さ
であり、各々表1に記載の厚さである。)]に加工し
た。その後、各々の切削工具の逃げ面にチャンファ0.
085の面取り加工を施した。尚、実験例1〜14の切
削工具の第1及び第2外層の厚さ及び実験例15の切削
工具の各々の層の厚さは2点間距離の測定が可能なマイ
クロスコープにより測定した。
【0028】(2)物性の評価 熱膨張係数 実験例1〜14の切削工具では、基材用のみ、又は外層
用のみの原料粉末を使用し、また、実験例15の切削工
具では、それぞれの層の原料粉末のみを用いた他は、前
記と同様にして焼結体を製造し、それぞれの熱膨張係数
(表1では「α」と表す。)を下記の式により算出し
た。 熱膨張係数(10−6/K)=−[(1000℃におけ
る標準試料長さ−1000℃における測定試料長さ)/
25℃における測定試料長さ×(1000℃−25
℃)]+8.45×10−6 上記の式において、「1000℃における標準試料長
さ」は、標準試料として1000℃における熱膨張係数
が8.45×10−6/℃であるアルミナを使用した場
合の、このアルミナの1000℃における長さを意味す
る。尚、この標準試料の25℃における長さは、測定試
料の25℃における長さと等しい長さであるとする。ま
た、標準試料及び測定試料の長さは圧縮荷重法により測
定した。
【0029】破壊靭性 実験例1〜13の切削工具の外層及び実験例14の切削
工具の第1層(いずれも切削工具のすくい面となる。)
の端縁から3mm以内の角部における破壊靭性値(K
c1)を、ビッカース硬さ試験機を用いた圧子圧入法に
より測定した。即ち、すくい面となる外層又は第1層を
鏡面仕上げした後、端縁から3mm以内のすくい面の角
部に、圧痕の対角線が逃げ面と垂直になるように圧子を
圧入荷重98Nで圧入し、発生した亀裂のうち、逃げ面
に垂直な方向における亀裂長さ[逃げ面に垂直な方向と
は、図2のように圧子を圧入した位置に最も近い逃げ面
に対して垂直な方向のことであり、圧子B及びB
各々の場合に亀裂長さは(2a)で表される。尚、この
亀裂長さ(2a)は、図2のように、圧子の対角線を含
む長さである。]に基づき破壊靭性値(Kc1)を下記
の式により算出した。 Kc1=0.026×E1/2×P1/2×a/C3/2 [但し、E;すくい面のヤング率(GPa)、P;圧入
荷重(N)、a;亀裂長さの半分(m)、C;圧痕の対
角線長さの半分(m)] また、実験例1〜13の切削工具では外層用のみの原料
粉末を、実験例14の切削工具では第1層用のみの原料
粉末を用いた他は、前記と同様にして比較のための焼結
体を製造し、この焼結体の破壊靭性値(Kc2)をJI
S R 1607(予亀裂発生起点をビッカース圧子に
より導入する方法)により測定した。尚、3層構造又は
5層構造の切削工具及び比較のための焼結体の各々を1
0個以上作製し、それぞれの積層体及び焼結体について
10箇所以上測定し、得られた測定値のうちの最大値を
各々の破壊靭性値(Kc1及びKc2)とした。表2及
び表3の破壊靭性向上率は、下記の式により算出した。 破壊靭性向上率(%)=[(Kc1−Kc2)/
c2]×100
【0030】残留圧縮応力の最大値の測定 実験例1〜13の切削工具の外層及び実験例14の切削
工具の第1層(いずれも切削工具のすくい面となる。)
の端縁から3mm以内の角部における圧縮応力を、日本
材料学会標準 JSMS−SD1−00「X線応力測定
法標準−セラミックス編−」に準じ、X線回折装置(理
学電機工業株式会社製、型式「RTP300」、X線;
Kα、対陰極;Cu、X線出力;50kV、100m
A)を用い、X線入射方法はΨ一定法、検出器の走査方
法は並傾法により測定した。表2及び表3の最大残留圧
縮応力は、異なる位置で3個所以上測定した圧縮応力の
うちの最大値である。
【0031】耐欠損性 実験例1〜14の切削工具、及び実験例1〜13の切削
工具では外層用のみの原料粉末を、また、実験例14の
切削工具では第1層用のみの原料粉末を用いた他は、前
記と同様にして焼結体を作製し、同様にして工具形状に
加工して得られた比較用の切削工具、を使用し、鋳鉄
「FC200」を被切削材とし、乾式下、切削速度15
0mm/分、切り込み2.0mm、送り速度1.0mm/
分の条件で切削を行い、欠損が生じるまでの加工山数を
評価した。尚、加工山数とは、被切削材に多数の溝を等
間隔に設け、形成された山部を連続切削した場合に、切
削工具が欠損せずに切削することができた山部の数を意
味する。耐欠損性は、実験例1〜14の切削工具を使用
した場合の加工山数(M)と、対応する比較用の切削
工具を用いた場合の加工山数(M)との比(M/M
)により評価した。耐欠損性の評価基準は、◎;加工
山数比=1.3以上、○;加工山数比=1を越え、1.
3未満、△;加工山数比=0.7を越え、1未満、であ
る。
【0032】耐摩耗性 実験例1〜14の切削工具、及び実験例1〜13の切削
工具では外層用のみの原料粉末を、また、実験例14の
切削工具では第1層用のみの原料粉末を用いた他は、前
記と同様にして焼結体を製造し、同様にして工具形状に
加工して得られた比較用の切削工具、を使用し、鋳鉄
「FC200」を被切削材とし、乾式下、切削速度30
0mm/分、切り込み1.5mm、送り速度0.34m
m/分の条件で、連続切削を行った後、フランク最大摩
耗量を測定し、これを逃げ面の摩耗量とした。耐摩耗性
は、実験例1〜14の切削工具を用いて得られた摩耗量
を、対応する比較用の切削工具を用いて得られた摩耗量
で除した値により評価した。耐摩耗性の評価基準は、
○;摩耗量比=0.8以上、1未満である。実験例1〜
13の切削工具の外層及び基材の組成、それぞれの熱膨
張係数、それらの差、外層の厚さを表1に、破壊靭性向
上率、最大残留圧縮応力、耐欠損性及び耐摩耗性の結果
を表2に、実験例14の切削工具の組成及び同様の物性
等を表3に記載する。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】表1及び表2の結果によれば、基材と外層
との熱膨張係数の差と、外層の厚さがともに好ましい範
囲にある実験例1〜5及び実験例7〜13の切削工具、
並びに外層の厚さが好ましい範囲をやや上回っている実
験例6では、破壊靭性が向上し、残留圧縮応力の最大値
は30MPa以上と大きく、優れた耐欠損性と耐摩耗性
とを併せ有していることが分かる。特に、外層の厚さが
0.5mm以下である実験例1〜3の切削工具、或いは
熱膨張係数の差が1.3×10−6/K以上である実験
例8〜10の切削工具では、破壊靭性は40%以上向上
し、最大残留圧縮応力は230MPa以上であり、より
優れた性能の切削工具を得ることができる。
【0037】更に、実験例14の5層構造の積層体から
なる切削工具では、第3層を基材とし、第1、2層及び
第4、5層を外層とした場合も、第2、3、4層を基材
とし、第1、2層を外層とした場合も、ともに熱膨張係
数の差及び外層の厚さは好ましい範囲内となっているに
もかかわらず、破壊靭性は向上せず、最大残留圧縮応力
も小さい。その結果、耐欠損性は第1層の組成のみから
なる切削工具より劣っている。これは特定の構成の3層
の積層体とすることにより所要の効果が得られることを
裏付けるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の切削工具において破壊靭性を向上さ
せ、十分な残留圧縮応力を発生させる最も好ましい部分
を表す模式図である。
【図2】破壊靭性値を算出するための亀裂の方向を説明
するための模式図である。
【符号の説明】
1;すくい面、2;破壊靭性を向上させ、十分な残留圧
縮応力を発生させた部分、3;ビッカース圧子による圧
痕、4;亀裂、5;逃げ面。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高木 保宏 名古屋市瑞穂区高辻町14番18号 日本特殊 陶業株式会社内 (72)発明者 浦島 和浩 名古屋市瑞穂区高辻町14番18号 日本特殊 陶業株式会社内 Fターム(参考) 3C046 FF04 FF16 FF19 FF25 4G001 BA03 BA08 BA32 BB03 BB08 BB32 BC24 BC43 BC46 BC52 BC54 BC55 BD11 BD12 BD16 BD18 4G030 AA36 AA45 AA47 BA19 GA03 GA04 GA05 GA22 GA24 GA29 GA36

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材と、該基材の一面に形成された第1
    外層と、該基材の他面に形成された第2外層と、から構
    成され、上記基材並びに上記第1外層及び上記第2外層
    は、いずれもセラミック焼結体からなり、該第1外層及
    び該第2外層の熱膨張係数が、いずれも上記基材の熱膨
    張係数より小さいことを特徴とする切削工具。
  2. 【請求項2】 上記第1外層及び上記第2外層のそれぞ
    れの端縁部の少なくとも一部に残留圧縮応力が発生して
    いる請求項1記載の切削工具。
  3. 【請求項3】 上記第1外層及び上記第2外層のうちの
    少なくとも一方が、すくい面として用いられる請求項1
    又は2に記載の切削工具。
  4. 【請求項4】 上記第1外層及び上記第2外層が、それ
    ぞれ窒化珪素又はアルミナを主成分とする請求項1乃至
    3のうちのいずれか1項に記載の切削工具。
  5. 【請求項5】 上記第1外層及び上記第2外層のそれぞ
    れの上記端縁部にビッカース圧子を圧入した場合に、逃
    げ面と垂直方向に生成した亀裂の長さに基づき算出した
    破壊靭性値が、上記端縁部の少なくとも一部において、
    上記第1外層及び上記第2外層の各々を形成するセラミ
    ック焼結体のJIS R 1607により測定した破壊
    靭性値より10%以上大きい請求項1乃至4のうちのい
    ずれか1項に記載の切削工具。
  6. 【請求項6】 上記第1外層及び上記第2外層のそれぞ
    れの上記端縁部の少なくとも一部の上記残留圧縮応力が
    30MPa以上である請求項1乃至5のうちのいずれか
    1項に記載の切削工具。
  7. 【請求項7】 上記端縁部は、上記第1外層及び上記第
    2外層の各々の端縁から3mm以内の部分である5又は
    6に記載の切削工具。
  8. 【請求項8】 上記第1外層及び上記第2外層のそれぞ
    れの厚さが、0.01〜2mmである請求項1乃至7の
    うちのいずれか1項に記載の切削工具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011206890A (ja) * 2010-03-30 2011-10-20 Ngk Spark Plug Co Ltd 切削工具及びその製造方法

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