JP2003156588A - ライニング容器を用いた長尺物保管構造 - Google Patents

ライニング容器を用いた長尺物保管構造

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 組立作業の作業性が良好でしかも構造が簡単
な、ライニング容器を用いた長尺物保管構造を提供する
こと。 【解決手段】 水が注入されたライニング容器1内に、
長尺の保管物を保持するための保管構造体16を固定し
て、この保管構造体により水中において前記保管物を保
持するようにしたライニング容器を用いた長尺物保管構
造において、前記保管構造体は、前記ライニング容器の
底部に固定され、前記保管物は、前記保管構造体により
縦向きに保持され、前記保管構造体の上端は、全水深の
略8分の3より低位の位置に配され、前記保管物は、全
水深の略8分の6より低位の位置に配された、ことを特
徴とするライニング容器を用いた長尺物保管構造。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放射性廃棄物や放
射性物質の貯蔵プール等に使用される各種ライニング容
器内の長尺物保管構造に関する。
【0002】
【従来の技術】原子力発電設備や放射性物質処理施設に
おいて、各種の放射性物質の貯蔵保管は、コンクリート
躯体に鋼板を張ったライニング容器を用いて行われるこ
とが多い。そして、通常は、ライニング容器内に冷却兼
放射線遮蔽用の水を張って、その中に保管される。ライ
ニング容器は、通常の円筒形タンクに比べると躯体内空
間の使用容積効率が良い。保管物の保持には、ライニン
グ容器底に横積みせず、保管物保持用の構造体をライニ
ング容器底に据付ける構造を採ることが多い。
【0003】従来の保管構造は、例えば特開平7-217249
号公報に示すように、ライニング容器底部に大きいアン
カーボルトを設置して、このアンカーボルトで保管構造
体の底部を固定保持し、保管構造体に長尺物を縦に差す
ものである。
【0004】図8ないし図13は、従来のライニング容
器1内の保管構造体5の据付け構造を示す図である。ま
ず図8および図9は、保管構造体5の固定構造を示した
もので、アンカーボルト6がコンクリート躯体2に深く
細密に配置された状態を示している。次に図10は、一
体分の保管構造体5についての受け座板7を示してお
り、全周に多数のアンカーボルトが配置されている。図
11は、この一体分の保管構造体5の受け座板7を、ラ
イニング容器1の底に多数配置した例を示している。そ
して図12および図13は、ライニング容器1内に設定
した、保管構造体5を示すものである。
【0005】図8および図9に示すように、ライニング
容器1は、コンクリート躯体2によって構築された平坦
な内底部3aを有する容器本体3と、この容器本体3の
内面に張設された金属製のライニング板4とを備えてい
る。保管構造体5は、容器本体3の内底部3aのライニ
ング板4上から立ち上がる縦長の角筒状に形成されたも
ので、この保管構造体5が複数、並列的に配列されて固
定配置される。
【0006】このようなライニング容器1の保管構造体
5の据付け構造にあって、各保管構造体5が、容器本体
3における内底部3aのコンクリート躯体2に埋設され
たアンカーボルト6によって固定される。すなわち、コ
ンクリート躯体2の表面部位に、保管構造体5の底板5
aと略同一面積の四角枠状の受け座板7をそれぞれ埋設
し、コンクリート躯体2に埋設したアンカーボルト6に
よって、受け座板7と各保管構造体5との底板5aとを
締結するようになっている。
【0007】詳述すると、図12に示すように、アンカ
ーボルト6はコンクリート躯体2に深く埋め込まれ、そ
の上方にターンバックル8および継ぎボルト9を介して
受けネジ10が連結され、この受けネジ10に受け座板
7が取り付けられている。受け座板7は、前述したよう
に、保管構造体5に対応して枠状に構成され、保管構造
体を1単位とする矩形の取り付けフランジを構成する。
受け座板7と受けネジ10とは、上下2個所のシール溶
接部11によって水密に連結され、その溶接部11によ
り、ライニング板4も受け座板7と接合されている。
【0008】なお、コンクリート躯体2の内部には、図
示しないが埋め込みテンプレートが設けられ、これによ
りアンカーボルト6の据付け時における水平方向の位置
を設定している。
【0009】ここで、アンカーボルト6は、コンクリー
ト躯体2に受けネジ10を強固に固定するために十分な
大きさと長さとを持つものとされ、またターンバックル
8は受けネジ10の上面レベルを調整するためのもの
で、据付け作業時に一度調整が行われる。
【0010】さらに、継ぎボルト9は、ターンバックル
8と受けネジ10とを繋ぐもので、ネジ棒として構成さ
れている。また受けネジ10は、保管構造体5の取り付
けボルト12との螺合によって、保管構造体5の底部を
締め付け保持するようになっている。以上が、保管構造
体5の取り付け構造である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】この従来構造では、長
大なアンカーボルト6を各保管構造体5の底部5aの周
囲に多数配置する構造となっているため、アンカーボル
ト6が多数必要であるとともに、設定工事に多くの工数
を必要としている。特に、ライニング容器1の底部に配
設されるアンカーボルト6は、図8および図9に示すよ
うに、床スラブの鉄筋13を交差方向に貫通し上下方向
に設置されることから、鉄筋13との位置関係の調整を
逐一行う必要がある。このため、鉄筋施工13とアンカ
ーボルト6の施工とは、常に相互に施工能率を阻害する
関係にある。
【0012】つまり鉄筋施工の間を縫って、図示しない
下部テンプレートの設置および上部テンプレートの設置
を行う。下部テンプレートは、下端筋の間を突き抜けて
設置され、鉄筋13上の作業性の良くないところで正確
な位置設定を行う。また、アンカーボルト6は稠密に立
てられるため、上場筋とぶつかり合うことが多く鉄筋設
置作業を大きく妨げる。
【0013】さらに、アンカーボルト6は、高精度に位
置設定した後に上端筋作業によって設定位置がずれるこ
とがあり、精度再確認と再設定が必要になる。このよう
に、鉄筋施工とアンカーボルト施工とは相互に作業性を
阻害する要因となっている。
【0014】また、従来、受け座板7は、各保管構造体
5を単位として枠状に構成されているため、位置設定が
非常に難しい。すなわち、受けネジ10と受け座板7と
は、その受け座板7の上下両面間で溶接されるため、こ
れらの溶接はすべて同時に行うことはできず、少なくと
もコンクリート躯体2側の溶接はコンクリート打設前に
行わなければならない。
【0015】このため、受けネジ10を受け座板7の一
辺毎に整列取り付けした状態でアンカーボルト6に連結
する必要がある。しかし、この連結作業は多数のターン
バックル8を同時に回動するか、各ターンバックル8を
少しずつ回す以外に行うことができない。これは、一つ
のターンバックル8のネジ部だけを回動しようとして
も、隣接する他のターンバックル8におけるネジ部の螺
合深さが同程度に進まなければ、その回動が行えないか
らである。
【0016】したがって、従来は、多大の手間と時間と
を掛けて一辺ずつレベル出ししながら水平出しを行い、
枠状の受け座板7における全ての辺についてレベル設定
を行って、初めて保管構造体5の1個分の設定が完了す
ることとなっている。このような設定を保管構造体5の
全数分だけ繰り返すのであるから、設定工数は非常に大
きなものとなる。
【0017】以上のように、アンカーボルト6は、単に
受けネジ10をコンクリート躯体2に固定するだけの目
的で使用されるにも拘わらず、一軸上に4個のネジ部品
を使用している。このアンカーボルト6は、例えば廃棄
物貯蔵プールの場合、数百本必要であることを考える
と、部品総数が非常に多く、直接、製造および設置コス
トが嵩むことになる。しかも、ネジ部品固有の隙間、い
わゆるガタが生じるため、各アンカーボルトに作用する
力は均等でなくなり、アンカーボルト6として機能が十
分なものと不十分なものが出てくる。
【0018】また、従来、地震時等に発生する保管構造
体5の転倒モーメントによって、特定のアンカーボルト
6に計算以上の荷重がかかる場合もあって構造上不適切
であり、安全確保のために更にアンカーボルト6の数を
増加させなければならない等の問題が生じる。
【0019】保管構造体単品では、現地据付け施工でア
ンカーボルトと鉄筋のような相互阻害問題はないが、こ
の据付け構造に釣り合う剛体を、溶接で製造するには多
大の労力、時間および費用が掛かる。
【0020】本発明は上述の点を考慮してなされたもの
で、組立作業の作業性が良好で、しかも構造が簡単な、
ライニング容器を用いた長尺物保管構造を提供すること
を目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本
発明では、水が注入されたライニング容器内に、長尺の
保管物を保持するための保管構造体を固定して、この保
管構造体により水中において前記保管物を保持するよう
にしたライニング容器を用いた長尺物保管構造におい
て、前記保管構造体は、前記ライニング容器の底部に固
定され、前記保管物は、前記保管構造体により縦向きに
保持され、前記保管構造体の上端は、全水深の略8分の
3より低位の位置に配され、前記保管物は、全水深の略
8分の6より低位の位置に配された、ことを特徴とする
ライニング容器を用いた長尺物保管構造、を提供するも
のである。
【0022】(作用)ライニング容器における全水深の
うち下方の不動水は、保管物と保管構造体の動きをとも
に抑制作用するので、結局一体に固まったようになり、
いわば凍結保管に類似した作用をする。したがって、加
震時の保管物および保管構造体の動きは、ともに空気中
での挙動と比べて遥かに小さく抑制できる。
【0023】ここで、この水の保持作用をさらに詳しく
説明すると次の通りである。
【0024】地震時における液体揺動の研究は広範に行
われており、地上据付けタンクから、高架槽や航行中の
船舶内の容器まで、実用上信頼度の高い種々の型式の計
算法が確立されている。特に、地上据付け容器内の地震
時水揺動については、よく研究されていて各種理論があ
る。そのうち、ハウスナー理論がもっとも確実で定説的
な理論とされ、実機の設計計算に用いられている。
【0025】これとは別に、超高性能のコンピュータを
用いて、厳密な計算を行い得る理論もあるが、ハウスナ
ーの理論と結果がほとんど変わらないので、ハウスナー
理論が広く実務に適用されている。
【0026】
【発明の概要】図1を参照して、ハウスナー理論と本発
明の作用の関係を説明する。
【0027】加震時、容器内包水は、下部の不動水、上
部の揺動水、最上部の波動部に分かれてそれぞれ別挙動
する。最下部の不動水は、容器に対し全く相対運動をし
ないで、略同一挙動をするとされる部分である。ハウス
ナー理論では、不動水の重心を底から8分の3として容
器側面への不動水の作用荷重の計算をしている。揺動部
はこの上部にあって、この範囲内では揺動に差があり上
部は大きく下部は小さい。
【0028】容器内の保管物と保管構造体とが加震され
たとき、図1に示すように、容器、保管物および保管構
造体の3者とは相対運動をせず、一体運動をする。言い
換えると、下部不動水域では保管物および保管構造体に
力は作用しない。
【0029】このように、容器内包水中で加震時加速度
が加わっても、保管物および保管構造体に力が生じない
理由は次の通りである。
【0030】容器内包水中の物体は、比重量が水と同じ
であれば、同一加速度を受けて同一の力を生じるので、
内包水と相対運動が起きないことは自明である。もし、
これで相対運動が生じるなら、内包水自身が攪拌状態に
なるが、当然このような事象は生じない。
【0031】容器内包水中の物体は、比重量が水より小
さいのであれば水に押されて同一挙動し、相対運動はや
はり生じない。このような事態が生じるのは、気泡や、
極小の水中浮遊物のみで、保管技術上の問題とはならな
い。
【0032】反対に、容器内包水中の物体の比重量が水
より大きいのであれば、加速度を受けたとき、慣性の差
によって水の動きに抵抗してその場に止まろうとする。
したがって、水との間に相対的な力を生じる。この時、
動こうとしない物体に及ぶ水の力は、水中の移動体に作
用する抗力で、物体の移動方向の合計面積と形状が支配
する。
【0033】物体の面積が大きい場合は、水の推力が大
きく働き、水との相対変位は非常に小さいものとなる。
具体的には、大きい鉄板様の物体の大平面に直角に水の
推力が働くと、物体質量に対してその推力は非常に大き
なものとなる。逆に方向を変えて、大きい鉄板のような
物体の大きな平面に平行に水の推力が働けば、物体質量
に対してその推力は大きなものとはならない。
【0034】保管物および保管構造体の加震方向に対し
て直角な面積が大きければ、水の推力を受けて容易に移
動する。したがって、保管物と保管構造体とが加震方向
から見て面積が大であれば水と略同一挙動する。
【0035】揺動水と、不動水の境界は次の通りであ
る。
【0036】ハウスナー理論では、不動水の重心を容器
底から8分の3としており、8分の6までを不動とはし
ていない。不動水の重心は、不動と見なしうる水の計算
モデル上に設定された重心位置であって、揺動の現象そ
のものはより低位まで及ぶ。ハウスナー理論では、揺動
現象は、水面下距離、ライニング容器の一辺の75%ま
で及ぶとしている。全て、容器壁への作用荷重計算上の
仮の値であって、水の動きに正確な境界が存在しないこ
とは当然である。
【0037】本発明の発明者は、この矛盾の実用的な解
決のため、揺動実験と設備調査を行い、その現象を明ら
かにした。
【0038】実験によると、厳密な不動域は存在しな
い。これは、水が温度差で対流しており局部流動と全体
流動とを常時行っており、上部の波動域への外乱でも最
低位の水流に対し極微小だが影響を与えるためである。
放射性物質は、必ず発熱を伴うことと、大規模な容器が
均一な温度にはならないこと、等が原因で静止水は存在
しない。これでは、ハウスナー理論は成り立たなくな
る。
【0039】ところが、この程度の水の流動は、構造物
の設計強度に関わらないので、ハウスナー理論の評価検
討の対象外である。構造物の設計上有意な程度の水流事
象の範囲では、ハウスナー理論が正しいことを改めて確
認し、さらに詳しい現象を確かめた。
【0040】実験調査の結果判明したのは、以下の現象
である。水深8分の3までは不動とみてよく、それだけ
に動きを検出することが検査技術上難しい領域である。
水深8分の3から8分の6までの領域は、この範囲内の
下部と上部とで揺動に差がある。この範囲の揺動は、主
に水の上下方向で、水平方向の動きは殆ど無い。この範
囲は水平方向不動水であり、上下方向微動水となる。
【0041】水深8分の6から波動部の下面までは上下
動があり、水平方向の動きは非常に少ない。波動部は、
上下動が主体で水平方向の動きも目視観察ではっきり認
められる。
【0042】容器の寸法関係、すなわち縦、横、高さに
よって、水の各挙動域が変化する。ただし、深い井戸の
ような容器や、皿のような浅い容器でなければ、前述の
挙動域関係は概略成立する。深い井戸のような容器や、
皿のような容器でも容器内構造物によって不動域が生成
され、設計考慮を加えれば固定機能を発揮させることが
できる。
【0043】躯体内のライニング容器の波動が激しくて
も、水流が上下動なので、横荷重の発生は小さい。容器
の直立側壁に対する波動の力は小さく、水位の上下動と
して働き、水平方向の水の運動量は少ない。これは、ラ
イニング容器の壁がいわば岸壁として機能するためで、
津波のような水平方向の運動エネルギーを持ち得ないた
めである。
【0044】
【発明の実施の形態】図2に、本発明の第1の実施例に
おけるライニング容器1と、板格子を上部と下部に持つ
保管構造体16と保管物の小物廃棄物収納箱18とを示
す。保管構造体16および小物廃棄物収納箱18は、ラ
イニング容器1内に収容されている。
【0045】ライニング容器1は、ほぼ立方体に近い形
状で、波立ち溢水しない程度の上部余裕を残して満水状
態にしてある。コンクリート駆体2に対しアンカーボル
ト15で固定された4個の受け台14上に設けられた廃
棄物貯蔵保管構造体16は、その高さが水深の略8分の
3に設定され、小物廃棄物収納箱18は、その高さが水
深の略8分の6に設定されている。 そして、廃棄物貯
蔵保管構造体16中に、長尺の保管物(図示せず)を縦向
きに保持して水中保管する。
【0046】この第1の実施例では、仮に地震によって
水平加速度が働くと、ライニング容器1は建家のコンク
リート躯体2と同一挙動をする。そして、ライニング容
器1内に満たされた水の下部の8分の3は不動水、すな
わちライニング容器1に対する不動水として、ライニン
グ容器1と同一挙動をする。廃棄物貯蔵保管構造体1
6、特に上部板格子16aおよび下部板格子16bは、
下部の不動水に抑えられて、不動水と同一挙動する。し
たがって、コンクリート躯体2、ライニング容器1およ
び廃棄物貯蔵保管構造体16は同一挙動をする。
【0047】いま地震によって水平加速度が働くとする
と、ライニング容器1内に満たされた水の下方8分の3
から8分の6の範囲では水は微小上下動があるが、水平
方向にはライニング容器1と同一挙動をする。小物廃棄
物収納箱18は、下側半分を下部の8分の3の不動水に
よって固定され、上側半分は微小上下動があるものの水
平方向にはライニング容器1と同一挙動をする下方8分
の3から8分の6の範囲の水平方向不動水によって固定
される。したがって、小物廃棄物収納箱18も固定化さ
れた状態にある。
【0048】このように、第1の実施例によれば、コン
クリート躯体2、ライニング容器1、廃棄物貯蔵保管構
造体16、小物廃棄物収納箱18は、不動水および水平
方向不動水によって一体固定化される。したがって、受
け台14、アンカー15、廃棄物貯蔵保管構造体16、
小物廃棄物収納箱18と保管物には殆ど外力が掛からな
い。よって、保管安全の向上、保管構造体の軽量化が行
える。
【0049】図3は、図2における受け台14およびア
ンカー15の拡大断面図である。従来のものは、図1
0、図11に示すように、保管構造体5、受け座板7を
多数のアンカーボルト6でコンクリート躯体2に固定す
る構造であるが、それに比べ、図3では保管構造体16
はその4隅の受け台4が4本ずつのアンカーボルト15
で固定されているに過ぎず、大幅に構造が簡単化されて
いる。廃棄物貯蔵保管構造体16も、大幅に軽量化され
ている。
【0050】図4(a),(b)は、本発明の第2の実施例を
示したものである。第2の実施例は、ライニング容器1
内に格子状の保管構造体16を固定して、この格子中に
長尺の保管物を立てて水中保管する構造である。そし
て、保管構造体16側の格子状部材による保管物の支持
は、概略垂直面同士が対向した関係を持つ保管構造体と
保管物の面間水による点に特徴がある。
【0051】すなわち、水中にある2平面間の距離が接
近するとき、2平面間の水の動的挙動によって接触直前
に運動抵抗が非常に大きくなる。したがって、2平面間
の面間水は2平面の運動に対する緩衝材として利用でき
る。
【0052】この作用を詳しく説明すると、次の通りで
ある。図4は、本発明の第2の実施例を説明するもの
で、格子状保管構造体16に横断面方形の小物廃棄物収
納箱である保管物18が差し込まれた状態を示してい
る。狭隘部に置かれた水の挙動は、自由貯留水とは違
い、特殊である。
【0053】図4(a)は、加震を受ける前の状態を示し
ている。この状態では、保管構造体16の格子内側と筒
状の保管物18の外周との間に隙間ができている。
【0054】ここに水平方向の加震があると、隙間aの
水は急速に間隔が減少するため、保管物18のピストン
様効果によって圧縮力を受け、隙間aから噴流となって
押し出される。この噴流は、隙間減少が始まって隙間が
なくなるまでの短時間中にその流量と流速が変化し、初
期は低速で大流量であるが最後は高速小流量となる。高
速小流量の水がすべて押し出されたとき、保管物18と
保管構造体16の格子とが接触する。この一連の動きに
おける、隙間aにおける水挙動は、結局、緩衝材として
の働きに他ならない。
【0055】隙間cでは、この噴流吹き出しと逆に急速
流入が起こる。したがって、隙間cにおいては、隙間a
と逆に局部減圧を受けて、隙間cに噴流となって流入す
る。初期は低速で大流量であるが最後は小流量となる。
小流量の水がすべて流入するとき、隙間a側で保管物1
8と保管構造体16の格子とが接触する。
【0056】この一連の動きにおける隙間での水挙動に
より、水は結局緩衝材として働くが、隙間bは、隙間間
隔が非常に小さいとき水に対するせん断抵抗による緩衝
効果がある。
【0057】図4(b)は、保管の実態としての、格子内
側と保管物外周との間に均等に隙間ができていない傾き
状態を示している。この状態でも、保管物と保管構造体
との間に緩衝効果が期待できる。傾いているときは、3
辺にわたって緩衝効果が得られる。
【0058】加震加速度を、傾いて接触した方向から受
けると、緩衝効果は無くなる。したがって、加震時無効
方向に傾いている確率が問題であるが、直立保管物が無
く全て傾いていると想定しても、それらの方向が一致す
るのは4分の1の確率であるから、保管構造体1体への
衝撃荷重負担は4分の3が緩衝効果によって軽減され
る。したがって、その効果は十分である。
【0059】隙間における水挙動の一つの特徴は、加速
度が大きいほどその効果が大きく、小さいと効果も小さ
い。これは加速度に応じて、すなわち実際の設備で見る
と、地震が大きいときこそ緩衝効果が大きいということ
である。機械的な緩衝法では、加速度に応じて、能力を
変えることはできないが、隙間の水挙動を緩衝材のよう
に用いるときは、水が非圧縮性である特性と、流動抵抗
と動的挙動の圧力配分をみて、面積や隙間の適正設計を
行えば、大小加速度への対応能力を持つ非常に優れた緩
衝機能を得ることができる。
【0060】加速度に応じた緩衝効果は、隙間の水挙動
で顕著であるが、同様に、不動水域でも充填物効果があ
り、ここでも適正設計を行えば、大小加速度への対応能
力を持つ非常に優れた緩衝機能を得ることができる。こ
の場合は、ばねなどの緩衝機能でなく、水の非圧縮性を
活かして機械的な固定を目的とした凍結保管と同じよう
な、剛固定保護が行われる。
【0061】図5は、本発明の第3の実施例を示したも
のである。この第3の実施例では、ライニング容器1内
に保管構造体16を固定して、この中に長尺の保管物を
立てて水中保管するにつき、ライニング容器1の底部に
据付ける保管構造体16は、上部と下部に格子部材を用
いて構成される。
【0062】格子部材は、板平面を鉛直方向に平行に向
けて構成された多数の短い4角筒を、横広がり状に配置
して1個の保管構造体16の格子を構成する。この格子
部材がライニング容器1の底面の略全域に配置され、保
管物は縦向きに差して置かれ、上端は全水深の8分の6
より高位とする。
【0063】略全域に配置された保管構造体16の格子
は、波消し機能を発揮して格子レベルにおける水揺動を
押さえる。したがって、格子上端までの水は強制的に固
定されるから、ハウスナー理論における水深の基準はラ
イニング容器1の底ではなく、格子上端とすることがで
きる。
【0064】揺動水域はさらに上方に移動せられ、保管
物に揺動影響が及び難くなる。別な見方をすれば、ライ
ニング容器1を浅くできることになる。
【0065】この第3の実施例において、ライニング容
器1の底部に、稠密に保管構造体および保管物が充填さ
れたとき、内包水の加震時挙動は、充填物が何も存在し
ないライニング容器の内包水とは違う。充填物が無いラ
イニング容器では、ハウスナーの理論がそのまま適用で
きる。換言すると、ハウスナーの理論は、充填物が無い
ライニング容器に対する理論であって、充填物があるラ
イニング容器に対するものではない。
【0066】充填物の内包水に対する働きは、揺動抑制
で一般には波消しと呼ばれる働きを及ぼす。波消し効果
が十分であれば、すなわち充填物が稠密であれば、水は
波を消す力を分散して受けることができる。この結果、
大きい力を及ぼす水の揺動域は充填物の上方に移動する
から、保管物および保管構造体は、不動水中に存在させ
ることができる。このとき、保管物の上端を水底とみな
して、ハウスナーの理論を適用できる。
【0067】下部不動水域では、この不動水が緩衝のた
めの充填物として機能する。この水の充填物としての効
果は大きく、一般にも知られている。例えば、水中遺跡
の保存状態がよいことや、湖底岩石が地震時崩落しない
こと、地上構築物の損壊が大きくても、水中構築物や深
井戸が損壊しないことなどが知られている。
【0068】図6は、本発明の第4の実施例を示したも
のである。第4の実施例では、ライニング容器1に保管
物を区分して保管し、一部は廃棄物貯蔵保管構造体16
に小物廃棄物収納箱13を立てて保管し、一部は高架保
管構造体17に吊り下げ保管している。
【0069】すなわち、廃棄物貯蔵保管構造体16は、
ライニング容器1の一方の側から敷き詰め、空きが無い
ように配置して一定区域に設置されている。一方、高架
保管構造体17は、廃棄物貯蔵保管構造体16の無い区
域に設置され、揺動水域近くまで立ち上げてある。そし
て、上部に高架保管構造体17のビームが張り出し状に
設置されていて、長尺の保管物19を吊り下げ保管して
いる。
【0070】そして、高架保管構造体17は、ライニン
グ容器1の底部に固定して取り付けられ、保管物19は
高架保管構造体17から垂下保管され、保管物19の上
端位置は全水深の略8分の6より低位にあるように容器
深さに対して水深調整されている。
【0071】ライニング容器1内に高架保管構造体17
を架設して、ここに長尺の保管物を吊下げると、高架保
管構造体17が加震時に揺動しても、垂下した保管物は
下方の不動水域によって保持される。高架保管構造体1
7と保管物との間に相対運動が生じても、剛体固定では
なく吊り下げ部分が関節様に動くため、相互の運動によ
って衝撃が起きない。
【0072】保管物が板状構造の場合は、特に有効とな
る。高架保管構造体17は、剛体として製作する必要が
無く、軽量化設計しても静止荷重に耐えればよいのであ
って、加震時荷重は、不動水の緩衝保持によって大きく
軽減される。
【0073】この第4の実施例では、ライニング容器1
に廃棄物貯蔵保管構造体16が敷き詰め状態で設置され
ているので、水揺動上の容器底は廃棄物貯蔵保管構造体
16の上端となる。高架保管構造体17は、揺動水域近
くまで立ち上げた高架保管構造体17のビームが張り出
し状に設置されているので、長尺の保管物19は、水平
方向不動水域と不動水域とにわたって平行に垂直整列し
て保管される。
【0074】そして、この第4の実施例では、廃棄物貯
蔵保管構造体16が敷き詰められた区域で、水揺動上の
容器底が廃棄物貯蔵保管構造体16の上端となるので、
水平方向不動水域が上方に上がり、廃棄物貯蔵保管構造
体16の全体および小物廃棄物収納箱17のかなりの部
分を不動水域に保管できる。
【0075】一方、高架保管構造体17の設置区域で
は、高架保管構造体17はそのコラム17aが不動水域
から立上っており、かつその上端寄りにあるビーム17
bが水平方向不動水域にあるので、長尺の保管物19は
高架保管構造体17に整列して吊り下げられ、常に直立
平行した状態に保たれる。
【0076】そして、高架保管構造体17の設置区域で
は、廃棄物貯蔵保管構造体16の敷き詰められた区域と
水深設定が違うため、あたかも2基のライニング容器が
接続されたような水挙動を起こす。この2区域の境界の
廃棄物貯蔵保管構造体16と小物廃棄物収納箱18と
は、不動水域の上位化が及ばず水深が浅いのと同じで、
水揺動の影響を受けるときがある。
【0077】このとき、廃棄物貯蔵保管構造体16の上
端は水平不動水域にあるので、上下揺動水が上部格子板
16a(図4)と小物廃棄物収納箱18の隙間をゆっくり
流過するだけで、問題はない。小物廃棄物収納箱18の
上方は、揺動水域に入る場合がある。この場合、極上方
の一部分のみが横方向の力を受けるが、下方は不動水の
緩衝のための充填物としての機能によって固定され、廃
棄物貯蔵保管構造体16に大きい荷重が作用しない。上
格子板16a(図4)と下格子板(図示せず)の隙間水
は、間隙水特有の挙動によって、不動水とはまた違った
緩衝効果を発揮するので、やはり作用荷重が減少する。
【0078】図7は、本発明の第5の実施例を示してい
る。この実施例は、第4の実施例の変形例であり、ライ
ニング容器の底を部分的に上げて深い底部と浅い底部と
を形成し、揺動水挙動の均一化を図っている点が、第4
の実施例と違っている。
【0079】(変形例)本発明では、水を充填材のよう
に利用するものであるから、ハウスナー理論の一般的適
用から外れる場合でも、本発明を適用できる。例えば、
一般の3辺がほぼ同等の容器でなく、水路のような浅く
長いライニング容器でも、保管構造体を稠密に設置すれ
ば、不動水域を上げて下方のみで部分的に固定機能を発
揮させることができる。
【0080】
【発明の効果】本発明は上述のように、ライニング容器
内に満たされた水そのものを、保管構造体のための固定
用充填物として機能設計に織り込むことによって、安全
で軽量な保管構造が成立する。
【0081】また、この保管構造体を構成するための各
構造物は、従来のままで、ライニング容器内の水位を本
発明により設定すれば、きわめて安全性の高い貯蔵保管
が行える。特に、加速度対応機能を必然的に備えるの
で、耐震構造に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本思想を説明するための、ライニン
グ容器内の保管構造体と保管物との水位関係を示す縦断
面図。
【図2】本発明の第1の実施例におけるライニング容器
内側の斜視図。
【図3】本発明の第1の実施例におけるライニング容器
内の、受け台とアンカーボルトを示す拡大透視図。
【図4】本発明の第2の実施例における保管構造体と保
管物との隙間関係を示す横部分断面図。
【図5】本発明の第3の実施例におけるライニング容器
内の保管構造体および保管物の移動調整水位関係を示す
縦断面図。
【図6】本発明の第4の実施例における、保管構造体と
高架保管構造体とを併用したときの縦断面図。
【図7】本発明の第5の実施例における、保管構造体と
高架保管構造体とを併用して揺動水位域を合わせたとき
の縦断面図。
【図8】従来の保管構造体取り付け関係の断面図。
【図9】従来の保管構造体取り付け用アンカーボルト部
分の断面図。
【図10】従来の受け台単品平面図。
【図11】従来の受け台設置平面図。
【図12】従来の保管構造体および保管物と水位との関
係を示す槽内側の斜視図。
【図13】従来の保管構造体と保管物との関係を示す説
明図。
【符号の説明】
1 ライニング容器 2 コンクリート躯体 3 ライニング容器本体 3a ライニング容器内底部 4 ライニング板 5 保管構造体 5a 底板 6 アンカーボルト 7 受け座板 8 ターンバックル 9 継ぎボルト 10 受けネジ 11 シール溶接 12 取り付けボルト 13 鉄筋 14 受け台 15 アンカー 16 保管構造体 16a 上部格子 17 高架保管構造体 18 小物廃棄物収納箱(保管物) 19 高架保管体

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水が注入されたライニング容器内に、長尺
    の保管物を保持するための保管構造体を固定して、この
    保管構造体により水中において前記保管物を保持するよ
    うにしたライニング容器を用いた長尺物保管構造におい
    て、 前記保管構造体は、前記ライニング容器の底部に固定さ
    れ、 前記保管物は、前記保管構造体により縦向きに保持さ
    れ、 前記保管構造体の上端は、全水深の略8分の3より低位
    の位置に配され、 前記保管物は、全水深の略8分の6より低位の位置に配
    された、 ことを特徴とするライニング容器を用いた長尺物保管構
    造。
  2. 【請求項2】請求項1記載のライニング容器を用いた長
    尺物保管構造において、 前記保管構造体は、横断面形状がほぼ方形の内部空間を
    有し、 前記保管物の各側面は、前記内部空間の各壁面に対向
    し、対向面間に所定の隙間を形成する、 ライニング容器を用いた長尺物保管構造。
  3. 【請求項3】請求項1記載のライニング容器を用いた長
    尺物保管構造において、 前記保管構造体は、上部および下部にそれぞれ格子部材
    を有し、 前記格子部材は、多数の筒を並べて構成されたものであ
    り、 前記保管物は、前記格子部材により縦向きに保持されて
    なる、 ライニング容器を用いた長尺物保管構造。
  4. 【請求項4】請求項1記載のライニング容器を用いた長
    尺物保管構造において、 前記保管構造体の少なくとも一部は、前記ライニング容
    器内に前記保管物を垂下保持するように構成され、 前記保管物は、前記保管構造体から垂下保持され、前記
    保管物の上端位置は、全水深の略8分の6より低位にあ
    るように容器深さに対して水深調整された、ライニング
    容器を用いた長尺物保管構造。
  5. 【請求項5】請求項4記載のライニング容器を用いた長
    尺物保管構造において、 前記ライニング容器の底は、一部が底上げされていて深
    い底部と浅い底部とを有し、 前記保管構造体は、前記保管物を立てて保管するものと
    吊り下げ保管するものとを含み、 前記保管構造体のうち、立てて保管するものは前記ライ
    ニング容器の前記深い底部に設置され、吊り下げ保管す
    るものは前記浅い底部に設置されるライニング容器を用
    いた長尺物保管構造。
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