JP2003144920A - 耐熱性に優れたアルミナ担体の製造方法 - Google Patents

耐熱性に優れたアルミナ担体の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機械的強度に優れるのみならず、700℃以
上の高温における使用にも耐え得る、アルミナ担体の製
造方法を提供すること。 【解決手段】 金属表面にアルミニウム層を設けたクラ
ッド材の前記アルミニウム表面を陽極酸化し、次いで酸
性水溶液を用いて陽極酸化によって生じた表面細孔を拡
大化処理した後、洗浄に換えて、又は洗浄した後、水蒸
気若しくは5〜100℃の水を用いて水和処理すること
を特徴とする、耐熱性に優れたアルミナ担体の製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐熱性に優れたアル
ミナ担体の製造方法に関し、特に機械的強度に優れるの
みならず、高温における耐久性にも優れたアルミナ触媒
担体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム板を陽極酸化し、得られた
多孔質陽極酸化被膜を熱水処理してそのBET表面積を
増大させ、該表面に触媒を担持させてなる触媒は公知で
ある(特開平2−144154)。このような面状触媒
性は熱伝導性に優れるため、熱交換能を有する反応室の
壁材等に使用するのに好適であるが、その母材がアルミ
ニウムであるため、強度が小さい上融点が低いので耐熱
性に劣り、通常、200℃までが使用限度とされてい
た。更に、アルミニウムが外部表面に露出している場合
には、その部分から腐食が進行するという問題もあっ
た。
【0003】そこで、強度及び耐熱性を改善するため
に、クラッド工法でアルミニウムをステンレスに圧延し
て直接結合させ、得られた基板を陽極酸化したものを使
用することが試みられた。しかしながら、この場合には
陽極酸化時に、ステンレスとアルミニウムが剥離する場
合が極めて多く、陽極酸化の成功率が低い。また陽極酸
化が一応成功した場合でも、基板の強度は増すものの、
アルミナとステンレスの熱膨張率の差から、高温にさら
されたときにアルミナ皮膜がステンレス板から剥離する
ので、耐熱性が十分でないと言う欠点があった。
【0004】そこで、上記の欠点を改善するために、ス
テンレス板にアルミニウムを溶射した基板を使用するこ
とも試みられているが、この場合には、製造に際して大
型の装置が必要である上、均一な厚みで表面の細孔が揃
った多孔質のアルミナ皮質を形成させることが出来な
い。従って触媒担持量が少なくなるのみならず、耐熱性
も十分ではないという欠点があった。
【0005】これらの欠点は、ステンレス板の少なくと
も一方の面にアルミナ層を有するプレート状アルミナ担
体であって、前記ステンレス板とアルミナ層の界面にア
ルミニウム成分及び鉄成分が存在する拡散層を有すると
共に、該拡散層中のアルミニウム及び鉄の含有量がなだ
らかに変化していることを特徴とする耐熱性に優れたプ
レート状アルミナ担体(特開平8−281125号公
報)によって大幅に改善された。この耐熱性の改善は、
特に後焼成の前に水和処理をした場合に著しい。しかし
ながら、このアルミナ担体の耐熱性も約700℃が限度
であり、近年の燃料電池の実用化技術の進展に伴って重
要性が増大しているメタンの改質反応等、700℃以上
の高温で行われる重要な反応には使用することが出来な
いという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者等は、
アルミクラッド材の耐熱性を更に改善すべく鋭意検討し
た結果、陽極酸化面に細孔拡大化処理を施すことによ
り、得られたアルミナ担体の耐熱性が更に改善されるこ
とを見出し、本発明に到達した。従って本発明の目的
は、機械的強度に優れるのみならず、700℃以上の高
温における使用にも耐え得る、アルミナ担体の製造方法
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の上記の目的は、
金属表面にアルミニウム層を設けたクラッド材の前記ア
ルミニウム表面を陽極酸化し、次いで、酸性水溶液を用
いて陽極酸化によって生じた表面細孔を拡大化処理した
後、洗浄に換えて、又は洗浄した後、水蒸気若しくは5
〜100℃の水を用いて水和処理することを特徴とす
る、耐熱性に優れたアルミナ担体の製造方法によって達
成された。本発明においては、特に、陽極酸化の前に4
00℃〜600℃で前焼成することが好ましく、特に荷
重をかけて焼成することが好ましい。また、陽極酸化
後、適宜350℃以上で後焼成することが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のクラッド材は、表面にア
ルミニウム層を設けることの出来る金属表面にアルミニ
ウム層を設けてなる担体である。その形状は、板状、棒
状、筒状、リボン状、ハニカム状等の何れの形状であっ
ても良い。上記した、表面にアルミニウム層を設けるこ
との出来る金属は、Mg、Cr、Mo、W、Mn、F
e、Co、Ni、Ti、Zr、V、Cu、Ag、Zn、
Bi、Sn、Pb、Sbの中から選択された単体又は合
金、若しくはこれらの金属を重合させた金属であるが、
本発明においては、耐熱性の観点から、特にステンレス
又はニッケルクロム合金が好ましい。
【0009】これらの金属表面にアルミニウム層を形成
させる方法は、非水メッキ、圧着、蒸着、どぶ付け、溶
射、圧延(クラッド法)等の公知の方法の何れであって
も良いが、厚みの均一性及び製造容易性の観点から、圧
延法を用い、金属表面にアルミニウム板又はアルミニウ
ム箔を貼り合わせることが好ましい。アルミニウム層の
厚みは5μm以上であれば良いが、10〜300μmで
あることが好ましく、特に30〜200μmであること
が好ましい。但し、本発明におけるアルミニウムには、
陽極酸化が可能なアルミニウム合金を含めるものとす
る。筒状、ハニカム状等の形状のクラッド材は、板状ク
ラッド材をそれらの形状に加工することによって得られ
る。
【0010】上記のようにして調製したクラッド材(ク
ラッド法を用いた場合に限定されない)は、金属層とア
ルミニウム層の界面がかなりはっきりしており、剥がれ
易い。そこで、本発明においては、上記クラッド材を4
00℃〜600℃、好ましくは450℃〜550℃で1
〜10時間必要に応じて焼成し(前焼成)、金属層側の
原子とアルミニウム層側の原子を互いに拡散させて、前
記界面を中心に拡散層を形成させることが好ましい。前
焼成温度が400℃未満では良好な拡散層を形成させる
ことが出来ない。また、焼成時間は、1時間未満では剥
離防止効果に乏しく、10時間以上焼成することは不経
済であるので、特に5〜9時間程度とすることが好まし
い。尚、焼成は空気中で行っても不活性ガス中で行って
も良い。
【0011】アルミニウム表面の陽極酸化は、公知の陽
極酸化技術を用いて容易に行うことができる。尚、通
常、陽極酸化の直前に、アルミニウム表面を清浄にする
為に、アルカリ水溶液を用いて表面処理し、次いで酸性
水溶液で処理を行う。本発明における陽極酸化に際して
は、処理液として、例えばクロム酸、硫酸等の酸化性の
強い酸を使用することが好ましい。これによって、アル
ミニウム層をすべてアルミナ層に変えると共に、必要に
応じて設けられた拡散層内部にまで陽極酸化を進行さ
せ、拡散層内部にまで酸素原子を拡散させることが容易
となる。尚、処理液の酸濃度は適宜決定すれば良く、例
えばクロム酸を用いた場合には2〜4重量%とすること
が好ましい。
【0012】陽極酸化の条件は、アルミナ層のBET表
面積が大きくなるように適宜設定すれば良いが、本発明
においては、陽極酸化の処理液温度を、0〜50℃、特
に常温〜40℃とすることが好ましい。0℃未満ではB
ET表面積があまり大きくならず、50℃を越えると溶
解が激しく、経済的に酸化膜を形成させることが困難と
なる。又、この陽極酸化の処理時間は処理条件によって
も異なるが、例えば2.5重量%のクロム酸水溶液を処
理液とし、処理浴温度を38℃、電流密度を19.0A
/mとした場合には2時間以上、特に4時間以上とす
ることが好ましい。
【0013】本発明では、陽極酸化後、必要に応じて3
50℃以上で1時間以上、好ましくは、450℃〜55
0℃で更に後焼成を行うことが好ましい。これにより陽
極酸化皮膜をγ−アルミナ層とし、触媒担体表面として
好ましいものとすると共に、前記拡散層中の拡散原子の
濃度変化をよりなだらかなものとする。しかしながら、
これだけではメタンの改質反応のような700℃〜80
0℃で行う反応に耐えられる程の耐熱性は得られない。
【0014】本発明においては、陽極酸化皮膜表面のB
ET表面積を増大させると共に耐熱性を改善する為に、
酸性水溶液を用いて陽極酸化皮膜中の細孔を拡大させる
細孔拡大処理を行う。ここで使用する酸性水溶液として
は、前記陽極酸化時に使用する処理液と同じものの中か
ら適宜選択して使用することが出来る。従って、陽極酸
化の後、同じ処理液中で引き続き細孔拡大処理をするこ
とも出来る。この細孔拡大処理の温度と時間は、処理液
として使用する酸の種類や濃度によって適宜設定すれば
良い。好ましい条件はpH3〜6である。例えば4重量
%の蓚酸を20℃で用いる場合には、約90分以上必要
であるが120分で十分である。
【0015】細孔拡大処理工程を導入することにより何
故耐熱性が増大するかは必ずしも明らかではないが、細
孔が拡大化されることによって、続いて行われる水和処
理が細孔内の深部迄行われアルミナ層の深部が柔らかく
なる結果、金属とアルミナ層との熱膨張率の違いを吸収
することが可能となり、700℃以上に加熱された場合
でも金属表面からアルミナ層が剥離することが防止され
るものと考えられる。上記水和処理は、水蒸気又は5〜
100℃、好ましくは40〜100℃の水を用いて行
う。処理温度及び処理時間は適宜設定することが出来
る。水は蒸留水又はイオン交換水であることが好まし
い。
【0016】このようにして得られたアルミナ担体の該
アルミナ表面に、公知の如く種々の触媒微粒子を担持さ
せることにより、触媒体を得ることが出来る。従って、
本発明のアルミナ担体がプレート状である場合には、ア
ルミナ表面が内面となるように、ハニカム状、コルゲー
トフィン状等の反応器を形成した後、内面に触媒を担持
させれば、触媒反応器となる。また、予めクラッド材の
アルミ層を内面として反応器を形成し、必要に応じて前
焼成した後、陽極酸化、細孔拡大処理、水和処理、触媒
担持の各工程を経て触媒反応器を得ることも出来る。
【0017】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、700℃〜
800℃という、従来耐えられないような高温での反応
に対しても使用することの出来る、陽極酸化処理して得
られるアルミナ層を有するアルミナ担体が得られる。ま
た、細孔拡大処理は、陽極酸化時に用いる処理液をその
まま使用することも出来るので、従来の製造装置を特に
改良することなく、そのまま使用することが出来るとい
う利点もある。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例によって更に詳述する
が、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0019】実施例1.SUS430にAlを添加した
(18%Cr、4%Al)厚さ290μmのステンレス
を母材とし、その両面に厚さ40〜50μmのアルミニ
ウムを張り合わせ、圧延機を使用してアルミニウム・ス
テンレスクラッド基材を得た。得られたクラッド基材
を、3.5cm×12.5cmに切りだし、ゴールドフ
ァーネス炉を用いて、常温から6℃/分で500℃まで
昇温させ、500℃で3時間、0.83g/cmの荷
重下に、または、荷重をかけないで、空気中で焼成し
た。
【0020】陽極酸化を行う際にクラッド基材の切断面
から電流漏れしないようにマスキングを行った。尚、マ
スキングの密着性をよくするため、基板断面をビニール
テープで覆った基板を、20重量%の水酸化ナトリウム
溶液で3分間、30重量%硝酸水溶液に1分間浸して表
面処理を行った。次いで、前処理としての2分間陽極酸
化を行って表面を粗面化した後、イオン交換水で洗浄
し、乾燥させ、再度陽極酸化以外の部分にマスキング剤
を塗り、約半日、室温で乾燥させた。
【0021】上記の如く前処理した基板を、2.5%の
クロム酸水溶液を用いて、液温30℃、電流密度15.
0A/mで12時間陽極酸化を行った。荷重をかけず
に前焼成した場合の陽極酸化の成功率は約33%であ
り、荷重をかけた場合の成功率は約91%であった。
尚、前焼成を行わない場合には、陽極酸化後の試料に、
ステンレス層とアルミナ層の界面で部分的な剥離が見ら
れた。
【0022】陽極酸化後の基材を、4重量%の蓚酸を用
い、20℃で2時間細孔拡大処理を行い、次いで80℃
のイオン交換水中に1時間浸漬して水和処理した。全体
の液量は、何れの処理の場合も液表比(見かけ表面あた
りの液量)が7.2で一定となるように行った。得られ
た水和処理後の基板を水洗いし、室温で1日乾燥した
後、常温から6℃/分で昇温させて500℃とし、50
0℃で3時間焼成し、本発明のプレート状アルミナ担体
を得た。
【0023】比較例1.細孔拡大処理を行わなかった他
は実施例1と同様にしてプレート状アルミナ担体を得
た。実施例及び比較例で得られた担体を室温から昇温速
度20℃/分で820℃迄昇温し、この温度で2時間維
持する耐熱試験を30回行ったところ、実施例1で得ら
れた本発明のアルミナ担体の場合にはアルミナ層の剥離
が観察されなかったのに対し、比較例1で得られた担体
の場合には、アルミナ層は殆ど剥離した。この結果は、
本発明の有効性を実証するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 スティック ショヒラット 東京都小金井市中町2−24−16 東京農工 大学化学システム工学科 内 (72)発明者 川手 修一 長野県松本市石芝1−1−1 石川島芝浦 機械株式会社松本工場内 (72)発明者 高橋 浩 長野県松本市石芝1−1−1 石川島芝浦 機械株式会社松本工場内 Fターム(参考) 4G069 AA01 AA08 BA01A BA01B BA17 BA18 BB01C BD01C BD02C EA11 EB15Y ED03 ED06 FA01 FA04 FB10 FB27 FB30 FB42 FC04 FC07 FC09 4G076 AA02 AB16 BA24 BG01 CA08 CA12 DA01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属表面にアルミニウム層を設けたクラ
    ッド材の前記アルミニウム表面を陽極酸化し、次いで酸
    性水溶液を用いて陽極酸化によって生じた表面細孔を拡
    大化処理した後、洗浄に換えて、又は洗浄した後、水蒸
    気若しくは5〜100℃の水を用いて水和処理すること
    を特徴とする、耐熱性に優れたアルミナ担体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記表面細孔の拡大化処理が、pHが3
    〜6.5、温度5℃〜80℃の酸性浴中に1〜6時間浸
    漬することによって行われる、請求項1に記載された耐
    熱性に優れたアルミナ担体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記陽極酸化の前に、400℃〜600
    ℃で1〜10時間前焼成を行う、請求項1又は2に記載
    されたアルミナ担体の製造方法。
  4. 【請求項4】 陽極酸化の後、350℃以上の温度で焼
    成する、請求項1〜3の何れかに記載されたアルミナ担
    体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記クラッド材が、ステンレス又はニッ
    ケルクロム合金の表面にアルミニウムを圧延して貼り合
    わせてなるクラッド材である、請求項1〜4に記載され
    たアルミナ担体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005105298A1 (ja) * 2004-03-19 2005-11-10 Tokyo University Of Agriculture And Technology Tlo Co., Ltd. 窒素酸化物の処理方法及びそのための装置
JP2006320893A (ja) * 2005-04-18 2006-11-30 Tokyo Univ Of Agriculture & Technology 窒素酸化物の選択的還元触媒
WO2018150823A1 (ja) * 2017-02-17 2018-08-23 住友精化株式会社 構造体触媒の製造方法、および構造体触媒を用いた水素の製造方法

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