JP2003129181A - 耐表面損傷性および靭性に優れた熱処理パーライト系レールおよびその製造法 - Google Patents

耐表面損傷性および靭性に優れた熱処理パーライト系レールおよびその製造法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 パーライト組織の鋼レールにおいて、C,S
i,Mnの添加量を適切な範囲に納め、熱処理を施すこ
とにより、レール鋼の初期硬さをある一定範囲に制御
し、更に衝撃値も大きく向上させる。これらの効果によ
り、旅客および貨物鉄道の直線や緩曲線区間において、
ダークスポット損傷などの表面損傷の発生を防止し、更
に、寒冷地の使用においてレールの靭性を向上させる。 【解決手段】 質量%で、C:0.50〜0.75%、
Si:0.05〜1.00%、Mn:0.05〜1.2
0%を含有する鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部
表面を起点として、少なくとも深さ20mmの範囲が、
硬さHv250〜350のパーライト組織であり、か
つ、当該部分の2mmUノッチシャルピー衝撃値が常温
で25J/cm2 以上であることを特徴とする耐表面損
傷性および靭性に優れた熱処理パーライト系レール。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、旅客および貨物鉄
道の直線や緩曲線区間のレールに要求される耐表面損傷
性を向上させ、同時に靭性を向上させることを目的とし
た熱処理パーライト系レールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】旅客および貨物鉄道では、鉄道輸送の高
効率化の手段として、列車速度の向上や列車積載重量の
増加が図られている。このような鉄道輸送の効率化はレ
ール使用環境の過酷化を意味し、レール材質の一層の改
善が要求されるに至っている。具体的には、急曲線区間
に敷設されたレールでは、G.C.(ゲージ・コーナ
ー)部や頭側部の摩耗が急激に増加し、レールの使用寿
命の点で問題視されるようになった。
【0003】そこで、共析炭素鋼を用いた微細パーライ
ト組織を呈した下記に示すような高強度(高硬度)レー
ルが発明され、重荷重鉄道の曲線区間のレール寿命を飛
躍的に改善してきた。 圧延終了後あるいは、再加熱したレール頭部をオー
ステナイト域温度から850〜500℃間を1〜4℃/s
ecで加速冷却する130kgf/mm2 (1274MPa)以
上の高強度レールの製造法(特公昭63−23244号
公報)。 Cr,Nbなどの合金を添加し、耐摩耗性ばかりで
なく溶接部の硬度低下を改善した低合金熱処理レールの
製造法(特公昭59−19173号公報)。 これらのレールの特徴は、共析炭素含有鋼(炭素量:
0.7〜0.8%)による微細パーライト組織を呈する
高強度レールであり、その目的はパーライト組織中のラ
メラ間隔を微細化し、主に急曲線区間の耐摩耗性や溶接
性を向上させるところにあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの高強
度レールは、急曲線区間以外の直線や緩曲線に敷設され
た場合には、耐摩耗性が非常に高いため摩耗が極端に抑
制され、ころがり面にダークスポット損傷をはじめとす
る表面疲労損傷が発生しやすいという問題点があった。
また、これらの高強度レールは靭性が低いため、寒冷地
に敷設された場合には、レール頭部や低部の欠陥等から
レール折損が発生しやすいという問題点があった。
【0005】このような背景から、旅客および貨物鉄道
の直線や緩曲線区間に敷設されるパーライト組織のレー
ルにおいて、耐表面損傷性に優れ、同時に靭性の高いレ
ールの開発が求められるようになってきた。すなわち本
発明は、旅客および貨物鉄道の直線や緩曲線区間で使用
されるパーライト組織のレールにおいて、耐表面損傷性
を向上させ、同時に靭性を向上させることを目的とした
ものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するものであって、その要旨とするところは次の通りで
ある。 (1)質量%で、 C :0.50〜0.75%、 Si:0.05〜1.00%、 Mn:0.05〜1.20% を含有する鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部表面
を起点として、少なくとも深さ20mmの範囲が、硬さ
Hv250〜350のパーライト組織であり、かつ、当
該部分の2mmUノッチシャルピー衝撃値が常温で25
J/cm2 以上であることを特徴とする耐表面損傷性お
よび靭性に優れた熱処理パーライト系レール。 (2)上記レールは、さらに頭頂部の表面下2mm点と
その深さ20mm点の硬さの差をHv±40以下とする
ことができる。 (3)また上記(3)のレールには、質量%でさらに、
下記〜の成分を選択的に含有させることができる。 Cr:0.01〜1.00%、 Mo:0.01〜0.50% の1種または2種、 V :0.005〜0.30%、 Nb:0.002〜0.030% の1種または2種、 B :0.0001〜0.0050%、 Co:0.01〜1.00%、 Cu:0.01〜1.00% の1種または2種、 Ni:0.01〜1.00%、 Ti:0.0050〜0.0200%、 Mg:0.0005〜0.0200%、 Ca:0.0005〜0.0150% の1種または2種以上、 Al:0.004〜1.00% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。 (4)上記レールは、熱間圧延直後のAr1 点以上の温
度の鋼レール頭部、あるいは、熱処理する目的でAc1
点+30℃以上の温度に加熱した直後の鋼レール頭部
を、2〜10分間自然放冷し、その後0.5〜10℃/
sec の冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部の温
度が700〜350℃に達した時点で加速冷却を停止
し、その後自然放冷することにより製造できる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明者らは、現行の高強度レールを旅客および
貨物鉄道の直線や緩曲線区間に敷設した場合に、ころが
り面にダークスポット損傷等の表面疲労損傷が発生する
原因を調査した。まず本発明者らは、実軌道において直
線や緩曲線区間と急曲線区間の摩耗挙動を調査した。そ
の結果、旅客および貨物鉄道の直線や緩曲線区間は、急
曲線区間と比較してレールに作用する面圧やすべりが低
く、現行の高強度レールでは摩耗速度が極端に小さいこ
とが確認された。
【0008】次に本発明者らは、この摩耗速度と表面疲
労損傷の関係を詳細に調査した。その結果、摩耗速度が
ある一定量以下になるところがり面に疲労層が蓄積し、
ダークスポット損傷をはじめとする表面疲労損傷の発生
が顕著になることがわかった。そこで本発明者らは、こ
の摩耗速度を決定している軌道因子を解明した。その結
果、摩耗速度はころがり面の硬さと非常によい相関があ
り、ころがり面の硬さが高いと摩耗速度が低下すること
を確認した。さらに本発明者らは、ころがり面の硬さを
支配している因子を調査した。その結果、旅客および貨
物鉄道ではころがり面に作用する面圧やすべりに違いが
あるものの、ころがり面の硬さはレール鋼の初期硬さと
非常によい相関があることが確認された。
【0009】これらの結果から、レール鋼の初期硬さを
変化させた鋼を用いて、旅客および貨物鉄道の直線や緩
曲線区を想定した表面疲労損傷の再現実験を行った。そ
の結果、表面疲労損傷の発生とレール鋼の初期硬さには
相関があり、レール鋼の硬さが現行の高強度レール(H
v360〜390)レベルになると、摩耗速度の減少に
よるダークスポット損傷の発生が抑制され、摩耗速度を
増すためレール鋼の硬さを下げると、塑性変形起因のフ
レーキング損傷が発生し、表面疲労損傷の発生を防止す
るにはレール鋼の初期硬さをある一定範囲に収める必要
があることを知見した。
【0010】これらの検討に加え本発明者らは、耐表面
損傷性を向上させるため、レール鋼の初期硬さをある一
定範囲に収めたレールにおいて、寒冷地の使用に耐え得
る靭性を付与する方法を検討した。まず本発明者らは、
レール鋼の靭性、すなわち衝撃値を支配している因子を
解明した。その結果、上記の硬度範囲では、衝撃値に最
も大きく影響を与えている因子は、パーライト組織の粒
径に加えてパーライト組織中のC,Si,Mnの添加量
であり、これらの添加量を低減させることにより衝撃値
が大きく向上することを見出した。
【0011】しかし、C,Si,Mnの強化元素を低減
させると、レール鋼の初期硬さが大きく低下し、耐表面
損傷性を向上させることが困難となる。そこで本発明者
らは、C,Si,Mnの強化元素を低減した成分系にお
いて、レール鋼の初期硬さを向上させる方法について検
討した。その結果、熱間圧延直後の鋼レール頭部、ある
いは熱処理する目的で加熱した直後の鋼レール頭部を数
分間自然放冷し、その後加速冷却を行う方法によって、
レール鋼の初期硬さをある一定範囲に収め、同時に靭性
も向上させることができることを確認した。
【0012】さらに本発明者らは、この熱処理レール鋼
において、さらにレール使用寿命を向上させる方法を考
案した。レールの熱処理では、各部位の冷却速度が異な
るため、レール頭部断面内で硬度が不均一になる。この
ため、車輪からの面圧に対してレール頭部断面内の歪分
布が不均一となり、低硬度部に歪が集中する。その結果
レール頭部に疲労損傷が発生し、レール使用寿命が低下
する。そこで本発明者らは、その疲労損傷の再現実験を
行った。頭頂部の表面下2mm点とその深さ20mm点
の硬さを代表点とし、その硬さの差と疲労損傷の発生の
有無を確認した結果、この硬さの差と疲労損傷の発生に
は相関があり、この硬さの差をある一定範囲内に収める
ことにより、レール頭部の疲労損傷の発生が抑えられる
ことを確認した。
【0013】以上の結果、パーライト組織の鋼レールに
おいて、鋼の成分をある一定範囲に収め、同時に熱処理
を施すことにより、レール鋼の初期硬さをある一定範囲
に収め、さらに衝撃値も大きく向上させることが可能と
なり、耐表面損傷性と靭性が大きく向上することを知見
した。さらに、レール頭頂部表面と内部の硬さの差をあ
る一定範囲内に収めることにより、疲労損傷の発生を抑
制し、さらにレール使用寿命が向上することを知見し
た。
【0014】すなわち本発明は、旅客および貨物鉄道の
直線や緩曲線区間で使用されるパーライト組織のレール
において、鋼の成分をある一定範囲に収め、同時に熱処
理を施すことにより、耐表面損傷性の向上と靭性を向上
を同時に達成させることを目的としたものである。
【0015】次に、本発明の限定理由について詳細に説
明する。 (1)耐表面損傷性および靭性に優れたパーライト組織
の呈する範囲およびその硬さと衝撃値:まず、耐表面損
傷性および靭性に優れたパーライト組織の呈する範囲
を、頭部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点と
して深さ20mmの範囲に限定した理由について説明す
る。この範囲が20mm未満では、レールの使用寿命か
ら考えると、旅客および貨物鉄道の直線や緩曲線区間の
レールに要求される、耐表面損傷性や靭性を必要とされ
ている領域としては小さく、十分な耐表面損傷性や靭性
の改善効果が得られないためである。また、耐表面損傷
性および靭性に優れたパーライト組織の呈する範囲が、
頭部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点とし
て、深さ30mm以上であれば、耐表面損傷性や靭性の
改善効果がさらに増し、より望ましい。
【0016】次に、頭部コーナー部および頭頂部の該頭
部表面を起点として深さ20mmの範囲の耐表面損傷性
および靭性に優れたパーライト組織の硬さを、Hv25
0〜350の範囲に限定した理由について説明する。本
成分系では、硬さがHv250未満になると、ころがり
面に塑性変形起因のフレーキング損傷が発生し、レール
の耐表面損傷性が低下する。さらに、レールとして必要
な最低限の強度を確保することが困難となり、レールと
しての機能が損なわれる。また硬さがHv350を超え
ると、ころがり面の摩耗速度が低下する。これに伴いこ
ろがり面に疲労層が蓄積し、ダークスポット損傷が発生
し、耐表面損傷性を十分に確保することが困難となる。
このためパーライト組織の硬さをHv250〜350の
範囲に限定した。
【0017】次に、頭部コーナー部および頭頂部の該頭
部表面を起点として深さ20mmの範囲の耐表面損傷性
および靭性に優れたパーライト組織の衝撃値を、常温で
25J/cm2 以上に限定した理由について説明する。
本成分系のレール鋼では、パーライト組織の衝撃値が2
5J/cm2 未満になると、レール頭部の靭性が著しく
低下する。その結果、寒冷地の使用において頭部の欠陥
等からレール折損が発生しやすく、レールの靭性の向上
が望めない。このため、パーライト組織の衝撃値を25
J/cm2 以上に限定した。
【0018】ここで、図1に本発明の耐表面損傷性およ
び靭性に優れた熱処理パーライト系レールの頭部断面表
面位置での呼称、および耐表面損傷性と靭性が必要とさ
れる領域を示す。図1のレール頭部において、1は頭頂
部、2は頭部コーナー部であり、頭部コーナー部2の一
方は車輪と主に接触するゲージコーナー(G.C.)部
である。上記の硬さHv250〜350、衝撃値25J
/cm2 以上のパーライト組織は少なくとも図中の斜線
内に配置されていれば、レールの耐表面損傷性や靭性の
改善が可能となる。したがって、硬さや衝撃値を制御し
たパーライト組織は、車輪とレールが主に接するレール
頭部表面近傍に配置することが望ましく、それ以外の部
分はパーライト組織以外の金属組織であってもよい。
【0019】(2)頭頂部の表面下2mm点とその深さ
20mm点の硬さの差:次に、頭頂部の表面下2mm点
とその深さ20mm点の硬さの差をHv±40以下に限
定した理由について説明する。頭頂部の表面下2mm点
と、その点における表面からの深さ20mm点の硬さの
差がHv±40を超えると、車輪からの面圧に対してレ
ール頭部断面内の歪分布が不均一となり、歪の集中によ
りレール頭部の疲労損傷が多発し、レール使用寿命が低
下する。このため、頭頂部の表面下2mm点とその深さ
20mm点の硬さの差をHv±40以下に限定した。
【0020】(3)鋼レールの化学成分:まず、本発明
において鋼レールの化学成分を上記のように限定した理
由について説明する。成分含有量は質量%である。C
は、パーライト変態を促進させ、かつ強度や耐摩耗性を
確保する有効な元素である。しかしC量が0.50%未
満では、熱処理を行っても初析フェライト組織が多量に
生成し、レールに要求されている基本的な強度を確保す
ることが困難となる。さらに、塑性変形起因のフレーキ
ング損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。またC量
が0.75%を超えると、パーライト組織の硬さの上昇
により摩耗速度が著しく低下し、ころがり面に疲労層が
蓄積してダークスポット損傷が発生する。さらに、セメ
ンタイト相の密度の向上により衝撃値が低下し、レール
の靭性が向上しない。このためC量を0.50〜0.7
5%に限定した。
【0021】Siは、パーライト組織中のフェライト相
への固溶体硬化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇
させる元素であるが、0.05%未満の含有量ではその
効果が小さく、レールとして必要な最低限の強度を確保
することが困難となる。また1.00%を超えると、フ
ェライト相の延性の低下により衝撃値が低下し、レール
の靭性が向上しない。さらに、パーライト組織の延性の
低下により、ころがり面にスポーリング損傷が発生して
耐表面損傷性が低下する。このためSi量を0.05〜
1.00%に限定した。
【0022】Mnは、パーライト変態温度を低下させ、
焼入れ性を高めることによって高強度化に寄与する元素
であり、さらに、セメンタイト相を強化してパーライト
組織の硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.0
5%未満の含有量ではその効果が小さく、レールとして
必要な最低限の強度を確保することが困難となる。ま
た、1.20%を超えると焼入れ性が増加し、マルテン
サイト組織が生成し、マルテンサイト組織を起点とした
スポーリング損傷が発生して耐表面損傷性が低下する。
さらに、セメンタイト相の強化が過剰となり、衝撃値が
低下してレールの靭性が向上しない。このためMn量を
0.05〜1.20%に限定した。
【0023】また、上記の成分組成で製造されるレール
は、パーライト組織の硬度(強化)の向上、パーライト
組織の延性や靭性の向上、溶接部の熱影響部の軟化の防
止、レール頭部内部の断面硬度分布の制御を図る目的
で、Cr,Mo,V,Nb,B,Co,Cu,Ni,T
i,Mg,Ca、Alの元素を必要に応じて添加する。
【0024】ここで、Cr,Moは、パーライトの平衡
変態点を上昇させ、主にパーライトラメラ間隔を微細化
することによりパーライト組織の硬度を確保する。V,
Nbは、熱間圧延やその後の冷却過程で生成した炭化物
や窒化物により、オーステナイト粒の成長を抑制し、さ
らに、パーライト組織中に析出硬化することにより、パ
ーライト組織の靭性と硬度を向上させる。また、炭化物
や窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟
化を防止する。
【0025】Bは、パーライト変態温度の冷却速度依存
性を低減させ、レール頭部の硬度分布を均一にする。C
o,Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、
パーライト組織の硬度を高める。Niは、パーライト鋼
の靭性と硬度を向上させ、同時に溶接継ぎ手熱影響部の
軟化を防止する。Tiは、熱影響部の組織の微細化を図
り、溶接継ぎ手部の脆化を防止する。Mg,Caは、レ
ール圧延時においてオーステナイト粒の微細化を図り、
同時にパーライト変態を促進し、パーライト組織の靭性
を向上させる。Alは、共析変態温度を高温側へ移動さ
せ、パーライト組織の硬度を高めることが主な添加目的
である。
【0026】それらの成分の個々の限定理由について、
以下に詳細に説明する。Crは、パーライトの平衡変態
点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にして
高硬度(強度)化に寄与すると同時に、セメンタイト相
を強化して、パーライト組織の硬度(強度)を向上させ
る元素であるが、0.01%未満ではその効果は小さ
く、レール鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなく
なる。また、1.00%を超える過剰な添加を行うと、
焼入れ性が増加し、パーライト組織の硬さが著しく高く
なり、ころがり面に疲労層が蓄積して耐表面損傷性が低
下する。さらに、セメンタイト相の強化が過剰となり、
衝撃値の低下によりレールの靭性向上が図れない。この
ためCr量を0.01〜1.00%に限定した。
【0027】Moは、Cr同様パーライトの平衡変態点
を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にするこ
とにより高硬度(強度)化に寄与し、パーライト組織の
硬度(強度)を向上させる元素であるが、0.01%未
満ではその効果が小さく、レール鋼の硬度を向上させる
効果が全く見られなくなる。また0.50%を超える過
剰な添加を行うと、パーライト組織の変態速度が著しく
低下し、靭性に有害なマルテンサイト組織が生成しやす
くなる。このためMo添加量を0.01〜0.50%に
限定した。
【0028】Vは、高温度に加熱する熱処理が行われる
場合に、V炭化物やV窒化物のピニング効果によりオー
ステナイト粒を微細化し、さらに、熱間圧延後の冷却過
程で生成したV炭化物、V窒化物による析出硬化によ
り、パーライト組織の硬度(強度)を高めると同時に、
延性を向上させるのに有効な元素である。また、Ac1
点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、比較
的高温度域でV炭化物やV窒化物を生成させ、溶接継ぎ
手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。し
かし、0.005%未満ではその効果が十分に期待でき
ず、パーライト組織の硬度の向上や靭性の改善は認めら
れない。また0.30%を超えて添加すると、フェライ
ト相へのVの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰となり、
パーライト組織の靭性が低下する。このためV量を0.
005〜0.30%に限定した。
【0029】Nbは、Vと同様に高温度に加熱する熱処
理が行われる場合に、Nb炭化物やNb窒化物のピニン
グ効果によりオーステナイト粒を微細化し、さらに、熱
間圧延後の冷却過程で生成したNb炭化物、Nb窒化物
による析出硬化により、パーライト組織の硬度(強度)
を高めると同時に、延性を向上させるのに有効な元素で
ある。また、Ac1 点以下の温度域に再加熱された熱影
響部において、低温度域から高温度域までNbの炭化物
やNb窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部
の軟化を防止するのに有効な元素である。しかしその効
果は、0.002%未満では期待できず、パーライト組
織の硬度の向上や靭性の改善は認められない。また0.
030%を超える添加すると、フェライト相へのNbの
炭化物や窒化物の析出硬化が過剰となり、パーライト組
織の靭性が低下する。このためNb量を0.002〜
0.030%に限定した。
【0030】Bは、オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物
(Fe23(CB)6 )を形成し、パーライト変態の促進
効果により、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低
減させ、頭表面から内部までより均一な硬度分布をレー
ルに付与し、レールを高寿命化する元素であるが、0.
0001%未満の含有量ではその効果が十分でなく、レ
ール頭部の硬度分布には改善が認められない。また0.
0050%を超えて添加すると、粗大な鉄炭ほう化物が
生成しやすく、延性や靭性の低下を招く。このためB量
を0.0001〜0.0050%に限定した。
【0031】Coは、パーライト組織中のフェライトに
固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)
を向上させる元素であり、さらに、パーライトの変態エ
ネルギーを増加させて、パーライト組織を微細にするこ
とにより硬度や靭性を向上させる元素であるが、0.0
1%未満ではその効果が期待できない。また1.00%
を超えて添加すると、フェライト相の延性が著しく低下
し、衝撃値の低下によりレールの靭性が向上しない。こ
のためCo量を0.01〜1.00%に限定した。
【0032】Cuは、パーライト組織中のフェライトに
固溶し、固溶強化によりパーライト組織の硬度(強度)
を向上させる元素であるが、0.01%未満ではその効
果が期待できない。また1.00%を超えて添加する
と、著しい焼入れ性向上により靭性に有害なマルテンサ
イト組織が生成しやすくなる。さらに、フェライト相の
延性が著しく低下し、衝撃値の低下によりレールの靭性
が向上しない。このためCu量を0.01〜1.00%
に限定した。
【0033】Niは、パーライト鋼の靭性を向上させ、
同時にフェライトへの固溶強化によりパーライト鋼の高
硬度(強度)化を図る元素である。さらに、溶接熱影響
部においては、Tiと複合でNi3 Tiの金属間化合物
が微細に析出し、析出強化により軟化を抑制する元素で
あるが、0.01%未満ではその効果が著しく小さく、
また1.00%を超えて添加すると、フェライト相の延
性が著しく低下し、衝撃値が低下してレールの靭性向上
が図れない。このためNi量を0.01〜1.00%に
限定した。
【0034】Tiは、溶接時の再加熱において析出した
Tiの炭化物、Tiの窒化物が溶解しないことを利用し
て、オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織の
微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効
な成分である。しかし、0.0050%未満ではその効
果が少なく、0.0500%を超えて添加すると、粗大
なTiの炭化物、Tiの窒化物が生成して、レールの靭
性や耐内部疲労損傷性が低下するため、Ti量を0.0
050〜0.050%に限定した。
【0035】Mgは、O、またはSやAl等と結合して
微細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において
結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を
図り、パーライト組織の靭性を向上させるのに有効な元
素である。さらに、MgO,MgSがMnSを微細に分
散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーラ
イト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブロック
サイズを微細化することにより、パーライト組織の靭性
を向上させるのに有効な元素である。しかし、0.00
05%未満ではその効果は弱く、0.0200%を超え
て添加すると、Mgの粗大酸化物が生成し、レールの靭
性、さらには耐内部疲労損傷性を低下させるため、Mg
量を0.0005〜0.0200%に限定した。
【0036】Caは、Sとの結合力が強く、CaSとし
て硫化物を形成し、さらにCaSがMnSを微細に分散
させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライ
ト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブロックサ
イズを微細化することにより、パーライト組織の靭性を
向上させるのに有効な元素である。しかし、0.000
5%未満ではその効果は弱く、0.0150%を超えて
添加すると、Caの粗大酸化物が生成し、レールの靭
性、さらには耐内部疲労損傷性を低下させるため、Ca
量を0.0005〜0.0150%に限定した。
【0037】Alは、脱酸材として必須の成分である。
また共析変態温度を高温側へ移動させる元素であり、パ
ーライト組織の高硬度(強度)化に寄与する元素である
が、0.0040%未満ではその効果が弱く、1.00
%を超えて添加すると、鋼中に固溶させることが困難と
なり、疲労損傷の起点となる粗大なアルミナ系介在物が
生成し、レールの靭性や耐内部疲労損傷性が低下するこ
とや、溶接時に酸化物が生成して溶接性が著しく低下す
るため、Al量を0.0040〜1.00%に限定し
た。
【0038】上記のような成分組成で構成されるレール
鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製
を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法、
さらに熱間圧延を経てレールとして製造される。次に、
この熱間圧延した高温度の熱を保有するレール、あるい
は熱処理する目的で高温に再加熱されたレール頭部に所
定の熱処理を施すことにより、レール頭部に耐表面損傷
性と靭性に優れた一定範囲の硬さを有するパーライト組
織を安定的に生成させることが可能となる。
【0039】(4)レール熱処理製造方法:請求項10
において、レール製造時の加熱、冷却条件を上記のよう
に限定した理由について詳細に説明する。まず、レール
頭部を冷却する前の温度条件であるが、所定の組織およ
び硬度を得るためには、少なくともレール頭部を十分に
オーステナイト化させる必要がある。その温度は、圧延
直後のレール頭部においてはAr1 点以上の温度域であ
り、また再加熱されたレール頭部ではAc1 点+30℃
以上の温度が必要である。なお、温度の上限は特に規定
しないが、あまり高温度にすると液相が現れ、オーステ
ナイト相が不安定になるため、温度は実質1350℃が
上限となる。
【0040】ここで、上記の「レール頭部」とは、図1
に示すレール頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部
(符号:2)を含む図中の斜線部分である。以下に説明
する冷却速度および温度は、前記の図1に示すレール頭
頂部(符号:1)および頭部コーナー部(符号:2)の
頭部表面から深さが2〜5mmの範囲で測定すれば、レ
ール頭部の少なくとも深さ30mmの範囲を代表させる
ことができ、少なくとも図1に示す斜線部分の組織と硬
さを制御することができる。
【0041】次に、熱間圧延直後のAr1 点以上の温度
の鋼レール頭部、あるいは熱処理する目的でAc1 点+
30℃以上の温度に加熱した直後の鋼レール頭部を、2
〜10分間自然放冷する理由について説明する。自然放
冷する時間が2分未満では、熱間圧延直後および再加熱
直後のオーステナイト粒が不安定であり、オーステナイ
ト粒径が不均一となる。その結果、熱処理後のパーライ
ト組織も不均一となり、粗大なパーライト組織から破壊
が発生してレールの靭性が低下する。また、自然放冷す
る時間が10分を超えると、成分系によっては熱処理開
始前にパーライト変態が始まり、硬さの低いパーライト
組織が多量に生成する。その結果、フレーキング損傷な
どの塑性変形起因の表面損傷が発生し、レールの使用寿
命が低下する。このため自然放冷時間を2〜10分の範
囲に限定した。
【0042】次に、自然放冷後、700〜350℃まで
の間を0.5〜10℃/sec の冷却速度で加速冷却する
方法において、加速冷却停止温度範囲、加速冷却速度を
上記の様に限定した理由について説明する。700℃を
超える温度で加速冷却を停止すると、加速冷却直後の高
温度域でパーライト変態が開始し、硬さの低い粗大なパ
ーライト組織が多く生成する。その結果レール頭部の硬
さがHv250未満となり、レールとして必要な最低限
の強度を確保することが困難となり、塑性変形起因のフ
レーキング損傷が発生して耐表面損傷性が低下する。さ
らに、粗大なパーライト組織を起点とした破壊が発生し
易くなり、レールの靭性が低下する。また350℃未満
まで加速冷却を行うと、本成分系では加速冷却後にレー
ル内部からの十分な復熱が期待できず、レール頭部にマ
ルテンサイト組織が生成してレールの靭性が低下する。
さらに、マルテンサイト組織を起点としたスポーリング
損傷が発生し、耐表面損傷性が低下する。このため加速
冷却停止温度範囲を700〜350℃の範囲に限定し
た。
【0043】次に、レール頭部の加速冷却速度が0.5
℃/sec 未満になると、加速冷却途中の高温度域でパー
ライト変態が開始し、硬さの低い粗大なパーライト組織
が多く生成する。その結果レール頭部の硬さがHv25
0未満となり、塑性変形起因のフレーキング損傷が発生
し、耐表面損傷性が低下する。さらに、粗大なパーライ
ト組織を起点とした破壊が発生し易くなり、レールの靭
性が低下する。また、加速冷却速度が10℃/sec を超
えると、パーライト組織の変態温度が低下し、レール頭
部の硬さがHv350を超える。その結果ころがり面の
摩耗速度が低下し、ころがり面に疲労層が蓄積し、ダー
クスポット損傷が発生する。このため加速冷却速度を
0.5〜10℃/sec の範囲に限定した。
【0044】なお、耐表面損傷性および靭性に優れたパ
ーライト組織をレール頭部に安定的に生成させるには、
加速冷却速度は2〜6℃/sec の範囲が最も望ましい。
また、本加速冷却速度範囲は冷却開始から終了までの平
均的な冷却速度を限定するものであるが、加速冷却途中
においてパーライト変態による発熱や、レール内部から
の自然復熱による一時的な温度上昇が発生することがあ
る。しかし、加速冷却開始から終了までの平均的な冷却
速度が上記範囲内であれば、本パーライト系レールの特
性に大きな影響を及ぼさないため、本レールの加速冷却
条件としては冷却途中の一時的な温度上昇に伴う冷却速
度の低下も含んでいる。
【0045】0.5〜10℃/sec の冷却速度を得る方
法としては、空気や空気を主としミスト等を加えた冷却
媒体およびこれらの組合わせにより、所定冷却速度を得
ることが可能である。したがって、硬さHv250〜3
50の範囲の耐表面損傷性および靭性に優れたパーライ
ト系レールを製造するには、レール頭部において、硬さ
の低いパーライト組織の生成を防止し、耐摩耗性、靭
性、耐内部疲労損傷性に有害なベイナイト組織、マルテ
ンサイト組織、初析セメンタイト組織が生成しないよう
に、空気や空気を主としミスト等を加えた冷媒を用い
て、オーステナイト域温度から0.5〜10℃/sec の
冷却速度で加速冷却し、該鋼レール頭表部の温度が70
0〜350℃に達した時点で加速冷却を停止することに
より、レール頭部に所定の硬さのパーライト組織を安定
的に生成させることが可能となる。
【0046】なお、加速冷却後の冷却は強制的な冷却は
行わず、パーライト変態を完遂するまで放冷、すなわち
自然冷却することが望ましい。なお、生産性向上等のた
めレールを強制的冷却する際には、マルテンサイト組織
などのレールの靭性を低下させる組織の生成を防止する
ため、パーライト変態が完遂してから冷却を行うことが
望ましい。なお本成分系において、レール頭部全体のパ
ーライト変態がほぼ完了する温度は、レール外表面の温
度が300℃以下に冷却された状態である。
【0047】また、頭頂部の表面下2mm点とその深さ
20mm点の硬さの差を制御する方法としては、熱間圧
延終了および再加熱後の自然放冷時間、加速冷却速度の
組合わせにより制御することが可能である。硬さの差を
少なくする方法としては、自然放冷時間を6分以下、ま
たは加速冷却速度を6℃/sec以下とすることが望まし
い。
【0048】本発明レールの金属組織は、上記限定のよ
うなパーライト組織であることが望ましい。しかし、レ
ールの成分系や熱処理製造方法によっては、レール頭部
のパーライト組織中に微量な初析フェライト組織、初析
セメンタイト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組
織が混入することがある。しかしこれらの組織が混入し
ても、レールの耐表面損傷性、靭性、耐内部疲労損傷性
等には大きな悪影響を及ぼさないため、耐表面損傷性に
優れたパーライト系レールの組織としては、若干の初析
フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組
織、マルテンサイト組織の混在も含んでいる。
【0049】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。表
1に本発明レール鋼の化学成分、頭部ミクロ組織、頭部
硬さ、頭部加速冷却条件を示す。また表1には、図2に
示す試験片採取位置の衝撃試験結果、図3に示す水潤滑
ころがり疲労損傷試験結果も併記した。表2に、比較レ
ール鋼の化学成分、頭部ミクロ組織、頭部硬さ、頭部加
速冷却条件を示す。また表2には、図2に示す試験片採
取位置の衝撃試験結果、図3に示す水潤滑ころがり疲労
損傷試験結果も併記した。
【0050】なお、レールの構成は以下のとおりであ
る。 ・本発明レール鋼(12本) 符号A〜L 化学成分が上記成分範囲内で、鋼レールの頭部コーナー
部および頭頂部表面を起点として、少なくとも深さ20
mmの範囲が、硬さHv250〜350のパーライト組
織であり、かつ、当該部分の2mmUノッチシャルピー
衝撃値が常温で25J/cm2 以上であることを特徴と
する耐表面損傷性および靭性に優れた熱処理パーライト
系レール。 ・比較レール鋼(12本) 符号M〜X 符号M〜P:化学成分が上記請求範囲外の比較レール鋼
(4本)。 符号Q :化学成分が上記請求範囲内で、未熱処理
(自然放冷)の比較レール鋼(1本)。 符号R〜W:化学成分が上記請求範囲内で、熱処理製造
条件が上記請求範囲外の比較レール鋼(6本)。 符号X :化学成分が上記請求範囲内で、頭頂部の硬
さの差が上記請求範囲外の比較レール鋼(1本)。
【0051】ここで、本明細書中の図について説明す
る。図1は本発明の耐表面損傷性および靭性に優れたパ
ーライト系レールの頭部断面表面位置での呼称および耐
表面損傷性および靭性が必要とされる領域を示したもの
である。図2は衝撃試験における試験片採取位置を図示
したものである。また図3は、水潤滑ころがり疲労損傷
試験機の概略を示したものである。なお図1において、
1は頭頂部、2は頭部コーナー部である。また図3にお
いて、3は車輪試験片、4はレール円盤試験片、5はモ
ーター(車輪側)、6はモーター(レール側)、7は水
潤滑装置である。
【0052】各種試験条件は下記のとおりである。 ・衝撃試験 試験片 :JIS3号2mmUノッチシャルピー衝撃試験片 試験片採取位置:レール柱部(図2参照) 試験温度 :常温(+20℃) ・水潤滑ころがり疲労損傷試験 試験機 :ころがり疲労試験機(図3参照) 試験片形状 :円盤状試験片 (レール 外径:200mm、レール材断面形状:60Kレールの1/4モ デル) (車輪 外径:200mm、車輪材断面形状:円弧踏面車輪の1/4モデ ル) 試験荷重 ラジアル荷重:0.6トン、初期面圧:650MPa 雰囲気 :乾燥+水潤滑(60cc/min ) 回転数 :乾燥;100rpm、水潤滑;300rpm 繰返し回数:0〜5000回まで乾燥状態、その後、水潤滑により損傷発生お よび磨耗限界まで(損傷が発生しない場合は200万回で試験を中止)。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】表1に示す本発明レール鋼は、C,S
i,Mnの添加量を適切な範囲に納め、熱処理を施すこ
とにより、レール鋼の初期硬さをある一定範囲に制御
し、また衝撃値も大きく向上させることができる。さら
に表2に示す比較レール鋼(符号:M〜P)で確認され
たような、フェライト組織、マルテンサイト組織等の異
常組織の生成を防止することにより、レールの耐表面損
傷性や靭性を向上させることができる。また表1に示す
本発明レール鋼は、表2に示す比較レール鋼(符号:Q
〜V)と比べて、適切な条件の熱処理をレール頭部に施
すことにより、レール頭部の硬さ、パーライト組織の性
状、頭頂部の硬さの差を制御し、さらにマルテンサイト
組織等の異常組織の生生成を防止し、耐表面損傷性と靭
性を向上させることができる。このように本発明によれ
ば、旅客および貨物鉄道の直線や緩曲線区間で使用され
るパーライト組織のレールにおいて、耐表面損傷性の向
上と靭性を向上を同時に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明レール鋼の頭部断面表面位置での呼称お
よび耐表面損傷性および靭性に優れたパーライト組織が
必要とされる領域を示す図。
【図2】衝撃試験における試験片採取位置を示す図
【図3】水潤滑ころがり疲労損傷試験機の概略図。
【符号の説明】
1:頭頂部 2:頭部コーナー部 3:車輪試験片 4:レール円盤試験片 5:モーター(車輪側) 6:モーター(レール側) 7:水潤滑装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 琢也 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 小林 玲 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内 Fターム(参考) 4K042 AA04 BA02 CA02 CA03 CA04 CA05 CA06 CA08 CA09 CA10 CA12 CA13 DA06 DC02 DE01

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.50〜0.75%、 Si:0.05〜1.00%、 Mn:0.05〜1.20%を含有する鋼レールの頭部
    コーナー部および頭頂部表面を起点として、少なくとも
    深さ20mmの範囲が、硬さHv250〜350のパー
    ライト組織であり、かつ、当該部分の2mmUノッチシ
    ャルピー衝撃値が常温で25J/cm2 以上であること
    を特徴とする耐表面損傷性および靭性に優れた熱処理パ
    ーライト系レール。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の鋼レールにおいて、頭
    頂部の表面下2mm点とその深さ20mm点の硬さの差
    がHv±40以下であることを特徴とする耐表面損傷性
    および靭性に優れた熱処理パーライト系レール。
  3. 【請求項3】 質量%でさらに、 Cr:0.01〜1.00%、 Mo:0.01〜0.50%の1種または2種を含有
    し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特
    徴とする請求項1または2に記載の耐表面損傷性および
    靭性に優れた熱処理パーライト系レール。
  4. 【請求項4】 質量%でさらに、 V :0.005〜0.30%、 Nb:0.002〜0.030%の1種または2種を含
    有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に
    記載の耐表面損傷性および靭性に優れた熱処理パーライ
    ト系レール。
  5. 【請求項5】 質量%でさらに、 B :0.0001〜0.0050% を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1
    項に記載の耐表面損傷性および靭性に優れた熱処理パー
    ライト系レール。
  6. 【請求項6】 質量%でさらに、 Co:0.01〜1.00%、 Cu:0.01〜1.00%の1種または2種を含有す
    ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載
    の耐表面損傷性および靭性に優れた熱処理パーライト系
    レール。
  7. 【請求項7】 質量%でさらに、 Ni:0.01〜1.00%を含有することを特徴とす
    る請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐表面損傷性お
    よび靭性に優れた熱処理パーライト系レール。
  8. 【請求項8】 質量%でさらに、 Ti:0.0050〜0.0500%、 Mg:0.0005〜0.0200%、 Ca:0.0005〜0.0150%の1種または2種
    以上を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれ
    か1項に記載の耐表面損傷性および靭性に優れた熱処理
    パーライト系レール。
  9. 【請求項9】 質量%でさらに、 Al:0.004〜1.00%を含有することを特徴と
    する請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐表面損傷性
    および靭性に優れた熱処理パーライト系レール。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のいずれか1項に記載の
    鋼レールを製造するに際し、熱間圧延直後のAr1 点以
    上の温度の鋼レール頭部、あるいは、熱処理する目的で
    Ac1 点+30℃以上の温度に加熱した直後の鋼レール
    頭部を、2〜10分間自然放冷し、その後0.5〜10
    ℃/sec の冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部
    の温度が700〜350℃に達した時点で加速冷却を停
    止し、その後自然放冷することを特徴とする耐表面損傷
    性および靭性に優れた熱処理パーライト系レールの製造
    法。
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