JP2002069585A - 耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたパーライト系レールおよびその製造法 - Google Patents
耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたパーライト系レールおよびその製造法Info
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Abstract
の適正化を図ることにより、耐摩耗性を向上させ、同時
に粗大な初析セメンタイト組織の生成を抑制し、耐内部
疲労損傷性に優れたレールを製造する。 【解決手段】 質量%で、C:0.85超〜1.40
%、Mn:0.10〜2.00%を含有し、更にSi:
1.00超〜3.00%、Al:0.07超〜3.00
%の1種又は2種を含有し、残部がFe及び不可避的不
純物からなることを特徴とする耐摩耗性及び耐内部疲労
損傷性に優れたパーライト系レール。
Description
ルに要求される耐摩耗性を向上させ、同時に耐内部疲労
損傷性を向上させたパーライト系レールおよびその製造
法に関するものである。
率化の手段として、列車速度の向上や列車積載重量の増
加が図られている。このような鉄道輸送の効率化はレー
ル使用環境の過酷化を意味し、レール材質の一層の改善
が要求されるに至っている。具体的には、曲線区間に敷
設されたレールでは、G.C.(ゲージ・コーナー)部
や頭側部の摩耗が急激に増加し、レールの使用寿命の点
で問題視されるようになった。
の進歩により、共析炭素鋼を用いた微細パーライト組織
を呈した下記に示すような高強度(高硬度)レールが発
明され、重荷重鉄道の曲線区間のレール寿命を飛躍的に
改善してきた。 頭部がソルバイト組織、または微細なパーライト組
織の超大荷重用の熱処理レール(特公昭54−2549
0号公報)。 圧延終了後、あるいは再加熱したレール頭部をオー
ステナイト域温度から850〜500℃間を1〜4℃/
sec で加速冷却する130kgf/mm2 以上の高強度レール
の製造法(特開昭57−198216公報)。 これらのレールの特徴は、共析炭素含有鋼(炭素量:
0.7〜0.8%)による微細パーライト組織を呈する
高強度レールであり、その目的は、パーライト組織中の
ラメラ間隔を微細化し、耐摩耗性を向上させることにあ
った。
層の鉄道輸送の高効率化のために貨物の高積載化を強力
に進めており、特に急曲線のレールでは上記開発のレー
ルを用いてもG.C.部や頭側部の耐摩耗性が十分確保
できず、摩耗によるレール寿命の低下が問題となってき
た。このような背景から、現状の共析炭素鋼の高強度レ
ール以上の耐摩耗性を有するレールの開発が求められる
ようになってきた。
は下記に示すようなレールを提案した。 過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用い
て、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト密度を
増加させた耐摩耗性に優れたレール(特開平8−144
016号公報)。 過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用い
て、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト密度を
増加させ、同時に硬さを制御した耐摩耗性に優れたレー
ル(特開平8−246100号公報)。 これらのレールの特徴は、鋼の炭素量を増加し、パーラ
イトラメラ中のセメンタイト相の密度を増加させ、さら
に硬さを制御することにより、パーライト組織の耐摩耗
性を向上させるものであった。
示された発明レールは、高炭素化により耐摩耗性の向上
は図れるものの、鋼の成分系やレール頭部の熱処理製造
条件によっては、比較的冷却速度の遅いレール頭部内部
では、パーライト組織中に粗大な初析セメンタイト組織
が生成して疲労損傷の起点となり、レール頭部の耐内部
疲労損傷性が低下するといった問題があった。
織の生成を抑制するため、熱処理時のレール頭部の冷却
速度を増加させることにより、その生成を抑制する方法
も考えられるが、レール頭部のように断面積が大きい部
位では、レール頭表面ではその効果が期待できるもの
の、内部ではその効果が全く期待できず、粗大な初析セ
メンタイト組織の生成を十分に抑制できないといった問
題があった。
イト鋼レールにおいて、粗大な初析セメンタイト組織の
生成を抑制したレールおよびその製造方法の開発が望ま
れるようになった。すなわち本発明は、重荷重鉄道で使
用される高炭素含有のパーライト鋼レールにおいて、耐
摩耗性を向上させ、同時に粗大な初析セメンタイト組織
の生成を抑制し、耐内部疲労損傷性を向上させることを
目的としたものである。
するものであって、その要旨は次の通りである。 (1)質量%で、C :0.85超〜1.40%、 M
n:0.10〜2.00%を含有し、さらに、Si:
1.00超〜3.00%、 Al:0.07超〜3.0
0%の1種または2種を含有し、さらに必要に応じて、
Cr:0.05〜3.00%、 Mo:0.01〜
1.00%、V :0.01〜0.50%、 Nb:
0.002〜0.050%、B :0.0001〜0.
0050%、Co:0.10〜2.00%、 Cu:
0.05〜0.50%、Ni:0.05〜1.00%、
Ti:0.0050〜0.0500%、Mg:0.00
05〜0.0300%、Ca:0.0005〜0.01
50%の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよ
び不可避的不純物からなることを特徴とする耐摩耗性お
よび耐内部疲労損傷性に優れたパーライト系レール。 (2)鋼レールの頭部コーナー部および頭頂部表面を起
点として少なくとも深さ30mmの範囲が、硬さHv32
0以上のパーライト組織であることを特徴とする前記
(1) に記載の耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れた
パーライト系レール。 (3)前記(1) に記載の成分を含有する鋼片をレール形
状に熱間圧延した後、熱間圧延ままのAr1 点以上の温
度の鋼レール頭部、あるいは熱処理する目的でAc1 点
+30℃以上の温度に加熱された鋼レール頭部を、オー
ステナイト域温度から1〜30℃/sec の冷却速度で加
速冷却し、前記鋼レールの頭部の温度が700〜500
℃に達した時点で加速冷却を停止し、その後、放冷する
ことを特徴とする耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優
れたパーライト系レールの製造法。
する。本発明者らは、高炭素含有のパーライト鋼におい
て、強度を増加させ、同時に粗大な初析セメンタイト組
織の生成を抑制する添加元素を検討した。その結果、セ
メンタイト相に全く固溶しないSiを多量に添加する
と、高強度化と初析セメンタイト組織の生成の抑制が同
時に達成されることを知見した。
含有鋼の連続冷却変態線図の一例である。図1に示すよ
うに、Siの添加量が増加すると、パーライト変態領域
が長時間側へ移動し、焼入れ性の増加により高強度化が
達成されると同時に、特にSiの添加量が1.0%を超
えた領域では、初析セメンタイト組織の生成領域も長時
間側へ移動し、冷却速度の遅い領域で初析セメンタイト
組織が生成し難くなることが明らかとなった。
イト鋼において、強度を増加させ、同時に初析セメンタ
イト組織の生成を抑制するための添加元素を検討した。
その結果、Siと同様に、セメンタイト相に全く固溶し
ないAlを多量に添加すると、共析変態温度が高温側
へ、さらに共析炭素濃度が高炭素側へそれぞれ移動し、
パーライト変態時の過冷度の増加と相まって、高強度化
と初析セメンタイト組織の生成の抑制が同時に達成され
ることを知見した。
するため、Siの添加量を0〜3.0%まで変化させた
高炭素含有鋼、Alの添加量を0〜3.0%まで変化さ
せた高炭素含有鋼をそれぞれ用いて、実レール形状の試
験片の熱間圧延冷却実験を行い、それぞれの添加元素の
最適成分範囲について検討を行った。その結果、Siの
添加量が1.0%を超える領域、またAlの添加量が
0.07%を超える領域では、比較的冷却速度の遅いレ
ール頭部内部においても、疲労損傷の起点となりやすい
粗大な初析セメンタイト組織が生成し難くなり、高炭素
含有鋼においても、レール頭表部から内部まで高い強度
を有するパーライト組織が得られ易いことを見出した。
て、上記発明レール鋼において、レール頭表部から内部
まで高い強度を有するパーライト組織を得るためのレー
ルの熱処理製造法について検討した。実験の結果、高温
度の熱を保有した鋼レールの頭部を、オーステナイト域
温度からある一定範囲の温度域をある一定範囲の冷却速
度で加速冷却することにより、レール頭表面から内部ま
で安定した高強度化が達成され、同時にSiやAlの添
加効果と相まって、内部疲労損傷の起点となりやすい粗
大な初析セメンタイト組織の生成も抑制できることが確
認された。
添加量の最適化を図り、同時にレール熱処理製造時の冷
却条件の適正化を行うことにより、レールの内部疲労損
傷の起点となる粗大な初析セメンタイト組織の生成を抑
制し、レール頭表部から内部まで高い強度を有したパー
ライト組織が得られるとこを知見した。すなわち本発明
は、重荷重鉄道で使用される高炭素含有のパーライト鋼
レールにおいて、耐摩耗性を向上させ、同時に粗大な初
析セメンタイト組織の生成を抑制し、耐内部疲労損傷性
を向上させることを目的としたものである。
求項1〜9において、レール鋼の化学成分、パーライト
組織の範囲と硬さ、および熱処理製造条件を上記請求の
範囲に限定した理由について、詳細に説明する。
量%)を上記のように限定した理由について説明する。
Cは、パーライト変態を促進させ、かつ耐摩耗性を確保
する有効な元素であり、通常のレール鋼としてはC量
0.60〜0.85%が添加されているが、C量0.8
5%以下では耐摩耗性の向上を図るためのパーライト組
織中のセメンタイト相の密度が確保できず、さらに、レ
ール頭部内部に疲労損傷の起点となる粒界フェライトが
生成し易くなり、レール寿命が低下する。またC量が
1.40%を超えると、本発明の成分系では、レール頭
表部や頭部内部のパーライト組織中に初析セメンタイト
組織が生成し、レールの靭性が低下し、内部疲労損傷が
発生しやすくなることや、パーライト組織中のセメンタ
イト相の密度が増加し、レールに必要とされる延性を十
分に確保できなくなるため、C量を0.85超〜1.4
0%に限定した。
温度を低下させ、レール頭部の高硬度化を図り、同時に
初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素であるが、
0.10%未満の含有量ではこれらの効果がほとんどな
く、レール頭部に必要とされる硬さの確保が困難とな
る。また、2.00%を超えると焼入れ性が著しく増加
し、マルテンサイト組が生成し易くなることや、偏析が
助長され、偏析部にレールの靭性や疲労強度に有害な初
析セメンタイト組織が生成し易くなるため、Mn量を
0.10〜2.00%に限定した。
への固溶強化によりレール頭部の硬度(強度)を上昇さ
せる元素であり、同時に初析セメンタイト組織の生成を
抑制する元素であるが、1.00%以下では、初析セメ
ンタイト組織の生成を抑制することが不十分となり、冷
却速度の比較的遅いレール頭部内部に初析セメンタイト
組織が生成し、内部疲労損傷が発生し易くなる。また
3.00%を超えると、熱間圧延時に割れが多く生成し
易くなり、溶接時に酸化物が生成して溶接性が著しく低
下する。さらに、パーライト組織が脆化し、ころがり面
において表面損傷が発生しやくなる。したがって、Si
量を1.00超〜3.00%に限定した。なお、初析セ
メンタイト組織の生成を抑制し、同時に熱間圧延時に割
れの発生を抑制し、溶接性を確保するには、Si添加量
を1.20〜2.00%の範囲とすることが最も望まし
い。
共析炭素濃度を高炭素側へそれぞれ移動させる元素であ
り、パーライト組織の高強度化と初析セメンタイト組織
の生成を抑制する元素であるが、0.070%以下で
は、初析セメンタイト組織の生成を抑制することが不十
分となり、冷却速度の比較的遅いレール頭部内部に初析
セメンタイト組織が生成し、内部疲労損傷が発生し易く
なる。また、3.00%を超えると、鋼中に固溶させる
ことが困難となり、疲労損傷の起点となる粗大な酸化物
(Al2 O3 )が生成し、疲労強度を低下させること
や、溶接時に酸化物が生成して溶接性が著しく低下する
ため、Al量を0.07超〜3.00%に限定した。な
お、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、同時に疲労
損傷の起点となる粗大な酸化物(Al2 O3 )の生成を
抑制し、溶接性を確保するには、Al添加量を0.10
〜2.00%の範囲とすることが最も望ましい。
は、パーライト組織の強度の向上、パーライト組織の延
性や靭性の向上、レール溶接熱影響部での軟化や脆化を
防止する目的で、Cr,Mo,V,Nb,B,Co,C
u,Ni,Ti,Mg,Caの元素を必要に応じて添加
する。
態点を上昇させ、パーライト組織の微細化により高強度
化に寄与し、同時にパーライト組織中のセメンタイト相
を強化することにより耐摩耗性の向上を図る。V,Nb
は独自の炭化物を形成し、析出硬化で強度を高め、さら
に結晶粒の成長を抑制する作用によりオーステナイト粒
を微細化させ、パーライト組織の強度や延性および靭性
の向上を図る。Bは鉄との化合物を生成し、パーライト
変態を促進させ、レール頭部においてパーライト組織の
硬度の均一化を図る。Co,Cuは、主に固溶強化によ
り、パーライト鋼の靭性を損なわず強度の向上を図る。
Niは、パーライト鋼の延性や靭性を向上させ、同時に
固溶強化によりパーライト鋼の高強度化を図る。また、
レール溶接熱時の熱影響部の軟化抵抗を高める。Ti,
Mg,Caは、レール溶接熱時にオーステナイト域まで
加熱される熱影響部のパーライト組織を微細化し、レー
ル溶接継ぎ手部の脆化を防止すること、が主な添加目的
である。
を、以下に詳細に説明する。Crは、パーライトの平衡
変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細に
して高強度化に寄与すると同時に、パーライト組織中の
セメンタイト相を強化することによって耐摩耗性を向上
させる元素であるが、0.05%未満ではその効果が小
さく、3.00%を超える過剰な添加を行うと、マルテ
ンサイト組織が多量に生成してレールの靭性を低下させ
るため、Cr量を0.05〜3.00%に限定した。
態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にす
ることにより高強度化に寄与し、耐摩耗性を向上させる
元素であるが、0.01%未満ではその効果が小さく、
1.00%を超える過剰な添加を行うと、偏析が助長さ
れ、さらにパーライト変態速度が低下し、偏析部にマル
テンサイト組織が生成してレールの靭性が低下するた
め、Mo量を0.01〜1.00%に限定した。
炭化物、V窒化物による析出硬化で強度を高め、さら
に、高温度に加熱する熱処理が行われる際に、結晶粒の
成長を抑制する作用によりオーステナイト粒を微細化さ
せ、パーライト組織の強度や延性および靭性を向上させ
るのに有効な元素であるが、0.01%未満ではその効
果が十分に期待できず、0.50%を超えて添加しても
それ以上の効果が期待できないことから、V量を0.0
1〜0.50%に限定した。
物による析出硬化で強度を高め、さらに、高温度に加熱
する熱処理が行われる際に、結晶粒の成長を抑制する作
用によりオーステナイト粒を微細化させ、そのオーステ
ナイト粒成長抑制効果はVよりも高温度域(1200℃
近傍)まで作用し、パーライト組織の延性と靭性を改善
する。その効果は、0.002%未満では期待できず、
また0.050%を超える過剰な添加を行ってもそれ以
上の効果が期待できない。従って、Nb量を0.002
〜0.050%に限定した。
6 )を形成し、パーライト変態を促進する効果によ
り、結果としてレール頭表面と頭部内部のパーライト変
態温度の差を低減させ、レール頭表面から内部までより
均一な硬度分布を付与する元素であるが、0.0001
%未満の含有量ではその効果が全くなく、また0.00
50%を超えて添加すると、粗大な鉄の炭ほう化物が生
成して延性や靭性が低下するため、B量を0.0001
〜0.0050%に限定した。
硬度を上昇させ、同時にパーライトの変態エネルギーを
増加させて、パーライト組織を微細にすることにより耐
摩耗性を向上させる元素であるが、0.10%未満では
その効果が期待できず、また2.00%を超える過剰な
添加を行ってもその効果が飽和域に達してしまうため、
Co量を0.10〜2.00%に限定した。
ーライト組織の硬度を上昇させ、パーライト組織の靭性
を損なわず耐摩耗性を向上させる元素であるが、その効
果は0.05〜0.50%の範囲で最も大きく、また
0.50%を超えると赤熱脆化を生じやすくなることか
ら、Cu量を0.05〜0.50%に限定した。
ーライト組織の硬度を上昇させ、耐摩耗性を向上させる
元素である。さらに溶接熱影響部においては、Tiと複
合でNi,Tiの金属間化合物が微細に析出し、析出強
化により軟化を抑制する元素であるが、0.05%未満
ではその効果が著しく小さく、また1.00%を超える
過剰な添加を行ってもそれ以上の効果が期待できない。
したがってNi量を0.05〜1.00%に限定した。
N)として析出させ、同時に、Bの窒化物(BN)の析
出を抑制し、結果として鉄の炭ほう化物(Fe23 (C
B) 6)を優先的に生成させる元素であるが、0.00
50%未満の含有量では窒化物を形成するには十分でな
く、また0.0500%を超えて添加すると、粗大な窒
化物(TiN)や炭化物(TiC)が生成し、レールの
延性や靱性が低下すると同時に、レール使用中の疲労損
傷の起点となりやすいため、Ti量を0.0050〜
0.0500%に限定した。
細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において、
結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を
図り、パーライト組織の延性や靭性を向上させるのに有
効な元素である。さらに、MgO,MgSがMnSを微
細に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、
パーライト変態の生成に寄与し、その結果パーライトブ
ロックサイズを微細化することにより、パーライト組織
の延性や靭性を向上させるのに有効な元素である。しか
し、0.0005%未満ではその効果は弱く、0.03
00%を超えて添加すると、Mgの粗大酸化物が生成し
てレールの延性や靭性を劣化させるため、Mg量を0.
0005〜0.0300%に限定した。
て硫化物を形成し、さらにCaSがMnSを微細に分散
させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、パーライ
ト変態の生成に寄与し、その結果、パーライトブロック
サイズを微細化することにより、パーライト組織の延性
や靭性を向上させるのに有効な元素である。しかし、
0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0150
%を超えて添加すると、Caの粗大酸化物が生成してレ
ールの延性や靭性を劣化させるため、Ca量を0.00
05〜0.0150%に限定した。
鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製
を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法、
さらに熱間圧延を経てレールとして製造される。次に、
この熱間圧延した高温度の熱を保有するレール、あるい
は熱処理する目的で高温に再加熱されたレール頭部に熱
処理を施すことにより、レール頭部に硬さの高いパーラ
イト組織を安定的に生成させることが可能となる。
よびその範囲 パーライト組織の硬さをHv320以上に限定した理由
について説明する。本発明の成分系では、硬さがHv3
20未満になるとレールの摩耗が進行し、内部疲労損傷
が発生し、重荷重鉄道で要求されている耐摩耗性や耐内
部疲労損傷性を確保することが困難となり、レールの使
用寿命が著しく低下するため、パーライト組織の硬さを
Hv320以上に限定した。
織の呈する望ましい範囲を、頭部コーナー部および頭頂
部の該頭部表面を起点として深さ30mmの範囲に限定し
た理由について説明する。30mm未満では、レール頭部
に必要とされている耐摩耗性および耐内部疲労損傷性を
確保することが困難となり、摩耗の進行や内部疲労損傷
の発生により十分な寿命改善効果が得られないためであ
る。
内部疲労損傷性に優れたレールの頭部断面表面位置での
呼称および耐摩耗性が必要とされる領域を示す。レール
頭部において1は頭頂部、2は頭部コーナー部であり、
頭部コーナー部2の一方は車輪と主に接触するゲージコ
ーナー(G.C.)部である。硬さHv320以上のパ
ーライト組織は少なくとも図中の斜線部分に配置されて
いれば、レール頭部に必要とされている耐摩耗性および
耐内部疲労損傷性を確保することができ、レール使用寿
命の向上が可能となる。
記のように限定した理由について詳細に説明する。ま
ず、レール頭部を冷却する前の温度条件であるが、所定
の組織および硬度を得るためには、少なくともレール頭
部を十分にオーステナイト化させる必要がある。その温
度は、圧延直後のレール頭部においてはAr1 点以上の
温度域であり、また再加熱されたレール頭部ではAc1
点+30℃以上の温度が必要である。なお、温度の上限
は特に規定しないが、あまり高温度にすると液相が現
れ、オーステナイト相が不安定になるため、温度は実質
1350℃が上限となる。
に示すレール頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部
(符号:2)を含む図中の斜線部分である。以下に説明
する冷却速度および温度は、前記の図2示すレール頭頂
部(符号:1)および頭部コーナー部(符号:2)の頭
部表面から深さが2〜5mmの範囲で測定すれば、レール
頭部の少なくとも深さ30mmの範囲を代表させることが
でき、少なくとも図2に示す斜線部分の組織と硬さを制
御することができる。また、本明細書中で説明している
レール頭表部とは、図2に示す主に耐摩耗性の必要なレ
ール頭頂部1および頭部コーナー部2の該頭部表面から
10〜15mmの領域を指すものであり、レール頭部内部
とは、主に耐内部疲労損傷性が必要な上記範囲よりさら
に深い頭部表面から15〜30mmまでの領域を示すもの
である。
から700〜500℃までの間を1〜30℃/sec の冷
却速度で加速冷却する方法において、加速冷却停止温度
を上記の様に限定した理由について説明する。700℃
を超える温度で加速冷却を停止すると、加速冷却直後に
パーライト変態が開始し、硬さの低いパーライト組織が
多く生成し、レール頭部の硬さがHv320未満とな
り、耐摩耗性が確保できないことや、加速冷却後にレー
ル頭表部や頭部内部に初析セメンタイト組織が生成しや
すく、レールの靭性や耐内部疲労損傷性を低下させるた
め、700℃以下に限定した。また500℃未満まで加
速冷却を行うと、加速冷却後にレール内部からの十分な
復熱が期待できず、レール頭部内部の偏析部等に加え、
レールの靭性に有害なマルテンサイト組織が生成するた
め、500℃以上に限定した。
sec 未満になると、加速冷却途中の高温度域でパーライ
ト変態が開始し、硬さの低いパーライト組織が多く生成
し、レール頭部の硬さがHv320未満となり、レール
頭部の耐摩耗性の確保が困難になることや、本成分系の
ようにSiやAlを十分に添加しても、比較的冷却速度
の遅いレール頭部内部において、レールの内部疲労損傷
の起点となる初析セメンタイト組織が生成するため、1
℃/sec 以上に限定した。また、加速冷却速度が30℃
/sec を超えると、加速冷却中にパーライト変態が終了
せずに、レール頭表部にベイナイトやマルテサイト等の
異常組織が生成し、レール頭部の耐摩耗性、靭性を低下
させるため、加速冷却速度を1〜30℃/sec の範囲に
限定した。強度の高いパーライト組織をレール頭表部か
ら内部まで安定的に生成させるには、加速冷却速度は2
〜20℃/sec の範囲が最も望ましい。
ら終了までの平均的な冷却速度を限定するものである
が、加速冷却途中においてパーライト変態による発熱や
レール内部からの自然復熱による一時的な温度上昇が発
生することがある。しかし、加速冷却開始から終了まで
の平均的な冷却速度が上記範囲内であれば、本パーライ
ト系レールの特性に大きな影響を及ぼさないため、本レ
ールの加速冷却条件としては、冷却途中の一時的な温度
上昇に伴う冷却速度の低下も含んでいる。
方法としては、空気や空気を主としミスト等を加えた冷
却媒体およびこれらの組合わせにより、所定冷却速度を
得ることが可能である。従って、Hv320以上のパー
ライト組織を呈した耐摩耗性に優れたレールを製造する
には、レール頭部において、硬さの低いパーライト組織
の生成を防止し、耐摩耗性、靭性、耐内部疲労損傷性に
有害なベイナイト組織、マルテンサイト組織、初析セメ
ンタイト組織が生成しないように、空気や空気を主とし
ミスト等を加えた冷媒を用いて、オーステナイト域温度
から1〜30℃/sec の冷却速度で加速冷却し、該鋼レ
ール頭表部の温度が700〜500℃に達した時点で加
速冷却を停止することにより、レール頭表部から内部ま
で高硬度のパーライト組織を安定的に生成させることが
可能となる。
行わず、パーライト変態を完遂するまで放冷、すなわち
自然冷却することが望ましい。なお、生産性向上等のた
めレールを強制的に冷却する際には、マルテンサイト組
織などのレールの靭性を低下させる組織の生成を防止す
るため、パーライト変態が完遂してから冷却を行うこと
が望ましい。なお本発明の成分系において、レール頭部
全体のパーライト変態がほぼ完了する温度は、レール頭
表面の温度が350℃未満に冷却された状態である。
ト組織であることが望ましいが、成分系、熱処理条件お
よび素材の偏析状態によっては、パーライト組織中に微
量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織および
ベイナイト組織が生成することがある。しかし、パーラ
イト組織中にこれらの組織が微量に生成しても、レール
の耐摩耗性、延性、靭性、耐内部疲労損傷性および強度
に大きな影響を及ぼさないため、本発明パーライト系レ
ールの組織としては、若干の初析フエライト組織、初析
セメンタイト組織およびベイナイト組織の混在も含んで
いる。
1及び表2(表1の続き)に、本発明レール鋼の化学成
分、頭部加速冷却条件、レール頭部幅中心部硬さ、およ
び頭部ミクロ組織を示す。また表1及び表2(表1の続
き)には、図3に示す強制冷却条件下における西原式摩
耗試験での70万回繰返し後の摩耗量、図4に示す転動
疲労試験結果も併記した。また表3(表2)及び表4
(表2の続き)に、比較レール鋼の化学成分、頭部加速
冷却条件、レール頭部頭部幅中心部硬さおよび頭部ミク
ロ組織を示す。また表2には、図3に示す強制冷却条件
下における西原式摩耗試験での70万回繰り返し後の摩
耗量、図4に示す転動疲労試験結果も併記した。
す本発明レール鋼と、表3(表2)及び表4(表2の続
き)に示す比較レール鋼(共析炭素含有鋼)の、摩耗試
験結果を硬さと摩耗量の関係で比較したものである。図
3において、3はレール試験片、4は相手材、5は冷却
用ノズルである。また図4において、6はレール移動用
スライダーであり、この上にレール7が設置される。1
0はモーター9で回転する車輪8の左右の動きおよび荷
重を制御する荷重負荷装置である。試験は左右に移動す
るレール7上を車輪8が転動する。
る。 ・本発明レール鋼(24本) 符号A1〜X1 上記成分範囲で、鋼レールの頭部コーナー部および頭頂
部表面を起点として少なくとも深さ30mmの範囲が、硬
さHv320以上のパーライト組織であることを特徴と
する耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたパーライ
ト系レール。 ・比較レール鋼(14本) 符号A2〜N2 符号A2〜C2:共析炭素含有鋼による比較レール鋼
(3本)。 符号D2,E2:CおよびMnの添加量が上記請求範囲
外の過共析炭素含有鋼による比較レール鋼(2本)。 符号F2〜J2:Si,Alの添加量が上記請求範囲外
の過共析炭素含有鋼による比較レール鋼(5本)。 符号K2〜N2:化学成分が上記請求範囲内で、熱処理
製造条件が上記請求範囲外の過共析炭素含有鋼による比
較レール鋼(4本)。
レール鋼と比べて炭素量を高めることにより、同一硬さ
において摩耗量が少なく、耐摩耗性が大きく向上した。
また、表1,表2(表1の続き)の本発明レール鋼に示
すように、CやMnの添加量を適切な範囲に納めること
により、表3(表2),表4(表2の続き)の比較レー
ル鋼で確認されたような、レール頭表面に生成し易い耐
摩耗性に有害なマルテンサイト組織や、レール頭部内部
に生成し易い内部疲労損傷の起点となる初析セメンタイ
ト組織が生成することなく、高い硬度のパーライト組織
が得られた。
明レール鋼に示すように、SiやAlの添加量を適切な
範囲に納めることにより、表3(表2),表4(表2の
続き)の比較レール鋼で確認されたような、レール頭部
内部に生成し易い内部疲労損傷の起点となる初析セメン
タイト組織や粗大な介在物が生成することなく、耐内部
疲労損傷性を向上させることができた。これに加えて、
適切な熱処理冷却条件を選択することにより、表3(表
2),表4(表2の続き)の比較レール鋼で確認された
ような、耐摩耗性に有害なマルテンサイト組織やベイナ
イト組織、内部疲労損傷の起点となる初析セメンタイト
組織が生成することなく、高い硬度のパーライト組織を
レール頭部内部まで安定的に生成させ、耐摩耗性と耐内
部疲労損傷性を向上させることができた。
に好適な耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたレー
ルを製造することができる。
た図。
v320以上のパーライト組織の必要範囲を示した図。
を硬さと摩耗量の関係で比較した図。
した図。
Claims (9)
- 【請求項1】 質量%で、 C :0.85超〜1.40%、 Mn:0.10〜2.00% を含有し、質量%でさらに、 Si:1.00超〜3.00%、 Al:0.07超〜3.00%、 の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的
不純物からなることを特徴とする耐摩耗性および耐内部
疲労損傷性に優れたパーライト系レール。 - 【請求項2】 質量%でさらに、 Cr:0.05〜3.00%、 Mo:0.01〜1.00% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
に記載の耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたパー
ライト系レール。 - 【請求項3】 質量%でさらに、 V :0.01〜0.50%、 Nb:0.002〜0.050% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
または2に記載の耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優
れたパーライト系レール。 - 【請求項4】 質量%でさらに、 B :0.0001〜0.0050% を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに
記載の耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたパーラ
イト系レール。 - 【請求項5】 質量%でさらに、 Co:0.10〜2.00%、 Cu:0.05〜0.50% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
〜4のいずれかに記載の耐摩耗性および耐内部疲労損傷
性に優れたパーライト系レール。 - 【請求項6】 質量%でさらに、 Ni:0.05〜1.00% を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに
記載の耐摩耗性および耐内部疲労損傷性に優れたパーラ
イト系レール。 - 【請求項7】 質量%でさらに、 Ti:0.0050〜0.0500%、 Mg:0.0005〜0.0300%、 Ca:0.0005〜0.0150% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
項1〜6のいずれかに記載の耐摩耗性および耐内部疲労
損傷性に優れたパーライト系レール。 - 【請求項8】 前記鋼レールの頭部コーナー部および頭
頂部表面を起点として少なくとも深さ30mmの範囲が、
硬さHv320以上のパーライト組織であることを特徴
とする請求項1〜7のいずれかに記載の耐摩耗性および
耐内部疲労損傷性に優れたパーライト系レール。 - 【請求項9】 請求項1〜7のいずれかに記載の成分を
含有する鋼片をレール形状に熱間圧延した後、熱間圧延
ままのAr1 点以上の温度の鋼レール頭部、あるいは熱
処理する目的でAc1 点+30℃以上の温度に加熱され
た鋼レール頭部を、オーステナイト域温度から1〜30
℃/sec の冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部
の温度が700〜500℃に達した時点で加速冷却を停
止し、その後、放冷することを特徴とする耐摩耗性およ
び耐内部疲労損傷性に優れたパーライト系レールの製造
法。
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