JP2002363697A - 耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れたレールおよびその製造法 - Google Patents

耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れたレールおよびその製造法

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JP2002363697A
JP2002363697A JP2001173112A JP2001173112A JP2002363697A JP 2002363697 A JP2002363697 A JP 2002363697A JP 2001173112 A JP2001173112 A JP 2001173112A JP 2001173112 A JP2001173112 A JP 2001173112A JP 2002363697 A JP2002363697 A JP 2002363697A
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Masaharu Ueda
正治 上田
Koichi Uchino
耕一 内野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 C,Si,Mn,Crの添加元素を適切に選
択し、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織
とすることにより、現行のパーライト組織のレール鋼で
問題となっていたダークスポット損傷等のころがり疲労
損傷の発生を防止し、同時に適量のマルテンサイト組織
の存在により破壊靭性値を向上させ、レールの耐破壊性
も向上させる。 【解決手段】 鋼レールにおいて、その金属組織がベイ
ナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織からなり、
前記鋼レールの任意の断面において、全組織中のマルテ
ンサイト組織の面積率の範囲が2〜50%であることを
特徴とする耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れ
たレール。また該レールの組成が、質量%でC:0.1
5〜0.50%、Si:0.05〜2.00%、Mn:
0.10〜3.00%、Cr:0.10〜3.00%、
残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、旅客鉄道や貨物鉄
道に要求される、耐ころがり疲労損傷性、耐破壊性を向
上させたレールおよびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、旅客鉄道や貨物鉄道では、輸送効
率の向上を目的として列車の高速化や貨車の高積載化が
進められている。これに伴い主に直線区間のレールにお
いてはレール使用環境が苛酷化し、レールと車輪の繰り
返し接触によるダークスポット損傷等のレール頭表面の
ころがり疲労損傷の発生が増加している。このダークス
ポット損傷をはじめとしたころがり疲労損傷は、従来か
らのパーライト組織を呈したレールが使用されている旅
客鉄道や貨物鉄道の直線区間のレールで発生しやすい特
徴を有している。
【0003】本発明者らは、このころがり疲労損傷の発
生源であると考えられる、車輪との繰り返し接触によっ
て生成するレール頭表面の疲労層(疲労ダメージ層、集
合組織)の形成と金属組織の関係を研究した。その結
果、フェライト相とセメンタイト相の層状構造を成して
いるパーライト組織では、疲労ダメージ層(組織が破砕
された層)が蓄積し易く、さらに集合組織が発達し易い
のに対して、柔らかなフェライト組織地に粒状の硬い炭
化物が分散したベイナイト組織は、疲労ダメージ層が蓄
積し難く、さらに疲労損傷の引き金となる集合組織が発
達し難く、結果としてころがり疲労損傷を発生し難いこ
とが明らかとなった。
【0004】さらに実験の結果、ベイナイト組織は同一
硬さのパーライト組織と比べて摩耗量が多いことが確認
され、この結果、摩耗の促進により頭表面の疲労層(疲
労ダメージ層、集合組織)自体が自己除去され、ころが
り疲労損傷の発生が抑制されることが明らかとなった。
これらの結果により、ベイナイト組織はパーライト組織
と比べて耐ころがり疲労損傷性に優れていることが確認
された。
【0005】そこで、ベイナイト組織を呈したレールと
して下記に示すような製品および製造法が開発された。 低炭素成分でMn,Cr,Mo等の合金元素を多量
に添加して圧延ままでベイナイト組織を呈する高強度レ
ール(特開平5−271871号公報)。 低炭素成分でMn,Cr,Moなどの合金元素を添
加し、熱間圧延後の高温の熱を保有するレール、あるい
は高温に加熱されたレールの頭部を加速冷却する高強度
ベイナイトレールの製造法(特開平7−34132号公
報)。 これらのレールの特徴は、耐表面疲労損傷性に優れたベ
イナイト組織を安定に生成させるため、従来の普通炭素
鋼レールと比較して炭素量を低減させると同時に、M
n,Cr,Moなどの合金元素を多く添加し、さらに強
度を確保するため適切な熱処理を施したものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のベイナイト組織
のレールは、パーライト組織を呈した従来のレールと比
較して、優れた耐ころがり疲労損傷性を有しているが、
ベイナイト組織の硬さが低い場合にはベイナイト組織の
ラス構造が粗くなり、レールの耐破壊性が低下しやすか
った。さらに寒冷地に敷設された場合などには、上記発
明の硬さの高いラス構造の緻密なベイナイト組織でもレ
ールの耐破壊性が不足し、疲労き裂などからのレールの
折損を完全に防止することが不可能であった。
【0007】このような背景から、ベイナイト組織を呈
した鋼レールにおいて、耐ころがり疲労損傷性と高い耐
破壊性を有したレールの開発が望まれるようになった。
すなわち本発明は、旅客鉄道や貨物鉄道において、耐こ
ろがり疲労損傷性と耐破壊性を同時に向上させることを
目的としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するものであって、その要旨とするところは次の通りで
ある。 (1) 鋼レールにおいて、その金属組織がベイナイト
組織とマルテンサイト組織の混合組織からなり、前記鋼
レールの任意の断面において、全組織中のマルテンサイ
ト組織の面積率の範囲が2〜50%であることを特徴と
する耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れたレー
ル。 (2) 上記レールは、質量%で、 C :0.15〜0.50%、 Si:0.05〜2.00%、 Mn:0.10〜3.00%、 Cr:0.10〜3.00% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物とすること
ができる。 (3)また上記(2)記載のレールには、質量%でさら
に、下記の〜の成分を選択的に含有させることがで
きる。 Mo:0.01〜1.00% Ni:0.05〜2.00%、 Cu:0.05〜
1.00%の1種または2種、 V :0.01〜0.30%、 Nb:0.005
〜0.05%の1種または2種、 Ti:0.005〜0.050% Mg:0.0001〜0.0300%、 Ca:0.0001〜0.0150% の1種または2種以上、 B :0.0001〜0.0050% (4) また、上記(1)〜(3)に記載のレールに
は、頭部コーナー部および頭頂部表面を起点として少な
くとも深さ20mmの範囲の硬さをHv240〜500
の範囲とすることができる。
【0009】(5) 前記(2)〜(3)のいずれか1
項に記載の成分を含有する鋼片をレール形状に熱間圧延
した後、熱間圧延ままのAr1 点以上の温度の鋼レー
ル、あるいは熱処理する目的でAc1 点+30℃以上の
温度に加熱された鋼レールにおいて、少なくともレール
頭部を、オーステナイト域温度から0.5〜30℃/se
cの冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部の温度
が500〜250℃に達した時点で加速冷却を停止し、
その後常温度域まで放冷するか、または15〜600s
ecで放冷した後に、常温度域まで冷却速度1℃/sec
以上で加速冷却することを特徴とする、請求項1に記載
の組織からなる耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に
優れたレールの製造法。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明者らは、ベイナイト組織を呈した鋼レール
において、耐破壊性を向上させる方法を検討した。まず
本発明者らは、ベイナイト組織を呈した鋼レールにおい
てレールが折損する原因を調査した。その結果、実際の
レールの折損は疲労亀裂からの折損(脆性破壊)が大半
を占めていることがわかった。
【0011】次に、このような折損状況を考慮したレー
ルの耐破壊性を最も表す材料評価指標を検討した。その
結果、一般的に耐破壊性として評価されているシャルピ
ー衝撃試験の衝撃値では、試験片のノッチ形状が比較的
緩やかであり、応力集中が少ないため、レールの耐破壊
性を示す指標しては不適切であることが判明した。さら
に本発明者らは、検討を重ねた結果、ノッチ自体に疲労
亀裂を挿入するCOD試験の破壊靭性値(K1C)がレー
ルの耐破壊性を示す指標して最も有効であることを見出
した。
【0012】次に本発明者らは、ベイナイト鋼において
破壊靭性値を支配している因子を検討した。その結果、
ベイナイト組織の破壊靭性値はベイナイト組織のラス構
造の緻密さ、すなわちベイナイト組織の硬さに支配され
ていることを確認した。上記の結果に基づき本発明者ら
は、破壊靭性値を向上させるため、ベイナイト組織の硬
さを向上させる方法を検討した。その結果、ベイナイト
組織の硬さは、上記発明等で開発された熱処理方法を用
いても、ある一定の上限があることが判明した。
【0013】そこで本発明者らは、ベイナイト組織の破
壊靭性値をより一層向上させる方法として、レール靭性
(シャルピー衝撃試験等の衝撃値)に有害であると考え
られていた、強度の高いマルテンサイト組織をベイナイ
ト組織中に混在させる方法を考案した。その結果、レー
ルの靭性に有害であるマルテンサイト組織をベイナイト
組織中にある一定量混在させても、レールの靭性はほと
んど劣化せず、マルテンサイト組織の混在による硬さの
増加により、破壊靭性値が大きく向上することが明らか
となった。
【0014】さらに本発明者らは、レール全組織中のマ
ルテンサイト組織の最適面積率を検討した。その結果、
ベイナイト組織を基本とする鋼レールにおいて、耐ころ
がり疲労損傷性と破壊靭性値を同時に向上させるには、
マルテンサイト組織の面積率を一定量の範囲に制御する
必要があることを見出した。また本発明者らは、ベイナ
イト組織を基本とするレールにおいて、マルテンサイト
組織の面積率を一定量の範囲に制御する必要があるレー
ル部位とその硬さを検討した。その結果、頭部コーナー
部および頭頂部表面を起点として少なくともある一定深
さ範囲において、その部位の硬さがある一定範囲内であ
れば、耐ころがり疲労損傷性と破壊靭性値が同時に向上
し、レール使用寿命が最も効率良く向上することを知見
した。
【0015】これらの発明に加えて本発明者らは、ベイ
ナイト組織を基本とする鋼レールにおいて、マルテンサ
イト組織の面積率を一定量の範囲に制御するレールの化
学成分と熱処理製造法について検討した。実験の結果、
C,Si,Mn,Crの添加量をある一定範囲内に制御
し、同時に、高温の熱を有したレールの頭部をオーステ
ナイト域温度からある一定範囲内の冷却速度で加速冷却
し、その後常温度域まで放冷するか、または一定時間放
冷した後に、さらに加速冷却することにより、レール全
組織中のマルテンサイト組織の面積率を制御できること
を見出した。
【0016】以上の実験室での検討の結果、化学成分範
囲の最適化を図り、同時にレール頭部の熱処理製造条件
の適正化を行うことにより、耐ころがり疲労損傷性に有
効なベイナイト組織と破壊靭性値の改善に有効な適正量
のマルテンサイト組織の混合組織において、ある一定範
囲の硬さを付与することが可能となり、レール頭部にお
いて、耐ころがり疲労損傷性と耐破壊性を同時に向上さ
せ得ることが判明した。すなわち本発明は、旅客鉄道や
貨物鉄道に要求される、耐ころがり疲労損傷性と耐破壊
性を同時に向上させることを目的としたものである。
【0017】以下に本発明の限定理由について詳細に説
明する。始めに、全組織中のマルテンサイト組織の面積
率、レール鋼の化学成分、ベイナイト組織とマルテンサ
イト組織の混合組織の必要範囲と硬さ、およびレール熱
処理製造方法を上記請求範囲に限定した理由について詳
細に説明する。
【0018】(1)全組織中のマルテンサイト組織の面
積率:まず、全組織中のマルテンサイト組織の面積率を
ある一定の範囲に限定した理由について説明する。マル
テンサイト組織の面積率が2%未満になると、ベイナイ
ト組織を主体とするレール鋼の強度を向上させる効果が
ほとんど認められず、レールの破壊靭性値がほとんど向
上せず、レールの耐破壊性が向上しない。またマルテン
サイト組織の面積率が50%を超えると、耐摩耗性の低
いマルテンサイト組織の増加により、レール頭部の耐摩
耗性が著しく損なわれ、レールの使用寿命が低下する。
これらの理由により、全組織中のマルテンサイト組織の
面積率を2〜50%の範囲に限定した。なお、レール鋼
の耐ころがり疲労損傷性と耐破壊性を最も向上させるに
は、耐摩耗性を十分に確保する観点から、全組織中のマ
ルテンサイト組織の面積率を10〜40%の範囲にする
ことが最も望ましい。
【0019】また、本発明レール鋼の金属組織は、ベイ
ナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織であること
が望ましが、その製造方法によっては微量なパーライト
組織やフェライト組織が混入することがある。しかし、
上記の混合組織中に微量なパーライト組織やフェライト
組織が混入しても、レール鋼の耐ころがり疲労損傷性や
耐破壊性には大きな影響を及ぼさないため、本発明レー
ルの金属組織としては若干の上記記述の組織の混在も含
んでいる。
【0020】(2)レール鋼の化学成分:次に、本発明
においてレールの化学成分を上記のように限定した理由
について説明する。なお、単位は質量%である。Cは、
ベイナイト組織の強度と耐摩耗性を確保するための必須
元素であり、さらに、マルテンサイト組織の硬さを増加
させる元素であるが、0.15%未満では、混合組織中
にフェライト組織が多量に生成し、レール鋼に必要とさ
れる強度や耐摩耗性を確保することが難しくなる。また
0.50%を超えると、焼入れ性が過剰に向上し、混合
組織中にマルテンサイト組織が多量に生成し、レール鋼
の耐摩耗性が低下するため、C量を0.15〜0.50
%に限定した。
【0021】Siは、ベイナイト組織中のフェライト基
地への固溶体硬化により強度を向上させ、ベイナイト組
織の強度を確保するための必須元素であるが、0.05
%未満ではその効果がほとんど期待できず、ころがり面
に塑性変形起因の表面損傷が発生し、レール鋼の耐ころ
がり疲労損傷性が低下する。また2.00%を超える
と、レール熱間圧延時に表面疵が発生し易くなること
や、ベイナイト組織の変態速度が大きく低下し、多量の
マルテンサイト組織が生成してレール鋼の耐摩耗性が低
下するため、Si量を0.05〜2.00%に限定し
た。
【0022】Mnは、ベイナイト変態の促進効果により
ベイナイト組織を安定的に生成せる元素であり、同時に
焼入れ性の向上によりベイナイト変態温度を低下させ、
ベイナイト組織の硬さを増加させる元素であるが、Mn
量が0.10%未満ではその効果が微弱であり、ベイナ
イト組織の硬さを増加させることが困難となり、ころが
り面に塑性変形起因の表面損傷が発生し、耐ころがり疲
労損傷性が低下する。さらに、添加元素の組合わせによ
ってはフェライト組織が多量に生成し、レール鋼の耐摩
耗性が低下する。また3.00%を超えると、Siと同
様にベイナイト組織の変態速度が低下し、多量のマルテ
ンサイト組織が生成し、レール鋼の耐摩耗性が大きく低
下することから、Mn量を0.10〜3.00%に限定
した。
【0023】Crは、焼入性の向上によりベイナイト変
態温度を低下させ、同時にベイナイト組織中の炭化物に
固溶し、ベイナイト組織を強化するために重要な元素で
あるが、0.10%未満ではその効果が微弱であり、ベ
イナイト組織の硬さを増加させることが困難となり、こ
ろがり面に塑性変形起因の表面損傷が発生し、耐ころが
り疲労損傷性が低下する。また3.00%を超えると、
Mnと同様にベイナイト組織の変態速度が低下し、多量
のマルテンサイト組織が生成してレールの耐摩耗性が大
きく低下することから、Cr量を0.10〜3.00%
に限定した。
【0024】また、上記の成分組成で製造されるレール
は、ベイナイト組織の安定化や強化による耐ころがり疲
労損傷性の確保、溶接部熱影響部の軟化防止、ベイナイ
ト組織の延性や靱性の改善、混合組織中に生成する微視
組織の制御を図る目的で、Mo,Ni,Cu,V,N
b,Ti,Mg,Ca,Bの元素を必要に応じて添加す
る。
【0025】ここでMoは、ベイナイト変態の安定化を
図り、さらに、ベイナイト変態温度の低下によりベイナ
イト組織の強化を図る。Ni,Cuは、ベイナイト変態
温度の低下、ベイナイト組織の基地フェライトへの固溶
強化により、ベイナイト組織の強化を図る。V,Nb
は、熱間圧延後の冷却課程において生成した炭化物や窒
化物により、ベイナイト組織の強度を図る元素であると
同時に、Ac1 点以下の温度域に再加熱された熱影響部
において炭化物を生成させ、溶接継ぎ手部熱影響部の硬
度低下の防止を図ることが主な添加目的である。
【0026】またTiは、レール圧延加熱時のオーステ
ナイト結晶粒の微細化を図り、ベイナイト組織の延性や
靱性の改善を図る。Mg,Caは、微細な酸化物や硫化
物の生成させることによりMnSを微細分散させ、ベイ
ナイト変態の促進と微細化により、ベイナイト組織の延
性や靭性を向上させる。Bは、旧オーステナイト粒界か
ら生成する初析フェライト組織の生成を抑制し、レール
鋼の耐摩耗性を安定化を図ることが主な添加目的であ
る。
【0027】それらの成分の個々について、以下に詳細
に説明する。Moは、Mnと同様に、ベイナイト変態の
促進効果によりベイナイト組織を安定的に生成させる元
素であり、同時に焼入れ性の向上によりベイナイト変態
温度を低下させ、ベイナイト組織の硬さを向上させる元
素であるが、0.01%未満ではその効果が十分でな
く、ベイナイト組織の安定化や強化が図れない。また
1.00%を超えると、Mn,Crと同様にベイナイト
組織の変態速度が低下し、多量のマルテンサイト組織が
生成してレールの耐摩耗性が大きく低下することから、
Mo量を0.01〜1.00%に限定した。
【0028】Niは、オーステナイトを安定化させる元
素であり、ベイナイト変態温度を低下させ、ベイナイト
組織の硬さを向上させる元素であると同時に、ベイナイ
ト組織中のフェライト基地へ固溶強化により、ベイナイ
ト組織を強化する元素であるが、0.05%未満ではそ
の効果が著しく小さく、ベイナイト組織の強化が図れな
い。また2.00%を超えて添加すると、ベイナイト組
織の変態速度が低下し、多量のマルテンサイト組織が生
成してレールの耐摩耗性が大きく低下することから、N
i量を0.05〜2.00%に限定した。
【0029】Cuは、Niと同様にオーステナイトを安
定化させる元素であり、ベイナイト変態温度を低下さ
せ、ベイナイト組織の硬さを向上させる元素であると同
時に、ベイナイト組織中のフェライト基地へ固溶強化に
より、ベイナイト組織を強化する元素であるが、その効
果は0.05〜1.00%の範囲で最も大きく、また
1.00%を超えると赤熱脆化を生じやすくなることか
ら、Cu量を0.05〜1.00%に限定した。
【0030】Vは、CまたはNと結合して、熱間圧延後
の冷却課程においてVの炭化物やVの窒化物を形成し、
ベイナイト組織中のフェライト基地に析出することによ
り、ベイナイト組織の強化を図る元素であると同時に、
Ac1 点以下の温度域に再加熱された熱影響部において
Vの炭化物を生成させ、溶接継ぎ手部熱影響部のベイナ
イト組織の硬度低下を防止するのに有効な成分である
が、0.01%未満ではその効果が十分に期待できず、
0.30%を超えて添加すると、多量のVの炭化物が生
成してレールの延性や靭性が低下することから、V量を
0.01〜0.30%に限定した。
【0031】Nbは、Vと同様に、熱間圧延後の冷却課
程においてNbの炭化物やNbの窒化物を形成し、ベイ
ナイト組織中のフェライト基地に析出することにより、
ベイナイト組織の強化を図る元素であると同時に、Ac
1 点以下の温度域に再加熱された熱影響部においてNb
の炭化物を生成させ、溶接継ぎ手部熱影響部のベイナイ
ト組織の硬度低下を防止するのに有効な成分であるが、
0.005%未満ではその効果が十分に期待できず、ま
た0.05%を超える過剰な添加を行うと、Nbの金属
間化合物や粗大析出物が生成してレールの延性や靭性を
低下させることから、Nb量を0.005〜0.050
%に限定した。
【0032】Tiは、溶解・凝固時に析出したTiの窒
化物がレール圧延時加熱の高温でも溶解しないことを利
用して、レール圧延加熱時のオーステナイト結晶粒の微
細化を図り、ベイナイト組織の延性や靱性の改善に寄与
する元素であるが、0.005%未満ではこれらの効果
が十分に発揮されず、また0.050%を超えて添加す
ると、粗大な窒化物(TiN)が生成してレールの延性
や靭性が低下すると同時に、レール使用中の疲労損傷の
起点となり、レールの使用寿命が低下することから、T
i量を0.005〜0.050%に限定した。
【0033】Mgは、OまたはSやAl等と結合して微
細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱において結
晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細化を図
り、ベイナイト組織の延性や靭性を向上させるのに有効
な元素である。さらに、MgO,MgSがMnSを微細
に分散させ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成してベ
イナイト変態を促進させ、その結果ベイナイト組織を微
細化することにより、延性や靭性を向上させるのに有効
な元素である。しかし、0.0001%未満ではその効
果は弱く、0.0300%を超えて添加すると、Mgの
粗大酸化物が生成してレール延性や靭性を劣化させるた
め、Mg量を0.0001〜0.0300%に限定し
た。
【0034】Caは、Sとの結合力が強くCaSとして
硫化物を形成し、さらにCaSがMnSを微細に分散さ
せ、MnSの周囲にMnの希薄帯を形成し、ベイナイト
変態を促進させ、その結果ベイナイト組織を微細化する
ことにより、延性や靭性を向上させるのに有効な元素で
ある。しかし0.0001%未満ではその効果は弱く、
0.0150%を超えて添加すると、Caの粗大酸化物
が生成してレール延性や靭性を劣化させるため、Ca量
を0.0001〜0.0150%に限定した。
【0035】Bは、旧オーステナイト粒界から生成する
初析フェライト組織の生成を抑制し、レール鋼の耐摩耗
性を安定化する元素である。しかし0.0001%未満
ではその効果は弱く、レール鋼の耐摩耗性への寄与が認
められない。また0.0050%を超えて添加すると、
オーステナイト粒界に粗大なBの窒化物や炭化物が生成
し、レール鋼の延性や靭性が大きく低下することから、
B量を0.0001〜0.0050%に限定した。
【0036】(3)ベイナイト組織とマルテンサイト組
織の混合組織の必要範囲:次に、ベイナイト組織とマル
テンサイト組織の混合組織の混合組織が必要な領域を、
レール頭部のある一定の領域に限定した理由について説
明する。レール頭部において、上記混合組織の存在する
領域が、頭部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起
点として20mm未満では、レール頭部において耐ころ
がり疲労損傷性および耐破壊性が必要とされる領域とし
ては小さく、十分なレール使用寿命の改善効果が得られ
ないためである。また、上記混合組織の範囲が頭部コー
ナー部および頭頂部の該頭部表面を起点として深さ30
mm以上であれば、寿命改善効果がさらに増し、より望
ましい。
【0037】ここで、図1に本発明の耐ころがり疲労損
傷性および耐破壊性に優れたレールの頭部断面表面位置
の呼称を示す。レール頭部において1は頭頂部、2は頭
部コーナー部であり、頭部コーナー部2の一方は車輪と
主に接触するゲージコーナー(G.C.)部である。こ
こで、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織
は、少なくとも図中の斜線部に存在すれば、十分なレー
ル使用寿命の改善が図れる。
【0038】(4)ベイナイト組織とマルテンサイト組
織の混合組織の硬さ:次に、上記レール頭部の混合組織
の硬さをHv240〜500の範囲に限定した理由につ
いて説明する。硬さがHv240未満になると、鉄道用
レールの頭部に要求されている基本的な強度を確保する
ことが困難となり、さらに貨物鉄道では、頭部のG.
C.部にレールと車輪の強い接触によるメタルフローが
生成し、これに伴いきしみ割れやフレーキング損傷など
の表面損傷が発生しやすくなるため、レール頭部の硬さ
をHv240以上に限定した。また硬さがHv500を
超えると、混合組織の延性が著しく低下し、レール頭部
にスポーリング損傷などの表面損傷が発生しやすくなる
ことや、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の界面を
起点とする剥離損傷が発生しやすいことから、レール頭
部の硬さをHv240〜500の範囲に限定した。
【0039】(5)レールの熱処理製造方法:レール製
造時の加速冷却前の温度条件、加速冷却条件を上記のよ
うに限定した理由について詳細に説明する。まず、レー
ル頭部を加速冷却する前の温度条件について説明する。
ベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織を安定
的に得るためには、少なくともレール頭部全体をオース
テナイト化する必要がある。その温度は、圧延直後のレ
ール頭部においてはAr1 点以上の温度域であり、ま
た、再加熱されたレール頭部ではAc1 点+30℃以上
の温度域である。なお、温度の上限は特に規定しない
が、あまり高温度にすると液相が現れてオーステナイト
相が不安定になるため、温度は実質1450℃が上限と
なる。
【0040】ここで、上記の「レール頭部」とは、図1
に示すレール頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部
(符号:2)を含む図中の斜線部分である。以下に説明
する加速冷却条件は、図1に示すレール頭頂部(符号:
1)および頭部コーナー部(符号:2)の頭部表面から
深さが2〜5mmの範囲で温度の測定を行えば、レール
頭部の少なくとも深さ20mmの範囲を代表させること
ができ、少なくとも図1に示す斜線部分の金属組織や硬
さを制御することができる。
【0041】次に、レール頭部を上記温度域から0.5
〜30℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの
頭部が500〜250℃に達した時点で加速冷却を停止
し、その後、常温度域まで放冷する方法において、加速
冷却速度、加速冷却停止温度を上記のように限定した理
由について説明する。まず、加速冷却停止温度までの加
速冷却速度を0.5〜30℃/sec の範囲に限定した理
由について説明する。
【0042】上記成分系において、0.5℃/sec 未満
で加速冷却すると、高温度域で強度の低いフェライト組
織が生成し、これに加えて硬さの低いベイナイト組織が
多く生成し、レール鋼の強度が低下し、鉄道用レールの
頭部に要求されている強度を確保することが困難とな
り、塑性変形起因のフレーキング損傷等の表面損傷が発
生しやすくなる。また、30℃/sec を超えて加速冷却
すると、加速冷却後の放冷域においてレール内部から大
きな復熱が発生する。このため、レール頭部では復熱中
の高温度域でベイナイト変態が始まり、レール頭部の硬
さが低下し、鉄道用レールの頭部に要求されている基本
的な強度を確保することが困難となり、塑性変形起因の
表面損傷の発生を防止することが困難となる。さらに、
ベイナイト変態の促進により十分な量のマルテンサイト
組織が得られず、レール鋼の耐破壊性が向上しない。こ
れら理由により、この加速冷却速度範囲を0.5〜30
℃/sec 囲に限定した。
【0043】次に、オーステナイト域温度からの加速冷
却停止温度を500〜250℃の範囲に限定した理由に
ついて説明する。上記成分系において、500℃を超え
て冷却を停止すると、加速冷却直後の高温度域でベイナ
イト変態が始まり、硬さの低いベイナイト組織が多く生
成し、塑性変形起因のフレーキング損傷等の表面損傷が
発生しやすくなる。さらに、ベイナイト変態の促進によ
り十分な量のマルテンサイト組織が得られず、レール鋼
の耐破壊性が向上しない。また250℃未満まで冷却す
ると、成分系によっては加速冷却中にマルテンサイト組
織が多量に生成する。さらに、加速冷却後の放冷域にお
いもベイナイト変態が進行せず、残留した多量のオース
テナイト組織がマルテンサイト組織に変態し、レール鋼
の耐摩耗性が著しく低下する。これら理由により、オー
ステナイト域温度からの加速冷却停止温度を500〜2
50℃の範囲に限定した。
【0044】次に、オーステナイト域温度からの加速冷
却を停止した後、15〜600sec放冷した後、常温
度域まで冷却速度1℃/sec 以上で加速冷却を行う理由
について説明する。合金添加量が比較的少ない成分系に
おいては、ベイナイト変態速度が著しく早い。その結
果、オーステナイト域温度からの加速冷却を停止した後
に常温度域まで放冷すると、ベイナイト組織の生成量が
過剰となり、十分な量のマルテンサイト組織が得られず
レール鋼の耐破壊性が向上しない場合がある。また、常
温度域まで放冷すると、レール製造時の外気温度の違い
によりマルテンサイト組織の生成量にばらつきが生じる
場合がある。そこで、ベイナイト組織とマルテンサイト
組織の混合組織を安定的に得る目的で上記の熱処理を行
う。
【0045】まず、加速冷却後の放冷時間の限定理由に
ついて説明する。放冷時間15sec未満では、ベイナ
イト組織の生成時間としては短く、その後の加速冷却に
より多量なマルテンサイト組織が生成し、レール鋼の耐
摩耗性が著しく低下する。また放冷時間が600sec
を超えると、成分系によってはベイナイト組織の生成量
が過剰となり、十分な量のマルテンサイト組織が得られ
ず、レール鋼の耐破壊性が向上しない。これら理由によ
り、加速冷却後の放冷時間を15〜600secの範囲
に限定した。
【0046】次に、放冷後の冷却速度の限定理由につい
て説明する。放冷後の冷却速度が1℃/sec 満では、成
分系によっては冷却途中にベイナイト組織が過剰に生成
し、十分な量のマルテンサイト組織が得られず、レール
の耐破壊性が向上しない。この理由により、放冷後の加
速冷却速度を5℃/sec 以上に限定した。なお、上記請
求項に示した常温度域とは、上記成分範囲においてマル
テンサイト組織の変態が大部分終了する10〜30℃の
温度範囲である。
【0047】すなわち、本発明において、この熱間圧延
ままのAr1 点以上の温度を保有する鋼レール、あるい
は熱処理する目的でAc1 点+30℃以上の温度に加熱
された鋼レールにおいて、少なくともレール頭部を、そ
れぞれの温度領域から0.5〜30℃/secの冷却速度で
加速冷却し、前記鋼レールの頭部が500〜250℃に
達した時点で加速冷却を停止し、その後常温度域まで放
冷するか、または15〜600sec放冷した後、常温
度域まで冷却速度1℃/sec 以上で加速冷却することに
よって、高温度域でのベイナイト組織の生成を抑制し、
低温度域でベイナイト組織とマルテンサイト組織を安定
的に生成させ、ある一定範囲の硬さを有したベイナイト
組織とマルテンサイト組織の混合組織を得ることが可能
となる。
【0048】なお、上記加速冷却は、少なくとも耐ころ
がり疲労損傷性および耐破壊性が主に要求されており、
ベイナイト組織とマルテンサイト組織の生成量を正確に
制御しなければならないレール頭部について行うことが
前提である。しかし、熱処理時のレールの曲がりや熱処
理後の残留応力を制御するには、レール頭部に加えてレ
ール柱部や底部も同様な熱処理を行うことが望ましい。
【0049】また、加速冷却時の冷却媒体としては、所
定の冷却速度を得るため、空気、ミスト、水・空気混合
冷媒、あるいはこれらの組合わせ、および、油、熱湯、
ポリマー+水、ソルトバスへのレール頭部あるいは全体
を浸漬等を用いることが望ましい。
【0050】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。表
1に、本発明レール鋼の化学成分、頭部のミクロ組織お
よびその面積率、頭部硬さ、部熱処理条件を示す。また
表1には、図2に示すころがり疲労損傷試験機による水
潤滑ころがり疲労試験結果、図3に示す破壊靭性試験結
果も併記した。また表2に、比較レール鋼の化学成分、
頭部のミクロ組織およびその面積率、頭部硬さ、部熱処
理条件を示す。また表2には、図2に示すころがり疲労
損傷試験機による水潤滑ころがり疲労試験結果、図3に
示す破壊靭性試験結果も併記した。さらに図4に、本発
明レール鋼(符号D〜F:0.3mass%C、符号H〜
J:0.4mass%C)と、比較レール鋼(符号T、V、
W:0.3mass%C、符号:R、U、X:0.4mass%
C)全組織中のマルテンサイト組織の面積率と破壊靭性
値(K1C)の関係を示す。なお、レールの構成は以下の
とおりである。
【0051】・本発明レール鋼(全12本) 符号:A
〜L 化学成分が上記限定範囲内であり、その金属組織がベイ
ナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織からなり、
任意の断面において、全組織中のマルテンサイト組織の
面積率の範囲が2〜50%であり、さらに、前記鋼レー
ルの頭部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起点と
して、少なくとも深さ20mmまでの範囲において、そ
の硬さがHv240〜500の範囲であることを特徴と
する、耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れたレ
ール。 ・比較レール鋼(全12本) 符号:M〜X 符号M〜O:化学成分が上記限定範囲外であり、現在旅
客鉄道で使用されているパーライト組織の比較レール鋼
(3本)。 符号P〜R:化学成分が上記限定範囲外である比較レー
ル鋼(3本)。 符号S〜X:化学成分は上記限定範囲内であるが、熱処
理条件が上記限定範囲外である比較レール鋼(6本)。
【0052】各種試験条件は下記のとおりである。 ・ころがり疲労試験条件 試験機 :ころがり疲労試験機(図2参照) 試験片形状:円盤状試験片 (レール 外径:200mm、レール材断面形状:60
Kレールの1/4モデル) (車輪 外径:200mm、車輪材断面形状 :円弧
踏面車輪の1/4モデル) 試験荷重 :1.0トン(ラジアル荷重) 雰囲気 :乾燥+水潤滑(60cc/min ) 回転数 :乾燥;100rpm、水潤滑;300rp
m 繰返し回数:0〜5000回まで乾燥状態、その後、水
潤滑により損傷発生および摩耗限界まで(損傷が発生し
ない場合は200万回で試験を中止)。 ・破壊靭性試験条件 試験片形状 :図3参照(単位mm) ノッチ先端形状:疲労き裂 試験条件 :3点曲げ(曲げスパン長64mm) 試験温度 :−45℃
【0053】表1、2に示したように、本発明レール鋼
は、C,Si,Mn,Crの添加元素の適切な選択によ
り、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織と
することにより、現行のパーライト組織のレール鋼(比
較レール鋼、符号:M〜O)で問題となっていたダーク
スポット損傷等のころがり疲労損傷の発生を防止し、同
時に、図4に示したように、鋼の炭素量に関係なく、適
量なマルテンサイト組織の存在により破壊靭性値を向上
させ、耐摩耗性の低下を引き起こさず、レールの耐破壊
性を向上させることができた。さらに、頭部熱処理時の
加速冷却速度、加速冷却停止温度、加速冷却後の冷却を
適正に選ぶことにより、安定的にベイナイト組織とマル
テンサイト組織の混合組織とすることができた。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、
C,Si,Mn,Crの添加元素を適切に選択して、ベ
イナイト組織とマルテサイト組織の混合組織とすること
により、現行のパーライト組織のレール鋼で問題となっ
ていたダークスポット損傷等のころがり疲労損傷の発生
を防止し、同時に適量のマルテンサイト組織の存在によ
り破壊靭性値を向上させ、レールの耐破壊性も向上させ
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レール頭部断面表面位置の呼称とレール頭部に
おいて、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合組
織の必要範囲を示す図。
【図2】ころがり疲労損傷試験機の概要図。
【図3】破壊靭性試験片の形状を示す図。
【図4】本発明レール鋼(符号D〜F:0.3mass%
C、符号H〜J:0.4mass%C)と、比較レール鋼
(符号T,V,W:0.3mass%C、符号:R,U,
X:0.4mass%C)全組織中の、マルテンサイト組織
の面積率と破壊靭性値(K1C)の関係を示す図。
【符号の説明】
1:頭頂部 2:頭部コーナー部 3:車輪試験片 4:レール円盤試験片 5:モーター(車輪側) 6:モーター(レール側) 7:水潤滑装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K042 AA04 BA02 BA03 BA04 CA01 CA02 CA03 CA05 CA06 CA08 CA09 CA10 CA12 CA13 DA06 DE01 DE03 DE05 DE06

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼レールにおいて、その金属組織がベイ
    ナイト組織とマルテンサイト組織の混合組織からなり、
    前記鋼レールの任意の断面において、全組織中のマルテ
    ンサイト組織の面積率の範囲が2〜50%であることを
    特徴とする耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れ
    たレール。
  2. 【請求項2】 質量%で、 C :0.15〜0.50%、 Si:0.05〜2.00%、 Mn:0.10〜3.00%、 Cr:0.10〜3.00% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼
    レールであって、その金属組織がベイナイト組織とマル
    テンサイト組織の混合組織からなり、さらに、前記鋼レ
    ールの任意の断面において、全組織中のマルテンサイト
    組織の面積率の範囲が2〜50%であることを特徴とす
    る耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れたレー
    ル。
  3. 【請求項3】 質量%でさらに、 Mo:0.01〜1.00% を含有することを特徴とする請求項2に記載の耐ころが
    り疲労損傷性および耐破壊性に優れたレール。
  4. 【請求項4】 質量%でさらに、 Ni:0.05〜2.00%、 Cu:0.05〜1.00% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項2
    または3に記載の耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性
    に優れたレール。
  5. 【請求項5】 質量%でさらに、 V :0.01〜0.30%、 Nb:0.005〜0.050% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項2
    〜4のいずれか1項に記載の耐ころがり疲労損傷性およ
    び耐破壊性に優れたレール。
  6. 【請求項6】 質量%でさらに、 Ti:0.005〜0.050% を含有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1
    項に記載の耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れ
    たレール。
  7. 【請求項7】 質量%でさらに、 Mg:0.0001〜0.0300%、 Ca:0.0001〜0.0150% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項2
    〜6のいずれか1項に記載の耐ころがり疲労損傷性およ
    び耐破壊性に優れたレール。
  8. 【請求項8】 質量%でさらに、 B :0.0001〜0.0050% を含有することを特徴とする請求項2〜7のいずれか1
    項に記載の耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れ
    たレール。
  9. 【請求項9】請求項1〜8のいずれか1項に記載の鋼レ
    ールにおいて、頭部コーナー部および頭頂部表面を起点
    として少なくとも深さ20mmの範囲の硬さが、Hv2
    40〜500の範囲であることを特徴とする耐ころがり
    疲労損傷性および耐破壊性に優れたレール。
  10. 【請求項10】請求項2〜9のいずれか1項に記載の成
    分を含有する鋼片をレール形状に熱間圧延した後、熱間
    圧延ままのAr1 点以上の温度の鋼レール、あるいは熱
    処理する目的でAc1 点+30℃以上の温度に加熱され
    た鋼レールにおいて、少なくともレール頭部を、オース
    テナイト域温度から0.5〜30℃/sec の冷却速度で
    加速冷却し、前記鋼レールの頭部の温度が500〜25
    0℃に達した時点で加速冷却を停止し、その後、常温度
    域まで放冷することを特徴とする、請求項1に記載の組
    織からなる耐ころがり疲労損傷性および耐破壊性に優れ
    たレールの製造法。
  11. 【請求項11】請求項2〜9のいずれか1項に記載の成
    分を含有する鋼片をレール形状に熱間圧延した後、熱間
    圧延ままのAr1 点以上の温度の鋼レール、あるいは熱
    処理する目的でAc1 点+30℃以上の温度に加熱され
    た鋼レールにおいて、少なくともレール頭部を、オース
    テナイト域温度から0.5〜30℃/sec の冷却速度で
    加速冷却し、前記鋼レールの頭部の温度が500〜25
    0℃に達した時点で加速冷却を停止し、その後、15〜
    600secで放冷した後に、常温度域まで冷却速度1
    ℃/sec 以上で加速冷却することを特徴とする、請求項
    1に記載の組織からなる耐ころがり疲労損傷性および耐
    破壊性に優れたレールの製造法。
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