JP2000290752A - 耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイト系レールおよびその製造法 - Google Patents

耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイト系レールおよびその製造法

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JP2000290752A
JP2000290752A JP2000017517A JP2000017517A JP2000290752A JP 2000290752 A JP2000290752 A JP 2000290752A JP 2000017517 A JP2000017517 A JP 2000017517A JP 2000017517 A JP2000017517 A JP 2000017517A JP 2000290752 A JP2000290752 A JP 2000290752A
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Masaharu Ueda
正治 上田
Takehide Senuma
武秀 瀬沼
Daisuke Hiragami
大輔 平上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼の炭素量をある一定値以上とし、多量な炭
化物が微細に分散した焼戻しマルテンサイト組織におい
て、その組織の炭化物のサイズとその占有面積をある一
定範囲内に制御することにより、レールの耐摩耗性の向
上を図り、同時にレール鋼に必要とされる耐表面損傷性
を確保する。その結果、重荷重鉄道に要求される耐摩耗
性を向上させた高強度レールを低コストで提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.85〜2.00%を
含有し、レール頭部において、少なくとも一部が焼戻し
マルテンサイト組織を呈する鋼レールであって、前記マ
ルテンサイト組織の任意断面において、長径が100〜
1000nmの範囲である炭化物が占有する面積の合計
が、前記任意断面の面積の20〜80%であることを特
徴とする耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイト系レー
ル。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重荷重鉄道に要求
される耐摩耗性を向上させた焼戻しマルテンサイト系レ
ールおよびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】海外の重荷重鉄道では、鉄道輸送の高効
率化の手段として、列車速度の向上や列車積載重量の増
加が図られている。このような鉄道輸送の効率化はレー
ル使用環境の過酷化を意味し、レール材質の一層の改善
が要求されるに至っている。具体的には、曲線区間に敷
設されたレールでは、G.C.(ゲージ・コーナー)部
や頭側部の摩耗が急激に増加し、レールの使用寿命の点
で問題視されるようになった。
【0003】しかしながら、最近の高強度化熱処理技術
の進歩により、共析炭素鋼を用いた微細パーライト組織
を呈した下記に示すような高強度(高硬度)レールが発
明され、重荷重鉄道の曲線区間のレール寿命を飛躍的に
改善してきた。 頭部がソルバイト組織、または、微細なパーライト
組織の超大荷重用の熱処理レール(特公昭54−254
90号公報)。 圧延終了後あるいは、再加熱したレール頭部をオー
ステナイト域温度から850〜500℃間を1〜4℃/s
ecで加速冷却する1274.9MPa(130kgf/mm2 )以
上の高強度レールの製造法(特許第1597914
号)。 これらのレールの特徴は、共析炭素含有鋼(炭素量:
0.7〜0.8%)による微細パーライト組織を呈する
高強度レールであり、その目的とするところは、パーラ
イト組織中のラメラ間隔を微細化し、耐摩耗性を向上さ
せるところにあった。
【0004】近年、海外の重荷重鉄道ではより一層の鉄
道輸送の高効率化のために、貨物の高積載化を強力に進
めており、特に急曲線のレールでは上記開発のレールを
用いてもG.C.部や頭側部の耐摩耗性が十分確保でき
ず、摩耗によるレール寿命の低下が問題となってきた。
このような背景から、現状の共析炭素鋼の高強度レール
以上の耐摩耗性を有するレールの開発が求められるよう
になってきた。
【0005】これらの問題を解決するため、本発明者ら
は下記に示すようなレールを開発した。 過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用い
て、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト相の厚
さを増加させた耐摩耗性に優れたレール(特開平8−1
44061号公報)。 過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用い
て、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト相の厚
さを増加させ、同時に硬さを制御した耐摩耗性に優れた
レール(特開平8−246100号公報)。 これらのレールの特徴は、鋼の炭素量を増加し、パーラ
イトラメラ中の耐摩耗性に優れたセメタイト相の厚さを
増加させ、さらに、硬さを制御することによりパーライ
ト鋼の耐摩耗性を向上させるものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの過共
析鋼を用いたパーライト組織のレールでは、共析鋼を用
いたパーライト組織のレールと比べて耐摩耗性は向上す
るものの、より一層の耐摩耗性の改善を狙って鋼中の炭
素量をさらに増加させると、レール製造時にオーステナ
イト粒界に初析セメンタイト組織が生成し、耐摩耗性に
有効なパーライトラメラ中のセメンタイト相の厚さを増
加させることが困難となり、耐摩耗性が十分に向上しな
いことがあった。そこで、過共析鋼を用いたパーライト
組織のレールよりも安定的に耐摩耗性を向上させる新た
な材料開発が求められるようになった。すなわち本発明
は、重荷重鉄道に要求される耐摩耗性を向上させること
を目的とした高強度レールおよびその製造法を提供する
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するものであって、その要旨とするところは次の通りで
ある。 (1)質量%で、C:0.85〜2.00%を含有し、
レール頭部において、少なくとも一部が焼戻しマルテン
サイト組織を呈する鋼レールであって、前記マルテンサ
イト組織の任意断面において、長径が100〜1000
nmの範囲である炭化物が占有する面積の合計が、前記
任意断面の面積の20〜80%であることを特徴とする
耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイト系レール。
【0008】(2)質量%で、 C :0.85〜2.00%、 Si:0.10〜2.00% Mn:0.10〜3.00% を含有し、さらに必要に応じて、 Cr:0.05〜3.00%、 Mo:0.01〜1.00%、 V :0.01〜0.50%、 Nb:0.002〜0.050%、 Ti:0.0050〜0.0500%、Cu:0.05〜1.00%、 Ni:0.05〜2.00%、 B:0.0001〜0.0050%、 Mg:0.0010〜0.0100% を含有し、レール頭部において、少なくとも一部が焼戻
しマルテンサイト組織を呈する鋼レールであって、前記
マルテンサイト組織の任意断面において、長径が100
〜1000nmの範囲である炭化物が占有する面積の合
計が、前記任意断面の面積の20〜80%であることを
特徴とする耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイト系レ
ール。
【0009】(3)上記記載の成分を含有した鋼をレー
ルの形状に熱間圧延し、Ar1 点以上の温度を保有した
ままただちに、あるいは熱処理する目的でAc1 点+3
0℃以上の温度に加熱した後、鋼レールの頭部を、5〜
50℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭
部が200〜−50℃に達した時点で加速冷却を停止
し、加速冷却終了後、さらにレールの頭部を400〜6
50℃の範囲に加熱し、その加熱温度範囲で1〜60分
間保持し、その後、常温までを冷却することを特徴とす
る耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイト系レールの製
造法。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。まず、本発明者らはレール鋼の摩耗機構を解明し
た。その結果、現行のパーライト組織のレールのころが
り面直下では、パーライト組織のラメラが破砕され、フ
ェライト相とセメンタイト相が細粒化していることが明
らかになった。詳細な調査の結果、ころがり面直下で
は、フェライト相とセメンタイト相の細粒化による強化
に加えて、強加工やころがり面の発熱により、フェライ
ト相がセメンタイト相から移動し、溶解または再析出し
た[C]により強化され、耐摩耗性が確保されているこ
とが確認された。さらに、パーライト組織中のセメンタ
イト相(炭化物)の密度が増加すると、フェライト相が
より一層強化され、さらに、耐摩耗性が大きく向上する
ことが明らかとなった。
【0011】このような観察結果から、耐摩耗性を向上
させる方法として、本発明者らは、鋼の生地組織をフェ
ライトとし、フェライト中に炭化物を微細に分散させ、
同時に、その密度(量)を増加させ、炭化物密度の向上
とこれにともなうフェライト相の強化により、耐摩耗性
を向上させる方法を検討した。その結果、鋼の炭素量を
ある一定量以上とし、さらに、生地組織を炭素を過飽和
に固溶したフェライトの一種であるマルテンサイト組織
とし、これを熱処理により多量な炭化物を微細分散させ
た焼戻しマルテンサイト組織とすることにより、耐摩耗
性がより一層向上することを実験室的に確認した。
【0012】さらに、焼戻しマルテンサイト組織におい
て、耐摩耗性をより一層向上させ、同時に、レール鋼と
して必要とされる、耐表面損傷性を確保することが可能
な炭化物の析出状態を検討した。その結果、炭化物のサ
イズとその密度をある一定範囲内に納めることにより、
レール鋼として必要とされる耐表面損傷性を損なわず、
耐摩耗性の向上が可能になることを見出した。
【0013】これらの発明に加えて、本発明者らは、レ
ール頭部に上記の焼戻しマルテンサイト組織を安定的に
生成させる熱処理方法を実験により検討した。その結
果、本発明レール鋼のような高炭素の材料では、まず、
加速冷却時に炭化物が板状および塊状に生成するパーラ
イト組織やベイナイト組織などの生成を防止し、焼戻し
時に炭化物が微細に生成するマルテンサイト組織を安定
的に得るには、加速冷却時の冷却速度に一定の範囲が存
在することが明らかとなった。さらに、加速冷却後の焼
戻しにおいて、耐摩耗性に加えて、レール鋼に必要とさ
れる耐表面損傷性を確保することが可能な炭化物のサイ
ズとその密度を得るには、焼戻し時の加熱条件に一定の
範囲が存在することを見出した。
【0014】以上の結果から本発明者らは、鋼の炭素量
をある一定値以上とし、多量な炭化物が微細に分散した
焼戻しマルテンサイト組織において、その組織の炭化物
のサイズとその密度をある一定範囲内に制御することに
より、耐摩耗性が向上し、同時にレール鋼に必要とされ
る耐表面損傷性が確保されることを実験により見出し
た。さらに、上記の焼戻しマルテンサイト組織を安定的
に生成させる熱処理条件を実験により知見した。すなわ
ち本発明は、重荷重鉄道に要求される耐摩耗性を向上さ
せた高強度レールを低コストで提供することを目的とし
たものである。
【0015】次に、本発明の限定理由について詳細に説
明する。 (1)炭化物のサイズおよび任意断面においてその占有
面積 まず、焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物のサイズお
よび任意断面において、その占有面積を上記の請求範囲
に限定した理由について説明する。図1に、焼戻しマル
テンサイト組織の炭化物析出状態の一例を模式的に示
す。図1において、白抜き(長径の短い粒)および斜線
付き(長径の長い粒)で示した島状の部分が炭化物であ
る。また、本発明レール鋼において、炭化物の長径とは
図1に示した模式図のとおりである。
【0016】焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物のサ
イズは、焼戻しマルテンサイト組織の耐摩耗性や耐表面
損傷性を決定する重要な要素である。焼戻しマルテンサ
イト組織中の炭化物の長径が1000nmを超えると、
炭化物の粗大化により、不安定破壊が発生しやすくな
り、レール頭表面にスポーリング等の表面損傷が多く発
生するため、炭化物の長径を1000nm以下とした。
また、焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物の長径が1
00nm未満になると、耐摩耗性が高く、フェライト地
を強化して耐摩耗性に寄与する炭化物が、摩耗により焼
戻しマルテンサイト組織中のフェライト素地と一緒に取
り去られてしまい、耐摩耗性が確保できなくなるため、
炭化物の長径を100nm以上とした。
【0017】焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物(長
径100〜1000nm)の占有面積は、焼戻しマルテ
ンサイト組織の耐摩耗性、耐表面損傷性を決定する重要
な要素である。焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物の
占有面積が80%を超えると、焼戻しマルテンサイト組
織の延性が低下し、レール頭表面にスポーリング等の表
面損傷が多く発生することや、ころがり面での炭化物の
ミクロ的な破砕およびこれに伴う素地の剥離が進み、耐
摩耗性が低下する。さらに、レール自体の延性が低下す
るため、炭化物の占有面積を80%以下とした。また、
焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物の占有面積が20
%未満になると、炭化物の量が減少し、炭化物による焼
戻しマルテンサイト鋼のフェライ相への強化が不十分と
なり耐摩耗性が確保できないため、炭化物の占有面積を
20%以上とした。なお、焼戻しマルテンサイト組織の
耐摩耗性を最も向上させ、レールに必要とされる延性を
確保するには、炭化物の占有面積を50〜70%とする
ことがより望ましい。
【0018】焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物の大
きさおよびその占有面積の測定は、ナイタールおよびピ
クラールなど所定の腐食液で鋼をエッチングし、これら
を走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡で観察し、
各視野において各炭化物の長径を測定する。さらに、炭
化物の長径が100〜1000nmの炭化物を選び出
し、楕円近似を行ってその占有面積を求める。また、炭
化物の長径および炭化物の占有面積の算出については、
観察する視野によって炭化物の形態およびその密度にば
らつきがある場合が多いので、各鋼において最低限10
視野以上の観察を行い、その平均を算出することが望ま
しい。
【0019】(2)焼き戻しマルテンサイト組織の望ま
しい範囲 次に、上記焼戻しマルテンサイト組織の呈する望ましい
範囲を、頭部コーナー部および頭頂部の該頭部表面を起
点として深さ20mmの範囲に限定した理由について説
明する。20mm未満では、レール頭部に必要とされて
いる耐摩耗性領域としては小さく、十分な寿命改善効果
が得られないためである。また、前記焼戻しマルテンサ
イト組織を呈する範囲が頭部コーナー部および頭頂部の
該頭部表面を起点として深さ30mm以上であれば、寿
命改善効果がさらに増し、より望ましい。
【0020】ここで、図2に本発明の耐摩耗性に優れた
焼戻しマルテンサイト系レールの頭部断面表面位置での
呼称および耐摩耗性が必要とされる領域を示す。レール
頭部において1は頭頂部、2は頭部コーナー部であり、
頭部コーナー部2の一方は車輪と主に接触するゲージコ
ーナー(G.C.)部である。上記焼戻しマルテンサイ
ト組織は少なくとも図中の斜線内に配置されていれば、
レール使用寿命の向上が可能となる。
【0021】なお、本発明レールの金属組織は焼戻しマ
ルテンサイト組織であることが望ましが、その製造方法
によっては、焼戻しマルテンサイト組織中に残留オース
テナイト組織、焼戻しベイナイト組織、焼戻しパーライ
ト組織が混入することがある。しかし、焼戻しマルテン
サイト組織中にこれらの組織がある一定量混入しても、
レールの耐摩耗性等には大きな影響をおよぼさないた
め、本焼戻しマルテンサイト系レールの組織としては若
干の残留オーステナイト組織、焼戻しベイナイト組織、
焼戻しパーライト組織の混在も含んでいる。また、本焼
戻しマルテンサイト組織は、車輪とレールが主に接する
レール頭部表面近傍に配置することが望ましく、それ以
外の部分は焼戻しマルテンサイト以外の組織であっても
よい。
【0022】(3)レール鋼の化学成分 次に、レールの化学成分を上記の請求範囲に限定した理
由について説明する。Cは、焼戻しマルテンサイト組織
の炭化物密度を確保し、耐摩耗性を向上させるための必
須元素であるが、0.85%未満では、焼戻しマルテン
サイト組織中の炭化物密度が低下し、上記限定範囲の炭
化物密度の下限値を確保することが困難となる。これに
伴い、炭化物の溶解や析出によるフェライト地の強化が
不十分となり、耐摩耗性が低下する。また、2.00%
を超えると、焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物密度
が著しく増加し、上記限定範囲の炭化物密度の上限値を
確保することが困難となる。これに伴い、焼戻しマルテ
ンサイト組織の延性低下により、レール頭表面にスポー
リング等の表面損傷が多く発生する。これに加えて、加
速冷却時に残留オーステナイト組織が生成しやすくな
り、加速冷却後の加熱熱処理において、焼戻しマルテン
サイト組織の硬さが低下し、レール頭表面にメタルフロ
ーを起因としたきしみ割れやフレーキングなどの表面損
傷が多く発生しやすくなるため、C量を0.85〜2.
00%に限定した。
【0023】通常は、Si、Mnを以下の条件で含有さ
せる。Siは、焼入れ性を高め、焼戻しマルテンサイト
組織の強度(硬さ)を確保し、さらに、焼戻し軟化抵抗
を高め、焼戻しマルテンサイト組織の強度(硬さ)を確
保する元素であるが、0.10%未満ではその効果が期
待できない。また、2.00%を超えると、レール熱間
圧延時に表面疵が発生しやすくなることや、その効果が
飽和してしまうため、Si量を0.10〜2.00%に
限定した。
【0024】Mnは、焼入れ性を高め、焼戻しマルテン
サイト組織の強度(硬さ)を確保し、同時に、焼戻しマ
ルテンサイト組織中のセメンタイトに固溶して、焼戻し
軟化抵抗を高める元素であるが、0.10%未満ではそ
の効果が少なく、レールに必要とされる強度(硬度)を
確保することが困難となる。また、3.00%を超える
と、加速冷却時に残留オーステナイト組織が生成しやす
くなり、加速冷却後の加熱熱処理において、焼戻しマル
テンサイト組織の硬さが低下し、耐摩耗性が低下する。
さらに、レール頭表面にメタルフローを起因としたきし
み割れやフレーキングなどの表面損傷が多く発生するた
め、Mn量を0.10〜3.00%に限定した。
【0025】また、上記の成分組成で製造されるレール
は強度、延性、靭性、さらには溶接時の材料劣化を防止
する目的で、以下の元素を必要に応じて1種類または2
種以上を添加する。 Cr:0.05〜3.00%、 Mo:0.01〜1.00%、 V :0.01〜0.50%、 Nb:0.002〜0.050%、 Ti:0.0050〜0.0500%、Cu:0.05〜1.00%、 Ni:0.05〜2.00%、 B:0.0001〜0.0050%、 Mg:0.0010〜0.0100%。
【0026】ここで、CrとMoは焼戻しマルテンサイ
ト組織の強度(硬さ)を確保し、焼戻し軟化抵抗を高め
る。V、Nb、Tiは、焼戻しマルテンサイト組織の延
性、靭性を高め、同時に焼戻し軟化抵抗を高める。C
u、Niは焼戻しマルテンサイト組織の焼戻し軟化抵抗
を高める。Bは焼戻しマルテンサイト組織の強度(硬
さ)を確保する。Mgは焼戻しマルテンサイト組織の延
性、靭性の向上を図る。ことが主な添加目的である。
【0027】Crは、焼入れ性を高め、焼戻しマルテン
サイト組織の強度(硬さ)を確保し、Mnと同様に、結
果的にはマルテンサイト組織中のセメンタイトに固溶し
て、焼戻し軟化抵抗を高める元素であるが、0.05%
未満ではその効果が少なく、レールに必要とされる強度
(硬度)を確保することが困難となる。また、3.00
%を超えると、高炭素鋼では上記の効果が飽和してしま
うため、Cr量を0.05〜3.00%に限定した。
【0028】Moは、焼入れ性を高め、焼戻しマルテン
サイト組織の強度(硬さ)を確保し、同時に、マルテン
サイト組織中に独自の炭化物(Mo2 C)を形成し、2
次硬化により焼戻し時の軟化を防止する元素であるが、
0.01%未満ではその効果が十分でなく、レールに必
要とされる強度(硬度)を確保することが困難となる。
1.00%を超えると、Crと同様に高炭素鋼では上記
の効果が飽和してしまうため、Mo量を0.01〜1.
00%に限定した。
【0029】Vは、V炭化物、V窒化物を形成して、高
温度に加熱する熱処理が行われる際に結晶粒の成長を抑
制する作用によりオーステナイト粒を微細し、焼戻しマ
ルテンサイト組織の延性や靭性を向上させるのに有効な
元素であり、さらに、焼戻し時にV炭化物を生成し、析
出強化により焼戻し時の軟化を防止する元素であるが、
0.01%未満ではその効果が十分に期待できず、0.
50%を超えて添加してもそれ以上の効果が期待できな
いことから、V量を0.01〜0.50%に限定した。
【0030】Nbは、Vと同様に、Nb炭化物、Nb窒
化物を形成してオーステナイト粒を細粒化する有効な元
素であり、そのオーステナイト粒成長抑制効果はVより
も高温度域(1200℃近傍)まで作用し、焼戻しマル
テンサイト組織の延性や靭性を向上させる。さらに、焼
戻し時にNb炭化物を生成し、析出強化により焼戻し時
の軟化を防止する元素である。その効果は0.002%
未満では期待できず、また、0.050%を超える過剰
な添加を行うと、Nbの金属間化合物や粗大析出物が生
成して靭性を低下させることから、Nb量を0.002
〜0.050%に限定した。
【0031】Tiは、レール圧延時の再加熱において、
析出したTi炭化物、Ti窒化物が溶解しないことを利
用して、圧延加熱時のオーステナイト結晶粒の微細化を
図り、焼戻しマルテンサイト組織の延性や靭性を向上さ
せるのに有効な成分である。また、焼戻し時にTi炭化
物を生成し、さらに、Niと複合でNi3 Tiの金属間
化合物を微細に析出し、析出強化により焼戻し時の軟化
を防止する元素である。しかし、0.0050%未満で
はその効果が少なく、0.0500%を超えて添加する
と、粗大なTi炭化物、Ti窒化物が生成して、レール
使用中の疲労損傷の起点となり、き裂を発生させるた
め、Ti量を0.0050〜0.050%に限定した。
【0032】Cuは、焼戻し時にε- Cuを析出し、著
しい析出強化により焼戻し時の軟化を防止する元素であ
るが、その効果は0.05%未満では期待できず、ま
た、1.00%を超えると赤熱脆化を生じることから、
Cu量を0.05〜1.00%に限定した。
【0033】Niは、焼入れ性を高め、焼戻しマルテン
サイト組織の強度(硬さ)を確保し、さらに、マルテン
サ焼戻し時にTiと複合でNi3 Tiの金属間化合物を
微細に析出し、析出強化により焼戻し時の軟化を防止す
る元素であるが、0.05%未満ではその効果が著しく
小さく、また、2.00%を超える添加を行ってもその
効果が飽和してしまうため、Ni量を0.05〜2.0
0%に限定した。
【0034】Bは、焼入れ性を高め、焼戻しマルテンサ
イト組織の強度(硬さ)を確保しする元素である。しか
し、0.0001%未満ではその効果は弱く、0.00
50%を超えて添加すると粗大鉄炭ほう化物が生成して
レールの延性や靭性を劣化させるため、B量を0.00
01〜0.0050%に限定した。
【0035】Mgは、Oまたは、SやAl等と結合して
微細な酸化物を形成し、レール圧延時の再加熱におい
て、結晶粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒の微細
化を図り、焼戻しマルテンサイト組織の延性や靭性を向
上させるのに有効な成分である。しかし、0.0010
%未満ではその効果は弱く、0.0100%を超えて添
加するとMgの粗大酸化物が生成してレール延性や靭性
を劣化させるため、Mg量を0.0010〜0.010
0%に限定した。
【0036】上記のような成分組成で構成されるレール
鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製
を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法、
さらに熱間圧延を経てレールとして製造される。次に、
この熱間圧延ままのAr1 点以上の温度を保有する鋼レ
ールの頭部、あるいは熱処理する目的でAc1 点+30
℃以上の温度に加熱された鋼レールの頭部を、それぞれ
の温度領域から5〜50℃/secの冷却速度で加速冷却
し、前記鋼レールの頭部が200〜−50℃に達した時
点で加速冷却を停止し、加速冷却終了後、さらにレール
の頭部を400〜650℃の範囲に加熱し、その加熱温
度範囲で1〜60分間保持し、その後、常温まで冷却す
ることによって製造されるレールは、まず、加速冷却す
ることにより、安定的にマルテンサイト組織とし、その
後の加熱熱処理により、多量な炭化物を微細に分散させ
るた焼戻しマルテンサイト組織を得ることが可能とな
る。
【0037】(4)レールの熱処理製造法 請求項9,10において、レール製造時の加速冷却前の
温度条件、加速冷却条件、その後の加熱条件を上記のよ
うに限定した理由について詳細に説明する。まず、レー
ル頭部を加速冷却する前の温度条件について説明する。
マルテンサイト組織を安定的に得るためには、少なくと
もレール頭部をオーステナイト化する必要がある。その
温度は、熱間圧延直後に再加熱を行わない場合において
はAr1 点以上の温度域であり、また、再加熱を行う場
合においてはAc1 点+30℃以上の温度域である。な
お、温度の上限は特に規定しないが、あまり高温度にす
ると液相が現れ、オーステナイト相が不安定になるた
め、温度は実質1350℃が上限となる。
【0038】ここで、上記の「レール頭部」とは、図2
に示すレール頭頂部(符号:1)および頭部コーナー部
(符号:2)を含む部分である。以下に説明する冷却速
度および温度は、前記図2に示すレール頭頂部(符号:
1)および頭部コーナー部(符号:2)の頭部表面から
深さが2〜5mmの範囲で測定すれば、レール頭部を代
表させることができ、組織を制御することができる。
【0039】次に、レール頭部を上記温度域から5〜5
0℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部
が200〜−50℃に達した時点で加速冷却を停止する
方法において、加速冷却停止温度、加速冷却速度を上記
のように限定した理由について説明する。200℃を超
える温度で加速冷却を停止すると、加速冷却中にマルテ
ンサイト組織が十分に生成せず、残留オーステナイト組
織の生成量が多くなり、加速冷却後の加熱熱処理におい
て、焼戻しマルテンサイト組織の硬さが低下し、耐摩耗
性や耐表面損傷性が確保できないため、加速冷却停止温
度を200℃以下に限定した。また、耐摩耗性や耐表面
損傷性に有害な加熱熱処理前の残留オーステナイト組織
の生成量を低減させるためには、加速冷却停止温度はよ
り一層低いことが望ましいが、本成分系では、−50℃
未満まで加速冷却を行っても、その効果が飽和し、耐摩
耗性や耐表面損傷性の改善に大きく寄与しないことか
ら、加速冷却停止温度を−50℃以上に限定した。
【0040】また、レール頭部の加速冷却速度が5℃/s
ec未満になると、本成分系では加速冷却途中の高温度域
において、炭化物が板状および塊状に生成するパーライ
ト組織やベイナイト組織などが多量に生成し、加速冷却
後の加熱熱処理において、均一で、かつ微細な炭化物が
得られ難く、表面損傷が発生しやすくなるため、加速冷
却速度を5℃/sec以上に限定した。また、加速冷却速度
が50℃/secを超えると、レール頭表面と内部において
大きな温度勾配が発生し、レール内部の温度が比較的高
い状態で加速冷却が終了する。その結果、レール内部に
残留オーステナイト組織が生成し、加速冷却後の加熱熱
処理において、焼戻しマルテンサイト組織の硬さが低下
し、耐摩耗性や耐表面損傷性が確保できないことから、
加速冷却速度を50℃/sec以下に限定した。なお、レー
ル頭表面と内部において発生する温度勾配を抑制し、マ
ルテンサイト組織を頭表面から内部まで安定的に生成さ
せるには、加速冷却速度は10〜30℃/secの範囲が最
も望ましい。
【0041】本加速冷却速度範囲は冷却開始から終了ま
での平均的な冷却速度を限定するものであるが、加速冷
却途中において、レール内部からの自然復熱等による一
時的な温度上昇が発生する場合がある。しかし、加速冷
却開始から終了までの平均的な冷却速度が上記範囲内で
あれば、本焼戻しマルテンサイト系レールの諸特性に大
きな影響を及ぼさないため、本レールの加速冷却条件と
しては冷却途中の一時的な温度上昇に伴う冷却速度の低
下も含んでいる。
【0042】また、5〜50℃/secの冷却速度を得る方
法としては、空気、空気を主としミスト等を加えた気液
混合冷媒、ミスト冷媒、およびこれらの組み合わせによ
り、上記限定の冷却速度を得ることが可能である。従っ
て、加熱熱処理前のマルテンサイト組織を安定的に製造
するには、レール頭部において、加熱熱処理で均一で微
細な炭化物が得られにくいパーライト組織やベイナイト
組織などが生成しないように、空気、空気を主としミス
ト等を加えた気液混合冷媒、ミスト冷媒等を用いて、熱
間圧延ままのAr1 点以上の温度を保有する鋼レールの
頭部、あるいは熱処理する目的でAc1 点+30℃以上
の温度に加熱された鋼レールの頭部を、それぞれの温度
領域から5〜50℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記
鋼レールの頭部が200〜−50℃に達した時点で加速
冷却を停止し、均一なマルテンサイト組織を安定的に生
成させることが可能となる。
【0043】さらに、加速冷却後の加熱熱処理におい
て、その後の加熱条件を上記のように限定した理由につ
いて詳細に説明する。まず、加熱温度を400〜650
℃の範囲に限定した理由について説明する。加熱温度が
400℃未満では、マルテンサイト組織の焼戻しが不十
分となり、焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物密度が
低下する。その結果、上記限定範囲の炭化物密度の下限
値を維持することが困難となり、耐摩耗性を確保するこ
とができない。さらに、加熱熱処理後のレール頭部の硬
さが過剰に高くなり、車輪とのなじみ性の低下によりス
ポーリング等の表面損傷が発生しやすくなるため、加熱
温度を400℃以上とした。また、加熱温度が650℃
を超えると、加熱熱処理後の焼戻しマルテンサイト組織
の硬さが過剰に低くなり、耐摩耗性が低下し、レール頭
表面に塑性変形起因のきしみ割れやフレーキングといっ
た表面損傷が発生しやすくなることから、加熱温度を4
00〜650℃の範囲に限定した。
【0044】次に、上記加熱温度範囲での保持時間を1
〜60分の範囲に限定した理由について説明する。保持
時間が1分未満では、マルテンサイト組織の焼戻しが不
十分となり、焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物のサ
イズが非常に小さくなり、炭化物密度が低下し、耐摩耗
性が低下することから、保持時間を1分以上とした。ま
た、保持時間が60分を超えると、焼戻しが過剰にな
り、焼戻しマルテンサイト組織中の炭化物が著しく粗大
化し、不安定破壊により、レール頭表面に表面損傷が発
生しやすくなることから、保持時間を60分以下とし
た。
【0045】なお、本加熱領域では、レール頭部の品質
を均一化するため、保持温度をほぼ一定とすることが望
ましいが、加熱時の温度制御方法によっては、保持中に
不規則な温度変化が発生する場合がある。しかし、保持
温度、保定時間が上記限定範囲内に含まれていれば、い
ずれの温度、保持時間においても耐摩耗性に優れた焼戻
しマルテンサイト組織を得ることができる。したがっ
て、本熱処理では保持中の不規則な温度変化も含んでい
る。
【0046】また、加速冷却後の加熱熱処理を行う方法
としては、加速冷却熱処理を行ったレール頭部のみを、
高周波加熱、炉加熱、火炎バーナー等により、上記限定
の加熱温度、保持時間を得ることが可能となる。加熱熱
処理時の加熱速度については、特に限定するものではな
いが、レールの品質を均一化し、生産性を向上されるた
めには、できるだけ所定の温度まですばやく加熱し、保
持することが望ましい。
【0047】従って、焼戻しマルテンサイト組織を呈し
た耐摩耗性に優れたレールを製造するには、前記の加速
冷却によるマルテンサイト組織の安定製造に加えて、焼
戻しマルテンサイト組織の炭化物サイズおよび密度を制
御するため、加速冷却熱処理を行ったレール頭部のみ
を、高周波加熱、炉加熱、火炎バーナー等により上記限
定の加熱熱処理を行い、均一な焼戻しマルテンサイト組
織を安定的に生成させることが可能となる。
【0048】加熱熱処理後の冷却については、特に限定
するものではないが、経済性を考慮すると、放冷、すな
わち、自然冷却することが望ましい。しかし、生産性の
向上、レール頭部の硬度の安定化、引張残留応力の軽減
を図るには、加熱熱処理後、レール頭部を10℃/sec未
満の冷却速度で加速冷却することが望ましい。
【0049】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。表
1に本発明レール鋼の化学成分、頭部熱処理条件、ミク
ロ組織、および、任意断面内における炭化物の長径範
囲、長径100〜1000nmの炭化物の占有面積を示
す。なお各レール鋼は、表示した成分以外に、Feおよ
び不可避的不純物を含有する。さらに、表1には図3に
示す西原式摩耗試験機による本発明レール鋼の摩耗特性
評価結果、および図4に示すレール・車輪の形状を1/
4に縮尺加工した円盤試験片による水潤滑ころがり疲労
損傷試験結果を併記した。
【0050】
【表1】
【0051】また、表2に比較レール鋼の化学成分、頭
部熱処理条件、ミクロ組織、および、任意断面内におけ
る炭化物の長径範囲、長径100〜1000nmの炭化
物の占有面積を示す。なお各レール鋼は、表示した成分
以外に、Feおよび不可避的不純物を含有する。さら
に、表2には図3に示す西原式摩耗試験機による本発明
レール鋼の摩耗特性評価結果、および図4に示すレール
・車輪の形状を1/4に縮尺加工した円盤試験片による
水潤滑ころがり疲労損傷試験の表面損傷発生寿命を示
す。
【0052】
【表2】
【0053】さらに、図5に本発明レール鋼:符号G、
図6に本発明レール鋼:符号Hの10000倍のミクロ
組織において、炭化物の析出状態の一例を示す模式図を
示す。図5、6は本発明レール鋼を5%ナイタール液で
腐食し、走査型電子顕微鏡により観察したものであり、
図中の白い粒状および塊状の部分(斜線部は長径が10
00nmを超えたもの)が焼戻しマルテンサイト組織中
の炭化物である。
【0054】なお、レールの構成は以下のとおりであ
る。 ・本発明レール鋼(12本)符号:A〜L :成分範囲、頭部熱処理条件が上記限定範囲内であり、
焼戻しマルテンサイト組織を呈し、当該焼戻しマルテン
サイト組織の任意断面内に含まれる炭化物において、長
径が100〜1000nmの範囲の炭化物占有面積の合
計が前記任意断面の面積の20〜80%であるレール
鋼。
【0055】・比較レール鋼(12本)符号:M〜X :共析炭素含有鋼によるパーライト組織を呈した現行の
レール鋼(符号:M〜O)。 :成分範囲が上記限定範囲外のレール鋼(符号:P〜
R)。 :成分範囲が上記限定範囲内であるが、頭部熱処理条件
が上記限定範囲外であるレール(符号:S〜X)。
【0056】摩耗試験およびころがり疲労試験の条件は
以下の通りとした。 〔摩耗試験〕 ・試験機 :西原式摩耗試験機 ・試験片形状:円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:
8mm) ・試験荷重 :686N ・すべり率 :20% ・相手材 :微細パーライト鋼(Hv390) ・雰囲気 :大気中 ・冷却 :圧搾空気による強制冷却(流量:100
Nl/min) ・繰返し回数:70万回
【0057】 〔ころがり疲労損傷試験〕 ・試験機 :ころがり疲労損傷試験機 ・試験片形状:円盤状試験片(外径:200mm、レール材断面形状:60K レールの1/4モデル) ・試験荷重 :ラジアル荷重:1.5トン スラスト荷重:0.3トン ・雰囲気 :乾燥+水潤滑(60cc/min) ・回転数 :乾燥(0〜5000回) :100rpm 乾燥+水潤滑(5000回〜):300rpm ・繰返し回数:0〜5000回まで乾燥状態、 その後水潤滑により200万回または損傷発生まで。
【0058】表1に示すように、焼戻しマルテンサイト
組織中の炭化物のサイズおよびその炭化物の占有面積を
制御した本発明レール鋼(符号:A〜L)は、パーライ
ト組織を呈した比較レール鋼(現用レール、符号:M〜
O)よりも摩耗量が少なく、耐摩耗性が大きく向上して
いる。また、本発明レール鋼は、化学成分を限定範囲内
におさめることにより、炭化物のサイズや密度等を確保
することが可能となり、比較レール鋼(符号:P〜R)
で確認された耐摩耗性の低下や表面損傷の発生を防止し
することができる。
【0059】さらに、本発明レール鋼は、頭部熱処理条
件を限定範囲内におさめることにより、炭化物のサイズ
や密度等を安定的に制御することが可能となり、比較レ
ール鋼(符号:S〜X)で確認された耐摩耗性の低下や
表面損傷の発生を防止することができる。
【0060】
【発明の効果】このように本発明によれば、重荷重鉄道
において耐摩耗性を向上させた高強度レールを低コスト
で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼戻しマルテンサイト組織において炭化物の析
出状態の一例を示す模式図面。
【図2】レール頭部断面表面位置の呼称を表示した図
面。
【図3】西原式摩耗試験機の概略図面。
【図4】ころがり疲労損傷試験機の概略図面。
【図5】本発明レール鋼の焼戻しマルテンサイト組織に
おいて炭化物の析出状態の一例を示す模式図面(符号:
G)。
【図6】本発明レール鋼の焼戻しマルテンサイト組織に
おいて炭化物の析出状態の一例を示す模式図面(符号:
H)。
【符号の説明】
1:頭頂部 2:頭部コーナー部 3:レール試験片 4:相手材 5:レール円盤試験片 6:車輪試験片 7:モーター(レール側) 8:モーター(車輪側) 9:水潤滑装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平上 大輔 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内 Fターム(参考) 4K042 AA04 BA03 CA02 CA05 CA06 CA08 CA09 CA10 CA12 CA13 DA01 DA02 DC02 DE05 DE06 DE07

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.85〜2.00%を
    含有し、レール頭部において、少なくとも一部が焼戻し
    マルテンサイト組織を呈する鋼レールであって、前記マ
    ルテンサイト組織の任意断面において、長径が100〜
    1000nmの範囲である炭化物が占有する面積の合計
    が、前記任意断面の面積の20〜80%であることを特
    徴とする耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイト系レー
    ル。
  2. 【請求項2】 質量%で、 C :0.85〜2.00%、 Si:0.10〜2.00%、 Mn:0.10〜3.00% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    レール頭部において、少なくとも一部が焼戻しマルテン
    サイト組織を呈する鋼レールであって、前記マルテンサ
    イト組織の任意断面において、長径が100〜1000
    nmの範囲である炭化物が占有する面積の合計が、前記
    任意断面の面積の20〜80%であることを特徴とする
    耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイト系レール。
  3. 【請求項3】 質量%で、さらに、 Cr:0.05〜3.00%、 Mo:0.01〜1.00% の1種または2種を含有することを特徴とする、請求項
    1又は2に記載の耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイ
    ト系レール。
  4. 【請求項4】 質量%で、さらに、 V :0.01〜0.50%、 Nb:0.002〜0.050%、 Ti:0.0050〜0.0500% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1ないし3のいずれか1項に記載の耐摩耗性に優れた
    焼戻しマルテンサイト系レール。
  5. 【請求項5】 質量%で、さらに、 Cu:0.05〜1.00%、 Ni:0.05〜2.00% の1種または2種を含有することを特徴とする、請求項
    1ないし4のいずれか1項に記載の耐摩耗性に優れた焼
    戻しマルテンサイト系レール。
  6. 【請求項6】 質量%で、さらに、 B :0.0001〜0.0050% を含有することを特徴とする、請求項1ないし5のいず
    れか1項に記載の耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイ
    ト系レール。
  7. 【請求項7】 質量%で、さらに、 Mg:0.0010〜0.0100% を含有することを特徴とする、請求項1ないし6のいず
    れか1項に記載の耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイ
    ト系レール。
  8. 【請求項8】 レール頭部のコーナー部および頭頂部表
    面を起点として少なくとも深さ20mmの範囲が焼戻し
    マルテンサイト組織を呈することを特徴とする請求項1
    ないし7のいずれか1項に記載の耐摩耗性に優れた焼戻
    しマルテンサイト系レール。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし7のいずれか1項に記載
    の成分を含有する鋼をレールの形状に熱間圧延し、熱処
    理する目的でAc1 点+30℃以上の温度に加熱した
    後、前記鋼レールの頭部を、Ac1 点+30℃以上の温
    度から5〜50℃/secの冷却速度で加速冷却し、前記鋼
    レールの頭部が200〜−50℃に達した時点で加速冷
    却を停止し、加速冷却終了後、さらにレールの頭部を4
    00〜650℃の範囲に加熱し、その加熱温度範囲で1
    〜60分間保持し、その後、常温までを冷却することを
    特徴とする耐摩耗性に優れた焼戻しマルテンサイト系レ
    ールの製造法。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし7のいずれか1項に記
    載の成分を含有する鋼をレールの形状に熱間圧延し、熱
    間圧延終了温度をAr1 点以上とし、前記鋼レールの頭
    部を、Ar1 点以上の温度から5〜50℃/secの冷却速
    度で加速冷却し、前記鋼レールの頭部が200〜−50
    ℃に達した時点で加速冷却を停止し、加速冷却終了後、
    さらにレールの頭部を400〜650℃の範囲に加熱
    し、その加熱温度範囲で1〜60分間保持し、その後、
    常温までを冷却することを特徴とする耐摩耗性に優れた
    焼戻しマルテンサイト系レールの製造法。
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