JP2003116532A - 脂肪組織モデルおよびその用途 - Google Patents
脂肪組織モデルおよびその用途Info
- Publication number
- JP2003116532A JP2003116532A JP2001313049A JP2001313049A JP2003116532A JP 2003116532 A JP2003116532 A JP 2003116532A JP 2001313049 A JP2001313049 A JP 2001313049A JP 2001313049 A JP2001313049 A JP 2001313049A JP 2003116532 A JP2003116532 A JP 2003116532A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- adipose tissue
- culture
- collagen
- differentiation
- cells
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 本発明は医薬品、化粧品の薬効試験、安全性
試験、特に薬物の脂肪組織に及ぼす作用を研究する為の
有効な細胞培養物に関する。 【解決手段】 (1)前駆脂肪細胞とコラーゲン溶液を
混合する工程、(2)該混合溶液をゲル化する工程、
(3)該前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲルを分化誘導
因子を含む培地で培養する工程、を含む脂肪組織様培養
物を作製する方法、該方法により得られた脂肪組織様培
養物、および、該脂肪組織様培養物に薬物を作用させる
ことにより、当該薬物の脂肪組織に対する影響を試験す
る方法。
試験、特に薬物の脂肪組織に及ぼす作用を研究する為の
有効な細胞培養物に関する。 【解決手段】 (1)前駆脂肪細胞とコラーゲン溶液を
混合する工程、(2)該混合溶液をゲル化する工程、
(3)該前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲルを分化誘導
因子を含む培地で培養する工程、を含む脂肪組織様培養
物を作製する方法、該方法により得られた脂肪組織様培
養物、および、該脂肪組織様培養物に薬物を作用させる
ことにより、当該薬物の脂肪組織に対する影響を試験す
る方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は医薬品、化粧品の薬
効試験、安全性試験、特に薬物の脂肪組織に及ぼす作用
を研究する為の有効な細胞培養物に関する。
効試験、安全性試験、特に薬物の脂肪組織に及ぼす作用
を研究する為の有効な細胞培養物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、脂肪組織は栄養分の貯蔵・放出だ
けでなく、レプチンなどの種々の生理活性物質を放出し
ている生理的に重要な器官であることが明らかになりつ
つある。糖尿病や種々の成人病の重要な原因器官として
も認識されつつある。よって、脂肪細胞はこれらの治療
に供する薬物のターゲットとして研究されている。この
ような薬物の開発やスクリーニングには脂肪細胞の培養
系の利用が不可欠である。
けでなく、レプチンなどの種々の生理活性物質を放出し
ている生理的に重要な器官であることが明らかになりつ
つある。糖尿病や種々の成人病の重要な原因器官として
も認識されつつある。よって、脂肪細胞はこれらの治療
に供する薬物のターゲットとして研究されている。この
ような薬物の開発やスクリーニングには脂肪細胞の培養
系の利用が不可欠である。
【0003】生体内において脂肪組織内に含まれる繊維
芽細胞様の前駆体細胞、前駆脂肪細胞は細胞内に油滴が
蓄積することにより成熟した脂肪細胞に分化する。前駆
脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化の過程は脂肪組織形
成に重要であるので、本過程における薬剤の影響を調べ
ることは有意義である。しかし、これまで行われていた
単層培養系を用いた実験では完全に脂肪細胞が成熟すま
で分化誘導を行うことは難しかった。すなわち、分化し
油滴が蓄積した細胞は形態変化し、丸く浮き上がってく
る為、フラスコ接着面から成熟脂肪細胞が剥がれやすく
なり、結果として細胞内に油滴が多胞状に蓄積した分化
の中間段階の細胞しか観察されなかった。このため、長
期にわたる分化培養や最終分化までの観察、あるいは成
熟脂肪でしか放出しないような生理活性物質等の実験は
困難であった。よって、成熟脂肪細胞まで分化過程が観
察される培養系が望まれていた。
芽細胞様の前駆体細胞、前駆脂肪細胞は細胞内に油滴が
蓄積することにより成熟した脂肪細胞に分化する。前駆
脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化の過程は脂肪組織形
成に重要であるので、本過程における薬剤の影響を調べ
ることは有意義である。しかし、これまで行われていた
単層培養系を用いた実験では完全に脂肪細胞が成熟すま
で分化誘導を行うことは難しかった。すなわち、分化し
油滴が蓄積した細胞は形態変化し、丸く浮き上がってく
る為、フラスコ接着面から成熟脂肪細胞が剥がれやすく
なり、結果として細胞内に油滴が多胞状に蓄積した分化
の中間段階の細胞しか観察されなかった。このため、長
期にわたる分化培養や最終分化までの観察、あるいは成
熟脂肪でしか放出しないような生理活性物質等の実験は
困難であった。よって、成熟脂肪細胞まで分化過程が観
察される培養系が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
の問題点を解消すべく、前駆脂肪細胞から最終分化過程
まで観察できる脂肪組織様培養およびその用途を提供す
ることを課題とする。
の問題点を解消すべく、前駆脂肪細胞から最終分化過程
まで観察できる脂肪組織様培養およびその用途を提供す
ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決するため鋭意検討を行った。その結果、前駆脂肪細
胞をコラーゲンゲル内に包埋培養した後、分化誘導を行
うことにより、細胞が浮遊・死滅することなく成熟した
脂肪細胞が観察されることを見出した。すなわち、本発
明は、(1)生体外で培養した前駆脂肪細胞とコラーゲ
ン溶液を混合する工程、(2)該混合溶液をゲル化する
工程、(3)該前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲルを分
化誘導因子を含む培地で培養する工程、を含む脂肪組織
様培養物を作製する方法を提供する。
解決するため鋭意検討を行った。その結果、前駆脂肪細
胞をコラーゲンゲル内に包埋培養した後、分化誘導を行
うことにより、細胞が浮遊・死滅することなく成熟した
脂肪細胞が観察されることを見出した。すなわち、本発
明は、(1)生体外で培養した前駆脂肪細胞とコラーゲ
ン溶液を混合する工程、(2)該混合溶液をゲル化する
工程、(3)該前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲルを分
化誘導因子を含む培地で培養する工程、を含む脂肪組織
様培養物を作製する方法を提供する。
【0006】本発明はまた、(1)生体外で培養した前
駆脂肪細胞とコラーゲン溶液を混合する工程、(2)該
混合溶液をゲル化する工程、(3)該前駆脂肪細胞を含
むコラーゲンゲルを分化誘導因子を含む培地で培養する
工程により得られた脂肪組織様培養物を提供する。
駆脂肪細胞とコラーゲン溶液を混合する工程、(2)該
混合溶液をゲル化する工程、(3)該前駆脂肪細胞を含
むコラーゲンゲルを分化誘導因子を含む培地で培養する
工程により得られた脂肪組織様培養物を提供する。
【0007】本発明はまた、該方法で得られた脂肪組織
様培養物に薬物を作用させることにより、その薬物の脂
肪組織に対する影響を試験する方法を提供する。
様培養物に薬物を作用させることにより、その薬物の脂
肪組織に対する影響を試験する方法を提供する。
【0008】すなわち本発明は以下の構成からなる。
[1] (1)前駆脂肪細胞とコラーゲン溶液を混合す
る工程、(2)該混合溶液をゲル化する工程、(3)該
前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲルを分化誘導因子を含
む培地で培養する工程、を含む脂肪組織様培養物を作製
する方法。 [2] [1]の方法により得られた脂肪組織様培養
物。 [3] [2]の脂肪組織様培養物に薬物を作用させる
ことにより、当該薬物の脂肪組織に対する影響を試験す
る方法。
る工程、(2)該混合溶液をゲル化する工程、(3)該
前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲルを分化誘導因子を含
む培地で培養する工程、を含む脂肪組織様培養物を作製
する方法。 [2] [1]の方法により得られた脂肪組織様培養
物。 [3] [2]の脂肪組織様培養物に薬物を作用させる
ことにより、当該薬物の脂肪組織に対する影響を試験す
る方法。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において前駆脂肪細胞とは
脂肪細胞へ分化する能力を有する脂肪組織由来の細胞を
いう。成熟した脂肪細胞とは異なり、前駆脂肪細胞は細
胞内に油滴の蓄積が見られない増殖性を有する繊維芽細
胞様の細胞である。前駆脂肪細胞はインシュリン、デキ
サメタゾン等の分化誘導剤を培地中に添加して培養する
ことで、細胞内に油滴が蓄積し、脂肪細胞へと分化す
る。前駆脂肪細胞の由来としては特に生物種または由来
組織を問わないが、ヒト皮膚由来前駆脂肪細胞が好適に
使用される。また、前駆脂肪細胞は、例えば、本細胞は
脂肪組織をコラゲナーゼ等の消化酵素で処理後、遠心沈
さを回収することで得られる。本細胞を培養するには特
に、培地、培養期間を特定しないが、10%血清含有D
MEM培地や市販の増殖培地が使用できる。
脂肪細胞へ分化する能力を有する脂肪組織由来の細胞を
いう。成熟した脂肪細胞とは異なり、前駆脂肪細胞は細
胞内に油滴の蓄積が見られない増殖性を有する繊維芽細
胞様の細胞である。前駆脂肪細胞はインシュリン、デキ
サメタゾン等の分化誘導剤を培地中に添加して培養する
ことで、細胞内に油滴が蓄積し、脂肪細胞へと分化す
る。前駆脂肪細胞の由来としては特に生物種または由来
組織を問わないが、ヒト皮膚由来前駆脂肪細胞が好適に
使用される。また、前駆脂肪細胞は、例えば、本細胞は
脂肪組織をコラゲナーゼ等の消化酵素で処理後、遠心沈
さを回収することで得られる。本細胞を培養するには特
に、培地、培養期間を特定しないが、10%血清含有D
MEM培地や市販の増殖培地が使用できる。
【00010】本発明において使用されるコラーゲンは
ウシ、ブタ、ラットなどの皮膚、腱、尾などに由来し、
I型コラーゲン、特にウシ腱由来I型コラーゲンが好適
に利用される。これらのコラーゲンは例えば、組織を酢
酸や塩酸などの酸性溶液に浸すことにより、溶解、単離
される。また、市販の酸可溶化I型コラーゲンも同じく
好適に使用される。
ウシ、ブタ、ラットなどの皮膚、腱、尾などに由来し、
I型コラーゲン、特にウシ腱由来I型コラーゲンが好適
に利用される。これらのコラーゲンは例えば、組織を酢
酸や塩酸などの酸性溶液に浸すことにより、溶解、単離
される。また、市販の酸可溶化I型コラーゲンも同じく
好適に使用される。
【0011】本発明におけるコラーゲンゲルは、コラー
ゲン分子が分子間結合することで形成された水和した3
次元マトリクスをさす。コラーゲンをゲル化させる方法
としては、例えば、酸可溶化I型コラーゲン溶液に緩衝
溶液を加え、pH7程度の中性にし、かかるコラーゲン
溶液を10〜40℃、より好ましくは20〜37℃で保温し、静
置することで得られる。また、かかるコラーゲン溶液に
は好適に細胞を培養させるために栄養培地を加えること
が望ましい。また、コラーゲンをゲル化する際、鋳型容
器中にて行う。ゲル化に用いる鋳型容器としては特に限
定しないが、平坦な底面を有する円筒形や角形の容器を
用いることができる。また、細胞への栄養分の供給など
の見地から、底面は多孔性の基材である方が好ましい。
ゲン分子が分子間結合することで形成された水和した3
次元マトリクスをさす。コラーゲンをゲル化させる方法
としては、例えば、酸可溶化I型コラーゲン溶液に緩衝
溶液を加え、pH7程度の中性にし、かかるコラーゲン
溶液を10〜40℃、より好ましくは20〜37℃で保温し、静
置することで得られる。また、かかるコラーゲン溶液に
は好適に細胞を培養させるために栄養培地を加えること
が望ましい。また、コラーゲンをゲル化する際、鋳型容
器中にて行う。ゲル化に用いる鋳型容器としては特に限
定しないが、平坦な底面を有する円筒形や角形の容器を
用いることができる。また、細胞への栄養分の供給など
の見地から、底面は多孔性の基材である方が好ましい。
【0012】本発明においてコラーゲン溶液と混合する
過程とは、例えば中性化したコラーゲン溶液に調製した
細胞浮遊液を、例えば1〜10x104細胞/mlの濃度にな
るように、添加、混合したのちゲル化させることにより
得られる。この際、細胞を均一に混合させるために、好
ましくは4〜8℃の低温下で攪拌することが望ましい。
過程とは、例えば中性化したコラーゲン溶液に調製した
細胞浮遊液を、例えば1〜10x104細胞/mlの濃度にな
るように、添加、混合したのちゲル化させることにより
得られる。この際、細胞を均一に混合させるために、好
ましくは4〜8℃の低温下で攪拌することが望ましい。
【0013】本発明のにおける分化誘導因子とは前駆脂
肪細胞に作用し、細胞内に油滴の蓄積を誘導する因子で
あればよく、その作用の強弱および薬剤の種類について
は問わない。このような因子として、例えば、インシュ
リン、デキサメタゾン、インドメタシン、アラキドン酸
等の薬物である。これらの薬剤の1種あるいは混合物を
添加した培地により該前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲ
ルを培養することで、前駆脂肪細胞の分化が誘導され、
細胞内に油滴が蓄積する。これに使用する培地は特に限
定しないが、DMEM、MEM、αMEM等が用いら
れ、市販の培地も好適に使用できる。分化誘導因子を含
む培地での培養条件は、例えば37℃、5%CO2、加
湿下で静置培養するなどの、通常の培養条件で足る。
肪細胞に作用し、細胞内に油滴の蓄積を誘導する因子で
あればよく、その作用の強弱および薬剤の種類について
は問わない。このような因子として、例えば、インシュ
リン、デキサメタゾン、インドメタシン、アラキドン酸
等の薬物である。これらの薬剤の1種あるいは混合物を
添加した培地により該前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲ
ルを培養することで、前駆脂肪細胞の分化が誘導され、
細胞内に油滴が蓄積する。これに使用する培地は特に限
定しないが、DMEM、MEM、αMEM等が用いら
れ、市販の培地も好適に使用できる。分化誘導因子を含
む培地での培養条件は、例えば37℃、5%CO2、加
湿下で静置培養するなどの、通常の培養条件で足る。
【0014】分化培養の開始は、コラーゲンのゲル化直
後から14日間迄の間に行うことが好ましい。また、分
化培養の終了期間に着いては、特に限定しないが、10
〜30日間の培養で脂肪細胞内に油滴が蓄積され脂肪組
織様の培養物になる。
後から14日間迄の間に行うことが好ましい。また、分
化培養の終了期間に着いては、特に限定しないが、10
〜30日間の培養で脂肪細胞内に油滴が蓄積され脂肪組
織様の培養物になる。
【0015】さらに、本発明によって得られた脂肪組織
様培養物に薬物を作用させることにより、当該薬物の脂
肪組織に対する影響を試験することができ。このような
薬物としては、特に医薬品に限定しないが、糖尿病や成
人病等の治療に有用な薬物のスクリーニングや脂肪組織
での動態を解析する為に供せられる。また、培養物に対
する影響を調べる試験方法としては、たとえば、該培養
物が放出するレプチンなどの生理活性物質の培地中への
放出量を調べるたり、蓄積された脂肪量を染色法などに
より測定することで行うことが出来る。
様培養物に薬物を作用させることにより、当該薬物の脂
肪組織に対する影響を試験することができ。このような
薬物としては、特に医薬品に限定しないが、糖尿病や成
人病等の治療に有用な薬物のスクリーニングや脂肪組織
での動態を解析する為に供せられる。また、培養物に対
する影響を調べる試験方法としては、たとえば、該培養
物が放出するレプチンなどの生理活性物質の培地中への
放出量を調べるたり、蓄積された脂肪量を染色法などに
より測定することで行うことが出来る。
【0016】
【実施例】次に、本発明を具体的に実施例にて説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。 1.前駆脂肪細胞を内封したコラーゲンゲルの作製 東洋紡績(株)から購入したヒト前駆脂肪細胞を10%牛
血清含有DMEM培地にて培養し、コンフレントに達し
た後、同培地にて細胞を回収し、前駆脂肪細胞懸濁液を
得た。コラーゲンゲル作製方法はベルらの方法(Bell,
E., et al., Proc. Natl.Acad.Sci.USA, 76,1274-,197
9)に準じて行った。すなわち、4℃にて9容量のコラ
ーゲン溶液(オルガノジェネシス社製)に1容量の10
倍濃度のEMEM培地(ギブコ社製)を加え、重曹をp
Hが中性付近になるまで攪拌しながら加えた。さらに1
0%量の牛血清を加えた後、上記前駆脂肪細胞懸濁液
を、最終細胞濃度が5X104個/mlになるようゆっ
くり加え、良く攪拌した。かかる混合溶液を6穴プレー
トに入ったトランスウェル(コースター社製)の内側に
4mlずつ加え、室温にて15分間静置し、ゲル化させ
た後、10%牛血清含有DMEM培地を静かに添加し、
37℃、10%CO2下で3〜5日間培養し、前駆脂肪
細胞を内封したコラーゲンゲルを得た。この培養期間
中、細胞の作用によりコラーゲン分子の再構築が起き、
ゲルが脱水、収縮する。
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。 1.前駆脂肪細胞を内封したコラーゲンゲルの作製 東洋紡績(株)から購入したヒト前駆脂肪細胞を10%牛
血清含有DMEM培地にて培養し、コンフレントに達し
た後、同培地にて細胞を回収し、前駆脂肪細胞懸濁液を
得た。コラーゲンゲル作製方法はベルらの方法(Bell,
E., et al., Proc. Natl.Acad.Sci.USA, 76,1274-,197
9)に準じて行った。すなわち、4℃にて9容量のコラ
ーゲン溶液(オルガノジェネシス社製)に1容量の10
倍濃度のEMEM培地(ギブコ社製)を加え、重曹をp
Hが中性付近になるまで攪拌しながら加えた。さらに1
0%量の牛血清を加えた後、上記前駆脂肪細胞懸濁液
を、最終細胞濃度が5X104個/mlになるようゆっ
くり加え、良く攪拌した。かかる混合溶液を6穴プレー
トに入ったトランスウェル(コースター社製)の内側に
4mlずつ加え、室温にて15分間静置し、ゲル化させ
た後、10%牛血清含有DMEM培地を静かに添加し、
37℃、10%CO2下で3〜5日間培養し、前駆脂肪
細胞を内封したコラーゲンゲルを得た。この培養期間
中、細胞の作用によりコラーゲン分子の再構築が起き、
ゲルが脱水、収縮する。
【0017】2.前駆脂肪細胞含有コラーゲンゲルの分
化培養 1の方法で得られた前駆脂肪細胞含有コラーゲンゲルを
ゲル化後5日間培養した後、培地を分化誘導因子として
インドメタシンを含む前駆脂肪細胞分化培地(東洋紡績
(株)製)に交換することにより分化誘導を行い、さらに
培養を継続した。各分化培養期間後に蓄積した中性脂肪
量を従来の単層培養系と比較して図1に示す。前駆脂肪
細胞含有コラーゲンゲルの場合は単位細胞あたり単層培
養系の2倍量の中性脂肪を蓄積することができ、さらに
長期間培養することができた。また、形態的にも単層系
では多胞状の油滴小胞しか観察されないが、前駆脂肪細
胞含有コラーゲンゲルでは単一の肥大した油滴を含み、
生体内での成熟した脂肪組織と同等の構造を有してい
る。
化培養 1の方法で得られた前駆脂肪細胞含有コラーゲンゲルを
ゲル化後5日間培養した後、培地を分化誘導因子として
インドメタシンを含む前駆脂肪細胞分化培地(東洋紡績
(株)製)に交換することにより分化誘導を行い、さらに
培養を継続した。各分化培養期間後に蓄積した中性脂肪
量を従来の単層培養系と比較して図1に示す。前駆脂肪
細胞含有コラーゲンゲルの場合は単位細胞あたり単層培
養系の2倍量の中性脂肪を蓄積することができ、さらに
長期間培養することができた。また、形態的にも単層系
では多胞状の油滴小胞しか観察されないが、前駆脂肪細
胞含有コラーゲンゲルでは単一の肥大した油滴を含み、
生体内での成熟した脂肪組織と同等の構造を有してい
る。
【0018】
【発明の効果】本発明は、成熟した脂肪細胞が浮遊・死
滅することなく、前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲルを
分化誘導因子により培養することにより脂肪組織様培養
物を提供することが出来る。これにより、前駆脂肪細胞
から成熟脂肪細胞まで脂肪形成に対する影響を試験する
ことが出来るモデルとして使用することができ、これを
動物実験代替のモデル系として利用することにより、よ
り生体に近いかたちで、薬効試験や安全性試験を行うこ
とができる。さらに、移植用の生体材料としても用いる
ことができる。
滅することなく、前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲルを
分化誘導因子により培養することにより脂肪組織様培養
物を提供することが出来る。これにより、前駆脂肪細胞
から成熟脂肪細胞まで脂肪形成に対する影響を試験する
ことが出来るモデルとして使用することができ、これを
動物実験代替のモデル系として利用することにより、よ
り生体に近いかたちで、薬効試験や安全性試験を行うこ
とができる。さらに、移植用の生体材料としても用いる
ことができる。
【図1】 分化培養開始後、各培養日数での10000
0細胞あたりに蓄積した中性脂肪量を示す。
0細胞あたりに蓄積した中性脂肪量を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 岡 正則
福井県敦賀市東洋町10番24号 東洋紡績株
式会社敦賀バイオ研究所内
Fターム(参考) 4B063 QA01 QA05 QA18 QQ08 QR48
QR69 QR72 QX01
4B065 AA93X BB25 BC46 CA44
CA60
Claims (3)
- 【請求項1】 (1)前駆脂肪細胞とコラーゲン溶液を
混合する工程、(2)該混合溶液をゲル化する工程、
(3)該前駆脂肪細胞を含むコラーゲンゲルを分化誘導
因子を含む培地で培養する工程、を含む脂肪組織様培養
物を作製する方法。 - 【請求項2】 請求項1の方法により得られた脂肪組織
様培養物。 - 【請求項3】 請求項2の脂肪組織様培養物に薬物を作
用させることにより、当該薬物の脂肪組織に対する影響
を試験する方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001313049A JP2003116532A (ja) | 2001-10-10 | 2001-10-10 | 脂肪組織モデルおよびその用途 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001313049A JP2003116532A (ja) | 2001-10-10 | 2001-10-10 | 脂肪組織モデルおよびその用途 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003116532A true JP2003116532A (ja) | 2003-04-22 |
Family
ID=19131604
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001313049A Pending JP2003116532A (ja) | 2001-10-10 | 2001-10-10 | 脂肪組織モデルおよびその用途 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003116532A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019093477A1 (ja) * | 2017-11-10 | 2019-05-16 | 凸版印刷株式会社 | 人工脂肪組織及びその製造方法、人工皮膚の製造方法並びに脂肪細胞の培養剤 |
-
2001
- 2001-10-10 JP JP2001313049A patent/JP2003116532A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2019093477A1 (ja) * | 2017-11-10 | 2019-05-16 | 凸版印刷株式会社 | 人工脂肪組織及びその製造方法、人工皮膚の製造方法並びに脂肪細胞の培養剤 |
JPWO2019093477A1 (ja) * | 2017-11-10 | 2020-11-19 | 凸版印刷株式会社 | 人工脂肪組織及びその製造方法、人工皮膚の製造方法並びに脂肪細胞の培養剤 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5057629B2 (ja) | ペプチド足場での組織細胞のカプセル化およびその使用 | |
TWI278517B (en) | Methods and compositions for the differentiation of human preadipocytes into adipocytes | |
ES2252259T3 (es) | Modelo de piel tridiminsional. | |
JP5600671B2 (ja) | 毛小嚢及びデノボ乳頭の作製方法並びにインビトロ試験及びインビボ移植のためのそれらの使用 | |
Dessauge et al. | 3D in vitro models of skeletal muscle: myopshere, myobundle and bioprinted muscle construct | |
US20070269792A1 (en) | Cross-linked collagen matrix for producing a skin equivalent | |
CA3050087C (en) | Injectable composition containing keratin for preventing hair loss or stimulating hair growth | |
JP2005525088A (ja) | 再構成乳頭を有する皮膚/毛髪等価物 | |
US20110321180A1 (en) | Compositions and methods to generate pilosebaceous units | |
TW201522638A (zh) | 多能性幹細胞的製備方法、使用該製備方法而製備出多能性幹細胞、改善劑、以及該多能性幹細胞之分化誘導方法 | |
JP2024073646A (ja) | 細胞構造体及び細胞構造体の製造方法 | |
JP2022031757A (ja) | 毛包およびデノボ乳頭の作製方法ならびにインビトロ試験およびインビボ移植のためのそれらの使用 | |
US20120148541A1 (en) | Compositions and methods to generate pilosebaceous units | |
JP3951148B2 (ja) | 皮膚付属器官様構造体を含む人工皮膚及びその製造方法 | |
JP2022501118A (ja) | 脂肪由来幹細胞およびゼラチンを含む生体材料ならびにその製造方法 | |
WO2023058429A1 (ja) | 毛髪再生能を有する細胞凝集塊の製造方法及びこれに関連する方法 | |
JP2003116532A (ja) | 脂肪組織モデルおよびその用途 | |
EP1337624B1 (de) | Zellkonstrukte erhältlich aus mesenchymalen stammzellen und davon ableitbaren zellen und ihre verwendung | |
WO2007061205A1 (en) | Culture method of fibroblast using placenta extract and composition for skin regeneration using the same | |
BR112013030828B1 (pt) | Processo para preparar um equivalente de couro cabeludo | |
JP2003116531A (ja) | 細胞培養物、その培養方法およびその用途 | |
CN111117945B (zh) | 含黑色素的表皮皮肤模型及其构建方法和应用 | |
EP3991797A1 (en) | Cell structure and method for producing same | |
US12128130B2 (en) | Injectable composition for preventing hair loss or stimulating hair growth | |
WO2024203556A1 (ja) | 三次元乳腺モデル及びその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040910 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070622 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20071018 |