JP2003107183A - 熱中性子原子炉用mox燃料集合体 - Google Patents

熱中性子原子炉用mox燃料集合体

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JP2003107183A
JP2003107183A JP2002019274A JP2002019274A JP2003107183A JP 2003107183 A JP2003107183 A JP 2003107183A JP 2002019274 A JP2002019274 A JP 2002019274A JP 2002019274 A JP2002019274 A JP 2002019274A JP 2003107183 A JP2003107183 A JP 2003107183A
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尚史 姉川
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慎 滝沢
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱中性子原子炉に使用されうるMOX燃料集
合体の改良を提供する。 【解決手段】 MOX燃料棒の富化度を1種類に限定
し、しかも、その富化度を高くし(核分裂性Puの含有
量を5〜15重量%好ましくは10〜15重量%と高く
し)、その上、核分裂性Puを高富化度に含有する燃料
棒の使用量を、燃料棒全体の20〜40%好ましくは2
0〜25%と極めて少なくしたMOX燃料集合体であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、UOを核燃料と
し水を減速材兼冷却材として設計された熱中性子原子炉
にも、UOを核燃料とする原子炉においてUOを燃
焼して生成された使用済み核燃料を再処理して得られた
Puアイソトープの酸化物PuOとUO との混合物
(以下MOX燃料と言う。)を核燃料とし水を減速材兼
冷却材として設計された熱中性子原子炉にも、使用され
ることができるMOX燃料集合体の改良に関する。特
に、このMOX燃料集合体の製造コストを低減し、ま
た、このMOX燃料集合体を燃焼した後に残される使用
済み核燃料を核燃料として使用する場合の利用価値を向
上する改良に関する。
【0002】
【従来の技術】Uを核燃料とする原子炉には種々ある
が、従来実用されている原子炉は、相変位温度の低い金
属Uと異なり、高温において変形することが少なく、取
り扱いが容易であるセラミックスUOを燃料とし、軽
水を減速材兼冷却材とする熱中性子原子炉(PWRとB
WR)が主流である。これらの原子炉にあっては、天然
Uを濃縮して、核分裂性を有するUアイソトープである
235Uの量を増加してある濃縮Uの酸化物UOを直
径約1センチメートル程度長さ約1センチメートル程度
のペレット(円筒)状に成形して焼成してペレット(円
筒)状セラミックスUOとし、これを核燃料単位とし
ており、核燃料ペレットと称する。この核燃料ペレット
が水と直接接触すると、化学反応を発生するので、これ
を避けるために、核燃料ペレットを数百個重ねて長いジ
ルカロイ-2製被覆管に収容・封入して、その被覆管の
外側を減速材兼冷却材である水流が流されるようにされ
ている。ジルカロイ-2製被覆管の長さは約4メートル
であり、その内、核燃料ペレットの入っている部分が炉
心の有効高さとなる。例えば、1,100MWの原子炉
であると、燃料棒の総数は約50,000本に達し、炉
心の等価直径(炉心の形状は正確には円形ではないが、
円形と見なした場合の直径)は約5メートルになるが、
これらの燃料棒の全てが均等に高速中性子を放出し、そ
の高速中性子の全てに均等に減速材(水)が接触して熱
中性子を生成し、全ての燃料棒が均等に核分裂し、全て
の燃料棒が概ね同一の温度を保持しながら発熱・発電を
継続することが望ましい。ところで、約50,000本
の燃料棒を一括取り扱うことは現実的に容易でないの
で、約60〜100本づつの燃料棒を束ねて収束された
ものを実質的取り扱い単位とすることが便利であるか
ら、この約60〜100本の燃料棒を束ねて収束して、
所謂燃料チャンネルボックスに収容したものを燃料集合
体と命名して、実質的取り扱い単位としている。したが
って、1,100MWの原子炉においては、約764個
の燃料集合体が整然とマトリックス状に配列され、燃料
集合体相互間にボロン等を含む制御棒が挿入・引き抜き
可能な形態で配置されて、炉心を形成している。そし
て、燃料集合体相互の間にも、減速材兼冷却材である水
流が流れるようにされている。燃料集合体の下部には、
減速材兼冷却材の水流供給装置が配置され、また、燃料
集合体の上部には、気水分離装置を始め、蒸気タービン
に約290℃・約7MPaの高温高圧水蒸気を送るため
の装置が設けられており、これらの付属設備も含めて、
炉心全体が、厳重に放射能遮蔽が施されている圧力容器
に収納されている。
【0003】このようにして創出されたUO燃料集合
体が充足すべき要件は、概ね下記のとおりである。 1.長期間、事実上は4〜5年間、燃料集合体の被覆管
が破損せず、原子炉が安定に臨界状態を維持できるよう
に、原子炉に対する保護機能を有するとゝもに、核分裂
生成物を被覆管中に閉じ込める保護機能を有すること。 2.核分裂により発生した熱を、安定に、効率良く、冷
却材に伝達することができること。 3.全ての燃料集合体が概ね均一に核分裂をなして、全
ての燃料集合体の温度が概ね均一になるようにすること
(ローカルピーキングの発生を抑制すること)。 4.減速材兼冷却材である水は、燃料棒に沿って上昇す
るにともない、気化して一部がボイドになるが、水は気
化すると単位体積当たりの水の分子数が減少して減速機
能が減少するので、その領域における核分裂が低下する
という現象があり、この現象を表す指数にボイド係数と
いう指数があるが、このボイド係数が負の適切な値であ
ること。
【0004】上記の学術的意味における要請に加えて、
商業炉用燃料としてのUO燃料集合体の開発に当た
り、 1.出力密度を極力向上すること、すなわち、燃料集合
体の発生する出力を増大して、原子炉の炉心単位体積当
たりの出力を大きくすること 2.核分裂可能な物質から熱エネルギーを取り出して利
用する能力、すなわち、燃料棒の寿命に亘って取り出し
うる熱エネルギーの量であり、学術的には燃焼度と言
い、通常、GWd/t(ギガワットデイ/トンと読
む。)という単位を使用して表す量(燃焼度)をできる
だけ大きくすること 3.新しい核燃料は、装荷当初、核分裂反応度が高過ぎ
る時期があるが、その時期に出力を適切な値に抑制する
こと 等が求められる。そこで、これらの現実的要請を満足す
るために、 1.出力密度を向上し、燃焼度を向上するため、燃料棒
の径を小さくし、UO燃料の濃縮度を向上して、UO
燃料中に含まれる核分裂性の235Uの量を増加し、
炉内の条件に対応して適切な濃縮度の燃料棒を配置する
という技術が開発された。 2.出力密度を全炉心に亘って幾何学的に平均化するた
め、炉の直径方向にも、高さ方向にも、UO燃料の濃
縮度を調節する(変化させておく)という技術が開発さ
れた。 3.UO燃料が新たに装荷された当初は、の核分裂反
応度が過剰になるので、新たに装荷されたUO燃料の
出力を抑制するため、GdとUOとを含むGd燃料棒
を使用する技術が開発された。なお、Gdは、装荷され
て暫くすると、中性子を吸収する効果が無くなり、通常
のUO燃料棒と同様に振舞うようになる。 5.ボイド係数を調節する手段として、燃料集合体の周
辺部以外の領域にウオーターロッドと呼ばれる水(減速
材兼冷却材)を通過させる太い配管を設ける技術が開発
された。Uの分子数に対する水の分子数の比が大きくな
り、中性子減速効果が大きくなり、核分裂発生の可能性
が大きくなるからである。
【0005】このようにして開発された、UOを燃料
とし水を減速材兼冷却材とする熱中性子原子炉に使用さ
れる、UOを燃料として設計された燃料集合体の1例
の平面配置を、図を参照して説明する。 図4参照 図4は、UOを燃料とし、水を減速材兼冷却材とする
燃料集合体の1例の平面図である。図4において、1・
2・3・4・5は、UO燃料棒の番号であり、長さは
約4メートルであるが、それぞれ、濃縮度(235Uの
含有量)が異なる。各燃料棒の直径は約11ミリメート
ルであり、燃料集合体の各辺の長さは約15センチメー
トルである。Wは、減速材の効果が弱い領域に配置さ
れ、減速材兼冷却材たる水流を通過させる通路として機
能するウオーターロッドであり、その1辺の長さは約4
センチメートルである。燃料棒1は、235Uの濃縮度
が最も高い高濃縮UO燃料棒であり、使用数は約10
本である。235Uの濃縮度は1から5に向かって順に
低くされている。燃料棒2・燃料棒3・燃料棒4・燃料
棒5の使用数は、それぞれ、30本・4本・24本・4
本である。図示するように、中央部に高濃縮度のUO
燃料棒が配置され、これを囲んで、外周に行くにしたが
い濃縮度が低くされているUO燃料棒が配置される。
また、燃料棒の長さ方向にも濃縮度が調節されており、
中央部での濃縮度が高くされ、先端部において濃縮度が
低くされている。要するに、この燃料集合体における設
計思想は、235Uの含有量(濃縮度)の異なる極めて
多種類のUO燃料棒を用意しておき、燃料集合体内の
領域の要請に応じ、適宜、当該領域に最適の濃縮度のU
燃料棒を選択的に配置することゝされていることで
ある。
【0006】この燃料集合体を、熱中性子原子炉で燃焼
すると、235Uは、中性子との衝突を条件として、核
分裂して発熱・発電に寄与する(235Uが核分裂した
後は分子量がかなり小さな核分裂生成物となり、この核
分裂生成物は、事実上利用価値がない。)が、238
は、中性子を吸収すると、239Pu、240Pu、
241Pu、242Puへと遷移する。これらのアイソ
トープの内、核分裂性を有するものは、239Puと
241Puとである。これらは、現に使用されている熱
中性子原子炉内でも、また、使用済み核燃料を再処理し
て得られたMOX燃料としてゞも利用しうる。
【0007】この性質を利用して、使用済み核燃料を再
処理して求めたMOX燃料(Pu( 239PuO
240PuO241PuO242PuOとU
とを含む混合物)を核燃料としたものが、本発明の
改良の対象である。換言すれば、熱中性子原子炉で使用
されたUの大部分である238Uは、原子炉中で中性子
を吸収して核分裂性を有する239Puと241Puと
を生成するので、燃焼した後の使用済み核燃料にも、少
なからぬ利用価値がある。そこで、Uを燃焼して生成さ
れた使用済み核燃料を再処理して取り出した239Pu
241Puとを含むPuアイソトープの酸化物とUO
との混合物を、MOX燃料として積極的に利用するこ
とにされていることは周知であり、MOX燃料は、燃料
経済上極めて利用価値が高く重要である。
【0008】そこで、UOを燃料とし水を減速材兼冷
却材として設計された熱中性子原子炉にも、MOX燃料
を核燃料とし水を減速材兼冷却材として設計された熱中
性子原子炉にも、使用されることができるMOX燃料の
燃料集合体が開発された。UOを燃料とし水を減速材
兼冷却材として設計された熱中性子原子炉にも、MOX
燃料を核燃料とし水を減速材兼冷却材として設計された
熱中性子原子炉にも、使用されることができるMOX燃
料(PuOとUOとの混合物)の燃料集合体の1例
の平面配置を、図を参照して説明する。 図5参照 図5は、UO燃料とし水を減速材兼冷却材として
設計・製造された熱中性子原子炉にも使用されうる、M
OX燃料を燃料とする燃料集合体の1例の平面図であ
る。図5において、P1・P2・P3・P4・Gは燃料
棒の番号であり、長さは概ね4メートルであるが、それ
ぞれ、富化度(含有されるPuアイソトープ全量に対す
る核分裂性を有する239Puと241Puの割合)を
異にする4種類のMOX燃料棒と1種類のGd燃料棒と
である。各燃料棒の直径は約11ミリメートルであり、
燃料集合体の各辺の長さは約15センチメートルであ
る。Wは、減速材の効果が弱い領域に配置され、減速材
兼冷却材たる水流を通過させる通路として機能するウオ
ーターロッドであり、その1辺の長さは約3センチメー
トルである。燃料棒P1は、核分裂性Puの含有量が最
も大きい高富化MOX燃料棒であり、燃料棒P1の富化
度は約5%であり、使用数は20本である。そして、富
化度は、P1・P2・P3・P4の順に低くされてお
り、燃料棒P2・P3・P4の使用数は、それぞれ、1
6本・8本・4本である。Gd燃料棒Gの使用数は12
本である。したがって、MOX燃料棒P1・P2・P3
・P4の総数が燃料棒全体の数に占める割合は80%と
なる。既に述べたように、Gd燃料棒の機能は初期の反
応度の抑制にあり、燃料装荷当初は核分裂を抑制し、数
ヶ月経過後は中性子吸収効果がなくなり、UO燃料棒
と同様に燃焼(核分裂)に寄与することにある。この意
味において、Gd燃料棒も燃料棒の総数に含めてある。
なお、この例においては、MOX燃料棒のみが使用され
ており、UO燃料棒は使用されていないが、UO
燃料とし水を減速材兼冷却材として設計された熱中性子
原子炉にも、MOX燃料を核燃料とし水を減速材兼冷却
材として設計された熱中性子原子炉にも、使用されるこ
とができるMOX燃料の燃料集合体が、MOX燃料棒の
みを使用していても支障ないことは明らかである。図示
するように、中央部に高富化度のMOX燃料棒が配置さ
れ、これを囲んで、外周に行くにしたがい富化度が低く
されているMOX燃料棒が配置される。しかも、重要な
ことは、富化度が段階的に低下されている4種類のMO
X燃料棒が用意されているので、MOX燃料集合体の核
分裂性Puの平均富化度は約3%である。そして、わが
国の現行法制においては、MOX燃料装荷炉心のMOX
燃料棒の装荷割合は1/3以下と規定されているから、
燃料集合体の本数は約300本となり、燃料集合体1本
当たりの核分裂性Puの重量は約5キログラムであるの
で、核分裂性Puの重量は、炉心全体では約1,600
キログラムである。 要するに、この燃料集合体の設計思
想は、従来のUO燃料集合体(図4を参照して説明し
た燃料集合体、すなわち、MOXを使用しない燃料集合
体)の設計思想をその侭受け継いだものであり、従来の
UO燃料集合体のUO燃料棒を、単に、濃縮度に応
じた富化度のMOX燃料棒に取り替えただけのものであ
る。 すなわち、濃縮度が最も高いUO燃料棒を富化度
が5%程度であるMOX燃量棒に替え、濃縮度がそれ程
高くないUO燃料棒を富化度がそれ程高くないMOX
燃量棒に替えたと言うものであり、UOを燃料とする
燃料集合体の場合と同様、5%程度以下のかなり多種類
の富化度のMOX燃料棒(燃料棒の総数に占める割合は
80%に相当する。)を用意しておき、燃料集合体内の
領域の要請に応じ、適宜、当該領域に最適の富化度のM
OX燃料棒を選択的に使用することゝされていることで
ある。
【0009】この設計思想は、下記のように整理するこ
とができる。 1.相互に富化度が異なる多種類のMOX燃料棒が使用
される。 2.各MOX燃料棒の富化度は5%程度以下と比較的低
い。 3.使用されるMOX燃料棒の総数は極めて多く、燃料
棒総数の約80%である。 4.これらの低富化度・多種類のMOX燃料棒を、燃料
集合体全体の温度が平均化するように、結果的に、炉心
全体の温度が平均化するように、適宜、選択配置する。
【0010】この設計思想は、UOの特性とMOXの
特性との相違にもとづき、下記の欠点を惹起する。 1.UO燃料の原料である天然Uは核分裂性Uである
235Uを0.3%しか含まないので、UO燃料の場
合は、濃縮度を5%に上昇するには、多額のコストを必
要とする。ところが、MOX燃料の原料である、使用済
み核燃料の再処理によって得られるMOXは、核分裂性
Pu(239Puと241Pu)を60〜70%含むの
で、MOX燃料の場合は、富化度を5%に低下するため
に多額のコストを必要とする。要するに、UO燃料の
場合は、濃縮度が低ければ低い程、コスト負担は少ない
が、MOX燃料の場合は、富化度が低ければ低い程、コ
スト負担は大きくなる。つまり、濃縮度/富化度とコス
トとの関係は、UOの場合とMOXの場合とでは全く
反対である。 2.種類が多くなればなる程、コスト負担が大きくなる
ことは通常である。 3.UO燃料の使用済み燃料は、核燃料として使用す
る意味における価値が大きいが、MOX燃料の使用済み
燃料は、核燃料として使用する意味における価値の低下
が甚だしい。その理由は、UO燃料の使用済み燃料
は、239Pu・ 40Pu・241Pu・242Pu
を含み、核分裂性Puである239Puと 41Puと
を多量に含むが、MOX燃料の使用済み燃料の239
uと241Puとの含有量は少なく、非核分裂性Uであ
240Puと242Puとが多いからである。
【0011】 この性質を、稍詳細に説明すると、下記の
とおりである。UO燃料は、これを熱中性子原子炉で
燃焼すると、235Uが、中性子との衝突を条件とし
て、核分裂して発熱・発電に寄与する一方、238
は、中性子を吸収すると、239Pu、240Pu、
241Pu、242Puへと遷移し、これらの同位体の
内、主に239Puと241Puとが核分裂性を有し、
将来の利用可能性がある。これに対して、MOX燃料
は、当初からPuを含んでいるので、原子炉内で発生す
るPuの変化は、下記のとおりである。先ず、238
が、中性子を吸収すると、239Pu、240Pu、
241Pu、242Puへと、UO燃料と同様に、大
きな質量数を有するPuへと遷移し、239Puは、
240Pu、241Pu、242Puへと遷移し、
240Puは、241Pu、242Puへと遷移し、
241Puは、242Puへと遷移する。一方、240
PuO242PuOも更に高次のPuアイソトー
プに遷移する。つまり、MOX燃料の場合は、質量数の
大きなPuの全Pu量に対する割合が必然的に大きくな
る。換言すれば、UO燃料は、熱中性子原子炉で燃焼
した後も、各種の核分裂性Puアイソトープが生成され
るので、かなりの利用価値があるが、MOX燃料は、熱
中性子原子炉で燃焼した後は、核分裂反応に寄与しない
240Pu・242Puが、Pu全量中で大きな割合を
占めるので、核燃料としての利用価値が少ない。
【0012】そこで、これらの経済的不利益は、除去し
うるものなら、是非、除去するべきであるという要請が
ある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、これ
らの要請を満足させることにあり、UOを燃料とし水
を減速材兼冷却材として設計された熱中性子原子炉に
も、MOX燃料を核燃料とし水を減速材兼冷却材として
設計された熱中性子原子炉にも使用することができるM
OX燃料集合体の製造コストを低減することを可能にす
るとゝもに、そのMOX燃料集合体を燃焼した後に残さ
れた使用済みのMOX燃料を再処理して、核燃料として
再利用するという前提の下に、そのMOX燃料集合体の
使用済みのMOX燃料の利用価値を向上することを可能
にする改良を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係る熱中性子原
子炉用MOX燃料集合体の技術思想は、従来の熱中性子
原子炉用MOX燃料集合体の技術思想とは、根本的に異
なり、MOXの基本的性質にもとづき、コストの観点か
らも、その使用済みのMOX燃料の利用価値の観点から
も、最も有利になるようにすることをした追求した発想
にもとづくものであり、その技術思想は、下記のとおり
である。 1.MOX燃料棒の種類は、唯の1種類とする。 2.その単一種類のMOX燃料棒の富化度は、5〜15
重量、好ましくは、10〜15重量%と、従来のものに
較べて顕著に高くする。 3.MOX燃料集合体に使用される、その単一種類のM
OX燃料棒の本数は、従来のものに較べて顕著に少なく
する。 その結果、上記の目的は、原子炉用核燃料が被覆管に封
入されている原子炉用核燃料棒の複数が、チャンネルボ
ックスの中にマトリックス状に配列され、原子炉用核燃
料棒相互間とチャンネルボックスの周囲とを減速・冷却
材たる水流が通過することゝされている熱中性子原子炉
用MOX燃料集合体において、核燃料棒の本数の20〜
40%は、核分裂性Pu(239Puと241Pu)を
5〜15重量%好ましくは5〜15重量%に含む単一種
類のMOX燃料棒であり、前記燃料棒の本数の80〜6
0%好ましくは20〜40%は、235UOを好まし
くは1〜5重量%含むUO燃料棒である熱中性子原子
炉用MOX燃料集合体によって達成される。そして、高
富化の単一種類のMOX燃料棒は、減速材の効果が少な
い領域に集中的に配置すると、有効である。その理由
は、核分裂が活発過ぎることを抑制するためである。ま
た、減速材の効果が強い領域に、235Uを好ましくは
1〜5重量%に含むGd燃料棒が配置されることが望ま
しい。その理由は、燃料棒の装荷当初核分裂を適度に抑
制し、装荷後暫くした後は、Gdの中性子吸収効果がな
くなるので、UO燃料棒と同様に燃焼に寄与すること
になるからである。なお、結果として、MOX燃料棒と
Gd燃料棒とは、相互に隣接して配置されることにな
る。減速材の効果が弱い領域には、減速材兼冷却材たる
水流を通過させる通路として機能するウオーターロッド
が設けられることが望ましい。核分裂を促進し、燃焼度
を向上し、核分裂の発生が全ての領域で平均化するため
に有効であるためである。なお、現在稼動中の、UO
を主たる燃料とする原子炉には、図4等に示すように、
燃料集合体の中心領域にウオーターロッドが設けてある
が、MOX燃料を主たる燃料とする原子炉にあっては、
ウオーターロッドの配置位置は、MOX燃料棒近辺を含
め、任意の領域に選択することができる。
【0015】
【作用】本発明に係るMOX燃料集合体の作用と特徴的
利益とは、下記のとおりである。第1に、上記したとお
り、MOX燃料の原料は、UO燃料を燃焼した後に残
された使用済み核燃料であり、それを再処理して得られ
たMOXは、核分裂性Pu(239Puと241Pu)
を60〜70%含むので、MOX燃料の場合は、富化度
を5%程度に低下するために多額のコストを必要とす
る。一方、UO燃料の原料である天然Uは核分裂性U
である235Uを0.3%しか含まないので、UO
料の場合は、濃縮度を5%程度に上昇するには、多額の
コストを必要とする。本願発明に係るMOX燃料集合体
には、富化度が5〜15重量、好ましくは、10〜15
重量%の高富化MOX燃料棒が使用されているので、製
造コストが廉くなる利益がある。第2に、如何なる場合
でも、単一種類の大量生産が、多種類少量生産よりコス
ト的に有利なことは明らかである。本願発明に係るMO
X燃料集合体には、単一種類のMOX燃料棒しか使用さ
れていないので、この点からも、製造コストが廉くなる
利益がある。第3に、原子炉において、臨界を維持する
に必要な核分裂性物質の量は概ね予想できる。したがっ
て、使用されるMOX燃料棒の種類が1種類で、使用さ
れるMOX燃料棒の富化度が高い場合には、使用される
べき燃料棒の本数は少なくなり、濃縮度の低いUO
料棒の数が増大する。この理由により、本願発明に係る
MOX燃料集合体に使用される高富化度のMOX燃料棒
の本数は少なくて済むことになる。第4に、本願発明に
係るMOX燃料集合体の使用済み燃料の価値が従来のも
のより高い理由に就いて、図面を参照して、説明する。
【0016】図6参照 その理由は、235Uと239Puと240Puと
241Puと242Puとの核反応断面積(吸収と核分
裂との双方を含む。)の相違にもとづく。そこで、これ
らの物質の核反応断面積と温度(熱エネルギー)との関
係を示す図6を参照して説明する。図6に示すように、
235Uの核反応断面積は熱中性子に対応するエネルギ
ー領域(低エネルギー領域)において大きく高速中性子
に対応するエネルギー領域(高エネルギー領域)におい
て小さいが、239Puと240Puと241Puと
242Puとの中性子吸収断面積は熱中性子よりはエネ
ルギーの高い熱外中性子領域に大きな共鳴吸収ピークを
有する。このことは、235U燃料の場合は、放出され
た中性子のかなりの量は熱中性子となり、核分裂性の
23 Uと衝突して核分裂に寄与する確率があるが、M
OX燃料の場合は、放出された中性子のかなりの量は、
Puに途中で吸収されて(Puを高次化して)、核分裂
に寄与する確率が低いことを意味する。
【0017】この事実は、下記する表1に示す、燃焼前
のMOX燃料集合体中のPu全体の組成と燃焼後のMO
X燃料集合体中のPu全体の組成とを比較しても、明ら
かである。 表1 燃焼前のMOX燃料 燃焼後のMOX燃料 集合体中のPu組成 集合体中のPu組成 238Pu 2% 3% 239Pu 59% 31% 240Pu 27% 37% 241Pu 8% 16% 242Pu 4% 13% 表から明らかなように、核分裂性Pu(239Puと
241Puとの和)の減少率(燃焼前の67%から燃焼
後の47%に減少している。)が大きい。このことは、
言葉を変えれば、MOX燃料の使用済み燃料の核分裂性
Puの含有量( 39Puと241Puとの和)の全P
u量に対する割合が少ないということである。
【0018】ところで、燃料棒単位で考慮すると、下記
する表2に示すように、使用済みのUO燃量棒に含ま
れる239Puと241Puとの和の量の使用済みのU
燃量棒に含まれるPuアイソトープ全量に対する割
合は68%であるが、使用済みのMOX燃料棒に含まれ
239Puと241Puとの和の割合は、39%であ
る。この比較から明らかなように、MOX燃料集合体
(MOX燃料棒とUO 燃料棒とを含む。)において
も、高次化の問題は大きな問題ではあるが、使用済み燃
料の利用価値が顕著に低下するのはMOX燃料棒におい
てのみであり、本発明に係る燃料集合体の総数中、かな
り多くを占めるUO燃料棒においてはそれ程大きな問
題ではなく、UO燃料棒の使用済み燃料は已然とし
て、かなりの利用価値を保持することがわかる。このよ
うに、本発明の発明者等は、MOX燃料棒の富化度を高
くし(核分裂性Puの含有量を5〜15重量%好ましく
は10〜15重量%と高くし)、富化度の種類を1種類
に制限し、高富化MOX燃料の使用本数を制限すれば
(燃料棒全体の20〜40%好ましくは20〜25%に
制限すれば)、上記の要請を満足しうることが明らかで
あるという自然法則を発見し、この自然法則を巧みに利
用して、本願発明を完成した。 表2 使用済みのUO燃料棒の 使用済みのMOX燃料棒の Pu組成 Pu組成 238Pu 2% 2% 239Pu 55% 22% 240Pu 24% 43% 241Pu 13% 17% 242Pu 6% 16%
【0019】上記の理由は、下記のように整理すること
ができる。 1.上記したとおり、MOX燃料集合体のそれぞれが含
有するべき核分裂性Puアイソトープの量は、予め特定
されている。もし、そのMOX燃料集合体が含有するP
uアイソトープの全量に対する核分裂性アイソトープの
量の割合が減少すれば、そのMOX燃料集合体が含有す
るPuアイソトープの全量は増加する筈である。ところ
で、核分裂性Puアイソトープも、非核分裂性Puアイ
ソトープも、α線を放出するので、その使用済み核燃料
を再処理する工場での放射能遮蔽の要求は厳しくなり、
不利益を惹起する。したがって、MOX燃料集合体が含
有するPuアイソトープの全量に対する核分裂性アイソ
トープの量の割合は多いことが有利である。 2.240Puの中性子吸収断面積は大きいので、
240Puの含有量が多くなると、核分裂性Puアイソ
トープの所要量が増大する。したがって、240Puの
含有量が43%と大きいMOX燃料棒の使用済み核燃料
は優れた核燃料とは認められない。 3一方、240Puは、核分裂性Puアイソトープであ
241Puを生成するので、240Puは、将来の核
分裂を増大する結果を惹起する。この現象は、将来に亘
っての原子炉特性の予想を複雑にし、設計上の困難を惹
起する欠点を伴う。 4.したがって、本発明に係るMOX燃料集合体におい
て、MOX燃料棒の富化度を高くし(核分裂性Puの含
有量を5〜15重量%好ましくは10〜15重量%と高
くし)、富化度の種類を1種類に制限し、高富化MOX
燃料の数量を制限(燃料棒全体の20〜40%好ましく
は20〜25%に制限)することは、綜合的に判断し
て、有利なことである。
【0020】些か蛇足の感はあるが、学術的表現をもっ
て、上記事項を再度述べる。実際に、使用済みのUO
燃料を再処理して得られるPuには、239Pu〜
242Puが、ある組成比をもって分布しており、Pu
を熱中性子炉で燃焼すると、Puが大きな質量数に向か
って遷移することが確認されている。学術的には、この
現象を、Puの高次化と称する。また、MOX燃料を使
用する場合も、Puの高次化現象は発生する。その上、
MOX燃料には、当初からPuが含まれているから、熱
中性子原子炉中で燃焼された後のPuの高次化状態は、
UO燃料の場合より、遥かに進む結果となる。Puの
核分裂性アイソトープは、239Puと24 Puとで
あるから、Puの高次化現象は、Puアイソトープ総量
に対する核分裂性Puアイソトープの割合の低下を意味
し、使用済みPuの核燃料材料としての価値を低下する
ことを意味する。この事実は、使用済み核燃料の再処理
を前提として考慮する場合、UO燃料の場合と異な
り、MOX燃料の場合は、燃焼そのものゝ最適化もさる
ことながら、高次化現象を抑制する必要があることを示
す。MOX燃料がPuを当初から含んでいるために、高
次化現象が促進されるのであるから、高富化度のMOX
燃料棒を少量使用すれば、Puの高次化現象を少量のM
OX燃料棒のみに限定し、多くのUO燃料棒は、使用
後再処理することができ、全体としては、高次化現象の
悪影響を避けることができ、有利であることが明らかで
ある。したがって、本発明は、この着想を具体化して、
使用済みのMOX燃料を再処理して利用可能の核分裂物
質を取り出すという前提の下に、使用済みMOX燃料の
価値を向上することを求める要請を満足したものであ
る。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
実施の形態に係るMOX燃料集合体(UOを燃料とし
水を減速材兼冷却材として設計された熱中性子原子炉に
も、MOX燃料を燃料とし水を減速材兼冷却材として設
計された熱中性子原子炉にも使用されうるMOX燃料
(PuOとUOとの混合物)の核燃料集合体)の3
例の平面配置(断面)を、図を参照して、説明する。
【0022】第1実施例 現在稼動中の軽水炉では、運転サイクルの長さや燃焼度
等に法制上の制限があるため、本発明の要旨に係る、極
めて富化度の高い、少数のMOX燃料棒を使用する核燃
料集合体を使用することには、法制上の制約がある場合
がある。しかし、第1実施例にあっては、そのような現
行法制上の規制に捕らわれることなく、本MOX燃料集
合体を燃料として、長期サイクル運転や高燃焼度使用に
対して、最大限能力を発揮しうる設計を想定してある。
その結果、単一種類のMOX燃量棒の富化度を14%と
高くし、燃料棒の総数に占めるMOX燃量棒の割合を3
3%に下げてある。 図1参照 図1は、MOX燃料を主たる燃料とし水を減速材兼冷却
材として設計された熱中性子原子炉にも、UO燃料を
主たる燃料とし水を減速材兼冷却材として設計された熱
中性子原子炉にも使用されることができ、燃焼度が70
GWd/・tonであるMOX燃料を燃料とする燃料集
合体の1例の平面図である。図1において、1・2・3
・Gは、それぞれ、燃料棒の番号であり、長さは概ね4
メートルである。各燃料棒の直径は約11ミリメートル
であり、燃料集合体の各辺の長さは約15センチメート
ルである。Wはウオーターロッドであり、その1辺は約
4センチメートルである。燃料棒1は、235Uを0.
225%含み核分裂性Puを14重量%含む高富化MO
X燃料棒であり、使用数は24本である。燃料棒2は、
235Uを4.9重量%含むUO燃料棒であり、使用
数は24本である。燃料棒3は、235Uを4.5重量
%含むUO燃料棒であり、使用数は4本である。燃料
棒Gは、235Uを3.5重量%とGdを3.5重量%
含むGd燃料棒であり含み、使用数は20本である。図
示するように、唯1種類の高富化(富化度14重量%)
MOX燃料棒1は、減速材の効果が少ない領域に集中的
に配置されている。2・3はUO燃料棒であり、MO
X燃料棒は1のみであるから、MOX燃料棒の燃料棒全
数に対する割合は33%である。したがって、富化度は
従来技術における5重量%より、顕著に大きくされてお
り、また、MOX燃料棒の燃料棒全数に対する割合は、
従来技術におけるMOX燃料棒の数の燃料棒総数に対す
る割合80%(図5に示す従来技術に係るMOX燃料棒
と燃料棒総数との比)に比し、顕著に少なくされてい
る。Gd棒の機能は、上記と同様であり、装荷当初は核
分裂反応を抑制し、装荷後暫くした後は、中性子吸収効
果が無くなり、UO燃料と同様に振舞う。上記のMO
X燃量集合体の製造方法は従来の方法と概ね同一であ
る。第1工程において、ピュウレックス法、または、そ
の他の乾式法または湿式法を使用して、使用済みMOX
燃料から核分裂性Pu(239Puと241Pu)を取
り出す。第2工程において、PuO粉とUO粉とを
混合して、所望の富化度のMOXを得る。第3工程にお
いて、MINAS法またはSBR法を使用して、上記の
MOXをよく混合する。第4工程において、上記のMO
Xを成形・焼成して、PuO・UOのセラミックス
ペレットを製造する。 第5工程において、上記のPuO
・UOのセラミックスペレットをジルカロイシース
に封入して、MOX燃量棒を製造する。第6工程におい
て、上記のMOX燃量棒とUO燃量棒とをチャンネル
ボックスに装入して、MOX燃量集合体を完成する。こ
のように、使用されるMOX燃料棒の種類は1種類に制
限され、使用されるMOX燃料棒の数は低減され、使用
されるMOX燃料の富化度が高くされているので、本発
明の目的であるMOX燃料集合体の製造コストの低減と
使用済みのMOX燃料集合体の利用価値の向上とが実現
する。
【0023】第2実施例 上記したとおり、現在稼動中の軽水炉では、運転サイク
ルの長さや燃焼度等に法制上の制限があるため、本発明
の要旨に係る、極めて富化度の高い、少数のMOX燃料
棒を使用することには、法制上の制約がある場合があ
る。そこで、第2実施例にあっては、現法制の下におけ
る規制に違反しない範囲において、本MOX燃料を燃料
として、長期サイクル運転や高燃焼度使用に対して、最
大限能力を発揮しうる設計を想定してある。すなわち、
単一種類のMOX燃量棒の富化度を6%と高くし、燃料
棒の総数に占めるMOX燃量棒の割合を25%に下げて
ある。 図2参照 図2は、MOX燃料を主たる燃料とし水を減速材兼冷却
材として設計された熱中性子原子炉にも、UO燃料を
主たる燃料とし水を減速材兼冷却材として設計された熱
中性子原子炉にも使用されることができ、燃焼度が45
GWd/・tonである、MOX燃料を燃料とする燃料
集合体の1例の平面配置図(断面図)でる。図2におい
て、1・2・3・4・Gは、それぞれ、各燃料棒に付さ
れている番号であり、長さは概ね4メートルであり、長
さは概ね4メートルである。各燃料棒の直径は約11ミ
リメートルであり、燃料集合体の各辺の長さは約15セ
ンチメートルである。Wはウオーターロッドであり、そ
の1辺は約4センチメートルである。燃料棒1は、
235Uを0.225%含み核分裂性Puを約6重量%
含む高富化MOX燃料棒であり、使用数は16本であ
る。燃料棒2は、235Uを約4重量%含むUO燃料
棒であり、使用数は28本である。燃料棒3は、 35
Uを約3.5重量%含むUO燃料棒であり、使用数は
8本である。燃料棒4は、235Uを約3重量%含むU
燃料棒であり、使用数は4本である。燃料棒Gは、
235Uを約2重量%とGdを2.2重量%含むGd燃
料棒であり、使用数は16本である。図示するように、
唯1種類の高富化(富化度6重量%)MOX燃料棒1
は、減速材の効果が少ない領域に集中的に配置されてい
る。2・3・4はUO燃料棒であり、MOX燃料棒は
1のみであるから、MOX燃料棒の燃料棒全数に対する
割合は25%である。したがって、富化度は従来技術に
おける5重量%より、顕著に大きくされており、また、
MOX燃料棒の燃料棒全数に対する割合は、従来技術に
おけるMOX燃料棒の数の燃料棒総数に対する割合80
%(図5に示す従来技術に係るMOX燃料棒と燃料棒総
数との比)に比し、顕著に少なくされている。Gd燃料
棒の機能は、上記と同様であり、装荷当初は核分裂反応
を抑制し、装荷後暫くした後は、中性子吸収効果が無く
なり、UO燃料と同様に振舞う。上記のMOX燃量集
合体の製造方法は第1実施例の方法と全く同一である。
このように、使用されるMOX燃料棒の種類が単一種類
に制限され、使用されるMOX燃料棒の数が低減され、
使用されるMOX燃料棒の富化度が高くされているの
で、本発明の目的であるMOX燃料集合体の製造コスト
の低減と使用済みのMOX燃料集合体の利用価値の向上
とが実現する。 第3実施例 上記したとおり、現在稼動中の軽水炉は、本来UO
燃料とすることゝされているため、構造的制約があり、
本発明の要旨に係る、極めて富化度の高い、少数のMO
X燃料棒を使用することには、種々制約がある場合があ
る。そこで、第3実施例にあっては、この制約を想定
し、現在稼動中の軽水炉にも使用することを想定した上
で、可能なかぎり、本発明の特質を実現してある。すな
わち、単一種類のMOX燃量棒の富化度を6%と高く
し、燃料棒の総数に占めるMOX燃量棒の割合を33%
に下げてある。 図3参照 図3は、UOを燃料とし水を減速材兼冷却材として設
計・製造した熱中性子原子炉に使用されることができ、
燃焼度が45GWd/・tonであり、MOX燃料を燃
料とする燃料集合体の1例の平面配置図(断面図)で
る。図3において、1・2・3・4・Gは、それぞれ、
燃料棒の番号であり、長さは概ね4メートルである。各
燃料棒の直径は約11ミリメートルであり、燃料集合体
の各辺の長さは約15センチメートルである。Wはウオ
ーターロッドであり、その1辺は約3センチメートルで
ある。燃料棒1は、235Uを約0.225%含み核分
裂性Puを約8重量%含む高富化MOX燃料棒であり、
使用数は24本である。燃料棒2は、235Uを約4重
量%含むUO燃料棒であり、使用数は20本である。
燃料棒3は、235Uを約3.5重量%含むUO燃料
棒であり、使用数は8本である。燃料棒4は、235
を約3重量%含むUO燃料棒であり、使用数は4本で
ある。燃料棒Gは、235Uを約2重量%とGdを2重
量%含むGd燃料棒であり、使用数は16本である。図
1・図2に図示する場合と同様に、唯1種類の高富化
(富化度6重量%)MOX燃料棒1は、減速材の効果が
少ない領域に集中的に配置されている。2・3・4はU
燃料棒であり、図1・図2に図示する場合と同様
に、MOX燃料棒は1のみであり、MOX燃料棒の燃料
棒全数に対する割合は33%である。したがって、富化
度は従来技術における5重量%より、顕著に大きくされ
ており、また、MOX燃料棒の燃料棒全数に対する割合
は、従来技術におけるMOX燃料棒の数の燃料棒総数に
対する割合80%(図4に示す従来技術に係るMOX燃
料棒と燃料棒総数との比)に比し、顕著に少なくなくさ
れている。Gd棒の機能は、上記と同様であり、装荷当
初は核分裂反応を抑制し、装荷後暫くした後は、中性子
吸収効果が無くなり、UO燃料と同様に振舞う上記の
MOX燃量集合体の製造方法は第1実施例の方法と全く
同一である。このように、使用されるMOX燃料棒の種
類は単一種類に制限され、使用されるMOX燃料棒の数
は低減され、使用されるMOX燃料棒の富化度は高くさ
れているので、本発明の目的であるMOX燃料集合体の
製造コストの低減と使用済みのMOX燃料集合体の利用
価値の向上とが実現する。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る原子
炉用MOX燃料集合体においては、MOX燃料棒の富化
度を単一種類に限定し、しかも、その富化度を高くし
(核分裂性Puアイソトープの含有量を5〜15重量%
好ましくは10〜15重量%と高くし)、その上、核分
裂性Puアイソトープを高富化度に含有する燃料棒の使
用量を、燃料棒全体の20〜40%好ましくは20〜2
5%と極めて少なくしてあるので、低富化度にするため
の高いコストを必用とせず、MOX燃料棒の種類は単一
種類であるから、この点からも、コストが廉く、しか
も、このMOX燃料集合体を燃焼した後に残った使用済
み燃料棒の一部(UO燃料棒の使用済み燃料棒)に
は、核分裂性Puアイソトープを多量に含むことになる
ので、使用済みのMOX燃料集合体を再処理して利用可
能の核分性物質を取り出すという前提の下において、こ
の使用済みMOX燃料集合体の価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るMOX燃料集合体の
平面配置図(断面図)である。
【図2】本発明の第2実施例に係るMOX燃料集合体の
平面配置図(断面図)である。
【図3】本発明の第3実施例に係るMOX燃料集合体の
平面配置図(断面図)である。
【図4】従来技術に係るUO燃料集合体の平面配置図
(断面図)である。
【図5】従来技術に係るMOX燃料集合体の平面配置図
(断面図)である。
【図6】235Uと239Puと240Puと241
uと242Puとの核反応断面積(吸収と核分裂との双
方を含む。)と温度(熱エネルギー)との関係を示すグ
ラフである。
【符号の説明】
1・2・3・4・G 図1・図2に示す本発明の第1
・第2実施例に係るMOX燃料棒の番号 W ウオーターロッド 1・2・3・4・5 図3に示す従来技術に係るUO
燃料棒の番号 P1・P2・P3・P4・G1・G2 図4に示す従
来技術に係るMOX燃料棒の番号
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 溝上 伸也 東京都千代田区内幸町1丁目1番3号 東 京電力株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原子炉用核燃料が被覆管に封入されて
    なる原子炉用核燃料棒の複数が、チャンネルボックスの
    中にマトリックス状に配列され、前記原子炉用核燃料棒
    相互間と前記チャンネルボックスの周囲とを減速・冷却
    材たる水流が通過することゝされてなる熱中性子原子炉
    用MOX燃料集合体において、 前記核燃料棒の本数の20〜40%は、核分裂性Puを
    5〜15重量%に含む単一種類のMOX燃料棒であり、
    前記燃料棒の本数の80〜60%は、少なくとも235
    Uを含むUアイソトープを含むUO燃料棒であること
    を特徴とする熱中性子原子炉用MOX燃料集合体。
  2. 【請求項2】 前記燃料棒の本数の20〜25%は、
    核分裂性Puを5〜15重量%に含む単一種類のMOX
    燃料棒であり、前記燃料棒の本数の80〜75%は、少
    なくとも235Uを含むUアイソトープを含むUO
    料棒であることを特徴とする請求項1記載の熱中性子原
    子炉用MOX燃料集合体。
  3. 【請求項3】 前記核燃料棒の本数の20〜40%
    は、核分裂性Puを10〜15重量%に含む単一種類の
    MOX燃料棒であり、前記燃料棒の本数の80〜60%
    は、少なくとも235Uを含むUアイソトープを含むU
    燃料棒であることを特徴とする請求項1記載の熱中
    性子原子炉用MOX燃料集合体。
  4. 【請求項4】 前記UO燃料棒が含む235Uの量
    は、1〜5重量%であることを特徴とする請求項1、
    2、または、3記載の熱中性子原子炉用MOX燃料集合
    体。
  5. 【請求項5】 前記単一種類のMOX燃料棒は前記減
    速材の効果が弱い領域に配置されることを特徴とする請
    求項1、2、3、または、4記載の熱中性子原子炉用M
    OX燃料集合体。
  6. 【請求項6】 前記減速材の効果が強い領域にGd棒
    が配置されてなることを特徴とする請求項1、2、3、
    4、または、5記載の熱中性子原子炉用MOX燃料集合
    体。
  7. 【請求項7】 前記減速材の効果が弱い領域に、前記
    減速材兼冷却材たる水流を通過させる通路として機能す
    るウオーターロッドが設けられてなることを特徴とする
    請求項1、2、3、4、5、または、6記載の熱中性子
    原子炉用MOX燃料集合体。
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