JP2003096508A - 微粒子製造方法および微粒子製造装置 - Google Patents

微粒子製造方法および微粒子製造装置

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JP2003096508A JP2001292279A JP2001292279A JP2003096508A JP 2003096508 A JP2003096508 A JP 2003096508A JP 2001292279 A JP2001292279 A JP 2001292279A JP 2001292279 A JP2001292279 A JP 2001292279A JP 2003096508 A JP2003096508 A JP 2003096508A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粒径の揃ったナノメートルサイズの微粒子を
作製できる微粒子製造方法と微粒子製造装置を提供す
る。 【解決手段】 反応容器内に、一方より微粒子原料を含
む反応ガス流を導入するとともに、この反応ガス流とほ
ぼ対向する他方より希釈ガス流を導入する。反応ガス流
中の微粒子原料を加熱励起して微粒子成長を促した後、
反応ガス流および希釈ガス流をそれぞれ、流路断面にお
ける流速が略均一になるように整流し、合流させて微粒
子成長を停止させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微粒子製造方法お
よび微粒子製造装置に関し、特にナノメートルサイズの
微粒子の気相成長方法およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ナノメートルサイズの微粒子は、量子サ
イズ効果により従来にない機能を発揮するため、新しい
形態の物質として近年注目されつつあり、微粒子の材料
種類によって、可視光LED素子、ディスプレイの蛍光
体や磁気記録媒体などに応用されている。
【0003】微粒子は、一般に気相成長方法を用いて作
製されている。図8は、従来の微粒子製造装置を示す構
成図である。
【0004】例えば、蛍光材であるZnS微粒子は、図
8に示す装置を用い、次のような方法で作製されている
(Okuyama et al. J.Materials Science, vol32, 1229-
1237(1997))。
【0005】即ち、原料ガスであるZn(NO32、S
C(NH22を、常圧の不活性ガス雰囲気に調整された
反応容器101内に導入し、ここで、反応容器101に
設けられたヒータ102により600℃〜700℃に加
熱する。加熱された原料ガスは、次式(F1)の化学反
応を起こし、ZnS微粒子核を生成する。
【0006】 Zn(NO32+SC(NH22→ZnS+NO2+CO2+(NH22…(F 1) 生成されたZnS微粒子核は、さらに反応容器を移動す
る過程で成長する。
【0007】得られたZnS微粒子は、他のガスととも
に反応容器101から排出され、その途中で不活性ガス
により希釈され、不活性ガスと共にクーラ103に導か
れ室温程度に冷却される。
【0008】冷却された生成微粒子を含むガスは、界面
活性剤を含む溶液が入った回収装置104に通気され、
生成微粒子のみが溶液中に捕集され、分散状態を保って
保存される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】図9(a)および図9
(b)は、上述する従来の気相成長方法における、反応
容器101に原料ガスが導入され、微粒子生成反応開始
されてからの反応時間に対する微粒子の生成数と微粒子
径の変化を示すグラフである。
【0010】図9(a)に示すように、微粒子生成数は
時間の経過とともに当初は単調に増加していくが、0.
001秒を経過するあたりで、飽和し、これ以降は時間
とともに次第に減少していく。0.1秒を過ぎると微粒
子生成数の減少の度合いはより大きくなる。
【0011】一方、図9(b)に示すように、平均微粒
子径は、微粒子生成数が単調に伸びる0.001秒あた
りまではほとんど変化しないものの、微粒子生成数が飽
和する0.001秒あたりから時間とともに増大してい
く。
【0012】これらのデータから、従来の気相成長法を
用いた微粒子成長方法では、微粒子の成長が次の三段階
(〜)で進行していると考えられる。
【0013】即ち、第1段階(微粒子核生成過程):
原料ガスが分解し粒子生成のもととなる微粒子の核(原
子)を生成する。この過程では、微粒子数は増大する
が、微粒子径はほとんど変化しない。
【0014】第2段階(微粒子クラスター生成過
程):生成した微粒子の核同士が、数個〜数100個結
合し、ナノメートルサイズのクラスターに成長する。従
って、この段階に入ると、微粒子生成数は時間とともに
減少するが、微粒子径は増加し始める。
【0015】第3段階(クラスター凝集過程):生成
したナノメートルサイズのクラスター同士が凝集し、1
0ナノメートル以上の微粒子が生成する。これに伴い微
粒子生成数はさらに減少する。
【0016】上記3つの段階のうち、量子効果を示す1
0ナノメートル以下の微粒子の核生成が最も効果的に進
行するのは第1段階であるが、図9(a)、図9(b)
に示すように、この段階は微粒子生成反応の開始からせ
いぜい0.001秒までに過ぎず、極めて短時間に終了
する。従来の気相成長法を使用した場合、0.1秒以下
で反応時間を制御することはできず、微粒子の成長は不
可避的に第3段階まで進行する。その結果、得られた微
粒子の中には10ナノメートル以上の微粒子が多く含ま
れることになる。図10に従来の方法で得られた微粒子
の粒子径分布を示す。
【0017】従って、量子効果が生じる10ナノメート
ル以下の径の微粒子を得るためには、従来の製造方法に
より回収保存された微粒子を、さらに分級器を用いて所
定のサイズの微粒子のみを取り出す作業が必要になる。
この結果、微粒子の製造に余分なコストがかかる。
【0018】本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされ
たもので、分級を必要とせず10ナノメートル以下の微
粒子を製造できる微粒子製造方法およびその微粒子製造
装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の微粒子製造方法
の第1の特徴は、反応容器内に、一方より微粒子原料を
含む反応ガス流を導入し、反応ガス流中の微粒子原料を
加熱して微粒子成長を促し、反応ガス流とほぼ対向する
他方より希釈ガス流を導入し、反応ガス流および前記希
釈ガス流をそれぞれ、流路断面における流速が略均一に
なるように整流した後に上記反応ガス流と上記希釈ガス
流とを合流させて微粒子成長を停止させることである。
【0020】上記微粒子製造方法の第1の特徴によれ
ば、反応ガス流中の微粒子を加熱した後、すぐに反応容
器内で、対向する方向から導入された希釈ガスとの合流
によって微粒子成長を停止させるので、微粒子生成反応
時間を短縮し、微粒子の凝集による成長を抑制すること
ができる。また、反応ガス流と希釈ガス流をそれぞれ流
路断面で均一な速度に整流した後に両者を合流させてい
るので、合流域での流路断面でガスの交わり方を均一に
できる。この結果、微粒子の大きさを決める微粒子生成
反応が開始から停止にいたる時間も均一化できるので、
ナノメートルサイズの径の揃った微粒子を得ることがで
きる。
【0021】本発明の微粒子製造方法の第2の特徴は、
反応容器内に、一方より微粒子原料を含む反応ガス流を
導入するとともに、反応ガス流とほぼ対向する他方より
希釈ガス流を導入し、反応ガス流と希釈ガス流とが合流
する合流域で、微粒子原料を励起して微粒子成長を促す
とともに、希釈ガス流による希釈により該微粒子成長を
停止させることである。
【0022】上記微粒子製造方法の第2の特徴によれ
ば、反応ガス流と希釈ガス流との合流域において、微粒
子原料を励起させ微粒子の生成を図るとともに、希釈ガ
ス流による希釈により微粒子成長を停止させるので、微
粒子成長開始直後に微粒子の成長がとまる。従って微粒
子成長時間を極めて短時間にすることができる。従っ
て、微粒子径の結合、凝集による増大を抑制し、ナノメ
ートルサイズの微粒子を生成できる。
【0023】上記第2の特徴を有する微粒子製造方法に
おいて、上記合流域で、プラズマを発生させることによ
って微粒子原料を励起して微粒子成長を促してもよい。
【0024】また、上記第2の特徴を有する微粒子製造
方法において、希釈ガス流を上記合流域に達する前に加
熱し、合流域において、希釈ガス流の熱により微粒子原
料を励起して微粒子成長を促してもよい。
【0025】さらに、上記第2の特徴を有する微粒子製
造方法において、希釈ガス流として酸素ガス含有するガ
ス流を使用し、上記合流域において、酸素ガスとの燃焼
反応により、微粒子原料を励起して微粒子成長を促して
もよい。
【0026】なお、上記第2の特徴を有する微粒子製造
方法において、上記合流域に達する前に、反応ガス流と
希釈ガス流とを、ぞれぞれ、流路断面における流速が略
均一になるように整流してもよい。
【0027】この場合は、合流域における流路断面で、
反応ガス流と希釈ガス流の交わり方が均一になるため、
微粒子生成反応の開始から停止にいたる条件を均一にで
きる。微粒子径の大きさは反応時間に依存しているの
で、ナノメートルサイズの径の揃った微粒子を得ること
ができる。
【0028】本発明の微粒子製造装置の第1の特徴は、
反応容器と、この反応容器の一方に設けられた、微粒子
原料を含む反応ガス流を導入する1または複数の導入管
を持つ第1の導入部と、反応容器内の上記第1の導入部
とほぼ対向する他方に設けられた、希釈ガス流を導入す
る1または複数の導入管を持つ第2の導入部と、反応ガ
ス流中の微粒子原料を励起する手段と、反応ガス流を流
路断面における流速を略均一に整流する第1のガス整流
手段と、希釈ガス流を流路断面における流速を略均一に
する整流する第2のガス整流手段と、整流後の前記反応
ガス流と整流後の前記希釈ガス流とが合流する合流域に
設けられたガス排出部と、上記ガス排出部から排出され
たガス中の微粒子を捕集する手段とを有することであ
る。
【0029】上記微粒子製造装置の第1の特徴によれ
ば、反応ガス流中の微粒子原料を励起した直後に、反応
容器内で希釈ガスとの合流によって微粒子成長を停止で
きるので、微粒子成長時間を短縮し、微粒子径の凝集に
よる増大を抑制することができる。また、反応ガス流と
希釈ガス流を第1の整流手段と第2の整流手段によりそ
れぞれ流路断面で均一な速度に整流した後に両者を合流
させているので、流路断面での反応ガス流と希釈ガス流
の混合状態を均一化できる。従って、微粒子生成反応が
開始から停止までの時間が均一になるので、得られる微
粒子径を揃えることができる。
【0030】本発明の微粒子製造装置の第2の特徴は、
反応容器と、この反応容器の一方に設けられた、微粒子
原料を含む反応ガス流を導入する1または複数の導入管
を持つ第1の導入部と、反応容器内の第1の導入部とほ
ぼ対向する他方に設けられた、希釈ガス流を導入する1
または複数の導入管を持つ第2の導入部と、反応ガス流
と希釈ガス流とが合流する合流域にプラズマを発生する
手段と、合流域に設けられたガス排出部と、ガス排出部
から排出されたガス中の微粒子を捕集する手段とを有す
ることである。
【0031】上記微粒子製造装置の第2の特徴によれ
ば、反応ガス流と希釈ガス流との合流域において、微粒
子原料をプラズマにより励起することで微粒子を生成す
るとともに、希釈ガス流による希釈により微粒子成長を
停止させるので、実質的な微粒子生成反応時間を大幅に
短縮化できる。従って、微粒子径の結合、凝集による増
大を抑制し、ナノメートルサイズ以下の微粒子を得るこ
とができる。
【0032】本発明の微粒子製造装置の第3の特徴は、
反応容器と、この反応容器の一方に設けられた、微粒子
原料を含む反応ガス流を導入する1または複数の導入管
を持つ第1の導入部と、反応容器内の前記第1の導入部
とほぼ対向する他方に設けられた、希釈ガス流を導入す
る1または複数の導入管を持つ第2の導入部と、希釈ガ
ス流を加熱する手段と、反応ガス流と希釈ガス流とが合
流する合流域に設けられたガス排出部と、このガス排出
部から排出されたガス中の微粒子を捕集する手段とを有
することである。
【0033】上記微粒子製造装置の第3の特徴によれ
ば、希釈ガス流を加熱し、反応ガス流と希釈ガス流との
合流域において、微粒子原料を希釈ガスの熱により加熱
励起し、微粒子核を生成するとともに、ほぼ同時に希釈
ガス流による希釈により微粒子成長を停止させるので、
微粒子生成反応時間を大幅に短縮化できる。従って、微
粒子径の結合、凝集による増大を抑制し、ナノメートル
サイズ以下の微粒子を得ることができる。
【0034】さらに、上記第2及び第3の特徴を有する
微粒子製造装置において、上記反応ガス流を流路断面に
おける流速を略均一に整流する第1の整流手段と、上記
希釈ガス流を流路断面における流速を略均一に整流する
第2の整流手段とを有してもよい。
【0035】この場合は、合流域における流路断面で、
反応ガス流と希釈ガス流の交わり方が均一になるため、
微粒子生成反応の開始から停止にいたる条件を均一にで
きる。従って、ナノメートルサイズの径の揃った微粒子
を得ることができる。
【0036】なお、第1及び第2の整流手段としては、
複数の開孔部を均一に配した板状体であり、ガス流の流
路に略垂直に配置されるものを使用することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の構成
を図面を参照しながら説明する。
【0038】(第1の実施の形態)図1は、第1の実施
の形態に係る微粒子製造装置の構成図である。この微粒
子製造装置は、反応容器1の一方の端部に原料ガス導入
部2とキャリヤガス導入部3とを備え、これらと対向す
る他方の端部に希釈ガス導入部4を備えている。また、
反応容器1内の、原料ガスとキャリヤガスの混合ガス流
(以下、「反応ガス流」と呼ぶ)の流路途中には、流路
断面での反応ガス流の流速を均一にするガス整流板6a
が配置されている。同様に、希釈ガス流の流路途中に
も、流路断面での不活性ガス流の流速を均一にするガス
整流板6bが配置されており、それぞれ図2は、ガス整
流板6(6a、6b)の構造例を示す斜視図である。同
図に示すように、ガス整流板6は、例えば金属やセラミ
ックスの板に約0.1〜0.5mmφ程度の複数のピン
ホールが数ミリ間隔で均等に形成されたものであり、こ
の整流板6は反応容器1のガス流路にほぼ垂直に配置さ
れる。なお、このピンホールの径や数は、反応容器の大
きさ等にも依存するが、例えば整流板を通過したガス流
の流速が約100cm/sec程度になるよう調整され
る。また、ガス整流板6は、上述の形態以外にも金属網
等のメッシュ状の板材であってもよい。
【0039】また、二つのガス整流板6aと6bとの距
離は、整流後の速度を維持した状態で反応ガス流と希釈
ガス流が合流できる距離、例えば5cm〜20cm、好
ましくは10cm程度とする。
【0040】ガス排出部7は、反応ガス流と希釈ガス流
の両者が合流する領域の反応容器壁に備えられており、
微粒子を含む排出ガスはクーラー8を介して微粒子保存
容器9に送られる。微粒子保存容器9には、例えば脂肪
酸塩などの界面活性剤を含む水やメタノール等の溶液が
入れられており、排出ガスがここを通気する過程で微粒
子のみが捕集され、それ以外のガスは大気中に放出され
る。界面活性剤は、水となじみやすい親水基と油となじ
みやすい親油基(疎水基ともいう)を有する分子を有し
ており、液中に取り込まれた各微粒子は表面を界面活性
剤に覆われるため、凝集が防止され、分散状態を保ちな
がら液中に保存される。
【0041】なお、反応容器のサイズや形状は、特に限
定されないが、例えば8インチサイズのウエハー用CV
Dに使用できる円筒形反応器を利用できる。
【0042】また、ガス排出部7は1箇所のみならず、
図2に示すように二箇所あるいはそれ以上に設けてもよ
い。排出部を多く設ければ、合流後の反応ガス流と希釈
ガス流の排気をよりスムーズに行うことができる。ま
た、複数にガス排出部7を設ける場合は、それぞれにク
ーラ8と微粒子保存容器9を設けてもよいし、あるいは
複数のガス排出部7を共通する単一の配管に接続し、共
通するクーラ8と微粒子保存容器9につなげてもよい。
【0043】以下、図1を参照しながら、上述する微粒
子製造装置を用いた第1の実施の形態に係る微粒子製造
方法について説明する。具体的には、蛍光体として使用
可能なZnS微粒子の製造方法を例に挙げる。
【0044】原料ガスとして、例えばZn(CH32
2Sを使用する。また、これらの原料ガスのキャリヤ
ガスとしては窒素等の不活性ガス、希釈ガスとしても窒
素等の不活性ガスを使用できる。各ガスは、それぞれ専
用のタンク(図示しない)に貯蔵されている。
【0045】まず、キャリヤガス導入部3より、キャリ
ヤガスである不活性ガスを反応容器1内に導入するとと
もに、希釈ガスである不活性ガスを希釈ガス導入部4よ
り反応容器1内に導入し、排出部7へ流れる気流を形成
する。
【0046】ここで、導入するそれぞれのガス流量はほ
ぼ同一流量に調整することが好ましい。導入されたキャ
リヤガス流と希釈ガス流は、それぞれガス整流板6a,
6bにより、流路断面に均一な流速の流れに調整された
後、ガス整流板6aとガス整流板6bの間のほぼ真中あ
たりで合流する。合流後、隣接するガス排出部7より排
出される。従ってガス流の合流による乱流発生が周囲に
与える影響は極めて少ない。
【0047】次に、ヒータ5により反応容器1内のを6
00〜700℃に加熱する。このとき、反応容器1内の
圧力は760torrとし、クーラ7内の温度は室温程
度、圧力は反応容器内と同じく760torrに設定す
る。
【0048】反応容器1内のガス流、及び温度が安定し
たら、原料ガスであるZn(CH32ガスと、H2Sガ
スを原料ガス導入部2から反応容器1内に導入する。原
料ガスは、すでに流れているキャリヤガスとともに反応
ガス流となって反応容器1内を流れる。
【0049】反応容器1内に導入された原料ガスは、ヒ
ータ5設置部を通過する過程で、600〜700℃に加
熱され、以下に示す化学式(F2)の熱分解反応を生
じ、固体のZnS原子を生成する。これが、ZnS微粒
子核となる。
【0050】 Zn(CH22+H2S→ZnS(固体)+2CH4(気体)…(F2) ZnS微粒子核を含むキャリヤガスと原料ガス、即ち反
応ガス流は、微粒子の核生成反応を進行させながらガス
整流板6aで、流路断面に対し均一な流速に整流された
後、同様に流路断面に対し均一な流速に整流された希釈
ガス流と合流する。合流により、瞬時に反応ガスは希釈
化され、微粒子の成長は停止する。
【0051】従来の方法では、微粒子成長は、第1段
階の「微粒子核生成過程」第2段階の「微粒子クラス
ター生成過程」第3段階の「クラスター凝集過程」ま
で不可避的に進行した後、反応容器外で希釈ガスの合流
により微粒子成長が停止され、回収されていたが、第1
の実施の形態に係る微粒子製造方法では、加熱励起後の
反応ガス流は、極めて早い段階で希釈ガス流と合流し、
反応ガス流中のZnS微粒子表面を希釈ガスである窒素
によって覆うため、第2段階のZnS微粒子のクラス
ター化、さらには第3段階のクラスター凝集化が抑制さ
れ、微粒子の成長は第1段階もしくは第2段階の途
中で停止することになる。従って、微粒子径の成長を平
均5nm程度にとどめることができる。
【0052】また、第1の実施の形態では、反応ガス流
及び希釈ガス流はそれぞれガス整流板6a,6bを通過
する過程で、流路断面で均一な流速に調整されるため、
ガス流路断面で、反応ガス流と希釈ガス流が合流するま
での時間が均一化される。合流までに要する時間は、微
粒子成長時間を制御する。微粒子成長時間が場所によっ
て均一であるということは、得られる微粒子の径を均一
化できることに他ならない。従って、得られる微粒子の
径を揃えることが可能になる。
【0053】このようなガス整流板6の効果は、理論的
には、次のような説明を行うことができる。ここでは、
ガス整流板を無限に広い平板と考え、この2枚の平板を
対向して設置し、各々の平板から一様にガスを噴出した
時に形成される流れについて考察している。なお、ガス
の流れは定常状態の層流であると仮定する。
【0054】流れを表す方程式は、定常状態における質
量の保存式(連続の式)は円柱座標系で 次式で示され
る。
【0055】
【数1】 ここでu および w は半径方向、軸方向の速度成分を表
す。
【0056】上記式をガス流の軸方向のみの関数g、fを
用いて変数変換すると、
【数2】 であるから、上記連続の式は
【数3】 となり、ガス流の軸方向の成分zのみで表すことが出来
る。
【0057】また、運動量保存式は、以下の式で表され
る。
【0058】
【数4】 ここで、ρは密度、uは動粘度を表す。
【0059】この二つの運動量方程式は
【数5】 とおくことにより、変数zのみの以下の常微分方程式で
表すことができる。
【0060】
【数6】 従って、上記(1)、(2)、(3)式を解くことによ
り半径によらない解g、fを得ることが出来る。その結
果、ガス流の軸方向の速度成分wは半径によらず一定の
値となる。この結果より、ガス整流板を介して衝突合流
する二つのガス流の交じり合い方はガス流路の断面にお
いて場所によらず一定になることが理論的にも説明でき
る。
【0061】図4は、第1の実施の形態におけるガス整
流板6a、6bを通過したガスの合流域における温度を
シミュレーションにより求めたグラフである。縦軸は温
度であり横軸は希釈ガスのガス流路に置かれたガス整流
板6bからの距離を示している。ガス流の中心軸での温
度(T1)とこの中心軸より半径方向に2cm離れた位
置での温度(T2)をプロットしている。なお、このシ
ミュレーションでは。二枚のガス整流板の距離を5cm
とし、1000K(727℃)に加熱した反応ガスを上
から下へ流し、300K(27℃)の希釈ガスを下から
上に流す条件を用いている。
【0062】同図に示すように、ガス流の中心軸での温
度(T1)とこの中心軸より半径2cmの位置での温度
(T2)は良く一致しており、温度の異なる2つのガス
流の交わりかたが、流路断面方向にほぼ均一であること
がわかる。この結果より、流路断面では場所によらず均
一な反応が生じうることが確認できる。なお、ガス温度
は合流域(ガス整流板6bから約2cmの位置)で急激
に低下しているが、温度変化領域は極めて狭い合流域に
限られており、ガスの合流による乱流の影響はほとんど
広がっていないことも分かる。このガス整流板の効果に
ついては、後述する他の実施の形態でも同様なことがい
える。
【0063】得られた微粒子は、反応ガス及び希釈ガス
とともにガス排出部7に排出される。排出された直後の
ガスは約100℃であるが、クーラ8を通過する過程で
室温まで冷却される。微粒子を含む排出ガスは、さらに
微粒子保存容器9に導かれ、この中のエタノールやメタ
ノール等の溶媒に界面活性剤を溶かした溶液を通過する
際に、ZnS微粒子は捕集され、他の排出ガスは大気中
に放出される。
【0064】こうして、ZnS微粒子は微粒子保存容器
9の溶液中に分散された状態で保存される。ZnS微粒
子が必要な場合には、微粒子保存容器9から溶液を所望
量汲み出して溶液を加熱蒸発させれば、ZnS微粒子を
回収できる。
【0065】図3は、第1の実施の形態に係る微粒子製
造方法を用いて製造したZnS微粒子の粒径分布を示
す。従来の製造方法によって得られた粒子径分布に比較
し、粒子径分布は狭く、数nm程度の直径を有する微粒
子が集中的に得られていることがわかる。
【0066】従来の製造方法で得られた微粒子では、粒
子径が5nm以下の粒子は全体の30%程度に過ぎない
が、第1の実施の形態における製造方法を用いれば粒子
径が5nm以下のものは全体の90%以上を占める。従
って、従来のように、回収した微粒子をさらに分級する
工程が不要となる。
【0067】こうして得られた数nmの粒子径を有する
粒子をLEDなどの発光素子に使えば、発光効率の高い
発光素子を製造することができる。
【0068】なお、上述する第1の実施の形態の微粒子
製造装置において、ヒータ5は、反応容器外壁に設けら
れているが、好ましくは反応容器1の中央部近傍の外壁
にのみ設けられることが好ましい。原料ガス導入部2、
キャリヤガス導入部4の入口付近にヒータ5を設ける
と、生成反応により生じた微粒子が各導入部の入口付近
に付着し、これが繰り返されると各導入部の入口を塞ぐ
虞れがある。また、反応ガス流がヒータ5により加熱励
起されてから希釈ガスと合流するまでの時間をより短く
し、生成粒子が成長しすぎないようにすることが望まし
い。
【0069】なお、上記条件では、反応ガス流の温度を
600℃〜700℃としているが、より広い範囲(例え
ば100〜1000℃)で行うことも可能である。温度
をより高くする場合は、微粒子成長の進行は早くなり、
得られる微粒子の粒径もやや大きくなる。また、逆に温
度を低くすれば、微粒子成長の進行が遅くなるため、得
られる微粒子の粒子径をより小さくできる。
【0070】また、上記条件では、反応容器内圧力を7
60torrとしているが、例えば10torr〜76
0torrの範囲で使用することも可能である。圧力を
低くすれば、微粒子成長の進行が遅くなり、得られる微
粒子の粒子径も小さくできる。さらに、反応容器内の圧
力をより低くする場合は、加熱したガスと希釈ガスとの
熱対流による望ましくない混合流の発生を防止すること
もできる。
【0071】又、原料ガス導入部2には配管を1つのみ
例示しているが、複数備えてもよい。
【0072】なお、微粒子保存容器9に入れる溶液中の
界面活性剤等としては、陰イオン性界面活性剤(脂肪酸
塩、アルキル硫酸、エステル塩、ポリオキシエチレン、
アルキルエーテル、硫酸エステル塩、アルキルベンゼン
スルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、
アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテ
ルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、その他陰イオ
ン性界面活性剤、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮
合物、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)、非イ
オン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキ
シエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオ
キシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエ
チレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸
エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオ
キシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールア
ミド、トリオクチルフォスフィンオキサイド、ドデシル
アミン、アルカンチオールなどの長鎖アルキルを含む界
面活性剤、その他非イオン性界面活性剤)、陽イオン性
界面活性剤(アルキルアミン塩、第四級アンモニウム
塩、その他陽イオン性界面活性剤)、両性界面活性剤
(アルキルベタイン、アミンオキサイド、その他両性界
面活性剤)などの界面活性剤や、他の表面修飾剤を挙げ
ることができる。
【0073】以上に説明するように、第1の実施の形態
に係る微粒子製造方法を用いた場合は、原料ガスが加熱
励起され、微粒子の成長を開始した直後に希釈ガスとの
合流により微粒子成長を停止させるので、微粒子生成反
応時間を短縮し、微粒子径の凝集による増大を抑制する
ことができる。また、反応ガス流と希釈ガス流をそれぞ
れ流路断面で均一な速度に整流した後に両者を合流させ
ているので、流路断面で微粒子生成反応が開始されてか
ら停止するまでの時間を均一にし、得られる微粒子径の
分布範囲を狭くすることができる。従って、量子効果が
生じる10ナノメートルサイズ以下の径が揃った微粒子
を得ることができるため、従来のように分級工程を必要
としない。その結果、原料ガスの使用効率を上げること
ができるとともに、生産コストを下げることが可能にな
る。
【0074】(第2の実施の形態)図5に、第2の実施
の形態に係る微粒子製造装置の構成図を示す。第2の実
施の形態の微粒子製造装置も、第1の実施の形態に係る
微粒子製造装置とほぼ共通する構成を備えているが、大
きく異なる点は、原料ガスの励起手段として、プラズマ
発生電源10を備えていることである。
【0075】即ち、第2の実施の形態に係る微粒子製造
装置も、反応容器1の一方の端部に原料ガス導入部2と
キャリヤガス導入部3を備え、これらと対向する他方の
端部に希釈ガス導入部4を備え、原料ガスとキャリヤガ
スの混合ガス流である反応ガス流の流路途中と、希釈ガ
ス流の流路途中に、それぞれ流路断面での反応ガス流の
流速を均一にするガス整流板6c,6dを備えている。
また、ガス整流板6c,6dは、金属板で形成されてお
り、反応容器1内でプラズマを発生させるための対向電
極としても機能し、一方はプラズマ発生電源10に接続
されている。プラズマは、反応ガス流と希釈ガス流の両
者が合流する領域に生成される。なお、ガス整流板6
c、6dとプラズマ発生に必要な対向電極とを別個に、
上下に配置してもよい。
【0076】また、ガス合流域の反応容器1壁にはガス
排出部7が設けられており、ガス排出部7の配管は、ク
ーラ8を介して微粒子保存容器9に引かれている。
【0077】以下、図5を参照しながら、上述する微粒
子製造装置を用いた第2の実施の形態に係る微粒子製造
方法について説明する。蛍光体として使用可能なZnS
微粒子の製造方法を例に挙げる。原料ガス、キャリヤガ
ス及び希釈ガスは、第1の実施の形態と同様なガスを使
用する。
【0078】まず、キャリヤガス導入部3より、キャリ
ヤガスである不活性ガスを反応容器1内に導入するとと
もに、希釈ガスである不活性ガスを希釈ガス導入部4よ
り反応容器1内に導入し、排出部7へ流れる気流を作
る。この気流はさらにクーラ8から微粒子保存容器10
へと流れる。
【0079】次に、反応容器1内の圧力を1〜50to
rr、好ましくは1torrに設定する。クーラ8内の
気圧も反応容器圧と同じ圧力に設定する。この後、プラ
ズマ発生電源10により反応容器1内にプラズマを発生
させる。また加熱装置(図示しない)によりプラズマ領
域の温度を400〜500℃に調整する。
【0080】続いて、反応容器1内に原料ガスであるZ
n(NO32とSC(NH22とを導入する。導入され
た原料ガスは、キャリヤガスとともに反応ガス流となり
ガス整流板6cを通り、流路断面で流速が均一なガス流
に整流された後、プラズマ発生領域に流れる。ここで以
下に示す(F3)に示すプラズマ反応が生じ、各原料ガ
スは励起されZnS微粒子の核となるZnS原子を生成
する。
【0081】 Zn(NO32+SC(NH22+e(電子) →ZnS(固体)+NO2(気体)+CO2(気体) +(NH22(気体)+e(電子)…(F3) 一方、このプラズマ発生領域には、流路断面で流速が均
一なガス流に調整された希釈ガスである窒素ガス流が流
れこみ、反応ガス流と合流する。合流により希釈ガスが
生成されたZnS粒子表面を覆うため、これ以上の微粒
子の成長は止められる。
【0082】以上に説明するように、第2の実施の形態
に係る微粒子製造方法では、プラズマ励起による反応直
後に希釈ガスにより微粒子の成長がとまるので、微粒子
の成長はより確実に第1段階の「微粒子核生成過程」
もしくは第2段階の「微粒子クラスター生成過程」途
中で停止することになる。この結果、微粒子径の成長を
平均3nm程度に抑制できる。
【0083】また、第2の実施の形態でも、反応ガス流
及び希釈ガス流はそれぞれガス整流板6c,6dを通過
する過程で、流路断面で均一な流速に調整されるため、
流路断面で、反応ガス流と希釈ガス流が合流するまでの
時間が場所により均一化される。従って、微粒子成長反
応から停止に至る時間が流路断面方向で均一となるの
で、得られる微粒子の径を揃えることが可能になる。
【0084】得られた微粒子は、反応ガス及び希釈ガス
とともにガス排出部7に排出される。排出された直後の
ガスは約100℃であるが、クーラ8を通過するときに
室温まで冷却される。
【0085】微粒子を含む排出ガスは、さらに、微粒子
保存容器9中の界面活性剤を含む溶液中に導入され、Z
nS微粒子は溶液に捕集され、他の排出ガスは大気中に
放出される。
【0086】こうして、ZnS微粒子は微粒子保存容器
9の溶液中に分散させた状態で保存される。ZnS微粒
子が必要な場合には、微粒子保存容器9から溶液を所望
量汲み出して溶液を加熱蒸発させれば、ZnS微粒子を
回収できる。
【0087】以上に説明するように、第2の実施の形態
に係る微粒子製造方法を用いた場合は、反応ガス流と希
釈ガス流の合流域において、原料ガスがプラズマにより
励起され、微粒子の生成反応を起こすとともに、希釈ガ
スによって微粒子成長が止められるので、第1の実施の
形態にかかる微粒子製造方法を用いた場合以上により微
細な微粒子を生成できる。従って、量子効果が生じる粒
径が揃ったナノメートルサイズの微粒子を得ることがで
きるため、従来のように分級工程を必要としない。この
結果、原料ガスの使用効率を上げることができるととも
に、生産コストを下げることが可能になる。また、第2
の実施の形態では、ガス整流板6cを通過した後に原料
ガスをプラズマ励起するので、ガス整流板6cの開孔部
が生成した微粒子で詰まる虞れもない。
【0088】(第3の実施の形態)図6に、第3の実施
の形態に係る微粒子製造装置の構成図を示す。第3の実
施の形態の微粒子製造装置も、第1の実施の形態に係る
微粒子製造装置とほぼ共通する構成を備えているが、大
きく異なる点は、反応容器1の原料ガスの導入部側にヒ
ータを有さず、かわりに希釈ガス導入部側に、ヒータ5
bを備えていることである。
【0089】即ち、第3の実施の形態に係る微粒子製造
装置も、反応容器1の一方の端部に原料ガス導入部2と
キャリヤガス導入部3を備え、これらと対向する他方の
端部に希釈ガス導入部4を備えている。原料ガスとキャ
リヤガスの混合ガス流である反応ガス流の流路途中と、
希釈ガス流の流路途中に、それぞれ流路断面での反応ガ
ス流の流速を均一にするガス整流板6e,6fを備えて
いる。
【0090】ヒータ5bは、反応容器1の希釈ガス導入
部4からガス整流板6fの間の反応容器外壁に設置され
る。ガス排出部7は、反応ガス流と希釈ガス流の両者が
合流する領域の反応容器壁に備えられており、微粒子を
含む排出ガスを冷却するためのクーラー8を介して微粒
子保存容器9に排気ガスを通気するよう配管されてい
る。
【0091】以下、図6を参照しながら、上述する微粒
子製造装置を用いた第3の実施の形態に係る微粒子製造
方法について説明する。第1、第2の実施の形態と同様
に、蛍光体として使用可能なZnS微粒子の製造方法を
例に挙げる。また、原料ガス、キャリヤガス及び希釈ガ
スは、第1、第2の実施の形態と同様なガスを使用す
る。
【0092】まず、第1、第2の実施の形態の場合と同
様に、キャリヤガス導入部3より、キャリヤガスである
不活性ガスを反応容器1内に導入するとともに、希釈ガ
スである不活性ガスを希釈ガス導入部4より反応容器1
内に導入し、ガス排出部7に流れる気流を作る。なおこ
の気流はさらにクーラ8から微粒子保存容器9へと流れ
る。
【0093】次に、ヒータ5bによって、希釈ガス導入
部4から導入した不活性ガスの温度を600〜700℃
に加熱する。このとき、反応容器1内の気圧を700t
orrに設定する。また、クーラ7内の温度は室温程
度、気圧は反応容器と同じになるように調整する。
【0094】この後、反応容器1内に原料ガスであるZ
n(CH32とH2Sを原料ガス導入部2より反応容器
1内に導入する。導入された原料ガスは、キャリヤガス
とともに反応ガス流となりガス整流板6eを通り、流路
断面で流速が均一なガス流に調整される。一方、希釈ガ
スは、希釈ガス導入部4から反応容器内に導入された
後、ヒータ5bによって600℃〜700℃に加熱され
る。加熱後の希釈ガスは、さらにガス整流板6fによっ
て流路断面で流速が均一なガス流に調整される。
【0095】この後、反応ガス流と加熱された希釈ガス
流とが合流する。希釈ガスの熱により反応ガス流中の原
料ガスが加熱励起され、第1の実施の形態と同様に式
(F2)で示す以下の反応を生じ、ZnS微粒子核を生
成する。
【0096】 Zn(CH32+H2S→ZnS(固体)+2CH4(気体)…(F2) しかし、生成されたZnS微粒子は、生成と同時にその
周囲を希釈ガスで被覆される。従って、ZnS微粒子の
核生成はそこで停止される。微粒子の成長はより確実に
第1段階の「微粒子核生成過程」もしくは第2段階
の「微粒子クラスター生成過程」途中で停止されること
になる。この結果、微粒子径の成長は平均3nm程度に
抑制できる。
【0097】また、第3の実施の形態でも、反応ガス流
及び希釈ガス流はそれぞれガス整流板6e,6fを通過
する過程で、流路断面で均一な流速に調整されるため、
反応ガス流と希釈ガス流が合流するまでの時間が場所に
より均一化されるので、得られる微粒子の径を均一化で
きる。その結果、得られる微粒子の径を揃えることが可
能になる。
【0098】得られた微粒子は、反応ガス及び希釈ガス
とともにガス排出部7に排出され、クーラ8により室温
まで冷却される。さらに、微粒子保存容器9中の界面活
性剤を含む溶液中に導入され、この溶液を通過する際
に、溶液中にZnS微粒子は捕集され、他の排出ガスは
大気中に放出される。
【0099】こうして、ZnS微粒子は微粒子保存容器
9の溶液中に分散させた状態で保存される。ZnS微粒
子が必要な場合には、微粒子保存容器9から溶液を所望
量汲み出して溶液を加熱蒸発させれば、ZnS微粒子を
回収できる。
【0100】以上に説明するように、第3の実施の形態
に係る微粒子製造方法を用いた場合は、反応ガス流と希
釈ガス流の合流域で原料ガスが加熱励起され、微粒子成
長を開始するとほぼ同時に希釈ガスによって微粒子成長
がとめられるので、第1の実施の形態にかかる微粒子製
造方法を用いた場合以上に、より微細な微粒子を生成で
きる。量子効果が生じる粒径が揃ったナノメートルサイ
ズの微粒子を得ることができるため、従来のように分級
工程を必要としない。従って、原料ガスの使用効率を上
げることができるとともに、生産コストを下げることが
可能になる。また、第3の実施の形態では、ガス整流板
6eを通過した後に原料ガスを加熱励起するので、ガス
整流板6eの開孔部が生成した微粒子で詰まる虞れもな
い。
【0101】(第4の実施の形態)第4の実施の形態の
微粒子製造方法は、希釈ガスとして酸素を含有するガス
を使用することを特徴とする。この方法では、原料ガス
の酸化燃焼反応により微粒子核の生成を促すため、ヒー
タやプラズマ等の原料ガス励起手段が必要なくなる。従
って、図7に示すように、第1の実施の形態に係る装
置、あるいは第3の実施の形態に係る装置からヒータを
はずしたものを使用することができる。
【0102】この方法で製造できる微粒子は、酸化物が
中心であり、Y等の酸化物蛍光材やTiO2等の
化粧用粉体が挙げられる。Yを作製する場合は、
次のような方法を使用できる。
【0103】まず、第1の実施の形態の場合と同様に、
キャリヤガス導入部3よりキャリヤガスである不活性ガ
スを反応容器1内に導入するとともに、希釈ガスである
酸素ガス若しくは窒素ガスに酸素ガスを混入したガスを
希釈ガス導入部4より反応容器1内に導入し、ガス排出
部7に流れる気流を作る。なおこの気流はさらにクーラ
8から微粒子保存容器10へと流れる。
【0104】次に、反応容器1内の気圧を760tor
r以下に設定する。また、クーラ7内の温度は室温程
度、気圧は反応容器1内とほぼ同程度の圧力に設定す
る。
【0105】この後、反応容器1内に原料ガスであるイ
ットリウムアセチルアセテート(Y(C5723)を
原料ガス導入部2より反応容器1内に導入する。導入さ
れた原料ガスは、キャリヤガスとともに反応ガス流とな
りガス整流板6gを通り、流路断面で流速が均一なガス
流に整流される。一方、酸素を含む希釈ガスは、希釈ガ
ス導入部4から反応容器内に導入された後、ガス整流板
6hによって流路断面で流速が均一なガス流に整流され
る。
【0106】反応ガス流と希釈ガス流とが合流する合流
域では、原料ガスと酸素の間で以下の式(3)に示す激
しい酸化燃焼反応が生じ、Y微粒子の核が生成さ
れる。
【0107】 aY(C5723+bO2→Y(固体)+CO2(気体)+H2O…(F 3) 一方、この酸化燃焼反応とほぼ同時に、生成されたY
微粒子は、その周囲を希釈ガスで被覆される。従っ
て、Y微粒子の核生成はそこで停止する。微粒子
の成長はより確実に第1段階の「微粒子核生成過程」
もしくは第2段階の「微粒子クラスター生成過程」途
中で停止することになる。この結果、微粒子径の成長を
平均3nm程度に抑制できる。
【0108】また、第4の実施の形態でも、反応ガス流
及び希釈ガス流はそれぞれガス整流板6g,6hを通過
する過程で、流路断面で均一な流速に調整されるため、
反応ガス流と希釈ガス流が合流するまでの時間が場所に
より均一化されるので、得られる微粒子の径を均一化で
きる。その結果、得られる微粒子の径を揃えることが可
能になる。
【0109】得られた微粒子は、反応ガス及び希釈ガス
とともにガス排出部7に排出され、クーラ8により室温
まで冷却される。さらに、微粒子保存容器9中の界面活
性剤を含む溶液中に導入され、この溶液を通過する際
に、溶液中にY微粒子は捕集され、他の排出ガス
は大気中に放出される。
【0110】以上に説明するように、第4の実施の形態
に係る微粒子製造方法を用いた場合は、原料ガスが希釈
ガス中の酸素ガスと合流した際に酸化燃焼反応を起こ
し、Y 微粒子の核を生成する。また、ほぼ同時に
希釈ガスによって微粒子成長が停止するので、第1の実
施の形態にかかる微粒子製造方法を用いた場合以上に、
より細かい微粒子を提供できる。ナノメートルサイズの
粒径の揃った微粒子を得ることができるため、従来のよ
うに分級工程を必要としない。従って、原料ガスの使用
効率を上げることができるとともに、生産コストを下げ
ることが可能になる。
【0111】また、第4の実施の形態では、ガス整流板
6eを通過した後に原料ガスと酸素を含む希釈ガスとを
合流させているので、ガス整流板6eの開孔部が生成し
た微粒子で詰まる虞れもない。しかも原料ガスを励起す
るためのヒータやプラズマ発生電源等も不要であるた
め、装置コストを安価にできる。
【0112】なお、第4の実施の形態の製造方法を用い
て、TiO微粒子を製造する場合には、原料ガスとし
て、例えばチタニウムテトライソプロポキシドを用い、
酸素との間で以下のような酸化燃焼反応を生じさせれば
よい。
【0113】 Ti(CO)+21O2 → TiO(固体)+12CO2(気体)+16H2O…(F3) (その他の実施の形態)以上で説明した、第1〜第4の
実施の形態では、常温で気体の微粒子原料を使用し、原
料ガスとして反応容器内に導入しているが、使用する微
粒子原料は気体原料に限らず液体原料や固体原料を使用
することもできる。
【0114】例えば、液状の微粒子原料を使用する場合
は、霧状にして反応容器内に導入してもよい。あるい
は、液状若しくは固体状の微粒子原料を加熱してガス化
させたものを反応容器内に導入することもできる。
【0115】さらに、気体、液体若しくは固体の微粒子
原料を溶媒に溶解させた溶液を噴霧状にして反応容器内
に導入してもよい。例えば、第1の実施の形態に係る装
置を用いて導入した噴霧状の微粒子原料を加熱励起させ
ると、溶媒中の微粒子原料が反応を起こし、微粒子を生
成するとともに、周囲の溶媒は蒸発されて徐々にZnS
粒子から取り除かれる。微粒子は周囲を溶媒で覆われて
いる間は、別の微粒子との接触がないため、微粒子同士
の結合や凝集が抑制される。こうして微粒子径の成長の
進行を遅らせることができるので、得られる微粒子の径
をより小さくすることができる。
【0116】以上、実施の形態に沿って本発明の内容に
ついて説明したが、本発明は上述した実施の形態には限
定されず、主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施で
きることは言うまでもない。
【0117】例えば、作製する微粒子の種類は、種々の
原料ガスを使用することにより様々な微粒子を作製する
ことができる。例えば、上述する蛍光剤であるZnS、
の他に、磁性材料であるCoやCr等の金属
紛、あるいはフェライト等、さらに化粧粉であるTiO
2等種々の材料が挙げられる。
【0118】また、各実施の形態で説明した反応装置に
おいて、反応容器の設置の仕方は水平方向に限らず、縦
方向に設置することも可能である。
【0119】また、キャリヤガスや希釈ガスは、窒素に
限らず他の不活性ガスを使用することもできる。
【0120】
【発明の効果】本発明の微粒子製造方法および製造装置
によれば、粒子径が揃った、ナノメートルサイズの微粒
子を製造することができる。従って、従来のように分級
工程が不要であるとともに、微粒子原料を微粒子作製に
効率的に利用できるので、製造コストを抑えることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る微粒子製造装
置の構成を示す装置図を示す。
【図2】第1の実施の形態に係る微粒子製造装置に使用
するガス整流板の構造例を示す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態に係る微粒子製造方法で得ら
れた微粒子の粒子径分布を示すグラフである。
【図4】第1の実施の形態に係る製造方法において、ガ
ス整流板を使用した場合のガス合流域での温度分布をシ
ミュレーションした結果を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る微粒子製造装
置の構成を示す装置図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る微粒子製造装
置の構成を示す装置図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る微粒子製造装
置の構成を示す装置図である。
【図8】従来の微粒子製造装置の構成を示す装置図であ
る。
【図9】従来の微粒子製造方法を用いた場合の、反応時
間と微粒生成数及び平均微粒子径の関係を示すグラフで
ある。
【図10】従来の微粒子製造方法で得られた微粒子の粒
子径分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 反応容器 2 原料ガス導入部 3 キャリヤガス導入部 4 希釈ガス導入部 5 ヒータ 6a〜6f ガス整流板 7 ガス排出部 8 クーラ 9 微粒子保存容器

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反応容器内に、一方より微粒子原料を含
    む反応ガス流を導入し、 前記反応ガス流中の前記微粒子原料を加熱して微粒子成
    長を促し、 前記反応ガス流とほぼ対向する他方より希釈ガス流を導
    入し、 前記反応ガス流および前記希釈ガス流をそれぞれ、流路
    断面における流速が略均一になるように整流し、 該整流後の前記反応ガス流と前記希釈ガス流とを合流さ
    せて前記微粒子成長を停止させることを特徴とする微粒
    子製造方法。
  2. 【請求項2】 反応容器内に、一方より微粒子原料を含
    む反応ガス流を導入するとともに、前記反応ガス流とほ
    ぼ対向する他方より希釈ガス流を導入し、 前記反応ガス流と前記希釈ガス流とが合流する合流域
    で、前記微粒子原料を励起して微粒子成長を促すととも
    に、前記希釈ガス流による希釈により該微粒子成長を停
    止させることを特徴とする微粒子製造方法。
  3. 【請求項3】 前記合流域において、プラズマを発生さ
    せることによって前記微粒子原料を励起して微粒子成長
    を促すことを特徴とする請求項2に記載の微粒子製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記希釈ガス流を前記合流域に達する前
    に加熱し、 前記合流域において、希釈ガス流の熱により前記微粒子
    原料を励起して微粒子成長を促すことを特徴とする請求
    項2に記載の微粒子製造方法。
  5. 【請求項5】 前記希釈ガス流として酸素ガスを含有す
    るガス流を使用し、 前記合流域において、前記酸素ガスとの燃焼反応によ
    り、前記微粒子原料を励起して微粒子成長を促すことを
    特徴とする請求項2に記載の微粒子製造方法。
  6. 【請求項6】 前記合流域に達する前に、前記反応ガス
    流と前記希釈ガス流とを、それぞれ、流路断面における
    流速が略均一になるように整流することを特徴とする請
    求項2〜5のいずれか1項に記載の微粒子製造方法。
  7. 【請求項7】 反応容器と、 前記反応容器の一方に設けられた、微粒子原料を含む反
    応ガス流を導入する1または複数の導入管を持つ第1の
    導入部と、 前記反応容器内の前記第1の導入部とほぼ対向する他方
    に設けられた、希釈ガス流を導入する1または複数の導
    入管を持つ第2の導入部と、 前記反応ガス流中の微粒子原料を励起する手段と、 前記反応ガス流を流路断面における流速が略均一になる
    ように整流する第1のガス整流手段と、 前記希釈ガス流を流路断面における流速が略均一になる
    ように整流する第2のガス整流手段と、 整流後の前記反応ガス流と整流後の前記希釈ガス流とが
    合流する合流域に設けられたガス排出部と、 前記ガス排出部から排出されたガス中の微粒子を捕集す
    る手段とを有することを特徴とする微粒子製造装置。
  8. 【請求項8】 反応容器と、 前記反応容器の一方に設けられた、微粒子原料を含む反
    応ガス流を導入する1または複数の導入管を持つ第1の
    導入部と、 前記反応容器内の前記第1の導入部とほぼ対向する他方
    に設けられた、希釈ガス流を導入する1または複数の導
    入管を持つ第2の導入部と、 前記反応ガス流と前記希釈ガス流とが合流する合流域に
    プラズマを発生する手段と、 前記合流域に設けられたガス排出部と、 前記ガス排出部から排出されたガス中の微粒子を捕集す
    る手段とを有することを特徴とする微粒子製造装置。
  9. 【請求項9】 反応容器と、 前記反応容器の一方に設けられた、微粒子原料を含む反
    応ガス流を導入する1または複数の導入管を持つ第1の
    導入部と、 前記反応容器内の前記第1の導入部とほぼ対向する他方
    に設けられた、希釈ガス流を導入する1または複数の導
    入管を持つ第2の導入部と、 前記希釈ガス流を加熱する手段と、 前記反応ガス流と前記希釈ガス流とが合流する合流域に
    設けられたガス排出部と、 前記ガス排出部から排出されたガス中の微粒子を捕集す
    る手段とを有することを特徴とする微粒子製造装置。
  10. 【請求項10】 さらに、 前記反応ガス流を流路断面における流速を略均一に整流
    する第1の整流手段と、 前記希釈ガス流を流路断面における流速を略均一に整流
    する第2の整流手段とを有する請求項8又は9に記載の
    微粒子製造装置。
  11. 【請求項11】 前記第1及び第2の整流手段は、複数
    の開孔部を均一に配した板状体であり、ガス流の流路に
    略垂直に配置されるものである請求項7〜10のいずれ
    か1項に記載の微粒子製造装置。
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