JP2003086445A - 希土類焼結磁石の製造方法 - Google Patents

希土類焼結磁石の製造方法

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JP2003086445A
JP2003086445A JP2002181458A JP2002181458A JP2003086445A JP 2003086445 A JP2003086445 A JP 2003086445A JP 2002181458 A JP2002181458 A JP 2002181458A JP 2002181458 A JP2002181458 A JP 2002181458A JP 2003086445 A JP2003086445 A JP 2003086445A
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molded body
earth sintered
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JP2002181458A
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Daisuke Harimoto
大祐 播本
Yuji Kaneko
裕治 金子
Akira Nakamura
陽 中村
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Hitachi Metals Ltd
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Sumitomo Special Metals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 破損や変形の発生を抑止し、生産性に優れ
た、希土類焼結磁石の製造方法を提供する。 【解決手段】 (a)希土類焼結磁石用の合金粉末をプ
レス成形することによって複数の成形体95を作製する
工程と、(b)複数の成形体95を台板94上に配置す
る工程であって、成形体95の台板94への射影面積が
最大とならない方向に成形体95を配置する工程と、
(c)複数の成形体を加熱することによって成形体95
を焼結し、焼結体を得る工程とを包含する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、希土類焼結磁石の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、希土類焼結磁石として、サマリウ
ム・コバルト系磁石とネオジム・鉄・ボロン系磁石の二
種類が各分野で広く用いられている。なかでもネオジム
・鉄・ボロン系磁石(以下、「R−T−(M)−B系磁
石」と称する。RはYを含む希土類元素、TはFeまた
はFeとCoおよび/またはNiとの混合物、Mは添加
元素(例えば、Al、Ti、Cu、V、Cr、Ni、G
a、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、Wの
少なくとも1種)、Bはボロンまたはボロンと炭素との
混合物である。)は、種々の磁石の中で最も高い最大磁
気エネルギー積を示し、価格も比較的安いため、各種電
子機器へ積極的に採用されている。
【0003】希土類焼結磁石は、希土類合金を粉砕して
得た合金粉末を磁界中でプレス成形することによって成
形体(圧粉体)を形成し、この成形体を焼結炉において
焼結することによって作製されている。焼結工程におい
て、R−T−(M)−B系磁石に含まれるネオジムなど
の希土類元素が酸化すると、磁石の特性は大きく劣化す
る。この酸化を防止するために、炉内は真空状態または
不活性ガス(ArまたはHe等)の減圧雰囲気とされ
る。複数の成形体を焼結する場合には、生産効率を向上
するために、複数の成形体は、密閉型の焼結用ケース
(「焼結パック」と呼ばれることもある。)に収容した
状態で、焼結ケースごと加熱される。また、多数の成形
体を焼結する際には、棚状に配置された焼結用台板を有
する焼結ケースが用いられる。プレス成形で得られた成
形体は焼結用台板に配置され、焼結ケース内に棚状に収
容される。
【0004】例えば、モータ用焼結磁石を作製するため
の成形体95は、図3(a)および(b)に示すよう
に、焼結ケース9内に配置された状態で、焼結されてい
た。
【0005】焼結用ケース9は、底板90aおよび側壁
90bを有する底容器90と、底容器90に被せられる
蓋92とによって構成され、底容器90内には、スペー
サ96によって所定間隔が開けられて積み重ねられた複
数枚の焼結用台板94が収容されている。焼結用ケース
9は、焼結工程において例えば約1000℃以上に加熱
されるため、底容器90および蓋92は高温耐性の強い
材料(例えばモリブデンやSUS310など)から形成
されている。
【0006】底容器90の側壁90bは、焼結用台板9
4の周縁を取り囲むとともに、その上端部において蓋9
2を支持する。側壁90bに囲まれた空間(収納空間)
の水平横方向サイズは、焼結用台板94のサイズよりも
わずかに(数mm〜数cm程度)大きく、側壁90bと
焼結用台板94との間隙は小さくなるように設計され
る。このように側壁90bと焼結用台板94との間隙を
小さくしている理由は、焼結用台板94のサイズをなる
べく大きく設定することによって、より多くの成形体9
5を焼結用ケース9内に収容し、焼結炉内での収容効率
を向上させるためである。また、側壁90bと焼結用台
板94との間隙を小さくすることによって、運搬時など
において焼結用ケース9に振動が与えられた場合にも、
焼結用台板94が焼結用ケース9内で移動して、焼結用
台板94上に配置されたスペーサが倒れることを防止す
ることができる。
【0007】個々の成形体95は、図4(a)に示すよ
うに、曲面(凹面95aおよび凸面95b)を有してお
り、成形体95は、凹面95aおよび凸面95bのそれ
それに直交する面との交線が円弧を形成する形状を有し
ている。例えば、凹面95aと凸面95bは、互いに曲
率半径が異なる円柱面(内径<外径)の一部となってい
る。このような成形体の形状は、湾曲形状またはアーチ
形状と言われる。この成形体95は、図4(a)に示し
たように、互いに対向する一対の曲面(凹面95aおよ
び凸面95b、これらを主面ということもある。)と、
一対の曲面を介して互いに対向する一対の側面95d
と、一対の曲面95a、95bおよび一対の側面95d
と略直交する一対の端面(端面ということもある)95
cとを有している。主面95aおよび95bは、成形体
95が有する面のうち面積が最も大きく、典型的には、
端面(底面)95cの面積が最も小さい。
【0008】このような形状の成形体95は、図4
(b)または(c)に示したように、成形体95同士が
互いに接触することがないよう、凹面95a側または凸
面95bが焼結用台板94と接するように配置されてい
る。これは、成形体95を焼結用台板94上に配置する
過程および焼結用台板94をケース9内に配置する過程
などにおいて、成形体95が転倒することを防止するた
めであり、成形体95は焼結用台板94上に配置した状
態で重心(高さ)ができるだけ低くなるように配置され
ている。成形体95、特に、R−T−(M)−B系磁石
用の成形体は、配向度を高める目的で成形体密度がフェ
ライト磁石の場合に比較して小さく(例えば3.9g/
cm3〜5.0g/cm3)設定されているため、極めて
脆く、転倒などの衝撃によって割れたり欠けたりするの
で、成形体95が転倒しないように配置される。同一の
焼結用台板94上に配置される複数の成形体95は、個
々に成形されたものでもよく、1つの成形体を複数に切
断分離されたものでもよい。
【0009】さらに、成形体95を焼結用台板94上に
直接載せた状態で焼結すると、成形体95と台板94と
が局部的に溶着することがある。これは、R−T−
(M)−B系合金粉末中のNdなどの希土類元素が、台
板94に含まれる金属元素と焼結温度以下の温度で共晶
反応を起こすからである。台板94と成形体95とが局
部的に溶着すると、焼結に伴う成形体95の寸法収縮が
円滑に進行せず、焼結体95にひび割れや欠けが発生す
ることがある。また、溶着が生じない場合であっても、
焼結用台板94と成形体(焼結体)95との間の摩擦が
不均一になることによって、焼結用台板94と接触する
面側において成形体95にひびが生じるおそれがある。
【0010】そこで、焼結用台板94と成形体95との
溶着を防ぐために、従来から、焼結用台板94上に敷き
粉(不図示)を配し、この上に成形体95を載せて焼結
を行うという方法が知られている(例えば特開平4−1
54903号公報)。敷き粉としては、成形体95との
反応性が低く、高温での安定性が良好な材料から形成さ
れた粉体が用いられる。成形体95が希土類金属を含有
する場合、敷き粉として、希土類金属との反応性が低い
材料、例えば希土類酸化物(例えば酸化ネオジム、酸化
イットリウム)の粉末が用いられる。敷き粉を用いれば
焼結用台板94と成形体95との溶着を防ぐことができ
るので、希土類磁石の台板接触部に発生するひびなどの
破損や変形を防止することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図3
(a)および(b)に示したように複数の成形体95を
焼結ケース9内に配置すると、焼結ケース9内に一度に
収容できる成形体95の数が少なく、焼結工程の効率が
悪いという問題がある。すなわち、平板状の成形体95
を重心が低くなるように配置すると、成形体95の台板
94上への射影面積が大きくなるので、限られた面積内
に配置できる成形体95の数が少なくなる。ここで言う
射影面積とは、成形体が台板94上で占有する面積であ
る。
【0012】また、図4(b)および(c)に示したよ
うに成形体95を配置すると、何れの場合においても、
台板94と成形体95との接触面積が狭く、焼結過程に
おける収縮に伴う応力(摩擦応力)が接触部分に集中
し、上述のように敷き粉を用いても、成形体(焼結体)
95が破損または変形することが多かった。
【0013】さらに、図4(b)に示したように成形体
95を配置した場合、変形が発生する位置は成形体95
の凸面95bの中心付近なので、変形部分だけを取り除
いて、残りの成形体95を利用するということができな
い。また、図4(c)に示したように成形体95を配置
した場合には、成形体95の凹面95aの端部に変形が
発生する。この凹面95aは、最終的な焼結磁石をモー
タのロータ軸に取り付ける際に必要な形状を有している
ので、変形が発生した部分だけを取り除いて、残りの部
分を所定の形状に加工して焼結磁石として利用すること
が難しい。すなわち、図4(b)および図4(c)に示
したような配置で焼結体に不良が発生すると、その焼結
体を全く利用することができないので、焼結磁石の歩留
まりの低下を招く。
【0014】一方、特開昭61−125114号公報
は、薄肉の希土類焼結磁石の焼結時の不良(反りや変
形)を低減するために、薄肉の成形体を、それよりも厚
い同材質で同形状の成形体で挟んだ状態で焼結する方法
を開示している。また、これら成形体の間および/また
は、成形体と台板の間に、必要に応じて、成形体と反応
しにくい粉体を介在させることを開示している。
【0015】しかしながら、上記公報に開示されている
方法では、目的とする薄肉の焼結体を得るために成形体
とは別に、肉厚の成形体を用意する必要があるので、希
土類合金粉末材料の歩留まりが低下する。また、焼結ケ
ース9内への成形体95の収容数を大幅に増大すること
が難しい。さらに、図4(a)に示した形状を有する成
形体95を焼結する場合には、焼結過程における収縮に
伴う応力による成形体(焼結体)95の破損または変形
を十分に防止することは困難で、むしろ、積層される複
数の成形体の質量が、台板と接触する最下部の成形体に
印加される結果、最下部の成形体と台板との間の摩擦応
力が増大し、破損や変形の発生が増加するおそれすらあ
る。
【0016】このように、希土類合金粉末の成形体は、
比重が大きく(例えばR−T−(M)−B系の場合、
3.9g/cm3以上)、且つ、非常に脆いので、焼結
過程における収縮(体積が40%以上減少する)による
摩擦応力によって、破損や変形が起こりやすい。特に、
成形体の重心が低くなるように配置したときに、図4
(b)および(c)に例示したように、台板との接触面
積が小さくなる形状を有する成形体は、破損や変形が起
こりやすく、且つ、焼結ケースに効率よく収容すること
が難しかった。
【0017】本発明は、上記の諸点に鑑みてなされたも
のであり、その目的は、破損や変形の発生を抑止し、生
産性に優れた、希土類焼結磁石の製造方法を提供するこ
とにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明による希土類焼結
磁石の製造方法は、(a)希土類焼結磁石用の合金粉末
をプレス成形することによって複数の成形体を作製する
工程と、(b)前記複数の成形体を受容面上に配置する
工程であって、前記複数の成形体の前記受容面への射影
面積が最大とならない方向に前記複数の成形体を配置す
る工程と、(c)前記複数の成形体を加熱することによ
って前記複数の成形体を焼結し、複数の焼結体を得る工
程とを包含し、そのことによって上記目的が達成され
る。
【0019】工程(b)において、前記複数の成形体の
前記受容面への射影面積が最小となる方向に前記複数の
成形体が配置されることが好ましい。
【0020】前記複数の成形体のそれぞれが少なくとも
1つの曲面を有するとき、工程(b)において、前記複
数の成形体は、前記少なくとも1つの曲面が前記受容面
に対して略直交するように配置されることが好ましい。
【0021】ある実施形態において、前記複数の成形体
のそれぞれは、互いに対向する一対の主面と、前記一対
の主面を介して互いに対向する一対の側面と、前記一対
の主面および前記一対の側面と略直交する一対の端面と
を有し、工程(b)において、前記一対の端面の内の一
方が前記受容面と接触するように配置される。
【0022】工程(a)において前記合金粉末は配向磁
界中でプレス成形される場合、工程(b)において、前
記複数の成形体は、前記合金粉末の配向方向が前記受容
面と略平行となるように配置することが好ましい。
【0023】前記成形体の密度は4.1g/cm3以上
4.5g/cm3以下であることが好ましい。
【0024】工程(b)は、前記複数の成形体を水平方
向(典型的には成形体の厚さ方向に略平行な方向)で互
いに接触するように配置する工程を包含することが好ま
しい。
【0025】工程(b)において、前記複数の成形体は
磁化されており、前記複数の成形体は、磁力によって互
いに接触していることが好ましい。
【0026】工程(b)は、前記複数の成形体の少なく
とも一部に溶着防止剤を付与し、前記溶着防止剤を介し
て、前記複数の成形体が互いに接触するように配置する
工程を包含することが好ましい。典型的には、前記複数
の成形体のそれぞれの一部に溶着防止剤が付与される。
【0027】前記溶着防止剤は、Y23の粉末を含むこ
とが好ましい。Y23の粉末の平均粒径は、1μm以上
10μm以下の範囲内にあることが好ましく、3μm以
上5μm以下の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0028】工程(b)は、Y23の粉末が有機溶剤中
に分散されたスラリーを前記複数の成形体に部分的に塗
布する工程を包含することが好ましい。
【0029】前記複数の焼結体の前記受容面に接触して
いた部分とその近傍を除去する工程をさらに包含しても
よい。
【0030】本発明によると、上記のいずれかの希土類
焼結体磁石の製造方法を用いてモータ用焼結磁石が製造
される。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態をモータ
用のR−T−(M)−B系焼結磁石の製造方法を例に説
明するが、他の希土類焼結磁石の製造方法にも適用され
得る。
【0032】なお、本発明による希土類焼結磁石の製造
方法は、主に、成形体の焼結工程に特徴があるので、焼
結工程を中心に以下に説明し、公知の方法で実施できる
工程については、説明を省略する。
【0033】本発明による希土類焼結磁石の製造方法
は、(a)希土類焼結磁石用の合金粉末をプレス成形す
ることによって複数の成形体を作製する工程と、(b)
複数の成形体を受容面上に配置する工程であって、複数
の成形体の受容面への射影面積が最大とならない方向に
複数の成形体を配置する工程と、(c)複数の成形体を
加熱することによって複数の成形体を焼結し、複数の焼
結体を得る工程とを包含する。
【0034】複数の成形体は、前記受容面を有するケー
ス内に収容されることが好ましく、焼結工程はケースを
加熱することによって実行されることが好ましい。ケー
スを用いることによって、焼結工程における雰囲気をよ
り均一にできる利点などが得られる。
【0035】工程(b)は、例えば、図3に示した焼結
ケース9を用いて行われる。下記の図面においては、実
質的に同じ機能を有する部材は共通の参照符号で示し、
その説明をここでは省略する。
【0036】本実施形態によると、モータ用焼結磁石を
作製するために成形体95は、例えば、図1(a)およ
び(b)および図2に示すように配置される。
【0037】ここで例示する成形体95は、外径22.
13mm、幅26.14mm、厚さ9.73mm、高さ
45mm(図1の配置における高さ)である。焼結用ケ
ース9の底容器90の底板(平板部)90aの寸法は、
例えば、270mm×305mm×厚さ1mmである。
蓋92の寸法は、例えば、その外寸が280mm×31
5mm×高さ70mmであり、厚さ1.5mmである。
底容器90および蓋92は、焼結工程などにおける加熱
に耐え得る材料、例えばステンレス鋼、モリブデンなど
の高融点金属から形成されている。焼結用ケース9をS
US310から形成すれば、SUS304から形成する
場合に比べて、熱によるケースの変形を小さくすること
ができる。
【0038】なお、図1では、底容器90の底板90a
上に載置した台板94上に成形体95を配置している
が、焼結用台板94を省略して、底容器90の底板90
a上に直接に成形体95を配置してもよい。台板94ま
たは底板90aの表面が成形体95を受容する面として
機能する。但し、焼結用台板94を用いると多数の成形
体95を配置する作業を簡便に行うことができる。焼結
用台板94の寸法は、例えば、250mm×300mm
×厚さ1mmである。焼結用台板94は、好適にはモリ
ブデンから形成される。モリブデンは、成形体との反応
性が低く、熱伝導性が良く、かつ、耐熱性も良好である
ため、焼結用台板94の材料として適切である。この焼
結用台板94の成形体受容面は、平均表面粗さRaが1
μm以上50μm以下の範囲の粗度を有していることが
好ましい。
【0039】本実施形態では、図4(a)および(b)
に示した配置とは異なり、成形体95の台板94への射
影面積が最小となる方向に成形体95が配置されてい
る。このように配置することによって、限られた面積内
に、より多くの成形体95を配置することができる。も
ちろん、成形体95の台板94への射影面積が最小とな
る方向に成形体95を配置することによって、最も効率
よく多くの成形体95を配置できるが、それ以外の方向
であっても、成形体95の台板94への射影面積が最大
とならない方向に配置すれば、射影面積が減少する分だ
け、成形体95の収容効率が向上する。すなわち、略平
板状の成形体95を従来のように、重心が低くなるよう
に配置すると、成形体95の台板94への射影面積が最
大となるのに対し、本発明では、射影面積が小さくなる
ように配置する。
【0040】モータ用の成形体95のように、成形体9
5が曲面(凹面95aおよび凸面95b)を有すると
き、その曲面95aおよび/または95bが台板94の
表面に対して略直交するように配置されることが好まし
い。略平板状で互いに対向する主面が曲面(95a、9
5b)である成形体95を曲面95aまたは95bが台
板94の表面に対向するように配置すると、図4(b)
および(c)を参照しながら説明したように、成形体9
5と台板94との接触面積が小さくなり、成形体95の
収縮に伴う接触応力が増大し、破損や変形が大きくな
る。これに対し、図1および図2に示したように、成形
体95の平坦な面(底面95c)を台板94の表面に接
するように配置すると、成形体95と台板94との接触
面積は増大し、成形体95の収縮による摩擦応力が小さ
くなる。さらに、成形体95と台板94との接触部にお
ける最大収縮量(収縮する1次元の長さの内の最大値)
は、図3に示した配置よりも小さくなるので、摩擦応力
も小さくなる。もちろん、成形体95と台板94との溶
着を防止するために、成形体95と台板94との間に敷
き粉を配置することが好ましい。
【0041】上述したように、成形体95を底面95c
を下にして配置すると、成形体95の重心が高くなるの
で、転倒しやすく、また、多数の成形体95を配置する
作業が煩雑になる。特に、例示した略平板状の成形体9
5では、成形体95が僅かに傾くだけで、重心位置が底
面95からはずれるの転倒しやすい。このようなときに
は、複数の成形体95を水平方向(典型的には台板94
の表面に平行な方向であり、成形体95の厚さ方向に略
平行な方向である。)で互いに接触するように配置する
ことが好ましい。
【0042】特に、成形体95が磁化されている(磁界
プレスによる残留磁化など)と、成形体95は磁力によ
って互いに接触するので、成形体95の集合体として、
安定に配置される。モータ用の成形体95は、配向磁界
中でプレス成形された際の残留磁化M(図2参照)によ
って互いに吸引しあっている。残留磁化Mの大きさは、
0.002T〜0.006Tの範囲内にあることが好ま
しい。上述したように、異方性焼結磁石を作製するため
に配向磁界中でプレス成形することによって得られた成
形体を完全に脱磁することなく、ある程度の磁化を残留
させることが好ましい。
【0043】また、残留磁化Mの方向(成形体または合
金粉末の「配向方向」ともいう。)は、図2に示したよ
うに、複数の成形体95が配列される方向に略平行、す
なわち略水平方向(典型的には台板94の表面に略平
行)であることが好ましい。異方性を有する成形体95
の焼結時における収縮率は、磁化方向に平行な方向にお
いて大きいので、収縮量(収縮率×長さ)を最小にする
ために、成形体95を規定する3次元のディメンジョン
のうち最も短いもの、すなわち、略平板状の成形体95
においては厚さ方向に磁化されていることが好ましい。
但し、残留磁化Mの方向は上述の例に限られず、成形体
95同士が互いに引き合うように磁化されていればよ
い。例えば、上記の配置で高さ方向に磁化されている場
合、隣接する成形体95の磁化方向が交互に上下反転さ
せることによって、成形体95を互いに引き合うように
することができる。
【0044】また、等方性磁石を作製するための成形体
の場合など、配向磁界を印加する必要が無い場合におい
ては、プレス成形後に上記範囲の残留磁化を持たせるよ
うに、得られた成形体95に磁界を印加してもよい。
【0045】なお、成形体95を安定に配置するため
に、集合体を形成すべき成形体95の数は、成形体95
の形状に応じて適宜設定される。成形体95を安定に配
置するためには、想定される振動や傾きが生じた際に、
成形体95の集合体の重心が、成形体95の集合体全体
の底面から外れるようなことがないだけの数の成形体9
5を互いに接触させればよい。
【0046】複数の成形体95を互いに隣接するように
配置すると、焼結過程において、成形体95同士が溶着
することがある。これを防止するために、少なくとも成
形体95が互いに接する部分に溶着防止剤を付与し、溶
着防止剤を介して、成形体が互いに接触するように配置
することが好ましい。
【0047】溶着防止剤としては、従来の敷き粉と同様
に、成形体95と反応性が低い材料を用いることが好ま
しく、希土類酸化物を用いることができる。その中でも
特に、Y23の粉末を含むことが好ましい。Y23は安
定性が高く、希土類合金粉末の成形体の焼結時に還元さ
れることがほとんど無い。また、Y23の粉末の平均粒
径は、1μm以上10μm以下の範囲内にあることが好
ましく、3μm以上5μm以下であることが更に好まし
い。
【0048】溶着防止剤を成形体95の所定の部分に付
与する方法としては、溶着防止剤(例えばY23粉末)
が有機溶剤中に分散されたスラリーを塗布する方法が好
ましい。有機溶剤としては、揮発性の高い溶剤が好まし
く、例えば、イソパラフィンなどの炭化水素系溶剤やエ
タノールなどの低級アルコール系溶剤が好適に利用され
る。Y23粉末を用いる場合、イソパラフィンに20g
/l程度の濃度で分散させたスラリーを刷毛やスプレイ
で塗布すればよい。この程度の濃度であると、刷毛で1
回塗布するだけで、十分な溶着防止が得られる。必要に
応じて、スラリーの濃度を変更(例えば、10〜800
g/l)しても良いし、塗布回数を増やしても良い。
【0049】なお、成形体95をスラリーに浸漬しても
良いが、多くの有機溶剤を吸収し、焼結体中の残存炭素
量を増加させる要因となるので、刷毛による塗布など、
成形体95の所定の部分に選択的に溶着防止剤を付与す
ることが好ましい。上記濃度範囲の揮発性の高い溶剤の
スラリーを用いると、特別な乾燥作業を必要としない。
【0050】例えば、図3に示したような従来の配列で
は、焼結ケース9(台板94:3000mm×260m
m)内に25枚×4段で100枚の成形体を収納するこ
としかできないが、図1に示した配列を採用すると、1
段で130枚を収容することができる。なお、図1に示
した配列では、成形体95の集合体(列)の間隔を10
mm以上、焼結ケースの内壁からの距離を20mm以上
に設定した。これは、成形体95を台板94上に配置す
る際の作業性を確保するためであり、適宜変更し得る。
【0051】上述のように成形体95を配置すると、従
来よりも効率よく成形体95を焼結ケース95内に配置
することができる。さらに、焼結過程で成形体95に発
生する摩擦応力を低減することもできるので、破損や変
形の発生を抑制することができる。
【0052】しかしながら、成形体95の形状や大き
さ、または配向方向によっては、成形体95の底面95
c付近にひずみが発生することがある。例えば、成形体
95の高さが高い場合や、成形体95が高さ方向に配向
している場合、焼結による収縮量が高さ方向において大
きく、あるいは成形体95の自重の影響を受けて、成形
体95の底面95c付近の垂直方向の断面形状が台形状
に変形することがある。例えば20g/cm2以上の圧
力が底面95cに掛かると変形が生じることがある。成
形体95は、押しつぶされたように変形し、底面95c
が広くなる。本発明に従って成形体95を配列すると、
上述したように、変形が発生する部分は、成形体95の
底面95cの近傍だけなので、例えば、変形が発生した
部分だけを切断や研磨等によって除去すれば、成形体
(焼結体)95の残りの部分を利用することができる。
すなわち、材料の歩留まりを向上することができる。成
形体95の形状などによって、上記の変形を防止するこ
とが困難な場合は、予め変形を見越した大きさの成形体
95を作製し、変形部分を除去することによって、所望
の大きさの焼結体を得ることができる。
【0053】なお、ここでは、底面95cが台板94に
接触するように配置したが、成形体95の形状によって
は、側面95dを台板94に接触するように配置しても
よい。但し、上述したように、成形体95の台板94へ
の射影面積が最小になるように底面95cが台板94に
接触するように配置することが好ましい。
【0054】このように、本発明の実施形態によると、
従来のモータ用の焼結磁石の製造効率を向上することが
できるとともに、材料の歩留まりを向上することができ
る。本発明による希土類焼結磁石の製造方法は、最終的
に利用される焼結磁石の形状に近い形状の焼結体を得ら
れるように成形体を作製する製造方法において特に効果
的である。
【0055】上記の実施形態では、内曲面と外曲面との
曲率が異なるモータ用成形体について説明したが、内曲
面と外曲面との曲率がほぼ同じ成形体についても本発明
を適用できることは言うまでもない。この場合にも、成
形体と焼結ケースの受容面との接触面積は、成形体同士
の接触面積よりも小さくなる。また、同様に、直方体形
状を有し、粉末が成形体の厚さ方向に配向された薄板状
の成形体(例えばIPMモータ用)についても、本発明
を適用することができる。
【0056】さらに、上記の実施形態では、成形体の底
面(焼結ケースの受容面と接触する面)が成形体同士が
接触する面(成形体の側面)との成す角が直角で、焼結
ケースの水平な受容面上に成形体を配列した場合を例示
したが、本発明はこれに限られない。成形体の底面が傾
斜している場合、すなわち、成形体の底面と成形体同士
が接触する面(側面)との成す角が直角でない場合、成
形体同士が水平方向で互いに接触するように傾斜した受
容面(例えば断面が鋸歯状の台板の表面)を有する焼結
ケースを用いれば、成形体を安定に配置することができ
る。
【0057】本発明の希土類焼結磁石の製造方法に用い
られる希土類合金粉末に特に制限はないが、例えば米国
特許第4,770,723号および米国特許第4,79
2,368号の明細書に記載されているR−T−(M)
−B系希土類合金粉末を好適に用いることができる。特
に、例えば米国特許第5,383,978号に開示され
ているストリップキャスト法を用いて作製されたR−T
−(M)−B系希土類合金粉末が磁気特性の観点からは
好ましい。またプレス成形は公知の種々の方法で実行さ
れる。成形体の密度は、一般に3.9g/cm3〜5.
0g/cm3の範囲にあり、特に4.1g/cm3〜4.
4g/cm3の範囲にあるものが多い。
【0058】本発明の希土類焼結磁石の製造方法に用い
られる希土類合金粉末の平均粒径(FSSS粒径)は、
磁気特性およびプレス成形性の観点から、2μm以上1
0μm以下の範囲内にあることが好ましく、3μm以上
6μm以下であることがさらに好ましい。また、成形体
の密度は4.1g/cm3以上4.5g/cm3以下であ
ることが好ましい。成形体の密度が4.1g/cm3
りも低いと焼結時の変形が大きく、4.5g/cm3
超えると磁粉の配向度が低下する。成形体を台板上に配
置した際の垂直方向の長さ(高さ)は70mm以下であ
ることが好ましく、25mm以上のときに本発明の効果
が顕著である。
【0059】上述のように焼結ケース9内に収容された
成形体95は、焼結ケース9に収容された状態で、焼結
される。焼結工程は、製造すべき希土類磁石の種類に応
じて最適な公知プロセスを採用すればよい。例えば以下
の処理工程を経て焼結される。
【0060】まず、焼結装置の入り口に設けられている
準備室内に少なくとも焼結用ケース9を挿入し密閉した
後、酸化防止のため、雰囲気圧力が2パスカル程度にな
るまで準備室内を真空引きする。
【0061】次に、焼結用ケース9を脱バインダ室に搬
送し、そこで脱バインダ処理(温度:100℃〜600
℃、圧力:2パスカル、時間:1〜6時間)を実行す
る。脱バインダ処理は、磁性粉末の表面を覆っている潤
滑剤(バインダ)を焼結工程の前に揮発させるために行
うものである。潤滑剤は、プレス成形時における磁性粉
末の配向性を改善するため、プレス成形前に磁性粉末と
混合されたものであり、磁性粉末の各粒子間に存在して
いる。
【0062】脱バインダ処理が終了した後、焼結用ケー
ス9は焼結室に搬送され、そこで、減圧雰囲気中(例え
ば圧力2パスカル程度のアルゴンガス中)で1000℃
〜1100℃の焼結処理を2時間〜5時間程度受ける。
この後、焼結用ケース9は、冷却室に搬送され、そこで
焼結用ケースの温度が室温程度に低下するまで冷却処理
を受ける。
【0063】次に、焼結用ケース9は冷却室から取り出
され、時効処理炉に挿入され、通常の時効処理工程が実
行されることになる。時効処理は、例えば、アルゴン等
の雰囲気ガスの圧力を2パスカル程度とし、400℃〜
600℃の温度にて1時間〜5時間程度行われる。
【0064】
【発明の効果】本発明によると、破損や変形の発生を抑
止し、生産性に優れた、希土類焼結磁石の製造方法を提
供することができる。さらに、変形が発生した場合にお
いても、変形部分を取り除いて、他の部分を利用するこ
とが可能となるので、材料の歩留まりを向上することが
できる。本発明による希土類焼結磁石の製造方法は、特
に、モータ用の焼結磁石のような平板状で曲面を有する
焼結磁石を効率よく製造することできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施形態の希土類焼結磁石の製造
方法の焼結工程における成形体95の配置を示す模式図
であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【図2】図1(a)および(b)に示した成形体95の
配置における隣接する成形体95の配置を示すための斜
視図である。
【図3】希土類焼結磁石の製造方法の焼結工程における
成形体95の従来の配置を示す模式図であり、(a)は
断面図、(b)は上面図である。
【図4】焼結工程における成形体95の従来の配置の問
題を説明するための図であり、(a)はモータ用の成形
体の斜視図であり、(b)および(c)は台板94上の
成形体95の配置を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
9 焼結用ケース 90 底容器 90a 底板 90b 側壁 92 蓋 94 台板 95 成形体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 陽 大阪府三島郡島本町江川2丁目15番17号 住友特殊金属株式会社山崎製作所内 Fターム(参考) 4K018 AA11 AA27 CA02 CA04 DA37 DA39 FA01 HA07 KA45 5E062 CC05 CD04 CE04 CG01

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)希土類焼結磁石用の合金粉末をプ
    レス成形することによって複数の成形体を作製する工程
    と、 (b)前記複数の成形体を、受容面上に配置する工程で
    あって、前記複数の成形体の前記受容面への射影面積が
    最大とならない方向に前記複数の成形体を配置する工程
    と、 (c)前記複数の成形体を加熱することによって前記複
    数の成形体を焼結し、複数の焼結体を得る工程と、 を包含する、希土類焼結磁石の製造方法。
  2. 【請求項2】 工程(b)において、前記複数の成形体
    の前記受容面への射影面積が最小となる方向に前記複数
    の成形体が配置される、請求項1に記載の希土類焼結磁
    石の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記複数の成形体のそれぞれは、少なく
    とも1つの曲面を有し、工程(b)において、前記複数
    の成形体は、前記少なくとも1つの曲面が前記受容面に
    対して略直交するように配置される、請求項1または2
    に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記複数の成形体のそれぞれは、互いに
    対向する一対の主面と、前記一対の主面を介して互いに
    対向する一対の側面と、前記一対の主面および前記一対
    の側面と略直交する一対の端面とを有し、工程(b)に
    おいて、前記一対の端面の内の一方が前記受容面と接触
    するように配置される、請求項1から3のいずれかに記
    載の希土類合金焼結体の製造方法。
  5. 【請求項5】 工程(a)において前記合金粉末は配向
    磁界中でプレス成形され、工程(b)において、前記複
    数の成形体は、前記合金粉末の配向方向が前記受容面と
    略平行となるように配置される、請求項1から4のいず
    れかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記成形体の密度は4.1g/cm3
    上4.5g/cm3以下である、請求項1から5のいず
    れかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  7. 【請求項7】 工程(b)は、前記複数の成形体を水平
    方向で互いに接触するように配置する工程を包含する、
    請求項1から6のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 工程(b)において、前記複数の成形体
    は磁化されており、前記複数の成形体は、磁力によって
    互いに接触している、請求項7に記載の希土類焼結磁石
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 工程(b)は、前記複数の成形体の少な
    くとも一部に溶着防止剤を付与し、前記溶着防止剤を介
    して、前記複数の成形体が互いに接触するように配置す
    る工程を包含する、請求項7または8に記載の希土類焼
    結磁石の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記溶着防止剤は、Y23の粉末を含
    む、請求項9に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  11. 【請求項11】 Y23の粉末の平均粒径は、1μm以
    上10μm以下の範囲内にある、請求項10に記載の希
    土類焼結磁石の製造方法。
  12. 【請求項12】 工程(b)は、Y23の粉末が有機溶
    剤中に分散されたスラリーを前記複数の成形体に部分的
    に塗布する工程を包含する、請求項10または11に記
    載の希土類焼結磁石の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記複数の焼結体の前記受容面に接触
    していた部分とその近傍を除去する工程をさらに包含す
    る、請求項1から12のいずれかに記載の希土類焼結磁
    石の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1から13のいずれかに記載の
    希土類焼結体磁石の製造方法を用いて製造された、モー
    タ用焼結磁石。
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