JP2003086405A - Ptcサーミスタ用抵抗体およびその製造方法 - Google Patents

Ptcサーミスタ用抵抗体およびその製造方法

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JP2003086405A
JP2003086405A JP2001278762A JP2001278762A JP2003086405A JP 2003086405 A JP2003086405 A JP 2003086405A JP 2001278762 A JP2001278762 A JP 2001278762A JP 2001278762 A JP2001278762 A JP 2001278762A JP 2003086405 A JP2003086405 A JP 2003086405A
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JP
Japan
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carbon particles
resistor
ptc thermistor
thermoplastic resin
oxidizing
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Withdrawn
Application number
JP2001278762A
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English (en)
Inventor
Kazuhide Shioya
和秀 塩屋
Masahiro Ito
昌宏 伊藤
Emiko Igaki
恵美子 井垣
Koichi Morimoto
光一 森本
Hideki Tanaka
秀樹 田中
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱可塑性樹脂にカーボン粒子が分散してなる
PTCサーミスタ用抵抗体において、カーボン粒子の散
性を向上させることにより、良好なジャンピング特性を
達成する。 【解決手段】 カーボン粒子を、酸素を含む雰囲気中に
おいて、200〜600℃の温度範囲で熱処理する。前
記熱処理を施したカーボン粒子と熱可塑性樹脂とを混練
し、これを成形して抵抗体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、PTCサーミスタ
用抵抗体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、リチウム電池の保護、電気電子機
器のインターフェイスの保護、充電回路の保護などを目
的として、復帰型ヒューズのように動作し得る過電流保
護素子が盛んに用いられるようになっている。
【0003】過電流保護素子としては、PTC(Positi
ve Temperature Coefficient)特性を有する抵抗体を用
いたサーミスタ、すなわちPTCサーミスタが用いられ
ている。PTCサーミスタ用抵抗体としては、熱可塑性
樹脂に導電性粒子であるカーボン粒子を分散させたもの
が用いられている。このPTCサーミスタ用抵抗体は、
熱可塑性樹脂がその融点付近で体積膨張し、その結果、
カーボン粒子同士間の導電パスが切断されることに起因
した抵抗値変化によって、PTC特性を達成するもので
ある(以下、この抵抗値変化を「ジャンピング」とす
る。)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】PTCサーミスタ用抵
抗体においては、過電流を有効に阻止するために、ジャ
ンピングにおける抵抗値変化が大きいことが要求され
る。更に、この大きな抵抗値変化は、ジャンピングが繰
り返し実施された場合においても確保されている必要が
ある。このような良好なジャンピング特性を有する抵抗
体の製造方法としては、カーボン粒子と熱可塑性樹脂と
の混合を、バンバリミキサーまたは加圧ニーダーなどの
混練機を用いて実施する方法が挙げられる。また、別の
方法としては、カーボン粒子表面にシランカップリング
剤を付与することが提案されている(特開2000−1
618号公報)。しかしながら、近年では、更に良好な
ジャンピング特性を達成することが要求されており、上
記製造方法により得られる抵抗体では、このような要求
に十分に対応することが困難であった。
【0005】本発明は、ジャンピングにおける抵抗値変
化が大きく、且つ、ジャンピングが繰り返し実施された
場合においても、この大きな抵抗値変化を確保すること
ができるPTCサーミスタ用抵抗体およびその製造方法
を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の第1のPTCサーミスタ用抵抗体は、熱可
塑性樹脂とカーボン粒子とを含み、前記カーボン粒子表
面に酸化処理が施されていることを特徴とする。
【0007】カーボン粒子表面に酸化処理を施すことに
より、カーボン粒子の熱可塑性樹脂に対する分散性を向
上させることができる。図1Aは、酸化処理前のカーボ
ン粒子表面状態を説明するための模式図であり、図1B
は酸化処理後のカーボン粒子表面状態を説明するための
模式図である。図1AおよびBに示すように、酸化処理
を施すことにより、カーボン粒子表面における酸素量を
増大させること、換言すれば、例えば−COOH、−C
OH、−OHなどの酸素を含む官能基を増大させること
ができる。このような官能基の増大により、カーボン粒
子の熱可塑性樹脂に対する分散性が向上するものと考え
られる。
【0008】図2Aおよび図2Bは、熱可塑性樹脂中の
カーボン粒子の分布状態を示す模式図である。これら図
面においては、カーボン粒子の分布状態の一例として、
カーボン粒子が凝集し、この凝集体1が熱可塑性樹脂2
中に分散した状態を示している。図2Aに示すように、
カーボン粒子の分散性(または凝集粒子の分散性;以下
同じ。)が悪いと、熱可塑性樹脂が膨張した場合におい
ても、カーボン粒子同士が離間しにくく、導電パスの切
断が進行しにくい。これに対して、図2Bに示すよう
に、カーボン粒子の分散性が良好であると、熱可塑性樹
脂の膨張時にカーボン粒子(またはその凝集粒子)同士
が離間しやすくなり、導電パスの切断が進行しやすくな
る。すなわち、熱可塑性樹脂に対するカーボン粒子の分
散性を向上させることによって、ジャンピングにおける
抵抗値変化が大きく、且つ、ジャンピングが繰り返し実
施された場合においても、大きな抵抗値変化を確保する
ことが可能となる。
【0009】本発明の第1のPTCサーミスタ用抵抗体
によれば、カーボン粒子表面を酸化処理することによ
り、前述したように、熱可塑性樹脂に対するカーボン粒
子の分散性を向上させることができる。その結果、良好
なジャンピング特性を得ることができる。
【0010】前記第1のPTCサーミスタ用抵抗体にお
いては、複数個のカーボン粒子が凝集しており、この凝
集体が熱可塑性樹脂中に分散していることが好ましい。
カーボン粒子と熱可塑性樹脂との接着性が向上し、更に
良好なジャンピング特性を達成することができるからで
ある。
【0011】前記第1のPTCサーミスタ用抵抗体にお
いては、カーボン粒子の粒径が、10〜100nmであ
ることが好ましい。所定の抵抗値を再現よく達成するこ
とができるからである。
【0012】前記第1のPTCサーミスタ用抵抗体にお
いては、酸化処理されたカーボン粒子表面に、アルミニ
ウム、チタンおよびケイ素からなる群より選ばれる少な
くとも1種を含むカップリング剤が付与されていること
が好ましい。カーボン粒子の分散性を更に向上させるこ
とができ、更に良好なジャンピング特性を得ることがで
きるからである。
【0013】上記目的を達成するため、本発明の第1の
製造方法は、カーボン粒子表面を酸化処理する工程と、
前記カーボン粒子と熱可塑性樹脂とを混合する工程とを
含むことを特徴とする。このような製造方法によれば、
カーボン粒子の分散性を向上させ、その結果、良好なジ
ャンピング特性を有するPTCサーミスタ用抵抗体を得
ることができる。
【0014】前記第1の製造方法においては、酸化処理
方法として、例えば、カーボン粒子を酸化性雰囲気に曝
す方法(以下、「気相法」ともいう。)、または、カー
ボン粒子を酸化剤を含む溶液に接触させる方法(以下、
「液相法」ともいう。)を採用することができる。
【0015】前記気相法においては、酸化処理方法とし
て、例えば、カーボン粒子を、酸素を含む雰囲気におい
て200〜600℃の温度範囲で処理する方法、また
は、オゾンを含む雰囲気において25〜600℃の温度
範囲で処理する方法を採用することができる。また、カ
ーボン粒子に光を照射しながら、前記カーボン粒子を酸
化性雰囲気に曝す方法を採用してもよい。この場合、処
理温度は、例えば25〜600℃の範囲である。また、
前記気相法においては、前記酸化性雰囲気が水蒸気を含
んでいることが好ましい。
【0016】前記液相法においては、前記酸化剤とし
て、例えば、硝酸、過マンガン酸カリウム、亜塩素酸お
よび次亜塩素酸ナトリウムからなる群より選ばれる少な
くとも1種を使用することができる。
【0017】前記第1の製造方法においては、カーボン
粒子表面を酸化処理する工程の後であって、前記カーボ
ン粒子と熱可塑性樹脂とを混合する工程の前に、前記カ
ーボン粒子表面に、アルミニウム、チタンおよびケイ素
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むカップリ
ング剤を付与する工程を含むことが好ましい。カーボン
粒子の分散性を更に向上させることができ、更に良好な
ジャンピング特性が得られるからである。
【0018】前記目的を達成するため、本発明の第2の
PTCサーミスタ用抵抗体は、熱可塑性樹脂とカーボン
粒子とを含み、前記カーボン粒子表面に、アルミニウム
およびチタンから選ばれる少なくとも1種を含むカップ
リング剤が付与されていることを特徴とする。このよう
な構成によっても、熱可塑性樹脂に対するカーボン粒子
の分散性を向上させ、その結果、良好なジャンピング特
性を得ることができる。
【0019】前記第2のPTCサーミスタ用抵抗体にお
いては、複数個のカーボン粒子が凝集しており、この凝
集体が熱可塑性樹脂中に分散していることが好ましい。
カーボン粒子と熱可塑性樹脂との接着性が向上し、更に
良好なジャンピング特性を達成することができるからで
ある。
【0020】また、前記第2のPTCサーミスタ用抵抗
体においては、カーボン粒子の粒径が、10〜100n
mであることが好ましい。所定の抵抗値を再現よく達成
することができるからである。
【0021】前記目的を達成するため、本発明の第2の
製造方法は、カーボン粒子表面に、アルミニウムおよび
チタンより選ばれる少なくとも1種を含むカップリング
剤を付与する工程と、前記カーボン粒子と熱可塑性樹脂
とを混合する工程とを含むことを特徴とする。このよう
な構成によっても、熱可塑性樹脂に対するカーボン粒子
の分散性を向上させ、その結果、良好なジャンピング特
性を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)本発明の第1
のPTCサーミスタ用抵抗体は、前述したように、熱可
塑性樹脂中にカーボン粒子とを含み、カーボン粒子表面
が酸化処理されたものである。このPTCサーミスタ用
抵抗体は、次のようにして製造することができる。
【0023】まず、カーボン粒子を用意する。前記カー
ボン粒子の粒径は、好ましくは10〜100nm、更に
好ましくは20〜100nm、最も好ましくは30〜8
0nmである。また、カーボン粒子としては、複数個の
粒子が凝集して凝集粒子を形成した形態のものを使用す
ることも可能である。この場合、凝集粒子の粒径は、特
に限定するものではないが、例えば10〜1000n
m、好ましくは40〜600nm、更に好ましくは40
〜300nmである。このようなカーボン粒子として
は、例えば、ファーネスブラックなどのカーボンブラッ
クを使用することができる。
【0024】前記カーボン粒子表面を酸化処理する。こ
の酸化処理により、カーボン粒子表面における酸素量を
増大させる。換言すれば、カーボン粒子表面において、
例えば、−COOH、−COHおよび−OHなどの、酸
素を含む官能基数を増大させる。
【0025】酸化処理方法としては、次のような2通り
の方法を採用することができる。
【0026】第1の方法は、カーボン粒子を酸化性雰囲
気に曝す方法である。酸化性雰囲気としては、例えば、
空気などの酸素を含む雰囲気、オゾンを含む雰囲気など
を用いることができる。酸素を含む雰囲気を使用する場
合、酸素濃度は、特に限定するものではないが、例えば
20〜100体積%、好ましくは20〜70体積%、更
に好ましくは20〜50体積%に調整する。また、オゾ
ンを含む雰囲気を使用する場合、オゾン濃度は、特に限
定するものではないが、例えば0.1〜5体積%、好ま
しくは0.5〜3体積%、更に好ましくは0.5〜1.
5体積%に調整する。
【0027】また、前記雰囲気は水蒸気を含むことが好
ましい。例えば、−COOH、−COHおよび−OHな
どの官能基の形成を促進することができるからである。
雰囲気中に含まれる水蒸気量については、特に限定する
ものではない。雰囲気の相対湿度で表して、例えば60
〜85%、好ましくは60〜80%、更に好ましくは6
5〜75%に調整する。
【0028】処理温度は、特に限定するものではなく、
酸化性雰囲気の酸化力などに応じて適宜設定することが
できる。酸素を含む雰囲気を使用する場合、処理温度
は、例えば200〜600℃、好ましくは300〜55
0℃、更に好ましくは300〜500℃である。また、
オゾンを含む雰囲気を使用する場合、例えば25〜60
0℃、好ましくは25〜300℃、更に好ましくは15
0〜300℃である。
【0029】処理時間についても、特に限定するもので
はなく、酸化性雰囲気の酸化力、処理温度などに応じて
適宜設定することができ、例えば10〜180分、好ま
しくは10〜120分、更に好ましくは10〜60分で
ある。
【0030】更に、前記酸化処理は、カーボン粒子に光
を照射しながら実施することが好ましい。光照射により
カーボン粒子表面の酸化を促進することができ、処理温
度を低下させたり、処理時間を短縮することが可能とな
る。光照射した場合、処理温度は、例えば25〜600
℃、好ましくは25〜200℃、更に好ましくは25〜
100℃である。
【0031】光源としては、紫外線を照射し得るものを
使用することが好ましい。具体的には、例えば、水銀灯
などの放電ランプ、エキシマレーザーなどのレーザーな
どを使用することができる。エキシマレーザーとして
は、例えば、KrF、XeF、ArFなどのハロゲン化
希ガスレーザーが挙げられる。また、照射時間について
は、特に限定するものではないが、例えば2〜15分、
好ましくは2〜10分、更に好ましくは2〜5分であ
る。
【0032】第2の方法は、カーボン粒子を、まず、酸
化剤溶液を調製し、この溶液にカーボン粒子を接触させ
る方法である。具体的には、例えば、酸化剤溶液にカー
ボン粒子を浸漬した後、前記溶液からカーボン粒子を濾
別し、これを洗浄、乾燥することにより実施することが
できる。
【0033】酸化剤としては、例えば、硝酸などの無機
窒素化合物、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガンな
どのマンガン化合物、亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム
などの無機塩素化合物などを使用することができる。酸
化剤を溶解させる溶媒としては、例えば、水などを使用
することができる。また、溶液中における酸化剤濃度
は、例えば0.0.5〜1.5mol/L、好ましくは
0.1〜1.0mol/Lである。
【0034】酸化剤溶液の温度は、特に限定するもので
はないが、例えば20〜80℃、好ましくは20〜60
℃である。また、カーボン粒子と酸化剤溶液との接触時
間は、例えば0.5〜5時間、好ましくは0.5〜2時
間である。
【0035】更に、前記酸化処理の後、カーボン粒子表
面にカップリング剤を付与する工程を実施することが好
ましい。カップリング剤としては、例えば、アルミニウ
ム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコ
ン系カップリング剤などを使用することができる。ま
た、カップリング剤は、1種を単独で用いても、2種以
上を併用してもよい。
【0036】カップリング剤による処理方法は、特に限
定するものではなく、例えば、次のような方法を採用す
ることができる。まず、溶媒にカップリング剤を分散さ
せて吸着液を調製し、この吸着液にカーボン粒子を浸漬
する。その後、減圧下で乾燥して吸着液を分離回収する
ことにより、表面にカップリング剤が結合したカーボン
粒子が得られる。
【0037】吸着液を構成する溶媒としては、特に限定
するものではないが、例えば、ベンゼン、n−ヘキサ
ン、トルエン、エタノール、イソプロパノール、トリク
レン、メタノール、酢酸エチルなどを使用することがで
きる。
【0038】また、カップリング剤の使用量は、カップ
リング剤(C)とカーボン粒子(B)との比率(C:B
(重量比))が、例えば0.1:100〜3:100、
好ましくは0.5:100〜2:100、更に好ましく
は0.5:100〜1.5:100となるように調整さ
れる。
【0039】吸着液の温度は、特に限定するものではな
いが、例えば80〜140℃、好ましくは100〜13
0℃である。また、カーボン粒子の浸漬時間は、例えば
0.5〜3時間、好ましくは0.5〜1.5時間であ
る。
【0040】前記カーボン粒子と熱可塑性樹脂とを混合
する。熱可塑性樹脂としては、その融点付近で体積膨張
を生じ得る樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂
の融点については、特に限定するものではないが、例え
ば110〜150℃、好ましくは120〜140℃であ
る。具体的には、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ
エチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、
エチレンビニルアセテートなどを使用することができ
る。
【0041】熱可塑性樹脂(A)とカーボン粒子(B)
との比率(A:B(重量比))は、例えば75:25〜
35:65、好ましくは70:30〜40:60、更に
好ましくは65:35〜40:60とすることができ
る。
【0042】熱可塑性樹脂とカーボン粒子との混合は、
例えば、熱可塑性樹脂粒子とカーボン粒子とを配合し、
これを熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度条件下で混練
することにより実施できる。混練は、例えば、ニーダ
ー、バンバリーミキサーなどの各種混練機を用いて実施
することができる。
【0043】得られた熱可塑性樹脂とカーボン粒子との
混合物を、例えばシート状など、所望の形状に成形し、
PTCサーミスタ用抵抗体が作製される。成形は、例え
ば、カレンダ加工、押出成形、射出成形などにより実施
することができる。
【0044】上記製造方法によれば、カーボン粒子表面
を酸化処理することにより、カーボン粒子の熱可塑性樹
脂に対する分散性を向上させ、良好なジャンピング特性
を得ることができる。具体的には、PTCサーミスタ用
抵抗体のジャンピング前後における抵抗値を、例えば3
〜7桁、好ましくは5〜7桁変化させることが可能であ
る。前記PTCサーミスタ用抵抗体のジャンピング前の
比抵抗は、例えば0.2〜1.5Ωcm、好ましくは
0.3〜1.2Ωcm、更に好ましくは0.3〜1.0
Ωcmである。また、ジャンピング温度は特に限定する
ものではないが、例えば120〜140℃、好ましくは
125〜135℃である。
【0045】次に、本実施形態の抵抗体を用いたPTC
サーミスタの構造の一例を、図3を用いて説明する。こ
のPTCサーミスタは、本実施形態の抵抗体4と、前記
抵抗体4表面に設けられた2つの電極3とを含む。電極
3としては、例えば、銅、ニッケル、または、これらを
含む合金もしくは化合物を用いることができる。電極3
の抵抗体4と接する面は、抵抗体4との密着性を向上さ
せるため、粗面化されていることが好ましい。粗面化の
方法としては、例えば、金属粉末を還元性雰囲気中で焼
結させる方法、表面粗化めっきによる方法などが採用で
きる。
【0046】(第2の実施形態)本発明の第2のPTC
サーミスタ用抵抗体は、前述したように、熱可塑性樹脂
中にカーボン粒子とを含み、カーボン粒子表面に特定の
カップリング剤が付与されたものである。このPTCサ
ーミスタ用抵抗体は、次のようにして製造することがで
きる。
【0047】まず、カーボン粒子を用意する。前記カー
ボン粒子としては、前記第1の実施形態と同様のものを
使用することができる。
【0048】続いて、前記カーボン粒子表面に特定のカ
ップリング剤を付与する。カップリング剤としては、チ
タン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤
が使用される。また、カップリング剤は、1種を単独で
用いても、2種以上を併用してもよい。
【0049】チタン系カップリング剤としては、例え
ば、チタンアシレート化合物、チタンキレート化合物な
どが挙げられる。具体的には、イソプロピルトリ−n−
ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピル
トリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビ
ス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチ
タネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミ
ノエチル)チタネートなどが挙げられる。
【0050】アルミニウム系カップリング剤としては、
例えば、アルミニウムアシレート化合物、アルミニウム
キレート化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ア
セトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが挙げ
られる。
【0051】カップリング剤による処理方法は、特に限
定するものではなく、例えば、次のような方法を採用す
ることができる。まず、溶媒にカップリング剤を分散さ
せて吸着液を調製し、この吸着液にカーボン粒子を浸漬
する。その後、減圧下で乾燥して吸着液を分離回収する
ことにより、表面にカップリング剤が結合したカーボン
粒子が得られる。
【0052】吸着液を構成する溶媒としては、特に限定
するものではないが、例えば、ベンゼン、n−ヘキサ
ン、トルエン、エタノール、イソプロパノール、トリク
レン、メタノール、酢酸エチルなどを使用することがで
きる。
【0053】また、カップリング剤の使用量は、カップ
リング剤(C)とカーボン粒子(B)との比率(C:B
(重量比))が、例えば0.1:100〜5:100、
好ましくは0.5:100〜3:100、更に好ましく
は0.5:100〜1.5:100となるように調整さ
れる。
【0054】吸着液の温度は、特に限定するものではな
いが、例えば60〜130℃、好ましくは80〜120
℃である。また、カーボン粒子の浸漬時間は、例えば
0.5〜3時間、好ましくは0.5〜1.5時間であ
る。
【0055】前記カップリング剤が付与されたカーボン
粒子と熱可塑性樹脂とを混合し、得られた混合物を成形
して、PTCサーミスタ用抵抗体が作製される。この工
程は、前記第1の実施形態と同様にして実施することが
できる。また、本実施形態の抵抗体を用いたPTCサー
ミスタは、第1の実施形態で説明したものと同様の構造
とすることができる。
【0056】上記製造方法によれば、カーボン粒子表面
に特定のカップリング剤を付与することにより、カーボ
ン粒子の熱可塑性樹脂に対する分散性を向上させ、良好
なジャンピング特性を得ることができる。具体的には、
PTCサーミスタ用抵抗体のジャンピング前後における
抵抗値を、例えば4〜7桁、好ましくは5〜7桁変化さ
せることが可能である。前記PTCサーミスタ用抵抗体
のジャンピング前の比抵抗は、例えば0.2〜2Ωc
m、好ましくは0.3〜1.5Ωcm、更に好ましくは
0.3〜1.0Ωcmである。また、ジャンピング温度
は特に限定するものではないが、例えば115〜135
℃、好ましくは120〜130℃である。
【0057】
【実施例】(実施例1)カーボン粉末(東海カーボン社
製、商品名「トーカブラック#4300」、平均粒径5
5nm;以下同じ。)を、空気中において500℃で3
0分間熱処理した。前記カーボン粒子55質量部と、高
密度ポリエチレン45質量部とを加圧ニーダーにて17
0℃で混練し、これをロールにてシート状に成型して抵
抗体を作製した(実施例1−1)。また、カーボン粒子
と高密度ポリエチレンとの混合比を表1に示すように変
化させたこと以外は、実施例1−1と同様にして、抵抗
体を作製した(実施例1−2)。
【0058】(実施例2)カーボン粉末を、酸素雰囲気
中において300℃で30分間熱処理した。前記カーボ
ン粒子55質量部と、高密度ポリエチレン45質量部と
を加圧ニーダーにて170℃で混練し、これをロールに
てシート状に成型して抵抗体を作製した。
【0059】(実施例3)カーボン粉末を、オゾンを含
む空気中(オゾン濃度;1容量%)において150℃で
30分間熱処理した。前記カーボン粒子55質量部と、
高密度ポリエチレン45質量部とを加圧ニーダーにて1
70℃で混練し、これをロールにてシート状に成型して
抵抗体を作製した。
【0060】(実施例4)カーボン粉末を、1kWの水
銀灯から10cm距離をあけて光を照射しながら、空気
中において25℃で30分間熱処理した。前記カーボン
粒子55質量部と、高密度ポリエチレン45質量部とを
加圧ニーダーにて170℃で混練し、これをロールにて
シート状に成型して抵抗体を作製した(実施例4−
1)。また、熱処理温度を200℃にしたこと以外は、
実施例4−1と同様にして、抵抗体を作製した(実施例
4−2)。
【0061】(実施例5)60℃飽和水蒸気と空気とを
1:10(体積比)で混合した気体を1L/分の速度で
導入した加熱炉内において、カーボン粉末を500℃で
30分間熱処理した。前記カーボン粒子55質量部と、
高密度ポリエチレン45質量部とを加圧ニーダーにて1
70℃で混練し、これをロールにてシート状に成型して
抵抗体を作製した。
【0062】(実施例6)60℃飽和水蒸気と空気とを
1:10(体積比)で混合した気体を1L/分の速度で
導入した加熱炉内において、カーボン粉末を500℃で
30分間熱処理した。前記カーボン粒子表面をアルミニ
ウム系カップリング剤(アセトアルコキシアルミニウム
ジイソプロピレート;味の素社製「AL−M(商品
名)」;以下同じ。)により処理した。処理方法は次の
とおりである。まず、前記カップリング剤20gをイソ
プロパノール6000g中に加え、室温下で攪拌して吸
着液を作製し、これにカーボン粉末2000gを浸漬し
た。ヘンシェルミキサーにて室温下で10分間1170
rpmで混合した後、85℃で30分間700rpmで
混合した。−26600〜−42560Pa(−200
〜−320mmHg)で減圧乾燥してイソプロパノール
を分離回収した。
【0063】カップリング剤処理した前記カーボン粒子
55質量部と、高密度ポリエチレン45質量部とを加圧
ニーダーにて170℃で混練し、これをロールにてシー
ト状に成型して抵抗体を作製した。
【0064】(実施例7)カーボン粒子表面をアルミニ
ウム系カップリング剤により処理した。なお、カップリ
ング剤処理の方法は、実施例6と同様である。このカー
ボン粒子55質量部と、高密度ポリエチレン45質量部
とを加圧ニーダーにて170℃で混練し、これをロール
にてシート状に成型して抵抗体を作製した(実施例7−
1)。
【0065】また、チタン系カップリング剤(イソプロ
ピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チタネー
ト;味の素社製「KR 44(商品名)」)を使用する
こと以外は、実施例7−1と同様にして、抵抗体を作製
した(実施例7−2)。
【0066】(実施例8)カーボン粒子を10%希硝酸
中に加えて、25℃で1時間攪拌した後、乾燥した。こ
のカーボン粒子55質量部と、高密度ポリエチレン45
質量部とを加圧ニーダーにて170℃で混練し、これを
ロールにてシート状に成型して抵抗体を作製した(実施
例8−1)。
【0067】また、カーボン粒子を0.3%過マンガン
酸カリウム溶液中に加えて、25℃で1時間攪拌した
後、乾燥した。このカーボン粒子55質量部と、高密度
ポリエチレン45質量部とを加圧ニーダーにて170℃
で混練し、これをロールにてシート状に成型して抵抗体
を作製した(実施例8−2)。
【0068】(比較例1)カーボン粒子55質量部と高
密度ポリエチレン45質量部とを加圧ニーダーにて17
0℃で混練し、これをロールにてシート状に成型して抵
抗体を作製した。
【0069】(比較例2)カーボン粒子表面をエポキシ
系シランカップリング剤(β−(3,4−エポキシシク
ロへキシル)エチルトリメトキシシラン;信越化学工業
社製「KBM303(商品名)」)により処理した。な
お、カップリング剤処理の方法は実施例6と同様であ
る。このカーボン粒子55質量部と高密度ポリエチレン
45質量部とを加圧ニーダーにて170℃で混練し、こ
れをロールにてシート状に成型して抵抗体を作製した。
【0070】上記実施例および比較例において抵抗体を
5個ずつ作製した。なお、抵抗体の厚みは、全て0.0
25cmとした。それぞれの抵抗体について、25℃に
おける比抵抗と、125℃における抵抗値とを測定し
た。結果を表1〜4に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】また、実施例1−1および比較例1で作製
された抵抗体について、温度に対する抵抗値の変化を測
定した。結果を図4に示す。
【0076】上記表1〜4および図4から明らかなよう
に、実施例で作製された抵抗体は、比較例で作製された
抵抗体に比べて、125℃における抵抗値が高く、良好
なジャンピング特性を有していることが確認できた。
【0077】上記実施例1−1および7−1並びに比較
例1および2で得られた抵抗体を用いて、図3に示すよ
うな構造のPTCサーミスタを作製し、得られたサーミ
スタの破壊電圧を測定した。なお、破壊電圧の測定方法
は、直流電圧を徐昇しながら45±5Aの過電流を1分
間印加する試験を行い、サーミスタがスパークまたは溶
融した時点の電圧を測定し、これを破壊電圧とした。
【0078】その結果、比較例1および2で作製された
抵抗体を用いたサーミスタは、いずれも破壊電圧が85
Vであった。これに対して、実施例1−1で作製された
抵抗体を用いたサーミスタは破壊電圧が95Vであり、
実施例7−1で作製された抵抗体を用いたサーミスタは
破壊電圧が100Vであった。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のPTCサ
ーミスタ用抵抗体によれば、カーボン粒子の熱可塑性樹
脂に対する分散性を向上させることにより、ジャンピン
グにおける抵抗値変化を大きくすることができ、尚且
つ、ジャンピングが繰り返し実施された場合において
も、この大きな抵抗値変化を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)酸化処理前のカーボン粒子表面の状態
を説明するための模式図である。(B)酸化処理後のカ
ーボン粒子表面の状態を説明するための模式図である。
【図2】 (A)カーボン粒子の分散性が悪い状態を示
す模式図である。(B)カーボン粒子の分散性が良好な
状態を示す模式図である。
【図3】 本発明の抵抗体を用いたPTCサーミスタの
構造の一例を示す断面図である。
【図4】 実施例1−1および比較例1で作製した抵抗
体の抵抗−温度特性を示す図である。
【符号の説明】
1 カーボン粒子の凝集体 2 熱可塑性樹脂 3 電極 4 抵抗体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井垣 恵美子 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 森本 光一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 田中 秀樹 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 4J002 BB031 DA016 FB076 FB086 FB096 FB166 FB206 FB216 GQ00 5E034 AB01 DA02 DC01

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂とカーボン粒子とを含み、
    前記カーボン粒子表面が酸化処理されていることを特徴
    とするPTCサーミスタ用抵抗体。
  2. 【請求項2】 複数個のカーボン粒子が凝集しており、
    この凝集体が熱可塑性樹脂中に分散している請求項1に
    記載のPTCサーミスタ用抵抗体。
  3. 【請求項3】 カーボン粒子の粒径が、10〜100n
    mである請求項1または2に記載のPTCサーミスタ用
    抵抗体。
  4. 【請求項4】 酸化処理されたカーボン粒子表面に、ア
    ルミニウム、チタンおよびケイ素からなる群より選ばれ
    る少なくとも1種を含むカップリング剤が付与されてい
    る請求項1〜3のいずれかに記載のPTCサーミスタ用
    抵抗体。
  5. 【請求項5】 カーボン粒子表面を酸化処理する工程
    と、前記カーボン粒子と熱可塑性樹脂とを混合する工程
    とを含むPTCサーミスタ用抵抗体の製造方法。
  6. 【請求項6】 酸化処理する工程が、カーボン粒子を酸
    化性雰囲気に曝す工程である請求項5に記載のPTCサ
    ーミスタ用抵抗体の製造方法。
  7. 【請求項7】 酸化処理する工程が、カーボン粒子を、
    酸素を含む雰囲気において、200〜600℃の温度範
    囲で処理する工程である請求項6に記載のPTCサーミ
    スタ用抵抗体の製造方法。
  8. 【請求項8】 酸化処理する工程が、カーボン粒子を、
    オゾンを含む雰囲気において、25〜600℃の温度範
    囲で処理する工程である請求項6に記載のPTCサーミ
    スタ用抵抗体の製造方法。
  9. 【請求項9】 酸化処理する工程が、カーボン粒子に光
    を照射しながら、前記カーボン粒子を酸化性雰囲気に曝
    す工程である請求項5に記載のPTCサーミスタ用抵抗
    体の製造方法。
  10. 【請求項10】 酸化処理する工程が、25〜600℃
    の温度範囲で実施される請求項9に記載のPTCサーミ
    スタ用抵抗体の製造方法。
  11. 【請求項11】 酸化性雰囲気が水蒸気を含む請求項6
    〜10のいずれかに記載のPTCサーミスタ用抵抗体の
    製造方法。
  12. 【請求項12】 酸化処理する工程が、カーボン粒子
    を、酸化剤を含む溶液に接触させる工程である請求項5
    に記載のPTCサーミスタ用抵抗体の製造方法。
  13. 【請求項13】 酸化剤が、硝酸、過マンガン酸カリウ
    ム、亜塩素酸および次亜塩素酸ナトリウムからなる群よ
    り選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載のP
    TCサーミスタ用抵抗体の製造方法。
  14. 【請求項14】 カーボン粒子表面を酸化処理する工程
    の後であって、前記カーボン粒子と熱可塑性樹脂とを混
    合する工程の前に、前記カーボン粒子表面に、アルミニ
    ウム、チタンおよびケイ素からなる群より選ばれる少な
    くとも1種を含むカップリング剤を付与する工程を含む
    請求項5〜13のいずれかに記載のPTCサーミスタ用
    抵抗体。
  15. 【請求項15】 熱可塑性樹脂とカーボン粒子とを含
    み、前記カーボン粒子表面に、アルミニウムおよびチタ
    ンから選ばれる少なくとも1種を含むカップリング剤が
    付与されていることを特徴とするPTCサーミスタ用抵
    抗体。
  16. 【請求項16】 複数個のカーボン粒子が凝集してお
    り、この凝集体が熱可塑性樹脂中に分散している請求項
    15に記載のPTCサーミスタ用抵抗体。
  17. 【請求項17】 カーボン粒子の粒径が、10〜100
    nmである請求項15または16に記載のPTCサーミ
    スタ用抵抗体。
  18. 【請求項18】 カーボン粒子表面に、アルミニウムお
    よびチタンより選ばれる少なくとも1種を含むカップリ
    ング剤を付与する工程と、前記カーボン粒子と熱可塑性
    樹脂とを混合する工程とを含むPTCサーミスタ用抵抗
    体の製造方法。
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JP2020012097A (ja) * 2018-07-05 2020-01-23 キヤノン株式会社 樹脂組成物、樹脂成形体、樹脂積層体、カートリッジ、画像形成装置、樹脂成形体の製造方法、樹脂積層体の製造方法およびカートリッジの製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020012097A (ja) * 2018-07-05 2020-01-23 キヤノン株式会社 樹脂組成物、樹脂成形体、樹脂積層体、カートリッジ、画像形成装置、樹脂成形体の製造方法、樹脂積層体の製造方法およびカートリッジの製造方法
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