JP2003073867A - クロム含有熱延鋼帯の塩酸酸洗方法 - Google Patents
クロム含有熱延鋼帯の塩酸酸洗方法Info
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Abstract
かる硫酸や硝ふっ酸を用いず、より低コストの塩酸を用
いて効率的に酸洗し、かつ高い表面品質を得る方法を提
供する。 【解決手段】複数の酸洗槽が直列に配置された連続酸洗
設備を用いて、クロム熱延鋼帯を酸洗するにあたり、前
記連続酸洗設備の最も上流側の酸洗槽では、塩酸濃度8
0g/リットル以下、液温80℃未満、最も下流側の酸洗槽
では、塩酸濃度80〜200g/リットル、液温80〜95
℃の酸洗液を用い、その2つの間の酸洗槽を鋼板が浸漬
される順に酸濃度および液温を上げるように調整するこ
とを特徴とした、クロム含有熱延鋼帯の塩酸酸洗方法。
Description
洗によるスケール除去が困難であるクロム(Cr)含有
熱延鋼帯の酸洗方法に関し、廃液コストのかかる硫酸や
硝ふっ酸(硝酸とふっ酸の水溶液)を用いず、より低コ
ストの塩酸を用いて効率的に、かつ高い表面品質を得る
新規な酸洗方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ステンレス鋼の代表的な鋼種であるSU
S304(18質量%Cr−8質量%Ni)は酸洗によ
るスケール除去が難しく、通常、酸洗はスケール溶解能
力の高い硝ふっ酸を用いた酸洗設備で行われる。これと
同じ酸洗設備を用いて、ステンレス鋼の中でもCr含有
量の低い低Cr鋼であるSUH409L(11質量%C
r)やSUS410L(12質量%Cr)などを酸洗す
ると、過度に酸洗され、表面品質が劣化する場合があっ
た。また、硝ふっ酸酸洗は有害な窒素酸化物(NOX )
やふっ素化合物を生成するため、廃液コストがかさむと
いう問題があった。 【0003】この対策として、従来普通鋼に用いられて
いた塩酸酸洗を、低Cr鋼の酸洗に用いる方法が提案さ
れた。例えば特公昭62−61672号公報には、液温
に応じて最適な塩酸濃度を規定する酸洗方法が提案され
ている。しかしながら、この方法では、処理量が増加し
ていくにつれて、溶解したFeイオン濃度が高くなった
際に、スケール除去の効率が顕著に劣化したり、スマッ
トと呼ばれる溶解したスケールが鋼板表面に吸着して出
来る模様が鋼材の外観を悪化させる問題が生じた。ま
た、特開昭63−216986号公報には、低Cr鋼の
酸洗方法として、第1鉄イオンを第2鉄イオンに酸化す
ることにより、塩酸のスケール除去の効率を改善する方
法が記載されている。しかし、この方法では、第1鉄イ
オンから第2鉄イオンに酸化させるのに空気の吹き込み
あるいは過酸化水素水の注入が必要であり、そのコスト
がかえって大きくなる場合があった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】これら酸洗液中のFe
イオンの増加による問題は、急激なスケール溶解に伴う
ものであり、これを解決するためには、急激なスケール
溶解を抑えることが必要である。本発明の目的はクロム
含有熱延鋼帯の酸洗にあたり、低コストの塩酸を用い、
スケール除去の効率を高めることおよびスマットの発生
を防止することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、この目的
を達成すべく、Cr含有鋼の塩酸酸洗方法について詳細
に調査した結果、複数の酸洗槽を有する設備の場合に
は、下流側に位置する酸洗槽ほど、塩酸濃度および酸洗
液の液温を高くすることにより、スマットを発生するこ
となく、かつ高いスケール除去の効率が得られることが
分かった。 【0006】表1に示す化学成分の50kg鋼塊(供試
材記号A〜E)を高周波真空溶解炉で溶製し、燃焼ガス
雰囲気で1200℃×30分間加熱した後、熱間圧延に
より板厚3mmの熱延鋼帯とした。これに通常の焼なま
し熱処理を施した後、60mm×80mmのサンプルを
多数切り出した。これらを、表2に示す条件の塩酸濃
度、液温の3つの酸洗槽(実験開始時の酸洗液量各1リ
ットル)1〜3に酸洗槽1から順に30秒間ずつ浸漬し
た。各条件とも20枚のサンプルを酸洗し、最後の20
枚目の酸洗減量(酸洗によるサンプルの質量減少)と表
面性状を調べた。なお、スケール除去の効率が著しく低
下した場合は塩酸を追加した。また、実験後各槽の酸洗
液のFeイオン濃度を測定した。酸洗減量と追加の塩酸
使用量の比で、酸洗効率を示した。その結果を表2に示
す。 【0007】 【表1】 【0008】 【表2】【0009】この結果、複数の塩酸槽で酸洗を行う場合
には、鋼板が浸漬される順に塩酸濃度および液温を上げ
ていくと、スマットのない良好な表面性状が得られ、か
つ酸洗効率が高く追加して使用する塩酸の量も少なくて
済んだ。最後の酸洗槽の塩酸濃度あるいは液温が低い場
合には、酸洗減量が低く、スケール残りが生じた。ま
た、Cr含有量が低い供試材Dは、どの酸洗槽でも酸洗
液中のFeイオン濃度が高くなり、スマットが発生し
た。Cr含有量が高い供試材Eは、酸洗減量が小さく、
スケール残りを生じた。 【0010】本発明は、これらの知見に基づくものであ
り、複数の酸洗槽が直列に配置された連続酸洗設備を用
いて、クロムを5質量%以上、17質量%以下含有する
熱延鋼帯を酸洗するにあたり、前記連続酸洗設備の最も
上流側の酸洗槽では、塩酸濃度80g/リットル以下、液温
80℃未満、最も下流側の酸洗槽では、塩酸濃度80〜
200g/リットル、液温80〜95℃の酸洗液を用い、各
酸洗槽の塩酸濃度と液温は、下記式(1)および(2)
を満たすように調整することを特徴とした、クロム含有
熱延鋼帯の塩酸酸洗方法: D1 <D2 <・・・<Dn-1 <Dn ・・・ (1) T1 <T2 <・・・<Tn-1 <Tn ・・・ (2) Dn :上流からn番目の酸洗槽の塩酸濃度(g/リットル) Tn :上流からn番目の酸洗槽の液温(℃) n :2以上の整数 である。 【0011】通常ステンレス鋼では、熱延鋼帯の酸洗前
に焼なまし熱処理が施されるが、本発明では、焼なまし
熱処理の有無によらず、顕著な効果が得られる。また、
酸洗前に、一般的に行われているショットブラスト等の
機械的なスケール除去処理を施しても全く問題ない。本
発明を用いて製造される酸洗処理を施した熱延鋼帯は、
そのまま製品として出荷し、諸用途に使うことが出来
る。もちろん、冷延鋼帯向けの素材として用いることも
可能である。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明における諸条件の限
定理由について詳細に説明する。鋼中のCr含有量は、
17質量%を超えるとスケール除去効率が顕著に劣化
し、塩酸酸洗ではスケール除去が困難となるため、これ
を上限とする。スケール除去効率の点からは、Cr含有
量は13質量%以下が望ましい。また、5質量%未満で
は、金属鉄の溶解量が大きくなり過ぎ、スマットの発生
などにより表面性状が劣化するため、これを下限とす
る。スマット防止の点からは、Cr含有量が10質量%
以上が望ましい。本願発明に用いられる熱延鋼帯は、C
r以外の鋼成分としては、C,Si,Mn,Ni,T
i,Mo,P,S,N,Nb,Alよりなる群から選択
される少なくとも1種を、その求める特性に応じて含有
することができ、残部Feおよび不可避的不純物からな
る熱延鋼帯である。具体的な鋼種としては、SUS41
0、SUS420などのマルテンサイト系ステンレス
鋼、SUS410L、SUS430などのフェライト系
ステンレス鋼、SUH409LなどのCr含有耐熱鋼な
どがある。 【0013】最も上流側の酸洗槽については、塩酸濃度
および液温は高いほどスケール除去効率が向上するが、
高くなりすぎると、この槽のみ塩酸消耗量が顕著に大き
くなりスケール除去効率が低下するばかりでなく、スマ
ットが発生するため、塩酸濃度80g/リットル以下、液温
80℃未満とする。なお、スマット発生の点からは、液
温は65℃未満とすることが望ましい。スケール除去効
率の点からは、塩酸濃度60g/リットル以上、液温40℃
以上が望ましい。 【0014】最も下流側の酸洗槽については、塩酸濃度
および液温は高いほどスケール除去効率が向上するが、
液温が高くなりすぎると塵芥が発生するばかりでなく、
酸消耗量(塩酸使用量)が大きくなり効率が低下するた
め、それぞれの上限を塩酸濃度200g/リットル、液温9
5℃とする。スケール除去効率の点からは、塩酸濃度は
150g/リットル以下にすることが望ましい。目的とする
スケール除去効率を得るためには、塩酸濃度80g/リッ
トル以上、液温80℃以上が必要であり、これを下限とす
る。 【0015】最も上流と最も下流の槽の中間の酸洗槽が
ある場合については、先に実験結果を述べたように、下
流側のものほど塩酸濃度および液温が高くなると、スケ
ール除去効率が向上し、かつスマットが防止できるた
め、下記式(1)および(2)を満たすように調整す
る: D1 <D2 <・・・<Dn-1 <Dn ・・・ (1) T1 <T2 <・・・<Tn-1 <Tn ・・・ (2) Dn :上流からn番目の酸洗槽の塩酸濃度(g/リットル) Tn :上流からn番目の酸洗槽の液温(℃) n :2以上の整数。 【0016】酸洗槽数nは、好ましくは3〜6である。
3より少ないと各酸洗槽のスケール除去量を多くする必
要があり、酸洗液の調整頻度が高くなり作業効率が低下
する。6より多いと、各酸洗槽の負担は少ないが、設備
の管理コストが高くなる。より好ましくは4〜5であ
る。これらの酸洗槽間には、必要に応じて水洗、乾燥等
の工程を入れることもできる。また、スケール除去効率
が向上し、スマットの発生を防止できることから、 Dn −Dn-1 ≧10(g/リットル) Tn −Tn-1 ≧ 5(℃) を満たすように各酸洗槽の塩酸濃度および液温を調整す
ることが好ましい。 【0017】また、酸洗時間は、長いほど高い酸洗減量
が得られるが、長すぎるとスケール除去効率は飽和する
ばかりか、粒界侵食により表面性状を劣化させるため、
1槽あたり60秒以下が望ましい。また、スケール除去
を完全に行うという点からは、1槽あたり10秒以上と
するのが望ましい。 【0018】 【実施例】以下、本発明の実施例および比較例を挙げ、
本発明をより具体的に説明する。板厚3mmのSUH4
09L(0.01質量%C−11質量%Cr−0.25
質量%Ti鋼)熱延コイル(質量13トン/コイル)を
通常の方法に従って製造し、バッチ式炉で焼なまし熱処
理を施して熱延鋼帯を得た。次に、5つの直列酸洗槽を
有する連続酸洗設備で、表3に示す種々の条件で酸洗槽
1から5の順に前記熱延鋼帯を20秒間ずつ浸漬して酸
洗を行った。連続して10コイルの塩酸酸洗を行い、最
後の10コイル目の酸洗後の表面性状(スケール残りお
よびスマットの有無)を調べた。なお、塩酸の補充は行
わなかった。表3に示したように、本発明に従った場
合、スケール残りおよびスマットのない表面性状が良好
な酸洗処理を施した熱延鋼帯が得られた。 【0019】 【表3】【0020】 【発明の効果】本発明によれば、廃液コストのかかる硫
酸や硝ふっ酸を用いずに、より低コストの塩酸を用い、
効率的に、かつスマットの発生を抑えながらクロム含有
熱延鋼帯を酸洗することが可能である。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】複数の酸洗槽が直列に配置された連続酸洗
設備を用いて、クロムを5質量%以上、17質量%以下
含有する熱延鋼帯を酸洗するにあたり、前記連続酸洗設
備の最も上流側の酸洗槽では、塩酸濃度80g/リットル以
下、液温80℃未満、最も下流側の酸洗槽では、塩酸濃
度80〜200g/リットル、液温80〜95℃の酸洗液を
用い、各酸洗槽の塩酸濃度と液温は、下記式(1)およ
び(2)を満たすように調整することを特徴とした、ク
ロム含有熱延鋼帯の塩酸酸洗方法: D1 <D2 <・・・<Dn-1 <Dn ・・・ (1) T1 <T2 <・・・<Tn-1 <Tn ・・・ (2) Dn :上流からn番目の酸洗槽の塩酸濃度(g/リットル) Tn :上流からn番目の酸洗槽の液温(℃) n :2以上の整数。
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JP2001263155A JP4857502B2 (ja) | 2001-08-31 | 2001-08-31 | クロム含有熱延鋼帯の塩酸酸洗方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112095112A (zh) * | 2020-03-24 | 2020-12-18 | 江苏省沙钢钢铁研究院有限公司 | 一种用于高牌号无取向硅钢生产的酸洗装置及其使用方法 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6261672B2 (ja) * | 1982-09-20 | 1987-12-22 | Kawasaki Steel Co | |
JPH10306391A (ja) * | 1997-03-03 | 1998-11-17 | Hitachi Ltd | 酸洗プラントの制御方法とその酸洗プラント |
-
2001
- 2001-08-31 JP JP2001263155A patent/JP4857502B2/ja not_active Expired - Fee Related
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CN112095112A (zh) * | 2020-03-24 | 2020-12-18 | 江苏省沙钢钢铁研究院有限公司 | 一种用于高牌号无取向硅钢生产的酸洗装置及其使用方法 |
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