JP7215369B2 - マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法 - Google Patents
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c2×t1/3≧830・・・(1)
ただし、前記酸洗液の温度Tは50~70℃であり、cは15~22質量%であり、tは12~95分である。
図1は、本発明の一実施形態によるマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法のフロー図である。本実施形態によるマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法は、素管を準備する工程(ステップS1)と、素管にブラスト処理をする工程(ステップS2)と、ブラスト処理がされた素管に酸洗処理をする工程(ステップS3)と、酸洗処理がされた素管を高圧水洗浄する工程(ステップS4)と、高圧水洗浄された素管を湯浸漬する工程(ステップS5)とを備えている。以下、各工程を詳述する。
焼戻しがされた素管を準備する(ステップS1)。素管は、継目無鋼管であることが好ましいが、溶接鋼管であってもよい。
炭素(C)は、溶接時に溶接熱影響部(HAZ)においてCr炭化物として析出し、HAZの耐SCC性を低下させる。一方、C含有量を過剰に制限すると製造コストが増加する。そのため、C含有量は、好ましくは0.001~0.050%である。C含有量の下限は、より好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.008%である。C含有量の上限は、より好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.020%である。
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。一方、Si含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、Si含有量は、好ましくは0.05~1.00%である。Si含有量の下限は、より好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Si含有量の上限は、より好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.50%である。
マンガン(Mn)は、鋼の強度を向上させる。一方、Mn含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、Mn含有量は、好ましくは0.05~1.00%である。Mn含有量の下限は、より好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.20%である。Mn含有量の上限は、より好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.60%である。
リン(P)は不純物である。Pは、鋼の耐SCC性を低下させる。そのため、P含有量は、好ましくは0.030%以下である。P含有量は、より好ましくは0.025%以下である。
硫黄(S)は不純物である。Sは、鋼の熱間加工性を低下させる。そのため、S含有量は、好ましくは0.0020%以下である。
銅(Cu)は不純物である。Cu含有量は、好ましくは0.50%未満である。Cu含有量は、より好ましくは0.10%以下であり、さらに好ましくは0.08%以下である。
クロム(Cr)は、鋼の耐炭酸ガス腐食性を向上させる。一方、Cr含有量が高すぎると、鋼の靱性及び熱間加工性が低下する。そのため、Cr含有量は、好ましくは11.50~14.00%未満である。Cr含有量の下限は、より好ましくは12.00%であり、さらに好ましくは12.50%である。Cr含有量の上限は、より好ましくは13.50%であり、さらに好ましくは13.20%である。
ニッケル(Ni)は、オーステナイト形成元素であり、鋼の組織をマルテンサイトにするために含有される。一方、Ni含有量が高すぎると、鋼の強度が低下する。そのため、Ni含有量は、好ましくは5.00%超~7.00%である。Ni含有量の下限は、好ましくは5.50%であり、さらに好ましくは6.00%である。Ni含有量の上限は、好ましくは6.80%であり、さらに好ましくは6.60%である。
モリブデン(Mo)は、鋼の耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる。Moはさらに、溶接時に炭化物を形成してCr炭化物の析出を妨げ、HAZの耐SCC性の低下を抑制する。一方、Mo含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、Mo含有量は、好ましくは1.00%超~3.00%である。Mo含有量の下限は、より好ましくは1.50%であり、さらに好ましくは1.80%である。Mo含有量の上限は、より好ましくは2.80%であり、さらに好ましくは2.60%である。
チタン(Ti)は、溶接時に炭化物を形成してCr炭化物の析出を妨げ、HAZの耐SCC性の低下を抑制する。一方、Ti含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、Ti含有量は、好ましくは0.02~0.50%である。Ti含有量の下限は、より好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Ti含有量の上限は、より好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.30%である。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。一方、Al含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、Al含有量は、好ましくは0.001~0.100%である。Al含有量の下限は、より好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Al含有量の上限は、より好ましくは0.080%であり、さらに好ましくは0.060%である。本明細書におけるAl含有量は、酸可溶Al(いわゆるSol.Al)の含有量を意味する。
カルシウム(Ca)は、鋼の熱間加工性を向上させる。一方、Ca含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、Ca含有量は、好ましくは0.0001~0.0040%である。Ca含有量の下限は、より好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0008%である。Ca含有量の上限は、より好ましくは0.0035%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
窒素(N)は、窒化物を形成して鋼の靱性を低下させる。一方、N含有量を過剰に制限すると製造コストが増加する。そのため、N含有量は、好ましくは0.0001~0.0200%未満である。N含有量の下限は、より好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0020%である。N含有量の上限は、より好ましくは0.0100%である。
バナジウム(V)は、鋼の強度を向上させる。Vが少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、V含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、V含有量は、好ましくは0~0.500%である。V含有量の下限は、より好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。V含有量の上限は、より好ましくは0.300%であり、さらに好ましくは0.200%である。
ニオブ(Nb)は、鋼の強度を向上させる。Nbが少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、Nb含有量が高すぎると、鋼の靱性が低下する。そのため、Nb含有量は、好ましくは0~0.500%である。Nb含有量の下限は、より好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.020%である。Nb含有量の上限は、より好ましくは0.300%であり、さらに好ましくは0.200%である。
コバルト(Co)は、オーステナイト形成元素であり、鋼の組織をマルテンサイトにするために含有させてもよい。Coが少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、Co含有量が高すぎると、鋼の強度が低下する。そのため、Co含有量は、好ましくは0~0.500%である。Co含有量の下限は、より好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Co含有量の上限は、より好ましくは0.350%であり、さらに好ましくは0.300%であり、さらに好ましくは0.280%である。
焼戻し工程で発生した酸化スケールをブラスト処理によって機械的に除去する(ステップS2)。投射材(研削材)は特に限定されないが、材質はアルミナが好ましい。また、投射材の粒度番号は、#60以下が好ましく、#30以下がより好ましい。それ以外の処理条件は特に限定されず、当業者であれば、適宜調整して、素管表面の酸化スケールを適切に除去できる。
ブラスト処理された素管に酸洗処理をする(ステップS3)。酸洗処理工程は、少なくとも硫酸酸洗工程(ステップS3-1)を含む。硫酸酸洗工程では、素管を硫酸濃度cの酸洗液に浸漬時間tの間浸漬する。このとき、硫酸濃度cと浸漬時間tとが(1)式を満たすようにする。ブラスト処理がされた素管に対して、(1)式を満たす条件で硫酸酸洗を実施すれば、清浄な表面が得られる。
c2×t1/3≧830・・・(1)
ただし、酸洗液の温度Tは50~70℃であり、cは15~22質量%であり、tは12~95分である。
酸洗処理工程(ステップS3)の後、必要に応じて、素管の内外面を高圧水洗浄する(ステップS4)。素管には、酸洗処理で生じた腐食生成物が付着している場合があり、この腐食生成物は、乾燥すると除去するのが困難になる。そのため、乾燥前に高圧水を吹き付けてこの腐食生成物を除去しておくことが好ましい。
酸洗処理工程(ステップS3)の後、あるいは高圧水洗浄工程(ステップS4)の後、必要に応じて、素管を湯浸漬する(ステップS5)。具体的には、素管を温水槽に浸漬する。温水の温度は、例えば60~85℃である。湯浸漬を実施することで、素管の乾燥時間を短くすることができる。
Claims (5)
- マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であって、
焼戻しがされた素管を準備する工程と、
前記素管にブラスト処理をする工程と、
前記ブラスト処理がされた素管に酸洗処理をする工程とを備え、
前記酸洗処理をする工程は、少なくとも硫酸酸洗工程を含み、
前記硫酸酸洗工程は、酸洗液の硫酸濃度をc(質量%)、前記酸洗液への前記素管の浸漬時間をt(分)とするとき、(1)式を満たす、マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
c2×t1/3≧830・・・(1)
ただし、前記酸洗液の温度Tは50~70℃であり、cは15~22質量%であり、tは12~95分である。 - 請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であって、
前記酸洗処理の後、前記素管の内外面を高圧水洗浄する工程をさらに備える、マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。 - 請求項1又は2に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であって、
前記酸洗処理の後、前記素管を湯浸漬する工程をさらに備える、マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。 - 請求項1~3のいずれか一項に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であって、
前記素管の化学組成が、質量%で、
C :0.001~0.050%、
Si:0.05~1.00%、
Mn:0.05~1.00%、
P :0.030%以下、
S :0.0020%以下、
Cu:0.50%未満、
Cr:11.50~14.00%未満、
Ni:5.00%超~7.00%、
Mo:1.00%超~3.00%、
Ti:0.02~0.50%、
Al:0.001~0.100%、
Ca:0.0001~0.0040%、
N :0.0001~0.0200%未満、
V :0~0.500%、
Nb:0~0.500%、
Co:0~0.500%、
残部:Fe及び不純物である、マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。 - 請求項4に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であって、
前記化学組成が、質量%で、
V :0.001~0.500%、
Nb:0.001~0.500%、及び
Co:0.001~0.500%、
からなる群から選択される1種又は2種以上の元素を含有する、マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
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