JP2003073761A - 生体用β型チタン合金 - Google Patents

生体用β型チタン合金

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JP2003073761A
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Akihiro Suzuki
昭弘 鈴木
Chiaki Ouchi
千秋 大内
Kaori Taneichi
華織 種市
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体適合性を備えると共に、冷間加工性に優
れ、箔帯や極細線の製造にも対応することができるβ型
チタン合金を提供する。 【解決手段】 質量比で、Mo:13.5〜16.0
%、Nb:0.5〜5.5%、Zr:0.5〜5.0
%、O:0.20%以下を含有し、残部Tiおよび不可
避的不純物からなるチタン合金とし、かつβ変態点を7
00〜750℃の範囲とすることによって、生体適合性
を確保し、固溶硬化を避けると共に、β相を安定化して
歪誘起変態に基づく加工硬化を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、人体を始めとする
生体適合性に優れ、生体内に挿入あるいは埋設した状態
で使用される各種医療用部品の材料として好適なチタン
合金に係わり、特に冷間加工性に優れ、箔帯、あるいは
極細径のピンやワイヤ、メッシュなどにも成形すること
ができる生体用β型チタン合金に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年の医療技術の革新的な発展に伴っ
て、人体などの生体内に挿入あるいは埋設して使用する
各種の医療用部品やマイクロマシーン機器などが急激に
増加してきている。 【0003】このような医療用金属材料としては、従来
からステンレス鋼やCo−Cr合金が使用されている
が、これらの合金に加えて、生体環境での耐食性に優れ
ているチタンやチタン合金が、このような生体内で使用
される種々の部品や機器に最も適合した材料として広く
用いられるようになってきている。 【0004】一般に、金属の細胞毒性については、C
o,Cr,Ni,Vなどが単体で強い毒性を現し、Z
r,Ti,Nb,Taなどは毒性を示さないとされてお
り、生体内での長期埋設の間、あるいは使用している間
における微細な摩耗粉の発生や生体環境の急変などに伴
って生じる溶出現象の観点から、チタン合金に添加され
る合金元素のうちで生体に有害とされる上記のような元
素の使用を避けて合金設計した生体適合性に優れたチタ
ン合金も数多く開発されてきた。 【0005】生体内に挿入あるいは埋設された状態で長
期間にわたって使用される医療用部品やマクロマシーン
用部品には、心臓のペースメーカー、金属ステント、整
形外科等における手術時の締結用細線、FES(Functi
onal Electrical Stimulation:機能的電気刺激)用電
極に用いられる極細線などのように、箔帯や極細線のよ
うな形状をなす素材のニーズが急激に高まってきてい
る。 【0006】 【本発明が解決しようとする課題】しかしながら、実用
に供されている各種チタン合金の中ではβ型チタン合金
が最も優れた冷間加工性を有していることから、このよ
うな箔帯や極細線の製造に最も適合していると考えられ
るものの、既存のβ型チタン合金の多くは生体に有害と
されているV,Al,Cr等を主要添加元素として含有
しているため、これら生体用の箔帯や極細線の素材とし
て適さないものと判断される。 【0007】また、箔帯や極細線は、極めて強度の冷間
加工を加えることによって製造されることになるので、
素材特性としては、冷間加工工程での中間焼鈍回数を皆
無あるいは可及的に少なくすることができ、しかも過酷
な冷間加工を施しても割れが発生しないことが要求され
る。したがって、箔帯や極細線用素材に必要とされるこ
れらの特性を満たすためには、(イ)溶体化処理のまま
での強度や硬度ができるだけ低いこと、(ロ)冷間加工
度の増加に伴う加工硬化が少ないこと(ハ)強度の加工
でも割れが生じないこと、の3点が必須条件となるが、
生体適合性を考慮して開発され、実用化されてきた既存
のチタン合金、とくに一般的な冷間加工性には優れてい
る生体用β型チタン合金においても、これら箔帯や極細
線の製造に必要な上記特性(例えば、FES用電極とし
ては、SUS316L鋼製25μm極細線の19本撚り
線からなる経皮的埋め込み電極が用いられている)を満
足する合金は皆無であって、生体適合性と冷間加工性の
両面で極めて優れた特性を有するチタン合金の開発が課
題となっていた。 【0008】 【発明の目的】本発明は、生体用チタン合金に係わる上
記動向や現状に鑑みてなされたものであって、生体適合
性を備え、しかも冷間加工性に優れ、箔帯や極細線の製
造にも対応することができるβ型チタン合金を提供する
ことを目的としている。 【0009】 【課題を解決する手段】本発明者らは、上記目的を達成
するために、添加元素を生体適合性を有するとされてい
るMo,Nb,Zr,Ta,Feの中から選択すること
とし、箔帯や極細線の製造に要求される加工性の基準と
共に、冷却過程や加工に伴うω相やα’あるいはα”マ
ルテンサイト相などの生成を抑制するための合金元素の
選択やその添加量範囲、さらには適正なβ変態点範囲な
どについて鋭意検討を重ねた結果、箔帯や極細線の製造
には、加工度が90%の冷間加工を施しても割れが生じ
ないことと共に、冷間引き抜きなどによる線引き加工時
に加工硬化によって硬度がHv290を超えると、チタ
ン材料の熱的特性によりダイスへの焼き付き等の不具合
が急激に生じ易くなり、これを避けるために硬度がHv
290を超えた時点で中間焼鈍が必要となることから、
90%の加工度の冷間加工を施した際の硬度がHv29
0以下であることが必要であることを見出した。 【0010】また、添加元素としては、上記金属のう
ち、冷間加工性の観点からMo,NbおよびZrが好ま
しいこと、さらに、β相の安定性が不十分であると、冷
間加工度の増加に伴ってβ相中にα’マルテンサイト
や、α”マルテンサイトが発生し、硬度を著しく上昇さ
せ、しかも冷間加工に伴う割れ発生が顕著なものとなる
ことから、β相の安定性を確保してこれら加工誘起マル
テンサイトの発生を抑制する観点から、β変態点の上限
を750℃とすると共に、過剰な合金元素添加による固
溶強化や加工硬化を防止し、また合金添加に伴う経済的
不利を避ける観点から、β変態点の下限を700℃とす
ることが有効であることを見出すに到った。 【0011】すなわち、図1は、Mo含有量が11〜1
8%の範囲のTi‐Mo‐X‐Y(X,Yは、Zr,N
b,FeおよびTaから選択)系を基本合金系としたβ
型チタン合金におけるβ変態点と溶体化処理のままの硬
度(300g荷重ビッカース硬度)の関係を示すグラフ
である。 【0012】図において、○印で示すTi−Mo−Nb
−Zr系合金においては、β変態点が700℃〜750
℃の範囲にある場合に最も低い硬度を示している。これ
に対し、Moと共にβ安定化元素であるFeやTaを含
有するTi−Mo−Fe−Zr−(Nb)系合金(図中
◇および△)や、Ti−Mo−Fe−Nb系合金(図中
▽)、Ti−Mo−Fe−Ta系合金(図中+)では、
同じβ変態点範囲においてもTi−Mo−Nb−Zr系
合金よりも高い硬度を示しており、冷間加工性の観点か
らこれら合金元素の添加は好ましくない。また、β安定
化元素の過剰含有によってβ変態点が700℃未満に低
下すると、Ti−Mo−Fe−Zr−Nb系合金はもと
より、Ti−Mo−Nb−Zr系合金においても、固溶
強化によって溶体化処理のままでの硬度が上昇し、同様
に冷間加工性の観点から望ましくないことが判る。 【0013】一方、β変態点が750℃を超えると、β
相の安定性低下やω相の生成を生じ、Ti−Mo−Nb
−Zr系合金においても、溶体化処理状態でのβ相の硬
度が急激に増加する傾向が認められる。 【0014】本発明はこのような知見に基づくものであ
って、本発明に係わる生体用β型チタン合金は、質量比
で、Mo:13.5〜16.0%、Nb:0.5〜5.
5%、Zr:0.5〜5.0%、O:0.20%以下を
含有し、残部Tiおよび不可避的不純物からなると共
に、β変態点が700〜750℃の範囲である構成とし
たことを特徴としており、生体用β型チタン合金におけ
るこのような構成を上記した従来の課題を解決するため
の手段としている。 【0015】 【発明の作用】以下に、本発明に係わる生体用β型チタ
ン合金において、各成分組成を上記範囲に限定した理由
についてその作用と共に説明する。 【0016】Mo:13.5〜16.0% 本発明のような準安定β型チタン合金は、基本的にβ相
を安定化する合金元素から構成されるが、本発明におい
ては、Mo,V,Nb,Taなど数多いβ安定化元素の
中から添加合金元素としてMoを選択している。これ
は、Moが他のβ安定化元素に比べて、耐食性に優れ、
かつ生体適合性を有し、合金元素として相対的に安価で
あることによる。このとき、Mo含有量が質量比で1
3.5%に満たない場合には、β相の安定性が不十分で
あり、冷間加工に伴ってα’もしくはα”マルテンサイ
トが生成して、硬度が上昇し、冷間加工性が著しく損な
われることから、その含有量を13.5%以上とした。
また、Mo含有量が質量比で16.0%を超えると、溶
体化処理状態での固溶硬化や、冷間加工に伴う加工硬化
が顕著になるため、Mo含有量の上限値を16.0%と
した。 【0017】Nb:0.5〜5.5% Nbもβ安定化元素であり、基本的にMoと同じ特性を
有することに加えて、Moとの複合添加によって生体環
境での耐食性をさらに向上させる効果を発揮することか
ら必須の添加元素とした。このようなNbの添加効果
は、少なくとも質量比で0.5%以上の含有量において
生じることから、この値を下限値とした。一方、Nbの
添加量が質量比で5.5%を超えると、合金添加による
コスト上昇が大きくなる上に、高融点金属であるNbを
多量に添加すると、溶製上の難易度が高くなることか
ら、その上限値を5.5%とした。 【0018】Zr:0.5〜5.0% Zrは、β相の安定化には寄与しない中性的元素である
が、チタン基合金において耐食性や生体適合性の向上に
寄与する元素であることから必須の添加元素とした。し
かし、Zrの添加量が質量比で0.5%に満たない時に
は、添加の効果がほとんど得られず、添加量が質量比で
5.0%を超えると、合金添加によるコスト上層が著し
く大きくなることから、その含有量を0.5〜5.0%
の範囲とした。 【0019】O:0.20%以下 O(酸素)は、溶体化処理のままでの硬度および加工硬
化を顕著なものとすることから少ないことが望ましい元
素であるが、製造上、およびインゴット溶製時に使用す
るスポンジチタンの価格の点から、その許容値として、
上限値を質量比で0.20%とした。 【0020】β変態点:700〜750℃ 本発明においては、上記した各合金元素の添加量範囲に
加えて、β変態点の範囲を規定しているが、これは優れ
た冷間加工性を確保するためには、個々の添加元素範囲
を単に規定するだけでは不十分であって、β変態点範囲
の規制が不可欠であるとの知見に基づくものである。す
なわち、β変態点の上昇に伴ってβ相の安定性が低下
し、冷間加工による歪誘起変態が生じるようになるの
で、これを避けるためにはβ変態点の上限温度を750
℃とすることが必要である。一方、MoやNbなどのβ
安定化元素の添加量を増加させていくと、β変態点が低
下していくが、β安定化元素の過剰な添加は、合金添加
によるコスト上昇に加えて、溶体化処理のままのβ相の
硬度を増加させると共に、加工硬化による高硬度化が顕
著なものとなり、冷間加工性が劣化することになる。こ
のような観点から、β変態点の下限温度を700℃とす
ることが必要となる。 【0021】 【実施例】以下、本発明に係わる生体用β型チタン合金
を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本
発明は、これら実施例のみに限定されないことは言うま
でもない。 【0022】表1に示した成分組成を有するチタン合金
をボタンアーク炉を用いて溶製し、幅40mm、厚み2
0mm、長さ130mm、重量約450gのボタンイン
ゴットを得たのち、1000℃まで加熱分塊し、直径1
5mmの棒材を作製、さらにその後、800℃での加熱
鍛造により、幅8mm、厚み13mmの板を作製した。 【0023】 【表1】 【0024】そして、熱間圧延によって得られた上記サ
ンプルに、800℃×10分の溶体化処理を施し、この
状態における硬さをビッカース硬度計により300g荷
重で測定した。そしてさらに、各溶体化処理済みサンプ
ルを用い、幅7mm、厚さ12mmまで機械加工を施
し、表層酸化層を除去した後、冷間圧延を施した場合に
割れが生じる限界圧延率について調査を行った。また、
90%の圧延率の冷間圧延を施した状態におけるビッカ
ース硬さをビッカース硬度計により同様に測定した。こ
れらの結果を表2に示す。 【0025】 【表2】 【0026】表2に示した結果から明らかなように、各
合金成分組成が上記範囲内にあり、しかもβ変態温度が
700〜750℃の範囲にある発明例No.1〜5のチ
タン合金においては、いずれも90%という強度の冷間
圧延率においても割れを生じることはなく、また溶体化
処理の後、および90%の圧延率で冷間圧延した後の硬
度もそれぞれHv250およびHv290以下であり、
比較例合金に比べて大幅に低いことが確認された。 【0027】これに対し、Mo含有量が低い比較例N
o.7のチタン合金においては、溶体化処理時の硬さは
高くないものの、β相の安定性に欠け、冷間加工に伴っ
て加工硬化しやすく、Mo含有量が高い比較例No.8
のチタン合金においては、固溶硬化と加工硬化によっ
て、溶体化処理後、90%冷間圧延後共に硬度が高くな
っており、Feを含有する比較例No.6および10、
さらにTaを含有する比較例No.9のチタン合金にお
いては、この傾向が一層顕著に現れており、いずれの合
金においても割れ限界圧延率が75%以下であり、溶体
化処理後の硬度は、概ねHv250以上、90%の圧延
率での冷間圧延後の硬度も概ねHv300以上であるこ
とが判明した。なお、これら比較例合金における90%
冷間圧延後の硬さについては、圧延途中で板材の端部や
表面に横割れが発生した後も、圧延率が90%になるま
で冷間圧延を続けることによって求めた値である。 【0028】 【発明の効果】以上説明したように、本発明に係わる生
体用β型チタン合金は、Mo:13.5〜16.0%、
Nb:0.5〜5.5%、Zr:0.5〜5.0%、
O:0.20%以下を含有し、残部Tiおよび不可避的
不純物からなると共に(いずれも質量比)、β変態点が
700〜750℃の範囲のものであって、生体に有害と
されている元素を含まないことから、生体適合性に優れ
ると共に、90%もの加工度の冷間加工を施した場合に
も、割れが発生したり、Hv290を超えるような加工
硬化を生じないという優れた冷間加工性を備えたもので
あるから、箔帯や極細径の線材にも容易に成形すること
ができるという極めて優れた効果をもたらすものであ
る。
【図面の簡単な説明】 【図1】各種成分系のβ型チタン合金におけるベータ変
態点と溶体化処理のままの硬度の関係を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大内 千秋 宮城県仙台市青葉区三条町20−1−34 (72)発明者 種市 華織 宮城県仙台市青葉区川内亀岡町65―18 グ リーンコート3

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 質量比で、Mo:13.5〜16.0
    %、Nb:0.5〜5.5%、Zr:0.5〜5.0
    %、O:0.20%以下を含有し、残部Tiおよび不可
    避的不純物からなると共に、β変態点が700〜750
    ℃の範囲であることを特徴とする生体用β型チタン合
    金。
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