JP2003073210A - 植物の成長を促進するための組成物および方法 - Google Patents
植物の成長を促進するための組成物および方法Info
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Abstract
よび方法を提供する。 【解決手段】 本発明は、植物の成長を促進するための
組成物、ならびに、新規な植物成長促進方法であって、
特に大豆粕分解産物またはメチオニンを植物成長促進剤
として用いる、植物成長促進方法に関する。本方法は、
植物成長促進剤を添加する工程を包含し、その効果が、
主根の長さの短縮、根毛密度の増大、および側根の減少
によって特徴付けられる方法である。この方法は、従来
の化学肥料と同様に高いレベルの植物成長促進効果を有
するにも関わらず、土壌の劣化やホルモン攪乱作用の心
配がないという利点を有する。
Description
するための組成物、ならびに、新規な植物成長促進方法
であって、特に大豆粕分解産物およびメチオニンを植物
成長促進剤として用いる、植物成長促進方法に関する。
した。20世紀を振り返ると、さまざまな発明や科学技
術の著しい進歩があった。その結果、我々人類の生活は
飛躍的に豊かになり、世界の人口は、この100年間で
約4倍に増えた。20世紀において、農業分野では、安
価で即効性を有した化学合成肥料や化学合成農薬が開発
され、その結果、食料の供給が著しく増えた。これが前
世紀の人口増加の一因となったことは間違いない。化学
合成技術における飛躍的な技術革新によって、肥料や農
薬だけではなく、食品添加物、医薬品等、我々の生活に
密接に関連する物質が次々に世に出され、人類に貢献し
てきた。しかし、最近、化学合成農薬・肥料の土壌や植
物中への残留問題や、各方面での化学物質のホルモン攪
乱作用の指摘がなされはじめ、人類を含めた生態系への
悪影響が懸念されるようになってきた。
にくく、これらが土壌中に残留することによって土壌の
バランスが崩れ、土壌が次第に農耕に適さない土地に変
化してしまう。また、化学合成農薬は農作物に残留する
ことにより、農作物などから母乳に侵入して乳幼児に害
を及ぼすこと、さらに催奇形性や不妊性の原因の1つと
なることが指摘されている。
化学合成農薬の使用に代えて、未利用のバイオマス資源
を使用して土壌への負担を軽減することは可能である。
バイオマスとは、太陽エネルギーに由来する再生可能資
源のことであり、具体的には、例えば、植物生育促進性
細菌(Plant Growth rhizobact
eria;PGPR)を用いる収量増加、および葡萄の
つる、籾殻を用いる堆肥の農業利用などの研究が進めら
れている。
イオマスを新しい資源として利用したいという観点から
スタートした。注目したバイオマスは、世界中で広く栽
培され、重要な食料の一つであり、また食用油の主要な
供給源である大豆粕(大豆タンパク質)である。
00種にもおよび、イネ科に次ぐ重要な植物である。こ
のマメ科の中で代表的な種子が大豆であり、この大豆
は、世界で年間約1.3億トンも生産されている有用な
植物の1つである。この大豆は、中国を中心とした東南
アジアにおいて、加工・発酵技術が古くから存在してお
り、大豆独特の食習慣が存在している。この大豆は、畑
の肉といわれるくらいの良質の植物タンパク質と脂質に
富み、その他生産効率は、多くの食品素材の中でも最も
高いことが知られている。このことからも、大豆は将来
の最も重要な食糧資源であると考えられている。大豆の
貯蔵タンパク質は、グリシニン(約37%)、β−コン
グリシニン(約28%)、γ−コングリシニン(約6
%)、7Sグロブリン(約3%)、およびトリプシンイ
ンヒビター(約3%)などから構成されており、栄養学
や食品学の分野ではよく研究された植物種の一つであ
る。一方、疫学調査においても、大豆はガン等の低リス
ク食品素材であることが明らかにされ、生体防御に関す
る食品の研究からその価値はますます注目されるように
なってきている。
植物油の主要な供給源としても世界中で広く利用されて
いる。特に欧米においては、アジアと食習慣が異なるこ
とから、大豆は主として食用油の材料として利用されて
いる。大豆粕とは、大豆から油分を抽出した後に残る粕
(大豆のおよそ8割を占める)のことである。この大豆
粕は、豊富な植物タンパク質を含んでいることから、古
くは肥料として再利用されていた。しかし、その後、安
価で即効性を有する化学肥料(硫安および尿素など)の
台頭により、最近では肥料としてほとんど使用されなく
なった。現在、その大豆粕は有効利用されないままその
大部分が廃棄されており、そのごく一部が家畜飼料また
は家畜飼料に再利用されているだけである。これは良質
な植物タンパク質を含んでいることが理由であるが、最
近では醸造用としての再利用もされるようになってき
た。
値は低く、生物資源としての高付加価値化が求められて
いる。このように、大豆は今後の重要な食料の一つであ
り、また種々の生理活性物質を有している魅力的なバイ
オマス資源である。今後、この有用なバイオマス資源を
十分に活用していくことが今後の課題になっている。
解に長い時間を要する上に植物成長促進効果も低かった
ため、安価で即効性を有する化学肥料(硫安および尿素
など)よりも不利である。しかし、大豆粕は、生分解性
であるため、化学肥料のように土壌の劣化を引き起こし
たりはしない。そこで本発明者らは、植物成長促進効果
を増強し、即効性を持たせることによって化学肥料の使
用を低減し、ひいては環境への付加を低減することを目
的とするための、大豆粕を使用する植物成長促進剤の開
発に着手した。
での利用が進まないという大豆粕の欠点を克服するため
に、本発明者らは、微生物を用いて大豆粕を生物工学的
に低分子化し、その分解産物を使用することを考えた。
本発明者らは、自然界から大豆タンパク質を迅速かつ特
異的に分解する高プロテアーゼ生産菌、B.circu
lans HA12およびStreptomyces
sp.MF20を分離・同定した。特開平6−2377
60および「Isolation and chara
cterization of soybeanwas
te−degrading microorganis
ms and analysis offertili
zer effects of the degrad
edproducts」 M.Kubo,J.Okaj
ima,およびF.Hasumi,Appl.Envi
ron.Microbiol.,60,243−247
(1994)は、これらの新規微生物を開示し、さらに
生育条件等の種々の性質を詳述している。
を分解して低分子化する。ここで、B.circula
ns HA12によって低分子化された大豆粕をDSP
と呼び、およびStreptomyces sp.MF
20によって低分子化された大豆粕をSWSと呼ぶ。こ
れらの物質は、植物成長促進作用を有した。例えば、特
開平6−237760は、B.circulans H
A12の植物成長促進作用を記載する。DSPを与えて
栽培した小松菜は、化学肥料(リッチェル社製化学肥料
50号)とほぼ同等の重量の増加(水のみを与えて栽培
した小松菜の約16倍)を示した。
成長促進作用を有する大豆粕の性質、およびその作用の
機構は不明である。すなわち、以前の研究では、単に植
物体の重量が増加すること、およびその植物体が外観上
大きくなったことを観察したのみであった。それゆえ
に、安価で環境に悪影響を及ぼさないような肥料に必要
な要件は全く不明であった。
進のための組成物、ならびに、新規な植物成長促進方法
であって、特に大豆粕分解産物およびメチオニンを植物
成長促進剤として用いる、植物成長促進方法に関する。
ここで植物の成長は、主根の長さの短縮、根毛密度の増
大、および側根の減少によって特徴付けられる。
促進するための組成物であって、植物の根毛密度を増大
するに有効な量の含硫アミノ酸を含む、組成物に関す
る。
ニン、シスチン、システイン、ホモシステイン、システ
インスルフィン酸、システイン酸、チオシステイン、タ
ウリン、ジェンコール酸、シスタチオニン、S−アリル
システイン、ランチオニン、およびエチオニンからなる
群より選択される。
ンである。
オニンである。
ラ科、ナス科、ユリ科、ウリ科、イネ科およびキク科か
らなる群より選択される科に属する植物である。
り苺、ジャガイモ、タマネギ、高菜、キュウリ、イネ、
トマト、プチトマト、サニーレタス、および西瓜からな
る群より選択される。
の組成物に関し、この組成物は、大豆粕分解産物から親
水性画分を回収する工程、および、該親水性画分から分
子量約500Da〜1000Daに相当する画分を精製
する工程によって得られるペプチド様物質を、植物の根
毛密度を増大するに有効な量で含む、組成物である。
circulans HA12によって産生される大豆
粕分解産物(DSP)である。
reptomyces sp.MF20によって産生さ
れる大豆粕分解産物(SWS)である。
ラ科、ナス科、ユリ科、ウリ科、イネ科およびキク科か
らなる群より選択される科に属する植物である。
り苺、ジャガイモ、タマネギ、高菜、キュウリ、イネ、
トマト、プチトマト、サニーレタス、および西瓜からな
る群より選択される。
の方法に関し、この方法は、植物に植物成長促進剤を添
加する工程を包含し、その効果が、根毛密度の増大によ
って特徴付けられる、方法である。
アミノ酸を含む組成物である。
オニン、シスチン、システイン、ホモシステイン、シス
テインスルフィン酸、システイン酸、チオシステイン、
タウリン、ジェンコール酸、シスタチオニン、S−アリ
ルシステイン、ランチオニン、およびエチオニンからな
る群より選択される含硫アミノ酸を含む組成物である。
オニンを含む組成物である。
メチオニンを含む組成物である。
circulans HA12による大豆粕分解産物
(DSP)から得られるペプチド様物質である。
reptomyces sp.MF20による大豆粕分
解産物(SWS)から得られるペプチド様物質である。
性分子でありかつその分子量が約500Da〜1000
Daである。
μg/ml以下の濃度で効果を有する。
ラ科、ナス科、ユリ科、ウリ科、イネ科およびキク科か
らなる群より選択される科に属する植物である。
り苺、ジャガイモ、タマネギ、高菜、キュウリ、イネ、
トマト、プチトマト、サニーレタス、および西瓜からな
る群より選択される。
法であって、特に大豆粕分解産物およびメチオニンを植
物成長促進剤として用いる、植物成長促進方法に関す
る。
引き起こされる種々の不利な点を有さない理想的な植物
成長促進方法が提供される。従って、本発明の植物成長
促進方法は、従来の化学肥料と同様に高いレベルの植物
成長促進効果を有するにも関わらず、土壌の劣化やホル
モン攪乱作用の心配がないという利点を有する。
とは、植物体の重量の増加および見た目の形状の拡大を
含み、特に、食用に供せられる部分(葉、茎、根、塊
茎、種子、および果実など)を含む。
長さの短縮、根毛密度の増大、および側根の減少によっ
て特徴付けられるが、これらに限定されず、他の部分の
増殖やその他の特徴の変化を伴い得る。
egradation soybean waste
products)」とは、大豆タンパク質を迅速かつ
特異的に分解する高プロテアーゼ生産菌Bacillu
s circulans HA12によって低分子化さ
れた大豆粕分解産物を意味する。
oybean waste with Strepto
myces sp.MF20)」とは、大豆タンパク質
を迅速かつ特異的に分解する高プロテアーゼ生産菌St
reptomyces sp.MF20によって低分子
化された大豆粕分解産物を意味する。
れる植物成長促進剤は、従来の化学肥料によって引き起
こされる種々の不利な点を有さず、かつ従来の化学肥料
と同様に高いレベルの植物成長促進効果を有するタンパ
ク質、ペプチド、およびアミノ酸を含むがこれらに限定
されない。本発明の1つの実施形態において、このよう
な植物成長促進剤は、B.circulans HA1
2による大豆粕分解産物(DSP)またはStrept
omyces sp.MF20による大豆粕分解産物
(SWS)である。本発明の別の実施形態において、こ
のような植物成長促進剤はメチオニンである。
の植物に適用可能であるが、特に、アブラナ科、バラ
科、ナス科、ウリ科、イネ科およびキク科の植物に適用
された場合に良好な結果が得られ、より具体的には、小
松菜、四季なり苺、ジャガイモ、高菜、キュウリ、イ
ネ、トマト、プチトマト、サニーレタス、および西瓜に
適用された場合に良好な結果が得られるが、これらに限
定されない。その効果は植物によって異なる。すなわ
ち、小松菜、四季なり苺では、葉の長さが約1.5倍以
上となった。ジャガイモでは塊茎の数が約60%に減少
したものの、総重量が約1.3倍となった。タマネギお
よび高菜では、植物の器官に関わらず作用し、植物体全
体のサイズが大型化した。キュウリでは、成長速度増
加、実の肥大、実の数増加が見られた。イネでは、苗の
大型化・田植え後の良好な生育が見られた。トマトで
は、成長速度の増加、実の肥大が見られた。サニーレタ
スでは、成長速度の増加、新芽形成速度の増加、落葉の
しにくさが見られた。プチトマトでは、実の増大が見ら
れた。西瓜では、成長速度の増加が見られた。
ト栽培試験および農場試験によって評価され得る。本発
明の植物成長促進方法はまた、試験管を用いる植物成長
活性測定法(植物試験管法)を用いても迅速かつ簡便に
評価され得る。この方法は、植物体を、試験寒中の寒天
培地上で生育させるというものであり、植物体を傷つけ
ることなく根を観察することが可能である。
分解産物が植物に対して成長促進効果を示すかどうかを
確認するために、高プロテアーゼ生産株B.circu
lans HA12を用いて大豆粕の分解を試みた。
/v)大豆粕(ホーネン、東京)を加え、オートクレー
ブ(120℃、15分間)して調製した。pHの調製は
行わなかった。この培地にLB培地中で前培養したHA
12株を1%(v/v)植菌し、50℃で48時間培養
して大豆粕分解産物(DSP)を作製した。この培養時
におけるタンパク質、ペプチド、およびアミノ酸量の推
移を図1に示す。測定は、以下の3種のサンプルの分析
によって行った。(1)培養液を15,000rpm、
10分間の遠心分離した後の上清のタンパク質定量(B
ioRadプロテインアッセイキットを使用する)
(「タンパク・ペプチド量」)、(2)上記培養液上清
に終濃度6%のTCAを添加してタンパク質を沈殿させ
た後の上清のタンパク質定量(BioRadプロテイン
アッセイキットを使用する)(「ペプチド・アミノ酸
量」)、および(3)上記培養液上清中の酸可溶性分解
物(「ペプチド量」)(ニンヒドリン法によって測定す
る)。「タンパク・ペプチド量」は、培養開始から70
時間で約22mg/mlから約3mg/mlまで減少し
た。その間に「ペプチド・アミノ酸量」は、約6mg/
mlから約22mg/mlへと増加した。これは、HA
12株のプロテアーゼによってタンパク質が低分子のペ
プチドやアミノ酸に分解されたためであると考えられ
る。また、分解前の培地に存在したペプチドが培養初期
段階において減少するのは、増殖期のHA12株がペプ
チドを消費しているためであると考えられ、その後のペ
プチド量の増加は、分解されたタンパク質から生じたも
のであると考えられた。
化を図2に示す。50時間培養した溶液pHは9.0を
超えた。これは、タンパク質が分解された際に生じるア
ンモニアによるものであると考えられる。このように、
DSPは高いpHであるため極めて安定であり、室温で
放置しても腐敗しない。このことは、実用上極めて便利
な性質であった。
を分解して作製したDSPサンプルのpH、「タンパク
・ペプチド量」、「ペプチド量」、および「ペプチド・
アミノ酸量」を示す。培養前の「タンパク・ペプチド
量」が20.8mg/ml存在したのに対し、培養後の
DSPは3.5mg/mlと約17%に減少した。ま
た、タンパク質の分解産物である「ペプチド・アミノ酸
量」は、0.77mg/mlから23.3mg/mlに
増加した(約30倍)。これらの結果から、大豆粕が短
期間で極めて効率よく低分子化されていることが判明し
た。
での成長促進効果を確認するため、ポットを用いた成長
試験を行った。効果をなるべく短期間で確認するために
成長の速い小松菜を用いて実験を行った。その結果を図
3に示す。図3AがDSP実験区(1,000倍のDS
Pを成長3日目に与えた)であり、図3Bが、コントロ
ールとして水のみを与えたものであり、それぞれ約4週
間成長させた。DSPは小松菜の生長を明らかに促進し
ており、DSP処理区の小松菜の葉の長さは、コントロ
ールの葉の約1.5倍となった。
四季なり苺のスモールスケール実験を行った(図4)。
DSP実験区(A)には、成長初期段階に1,000倍
希釈のDSPを与えてあり、DSP+液体化学肥料併用
区(B)には、DSPの他に1,000倍希釈の液体化
学肥料ハイポネックス(ハイポネックスジャパン 大
阪)を加えた。この場合も、DSPは植物の成長を促進
しており、DSP実験区での葉の長さは、コントロール
の葉の約1.5〜2.0倍となった。また、化学肥料と
の併用によって弊害が現れることはなかった。
おいて植物成長促進効果を示すことを確認するため、農
場試験を行った。試験植物は、ジャガイモ、高菜、キュ
ウリ、イネ、トマト、プチトマト、サニーレタス、西瓜
を用いて行った。それぞれ、試験区には1ml/m2の
DSPを成長初期段階に与えた。
の結果を示す。図5AがDSP試験区で図5Bが対象区
(慣行区)である。どちらも一本の苗から得た根茎であ
る。DSPを与えることによって塊茎の成長が促進さ
れ、1つあたりのサイズが1.5〜2.0倍となった。
DSP試験区と慣行区の苗10本から得られた塊茎の数
量・重量を表2に示した。塊茎の個数自体は減少してい
たものの、総重量にして30%以上の重量増加が見られ
た。
す。図6a−1、b−1がDSP試験区であり、a−
2、b−2が慣行区(コントロール)である。両作物と
もDSPによる成長活性化効果が確認された。DSP
は、植物の器官に関わらず作用し、植物体全体のサイズ
が大型化した。
レタス、プチトマト、西瓜の6種類の作物に対する成長
促進効果を確認した(表3)。このように、DSPは広
範な作物に作用しており、植物種に非特異的に作用して
いるようである。また、この作用は、成長速度の増加だ
けではなく、器官に関係なく植物体のサイズを大型化し
た。農場試験は無機的栄養の豊富な土壌で行われてお
り、DSPの添加によって植物の成長が促進したことか
ら、DSPの作用が無機的栄養源の供給によるものでは
ないことが示唆された。
ヶ月〜数ヶ月という長期間を要した。そこで、DSPが
成長初期段階にある植物に与える影響を明らかにするた
めに、試験管を用いる植物成長活性測定法を確立した。
この植物成長活性測定法によって、DSPの成長活性化
効果を迅速かつ簡便に測定し、植物体を傷つけることな
く根を観察することが可能になった。
0℃、15分間)して9mlずつ試験管に分注した。試
験溶液を0.22μmのフィルター(MILLIPOR
EMillex−GX Bedford,USA)でろ
過滅菌し、植物成長用培地が固まらないように加えた。
この試験培地に塩素種子滅菌法で滅菌した小松菜種子を
一粒ずつおいた。これを、植物培養器(growth
cabinet、サンヨー、東京)を用いて、15,0
00ルクス、25℃で約1週間成長させた。DSP試験
区は、培地中の濃度が約2,000倍希釈となるよう試
験を行った。コントロールには1mlの滅菌水を加え
た。試験溶液は、培地中の濃度が1,000倍になるよ
うに加えて試験を行うか、または100μlもしくは3
00μlの試験溶液を培地に加えて行った。また、対照
実験として行った液体化学肥料は1,000倍希釈で、
未分解の大豆粕を用いた実験は2,000倍希釈で行っ
た。
トロールの約2/3であった。また、側根の本数は、約
3/4であった。さらに、根毛密度の大幅な増大が見ら
れた(図7)。この現象は、液体化学肥料を与えたもの
には確認されなかったので、この生理活性は、無機的栄
養源由来ではないと考えられる。
果は肉眼で観察・測定できるが、根毛は肉眼では密度を
推定することしかできない。DSPが根毛に及ぼす効果
をより詳細に確認するために、光学顕微鏡を用いて40
倍の倍率で観察した。なお、主根と側根との位置関係は
図8に示すとおりであり、また、根毛は根全体に存在す
る細い管状の器官である。
影した(図9)。図9Aがコントロール、図9BがDS
P試験区の小松菜である。根冠の直後で根毛が発達して
いるのが確認された。DSP試験植物では、コントロー
ルと比べて明らかな根毛密度の増大が見られ、その根毛
には渦を巻いているようなものも観察された。
発達部を撮影した(図10)。図10Aがコントロー
ル、図10BがDSP試験区の小松菜である。ここでも
DSP試験区の方がコントロールよりも根毛密度が高か
ったが、その差は根冠部ほど顕著ではなかった。根毛の
長さはDSP試験区の方がコントロールよりも長かっ
た。根毛の太さには明確な差が見られなかった。
発達部終末を撮影した(図11)。図11Aがコントロ
ール、図11BがDSP試験区の小松菜である。この部
位は、根毛密度が根組織の細胞伸長によって下がり始め
る部位である。図11に見られるように、根毛密度が下
がっていくのが観察された。根毛密度は、コントロール
よりもDSPの方が明らかに高かった。また、根毛の長
さおよび根毛の太さも、コントロールよりもDSPの方
が明らかに高かった。
根毛密度低下部を撮影した(図12)。図12Aがコン
トロール、図12BがDSP試験区の小松菜である。こ
の部位は、根毛が完全に成長しているため、植物体の中
でも最も長くて太い根毛が観察される。これまでの部位
と同様、根毛の密度は、コントロールよりもDSP試験
区の方が明らかに高かった。また、根毛の長さは約2
倍、太さは約1.5倍になっていた。DSPは根毛の本
数を増加させているだけではなく、その長さを調節し、
太くするという生理的な作用を有することが明らかとな
った。
加・主根の短縮、側根本数の減少)を数値化することを
試みた。植物試験管法により成長させた小松菜を用い
て、根毛密度の増加・主根の短縮、側根本数の減少を測
定した。いずれのサンプルも、1サンプルあたり10本
の実験を2回行い、その平均値を示した。結果を図13
に示す。図13に見られるように、DSPは、液体化学
肥料や未分化の大豆粕と比較して、根毛密度の増加、主
根の短縮(約2/3)、および側根本数の減少(約3/
4)を示した。
小松菜の根を染色液で5分間染色してから水道水で5分
間脱色する。さらにもう一度同様に5分間脱色してから
コンピュータマイクロスコープで撮影し、パソコンに取
り込んだ後、画像処理ソフトウェア(Photosho
p 5.0 Adobe、CA USA)を使用して、
画像をグレースケール(白黒255段階)に変換して、
写真の明るさを定量化した。ここで、最も明るい画像
(白色の画像)に255、最も暗い画像(黒色の画像)
に0の値が与えられる。画像のバックグラウンド(根毛
の無い余白部分)を、K値が0になるよう補正してから
ヒストグラムを表示し、画像全体の明るさを表示した。
ことによって行った。上記のように根毛を評価したの
ち、コントロールを2とし、1から5段階で表示した。
子の特徴付け) (有機溶媒抽出)500mlのDSPを等量のクロロホ
ルムと混合し、10分間激しく攪拌した。混合液を遠心
分離(10,000rpm、5分間)し、クロロホルム
層と水層を分離した。水層をマイクロピペットで収集
し、そのまま植物試験管法による生理活性実験に使用し
た。クロロホルム層を、遠心エバポレーター(CE1.
centrifugal evapolator、日
立)を用いてクロロホルムを蒸発させた後、ペレットを
500μlの蒸留水に懸濁した。また、クロロホルム層
と水層との境界に生じた変性物質は、取り除いて操作を
行った。分画した親水性画分および疎水性画分は、それ
ぞれ分画前の体積まで滅菌水で希釈し、培地中で1,0
00倍して、植物試験管法による生理活性試験を行った
(図14)。根毛密度の増大、主根の長さの短縮、およ
び側根本数の減少のいずれもが、親水性画分において見
られた。従って、この活性成分は親水性であること、お
よびクロロホルムによる失活・変性に強く、極めて安定
であることが示唆された。
SPを分画分子量1,000の透析膜(Spectra
/Por6 Membrane MWCO 1,00
0、SPECTRUM USA)に入れ、5lの蒸留水
に対して、マグネチックスターラーを用いて穏やかに攪
拌しながら4℃で24時間透析した。透析膜外の画分
は、凍結乾燥機(FreezeDryer FDU−8
30 EYELA 東京)を用いて凍結乾燥し、20m
lの蒸留水に溶解した。全画分のDSP活性を植物試験
管法により測定した。試験濃度は、すべて1,000倍
希釈で行った。根毛密度の増大、主根の長さの短縮、お
よび側根本数の減少のいずれもが、分子量1,000以
下の画分において見られた(図15)。
DSPおよび各種分画試料のHPLCによる精製を行っ
た。50μlのDSPを、ゲルろ過クロマトグラフィー
(カラム TSK−gel−2,000SW(Toso
h、東京)、流速1ml/分、検出波長280nm、緩
衝液20mMTris−HCl(pH 7.0)、カラ
ム温度50℃)、陰イオン交換クロマトグラフィー(カ
ラム TSK−gel−DEAE−5PW(Toso
h、東京)、流速1ml/分、検出波長280nm、緩
衝液A:20mM Tris−HCl(pH 7.
0)、緩衝液B:20mM Tris−HCl(pH
7.0)、1M NaCl、緩衝液A:緩衝液B=10
0:0〜0:100、20分間のリニアグラジエントに
よって溶出、カラム温度50℃)、および陽イオン交換
クロマトグラフィー(カラム TSK−gel CM−
5PW(Tosoh、東京)、流速1ml/分、検出波
長280nm、緩衝液A:20mM Tris−HCl
(pH 7.0)、緩衝液B:20mM Tris−H
Cl(pH 7.0)、1M NaCl、緩衝液A:緩
衝液B=100:0〜0:100、20分間のリニアグ
ラジエントによって溶出、カラム温度50℃)のそれぞ
れで分析した。
ピークに分離された。これらのうちの主要な5つのピー
ク(ピークA〜E)(図16)を分取し、それそれの溶
液100μlを用いて植物試験管法によるバイオアッセ
イを行った(図17)。根毛密度の増大、主根の長さの
短縮、および側根本数の減少のいずれもが、ピークD由
来の画分において見られた。ピークDは、保持時間約1
1〜12分に相当する。
00〜1500Da(かなり低分子で判定に幅が出た)
であった。一方、透析(分画分子量1000)実験を行
った結果、分子量1000Da以下で活性が認められ
た。また、Dピークのマススペクトル解析(LC/M
S)で、分子量610Daを確認した。
イオン交換クロマトグラフィーにおいては、DSPの生
理活性は、ほとんど素通り画分に存在した。従って、D
SP由来の植物成長活性化因子は、電荷を帯びていない
ことが示唆された。
チオニンの効果)作物を栽培するときに、ペプチドやア
ミノ酸等の有機物を施用することにより収量を増加する
ことが知られている。これは、大部分が植物の利用でき
る養分が増えることに起因しているものと考えられる。
しかし、大豆粕をアミノ酸レベルにまで塩酸加水分解
し、これを植物に与えた場合には生理活性効果は見られ
なかった(データ示さず)。しかし、アミノ酸は各種植
物ホルモンの原料であり、これに何らかの生理活性が起
こる可能性が存在する。そこで本発明で用いてきた植物
試験管成長法に基づき、20種類のアミノ酸の植物成長
促進効果について解析した。なお、本実施例で用いたア
ミノ酸はすべてL型であった。試験濃度は、1,500
倍希釈のDSPと同じ20μg/mlか、または、この
濃度ではアミノ酸が溶解しなかったものや、アッセイし
たときに生育阻害が見られたものについては、表4に示
すように、より低い濃度でアッセイした。
た。すなわち、根毛密度が増加しなかったものを−と
し、増加の程度に応じて+〜+++までのプラスの数で
評価を行った。
にDSP様の生理活性(主根の長さの短縮および根毛密
度の増大)が確認された。他のアミノ酸では、このよう
な生理活性は観察されなかった(表4)。
た。実験は、メチオニン濃度を変えて試験管アッセイを
行い、各々アッセイした本数のうち根毛密度の増加が認
められたものの割合を調べた。図18に示すように、根
毛が増加したサンプルの割合は、8μg/ml程度まで
は、メチオニン濃度の上昇とともに増加するが、それ以
上の濃度になると徐々に減少した。
−メチオニンの効果)メチオニンの効果をさらに調べる
ために、D−メチオニンを使用する場合の根毛密度の増
加を調べた。D−メチオニンは、DSPと同等かまたは
それ以上の活性を示した。このときの最適濃度は、0.
5〜0.75μg/mlであり、L−メチオニンよりも
低濃度で効果を有していた(図19)。
って、特に大豆粕分解産物およびメチオニンを植物成長
促進剤として用いる、植物成長促進方法を提供する。こ
の方法は、従来の化学肥料と同様に高いレベルの植物成
長促進効果を有するにも関わらず、土壌の劣化やホルモ
ン攪乱作用の心配がないという利点を有する。
を示すグラフである。
pHの経時変化を示すグラフである。
ある。A:DSP試験区、B:対照区(水のみ)。
効果を示す写真である。A:DSP試験区、B:DSP
+液体化学肥料併用区、C:対照区(水のみ)。
の効果を示す写真である。A:DSP対象区、B:対照
区(慣行区)。
のDSPの効果を示す写真である。(a)は、タマネギ
栽培試験であり、a−1:DSP試験区、a−2:対照
区(慣行区)である。(b)は、高菜栽培試験であり、
b−1:DSP試験区、a−2:対照区(慣行区)であ
る。
を示す写真である。A:コントロール(水のみ)、B:
液体化学肥料(ハイポネックス1,000倍希釈)、お
よびC:DSP(2,000倍希釈)である。
A:主根、B:側根、C:根冠である。根毛は根全体に
存在する細い管状の器官を示す。
活性を示す写真である。A:コントロール、B:DSP
試験区である。
Pの生理活性を示す写真である。A:コントロール、
B:DSP試験区である。
DSPの生理活性を示す写真である。A:コントロー
ル、B:DSP試験区である。
DSPの生理活性を示す写真である。A:コントロー
ル、B:DSP試験区である。
グラフである。A:DSPによる根毛密度の変化、B:
DSPによる主根の長さの変化、C:DSPによる側根
本数の変化である。
て分画した画分の生理活性効果を示すグラフである。
A:根毛密度の変化、B:主根の長さの変化、C:側根
本数の変化である。
分の生理活性効果を示すグラフである。A:根毛密度の
変化、B:主根の長さの変化、C:側根本数の変化であ
る。
Pのピークを示すHPLCチャートである。
た画分の生理活性効果を示すグラフである。
加したサンプルの割合との関係を示すグラフである。
毛密度に対する影響を示す写真である。
Claims (22)
- 【請求項1】 植物の成長を促進するための組成物であ
って、植物の根毛密度を増大するに有効な量の含硫アミ
ノ酸を含む、組成物。 - 【請求項2】 前記含硫アミノ酸が、メチオニン、シス
チン、システイン、ホモシステイン、システインスルフ
ィン酸、システイン酸、チオシステイン、タウリン、ジ
ェンコール酸、シスタチオニン、S−アリルシステイ
ン、ランチオニン、およびエチオニンからなる群より選
択される、請求項1に記載の組成物。 - 【請求項3】 前記含硫アミノ酸がメチオニンである、
請求項1に記載の組成物。 - 【請求項4】 前記含硫アミノ酸がD−メチオニンであ
る、請求項1に記載の組成物。 - 【請求項5】 前記植物が、アブラナ科、バラ科、ナス
科、ユリ科、ウリ科、イネ科およびキク科からなる群よ
り選択される科に属する植物である、請求項1に記載の
組成物。 - 【請求項6】 前記植物が、小松菜、四季なり苺、ジャ
ガイモ、タマネギ、高菜、キュウリ、イネ、トマト、プ
チトマト、サニーレタス、および西瓜からなる群より選
択される、請求項1に記載の組成物。 - 【請求項7】 植物の成長を促進するための組成物であ
って、該組成物は、大豆粕分解産物から親水性画分を回
収する工程、および、該親水性画分から分子量約500
Da〜1000Daに相当する画分を精製する工程によ
って得られるペプチド様物質を、植物の根毛密度を増大
するに有効な量で含む、組成物。 - 【請求項8】 前記大豆粕分解産物が、B.circu
lans HA12によって産生される大豆粕分解産物
(DSP)である、請求項7に記載の組成物。 - 【請求項9】 前記大豆粕分解産物が、Strepto
myces sp.MF20によって産生される大豆粕
分解産物(SWS)である、請求項7に記載の組成物。 - 【請求項10】 前記植物が、アブラナ科、バラ科、ナ
ス科、ユリ科、ウリ科、イネ科およびキク科からなる群
より選択される科に属する植物である、請求項7に記載
の組成物。 - 【請求項11】 前記植物が、小松菜、四季なり苺、ジ
ャガイモ、タマネギ、高菜、キュウリ、イネ、トマト、
プチトマト、サニーレタス、および西瓜からなる群より
選択される、請求項7に記載の組成物。 - 【請求項12】 植物の成長を促進するための方法であ
って、該植物に植物成長促進剤を添加する工程を包含
し、その効果が、根毛密度の増大によって特徴付けられ
る、方法。 - 【請求項13】 前記植物成長促進剤が、請求項1に記
載の組成物である、請求項12に記載の方法。 - 【請求項14】 前記植物成長促進剤が、請求項2に記
載の組成物である、請求項12に記載の方法。 - 【請求項15】 前記植物成長促進剤が、請求項3に記
載の組成物である、請求項12に記載の方法。 - 【請求項16】 前記植物成長促進剤が、請求項4に記
載の組成物である、請求項12に記載の方法。 - 【請求項17】 前記植物成長促進剤が、B.circ
ulans HA12による大豆粕分解産物(DSP)
から得られるペプチド様物質である、請求項12に記載
の方法。 - 【請求項18】 前記植物成長促進剤が、Strept
omyces sp.MF20による大豆粕分解産物
(SWS)から得られるペプチド様物質である、請求項
12に記載の方法。 - 【請求項19】 前記ペプチド様物質が、親水性分子で
ありかつその分子量が約500Da〜1000Daであ
る、請求項17または18に記載の方法。 - 【請求項20】 前記植物成長促進剤が、30μg/m
l以下の濃度で効果を有する、請求項12に記載の方
法。 - 【請求項21】 前記植物が、アブラナ科、バラ科、ナ
ス科、ユリ科、ウリ科、イネ科およびキク科からなる群
より選択される科に属する植物である、請求項12に記
載の方法。 - 【請求項22】 前記植物が、小松菜、四季なり苺、ジ
ャガイモ、タマネギ、高菜、キュウリ、イネ、トマト、
プチトマト、サニーレタス、および西瓜からなる群より
選択される、請求項12に記載の方法。
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JP2001266365A JP2003073210A (ja) | 2001-09-03 | 2001-09-03 | 植物の成長を促進するための組成物および方法 |
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