JP2003064525A - 高強度ポリエチレン繊維 - Google Patents
高強度ポリエチレン繊維Info
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Abstract
ある利点と反面して、高度に結晶化しているので応力集
中の原因になる欠陥の凝集部が残るため、圧縮応力に弱
いという欠点があった。よって欠陥凝集の原因となる格
子欠陥や分子末端などの個数を低減すると共に、欠陥構
造のサイズを分子オーダーまで小さくせしめ且つ繊維構
造全体にわたって均一に微分散せしめる均質な構造を有
する力学物性を改善した高強度ポリエチレン繊維を提供
すること。 【解決手段】ラマンシフトファクターが−2.0cm-1
/%以上の引っ張り強度が15cN/dtex以上、ラ
マンバンドブロードニングファクターが1.5cm-1/
%以下である引っ張り弾性率が500cN/dtex以
上である高強度ポリエチレン繊維。
Description
や防弾・防護衣料・防護手袋や各種安全用品などの高性
能テキスタイル、タグロープ・係留ロープ、ヨットロー
プ、建築用ロープなどの各種ロープ製品、釣り糸、ブラ
インドケーブルなどの各種組み紐製品、漁網・防球ネッ
トなどの網製品さらには化学フィルター・電池セパレー
ターや各種不織布の補強材あるいはテントなどの幕材、
又はヘルメットやスキー板などのスポーツ用やスピーカ
ーコーン用やプリプレグなどのコンポジット用の補強繊
維など、産業上広範囲に応用可能な新規な高強度ポリエ
チレン繊維に関する。
ば、特公昭60−47922号公報に開示されるごと
く、超高分子量のポリエチレンを原料にし、いわゆる
“ゲル紡糸法”により従来にない高強度・高弾性率繊維
が得られることが知られており、既に産業上広く利用さ
れている。これらの高強度ポリエチレン繊維は高強度・
高弾性率である利点と反面して、高度に結晶化している
為、必然的に結晶中から排除されて来た格子欠陥や分子
末端などの欠陥構造が繊維中に凝集する欠点があった。
このため繊維軸方向の引っ張りには非常に強いものの逆
に圧縮応力がかかる用途に使用した場合、非常に低い圧
縮応力で破壊が生じるなどの問題があった。圧縮強度低
下の原因となる欠陥構造の個数低減並びにこれのサイズ
の最小化及び繊維構造全体への均一な微分散を実現せし
めることが重要であるが、従来の方法でそのような繊維
構造を有する高強度繊維を製造することは困難であっ
た。このような問題を解決できる高強度かつ、応力の緩
和出来る構造を持つポリエチレン繊維が産業界から強く
望まれていた。
ごとく、重量平均分子量60万以上の超高分子量ポリエ
チレンを原料にし、いわゆる“ゲル紡糸法”により、従
来にない、高強度・高弾性率のポリエチレン繊維が開示
されている。しかしながらこのようにゲル紡糸法を用い
て高強度・高弾性率ポリエチレン繊維を製造する場合、
製造された繊維は高度に欠陥が排除された結晶(秩序度
の高い結晶)から形成されているため、反面欠陥構造の
凝集が依然構造中に残っている。このことは後述するよ
うにラマン散乱法を応用することで証明できる。
られたポリエチレン繊維に於いては、高性能な製品に於
いても引っ張り強度が高々10cN/dtex程であ
り、本発明のような15cN/dtexを越える様な高
強度ポリエチレン繊維は製造・販売されていないのが現
状である。
対応するもっとも有効な手段は繊維中に存在する欠陥構
造の個数、凝集を抑え且つ繊維構造全体にわたって微分
散せしめることである。従来のゲル紡糸法や溶融紡糸法
ではこの欠陥構造の凝集、低減、均一微分散が達成出来
なかった。
に推定している。すなわち、溶融紡糸で高強度ポリエチ
レン繊維を製造する場合に於いては、ポリマー中の分子
鎖のからみ合いが非常に多いためにノズルからポリマー
を押し出し引き取った後充分延伸を行えないことが挙げ
られる。またそのことにより前述のゲル紡糸とは逆に、
製造した繊維も内部構造は、繊維軸方向への配向度も悪
く結晶としての秩序度の低い部分の割合が増大し且つ凝
集が生じ、周期的な繰り返し長周期構造を形成すること
になり、結果として繊維の物性が低下する。さらに、分
子量が100万を越える様な超高分子量ポリマーを溶融
紡糸法を用いて紡糸することは成形加工機械の制約上実
質的に不可能である。たとえ紡糸が出来たとしても充分
高い倍率で延伸が行えず、強度が低いものとなる。
リエチレンを用いた、分子鎖のからみあいを少なくする
ために前述のゲル紡糸という手法がある。この場合、超
延伸操作を行うことは可能となるが、結果として得られ
た繊維の構造は小角X線線散乱測定に於いて長周期構造
が観察されないほど高度に結晶化・秩序化してしまう
が、反動として、後で詳しく説明するように、どうして
も消去することが出来ない欠陥構造の凝集が生成するた
め、この凝集が繊維に歪みを与えたとき繊維内部に大き
な応力分布が誘因される問題があった。この様な欠陥
は、少なくとも圧縮特性の向上を阻害する要因の一つと
考えられる。
れる内部応力分布の関係について述べる。Termon
iaらは格子模型を用いて高度に繊維軸方向に配向した
物質の内部に発生する応力分布と構造の関係について研
究した(Macromolecules 18, 22
46 (1985)) 。彼らの研究結果によれば、分
子末端や結晶中に取り残されたアモルファス部は繊維に
歪みを与えたときにその部分が応力集中の原因になり、
物性的には繊維強度や弾性率の低減をもたらす。同時に
繊維内部には応力分布が誘引される。構造中で生じる応
力分布は例えばYoungらが示したようにラマン散乱
法を用いて測定することが出来る(Journal o
f Materials Science, 29,
510(1994))。ラマンバンド即ち基準振動位置
は繊維を構成する分子鎖の力の定数と分子の形(内部座
標)から構成される方程式を解くことにより決定される
が(E. B. Wilson, J. C. Dec
ius, P.C. Cross著Molecular
Vibrations, Dover Public
ations (1980))、この現象の理論的な説
明として例えばWoolらが説明を与えたように繊維が
歪むにつれて該分子も歪み結果として基準振動位置が変
化するのである(Macromolecules, 1
6, 1907 (1983))。欠陥凝集などの構造
不均一が存在すると、外部歪みを与えたときに繊維中の
部位により誘因される応力が異なることになる。この変
化はバンドプロファイルの変化として検出できるため、
逆に繊維に歪みをかけたとき、その強度とラマンバンド
プロファイルの変化の関係を調べることから繊維内部に
誘引された応力分布を定量出来るということになる。即
ち、構造不均一が小さい繊維は後述するように、ラマン
シフトファクター、ブロードニングファクター、ラマン
バンドシフト量等がある領域の値をとるようになるので
ある。
ル紡糸のような手法では得ることが困難であった圧縮特
性に優れ、且つ引っ張り強度が15cN/dtex以
上、及び引っ張り弾性率が500cN/dtex以上で
あり、驚くべきことに繊維に歪みを与えたときに内部に
誘因される応力分布が小さいという繊維構造上の特徴を
有する高強度ポリエチレン繊維を得ることに成功したも
のである。
からなる。 1.ラマンシフトファクターが−2.5cm-1/%以上
で引っ張り強度が15cN/dtex以上、引っ張り弾
性率が500cN/dtex以上であることを特徴とす
る高強度ポリエチレン繊維。 2.応力ラマンシフトファクターが−5.5cm-1/G
Pa以上であることを特徴とする1記載の高強度ポリエ
チレン繊維。 3.ラマンバンドブロードニングファクターが1.5c
m-1/%以下であることを特徴とする1記載の高強度ポ
リエチレン繊維。 4.応力ラマンシフトファクターが−5.5cm-1/G
Pa以上であることを特徴とする1記載の高強度ポリエ
チレン繊維。 5.一定歪みを与えた後の応力緩和過程において、12
00秒後のラマンバンドシフト量が1.5cm-1以下で
あることを特徴とする1記載の高強度ポリエチレン繊
維。 6.一定歪みを与えた後の応力緩和過程において、12
00秒後のラマンバンドブロードニングの変化が2.0
cm-1以下であることを特徴とする1記載の高強度ポリ
エチレン繊維。
造を無限小にまで減ずるかもしくは欠陥サイズを分子末
端と同程度のサイズにまで微小ならしめ且つ繊維全体に
均一に分散せしめる必要があることを鋭意検討の結果突
き止めた。この様な状態の繊維を製造する方法は例えば
以下のような方法が推奨されるが、それに限定されるも
のでは無い。本発明の最大の特徴は、ポリオレフィンの
重量平均分子量が60,000〜600,000であ
り、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)
が4.5以下である重合体を溶融押し出しし、押し出さ
れた溶融物を冷却し、該繊維の結晶分散温度以下の温度
で一段目の延伸を行うことである。
は、原料オレフィンポリマーの重量平均分子量が60,
000〜600,000であることが重要であり、重量
平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が4.5
以下となることが重要である。好ましくは、原料オレフ
ィンポリマーの重量平均分子量が60,000〜30
0,000であることが重要であり、重量平均分子量と
数平均分子量の比(Mw/Mn)が4.0以下となるこ
とが重要である。さらに好ましくは、原料オレフィンポ
リマーの重量平均分子量が60,000〜200,00
0であることが重要であり、重量平均分子量と数平均分
子量の比(Mw/Mn)が3.0以下となることが極め
て重要である。
その繰り返し単位が実質的にエチレンであることを特徴
とし、少量の他のモノマーとしてはα−オレフィンが共
重合される。αオレフィンと共重合体を用いることによ
って長鎖の分岐をある程度含有させることは本繊維を製
造する上で、特に紡糸に於いての製糸上の安定を与える
こととなり、より好ましい。つまり、特許296319
9に開示されるように、ポリエチレンに長鎖分岐を含有
させることにより、紡糸時のメルトフラクチャーの発生
を低減させることが可能となる。しかしながらエチレン
以外の含有量が増えすぎるとかえって延伸の阻害要因と
なる為、高強度・高弾性率繊維を得るという観点から
は、5個以上の炭素を有する長さの分岐鎖が炭素1,0
00個あたり0,01〜3個以下であることが好まし
い、より好ましくは炭素1,000個あたり0.01〜
1個であり、さらに好ましくは0.05〜1.0個であ
る。このようなポリエチレンポリマーは例えば、特許2
963199に開示されるように、メタロセン触媒を用
いて重合することが可能であるが、それにより限定され
るものでは無い。
0,000未満となると溶融成形加工をし易いものの分
子量が低い為に実際に得られる糸の強度は小さいものと
なる。又、原料ポリエチレンの重量平均分子量が60
0,000を越えるような高分子量ポリエチレンでは溶
融粘度が極めて高くなり、溶融成型加工が極めて困難と
なる。又、繊維状態の重量平均分子量と数平均分子量の
比が4.5以上となると同じ重量平均分子量のポリマー
を用いた場合と比較し最高延伸倍率が低く又、得られた
糸の強度は低いものとなる。これは、緩和時間の長い分
子鎖が延伸を行う際に延びきることが出来ずに破断が生
じてしまうことと、分子量分布が広くなることによって
低分子量成分が増加する為に分子末端が増加することに
より強度低下が起こると推測している。
の様な原料ポリエチレンから、高強度ポリエチレン繊維
を得る手法を考案した。つまり、このような原料ポリエ
チレンを押し出し機で溶融しギアポンプにて定量的に紡
糸口金を介して吐出させる。その後冷風にて該糸状を冷
却し、所定の速度で引き取る。この時充分引き延ばして
引き取ることが重要である。即ち、紡糸速度と吐出線速
度との比が100以上で有ることが重要である、好まし
くは150以上、さらに好ましくは200以上である。
吐出線速度と巻き取り速度の比は、紡糸口金口径、単孔
吐出量、オレフィンポリマー密度、巻き取り速度から計
算することが出来る。
伸することが最も重要である。即ち該繊維を、該繊維の
結晶分散温度以下の温度で一段目の延伸を行い、該繊維
の結晶分散温度以上の温度でさらに延伸を行うことが重
要である。上記の様な手法を採用することにより驚く
程、繊維の物性が向上することを見いだした。この時さ
らに多段に繊維を延伸しても良い。又。延伸工程は、一
度巻き取った未延伸糸をオフラインにて延伸工程を行っ
ても良いし、紡糸工程から一旦巻き取ることなしにその
まま延伸工程を行ってももちろん良い。延伸方法は特に
こだわらない。これまでに公知な手法、例えばローラー
延伸、スリット延伸などが推奨されるがこれに限定され
るものでは無い。
察される吸収は、結晶分散と呼ばれており、結晶相内の
分子鎖熱運動に直接関与していると考えられている。こ
の結晶分散温度は、動的粘弾性測定を行うことで測定す
ることが出来る。即ち、測定で得られた貯蔵弾性率、損
失弾性率から、損失正接を計算し、各温度で得られたこ
れらの三つの値を対数で縦軸に取り、横軸を温度でプロ
ットし最も高温側に現れる吸収が結晶分散である。
891号公報、特開平5−186908号公報、等多数
の文献に開示されるように、ポリオレフィン繊維を延伸
する場合、該繊維を加熱し少なくとも50℃以上で延伸
することが、物性面・生産性面でも好ましいことが開示
されている。しかしながら、本発明では驚くべきこと
に、これまでの技術と相反して該繊維の結晶分散温度以
下の温度条件で該繊維を延伸すると飛躍的に繊維物性が
向上することを見いだし、本発明に到達した。
り40℃以上70℃未満低い温度領域、さらに好ましく
は50℃以上60摂氏未満低い温度領域で一段目の延伸
を行うことが極めて重要である。又、2段目の延伸以降
は、該繊維の結晶分散温度より好ましくは20℃以上高
い温度、さらに好ましくは30℃以上高い温度で延伸を
行うことが重要である。
の延伸を行うことによって、繊維物性が向上する理由は
定かでは無いが、以下の様に推測している。つまり、該
繊維の結晶分散温度以下の温度で延伸を行うこととによ
り、繊維により延伸張力がかかる。又、該繊維の結晶分
散温度以下で延伸を行っているが為に、結晶自体は延伸
によって動きにくく、主に非晶部分のみの延伸が行われ
る。つまり、超延伸の様に結晶からの分子鎖の引きずり
出しが極めて起こりにくい。このことによって、2段目
以降の延伸がスムーズに行われる様な構造が繊維に形成
され、2段目以降の延伸がスムーズに行われ、延伸後の
繊維の物性が向上するものと推測しているが、詳細は定
かで無い。
法および測定条件を説明する。
性率は、オリエンティック社製「テンシロン」を用い、
試料長200mm(チャック間長さ)、伸長速度100
%/分の条件で歪ー応力曲線を雰囲気温度20℃、相対
湿度65%条件下で測定し、破断点での応力を強度(c
N/dtex)、曲線の原点付近の最大勾配を与える接
線より弾性率(cN/dtex)を計算して求めた。な
お、各値は10回の測定値の平均値を使用した。
およびMw/Mn)重量平均分子量Mw、数平均分子量
MnおよびMw/Mnは、ゲル・パーミエーション・ク
ロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC
装置としては、Waters製GPC 150C AL
C/GPCを持ち、カラムとしてはSHODEX製GP
C UT802.5を一本UT806Mを2本用いて測
定した。測定溶媒は、o−ジクロロベンゼンを使用しカ
ラム温度を145℃した。試料濃度は1.0mg/ml
とし、200マイクロリットル注入し測定した。分子量
の検量線は、ユニバーサルキャリブレーション法により
分子量既知のポリスチレン試料を用いて構成されてい
る。
の測定は、13C−NMR(125MHz)を用いて決
定される。ランダル(Randall)の方法(Re
v.Macromol.Chem.Phys.,C29
(2&3),P.285−297)の記載されている方
法を用いて測定を行った。
粘度測定は、オリエンテック社製「レオバイブロンDD
V−01FP型」を用いて行った。繊維は全体として1
00デニール±10デニールとなるように分繊あるいは
合糸し、各単繊維ができる限り均一に配列するように配
慮して、測定長(鋏金具間距離)が20mmとなるよう
に繊維の両末端をアルミ箔で包みセルロース系接着剤で
接着する。その際の糊しろ長さは、鋏金具との固定を考
慮して5mm程度とする。各試験片は、20mmの初期
幅に設定された鋏金具(チャック)に糸が弛んだり捩じ
れたりしないように慎重に設置され、予め60℃の温
度、110Hzの周波数にて数秒、予備変形を与えてか
ら本実験を実施した。本実験では−150℃から150
℃の温度範囲で約1℃/分の昇温速度において110H
zの周波数での温度分散を低温側より求めた。測定にお
いては静的な荷重を5gfに設定し、繊維が弛まない様
に試料長を自動調整させた。動的な変形の振幅は15μ
mに設定した。
比)) ドラフト比(Ψ)は、以下の式で与えられる ドラフト比(Ψ)=紡糸速度(Vs)/吐出線速度
(V)
は、下記の方法で測定を行った。ラマン測定装置(分光
器)はレニショー社のシステム1000を用いて測定し
た。光源はヘリウムーネオンレーザー(波長633n
m)を用い、偏光方向に繊維軸が平行になるように繊維
を設置して測定した。ヤーンから単繊維(モノフィラメ
ント)を分繊し、矩形(縦50mm横10mm)の穴が
空いたボール紙の穴の中心線上に、長軸が繊維軸と一致
するように貼り、両端をエポキシ系接着剤(アラルダイ
ト)で止めて2日間以上放置した。その後マイクロメー
ターで長さが調節できる治具に該繊維を取り付け、単繊
維を保持するボール紙を注意深く切り取った後所定の歪
みを繊維に与え、該ラマン散乱装置の顕微鏡ステージに
のせ、ラマンスペクトルを測定した。このとき、繊維に
働く応力をロードセルを用いて同時に測定した。ラマン
の測定はStatic Modeにて測定範囲850c
m-1から1350cm-1について1ピクセルあたりの分
解能を1cm-1以下にしてデータを収集した。解析に用
いたピークはC−C骨格結合の対称伸縮モードに帰属さ
れる1128cm-1のバンドを採用した。バンド重心位
置と線幅(バンド重心を中心としたプロファイルの標準
偏差、2次モーメントの平方根)を正確に求めるため
に、該プロファイルを2つのガウス関数の合成として近
似することで、うまくカーブフィットできることが分か
った。歪みをかけると2つのガウス関数のピーク位置が
一致せずそれらの距離が遠ざかることが判明した。この
様なとき本発明に於いてはバンド位置をピークプロファ
イルの頂点とは考えず、2つのガウスピークの重心位置
でもってバンドピーク位置と定義した。定義を式1(重
心位置,<x>)にしめす。ピークのブロードニング
(Broadening=線幅の拡がり)についても式
2で説明する重心位置を該バンドの中心としたときの2
次モーメントの平方根(標準偏差)で定義した。式2
(標準偏差,SD)に定義を示した。バンド重心位置<
x>と与えた歪みをプロットしたグラフを作成した時の
初期勾配(歪みを1%変化させたときの重心位置の変
化)をラマンシフトファクター(SF)と定義した。図
1に評価例を示す。同様に上で定義した標準偏差を与え
た歪みに対してプロットしたグラフを作成したときの初
期勾配(歪みを1%変化させたときのSDの変化)をラ
マンバンドブロードニングファクター(BF)と定義し
た。図2に評価例を示す。応力ラマンシフトファクター
(RF)はバンド重心位置を歪みを与えたとき繊維に働
く応力に対してプロットしたときの初期勾配(応力増加
1GPaあたりの重心位置の変化)で定義した。緩和過
程の測定については、繊維に3.5%の歪みをかけた直
後から30秒後のスペクトルと1230秒後のスペクト
ルを評価し、それぞれ重心位置と標準偏差を評価して、
ラマンバンドシフト量(SA)とブロードニングの変化
(SC)を求めた。
x f(x)=f1(x−a)+f2(x−b) ここでfiはガウス関数を表す。
/∫f(x)dx]0.5 ここでfは式1で定義したガウス関数の合成である。
0、重量平均分子量と数平均分子量の比が2.3、5個
以上の炭素を有する長さの分岐鎖が炭素1,000個あ
たり0.4個である高密度ポリエチレンをφ0.8m
m、30Hからなる紡糸口金から290℃で単孔吐出量
0.5g/minの速度で押し出した。押し出された繊
維は、15cmの保温区間を通りその後20℃、0.5
m/sのクエンチで冷却され、300m/minの速度
で巻き取られる。該未延伸糸を、複数台の温度コントロ
ールの可能なネルソンロールにて延伸した。1段延伸
は、25℃で2.8倍の延伸を行った。さらに115℃
まで加熱し5.0倍の延伸を行い、延伸糸を得た。得ら
れた繊維の物性を表1に示した。
に加熱し、さらに1.3倍の延伸を行った。得られた繊
維の物性を表1に示した。
した以外は、実施例1と同様の条件で延伸糸を作成し
た。得られた繊維の物性を表1に示した。
した以外は、実施例1と同様の条件で延伸糸を作成し
た。得られた繊維の物性を表1に示した。
0、重量平均分子量と数平均分子量の比が2.4、5個
以上の炭素を有する長さの分岐鎖が炭素1,000個あ
たり0.4個である高密度ポリエチレンを、φ0.9m
m、30Hの紡糸口金から300℃で単孔吐出量0.3
g/minの速度で押し出した以外は実施例1と同様に
して延伸糸を得た。得られた繊維の物性を表1に示し
た。
した以外は、実施例1と同様の条件で延伸糸を作成し
た。得られた繊維の物性を表2に示した。
延伸倍率を1段目3.0倍、2段目7.0倍とした以外
は、実施例1と同様の条件で延伸糸を作成した。得られ
た繊維の物性を表2に示した。
0、重量平均分子量と数平均分子量の比が2.5、5個
以上の炭素を有する長さの分岐鎖が炭素1,000個あ
たり12個である高密度ポリエチレンを用いた以外は実
施例1と同様の条件で延伸糸を作成したが、延伸時に糸
切れが多発し、低い延伸倍率の延伸糸しか得られなかっ
た。得られた繊維の物性を表2に示した。
0、重量平均分子量と数平均分子量の比が5.1、5個
以上の炭素を有する長さの分岐鎖が炭素1,000個あ
たり0.4個である高密度ポリエチレンをφ0.8m
m、30Hからなる紡糸口金から270℃で単孔吐出量
0.5g/minの速度で押し出した以外は実施例1と
同様に未延伸糸を作成した。該未延伸糸を、90℃で
2.8倍の延伸を行った。さらにその後115℃まで加
熱し3.8倍の延伸を行い、延伸糸を得た。得られた繊
維の物性を表2に示した。
を、40℃で2.8倍の延伸を行った。さらにその後1
15℃まで加熱し4.0倍の延伸を行い、延伸糸を得
た。得られた繊維の物性を表2に示した。
した以外は、比較例4と同様にして未延伸糸を作成し
た。該未延伸糸を80℃で2.8倍の延伸を行った。さ
らにその後115℃まで加熱し4.0倍の延伸を行い、
延伸糸を得た。得られた繊維の物性を表2に示した。
0、重量平均分子量と数平均分子量の比が6.0、5個
以上の炭素を有する長さの分岐鎖が炭素1,000個あ
たり0個である高密度ポリエチレンをφ0.8mm、3
0Hからなる紡糸口金から295℃で、単孔吐出量0.
5g/minの速度で押し出した以外は実施例1と同様
に未延伸糸を作成した。該未延伸糸を、90℃で2.8
倍の延伸を行った。さらにその後115℃まで加熱し
3.7倍の延伸を行い、延伸糸を得た。得られた繊維の
物性を表2に示した。
0、重量平均分子量と数平均分子量の比が2.3、5個
以上の炭素を有する長さの分岐鎖が炭素1,000個あ
たり0.6個である高密度ポリエチレンをφ0.8m
m、30Hからなる紡糸口金から255℃で、単孔吐出
量0.5g/minの速度で押し出した以外は実施例1
と同様に未延伸糸を作成した。該未延伸糸を、40℃で
2.8倍の延伸を行った。さらにその後100℃まで加
熱し5.0倍の延伸を行い、延伸糸を得た。得られた繊
維の物性を表2に示した。
0、重量平均分子量と数平均分子量の比が2.5、5個
以上の炭素を有する長さの分岐が炭素1,000個あた
り1.3個である高密度ポリエチレンを用いて紡糸を行
おうとしたが、溶融粘度が高く過ぎて均一に押し出すこ
とが出来なかった。
例を表3に示す。
例を表3に示す。
る力学物性を改善した高強度ポリエチレン繊維の提供が
可能となった。
示すグラフ。
との関係を示すグラフ。
Claims (6)
- 【請求項1】ラマンシフトファクターが−2.5cm-1
/%以上で引っ張り強度が15cN/dtex以上、引
っ張り弾性率が500cN/dtex以上であることを
特徴とする高強度ポリエチレン繊維。 - 【請求項2】応力ラマンシフトファクターが−5.5c
m-1/GPa以上であることを特徴とする請求項1記載
の高強度ポリエチレン繊維。 - 【請求項3】ラマンバンドブロードニングファクターが
1.5cm-1/%以下であることを特徴とする請求項1
記載の高強度ポリエチレン繊維。 - 【請求項4】応力ラマンシフトファクターが−5.5c
m-1/GPa以上であることを特徴とする請求項1記載
の高強度ポリエチレン繊維。 - 【請求項5】一定歪みを与えた後の応力緩和過程におい
て、1200秒後のラマンバンドシフト量が1.5cm
-1以下であることを特徴とする請求項1記載の高強度ポ
リエチレン繊維。 - 【請求項6】一定歪みを与えた後の応力緩和過程におい
て、1200秒後のラマンバンドブロードニングの変化
が2.0cm-1以下であることを特徴とする請求項1記
載の高強度ポリエチレン繊維。
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