JP2006084261A - 高分子材料の物性値解析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 特定の高分子材料に関して予め準備されたラマンスペクトル値と物性値との関係を表す検量線をリファレンスとして前記特定の高分子材料と同種の被解析高分子材料の物性値を解析する方法であって、前記被解析高分子材料のラマンスペクトルを測定する工程と、このラマンスペクトルから前記リファレンスにおけるのと同種のスペクトル値を算出する工程と、このスペクトル値に対応する物性値を前記リファレンスを用いて解析する工程とからなる高分子材料の物性値解析方法。
【選択図】 図1
Description
「Standard Specification for Ultra-High-Molecular-Weight Polyethylene Powder and Fabricated Form for Surgical Implants」 ASTM F648-00. 「Standard Test Method for Small Punch Testing of Ultra-High Molecular Weight Polyethylene Used in Surgical Implants」 ASTM F2183-02. 「Standard Test Method for In Situ Determination of Network Parameters of Crosslinked Ultra High Molecular Weight Polyethylene (UHMWPE)」 ASTM F2214-02. 「新版 高分子分析ハンドブック」 日本分析化学会編, 1995 「Standard Guide for Evaluating the Extent of Oxidation in Ultra-High-Molecular-Weight Polyethylene Fabricated Forms Intended for Surgical Implants」 ASTM F2102-01.
請求項2の高分子材料の物性解析方法は、前記物性値が歪みであり、前記スペクトル値が、ラマンスペクトルピーク高さが1/2のとなる幅(半値幅)であることを特徴とする。
(非特許文献7)R. Mutter, W. Stille, G. Strobl, J Poly Sci: Polym Phys 31, 99-105 (1993)
ピークに属する分子の量はピーク高さとピークに属する分子振動の僅かなばらつきの両方を考慮しなければならない。そのため、結晶分率を算出するときはその両方に影響する積分強度(ピーク面積)を用いた。
酸化度測定は、非特許文献5に準拠して行った。
結晶分率(ac) = I1414 / ((I1293 + I1305) x 0.46) (1)
ラマンスペクトルから算出される非結晶分率を用いた酸化の評価は、予め、酸化を引き起こさせた試験片について、ラマン分光分析を行ない、得られたラマンスペクトルのデータについて、非結晶性C-C伸縮振動に帰属されるピーク(1080 cm-1付近)、結晶性H-C-Hひねり振動に帰属されるピーク(1293 cm-1)、非結晶性H-C-Hひねり振動に帰属されるピーク(1305 cm-1)及び結晶性の面積を求め、それの比から相対的な非結晶分率(aa)を式(2)より算出する。
非結晶分率(aa) = I1080 / ((I1293 + I1305) x 0.79) (2)
引き続いて、ラマン分光分析を行なった部位について、フーリエ赤外分光(FT-IR)分析により、得られたFT-IRスペクトルから、非特許文献5に準拠してPEの主鎖-CH2-に帰属されるピーク(1360 cm-1付近)と、酸化によって生じるC=Oに帰属されるピーク(1720 cm-1付近)の面積を求め、それらの比から相対的な酸化度(OI)を式(3)より算出する。
酸化度(OI) = I1720 / I1360 (3)
算出された非結晶分率(aa)と酸化度(OI)を用いて非結晶分率(aa)-酸化度(OI)検量線を作成する。次に被解析高分子材料について、ラマン分光分析を行ない、得られたラマンスペクトルデータから非結晶分率を算出し、先に求めた非結晶分率(aa)-酸化度(OI)検量線をレファレンスとし、非結晶分率の変動による酸化の程度の評価を行なうことを特徴とする。
直径90x500 mm3のPerplas社製UHMWPEロッド(GUR1050、平均分子量約600万)を準備した。このUHMWPEロッドより小型ダンベル状試験片を機械加工により得た。得られた試験片を引張り負荷治具に固定し引張り負荷をかけつつ、Jobin-Yvon社製ラマン分光測定装置 T-64000を用い顕微ラマン分光分析を行なった。励起源には488 nmAr+を用い、レーザー出力70 mW、中心波長1300 cm-1、レーザースポット径1 mm、積算回数20秒3回として測定した。
結晶分率(ac) = I1414 / ((I1293 + I1305) x 0.46) (1)
図1に、引張り負荷-ラマン分光分析により求められたUHMWPEの結晶分率-歪みの検量線を示す。横軸に引張り負荷による歪みを、縦軸にラマン分光による求められた結晶分率(ac)を示す。引張り負荷により一軸方向に歪んだとき、歪みが約0〜50%の変形領域において、UHMWPEの結晶分率は増大し、歪みが約50%以上の変形領域において結晶分率は低下した。
直径90x500 mm3のPerplas社製UHMWPEロッド(GUR1050、平均分子量約600万)を準備した。このUHMWPEロッドより小型ダンベル状試験片を機械加工により得た。得られた試験片を引張り負荷治具に固定し引張り負荷をかけつつ、Jobin-Yvon社製ラマン分光測定装置 T-64000を用い顕微ラマン分光分析を行なった。励起源には488 nmAr+を用い、レーザー出力70 mW、中心波長1300 cm-1、レーザースポット径1 mm、積算回数20秒3回として測定した。(ここまでは、検量線1の操作と同様である)
図2に、引張り負荷-ラマン分光分析により求められたUHMWPEのスペクトルピーク半値幅-歪みの検量線を示す。横軸に引張り負荷による歪みを、縦軸にラマン分光による求められた半値幅を示す。引張り負荷により歪んだとき、UHMWPEラマンスペクトルピーク半値幅(FWHM)は、徐々に増大した。1127 cm-1の半値幅の変化は、線形性が高かった。半値幅は、検出される官能基の振動数のばらつきを示している。図2より、UHMWPEは歪み量が増大するにともなって、官能基の振動数のばらつきが大きくなったといえる。
直径90x1000 mm3のPerplas社製UHMWPE(GUR1050)を準備した。UHMWPEを試験片形状に機械加工を行なった。得られた試験片を大気中、80℃にて酸化加速試験を行なった。
直径90x500 mm3のPerplas社製UHMWPEロッド(GUR1050、平均分子量約600万)を準備した。このUHMWPEロッドより小型ダンベル状試験片を機械加工により得た。得られた試験片を、JIS K7113に準拠して、島津製作所製万能試験機(オートグラフAGS-20kNG)を用いて、負荷速度50 mm/min、チャック間距離10 mmにて引張り試験した。図4に、この試験体の応力-歪みの検量線を示す。横軸に引張り負荷による歪みを、縦軸に応力を示す。
不具合により取り出された臨床使用後の人工膝関節のUHMWPEコンポーネントについて、Jobin-Yvon社製ラマン分光測定装置T-64000を用いて顕微ラマン分析を行なった。励起源に488 nm Ar+を用い、レーザー出力70 mW、中心波長1300 cm-1、レーザースポット径1 mm、積算回数20秒3回にて測定した。各測定部位のラマンスペクトルより、検量線1〜3記載された方法と同様の操作にて、結晶分率、半値幅、非結晶分率を求め、図5に示す。縦軸には、各々、結晶分率、半値幅、非結晶分率を示し、横軸には、対象検体の測定部位を示し、表面を0 mm部、コンポーネントの裏側を6 mmとした。
Claims (9)
- 特定の高分子材料に関して予め準備されたラマンスペクトル値と物性値との関係を表す検量線をリファレンスとして前記特定の高分子材料と同種の被解析高分子材料の物性値を解析する方法であって、前記被解析高分子材料のラマンスペクトルを測定する工程と、このラマンスペクトルから前記リファレンスにおけるのと同種のスペクトル値を算出する工程と、このスペクトル値に対応する物性値を前記リファレンスを用いて解析する工程とからなる高分子材料の物性値解析方法。
- 前記物性値が歪みであり、前記スペクトル値が前記ラマンスペクトルのピーク高さが1/2のとなる幅であることを特徴とする請求項1記載の高分子材料の物性値解析方法。
- 前記スペクトル値として、前記ラマンスペクトルの1127cm-1近傍のピークについてピーク高さが1/2となる幅を算出することを特徴とする請求項2記載の高分子材料の物性値解析方法。
- 前記物性値が歪みあり、前記スペクトル値が前記ラマンスペクトルのピークの面積から求めた結晶分率であることを特徴とする請求項1記載の高分子材料の物性値解析方法。
- 前記結晶分率が、前記ラマンスペクトルのピーク(I1414、 I1293、 I1305)の面積を用いた結晶分率(ac)= I1414 /((I1293 + I1305) x 0.46)であることを特徴とする請求項4記載の高分子材料の物性値解析方法。
- 前記物性値がフーリエ赤外分光分析により測定されたスペクトルのピーク(I1360,I1720)の面積を用いた酸化度=I1720/I1360であり、前記スペクトル値がラマンスペクトルのピーク(I1414、 I1293、 I1305)の面積から求めた結晶分率(ac) = I1414 /((I1293 + I1305) x 0.46)または非結晶分率(aa) = I1080 /((I1293 + I1305) x 0.79)であることを特徴とする請求項1記載の高分子材料の物性値解析方法。
- 請求項2の物性値解析方法により歪みを解析した後、前記歪みに関する物性値と応力曲線との関係を表す予め準備された検量線を用いて、前記解析した歪みに対応する応力を解析することを特徴とする高分子材料の物性値解析方法。
- 前記被解析高分子材料が、人工関節用であることを特徴とする請求項1〜7の少なくともいずれかに記載の高分子材料の物性値解析方法。
- 前記被解析高分子材料が超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜8少なくともいずれかに記載の高分子材料の物性値解析方法。
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