JP2003057111A - 火炎センサ - Google Patents

火炎センサ

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JP2003057111A
JP2003057111A JP2001249180A JP2001249180A JP2003057111A JP 2003057111 A JP2003057111 A JP 2003057111A JP 2001249180 A JP2001249180 A JP 2001249180A JP 2001249180 A JP2001249180 A JP 2001249180A JP 2003057111 A JP2003057111 A JP 2003057111A
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wavelength
wavelength range
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JP2001249180A
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Hikari Hirano
光 平野
Hiroshi Amano
浩 天野
Isamu Akasaki
勇 赤崎
Satoshi Kamiyama
智 上山
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Osaka Gas Co Ltd
Original Assignee
Osaka Gas Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 波長感度が調整された火炎センサを提供す
る。 【解決手段】 複数のフィルタ手段11、12を入射光
の進行方向に対して直列に重畳して配置することで構成
されたフィルタ装置22と、上記フィルタ装置22を通
過した光を受光する受光装置21とを備えてなる火炎セ
ンサ20が、上記複数のフィルタ手段11、12による
合成光透過率スペクトルにおいて、検出対象波長域にお
ける第1透過率が、上記検出対象波長域よりも長波長側
にある遮光波長域における第2透過率よりも大きく、上
記検出対象波長にある所定の第1波長における第1感度
の値が、上記遮光波長域にあり、上記第1波長より50
nm長波長の第2波長における第2感度の値の1万倍以
上である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、波長選択性を有
し、入射光の内の所望の波長範囲の光(検出対象波長域
にある光)を選択的に受光することのできる火炎センサ
に関する。
【0002】
【従来の技術】火炎センサは、火炎からの光に対して良
好な感度を有することが求められるが、設置される場所
によっては各種照明機器からの光(室内光)や太陽光な
どが照射されることもあるため、火炎の波長範囲に感度
を有しつつ、室内光や太陽光の波長範囲においては感度
を有さないように構成することが求められる。また、現
在はその受光部に直接ギャップ形の半導体を用い、その
半導体のバンドギャップエネルギを調整することで吸収
端波長(カットオフ波長)が調整された半導体受光素子
が用いられている。ここで、感度(単位はA/W)と
は、火炎センサに照射される光強度(W)に対して、ど
れだけの光電流(A)が発生したかを示すものであり、
発生する光電流が大きいほど感度が高いと言える。
【0003】ここで受光層として直接ギャップ形の半導
体を用いるのは、その受光層における光吸収過程が直接
遷移によって行われるため、吸収係数の波長特性を調べ
た場合、その吸収係数が吸収端波長(受光層のバンドギ
ャップエネルギに相当)で急激に変化し、吸収端波長前
後の波長を選択的に分離して光吸収することができると
いう波長選択性が大きく見られるからである。他方で、
受光層として間接ギャップ形の半導体を用いた場合、そ
の受光層における光吸収過程が間接遷移によって行われ
るために、吸収係数の波長特性は緩やかに変化する。従
って、間接ギャップ形の半導体を受光層に用いた場合に
は、波長選択性が大きく見られない。
【0004】従来、火炎の発光の内で紫外域に存在する
発光を検出対象とし、その検出対象波長域の発光にのみ
感度を有するような火炎センサを構成するために、受光
層を覆うように1枚の光学フィルタを設けて検出対象と
しない光を遮断し、検出対象波長域にある火炎の光のみ
が受光層に到達するようにしていた。受光層を覆うよう
に光学フィルタを設けた場合の感度は、光学フィルタに
照射される光強度(W)に対して、光学フィルタを透過
した光を受光した受光層においてどれだけの光電流
(A)が発生したかで導出される。従って、光学フィル
タの透過率スペクトルを調整することで、受光層に照射
される光のスペクトルも調整されることから、結果とし
て得られる火炎センサの波長感度も変えることができ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、受光層
に直接ギャップ形の半導体を用い、且つ光学フィルタを
備えた火炎センサを構成したとしても、各種照明機器か
らの室内光や太陽光からの光に対して感度を有するとい
う問題を解決するには至らなかった。具体的には、検出
対象波長域にある火炎の光と、太陽光および室内光との
境界波長域である波長300nm〜400nm、更には
320nm〜400nmの波長範囲において、光の遮断
が不十分であること、並びに図3に示すような光学フィ
ルタとしての色ガラスフィルタの透過率スペクトルの立
ち上がりが緩やかであることに問題がある。また、受光
層となる半導体層自体についても、検出対象波長域にあ
る火炎に対する感度の値が、検出対象波長域よりも長波
長側にある遮光波長域での感度の値の一万分の一以下の
値とさせることができない。その結果、光学フィルタに
よる遮光が不十分であるために、火炎センサが太陽光や
室内光に対して光電流を発生させるという問題があるこ
とが分かった。
【0006】光学フィルタとしては、色ガラスフィルタ
の他に多層膜フィルタと呼ばれるものもあり、図5に示
すように特定の波長範囲の光を良好に遮断することがで
き、更にその立ち上がりが急峻である特性を有する。し
かし、多層膜フィルタは光の干渉を利用して光を打ち消
し合わせるように構成したフィルタであるために、特定
の遮断波長範囲以外の光については干渉がほとんど発生
せず、広い波長範囲に広がる太陽光のほとんど、特に検
出対象波長域にある火炎の光よりも長波長側の光を受光
層に入射させてしまうという問題がある。従って、光学
フィルタとして多層膜フィルタを1枚だけで用いたとし
ても要求される波長選択性能を満たすことはできなかっ
た。
【0007】従来は光学フィルタとして色ガラスフィル
タが、受光層である直接ギャップ形の半導体層を有する
受光素子と共に用いられ、全ての波長域で同じ光強度の
光を照射して測定した場合には、遮光波長域での感度
が、検出対象波長域にある火炎の光に対する感度の値の
百分の一〜一万分の一程度の値にまで感度比を設定する
ことができた。しかし、実際には遮光波長域での光の強
度(例えば、波長400nm前後における太陽の光強
度)は、検出対象波長域にある火炎の光強度(例えば、
波長300nm前後の火炎の光強度)に比べて非常に大
きいものとなり、実際の火炎センサの使用状況において
得られる遮光波長域での感度は、検出対象波長域にある
火炎の光に対する感度の値の百分の一〜千分の一となっ
ていた。
【0008】更に、波長選択性のある1枚の光学フィル
タを火炎センサの入射光側に設けたにも拘わらず、光透
過率スペクトルの立ち上がりが緩やかであることによっ
て火炎センサが太陽光や室内光に対しても感度を有して
しまうのは以下の理由によるものがあることが見出され
た。
【0009】従来は、光学フィルタを用いたとしても検
出対象波長域以外の光が完全には除去されないことを考
慮して、光学フィルタを設けると同時に、光学フィルタ
によって除去しきれなかった光が受光層で吸収されるこ
とを防止する目的で、受光層、および受光層を覆う半導
体層のバンドギャップエネルギを所定のカットオフ波長
に調整して、それらの半導体層自体を光学フィルタとし
て作用させて、検出対象波長域よりも長波長の光を完全
に除去しようとしていた。しかしながら、それらの半導
体層中には欠陥準位などが存在し、その欠陥準位におい
てはバンドギャップエネルギに満たないエネルギの光
(検出対象波長域よりも長波長の光)が吸収されること
で光電流が発生されていた。その結果、所定のカットオ
フ波長よりも長い波長の光に対しても感度を有し、完全
な波長選択性を達成することができないという問題が生
じていた。
【0010】具体的には、受光素子としてのPINフォ
トダイオードをGaN系材料で作製する場合、受光層
(i層)よりも入射光側に設けられたp層を構成するp
−Al xGa1-xN(x>0.2)は結晶品質が悪いため
に上述のような欠陥準位が数多く含まれ、更に3元素混
晶であることで、半導体層中の組成比が均一となり難い
という問題が生じる。そのため、p層およびi層のバン
ドギャップエネルギを調整して、280nm〜330n
m付近にカットオフ波長を設けたとしても、そのカット
オフ波長から波長400nm程度の間の光に対して、ノ
イズとなる程度の感度を有してしまうという問題が生じ
ていた。
【0011】このように、従来の光学フィルタを備えて
構成された火炎センサでは、半導体層中の欠陥準位に起
因する感度が問題となることが認識されておらず、その
対策も取られていなかった。そのため、検出対象波長域
にある火炎の光だけを感度良く検知することのできる火
炎センサを作製することができていなかった。
【0012】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたも
のであり、その目的は、波長感度が調整された火炎セン
サを提供する点にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明に係る火炎センサの第一の特徴構成は、特許請
求の範囲の欄の請求項1に記載の如く、複数のフィルタ
手段を入射光の進行方向に対して直列に重畳して配置す
ることで構成されたフィルタ装置と、前記フィルタ装置
を通過した光を受光する受光装置とを備えてなる火炎セ
ンサであって、前記複数のフィルタ手段による合成光透
過率スペクトルにおいて、検出対象波長域における第1
透過率が、前記検出対象波長域よりも長波長側にある遮
光波長域における第2透過率よりも大きく、前記検出対
象波長域にある所定の第1波長における第1感度の値
が、前記遮光波長域にあり、前記第1波長より50nm
長波長の第2波長における第2感度の値の1万倍以上で
ある点にある。
【0014】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請
求項2に記載の如く、複数のフィルタ手段を入射光の進
行方向に対して直列に、部分的に重畳して配置すること
で構成されたフィルタ装置と、前記フィルタ装置を通過
した光を受光する受光装置とを備えてなる火炎センサで
あって、前記受光装置が、下地層構造と、前記下地層構
造上に設けられた、それぞれが受光層を含む複数の受光
層構造とを備えてなり、前記複数のフィルタ手段が部分
的に重畳されることで、前記受光装置側に透過される光
の合成光透過率スペクトルが部分的に複数形成され、前
記複数の合成光透過率スペクトルに対応して前記受光層
構造のそれぞれが配置され、前記複数の合成光透過率ス
ペクトルの内の第1合成光透過率スペクトルにおいて、
検出対象波長域における第1透過率が、前記検出対象波
長域よりも長波長側にある遮光波長域における第2透過
率よりも大きく、前記第1合成光透過率スペクトルに対
応して配置される受光層構造を含む火炎センサの前記検
出対象波長域にある所定の第1波長における第1感度の
値が、前記遮光波長域にあり、前記第1波長より50n
m長波長の第2波長における第2感度の値の1万倍以上
であり、前記複数の合成光透過率スペクトルの内の第2
合成光透過率スペクトルは、前記第1合成光透過率スペ
クトルの光に対して、前記検出対象波長域の光を除去可
能なフィルタ手段を更に適用することで形成される点に
ある。
【0015】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第三の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請
求項3に記載の如く、上記第一または第二の特徴構成に
加えて、前記第1感度の値が、前記第2感度の値の十万
倍以上である点にある。
【0016】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第四の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請
求項4に記載の如く、上記第一から第三の何れかの特徴
構成に加えて、前記複数のフィルタ手段の内の1つが、
少なくとも波長400nm〜700nmの波長範囲にお
ける平均透過率が10%以下である特性を有し、前記複
数のフィルタ手段の内の他の1つが、少なくとも波長3
00nm〜400nmの波長範囲における平均透過率が
30%以下である特性を有する点にある。ここで、平均
透過率とは所定の波長範囲における透過率の単純平均で
ある。
【0017】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第五の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請
求項5に記載の如く、上記第一から第四の何れかの特徴
構成に加えて、前記複数のフィルタ手段の少なくとも1
つが色ガラスフィルタであり、他の少なくとも1つが多
層膜フィルタである点にある。
【0018】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第六の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請
求項6に記載の如く、上記第一から第五の何れかの特徴
構成に加えて、前記受光装置が、下地層構造と、前記下
地層構造上に設けられた、受光層を含む受光層構造とを
備えてなる半導体素子であり、前記下地層構造が備える
複数の半導体層が、前記下地層構造の結晶状態を改善す
る複数のバッファ層を備えて構成される点にある。
【0019】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第七の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請
求項7に記載の如く、上記第六の特徴構成に加えて、前
記受光層が直接ギャップ形の半導体である点にある。
【0020】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第八の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請
求項8に記載の如く、上記第六または第七の特徴構成に
加えて、前記受光層のバンドギャップエネルギが3.6
eV以上である点にある。
【0021】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第九の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請
求項9に記載の如く、上記第八の特徴構成加えて、前記
受光層のバンドギャップエネルギが4.0eV以下であ
る点にある。
【0022】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第十の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請
求項10に記載の如く、上記第八の特徴構成に加えて、
前記受光層のバンドギャップエネルギが4.1eV以上
である点にある。
【0023】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第十一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の
請求項11に記載の如く、上記第十の特徴構成に加え
て、前記受光層のバンドギャップエネルギが4.4eV
以上である点にある。
【0024】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第十二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の
請求項12に記載の如く、上記第六から第十一の特徴構
成に加えて、前記受光層がAlxGa1-xN(0≦x≦
1)を含む点にある。
【0025】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第十三の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の
請求項13に記載の如く、上記第六から第十二の特徴構
成に加えて、前記受光層構造において、前記受光層にお
ける入射光の反射率を低減させる反射防止手段が前記受
光層上の入射光側に設けられている点にある。
【0026】上記課題を解決するための本発明に係る火
炎センサの第十四の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の
請求項14に記載の如く、上記第十三の特徴構成に加え
て、前記反射防止手段が、前記受光層よりも屈折率の小
さい光透過層である点にある。
【0027】以下に作用並びに効果を説明する。本発明
に係る火炎センサの第一の特徴構成によれば、複数のフ
ィルタ手段による合成光透過率スペクトルにおいて、検
出対象波長域における第1透過率が、検出対象波長域よ
りも長波長側にある遮光波長域における第2透過率より
も大きいことから、フィルタ手段を通過して火炎センサ
の受光装置に入射される光の波長を限定的に選択して、
検出対象波長域以外の光が含まれないようにすることが
できる。火炎センサの受光装置によって受光される光が
火炎を起源とするものだけであることが確実にされるの
で、火炎センサの誤検出の可能性を排除することができ
る。また、火炎センサに設けられる複数のフィルタ手段
においては、各フィルタ手段が有する光透過率スペクト
ルの特性を様々に設定することができることから、結果
として得られる合成光透過率スペクトルの設定自由度が
高くすることができる。
【0028】更に、検出対象波長域にある所定の第1波
長における第1感度の値が、遮光波長域にあり、第1波
長より50nm長波長の第2波長における第2感度の値
の1万倍以上にすることができることから、検出対象と
する火炎の光のみを高い波長選択性を持って検出するこ
とができる。また更に、各半導体層に含まれ、検出対象
波長域以外の光を吸収する欠陥準位の存在に起因して光
電流が発生することを防止することができることから、
検出対象波長域にある火炎の光が微弱であっても、それ
を良好に検出することができる。
【0029】本発明に係る火炎センサの第二の特徴構成
によれば、複数のフィルタ手段による合成光透過率スペ
クトルにおいて、検出対象波長域における第1透過率
が、検出対象波長域よりも長波長側にある遮光波長域に
おける第2透過率よりも大きいことから、フィルタ手段
を通過して火炎センサの受光装置に入射される光の波長
を限定的に選択して、検出対象波長域以外の光が含まれ
ないようにすることができる。火炎センサの受光装置に
よって受光される光が火炎を起源とするものだけである
ことが確実にされるので、火炎センサの誤検出の可能性
を排除することができる。また、火炎センサに設けられ
る複数のフィルタ手段においては、各フィルタ手段が有
する光透過率スペクトルの特性を様々に設定することが
できることから、結果として得られる合成光透過率スペ
クトルの設定自由度が高くすることができる。
【0030】更に、検出対象波長域にある所定の第1波
長における第1感度の値が、遮光波長域にあり、第1波
長より50nm長波長の第2波長における第2感度の値
の1万倍以上にすることができることから、検出対象と
する火炎の光のみを高い波長選択性を持って検出するこ
とができる。また更に、各半導体層に含まれ、検出対象
波長域以外の光を吸収する欠陥準位の存在に起因して光
電流が発生することを防止することができることから、
検出対象波長域にある火炎の光が微弱であっても、それ
を良好に検出することができる。
【0031】また更に、上記第1合成光透過率スペクト
ルに対応して設けられた受光層構造(以下、第1受光層
と記す)には、検出対象波長域の光と、遮光波長域にお
いて漏れてきた光とが入射され、上記第2合成光透過率
スペクトルに対応して設けられた受光層構造(以下、第
2受光層と記す)には、遮光波長域において漏れてきた
光が入射されることから、第1受光層において発生され
た光電流から、第2受光層において発生された光電流を
減算することで、検出対象波長域にある火炎の光のみに
起因して発生された光電流を導出することができる。更
に、第1受光層および第2受光層において発生される光
電流には、温度変化に対応して発生する熱電子放出に起
因する電流成分が含まれているのだが、上述したように
光電流の差をとることで熱電子放出に起因する電流成分
が相殺され、温度補償を行うことができるという効果も
発揮される。従って、火炎のオン・オフの判定精度が高
く、高精度な温度補償が可能な火炎センサを容易に構成
することができる。
【0032】本発明に係る火炎センサの第三の特徴構成
によれば、上記第1感度の値が上記第2感度の値の十万
倍以上であることから、受光する検出対象波長域にある
火炎の光が微弱である場合でも、その光によって発生さ
れた光電流を、検出対象としない光による光電流と更に
明確に区別して検知することができる火炎センサを得る
ことができる。
【0033】本発明に係る火炎センサの第四の特徴構成
によれば、紫外域から可視域の光を良好に遮断すること
のできるフィルタ手段と、紫外域を特に良好に遮断する
ことのできるフィルタ手段とを組み合わされたフィルタ
装置が用いられるので、受光装置に入射される光は、各
種照明機器からの室内光や太陽光に含まれる可視光と紫
外光とを良好に遮断しつつ、検出対象波長域にある火炎
の光を良好に透過させることができる。特に、各半導体
層に含まれ、検出対象波長域以外の光を吸収する欠陥準
位による感度波長域(波長300nm〜400nm)の
光を良好に遮断することができるので、検出対象波長域
にある火炎の光に対してのみ光電流が発生するような火
炎センサを得ることができる。
【0034】本発明に係る火炎センサの第五の特徴構成
によれば、火炎センサに照射された光に対して、色ガラ
スフィルタと多層膜フィルタとを共に適用しているの
で、色ガラスフィルタによって特定の波長範囲の光のみ
を透過させることができ、多層膜フィルタによって、色
ガラスフィルタを透過した光の、緩やかに立ち上がる
(または立ち下がる)吸収端波長付近の透過率スペクト
ルを急峻に変化させることができる。つまり、複数のフ
ィルタ手段を透過した後で受光装置に入射される光の透
過率スペクトルが特定の波長で急激に変化される、言い
換えると、高い波長選択性を有する光学フィルタを構成
することができる。
【0035】本発明に係る火炎センサの第六の特徴構成
によれば、受光層構造の下地層構造が、下地層構造自身
の結晶状態を改善するバッファ層を複数層備えてなるこ
とで、その上に堆積される受光層構造の結晶状態も良好
なものとすることができる。受光層構造の結晶状態が良
好であるということは、層中に欠陥準位を形成する欠陥
密度が低いということであり、火炎の波長範囲とは異な
る波長範囲に感度を有するようなことが無い。具体的に
は、受光層の吸収端波長付近における感度が急峻に変化
する、つまり受光する波長範囲を限定することができる
という波長選択性の高い火炎センサを提供することがで
きる。
【0036】本発明に係る火炎センサの第七の特徴構成
によれば、受光層が直接ギャップ形の半導体であること
で、受光層は光を直接遷移で吸収する。光吸収過程が受
光層における直接遷移によるので、吸収係数の波長特性
は吸収端波長(バンドギャップエネルギに相当)におい
て急激に変化し、吸収端波長を境として吸収される波長
域の光と、吸収されない波長域の光とが明確に分離され
る。その結果、受光層においても高い波長選択性が発揮
されるという効果を得ることができる。
【0037】本発明に係る火炎センサの第八の特徴構成
によれば、上記受光層のバンドギャップエネルギが3.
6eV以上であることで、波長約344nm(3.6e
V)以下の波長の光、即ち、波長約344nm以下の波
長域に現れる火炎の光を上記受光層によって選択的に検
出することができる火炎センサを得ることができる。
【0038】本発明に係る火炎センサの第九の特徴構成
によれば、上記受光層のバンドギャップエネルギが3.
6eV以上4.0eV以下であることで、波長約310
nm(4.0eV)〜344nm(3.6eV)の範囲
の波長の光、即ち、検出対象波長域にある火炎の光の中
でも特に炭化水素を含む化合物を燃焼させた場合に観測
されるOHラジカルの発光に起因する発光ピークを良好
に検出することができる火炎センサを得ることができ
る。特に、火炎センサの設置場所がエンジン内部などの
閉鎖された空間である場合には、屋外に設置された場合
には同時に観測される各種照明機器からの室内光や太陽
光といった光が存在することがないため、検出対象波長
域にある火炎の光のみを良好に検出することができる。
【0039】本発明に係る火炎センサの第十の特徴構成
によれば、上記受光層のバンドギャップエネルギが4.
1eV以上であることで、波長約300nm(4.1e
V)以下の波長の光、即ち、検出対象波長域にある火炎
の光を上記受光層によって検出することができる火炎セ
ンサを得ることができる。更に、波長約300nmを超
える波長の光、即ち、各種照明機器などからの室内光に
対しては上記受光層が感度を有さないので、検出対象波
長域にある火炎の光に対して選択的に感度を有する火炎
センサを得ることができる。
【0040】本発明に係る火炎センサの第十一の特徴構
成によれば、上記受光層のバンドギャップエネルギが
4.4eV以上であることで、波長約280nm(4.
4eV)以下の波長の光、即ち、検出対象波長域にある
火炎の光を上記受光層によって検出することができる火
炎センサを得ることができる。更に、波長約280nm
を超える波長の光、即ち、各種照明機器などからの室内
光および太陽光(自然光)に対しては上記受光層が感度
を有さないので、検出対象波長域にある火炎の光に対し
て選択的に感度を有する火炎センサを得ることができ
る。
【0041】本発明に係る火炎センサの第十二の特徴構
成によれば、受光層がAlxGa1-xN(0≦x≦1)を
含む含む窒化物半導体からなることで、アルミニウムの
組成比xを調整することで、受光層のバンドギャップエ
ネルギを任意に設定することができる。その結果、受光
層のカットオフ波長が設定され、各種照明機器や太陽光
には感度を有さないが、検出対象波長域にある火炎の光
に対しては感度を有するような火炎センサを提供するこ
とができる。
【0042】本発明に係る火炎センサの第十三の特徴構
成によれば、受光層上の入射光側に反射防止手段が設け
られていることで、反射防止手段を設けていない場合に
比べて受光層に入射される光量(エネルギ量)を増大さ
せることができる。その結果、受光層における光電変換
効率が増大されたことと等価であることから、火炎から
の光の強度が弱くても感度良く検出することができるか
火炎センサを提供することができる。
【0043】本発明に係る火炎センサの第十四の特徴構
成によれば、反射防止手段が、受光層の屈折率よりも小
さい屈折率を有する光透過層で構成されることで、その
光透過層の化学組成や膜厚などを調整することで、所望
の屈折率を有する光透過層を容易に作製することがで
き、その結果、受光層に対して良好に光を入射させるこ
とができる。
【0044】
【発明の実施の形態】以下に、火炎センサの構成例につ
いて図1を参照して説明する。図1(a)および図1
(b)に示す火炎センサ20、30は、火炎からの入射
光を受光して、光電流を発生させるる受光装置21、2
3と、所望の波長範囲の光を透過または遮断させること
のできるフィルタ装置22とを備えて構成される。受光
装置には検出対象波長域にある火炎の光に対して応答性
のある装置が用いられ、以下の実施形態ではPIN型の
半導体素子構造からなる受光装置21と、ショットキー
ダイオード型の半導体素子構造からなる受光装置23と
を例示して説明する。
【0045】まず、図1(a)に示す火炎センサ20
は、火炎からの入射光を受光する受光装置21(PIN
型)と、所望の波長範囲の光を透過または遮断させるこ
とのできるフィルタ装置22とを備えて構成される。受
光装置21は、サファイアを用いて構成された基板1の
上に第1バッファ層2(低温で堆積させたAlN)と、
結晶改善層3(GaN)と、第2バッファ層4(低温で
堆積させたAlN)とを順次堆積させることで作製され
た下地層構造の上に、n型半導体層5(n−Al xGa
1-xN(x=0.4))と、アンドープのi型半導体層
6(i−AlxGa1 -xN(x=0.4))と、p型半導
体層7(p−GaN)とが順次堆積されて受光層構造が
形成され、n型半導体層5上の一部分に電極8(Ti/
Al/Au)がオーミック接触となるように設けられ、
p型半導体層7上の一部分には電極9(Ni/Au)
と、更に電極9上の一部分に電極10(Au)が設けら
れて構成されている。また、フィルタ装置22は、第1
フィルタ手段11と第2フィルタ手段12とを備えてな
る。また、基板1の材料としてはサファイアの他にシリ
コン(Si)を使用することもできる。
【0046】次に、図1(b)に示す火炎センサ30
は、火炎からの入射光を受光する受光装置23(ショッ
トキーダイオード型)と、所望の波長範囲の光を透過ま
たは遮断させることのできるフィルタ装置22とを備え
て構成される。受光装置23は、サファイアを用いて構
成された基板1の上に第1バッファ層2(低温で堆積さ
せたAlN)と、結晶改善層3(GaN)と、第2バッ
ファ層4(低温で堆積させたAlN)とを順次堆積させ
ることで作製された下地層構造の上に、n型半導体層5
(n−AlxGa1-xN(x=0.4))と、アンドープ
のi型半導体層6(i−AlxGa1-xN(x=0.
4))とが順次堆積されて受光層構造が形成され、n型
半導体層5上の一部分に電極8(Ti/Al/Au)が
オーミック接触となるように設けられ、i型半導体層6
上に電極9(Ni/Au)がi型半導体層6に対してシ
ョットキー接触となるように設けられ、更に電極9上の
一部分に電極10(Au)が設けられて構成されてい
る。また、図1(a)と同様にフィルタ装置22は、第
1フィルタ手段11と第2フィルタ手段12とを備えて
なる。また、基板1の材料としてはサファイアの他にシ
リコン(Si)を使用することもできる。
【0047】ここで、受光層となるi型半導体層6が直
接ギャップ形のIII−V族窒化物半導体で作製されて
いることで、i型半導体層6は光を直接遷移で吸収す
る。従って、上記火炎センサでは、光吸収過程がi型半
導体層6における直接遷移によるので、吸収係数の波長
特性は吸収端波長(i型半導体層6のバンドギャップエ
ネルギに相当)において急激に変化し、吸収端波長を境
として吸収される波長域の光と、吸収されない波長域の
光とが明確に分離される。その結果、i型半導体層6に
よって高い波長選択性能が発揮されるという効果を得る
ことができる。
【0048】更に火炎センサに波長選択性を持たせるた
めには、受光層であるi型半導体層6(AlxGa
1-xN)におけるAlの組成比を調整して、そのバンド
ギャップエネルギを所望の値に設定することが行われ
る。例えば、波長約344nm以下の波長域に広がる検
出対象波長域にある火炎の光を選択的に受光することの
できる火炎センサを作製したい場合には、i型半導体層
6のバンドギャップエネルギが3.6eV以上となるよ
うにアルミニウム組成比x=0.05、或いはそれ以上
とすればよい。或いは、約300nm以上の波長域に含
まれる、各種照明機器からの光(室内光)を受光せず
に、検出対象波長域にある火炎の光を受光するような火
炎センサを作製したい場合には、i型半導体層6のバン
ドギャップエネルギが4.1eV以上となるようにアル
ミニウム組成比x=0.25、或いはそれ以上とすれば
よい。また或いは、約280nm以上の波長域に含まれ
る、太陽光からの光を受光せずに、検出対象波長域にあ
る火炎の光のみを受光するような火炎センサを作製した
い場合には、i型半導体層6のバンドギャップエネルギ
が4.4eV以上となるようにアルミニウム組成比x=
0.37、或いはそれ以上とすればよい。
【0049】更に、火炎センサがエンジン内部などの閉
鎖空間に設置された場合には、上述した室内光や太陽光
が存在しないため、それらを排除するような大きいバン
ドギャップエネルギを設定する必要はない。そのため、
検出対象波長域にある火炎の光の中でも特に炭化水素を
含む化合物(エンジンで燃焼される燃料)を燃焼させた
場合に観測されるOHラジカルの発光に起因する発光ピ
ーク(波長約310nm(310nm±10nm):
4.0eV)の光(波長310nm以上344nm以下
の火炎の光)を選択的に受光することのできる火炎セン
サを作製した場合には、i型半導体層6のバンドギャッ
プエネルギが3.6eV以上4.0eV以下となるよう
に、アルミニウム組成比xを0.05以上0.23以下
とすればよい。
【0050】ここで、上述のi型半導体層6(III−
V族窒化物半導体)を成長させる場合、III族元素の
供給量に対するV族元素の供給量の比(V/III)が
5000以上になるように調整することで、窒化物半導
体層中の窒素(N)空孔の数を減少させることができ
る。窒素空孔はホッピング伝導に寄与するホッピングサ
イトとなり得ることから、窒素空孔の数が減少すること
で、得られたi型半導体層6におけるキャリア濃度を約
1×1015cm-3以下という低いレベルにまで調整する
ことができ、良好な量子効率および応答速度を有する半
導体素子を得ることができる。ここで、キャリアドーパ
ントとして作用する酸素を成膜系から十分に除去してお
けば、キャリア濃度を約5×1014cm-3以下という更
に低いレベルにまで調整することができる。尚、V/I
IIの値を1000以上として成膜を行った場合、或い
はV/IIIの値を500以上として成膜を行った場合
にもキャリア濃度を同等のレベルにまで調整することが
できるが、V/IIIの値を小さくして成膜を行うこと
で窒素(N)空孔の数を十分に減少させることが出来な
かった場合には、微弱な光を検出することが要求される
火炎センサとしての使用に問題が発生することもある。
例えば、上記ホッピングサイトの存在により暗電流が増
大することや、検出対象波長域にある火炎の光を吸収し
て発生された光キャリアが不純物準位においてトラップ
されることなどから、検出されるべき光電流が明確に現
れない場合がある。
【0051】図2は、火炎センサ20、30に対して入
射される火炎の光、太陽光、室内光の各スペクトルを示
すグラフである。ここで、室内光は波長約320nm以
上の紫外域から可視域の波長範囲に広がり、太陽光は波
長約290nm以上の紫外域から可視域の波長範囲に広
がり、火炎の光は約200nm〜約340nmの波長範
囲に広がっている。従って、図示したような室内光およ
び太陽光の紫外域から可視域に広がる波長範囲の光を選
択的に遮断し、火炎センサ20、30の受光装置21、
23には検出対象波長域にある火炎の光のみが入射され
ることを確実にするフィルタ装置22を用いる必要があ
る。更に、上述したように、波長300nm〜400n
mの波長範囲の光に対して光電流を発生させるような欠
陥準位が火炎センサを構成する半導体層中に含まれるこ
とから、その波長範囲の光を更に遮断することで上記波
長範囲の光が受光装置に照射されず、ほとんど光電流を
発生させないようにさせるフィルタ装置22を用いる必
要がある。従って、少なくとも波長400nm〜700
nmの波長範囲における平均透過率が10%以下である
特性を有する第1フィルタ手段11と、少なくとも波長
300nm〜400nmの波長範囲における平均透過率
が30%以下である特性を有するようなフィルタ手段1
2という少なくとも2つのフィルタ手段11、12をフ
ィルタ装置22が備えていることが好ましい。
【0052】以下の図3〜図6を参照して、フィルタ装
置22が備える第1フィルタ手段11および第2フィル
タ手段12の例について、それぞれの透過率特性のグラ
フを用いて説明する。
【0053】図3に示すのは、HOYA株式会社から販
売されている光学フィルタ(色ガラスフィルタ)の透過
率特性であり、例として、U−330、U−340、U
−350、およびU−360と表記される光学フィルタ
の透過率特性を示す。ここで、各光学フィルタに付記さ
れた数字は、透過率が最高になる波長を表している。図
示するような波長選択性を有する光学フィルタを用いて
光を透過させることで、特定の波長範囲の光の光強度が
好適に低減される。例えば、U−330の透過率特性に
着目すると、透過ピークの短波長側の透過限界波長が約
210nmに位置し、長波長側の透過限界波長が約42
5nmに位置することから、波長210nm〜425n
mの範囲以外の光の光強度が低減される。更に、波長2
80nmにおいて透過率が30%を超えており、波長2
70nm〜波長370nmの範囲において透過率が70
%を超えており、波長280nm〜波長300nmの範
囲において透過率が80%を超えていることから、火炎
の光の波長範囲(200nm〜340nm)の光は、そ
の強度がほとんど低減されること無しに光学フィルタを
透過することができる。
【0054】しかし、透過率スペクトルの立ち上がりが
緩やかであり、且つ透過率スペクトルの裾が尾を引いて
いることから、U−330を用いた場合には波長400
nm付近の太陽光や室内光を完全に遮断することができ
ず、受光層が検出対象波長域にある火炎の光だけを受光
するように、そのバンドギャップエネルギを調整したと
しても、受光層では波長300nm〜400nmの範囲
の光を受光するような欠陥準位が存在することによって
太陽光や室内光が吸収され、光電流が発生されることと
なる。
【0055】色ガラスフィルタを用いて光の透過率を下
げるためには、含まれる不純物を増加させることや、厚
さを増大させることを行えばよい。しかし、この方法で
は、透過率の低いガラスを使用しているために、特定の
波長範囲の光のみの透過率を下げることはできず、全体
的な波長範囲において透過率の低下を招く。従って、火
炎の発光の内で紫外域に存在する発光を検出対象とする
場合、検出対象波長における透過率と、検出対象波長域
よりも長波長側にある遮光波長域における透過率との比
は2桁程度である。
【0056】図4に示すのは、HOYA株式会社から販
売されている別の光学フィルタ(色ガラスフィルタ)の
透過率特性であり、例として、UV−28、UV−3
0、UV−32、UV−34、UV−36と表記される
光学フィルタの透過率特性を示す。ここで、各光学フィ
ルタに付記された数字は、透過限界波長の1/10の数
字に相当しており、UV−28であれば透過限界波長が
280nmであることを示している。ここで、UV−2
8は燐酸塩ガラスなどを用いて作製され、UV−30、
UV−32、UV−34、UV−36は珪酸塩ガラスな
どを用いて作製される。この色ガラスフィルタは、図3
に示したフィルタと異なり、透過率限界波長よりも短波
長側の光を遮断し、長波長側の光を透過させる単純な特
性を有している。
【0057】図5および図6に示すのは、朝日分光株式
会社から販売されている光学フィルタ(多層膜フィル
タ)の透過率特性であり、例として、UV300(図
5)とUV325(図6)と表記される光学フィルタの
透過率特性を示す。多層膜フィルタとは、複数枚のガラ
スを積層することで入射光に干渉を生じさせ、特定の波
長範囲の光をその干渉によって打ち消すことで高い波長
選択性を示すように構成されたフィルタである。透過率
特性のグラフには光の干渉を利用していることを示す干
渉縞が現れており、その干渉の効果として特定の波長範
囲においては透過率を極めて小さくすることができる。
【0058】図5および図6中から明らかであるよう
に、透過率スペクトルが極めて急峻に変化し、高い波長
選択性を示すことが分かる。例えば、UV300では、
波長325nm〜370nmの波長範囲の透過率がほぼ
零であり、UV325では、波長340nm〜390n
mの波長範囲の透過率がほぼ零であり、更に立ち上がり
は極めて急峻である。干渉によって打ち消される光の波
長範囲を調整するには、積層するガラスの厚さを調整す
ればよい。
【0059】多層膜フィルタは、弗化マグネシウム、S
iO2、アルミナ等の紫外域においても透過率の高い材
料を複数枚重ねて構成される。その原理は、所定の厚さ
の材料を重ねて構成することで、それらの間で光の干渉
が生じ、特定波長の光が打ち消されるというものであ
る。従って、特定の波長範囲の光の透過率を下げるため
には、多数の材料を重ねて、何度も干渉を生じさせるこ
とで、光を何度も打ち消し合わせればよい。この場合、
上述のような透過率の高い材料を使用していることか
ら、干渉が生じない波長範囲の光の透過率は高いまま維
持され、その結果、検出対象波長における透過率と、検
出対象波長域よりも長波長側にある遮光波長域における
透過率との比が5桁程度になるまで設定することができ
る。
【0060】以上のことから、第1フィルタ手段11に
色ガラスフィルタであるU−330を用い、第2フィル
タ手段12に多層膜フィルタであるUV300を用いた
場合、第1フィルタ手段11において入射光の内の波長
約400nm以下、且つ波長約700nm以上の波長範
囲の光が遮断され、第2フィルタ手段12によって、波
長320nm〜波長380nmの波長範囲の光をほぼ完
全に遮光することができることから、第1フィルタ手段
11と第2フィルタ手段12とを組み合わせて用い、受
光層(i型半導体層6)のバンドギャップエネルギを所
定のカットオフ波長に設定しておくことで波長300n
m以下の光が効果的に遮光されるという効果が発揮され
る。その効果の具体例について以下の図7および図8を
参照して説明する。
【0061】図7には、火炎センサの代わりとなるフォ
トダイオードの受光面に(A)フィルタ手段を設けてい
ない場合、(B)第1フィルタ手段11(U−330)
のみを設けた場合、並びに(C)第1フィルタ手段11
(U−330)および第2フィルタ手段12(UV30
0)を設けた場合の波長感度(A/W)を示す。フィル
タ手段を設けていない場合(A)は、受光層として用い
られる直接ギャップ形の半導体層のバンドギャップエネ
ルギを調整したことによるカットオフ波長(バンドギャ
ップエネルギに対応する波長)を境に感度の比が見られ
るが、その感度比は、上記カットオフ波長における第1
感度と、上記カットオフ波長から50nmだけ長波長側
の波長における第2感度との間で3桁(千分の一)程度
である。従来と同様に第1フィルタ手段11のみを設け
た場合(B)、検出対象波長域以外の光を選択的に遮光
することで、検出対象波長域にある火炎の光に対する感
度(詳細には、カットオフ波長における感度)と、検出
対象波長域以外の光に対応し、上記カットオフ波長から
50nmだけ長波長側の波長における感度との比を約3
桁(千分の一)〜4桁(一万分の一)にまで向上させる
ことができる。しかし、実際には検出対象波長域以外の
光に対応する波長範囲の光強度(例えば、波長400n
m前後における太陽の光強度)は、検出対象波長域にあ
る火炎の光の光強度に比べて非常に大きいものとなるこ
とから、検出対象波長域以外の光を受光して発生される
光電流も大きくなり、微弱な火炎の光を受光して発生さ
れた光電流を区別して検知することは困難であった。
【0062】次に、第1フィルタ手段11および第2フ
ィルタ手段12を設けた場合(C)、検出対象波長域に
ある火炎の光(受光層のカットオフ波長に対応する波長
約270nm前後)における感度の値を、検出対象波長
域以外の光に対応する波長(受光層のカットオフ波長よ
りも50nmだけ長波長側の波長約320nm前後)に
おける感度の値の約4桁以上(一万倍以上)にまで向上
させることができている。更に好ましくは、検出対象波
長域にある火炎の光(波長約270nm前後)における
感度の値を、検出対象波長域以外の光に対応する波長範
囲(波長約320nm前後またはそれ以上の波長範囲)
における感度の値の約5桁以上(十万倍以上)にまで向
上させることができている。その結果、検出対象波長域
以外の光を受光して発生される光電流を極めて小さくさ
せることができ、微弱な火炎の光を受光して発生された
光電流を区別して検知することが可能となった。
【0063】更に、図8は、図7に示した3つ(A〜
C)の場合の、全ての波長範囲において積分された光電
流値を火炎の光を照射した場合と照射していない場合に
ついて示したグラフである。ここでは、室内光の存在下
で火炎の光を一定期間だけ点灯させてフォトダイオード
に照射したのだが、火炎の光を照射した際には、フィル
タ手段の有無に拘わらず光電流が発生され、火炎の光を
検知できていることが分かる。他方で、火炎の光を照射
していない場合、即ち室内光のみが火炎センサに照射さ
れている際には、フィルタ手段を備えていない場合
(A:破線で示す)では室内光に対して感度を有するた
め光電流が発生されている。同様に、第1フィルタ手段
11のみを備えている場合(B:一点破線で示す)で
は、弱いながらも室内光に対して感度を有していること
が分かる。従って、上述のAおよびBの場合には、火炎
センサとしての波長選択性が不十分であると言える。
【0064】具体的には、図中から分かるように、図7
および図8の(B)に示した従来型の受光装置(ここで
は便宜的にフォトダイオードを用いた)では、フィルタ
手段を用いて検出対象波長域にある火炎の光のみを選択
的に受光しようとしていたが、波長320nm以上の波
長範囲の光(ここでは室内光)に対して感度が極めて低
い受光装置を作製しているとは言えなかった。
【0065】他方で、第1フィルタ手段(U−330)
11および第2フィルタ手段(UV300)12を備え
ている場合(C:実線で示す)では、火炎を点灯させて
いない期間は、観測される光電流は零であり、室内光を
良好に遮断できていることが分かる。従って、火炎セン
サを構成する各半導体層に含まれる欠陥準位により発生
される光電流を非常に小さくすることができていること
で、非常に高精度な火炎センサを構成できることが分か
る。
【0066】<別実施形態> <1>以上の実施形態では、1つの火炎センサには受光
層構造が1つだけ設けられていたが、以下の別実施形態
では1つの火炎センサに、同一の受光層構造が複数(こ
こでは2つ)設けられた場合について説明する。
【0067】図9に示す火炎センサ40は、火炎からの
入射光を受光する受光装置24と、所望の波長範囲の光
を透過または遮断させることのできるフィルタ装置25
とを備えて構成される。以下の実施形態ではショットキ
ーダイオード型の半導体素子構造からなる受光装置25
を例示して説明するが、他のPIN型の半導体素子など
の半導体素子構造を用いてもよい。
【0068】上述の実施形態では、フィルタ装置とし
て、第1フィルタ手段11および第2フィルタ手段12
とを、受光装置の入射光側に入射光に対して直列に重畳
して配置していたが、以下の別実施形態では、第1フィ
ルタ手段11および第2フィルタ手段12に加えて、第
3フィルタ手段を、受光装置の入射光側に入射光に対し
て直列に部分的に重畳して配置している。その結果、第
1フィルタ手段11および第2フィルタ手段12だけを
通過した光が受光装置24に入射する区域と、第1フィ
ルタ手段11および第2フィルタ手段12に加えて第3
フィルタ手段13を通過した光が受光装置24に入射す
る区域とが形成される。
【0069】図9に示すように、受光装置24は、サフ
ァイアを用いて構成された基板1の上に第1バッファ層
2(低温で堆積させたAlN)と、結晶改善層3(Ga
N)と、第2バッファ層4(低温で堆積させたAlN)
とを順次堆積させることで作製された下地層構造の上
に、n型半導体層5(n−AlxGa1-xN(x=0.
4))と、アンドープのi型半導体層6A、6B(i−
AlxGa1-xN(x=0.4))とが順次堆積されて受
光層構造が形成され、n型半導体層5上の一部分に電極
8(Ti/Al/Au)がオーミック接触となるように
設けられ、i型半導体層6A、6B上の一部分に電極9
A、9B(Ni/Au)と、更に電極9A、9B上の一
部分に電極10A、10B(Au)とが設けられて構成
されている。
【0070】図示するように、受光層構造は複数個設け
られており、第1フィルタ手段11および第2フィルタ
手段12だけを通過することにより、合成透過率スペク
トルがYとされた光が入射する受光層構造(参照番号に
Bを付加する)と、第1フィルタ手段11および第2フ
ィルタ手段12に加えて第3フィルタ手段13を通過す
ることにより、合成透過率スペクトルがXとされた光が
入射する受光層構造(参照番号にAを付加する)とがあ
る。また、基板1の材料としてはサファイアの他にシリ
コン(Si)を使用することもできる。
【0071】上述の実施形態と同様に、第1フィルタ手
段11としては図3に示したU−330を使用し、第2
フィルタ手段12としては図5に示したUV325を使
用した。また、第3フィルタ手段13としては図4に示
したUV−28を使用した。合成光透過率スペクトルX
は、合成光透過率スペクトルYの光に対して第3フィル
タ手段13を適用することで形成される。第3フィルタ
手段13(UV−28)は、火炎の光を含む波長280
nm〜波長290nm以下の光を遮断することができる
ことから、合成光透過率スペクトルXには検出対象波長
域以外の光が含まれ、合成光透過率スペクトルには検出
対象波長域にある火炎の光と、検出対象波長域以外の光
とが含まれていると言える。
【0072】以上のように、上記合成光透過率スペクト
ルXに対応して設けられた受光層構造には検出対象波長
域にある火炎の光と検出対象波長域以外の光とが入射さ
れ、合成光透過率スペクトルYに対応して設けられた受
光層構造には検出対象波長域以外の光が入射されること
から、受光層6Aにおいて発生された光電流IAから、
受光層6Bにおいて発生された光電流IBを減算するこ
とで、検出対象波長域にある火炎の光のみに起因して発
生された光電流I(火炎)を導出することもできる。但
し、第3フィルタ手段13(UV−28)によって、火
炎の光を含む波長280nm〜290nm以下の光だけ
でなく、検出対象波長域以外の光についても10%程度
は遮断されてしまうため、光電流IBに所定の係数をか
けて補正を行った値を光電流IAから減算することで、
以下の数1に示すように、求める検出対象波長域にある
火炎の光による光電流I(火炎)を導出することができ
る。下記の数1において係数fは、上述したように第3
フィルタ手段13によって検出対象波長域以外の光の1
0%が遮断される場合にはf=1.1である。
【0073】
【数1】I(火炎)=IA−IB×f
【0074】更に、受光層6Aおよび受光層6Bにおい
て発生される光電流には、温度変化に対応して発生する
熱電子放出に起因する電流成分が含まれているのだが、
上述したように光電流の差をとることで熱電子放出に起
因する電流成分が相殺され、温度補償を行うことができ
るという効果も発揮される。従って、火炎のオン・オフ
の判定精度が高く、高精度な温度補償が可能な火炎セン
サを容易に構成することができる。
【0075】<2>以上のように複数のフィルタ手段を
備えて構成されたフィルタ装置を用いて検出対象波長域
にある火炎の光を選択的に取り出して受光装置側に入射
させることを行ったが、受光装置を構成する受光層であ
るi型半導体層6の表面で光が反射されることがあり、
それを防止するような反射防止機能を受光装置に備えさ
せることについて図10を参照して説明する。
【0076】図10(a)は、反射防止機能を備えた受
光装置の構成図であり、図10(b)は図10(a)に
示した反射防止機能部分の説明図であり、図10(c)
は反射防止機能を備えていない場合の比較例の説明図で
ある。
【0077】まず、図10(a)に示す火炎センサ50
は、火炎からの入射光を受光する受光装置26(ショッ
トキーダイオード型)と、フィルタ装置22とを備えて
構成される。受光装置26は、サファイアを用いて構成
された基板1の上に第1バッファ層2(低温で堆積させ
たAlN)と、結晶改善層3(GaN)と、第2バッフ
ァ層4(低温で堆積させたAlN)とを順次堆積させる
ことで作製された下地層構造の上に、n型半導体層5
(n−AlxGa1-xN(x=0.4))と、アンドープ
のi型半導体層6(i−AlxGa1-xN(x=0.
4))とが順次堆積されて受光層構造が形成され、n型
半導体層5上の一部分に電極8(Ti/Al/Au)が
オーミック接触となるように設けられ、同様にi型半導
体層6上には電極9(Ni/Au)がオーミック接触と
なるように設けられ、更に電極9上の一部分に電極10
(Au)が設けられて構成されている。そして、電極9
上の電極10が設けられていない部分に、光透過層14
が設けられている。ここで、電極9は極めて薄く形成さ
れており、その結果、照射された検出対象波長域にある
火炎の光が電極9を透過して受光層であるi型半導体層
6に良好に入射される。また、図1(a)と同様にフィ
ルタ装置22は、第1フィルタ手段11、第2フィルタ
手段12を備えてなる。また、基板1の材料としてはサ
ファイアの他にシリコン(Si)を使用することもでき
る。
【0078】ここで使用した光透過層11はAlxGa
1-xN(0≦x≦1)であり、原子の組成を異ならせる
ことで屈折率を調整することができる。他にも、弗化マ
グネシウム(MgF2)、弗化カルシウム(CaF2)、
二酸化珪素(SiO2)等を用いることができる。尚、
AlxGa1-xNを用いた場合には、各半導体層と同じ成
膜プロセスにおいて作製できるという利点がある。
【0079】図10(b)は、図10(a)に示した受
光装置26中の半導体構造に備えられた反射防止機能部
分を説明する図である。図中では、空気中の屈折率をn
0、光透過層14の屈折率をn1(n1>n0)、i型半導
体層6の屈折率をn2(n2>n1)としている。尚、電
極9は極めて薄く形成されていることから、ここでは考
慮しない。更に、比較例として図10(c)には、反射
防止機能が備わっていない場合の反射について説明す
る。
【0080】まず、図10(a)および図10(b)に
示すように、受光層6と光透過層14が設けられ、上記
光透過層14が空気中に露出している場合と、光透過層
14が設けられておらず、受光層6が空気中に露出して
いる場合の2例について、受光層6に垂直に入射する入
射光に対する反射率R1およびR2を以下の数1および数
2に示す。尚、n0、n1、n2はそれぞれ、空気中、光
透過層中、受光層中の屈折率である。ここで、光透過層
14の膜厚d14は、入射光の四分の一波長を自身の屈折
率で割った値:d14=λ(入射光)/4n1に設定され
る。尚、入射光の波長とは、透過させたい光の波長であ
り、例えば、260nm〜280nmの波長である。
【0081】
【数2】 R1=(n0・n2−n12/(n0・n2+n12
【0082】
【数3】R2=(n0−n22/(n0+n22
【0083】ここで、受光層におけるAlとGaとの組
成比xが0.35で、光透過層14におけるAlとGa
との組成比yが1.00、つまりAlNである場合、各
屈折率はn0=1.0、n0=2.22、n0=2.7と
なる。更に、光透過層14の層厚は、入射光の四分の一
波長を光透過層14の屈折率で除算した値、即ち0.4
nmとする。尚、受光層6と光透過層14の屈折率は概
算値である。以上のことから、光透過層14を設けた場
合の反射率R1と、設けなかった場合の反射率R2とは、
それぞれR1=8.5%、R2=21.1%となる。従っ
て、光透過層14を設けた場合は、設けなかった場合に
比べて光導電作用に寄与する光エネルギは約16%増加
することになり、実効的に火炎センサ50の光電変換効
率を約16%増大させることができたことになる。
【0084】<3>基板上に半導体層を堆積させる場
合、基板の格子定数と半導体層の格子定数とが異なるた
めに、半導体層の結晶状態が乱れ、格子欠陥が発生する
ことがある。この結晶状態の乱れは、更に上方に堆積さ
れる半導体層の結晶状態をも悪化させるため、基板と受
光層との間に他の半導体層が設けられていても、受光層
の結晶状態には乱れが生じ、好ましくない波長域の光吸
収に寄与する準位を受光層中に形成することになる。そ
のような問題点に鑑みて上述の実施形態ではダブルバッ
ファを含む下地層構造上に受光層構造を形成した。
【0085】以上の実施形態においては、受光装置の下
地層構造が、その結晶状態を改善する目的で設けられた
複数のバッファ層を含んでいるが、その効果を図11を
参照して説明する。図11には下地層構造上に受光層構
造が形成された半導体素子の受光感度の波長依存性を示
すグラフを示すが、図中の(a)で示す実線は上述の実
施形態において説明したような複数のバッファ層を備え
た場合(ダブルバッファ)、(b)および(c)の破線
は比較例として1つのバッファ層を備えた場合(シング
ルバッファ)の測定結果である。詳細には、(a)の測
定結果はダブルバッファの下地層構造の上にPIN型
(電極/p−GaN/i−AlGaN/n−AlGa
N)の受光層構造を形成した場合の結果であり、(b)
の測定結果はシングルバッファの下地層構造の上にショ
ットキー型(電極/n−AlGaN)の受光層構造を形
成した場合の結果であり、(c)の測定結果はシングル
バッファの下地層構造の上にショットキー型(電極/n
−AlGaN)の受光層構造を形成した場合の結果であ
る。
【0086】下地層構造が複数のバッファ層を備えて構
成された場合(a)の受光感度は、吸収端波長付近で急
峻な変化を示しているが、これは、複数のバッファ層を
設けることでその上方の半導体層の結晶状態が良好なも
のとなり、その結果、受光層の結晶状態を良好なものと
することができた(欠陥準位が含まれないようにした)
効果であると言える。他方で、下地層構造が1つのバッ
ファ層を備えて構成された場合((b)および(c))
の受光感度は、吸収端波長付近で緩やかな変化を示して
おり、これは、下地層構造における結晶状態の改善が不
十分であるために、受光層の結晶状態の改善も不十分と
なり、その結果、受光層に好ましくない波長域の光の吸
収に寄与する欠陥準位が発生したことによる影響である
と言える。
【0087】以上のように、上述の実施形態では複数の
バッファ層を備えた下地層構造の上方に受光層が形成さ
れたことから、吸収端波長の前後で受光感度が急激に変
化する受光装置を得ることができた。その結果、上述の
ように、受光装置に対して複数のフィルタ手段を適用す
ることで、吸収端波長前後での感度差を更に大きくする
ことができる(受光する波長域を限定して、微弱な火炎
の光を選択的に検出することができる)火炎センサを得
ることができた。他方で、1つのバッファ層を備えて構
成された下地層構造の上方に受光層を形成した場合に
は、フィルタ手段を適用したとしても、吸収端波長前後
での感度曲線が緩やかなままとなり、受光する波長域の
限定を十分に行うことができず、微弱な火炎の光のみを
選択的に検出することが困難となる。
【0088】<4>上述の実施形態では、受光装置とし
てPIN型およびショットキーダイオード型の素子を例
に挙げて説明したが、本願発明は受光装置(半導体素
子)の構造に限定されるものではなく、アバランシェフ
ォトダイオードや、他の様々な半導体素子を使用した様
々な受光装置に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)および(b)は、火炎センサの断面図の
例である。
【図2】火炎の光、太陽光、および室内光のスペクトル
を示すグラフである。
【図3】色ガラスフィルタの透過率特性を示すグラフで
ある。
【図4】色ガラスフィルタの透過率特性を示すグラフで
ある。
【図5】多層膜フィルタの透過率特性を示すグラフであ
る。
【図6】多層膜フィルタの透過率特性を示すグラフであ
る。
【図7】フィルタ手段を設けた場合と設けていない場合
における火炎センサの感度分布の測定結果を示すグラフ
である。
【図8】フィルタ手段を設けた場合と設けていない場合
における光電流の測定結果を示すグラフである。
【図9】火炎センサの断面図の例である。
【図10】(a)は、反射防止機能を備えた受光装置の
構成図であり、(b)は(a)に示した反射防止機能を
備えた場合の説明図であり、(c)は反射防止機能を備
えていない場合の比較例の説明図である。
【図11】受光装置の感度の波長依存性を示すグラフで
ある。
【符号の説明】
1 基板 2 第1バッファ層 3 結晶改善層 4 第2バッファ層 5 n型半導体層 6 i型半導体層(受光層) 7 p型半導体層 8 電極 9 電極 10 電極 11 第1フィルタ手段 12 第2フィルタ手段 13 第3フィルタ手段 14 光透過層 20 火炎センサ 21 受光装置 22 フィルタ装置 23 受光装置 24 受光装置 25 フィルタ装置 26 受光装置 30 火炎センサ 40 火炎センサ 50 火炎センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 赤崎 勇 愛知県名古屋市天白区塩釜口1−501 名 城大学内 (72)発明者 上山 智 愛知県名古屋市天白区塩釜口1−501 名 城大学内 Fターム(参考) 2G065 AB05 BA09 BB26 BB27 CA08 DA06 DA20 4M118 CA06 GC01 GC07 GC13 GC20 5F049 MA04 MA05 MB07 NB07 QA20 SS01 TA13 WA05 5F088 AA03 AA04 AB07 BB06 DA20 FA05 GA02 JA13 LA05

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数のフィルタ手段を入射光の進行方向
    に対して直列に重畳して配置することで構成されたフィ
    ルタ装置と、前記フィルタ装置を通過した光を受光する
    受光装置とを備えてなる火炎センサであって、 前記複数のフィルタ手段による合成光透過率スペクトル
    において、検出対象波長域における第1透過率が、前記
    検出対象波長域よりも長波長側にある遮光波長域におけ
    る第2透過率よりも大きく、 前記検出対象波長域にある所定の第1波長における第1
    感度の値が、前記遮光波長域にあり、前記第1波長より
    50nm長波長の第2波長における第2感度の値の1万
    倍以上である火炎センサ。
  2. 【請求項2】 複数のフィルタ手段を入射光の進行方向
    に対して直列に、部分的に重畳して配置することで構成
    されたフィルタ装置と、前記フィルタ装置を通過した光
    を受光する受光装置とを備えてなる火炎センサであっ
    て、 前記受光装置が、下地層構造と、前記下地層構造上に設
    けられた、それぞれが受光層を含む複数の受光層構造と
    を備えてなり、 前記複数のフィルタ手段が部分的に重畳されることで、
    前記受光装置側に透過される光の合成光透過率スペクト
    ルが部分的に複数形成され、前記複数の合成光透過率ス
    ペクトルに対応して前記受光層構造のそれぞれが配置さ
    れ、 前記複数の合成光透過率スペクトルの内の第1合成光透
    過率スペクトルにおいて、検出対象波長域における第1
    透過率が、前記検出対象波長域よりも長波長側にある遮
    光波長域における第2透過率よりも大きく、 前記第1合成光透過率スペクトルに対応して配置される
    受光層構造を含む火炎センサの前記検出対象波長域にあ
    る所定の第1波長における第1感度の値が、前記遮光波
    長域にあり、前記第1波長より50nm長波長の第2波
    長における第2感度の値の1万倍以上であり、 前記複数の合成光透過率スペクトルの内の第2合成光透
    過率スペクトルは、前記第1合成光透過率スペクトルの
    光に対して、前記検出対象波長域の光を除去可能なフィ
    ルタ手段を更に適用することで形成される火炎センサ。
  3. 【請求項3】 前記第1感度の値が、前記第2感度の値
    の十万倍以上である請求項1または請求項2に記載の火
    炎センサ。
  4. 【請求項4】 前記複数のフィルタ手段の内の1つが、
    少なくとも波長400nm〜700nmの波長範囲にお
    ける平均透過率が10%以下である特性を有し、前記複
    数のフィルタ手段の内の他の1つが、少なくとも波長3
    00nm〜400nmの波長範囲における平均透過率が
    30%以下である特性を有する請求項1から請求項3の
    何れかに記載の火炎センサ。
  5. 【請求項5】 前記複数のフィルタ手段の少なくとも1
    つが色ガラスフィルタであり、他の少なくとも1つが多
    層膜フィルタである請求項1から請求項4の何れかに記
    載の火炎センサ。
  6. 【請求項6】 前記受光装置が、下地層構造と、前記下
    地層構造上に設けられた、受光層を含む受光層構造とを
    備えてなる半導体素子であり、 前記下地層構造が備える複数の半導体層が、前記下地層
    構造の結晶状態を改善する複数のバッファ層を備えて構
    成される請求項1から請求項5の何れかに記載の火炎セ
    ンサ。
  7. 【請求項7】 前記受光層が直接ギャップ形の半導体で
    ある請求項6に記載の火炎センサ。
  8. 【請求項8】 前記受光層のバンドギャップエネルギが
    3.6eV以上である請求項6または請求項7に記載の
    火炎センサ。
  9. 【請求項9】 前記受光層のバンドギャップエネルギが
    4.0eV以下である請求項8に記載の火炎センサ。
  10. 【請求項10】 前記受光層のバンドギャップエネルギ
    が4.1eV以上である請求項8に記載の火炎センサ。
  11. 【請求項11】 前記受光層のバンドギャップエネルギ
    が4.4eV以上である請求項10に記載の火炎セン
    サ。
  12. 【請求項12】 前記受光層がAlxGa1-xN(0≦x
    ≦1)を含む請求項6から請求項11の何れかに記載の
    火炎センサ。
  13. 【請求項13】 前記受光層構造において、前記受光層
    における入射光の反射率を低減させる反射防止手段が前
    記受光層上の入射光側に設けられている請求項6から請
    求項12の何れかに記載の火炎センサ。
  14. 【請求項14】 前記反射防止手段が、前記受光層より
    も屈折率の小さい光透過層である請求項13に記載の火
    炎センサ。
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