JP2003053471A - 車両用マグネシウム合金製ホイール及びその製造方法 - Google Patents

車両用マグネシウム合金製ホイール及びその製造方法

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JP2003053471A JP2001246032A JP2001246032A JP2003053471A JP 2003053471 A JP2003053471 A JP 2003053471A JP 2001246032 A JP2001246032 A JP 2001246032A JP 2001246032 A JP2001246032 A JP 2001246032A JP 2003053471 A JP2003053471 A JP 2003053471A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ディスク部とリム部の各々について、それぞ
れ好適な塑性加工特性および強度特性を備えたMg合金
製車両用ホイール及びその製造方法を提供し、また、そ
の製造に鋳造鍛造法を適用した場合でも最終加工品(塑
性加工品)に熱処理によるブリスタが発生することを確
実に防止できるようにする。 【解決手段】 タイヤを保持するリム部R1と車体部材
に支持されるディスク部D2とを備え、Mg合金素材に
塑性加工を施して形成される車両用Mg合金製ホイール
W1であって、上記リム部のAl含有量が上記ディスク
部のAl含有量よりも少なく設定されていることを特徴
とし、具体的には、ディスク部のAl含有量が6〜8質
量%に設定され、リム部のAl含有量は2質量%以上で
且つ上記ディスク部のAl含有量未満に設定されている
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、タイヤを保持す
るリム部と車体部材に支持されるディスク部とを備え、
マグネシウム合金素材に塑性加工を施して形成される車
両用のマグネシウム合金製ホイール及びその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車等の車両用のホイールとし
て、例えば特開平7−224344号公報に示されるよ
うに、マグネシウム(以下、適宜、その元素記号Mgで
表示する。)合金を素材に用いたものは公知である。あ
る程度以上の高強度を要する部材である車両用ホイール
をMg合金を素材として製造する場合、鋳造法や射出成
形法などの造形または成形プロセスのみを用いたので
は、得られる強度が低いため部材の肉厚を大きく設定す
る必要があり、Mg合金の軽量性を十分に活かすことは
できない。一方、通常の鍛造法を適用した場合には、M
g合金製の鋳造ビレットから最終形状の鍛造品を得るま
でに複数ステップの鍛造工程を経る必要があり、また、
材料歩留まりも低くなるので、非常にコスト高になる。
【0003】そこで、鋳造法や射出成形法に比してより
高強度のMg合金部材を効率良く製造できる方法とし
て、鍛造加工に先立って鋳造法によりその鍛造加工に適
した素材(鍛造用素材)を成形し、この素材を所定の鍛
造型にセットして鍛造加工を行うようにした、所謂、鋳
造鍛造法が知られている。この鋳造鍛造法によれば、鋳
造(素材)段階で鍛造加工による完成品(鍛造部材)の
形状に比較的近似した半製品形状に成形することができ
る。これにより、鍛造工程を仕上鍛造の1工程のみに簡
略化することが可能になり、また、複雑な形状の部材で
も鍛造できるようになる。更に、鍛造性の余り良くない
材料でも支障無く鍛造加工を行えるように素材の組織を
調整することも可能になる。
【0004】尚、この鋳造鍛造法における鍛造用素材の
成形を、鋳造法の代わりに射出成形法で行うこともでき
る。この射出成形法は、鋳造法に比して短いサイクルタ
イムで効率良く成形品(Mg合金材)を製造することが
可能で、また、例えばダイキャスト法などの鋳造法に比
べた場合、作業環境面では比較的クリーン(清浄)で安
全性もより高く、また、品質面においても、引け巣など
の欠陥が少なく、かつ高精度で均質な軽金属成形品を得
ることができるプロセスとして知られている。
【0005】また、この射出成形法において、Mg合金
等の軽金属溶湯を(基本的にはその融点未満の)半溶融
状態にして射出ノズルから成形キャビティ内に射出充填
するようにした、所謂、半溶融射出成形法が知られてい
る。このように半溶融状態の金属溶湯を用いた場合、溶
湯温度(以下、完全に溶融した状態ではなく半溶融状態
のものであっても「溶湯」と称する。)が低いので、所
謂「バリ」が出にくくなり高速および/または高圧での
射出にも適しており、生産性の向上を図る上で有利とな
る。更に、金属溶湯を半溶融状態として成形キャビティ
に充填することにより、完全に溶解した液相部分中に未
溶解の固相部分が混在した溶湯がそのまま充填されるの
で、層流に近い状態で充填されるようになり、ガスの巻
き込みが比較的少なくて済み、比較的均質な組織が得ら
れる。これにより、得られた部材全体としての機械的特
性を高めることが可能になる。
【0006】ところで、通常、車両用ホイールは、タイ
ヤを保持するリム部と車体部材に支持されるディスク部
とを主要部として構成されており、かかる車両用ホイー
ルとしては、その製作工程により、ホイール全体を一体
物として形成する所謂1ピースホイールと、複数の部分
(例えば、上記リム部とディスク部)に分割して各部を
それぞれ別工程で製造しておき、これら部分を接合して
1つのホイールとして一体化させて完成品を得る複数ピ
ースの(換言すれば分割構造の)ホイールとに大別され
るが、上述のMg合金を素材に用いた車両用ホイールの
場合には、従来、所謂1ピースホイールとして製造され
ている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、1ピー
スホイールの場合、ディスク部の形状サイズだけでな
く、リム部の形状サイズも一定で変更することはできな
い。従って、例えば、タイヤ幅のみが異なり他の部分の
形状サイズが同一である車輪に適用する場合でも、リム
幅が異なるために、ホイール製造用の金型等は全く別物
として用意する必要があり、車種変更に対応するには多
大の費用を要することになる。このことは、リム部のデ
ィスク部に対するオフセット量のみが異なる場合でも同
様である。
【0008】また、Mg合金製ホイールを1ピースホイ
ールとした場合、リム部とディスク部とは、当然、同材
質のMg合金で形成されることになる。しかしながら、
このリム部とディスク部とでは、使用上求められる強度
特性および製造上求められる塑性加工特性がそれぞれ異
なっている。すなわち、ディスク部の場合には、車体部
材(通常、車体のサスペンション装置など)に連結支持
され、一定以上の負荷能力が求められる高強度部分であ
るので、その使用上の観点から高強度が求められる。一
方、その製造上の観点からは、塑性加工量は比較的少な
くて済み、特に上述の鋳造鍛造法を前提とした場合に
は、余り高い塑性加工性が求められることはない。これ
に対して、リム部の場合には、その外周部にタイヤを保
持するだけであるので、使用上の観点から余り高い強度
特性を求められることはないが、場合によっては塑性加
工として加工度がかなり高い所謂スピニング加工が適用
されるなど、塑性加工量はディスク部に比べてかなり多
くなるので、製造上の観点から高い塑性加工性が求めら
れることになる。
【0009】このため、1ピースホイールとして製造さ
れていた従来では、最も塑性加工量が多いリム部に合せ
て、その塑性加工性を確保できるように材料選定が行わ
れている。Mg合金の場合、一般に、塑性加工性と強度
特性とは二律背反する関係にあるので、このように選定
された材料では、ディスク部にとって強度特性が十分で
はなく、それだけ肉厚を大きく設定する必要があり、ホ
イール全体としては十分な軽量化を達成することは困難
であった。尚、Mg合金の鋳造ビレットを鍛造後リム部
にスピニング加工を施した従来の1ピースホイールにつ
いて、ディスク部およびリム部の金属組織の一例を示す
顕微鏡写真(倍率:約380倍)を図13及び図14に
示す。この例は、後述する表1の合金Eを材料に用いた
もので、加工度の高いリム部の方がより緻密な組織にな
っていることが分かる。
【0010】また、Mg合金製ホイールの製造に前述の
鋳造鍛造法を適用することを考えた場合、この鋳造鍛造
法における鋳造若しくは射出成形工程(鍛造用素材成形
工程)において、溶湯充填時などにエアを含むガスが巻
き込まれる場合があり、かかるガスが巻き込まれて内在
した状態で凝固すると鋳造若しくは射出成形品内部にガ
ス欠陥として残存することになる。特に、この鍛造用素
材成形工程に例えば射出成形等の高速・高圧充填が可能
な成形プロセスを用いた場合には、上記のようなガス欠
陥がより生じ易く、問題が一層顕著なものとなる。周知
のように、Мg合金等の軽金属製の鍛造等による塑性加
工製品には、通常、その機械的性質を改善してより強度
を高めるための熱処理として、溶体化処理の後に時効硬
化処理を施す所謂T6処理が行われるが、鋳造鍛造法で
得られた塑性加工製品について、鋳造若しくは射出成形
段階で(つまり、鍛造用素材の段階で)上記のようなガ
ス欠陥を内包したものに鍛造等の塑性加工を施した場合
には、その後のT6処理において、比較的高温で加熱保
持される溶体化処理段階で、内部に存在しているガスの
膨張による膨れ(所謂、ブリスタ)が生じ、このブリス
タが塑性加工による最終加工品にそのまま不具合として
表れるので、その機械的特性が損なわれT6処理による
強度向上の効果が十分に得られず、更に、見映えも損な
われるのでこれを除去するための加工が必要とされる、
などの問題があった。
【0011】この発明は、上記技術的課題に鑑みてなさ
れたもので、ディスク部とリム部の各々について、それ
ぞれ好適な塑性加工特性および強度特性を備えたMg合
金製車両用ホイール及びその製造方法を提供すること、
更には、その製造に鋳造鍛造法を適用した場合でも最終
加工品(塑性加工品)に熱処理によるブリスタが発生す
ることを確実に防止できるようにすることを、基本的な
目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、上記の
技術的課題に対処するために鋭意研究開発を重ねる中
で、Mg合金の場合、その強度および塑性加工性とアル
ミニウム(以下、適宜、その元素記号Alで表示す
る。)含有量との間に相関性があり、その強度(例え
ば、引張強度および耐力)はAl含有量と正の相関関係
があり、一方、塑性加工性(例えば、伸び及び限界据え
込み率)はAl含有量と負の相関関係があることを見出
した。
【0013】そこで、本願請求項1の発明に係るMg合
金製車両用ホイールは、タイヤを保持するリム部と車体
部材に支持されるディスク部とを備え、Mg合金素材に
塑性加工を施して形成される車両用のMg合金製ホイー
ルであって、上記リム部のAl含有量が上記ディスク部
のAl含有量よりも少なく設定されていることを特徴と
したものである。
【0014】また、本願請求項2の発明は、上記請求項
1の発明において、上記ディスク部のAl含有量が6〜
8質量%に設定され、上記リム部のAl含有量は2質量
%以上で且つ上記ディスク部のAl含有量未満に設定さ
れていることを特徴としたものである。
【0015】ここに、上記ディスク部のAl含有量を6
〜8質量%としたのは、Al含有量が6質量%未満で
は、Т6処理等の熱処理を施しても所要の機械的性質を
得ることが一般に難しいためであり、一方、Al含有量
が8質量%を越えると、一般に塑性加工時に割れが発生
し易くなるからである。また、上記リム部のAl含有量
の下限値を2質量%としたのは、Al含有量が2質量%
を下回ると、所要の耐食性を得ることが一般に難しいか
らである。
【0016】更に、本願請求項3の発明は、上記請求項
1又は請求項2の発明において、上記ディスク部と上記
リム部とはそれぞれ別体に形成された後に一体化される
ことを特徴としたものである。
【0017】また更に、本願請求項4の発明に係る車両
用Mg合金製ホイールの製造方法は、タイヤを保持する
リム部と車体部材に支持されるディスク部とを備え、M
g合金素材に塑性加工を施して形成される車両用のMg
合金製ホイールの製造方法であって、第1Mg合金素材
に塑性加工を施して上記ディスク部を形成する工程と、
上記第1Mg合金素材よりもAl含有量が少ない第2M
g合金素材に塑性加工を施して上記リム部を形成する工
程と、上記ディスク部と上記リム部とを一体化する工程
と、を有することを特徴としたものである。
【0018】また更に、本願請求項5の発明は、上記請
求項4の発明において、少なくとも上記ディスク部の塑
性加工は鍛造であることを特徴としたものである。
【0019】また更に、本願請求項6の発明は、上記請
求項4又は請求項5の発明において、上記第1Mg合金
素材のAl含有量が6〜8質量%に設定され、上記第2
Mg合金素材のAl含有量は2質量%以上で且つ上記第
1Mg合金素材のAl含有量未満に設定されていること
を特徴としたものである。
【0020】ここに、上記ディスク部の素材である第1
Mg合金素材Al含有量を6〜8質量%とし、また、上
記リム部の素材である第2Mg合金素材のAl含有量の
下限値を2質量%としたのは、上述の請求項2の発明に
おいてディスク部およびリム部のAl含有量を特定した
のと同様の理由による。
【0021】また更に、本願請求項7の発明は、上記請
求項6の発明において、少なくとも上記ディスク部に対
して、塑性加工後にТ6熱処理を施すことを特徴とした
ものである。
【0022】また更に、本願請求項8の発明は、上記請
求項4又は請求項5の発明において、上記ディスク部お
よびリム部の少なくともいずれか一方は、塑性加工前に
所定の成形型を用いて半溶融射出成形されていることを
特徴としたものである。
【0023】また更に、本願請求項9の発明は、上記請
求項4の発明において、少なくとも上記ディスク部に対
して、塑性加工よりも前に溶体化処理を施すことを特徴
としたものである。
【0024】また更に、本願請求項10の発明は、上記
請求項9の発明において、上記溶体化処理は、熱処理温
度範囲が350℃以上で450℃以下、熱処理時間が1
0時間以上で20時間以下の処理条件で行われることを
特徴としたものである。
【0025】ここに、上記溶体化処理の熱処理温度につ
いて、その下限値を350℃としたのは、この温度以上
で溶体化処理を行うことにより、確実に、鍛造用素材に
前以ってブリスタを発生させることができるからであ
り、また、その上限値を450℃としたのは、溶体化処
理温度がこの値を越えると材料組織内で結晶粒の成長現
象が生じ、その後の塑性加工によって得られる製品の機
械的特性が低下するからである。一方、上記溶体化処理
の熱処理時間について、その下限値を10時間としたの
は、溶体化処理による材料組織均質化の効果を確実に得
るためであり、また、その上限値を20時間としたの
は、この時間を越えて処理を続行しても効果が飽和し不
経済だからである。
【0026】また更に、本願請求項11の発明は、上記
請求項9又は請求項10の発明において、少なくとも上
記ディスク部に対して、塑性加工後に、温度範囲が25
0℃以上で400℃以下、保持時間が20分以上で10
時間以下の条件で熱処理を施すことを特徴としたもので
ある。
【0027】ここに、塑性加工後に行う熱処理の処理温
度について、その下限値を250℃としたのは、処理温
度がこの値を下回ると十分な延性の向上効果が得られな
いからであり、また、その上限値を400℃としたの
は、処理温度がこの値を越えると耐力が大きく低下する
からである。一方、上記熱処理の処理時間について、そ
の下限値を20分としたのは、処理時間がこの値を下回
ると十分な延性の向上効果が得られないからであり、ま
た、その上限値を10時間としたのは、処理時間がこの
値を越えると、熱処理を行わない場合よりも延性が低下
する場合があるからである。この熱処理の処理時間とし
ては、5時間以下が好ましく、1時間とするのが最も好
ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、M
g合金製ホイールの素材の成形に半溶融射出成形法を採
用し、少なくともディスク部のMg合金素材の塑性加工
に鍛造法を適用した場合を例にとって、添付図面を参照
しながら詳細に説明する。まず、本実施の形態に係るM
g合金素材の成形について説明する。図1は、本実施の
形態に係るMg合金素材の射出成形を行う射出成形装置
の概略構成を示す部分断面説明図である。
【0029】この図に示すように、上記射出成形装置1
は、所謂スクリュー式のもので、先端部にノズル3を有
し外周に配置されたヒータ4で加熱されるシリンダ2
と、該シリンダ2及びそれに連接された成形機本体内5
で回転可能に支持されたスクリュー6と、例えばモータ
機構および減速機構等を備えスクリュー6を回転駆動す
る回転駆動装置7と、原料が投入され貯えられるホッパ
8と、ホッパ8内の原料を計量して成形機本体5内に送
給するフィーダ9とを備えている。
【0030】また、上記成形機本体5内には、具体的に
は図示しなかったが、スクリュー6をノズル3側に前進
させる高速射出機構が設けられている。この高速射出機
構は、所定のタイミングでスクリュー6を前進させると
ともに、該スクリュー6が予め設定された距離だけ後退
するとそれを検知してスクリュー6の回転を停止させ、
同時にその後退動作も停止させるように構成されてい
る。上記射出成形装置1は、ノズル3の内部通路と成形
キャビティ11に繋がるランナ部12とが連通するよう
に位置設定された上で、シリンダ2の先端側を金型10
に結合して用いられる。
【0031】上記ホッパ8に投入されてその内部に貯え
られた原料は、フィーダ9で所定量が計量されて成形機
本体5内に供給され、スクリュー6の回転によって加熱
状態のシリンダ2内に送給される。送給された原料は、
このシリンダ2の内部でスクリュー6の回転により十分
に攪拌・混錬されながら所定温度に加熱される。本実施
の形態では、かかるプロセスによって原料の融点未満の
半溶融状態のMg合金溶湯を得るようにした。
【0032】尚、本明細書において、軽合金(Mg合
金)溶湯について「半溶融状態」とは、基本的には、
「固体状態の原料(固相)と溶融して液体状態となった
原料(液相)とが共存している状態」を言い、通常、原
料をその融点未満に加熱することによって得られる状態
である。但し、Mg合金溶湯の温度が実質的にその融点
もしくは融点直上で、固相率が実質的に0(零)%に等
しい場合も、この「半溶融状態」に含まれるものとす
る。Mg合金溶湯自体がこのような実質的に固相率0%
の場合でも、例えば半溶融射出成形法において現実の射
出成形工程を考えれば、射出ノズルから型内への1回
(1ショット)の射出が終って次回(次ショット)の射
出が行われるまでの間に、射出ノズルの溶湯供給経路内
の金属溶湯が冷やされてノズル先端側に凝固部分(所
謂、コールドプラグ)や固相率の高い高固相部分が生じ
るので、実際に成形キャビティ内に射出されるMg合金
溶湯には、不可避的に固相部分が含まれることになる。
【0033】また、本明細書において、「固相」とは
「軽金属(Mg合金)溶湯が半溶融状態である場合にお
いて溶融されずに固体状態を維持している部分」を言
い、また、「液相」とは「完全に溶融されて液体状態と
なっている部分」を言う。上記「固相」は、得られた軽
金属製部材の凝固組織を観察することにより、「半溶融
の金属溶湯状態で溶融されずに固体状態を維持していた
部分」として、「半溶融の金属溶湯状態で完全に溶融さ
れて液体状態となっていた」液相部分とは、容易に識別
することができる。得られた部材について「固相」とい
う場合は、「半溶融の軽金属溶湯状態で溶融されずに固
体状態を維持していた(固相であった)部分」を言う。
また、本明細書において、「固相率」とは、「半溶融状
態の金属溶湯において溶湯全体(固相+液相)に対する
固相の割合」を言い、射出後の成形品の凝固組織を観察
することにより、観察領域全体に対する「固相」であっ
た部分の割合(面積比率)として、数値的に求めること
ができる。
【0034】このようにして得られた半溶融状態のMg
合金溶湯がスクリュー6の前方に押し出されるに連れ
て、その圧力で該スクリュー6が後退して行く。尚、他
の手法として、スクリューを所望の速度で強制的に後退
させるようにしても良い。スクリュー6が予め設定され
た距離だけ後退すると、成形機本体5内の上記高速射出
機構(不図示)がそれを検知してスクリュー6の回転を
停止させ、同時にその後退動作も停止させる。尚、原料
の計量を、スクリュー6の後退距離を設定することによ
って行うようにしても良い。
【0035】そして、回転が停止し後退位置にあるスク
リュー6を、高速射出機構(不図示)によって前進させ
所定の力で押し出すことより、ノズル3から金型10内
に半溶融状態のMg合金属溶湯が射出される。つまり、
ノズル3からランナ部12を介して成形キャビティ11
内にMg合金溶湯が射出充填されるようになっている。
原料のマグネシウム(Мg)合金は、例えば切り粉状の
ペレットの形態で射出成形装置1のホッパ8に供給され
る。上記ホッパ8から成形機本体5内に通じる通路に
は、より好ましくは不活性ガス(例えばアルゴンガス)
が充填され、原料(Mg合金ペレット)の酸化反応の防
止が図られている。
【0036】上記金型10の成形キャビティ11は、よ
り好ましくは、この射出成形よりも後に行われる鍛造加
工に用いられる鍛造型(不図示)の成形キャビティと近
似した形状に形成されており、後工程で得られるべき製
品である鍛造部材の最終形状に近似した半製品形状の射
出成形品(鍛造用素材)を得ることができ、塑性加工度
が過度に高くなることを抑制できる。これにより、鍛造
工程を仕上鍛造の1工程のみに簡略化することが可能に
なり、また、複雑な形状のMg合金素材でも鍛造できる
ようになる。更に、鍛造性の余り良くない材料でも支障
無く鍛造加工を行えるのである。
【0037】この場合において、特に、Mg合金素材の
成形に半溶融状態のMg合金溶湯を用いるようにしたこ
とにより、完全溶解状態の溶湯を用いるプロセスによる
場合に比べて、引け巣やガス欠陥のより少ない高品質の
Mg合金素材を得ることができる。また、溶湯温度が低
いので、所謂「バリ」が出にくく高速および/または高
圧のプロセスにも適しており、生産性の向上を図る上で
も有利になる。また、射出成形法を採用したことによ
り、特に鋳造プロセスによる場合に比べて、短いサイク
ルタイムで効率良く鍛造用素材を製造することができる
上、作業環境面でも比較的クリーン(清浄)で安全性も
より高く、しかも、品質面においても、引け巣などの欠
陥が少なく、かつ高精度で均質なMg合金素材を得るこ
とが可能になる。
【0038】本発明の車両用ホイールの素材に用いるM
g合金素材について、主要な添加元素であるアルミニウ
ム(Al)の含有量が塑性加工特性および塑性加工後の
機械的性質に及ぼす影響を調べる試験を行った。 <試験1>まず、Al含有量が塑性加工特性に及ぼす影
響を調べる試験を行った。具体的には、Al含有量と限
界据え込み率の関係を調べた。ここに、限界据え込み率
とは、図2に模式的に示すように、直径D1×長さL1
の円柱状の試験片M1を用意し、この試験片M1に対し
その長手方向に圧縮荷重を加えて試験片M1を圧縮変形
(変形後の長さL2)させた場合に、当該試験片にクラ
ック(割れ)が発生する限界の据え込み率を言う。
【0039】上記図2の例で、初期長さL1の試験片M
1を長さL2まで圧縮変形させたときに微小クラックが
発生したとすると、この場合の限界据え込み率は、次式
で算出される。 限界据え込み率=(L1−L2)/L1×100[%]… 尚、本実施の形態では、上記試験片M1の初期(図2参
照)の基本寸法を、D=15[mm],L1=22.5
[mm]とした。
【0040】試験は、300℃,350℃及び400℃
の3種類の鍛造温度について、上述の半溶融射出成形に
より得られたMg合金製供試材のAl含有量を約4質量
%〜9質量%の範囲で変化させて行った。また、本試験
は、全ての供試材について一律の据え込み速度(約0.
23mm/s)で行った。試験結果を図3のグラフに示
す。
【0041】図3の試験結果から良く分かるように、鍛
造温度の如何に拘わらず、Al含有量が減少するに連れ
て限界据え込み率は高くなっており、Al含有量はMg
合金素材の塑性加工性に非常に大きな影響を及ぼし、両
者の間には負の相関性があることが判った。
【0042】<試験2>次に、Al含有量が塑性加工後
のMg合金部材の機械的性質に及ぼす影響を調べる試験
を行った。具体的には、Al含有量と引張強度,耐力
(0.2%)及び伸びの関係を調べた。本試験に用いた
Mg合金材料の組成を表1に示す。尚、表1において、
各数値は質量%を示しており、また、Al(アルミニウ
ム),Zn(亜鉛),Mn(マンガン),Cu(銅),
Ni(ニッケル),Fe(鉄)以外の残部は、不可避的
に混入する不純物成分を除いて全てMg(マグネシウ
ム)である。
【0043】
【表1】
【0044】上記表1に組成が示された各Mg合金を材
料に用いて、図1の射出成形機により半溶融射出成形を
行った。このとき、得られる射出成形材の固相率が、例
えば5%となるように溶湯の温度制御を行った。尚、こ
の固相率は、例えば、成形した射出成形材表面を画像解
析することによって確認した。そして、得られた各射出
成形材に塑性加工(鍛造)を施して供試材を作成した。
すなわち、上記半溶融射出成形で得られた成形材から、
図4(a)に示すように、幅10mm,長さ35mm,
厚さ21mmの主寸法を有する直方体ブロック状のMg
合金素材を切り出し、これを幅方向に拘束した状態で、
図4(b)に示すように、厚さが21mmから半分の1
0.5mmとなるまで熱間鍛造を施した。この場合、鍛
造加工率は50%である。そして、この鍛造材に、溶体
化処理の後に時効硬化処理を施す所謂T6処理を施して
供試材を得た。
【0045】このТ6処理は、周知のように、Mg合金
等の軽金属材料を鍛造法により成形した場合に、その機
械的性質(強度および靭性など)を向上させるために施
すものであり、比較的高温に所定時間保持して材料組織
の均一化を図るための溶体化処理の後に、比較的低温で
所定時間保持して硬度を向上させるための人工時効処理
を施す二段階熱処理である。尚、Mg合金材の場合に
は、このТ6処理による有効な機械的性質向上効果を得
るには、一般に、6質量%以上のAlを含有する必要が
あることが知られている。
【0046】このようにして得られた供試材から所要の
試験片を切り出し、引張強度,耐力(0.2%)及び伸
び等の機械的性質調べる試験を行った。試験結果を図5
のグラフに示す。この試験結果から良く分かるように、
Al含有量はMg合金製鍛造材の機械的性質に非常に大
きな影響を及ぼし、引張強度および0.2%耐力につい
てはAl含有量が増加するに連れて高くなり、これら機
械的特性とAl含有量の間には正の相関性がある。一
方、伸びについてはAl含有量が増加するに連れて低く
なっており、両者の間には負の相関性があることが判っ
た。
【0047】本実施の形態では、タイヤを保持するリム
部と車体部材に連結支持されるディスク部とでは、使用
上求められる強度特性および製造上求められる塑性加工
特性がそれぞれ異なることに鑑み、車両用ホイールを分
割構造とし、ディスク部とリム部とをそれぞれ別体に形
成した後に一体化するようにした。そして、リム部のM
g合金素材のAl含有量がディスク部のAl含有量より
も少なくなるように材料を選定した。
【0048】従って、ディスク部について所要の強度特
性を確保しつつ、該ディスク部よりも塑性加工による高
い加工度が求められるリム部について所要の塑性加工性
を確保することができ、また、この場合において、ディ
スク部とリム部とはそれぞれ別体に形成された後に一体
化されるので、容易かつ確実に、ディスク部とリム部の
それぞれについて、最適の組成を有するMg合金素材を
用いて最適の塑性加工を施すことが可能になる。また、
例えば、タイヤ幅のみが異なり他の部分の形状サイズが
同一である車輪に適用する場合や、リム部のディスク部
に対するオフセット量のみが異なる場合でも、1ピース
ホイールの場合のようにホイール全体の金型等を全く別
物として用意する必要はなく、リム部用の金型のみを変
更するだけで済む。従って、車種変更などにも比較的容
易に対応することができる。
【0049】具体的には、ディスク部を形成するための
第1のMg合金材料のAl含有量を6〜8質量%とし、
リム部を形成するための第2のMg合金材料のAl含有
量を2質量%以上で且つ上記ディスク部のAl含有量未
満とした。このように材料を選定したことにより、この
ディスク部について、Al含有量の上限値が8質量%に
制限されているので塑性加工時の割れ発生を有効に防止
することができ、且つ、Al含有量の下限値が6質量%
に制限されているのでТ6処理等の熱処理を施すことに
より機械的性質の向上を図ることができる。また、リム
部について、Al含有量の下限値が2質量%に制限され
ているので所要の耐食性を確保することができ、且つ、
Al含有量の上限値がディスク部のAl含有量未満に制
限されているので、ディスク部に比して良好な塑性加工
性を得ることができるのである。
【0050】図6(c)は、2分割構造(2ピースタイ
プ)の車両用ホイールW1を模式的に示したものであ
る。このホイールW1は、図6(a)に示すディスク部
D1と図6(b)に示すリム部R1とを組み立て、両者
を例えば溶接等によって接合して得られたものである。
上記ディスク部D1は、上記第1のMg合金材料を用い
て半溶融射出成形法にて、最終形状にできるだけ近似し
た略円板状に予備成形した後これを塑性加工し、この塑
性加工材に所要の熱処理(Т6処理)を施し、所要の機
械加工を行って得られる。本実施の形態では、少なくと
も上記ディスク部D1については、塑性加工として鍛造
を施すようにした。従って、高い強度が求められるディ
スク部D1について、比較的容易かつ確実に、所要の強
度を得ることができるのである。
【0051】また、上記リム部R1は、上記第2のMg
合金材料を用いてディスク部D1と同様の工程で製作す
ることも可能であるが、本実施の形態では、第2の合金
材料でなる薄肉円筒素材を用い、この素材に例えば所謂
ロールフォーミング加工やプレス加工またはこれらに加
えて所要部分にスピニング加工を施して製作するように
した。Al含有量が低く抑えられているので、このよう
な加工度の高い塑性加工でも支障無く行うことができ
る。
【0052】図7(d)は、3分割構造(3ピースタイ
プ)の車両用ホイールW2を模式的に示したものであ
る。このホイールW2は、図7(a)に示すディスク部
D2と図7(b)及び(c)に示す第1リム部R2a及
び第2リム部R2bとを組み立て、これら3つの部品を
例えば溶接等によって接合して得られたものである。上
記ディスク部D2は、図6(a)で示した2ピースタイ
プのものと同様の工程で製作することができ、上記第1
のMg合金材料を用いて半溶融射出成形法にて、最終形
状にできるだけ近似した略円板状に予備成形した後これ
を塑性加工し、この塑性加工材に所要の熱処理(Т6処
理)を施し、所要の機械加工を行って得られる。
【0053】また、上記第1リム部R2a及び第2リム
部R2bは共に、上記第2のMg合金材料を用いてディ
スク部D2と同様の工程で製作することも可能である
が、本実施の形態では、第2リム部R2bについては、
図6(b)で示した2ピースタイプの場合のリム部R1
と同様の工程で製作することができ、第2の合金材料で
なる薄肉円筒素材を用い、この素材に例えば所謂ロール
フォーミング加工やプレス加工またはこれらに加えて所
要部分にスピニング加工を施して製作するようにした。
一方、上記第1リム部R2aについては、第2の合金材
料でなる略円板状素材にプレス加工を施し、これに所要
のスピニング加工を施して製作するようにした。この第
1リム部R2a及び第2リム部R2bを製作する場合に
おいても、Al含有量が低く抑えられているので、この
ような加工度の高い塑性加工でも支障無く行うことがで
きる。
【0054】尚、以上のようにしてホイールを製造する
場合において、鋳造鍛造法にて成形される複雑形状の部
品、例えばディスク部については、鋳造もしくは半溶融
射出成形等の射出成形にて、最終形状にできるだけ近似
した予備成形体を製作し、これに鍛造加工を加えて最終
形状が得られるのであるが、このとき、特に強度を要す
る部分については塑性加工度の高い強加工を施すことが
好ましく、それ以外の部分については塑性加工度が低い
方が成形容易である。しかしながら、塑性加工度が低す
ぎて実質的にゼロ(0:零)に等しい場合には、鋳造の
地肌が最終製品に残り外観上好ましくない。従って、鋳
造鍛造法にて製作する場合でも、外観性が求められる部
分もしくは領域については、鍛造加工において、その塑
性歪量が少なくとも10%程度以上となるように設定
し、鍛造材としての表面性状を確保するようにすること
が好ましい。
【0055】また、ホイールの組立を所謂ピアスボルト
等の締結部材を用いて行う場合、一般にボルト材として
使用されるスチール材は、Fe成分を主成分として含有
している関係上、Mg合金材との間で電食を生じ易い。
従って、このような場合には、例えば、クロム(Cr)
或いは亜鉛(Zn)でメッキされたボルトを使用し、ま
た、Mg合金材とボルト頭部裏面との間に例えばアルミ
ニウム(Al)製などの座金を介装させて、Fe材とM
g材との直接的な接触を防止することが好ましい。
【0056】尚、上述の実施の形態では、鋳造鍛造法に
て製作される部品(例えばディスク部W1,W2)の場
合、その機械的性質を改善してより強度を高めるための
熱処理として、溶体化処理の後に時効硬化処理を施す所
謂T6処理を鍛造後に行うようにしていたが、この場合
には、鋳造若しくは射出成形段階で(つまり、鍛造用素
材の段階で)ガス欠陥を内包していた場合、この素材に
鍛造等の塑性加工を施すと、その後のT6処理におい
て、比較的高温で加熱保持される溶体化処理段階で、内
部に存在しているガスの膨張による膨れ(所謂、ブリス
タ)が生じ、このブリスタが塑性加工による最終加工品
にそのまま不具合として表れることになる。このため、
その機械的特性が損なわれT6処理による強度向上の効
果が十分に得られず、更に、見映えも損なわれるのでこ
れを除去するための加工が必要とされることになる。
【0057】かかる問題に対しては、鍛造加工等の塑性
加工よりも前に(つまり、素材段階で)溶体化処理を施
すことによって対処することができる。これにより、当
該Mg合金素材の材料組織の均質化を促進することがで
き、後工程の塑性加工における塑性加工性の向上を図る
とともに、得られるべき塑性加工品の機械的特性を向上
させることができる。また、特に、溶体化処理が塑性加
工よりも前に行われるので、当該Mg合金素材にその内
部ガスの膨張に起因するブリスタを前以って(塑性加工
を行うよりも前に)生じさせることができる。そして、
後工程でこのMg合金素材に対し塑性加工を行うことに
より、予め素材表面及び/又はその近傍に生じさせられ
ていたブリスタは潰される。つまり、ブリスタとして素
材(表面及び/又はその近傍)に内在していた空洞部分
が塑性加工時の圧縮力によって潰され、この部分が健全
な素地となる。すなわち、素材段階でブリスタを発生さ
せておき、このブリスタを塑性加工で潰すことができ、
後工程で得られる塑性加工品にブリスタが発生すること
を確実に防止できるのである。
【0058】上記のような塑性加工(鍛造)前に行う溶
体化処理の好適な条件を調べる試験を行った。 <試験3>まず、溶体化処理における熱処理温度とブリ
スタ発生状況との関係を調べる試験3を行った。この試
験は、上述の半溶融射出成形によって得られた鍛造用素
材に種々の熱処理温度(200,250,300,35
0及び400℃)で溶体化処理を施し、それぞれについ
てブリスタの発生の有無を調べたものである。尚、この
ブリスタ発生試験は、原料として後述する表2の合金H
を用いて実施した。
【0059】この試験の結果、溶体化処理の熱処理温度
が300℃以下の範囲(200,250,300℃)で
はブリスタの発生は見られず、300℃を越えると(3
50,400℃)ブリスタが発生することが分かった。
従って、鍛造用素材成形後、前以って(鍛造加工に先立
って)この素材にブリスタを発生させるには少なくとも
300℃以上、より確実にブリスタを発生させるには、
好ましくは350℃以上の熱処理温度で溶体化処理を行
えば良い。
【0060】<試験4>次に、上記溶体化処理における
熱処理時間が最終製品である鍛造部材の硬さに及ぼす影
響を調べる試験4を行った。試験結果を図8に示す。こ
の試験4では、後述する表2の合金Hを材料に用いて半
溶融射出成形を行い、これで得られた鍛造用素材につい
て、従来どおり鍛造加工を行ってからT6処理(溶体化
処理+時効硬化処理)を施した比較例(図8のグラフに
おけるJ1曲線およびJ2曲線)と、本発明方法に従っ
て、鍛造用素材に対してまず溶体化処理を施した後に鍛
造加工を行い、その後に時効硬化処理を施した本発明実
施例(図8のグラフにおけるK1曲線およびK2曲線)
について、溶体化処理時間を変えて表面及び/又はその
近傍の硬さ(ビッカース硬さ:Hv)を測定した。
【0061】この試験4における溶体化処理の熱処理温
度は、以下の2通りとした。 ・図8のグラフにおけるJ1曲線およびK1曲線:熱処
理温度400℃ ・図8のグラフにおけるJ2曲線およびK2曲線:熱処
理温度450℃ また、時効硬化処理は、175℃の温度で15時間保持
した後に空冷する条件で行った。
【0062】図8のグラフより、熱処理温度が450℃
の場合、比較例であるJ2曲線では、溶体化処理時間の
長さに対応して鍛造製品(鍛造部材)の硬さが低下して
おり、材料組織内で結晶粒の成長現象が生じていること
が分かる。従って、この場合には、鍛造加工によって得
られる製品の機械的特性が低下する。これに対して、本
発明実施例であるK2曲線では、熱処理温度が450℃
の場合でも、400℃の場合(K1曲線)と同じく、鍛
造製品における硬さの低下は見られず、高温で溶体化処
理を行っても、材料組織内での結晶粒の成長現象が生じ
ないことが分かる。従って、この場合には、熱処理温度
を450℃以下の範囲で高めて溶体化処理に要する時間
の短縮を図ることが可能になる。
【0063】また、図8のグラフより、上記溶体化処理
の熱処理時間が1時間未満であれば、いずれの曲線につ
いても硬さの低下が不十分かつ不安定であり、溶体化処
理による材料組織均質化の効果を有効に得るためには、
溶体化処理の熱処理時間は少なくとも1時間以上を要
し、また、より確実な効果を得るためには、より好まし
くは、熱処理時間を10時間以上とすれば良いことが分
かった。尚、20時間を越えて熱処理を行っても効果は
飽和し不経済である。
【0064】このように、塑性加工(鍛造)よりも前に
行う上記溶体化処理条件について、熱処理温度を350
℃以上で450℃以下としたことにより、材料組織内で
の結晶粒の成長現象に起因する鍛造部材の機械的特性の
低下を有効に防止した上で、塑性加工用素材に対して確
実に前以ってブリスタを発生させることができる。ま
た、熱処理時間を10時間以上で20時間以下としたの
で、溶体化処理による材料組織均質化の効果を確実に得
ることができ、しかも、効果が飽和して不経済となるこ
とも無い。
【0065】鍛造等の塑性加工が行われるべきMg合金
材に以上のような溶体化処理を前熱処理として施した後
に、Т6処理の残りの熱処理である時効硬化処理が後熱
処理として施されるのであるが、最終的に得られるMg
合金鍛造部材としてより好ましい機械的性質を得るため
には、鍛造後に施される後熱処理は、上述のような一般
のТ6処理における時効硬化処理よりも、高温かつ短時
間で行うことがより好ましい。
【0066】このような塑性加工(鍛造)後に行う後熱
処理の好適な条件を調べる試験を行った。 <試験5>まず、塑性加工(鍛造)後熱処理における熱
処理温度と、熱処理後のMg合金部材の機械的性質(引
張強度,0.2%耐力,破断伸び)との関係調べる試験
5を行った。本試験に用いたMg合金材料の組成を表2
に示す。尚、表2において、各数値は質量%を示してお
り、また、Al(アルミニウム),Zn(亜鉛),Mn
(マンガン),Si(珪素),Cu(銅),Ni(ニッ
ケル),Fe(鉄)以外の残部は、不可避的に混入する
不純物成分を除いて全てMg(マグネシウム)である。
【0067】
【表2】
【0068】上記表2に組成が示された合金F及び合金
Gの各Mg合金を材料に用いて、図1の射出成形機によ
り半溶融射出成形を行い板状の射出成形材を得た。この
とき、得られる射出成形材の固相率が、例えば5%(合
金F)及び10%(合金G)となるように溶湯の温度制
御を行った。そして、合金F及び合金Gの射出成形材か
ら前述の図4(a)に示す直方体ブロック状のMg合金
素材を数個ずつ切り出し、これらについて、合金Fのも
のについては温度が410℃で保持時間が16時間の、
また、合金Gのものについては温度が400℃で保持時
間が10時間の、塑性加工(鍛造)前熱処理をそれぞれ
施した。
【0069】上記のような鍛造前熱処理を施した各Mg
合金素材について、幅方向に拘束した状態で、図4
(b)に示すように、厚さが21mmから半分の10.
5mmとなるまで鍛造を施した。この場合、鍛造加工率
は50%である。そして、この鍛造材に、170℃,2
50℃,300℃,350℃及び400℃の各温度で保
持時間が4時間の塑性加工(鍛造)後熱処理を施した。
尚、比較参考のために、かかる鍛造後熱処理を施さない
鍛造材も残しておいた。
【0070】このようにして得られた供試材から所要の
試験片を切り出し、引張強度,耐力(0.2%)及び伸
び等の機械的性質調べる試験を行った。図9及び図10
は、上記合金F及び合金Gにおける鍛造後熱処理温度と
鍛造材の機械的性質との関係をそれぞれ示したものであ
る。これらの図に示すように、合金F及び合金Gの何れ
についても、熱処理温度が高くなるに連れて、0.2%
耐力は低下傾向を、引張強度は緩やかな向上傾向を、ま
た、破断伸びについては向上傾向を、それぞれ示すこと
が分かる。また、破断伸びについては、一般のТ6処理
の時効硬化処理温度(170〜230℃)と同等の処理
温度で熱処理した場合には、熱処理を施さない場合より
も伸びが低下するが、処理温度を250℃以上とすれ
ば、0.2%耐力を大幅に低下させることなく、しか
も、破断伸びも大幅に向上させることができることが分
かった。
【0071】また、上記合金F及び合金Gの各Mg合金
素材について、300℃,350℃及び400℃で鍛造
後熱処理を施したものの引張試験後の表面を顕微鏡観察
を行った。更に、比較参考のために、鍛造材に通常のТ
6処理(合金F:溶体化処理が410℃で16時間,時
効硬化処理が170℃で16時間/合金G:溶体化処理
が400℃で10時間,時効硬化処理が175℃で16
時間)を施したものについても顕微鏡観察を行った。
【0072】その結果、一般的なТ6処理を施したもの
については、結晶粒の粗大化が確認され、特に、合金F
では、化合物(Mg17Al12)の偏析が生じている
ものもあった。これに対して、一般的なТ6処理よりも
高温で短時間の鍛造後熱処理を施したものについては、
処理温度が300℃では明確な結晶粒界が認められず化
合物の析出は均質であった。処理温度が350℃では細
かい結晶粒界が認められ化合物の析出は均質であった。
また、処理温度が400℃では、結晶粒の粗大化が認め
られ化合物の析出は均質であった。
【0073】以上の試験結果および表面の顕微鏡観察結
果より、塑性加工(鍛造)後熱処理を施した後の材料組
織が延性に関与しているものと考えられる。すなわち、
再結晶していないような組織では、変形し難いために引
張強度は高いものの延性には乏しいものとなり、そし
て、再結晶による結晶粒の変形により延性が付与される
こととなる。しかしながら、結晶粒の大きさが大きくな
り過ぎると、結晶粒の変形が困難となり、脆化して引張
強度および延性が低下するようになるのではないかと考
えられる。従って、高強度のMg合金材を得るために
は、結晶粒が確認できないような材料組織となる処理温
度を選択し、延性の高いMg合金材を得るには、細かな
結晶粒が確認できるような材料組織となる処理温度を選
択して塑性加工(鍛造)後熱処理を施すようにすれば良
い。
【0074】<試験6>次に、塑性加工(鍛造)後熱処
理における熱処理時間と、熱処理後のMg合金部材の機
械的性質(引張強度,0.2%耐力,破断伸び)との関
係調べる試験6を行った。試験5の場合と同様に、上記
表2にその組成を示したMg合金材料を用い、試験5と
同じく合金F及び合金Gの各Mg合金を材料に用いて同
様の射出成形材を製作し、各射出成形材から同様の直方
体ブロック状のMg合金素材を数個ずつ切り出し、これ
らについて、試験5と同じく、合金Fのものについては
温度が410℃で保持時間が16時間の、また、合金G
のものについては温度が400℃で保持時間が10時間
の、塑性加工(鍛造)前熱処理をそれぞれ施した。
【0075】そして、上記のような鍛造前熱処理を施し
た各Mg合金素材について、試験5の場合と同様の鍛造
を施し、この鍛造材に、合金Fについては300℃で、
また、合金Gについては350℃で、それぞれ1時間,
4時間,10時間及び15時間の塑性加工(鍛造)後熱
処理を施した。このようにして得られた供試材から所要
の試験片を切り出し、引張強度,耐力(0.2%)及び
伸び等の機械的性質調べる試験を行った。
【0076】図11及び図12は、上記合金F及び合金
Gにおける鍛造後熱処理の処理時間と鍛造材の機械的性
質との関係をそれぞれ示したものである。尚、処理時間
ゼロ(0:零)のデータは、上記試験5において、鍛造
後熱処理を施さなかった場合についてのデータである。
これらの図に示すように、合金F及び合金Gの何れの場
合についても、0.2%耐力は処理時間が1時間までは
比較的大きく低下するが、処理時間がそれよりも長くな
ると緩やかな低下傾向に変わることが分かる。また、引
張強度は処理時間が1時間までは僅かに向上するが、処
理時間がそれよりも長くなると緩やかな低下傾向を示す
ことが分かる。
【0077】一方、破断伸びは、合金Fの場合、処理時
間が1時間までは大幅な向上を示すが、処理時間がそれ
よりも長くなっても略一定の水準を示すのに対して、合
金Gの場合、処理時間が1時間の時点でピークを示し、
処理時間がそれよりも長くなると低下傾向を示すことが
分かる。以上より、合金F及び合金Gの何れについて
も、熱処理開始から最初の1時間で大幅な破断伸びの向
上効果を得ることができ、また、合金Gでは、処理時間
を10時間以下(好ましくは、5時間以下)とすること
により、破断伸びが大幅に改善されたMg合金材を得る
ことができると言える。
【0078】以上のように、塑性加工(鍛造)前に溶体
化処理を施し、塑性加工(鍛造)後に、温度範囲が25
0℃以上で400℃以下、保持時間が20分以上で10
時間以下の条件で熱処理を施すようにしたことにより、
通常のТ6処理における時効硬化処理よりも高温かつ短
時間の熱処理が施されるので、引張強度および耐力を確
保しつつ延性を有効に向上させることができるのであ
る。
【0079】尚、ここで、処理温度を250〜400℃
としたのは、処理温度が250℃よりも低いと十分な延
性向上効果が得られないからであり、400℃よりも高
いと耐力が大きく低下するからである。また、処理時間
を20分〜10時間としたのは、処理時間が20分より
も短いと十分な延性向上効果が得られないからであり、
10時間よりも長いと熱処理しない場合よりも延性が低
下するからである。従って、処理時間としては、5時間
以上とするのが望ましく、1時間とするのが最も良い。
【0080】以上の実施の形態は、鍛造用素材の成形に
半溶融射出成形法を採用した場合についてのものであっ
たが、本発明は、かかる場合に限らず、半溶融鋳造法あ
るいは完全溶解状態のMg合金溶湯を用いる射出成形法
や鋳造法など、他の種々のプロセスを車両用ホイールの
塑性加工用素材の成形に採用した場合についても有効に
適用することができる。このように、本発明は、以上の
実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱し
ない範囲において、種々の変更あるいは設計上の改良等
が可能であることは言うまでもない。
【0081】
【発明の効果】本願請求項1の発明に係る車両用Mg合
金製ホイールによれば、リム部のAl含有量がディスク
部のAl含有量よりも少なく設定されているので、ディ
スク部について所要の強度特性を確保しつつ、該ディス
ク部よりも塑性加工による高い加工度が求められるリム
部について所要の塑性加工性を確保することができるよ
うになる。
【0082】また、本願請求項2の発明によれば、基本
的には上記請求項1の発明と同様の効果を奏することが
できる。特に、ディスク部のAl含有量が6〜8質量%
に設定されているので、このディスク部について、塑性
加工時の割れ発生を有効に防止することができ、且つ、
Т6処理等の熱処理を施すことにより機械的性質の向上
を図ることができる。また、上記リム部のAl含有量は
2質量%以上で且つ上記ディスク部のAl含有量未満に
設定されているので、このリム部について、所要の耐食
性を確保することができ、且つ、ディスク部に比して良
好な塑性加工性を得ることができる。
【0083】更に、本願請求項3の発明によれば、基本
的には上記請求項1又は請求項2の発明と同様の効果を
奏することができる。特に、ディスク部とリム部とはそ
れぞれ別体に形成された後に一体化されるので、容易か
つ確実に、ディスク部とリム部のそれぞれについて、最
適の組成を有するMg合金素材を用いて最適の塑性加工
を施すことができる。また、例えば、タイヤ幅のみが異
なり他の部分の形状サイズが同一である車輪に適用する
場合や、リム部のディスク部に対するオフセット量のみ
が異なる場合でも、1ピースホイールの場合のようにホ
イール全体の金型等を全く別物として用意する必要はな
く、リム部用の金型のみを変更するだけで済む。従っ
て、車種変更などにも比較的容易に対応することができ
る。
【0084】また更に、本願請求項4の発明に係る車両
用Mg合金製ホイールの製造方法によれば、リム部の素
材である第2Mg合金素材のAl含有量がディスク部の
素材である第1Mg合金素材のAl含有量よりも少なく
設定されているので、ディスク部について所要の強度特
性を確保しつつ、該ディスク部よりも塑性加工による高
い加工度が求められるリム部について所要の塑性加工性
を確保することができるようになる。特に、ディスク部
とリム部とはそれぞれ別工程で形成された後に一体化さ
れるので、容易かつ確実に、ディスク部とリム部のそれ
ぞれについて、最適の組成を有するMg合金素材を用い
て最適の塑性加工を施すことができる。また、例えば、
タイヤ幅のみが異なり他の部分の形状サイズが同一であ
る車輪に適用する場合や、リム部のディスク部に対する
オフセット量のみが異なる場合でも、1ピースホイール
の場合のようにホイール全体の金型等を全く別物として
用意する必要はなく、リム部用の金型のみを変更するだ
けで済む。従って、車種変更などにも比較的容易に対応
することができる。
【0085】また更に、本願請求項5の発明によれば、
基本的には上記請求項4の発明と同様の効果を奏するこ
とができる。特に、少なくとも上記ディスク部の塑性加
工は鍛造であるので、高い強度が求められるディスク部
について、比較的容易かつ確実に、所要の強度を得るこ
とができる。
【0086】また更に、本願請求項6の発明によれば、
基本的には上記請求項4又は請求項5の発明と同様の効
果を奏することができる。特に、上記ディスク部の素材
である第1Mg合金素材のAl含有量が6〜8質量%に
設定されているので、ディスク部について、塑性加工時
の割れ発生を有効に防止することができ、且つ、Т6処
理等の熱処理を施すことにより機械的性質の向上を図る
ことができる。また、上記リム部の素材である第2Mg
合金素材のAl含有量は2質量%以上で且つ上記第1M
g合金素材のAl含有量未満に設定されているので、こ
のリム部について、所要の耐食性を確保することがで
き、且つ、ディスク部に比して良好な塑性加工性を得る
ことができる。
【0087】また更に、本願請求項7の発明によれば、
基本的には上記請求項6の発明と同様の効果を奏するこ
とができる。特に、少なくとも上記ディスク部に対して
塑性加工後にТ6熱処理を施すので、高強度が求められ
るディスク部について、強度および靭性の向上を図るこ
とができる。
【0088】また更に、本願請求項8の発明によれば、
基本的には上記請求項4又は請求項5の発明と同様の効
果を奏することができる。特に、上記ディスク部および
リム部の少なくともいずれか一方は、塑性加工前に所定
の成形型を用いて半溶融射出成形されているので、後工
程の塑性加工による最終形状に近似したMg合金素材を
得ることができ、塑性加工度が過度に高くなることを抑
制できる。この場合において、特に、Mg合金素材の成
形に半溶融状態のMg合金溶湯を用いるようにしたこと
により、完全溶解状態の溶湯を用いるプロセスによる場
合に比べて、引け巣やガス欠陥のより少ない高品質のM
g合金素材を得ることができる。また、溶湯温度が低い
ので、所謂「バリ」が出にくく高速および/または高圧
のプロセスにも適しており、生産性の向上を図る上でも
有利になる。また、射出成形法を採用したことにより、
特に鋳造プロセスによる場合に比べて、短いサイクルタ
イムで効率良く鍛造用素材を製造することができる上、
作業環境面でも比較的クリーン(清浄)で安全性もより
高く、しかも、品質面においても、引け巣などの欠陥が
少なく、かつ高精度で均質なMg合金素材を得ることが
可能になる。
【0089】また更に、本願請求項9の発明によれば、
基本的には上記請求項4の発明と同様の効果を奏するこ
とができる。特に、少なくとも上記ディスク部につい
て、塑性加工よりも前に(つまり、素材段階で)溶体化
処理を施すようにしたことにより、当該Mg合金素材の
材料組織の均質化を促進することができ、後工程の塑性
加工における塑性加工性の向上を図るとともに、得られ
るべき塑性加工品の機械的特性を向上させることができ
る。また、この場合において、上記溶体化処理は塑性加
工よりも前に行われるので、当該Mg合金素材にその内
部ガスの膨張に起因するブリスタを前以って(塑性加工
を行うよりも前に)生じさせることができる。そして、
後工程でこのMg合金素材に対し塑性加工を行うことに
より、予め素材表面及び/又はその近傍に生じさせられ
ていたブリスタは潰される。つまり、ブリスタとして素
材(表面及び/又はその近傍)に内在していた空洞部分
が塑性加工時の圧縮力によって潰され、この部分が健全
な素地となる。すなわち、素材段階でブリスタを発生さ
せておき、このブリスタを塑性加工で潰すことができ、
後工程で得られる塑性加工品にブリスタが発生すること
を確実に防止できる。
【0090】また更に、本願請求項10の発明によれ
ば、基本的には上記請求項9の発明と同様の効果を奏す
ることができる。特に、上記溶体化処理条件について、
熱処理温度を350℃以上で450℃以下としたことに
より、材料組織内での結晶粒の成長現象に起因する鍛造
部材の機械的特性の低下を有効に防止した上で、塑性加
工用素材に対して確実に前以ってブリスタを発生させる
ことができる。また、熱処理時間を10時間以上で20
時間以下としたので、溶体化処理による材料組織均質化
の効果を確実に得ることができ、しかも、効果が飽和し
て不経済となることも無い。
【0091】また更に、本願請求項11の発明によれ
ば、基本的には上記請求項9又は請求項10の発明と同
様の効果を奏することができる。特に、少なくとも上記
ディスク部に対して、塑性加工後に、温度範囲が250
℃以上で400℃以下、保持時間が20分以上で10時
間以下の条件で熱処理を施すようにしたことにより、通
常のТ6処理における時効硬化処理よりも高温かつ短時
間の熱処理が施されるので、引張強度および耐力を確保
しつつ延性を有効に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る射出成形装置の概
略構成を示す部分断面説明図である。
【図2】 試験1のMg合金素材の限界据え込み率試験
の初期状態を示す説明図である。
【図3】 試験1の試験結果を現すものでAl含有量が
限界据え込み率に及ぼす影響を示すグラフである。
【図4】 試験2の供試材の製造工程を示す説明図であ
る。
【図5】 試験2の試験結果を現すものでAl含有量が
機械的性質に及ぼす影響を示すグラフである。
【図6】 本実施の形態に係る2ピースタイプの車両用
ホイールの組立工程を示す説明図である。
【図7】 本実施の形態に係る3ピースタイプの車両用
ホイールの組立工程を示す説明図である。
【図8】 試験3の試験結果を現すもので鍛造前に施す
溶体化処理の処理時間とMg鍛造材の硬さとの関係を示
すグラフである。
【図9】 試験4の試験結果を現すもので合金Fについ
て鍛造後熱処理の温度とMg鍛造材の機械的性質との関
係を示すグラフである。
【図10】 試験4の試験結果を現すもので合金Gにつ
いて鍛造後熱処理の温度とMg鍛造材の機械的性質との
関係を示すグラフである。
【図11】 試験5の試験結果を現すもので合金Fにつ
いて鍛造後熱処理の処理時間とMg鍛造材の機械的性質
との関係を示すグラフである。
【図12】 試験5の試験結果を現すもので合金Gにつ
いて鍛造後熱処理の処理時間とMg鍛造材の機械的性質
との関係を示すグラフである。
【図13】 従来の1ピースホイールのディスク部の金
属組織の一例を示す顕微鏡写真である。
【図14】 従来の1ピースホイールのリム部の金属組
織の一例を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】 1…射出成形装置 D1,D2…ディスク部 R1…リム部 R2a…第1リム部 R2b…第2リム部 W1,W2…車両用ホイール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B60B 3/02 B60B 3/02 3/06 3/06 C22C 23/02 C22C 23/02 C22F 1/06 C22F 1/06 // C22F 1/00 673 1/00 673 683 683 691 691B 691C

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タイヤを保持するリム部と車体部材に支
    持されるディスク部とを備え、マグネシウム合金素材に
    塑性加工を施して形成される車両用のマグネシウム合金
    製ホイールであって、 上記リム部のアルミニウム含有量が上記ディスク部のア
    ルミニウム含有量よりも少なく設定されていることを特
    徴とする車両用マグネシウム合金製ホイール。
  2. 【請求項2】 上記ディスク部のアルミニウム含有量が
    6〜8質量%に設定され、上記リム部のアルミニウム含
    有量は2質量%以上で且つ上記ディスク部のアルミニウ
    ム含有量未満に設定されていることを特徴とする請求項
    1記載の車両用マグネシウム合金製ホイール。
  3. 【請求項3】 上記ディスク部と上記リム部とはそれぞ
    れ別体に形成された後に一体化されることを特徴とする
    請求項1または請求項2に記載の車両用マグネシウム合
    金製ホイール。
  4. 【請求項4】 タイヤを保持するリム部と車体部材に支
    持されるディスク部とを備え、マグネシウム合金素材に
    塑性加工を施して形成される車両用のマグネシウム合金
    製ホイールの製造方法であって、 第1マグネシウム合金素材に塑性加工を施して上記ディ
    スク部を形成する工程と、 上記第1マグネシウム合金素材よりもアルミニウム含有
    量が少ない第2マグネシウム合金素材に塑性加工を施し
    て上記リム部を形成する工程と、 上記ディスク部と上記リム部とを一体化する工程と、を
    有することを特徴とする車両用マグネシウム合金製ホイ
    ールの製造方法。
  5. 【請求項5】 少なくとも上記ディスク部の塑性加工は
    鍛造であることを特徴とする請求項4記載の車両用マグ
    ネシウム合金製ホイールの製造方法。
  6. 【請求項6】 上記第1マグネシウム合金素材のアルミ
    ニウム含有量が6〜8質量%に設定され、上記第2マグ
    ネシウム合金素材のアルミニウム含有量は2質量%以上
    で且つ上記第1マグネシウム合金素材のアルミニウム含
    有量未満に設定されていることを特徴とする請求項4又
    は請求項5に記載の車両用マグネシウム合金製ホイール
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 少なくとも上記ディスク部に対して、塑
    性加工後にТ6熱処理を施すことを特徴とする請求項6
    記載の車両用マグネシウム合金製ホイールの製造方法。
  8. 【請求項8】 上記ディスク部およびリム部の少なくと
    もいずれか一方は、塑性加工前に所定の成形型を用いて
    半溶融射出成形されていることを特徴とする請求項4又
    は請求項5に記載の車両用マグネシウム合金製ホイール
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 少なくとも上記ディスク部に対して、塑
    性加工よりも前に溶体化処理を施すことを特徴とする請
    求項4記載の車両用マグネシウム合金製ホイールの製造
    方法。
  10. 【請求項10】 上記溶体化処理は、熱処理温度範囲が
    350℃以上で450℃以下、熱処理時間が10時間以
    上で20時間以下の処理条件で行われることを特徴とす
    る請求項9記載の車両用マグネシウム合金製ホイールの
    製造方法。
  11. 【請求項11】 少なくとも上記ディスク部に対して、
    塑性加工後に、温度範囲が250℃以上で400℃以
    下、保持時間が20分以上で10時間以下の条件で熱処
    理を施すことを特徴とする請求項9又は請求項10に記
    載の車両用マグネシウム合金製ホイールの製造方法。
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