JP2003049251A - ボイスコイルモータ磁気回路ヨーク用鉄合金板材およびボイスコイルモータ磁気回路用ヨーク - Google Patents

ボイスコイルモータ磁気回路ヨーク用鉄合金板材およびボイスコイルモータ磁気回路用ヨーク

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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 ボイスコイルモータ磁気回路に使用さ
れ、板厚が0.1〜5mm、磁界強度変動が0〜10H
z、C:0.0001〜0.02%、Si:0.000
1〜5%、Mn:0.001〜0.2%、P:0.00
01〜0.05%、S:0.0001〜0.05%、A
l:0.0001〜5%、O:0.001〜0.1%、
N:0.0001〜0.03%、Co:0〜10%、C
r:0〜10%、Ti、Zr、Nb、Mo、V、Ni、
W、Ta、Bから選ばれる合金元素を0.01〜5%含
有し、残部がFeからなる鉄合金であって、飽和磁束密
度が1.7〜2.3テスラ、最大比透磁率が1200〜
22000、保磁力が20〜380A/mであるボイス
コイルモータ磁気回路ヨーク用鉄合金板材。 【効果】 本発明によれば、耐蝕性金属皮膜の形成を必
要としない安価な磁気回路の提供が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録装置にお
けるボイスコイルモータ等に適した磁気回路を提供する
ための、磁気回路を構成する高磁束密度、高耐蝕性のボ
イスコイルモータ磁気回路ヨーク用鉄合金板材、およ
び、ボイスコイルモータ磁気回路用ヨークに関する。
【0002】
【従来の技術】ハードディスクには、磁気記録膜を成膜
したメディアとそのメディアを必要な回転数に回転させ
るスピンドルモータ、記録内容を読み書きする磁気ヘッ
ドとそれを駆動するボイスコイルモータや、制御装置等
が配置される。ボイスコイルモータの磁気回路は、磁束
を発生させる永久磁石と、それらをつなぐヨークで構成
され、ヘッド駆動用アクチュエーターとして使用され
る。また、CD、DVDドライブの磁気回路では、ピッ
クアップ用レンズを駆動するアクチュエーターとして磁
束を発生させる永久磁石とそれをつなぐヨークが使用さ
れる。近年、メーカーの激しい価格競争により、ボイス
コイルモータにも更なる低コストが要求されている。
【0003】これらに使用される部品においては、清浄
で発塵性のないことが第一に求められる。ヨーク等鉄部
品で容易に錆びてしまう恐れのある部品においては、発
生した錆びがパーティクルコンタミネーションとなって
ハードディスク、ピックアップ用のヘッドやレンズを汚
染するため、各種の耐蝕性表面処理を行って使用される
のが通常である。さらに、部品それぞれをクリーンな製
造工程にて作製し、コスト的に高価となることは不可避
ではあったが、磁気ヘッドとメディア間のクラッシュ
や、レンズの汚染を避けるために厳しいクリーン度管理
が行われている。
【0004】ボイスコイルモータを構成する磁気回路の
ヨーク材は、低コスト化の要求から、SPCC、SPC
D、SPCEなどの安価な一般圧延鋼板が用いられる。
これらの一般圧延鋼板は、打抜き、曲げ等の加工性が良
く、安価なことが特長であるが、一般圧延鋼板である為
に、錆の発生を抑制することはできず、前述の問題を解
決するためにプレス機械等で加工後、高価な無電解Ni
−Pメッキ等を施し、錆の発生を抑えているのが実状で
ある。
【0005】このように、磁気回路の低コスト化を実現
するには、SPCC等の安価な材料を用いていたが、一
般圧延鋼板の耐蝕性が期待できないため、Niメッキ等
の高価な耐蝕性金属皮膜を形成する必要があった。した
がって、コスト的に高価となることは不可避であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】先に延べたように、S
PCC等の冷間圧延鋼板は、打抜き、型取り、穴あけや
曲げ、エンボス加工などの生産性に優れることと、安価
なために最も多く使用されている。しかしながら、これ
らの鋼材は充分な飽和磁化や耐蝕性を有しないため、前
述の小型化、薄型化により、部分的なVCM磁気回路に
おいて磁気飽和をさけることが困難であり、高磁束密度
を有する永久磁石からの磁束を磁気回路に十分に導くこ
とができなかった。また、ヨークの厚み寸法も装置全体
からの制約によって制限され、高性能磁石の磁束すべて
を有効に活用することができず、磁気回路の途中で部分
的に飽和したり、磁束の漏れが発生したりする。
【0007】このような磁束の漏れは、磁気回路のギャ
ップ磁束密度を低下させるだけでなく、周辺の磁気記録
媒体や制御機器に対して影響を及ぼすことになる。VC
M回路からの漏れ磁束量には一定の規定があり、製品の
漏れ磁束量はこの規定値以下にしなければならない。
【0008】また、さび等のパーティクルコンタミネー
ション発生を避けるために、表面処理膜を成膜すること
が必須であり、低コスト化が非常に困難であった。
【0009】これらの漏れ磁束量を無くし、永久磁石の
持つ高磁束密度の特性をすべて活用し、かつ、安価に製
造することができるヨーク用磁性材料の開発が強く求め
られていた。
【0010】本発明は、上記要望に応えるためになされ
たもので、磁束密度が高く、かつ耐蝕性に優れて、耐蝕
性金属皮膜の形成を省略することができ、安価に製造す
ることができるボイスコイルモータ磁気回路ヨーク用鉄
合金板材およびボイスコイルモータ磁気回路用ヨークを
提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本
発明は、上記目的を達成するため、ボイスコイルモータ
磁気回路に使用される板厚が0.1mm以上5mm以
下、板内部の磁界強度変動が0〜10Hzであるヨーク
用板材において、該板材がC:0.0001〜0.02
重量%、Si:0.0001〜5重量%、Mn:0.0
01〜0.2重量%、P:0.0001〜0.05重量
%、S:0.0001〜0.05重量%、Al:0.0
001〜5重量%、O:0.001〜0.1重量%、
N:0.0001〜0.03重量%、Co:0〜10重
量%、Cr:0〜10重量%の各元素を含有し、さらに
添加元素としてTi、Zr、Nb、Mo、V、Ni、
W、Ta、Bから選ばれる少なくとも一種以上の合金元
素を合計で0.01〜5重量%含有し、その他実用上不
可避の不純物以外には残部がFeからなる鉄合金であっ
て、かつその飽和磁束密度が1.7テスラ以上2.3テ
スラ以下、最大比透磁率が1200以上22000以
下、保磁力が20A/m以上380A/m以下であるこ
とを特徴とするボイスコイルモータ磁気回路ヨーク用鉄
合金板材、およびこの鉄合金板材を用いたボイスコイル
モータ磁気回路用ヨークを提供する。この場合、このヨ
ークは、上記鉄合金板材の耐蝕性が良好であるため、従
来のように表面に耐蝕性金属皮膜、例えばNi、Cu、
Sn、Au、Pt、Zn、Fe、Co、Al等の金属
や、これらの金属を20重量%以上含む合金の皮膜の形
成を省略することができる。
【0012】すなわち、上記鉄合金板材を用いることに
よって、高特性を保持しつつ高耐蝕性のボイスコイルモ
ータを製作することができる。特に、従来高価なために
その使用を控えられてきていたCoが飽和磁化の向上に
有効であり、板材の高飽和磁化によって高性能永久磁石
から発生する磁束を効率良く磁気回路へ導くことがで
き、またCrを添加することによって高耐蝕性を付加
し、表面処理膜を必要としないために安価に製造できる
ことが特徴である。さらに、添加元素として加えられた
Ti、Zr、Nb、Mo、V、Ni、W、Taから選ば
れる少なくとも一種以上の合金元素からなる炭化物およ
び/または酸化物が合金の粒界および/または粒内に微
細に分散して析出していることが好ましい。
【0013】以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0014】本発明のボイスコイルモータ磁気回路ヨー
ク用鉄合金板材は、上述したように、C、Si、Mn、
P、S、Al、O、Nを特定量含有すると共に、好まし
くはCo、Crも特定量含有し、かつTi、Zr、N
b、Mo、V、Ni、W、Ta、Bの1種又は2種以上
を特定量含有する鉄合金からなるものである。
【0015】すなわち、本発明者らは、上述した目的を
達成するべく種々の材料の検討を行い、耐蝕性を向上さ
せる元素を調べた結果、SPCCなどの鉄鋼は空気中で
加熱するとスケールを発生し酸化が早くなる。これは、
FeO、Fe34が金属不足n型半導体でFe++の移動
によって成長し、Fe23は金属過剰p型の半導体でO
の移動によって成長するため、酸化物層を通して酸素が
浸透し、酸化物層下の鉄の酸化を進める。酸化を進めな
いためには酸化物層が緻密で、割れなど生じることな
く、よく密着して、内部への酸素を妨げるような作用を
持たせればよい。Al、Cr、SiはFeよりも酸化し
やすく、しかも安定な酸化物を作る金属を合金化するた
め、Feよりも選択的に酸化され、Al23、Cr
23、SiO2の薄い緻密な被膜をつくり、酸化の進行
を妨げる。詳しくは、Al、CrはFeO・Al23
FeO・Cr23の複合酸化物を、Siは2FeO・S
iO2の複合酸化物を生成する。できた酸化物層は容積
が小さく、表面を完全に覆わない場合は耐酸化性がな
く、反対に容積が大きすぎると酸化物層が膨れたり、割
れたりして同様に耐酸化性がない。適当な容積の緻密な
酸化物層が表面を完全に覆う場合がもっとも良い。
【0016】また、SPCC材等の成分から磁束密度の
低下に影響を及ぼす元素を調べた。鉄に対しては、C、
Al、Si、P、S、Mnは磁気モーメントを持ってい
ないか、磁気モーメントが鉄母体と異なるために、これ
ら元素の存在によって周囲の鉄の磁気モーメントを低下
させる現象が起こる。特にP、Sは、磁束密度の低下以
外に耐蝕性においても悪影響を及ぼす。しかし、これら
の元素をむやみに低減させるのは、原料の製造コストの
面から不利であり、性能的にも少量の範囲内であれば含
有していても満足できる。
【0017】以上の観点から、本発明のボイスコイルモ
ータ磁気回路ヨーク用鉄合金板材は、C:0.0001
〜0.02重量%、Si:0.0001〜5重量%、M
n:0.001〜0.2重量%、P:0.0001〜
0.05重量%、S:0.0001〜0.05重量%、
Al:0.0001〜5重量%、残部がFeの範囲とす
るものであり、より好ましくはC:0.0005〜0.
015重量%、特に0.001〜0.01重量%、S
i:0.0005〜5重量%、特に0.001〜5重量
%、Mn:0.001〜0.2重量%、特に0.01〜
0.2重量%、P:0.0001〜0.05重量%、特
に0.001〜0.05重量%、S:0.0001〜
0.05重量%、特に0.001〜0.05重量%、A
l:0.0005〜5重量%、特に0.001〜5重量
%とする。
【0018】また、OおよびNは同様に磁気特性に影響
し、O:0.001〜0.1重量%およびN:0.00
01〜0.03重量%とすることが好ましく、この範囲
であれば、飽和磁束密度を特には劣化させない。より好
ましくは、O:0.005〜0.09重量%、特に0.
005〜0.08重量%、N:0.0005〜0.03
重量%、特に0.0005〜0.02重量%である。
【0019】Co、Crは、それぞれ0〜10重量%と
する。特にFe−Cr合金はほぼ直線的に自発磁気モー
メントを低下させることがわかっており、多量の添加は
磁束の低下につながる。また、この合金の10〜80重
量%の組成のものは焼きなましによって物理的性質が著
しく変化する。たとえば、475℃での焼きなましでは
機械的に固く、脆くなり、切削や打抜き加工などの塑性
加工能が著しく低下し、脆性と共に耐蝕性も劣化する。
また、700℃前後で長時間加熱されると粒界にσ相が
析出し、耐粒界腐蝕性や機械強度が低下する。したがっ
て、Crの範囲は10重量%以下とする。本発明のボイ
スコイルモータ磁気回路ヨーク用鉄合金板材およびボイ
スコイルモータ磁気回路用ヨークはその使用される環境
がステンレス鋼が使用されると塩害環境や薬品等が存在
する環境とは異なるためにCr量は少なくて良い。より
好ましくは、Cr:0.02〜10重量%、耐蝕性の点
から4〜10重量%含有することが好ましい。
【0020】一方、鉄原子よりも外殻電子数が多いCo
は、磁束密度を増大させることから、本発明において重
要な元素である。Co量は、最大10重量%まで添加す
ることができ、合金の飽和磁束密度を増加させるが、そ
れ以上は、合金の強度が大きく硬くなりすぎるために圧
延加工が難しく、または同時に高価な金属であるために
コストの点から不利となる。よってCo量は、0.1〜
10重量%、特に4〜10重量%の範囲とすることが好
ましい。また、磁束密度を低下させる元素の添加と見合
った分のCoを添加させることによって、従来のSPC
Cなどの材料に劣らない磁束密度を発現することが可能
となる。
【0021】添加元素として添加されるTi、Zr、N
b、Mo、Cr、V、Ni、W、Taから選ばれる少な
くとも一種以上の元素は、材料中のフェライト相内に固
溶した場合、磁束密度の低下を起こすが、不可避に混入
するC、O、Nとの間で金属間化合物を生成し、炭化
物、酸化物、窒化物を作る。その結果、これらの析出物
は合金組織中に微細に均一に析出し、塑性加工中の転移
の移動を阻害することができる。このため合金の過剰な
延性が小さくなり、板材の打抜き時に、せん断面のバリ
発生を抑えることができる。またこれらC、O、Nを固
定化する元素を含有するものは焼きなまし温度から急冷
しても鋭敏化されることはなく、耐粒界腐蝕性が良く且
つ結晶粒の粗大化も起こりがたい。
【0022】Mo、V、Niはステンレスなどの例に見
られるように、鉄合金板材の耐蝕性を向上させる効果が
ある。低炭素の場合、440〜540℃の焼戻しで著し
く脆化し、かつ2次硬化が生じるが焼戻し脆性はCrと
の炭化物によるものであり、これら元素の添加による炭
素トラップより焼戻し軟化抵抗性が改善される。W、T
a、Bは、板材の圧延加工性を向上させる効果があり、
加工費の低減に貢献できる。しかし、これらの元素はい
ずれも飽和磁化を減少させるので、合計でも5重量%を
超えて添加することは好ましくない。従って、これらの
添加元素は、0.01〜5重量%の割合で添加される。
【0023】Feは残部であるが、鉄合金中、50重量
%以上、特に75重量%以上含有することが好ましい。
【0024】さらに、本発明では、飽和磁束密度を1.
7〜2.3テスラとすることが特徴であり、飽和磁束密
度が高くても最大比透磁率が小さいか、または保磁力が
大きすぎてしまっては、磁気回路の磁気抵抗が増大し、
ギャップ磁束密度が低くなってしまう。このため、最大
比透磁率は1200以上22000以下の範囲とし、保
磁力は20A/m以上380A/m以下の範囲とする。
より好ましくは、飽和磁束密度は1.8〜2.3テス
ラ、特に2.0〜2.3テスラであり、最大比透磁率は
1500〜22000、特に2000〜22000であ
り、保磁力は20〜350A/m、特に20〜300A
/mである。
【0025】更にヨーク材の硬さが大きくなると、打抜
きや曲げ等の加工に必要な力が大きくなるのでプレス機
等の能力が不足する場合があり、また金型にかかる負担
が大きくなるため金型の寿命が低下するので硬さ(ロッ
クウェル)をHRB90以下、好ましくは85以下にす
ることがよい。
【0026】合金成分は、原料材料や製鋼方法によって
目的とする範囲に調整されるが、生産性、品質上からは
連続鋳造法が好ましく、また小ロット生産には真空溶解
法などが適する。鋳造後、所定板厚の鋼材とするため
に、熱間圧延、冷間圧延などが実施される。このように
して得られた鉄合金板材は、機械式プレスや、油圧式プ
レスもしくはファインブランキングプレス等にて、打抜
き、型取り、穴あけ、曲げ、エンボスなどの塑性加工に
より、所定のヨーク形状に加工処理され、バリ取り、面
取り、機械研磨、化学研磨、電解研磨などの後、ボイス
コイルモータに用いる板厚が0.1mm以上5mm以
下、好ましくは0.5〜4.5mm、板内部の磁界強度
変動が0〜10Hz、好ましくは0〜5Hzであるヨー
ク材として製造することができる。
【0027】ヨーク材の板厚が0.1mm未満の場合
は、薄すぎて板材の飽和磁化を多少向上させても磁気回
路の特性向上効果があまり見られず、また5mmを超え
る場合は、逆に充分に厚いため、本発明によらなくても
磁気回路が飽和する問題は生じない。ヨーク材板内部の
磁界強度の変動が10Hzを超える場合は、周波数の自
乗に比例する渦電流が発生し、ヨーク材が加熱されるこ
とから酸化が加速されるため、十分な耐蝕性を得ること
ができない。
【0028】ここで、ヨーク材に発生するバリ取りに
は、爆発燃焼式、バレル研磨などが用いられる。仕上げ
には、機械研磨であるバフ研磨、化学研磨、電解研磨が
採用される。特に、機械研磨を行った表面は無定形な極
微粒子の集合体のベイルビー層、金属結晶が微細化され
た破砕結晶、加工によって変形した塑性変形の領域から
なる数ミクロン程度以下の加工変質層が存在し、バフ研
磨による鏡面加工のみでは、加工変質層が残存するため
に、所定の性能が得られないので、化学研磨、好ましく
は電解研磨が必要となる。電解研磨は表面の突起を優先
して溶解し、かつ全体にわたり溶解するために、加工変
質層を完全に除去できる。これにより、平滑な面が得ら
れ、記録情報を破壊してしまうパーティクル発生を低減
するには最適の処理である。電解研磨液には、過塩素
酸、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、リン酸、酒石酸、クエン
酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、ロダンソー
ダ、尿素、硝酸コバルト、硝酸第二鉄などに、エタノー
ル、プロパノールなどのアルコール類、ブチルセロソル
ブ、グリセリン、純水などを適宜調合する。
【0029】以上の工程で作成されたボイスコイルモー
タ磁気回路用ヨークは、その耐蝕性が優れるために、ヨ
ーク表面に耐蝕性皮膜をコーティングする必要がない。
逆にこのヨークに金属あるいは各種合金からなる耐蝕性
皮膜を、電気メッキ、無電解メッキ、イオンプレーティ
ング等の各種方法でコートすることは、ヨークのコスト
アップを招くことから好ましくない。すなわち本発明の
鉄合金においては、該板材合金の表面にNi、Cu、S
n、Au、Pt、Zn、Fe、Co、Alなどの金属の
皮膜又はこれらの金属の少なくとも一種以上の金属を2
0重量%以上含む合金皮膜を存在させないことにより、
製品のコストアップを防止することが出来る。
【0030】
【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体
的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるも
のではない。
【0031】[実施例1〜14]表1に示す実施例1〜
8に示す成分組成の鋼合金塊を溶解・連続鋳造して、幅
200mm、長さ500mm、板厚50mmの合金塊を
得た。
【0032】その合金塊を大気雰囲気で1200℃に加
熱して熱間圧延を開始し、950℃以下で60%の累積
圧下率とし、850℃で熱間圧延を終了した。熱間圧延
終了後は、室温まで空冷した。その後、冷間圧延した
後、900℃で仕上焼鈍、酸洗を実施し、厚さ1mmの
鋼板とした。
【0033】得られた鋼板を機械式打抜きプレス機にて
ヨーク形状に打抜き加工し、上下ヨーク2種のヨーク材
を得た。
【0034】得られたヨークにバレル面取り、電解研磨
を施した。それら上下ヨークの内側に、最大エネルギー
積400kJ/m3の永久磁石をヨークの中央位置に接
着し、磁気回路を作製した。
【0035】作製したヨーク材を約4mm角に切断し、
最大磁界1.9MA/mの振動試料型磁力計にて飽和磁
束密度を測定した。
【0036】また、ヨーク形状に打抜いた残りの板材か
ら、外径45mm、内径33mmのリング試料を作製
し、JIS C 2531(1999)に記載される方
法に準拠し、前述のリング試料を、間に紙を挟み2枚重
ね、絶縁テープを巻いた後、励磁用コイル、磁化検出用
コイルとしてそれぞれ50ターンづつ0.26mmφの
銅線を巻き、最大磁界±1.6kA/mの直流磁化特性
自動記録装置にて磁気ヒステリシス曲線を描き、最大比
透磁率及び保磁力を測定した。
【0037】さらに、作製したボイスコイルモータ用磁
気回路の性能を調べるために、実際の磁気記録装置に使
用されている平面コイルを用い、磁束計(Lakesh
ore製 480Fluxmeter)を用いて、その
磁気回路ギャップ間の総磁束量を測定した。また、硬さ
についてもJIS Z 2245に準拠し、測定した。
【0038】耐蝕性を評価するために、温度80℃、相
対湿度90%の環境下で、200時間試験し、発錆なし
を◎、変色を○、発錆ありを×とし、判定した。
【0039】[比較例1〜6]比較例として、一般的な
市販のSPCC−SD品、板厚1mmの材料(比較例
1)と、表2に示す比較例2〜6に示す成分組成の鋼合
金塊を実施例1と同様にして得た厚さ1mmの鋼板につ
いて、実施例1と同様に、磁気特性を測定した。
【0040】結果を表1に示す。なお、表1において、
対SPCCは、比較例1の磁束量に対する増減率を示
す。
【0041】
【表1】
【0042】[実施例15〜30]同じく表2に示す実
施例15〜30の成分組成の鋼塊を電炉、転炉−脱ガ
ス、連続鋳造工程を経て溶解・鋳造し、厚さ200mm
のスラブを得た。溶銑はRH脱ガスおよびVOD法(真
空−酸素脱炭法)により精製した。
【0043】得られた200mm板厚のスラブを110
0〜1200℃に加熱・均熱し、熱間圧延機で圧延し、
仕上げ温度850〜950℃で板厚約10mmとした。
再結晶焼鈍(850〜900℃)後、酸洗、冷間圧延に
より約4mmの板厚とした。その後約850℃で仕上焼
鈍後酸洗して供試用鋼板を得た。
【0044】得られた鋼板を機械式打抜きプレス機にて
ヨーク形状に打抜き加工し、上下ヨーク2種を得た。得
られたヨークは爆発燃焼式バリ取り、化学研磨を施し
た。
【0045】それら上下ヨークの内側に、最大エネルギ
ー積400kJ/m3の永久磁石をヨークの中央位置に
接着し、磁気回路を作製した。
【0046】作製したヨーク板材の磁気特性を上記と同
様にして測定した。
【0047】以上の実験結果を表2に示す。
【0048】なお、表2における対SPCCも、比較例
1の磁束量に対するそれぞれの増加率を%で表してい
る。
【0049】
【表2】
【0050】表1、2から、実施例の組成の鋼板は、い
ずれも、比較例に対して比透磁率は上昇、保磁力は減少
し、磁気回路ギャップにおける総磁束量もSPCCに対
し遜色ないことが判る。また、明らかな発錆はなく、パ
ーティクルコンタミネーションは無いことが判る。
【0051】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、磁気記録
装置ボイスコイルモータ用磁気回路部材として使用され
る厚さ0.5mmから5mmのヨーク材の磁気特性、及
び、耐蝕性を向上させることによって、構成する磁気回
路に磁石から投入される磁束を有効に利用してギャップ
間の磁束密度を維持し、母材の耐蝕性を向上させ、バリ
取り、面取り後の仕上げに化学研磨、電解研磨するだけ
で、耐蝕性金属皮膜の形成を必要としない安価な磁気回
路の提供が可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 美濃輪 武久 福井県武生市北府2−1−5 信越化学工 業株式会社磁性材料研究所内 Fターム(参考) 5E041 AA04 CA04 HB15 NN01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ボイスコイルモータ磁気回路に使用され
    る板厚が0.1mm以上5mm以下、板内部の磁界強度
    変動が0〜10Hzであるヨーク用板材において、該板
    材がC:0.0001〜0.02重量%、Si:0.0
    001〜5重量%、Mn:0.001〜0.2重量%、
    P:0.0001〜0.05重量%、S:0.0001
    〜0.05重量%、Al:0.0001〜5重量%、
    O:0.001〜0.1重量%、N:0.0001〜
    0.03重量%、Co:0〜10重量%、Cr:0〜1
    0重量%の各元素を含有し、さらに添加元素としてT
    i、Zr、Nb、Mo、V、Ni、W、Ta、Bから選
    ばれる少なくとも一種以上の合金元素を合計で0.01
    〜5重量%含有し、その他実用上不可避の不純物以外に
    は残部がFeからなる鉄合金であって、かつその飽和磁
    束密度が1.7テスラ以上2.3テスラ以下、最大比透
    磁率が1200以上22000以下、保磁力が20A/
    m以上380A/m以下であることを特徴とするボイス
    コイルモータ磁気回路ヨーク用鉄合金板材。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の鉄合金板材を用いたボ
    イスコイルモータ磁気回路用ヨーク。
  3. 【請求項3】 表面に耐蝕性金属皮膜を有さない請求項
    2記載のヨーク。
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