JP2003049237A - 母材靭性と溶接部haz靭性に優れた高強度溶接構造用鋼およびその製造方法 - Google Patents
母材靭性と溶接部haz靭性に優れた高強度溶接構造用鋼およびその製造方法Info
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Abstract
溶接構造用鋼およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.01〜0.2%、S
i:0.02〜0.5%、Mn:0.3〜2%、P:
0.03%以下、S:0.0001〜0.03%、A
l:0.0005〜0.05%、Ti:0.003〜
0.05%を含有し、さらに、Mg:0.0001〜
0.01%、Ca:0.0001〜0.01%、RE
M:0.0001〜0.05%のうち1種または2種以
上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
かつ、Mg、Ca、REMの1種または2種以上と、
O、Sの一方もしくは両方を含み、粒子径0.005〜
0.5μm である粒子が、1mm2 当たり10000個以
上分散していることを特徴とする母材靭性と溶接部HA
Z靭性に優れた高強度溶接構造用鋼。
Description
船、海洋構造物、ラインパイプ、建設機械などの溶接構
造物として広く利用可能な、490MPa級をはじめと
する溶接構造物用鋼に関わり、さらに詳しくは母材靭性
と溶接部HAZ靭性に優れた溶接構造物用鋼及びその製
造方法に関するものである。
構造物の脆性破壊防止の観点から、母材の靭性だけでな
く、溶接部からの脆性破壊の発生抑制すなわち、使用さ
れる鋼板のHAZ靱性の向上に関する研究が数多く報告
されてきた。一般に、母材靭性の確保のためには最終の
フェライト粒径を小さくすることが肝要であり、必要靭
性レベルにより普通圧延、制御圧延、さらには制御圧延
+加速冷却が利用されてきた。その基本はAlNやTi
Nなどの高温で安定な窒化物を用いて、母材の加熱γ粒
径を微細化した上で、さらに圧延によりオーステナイト
中にフェライトの核生成サイトを多数導入し、最終フェ
ライト粒径を微細にすることにある。したがって、この
ような母材の製造方法では、当然ながら窒化物の種類に
より熱間圧延前の再加熱温度を変える必要が生じたり、
加熱γ粒径の変動から最終のフェライト粒径にも変化が
生じ、結果的に、母材靭性にバラツキが生じることがし
ばしば起こる。
熱量によって異なることから、要求靭性値が高いほどそ
の値を小さくする必要があるにも関わらず、近年では加
熱γ粒径が大きくなる条件、すなわち溶接施工能率の向
上の観点から、大入熱溶接(およそ20kJ/mm以下)や
超大入熱溶接(20〜150kJ/mm)が実施される場合
が増加している。大入熱溶接と超大入熱溶接の鋼板への
影響の差異は、高温での滞留時間の差異に起因してお
り、特に超大入熱溶接ではその時間が極めて長時間であ
るために、結晶粒径が著しく粗大化する領域が広く、靱
性の低下が著しくなる。
HAZ靭性の入熱依存性の問題点を回避する抜本的な方
法として、母材組織および溶接部HAZ組織の加熱γ粒
径を同一のピニング粒子によって制御し、両者の高温で
の粒成長を顕著に抑制することが考えられる。これが実
現できた場合は、母材靭性の安定性はもとより入熱が大
きくなった場合にも溶接部HAZ靱性を十分に向上させ
ることができる。また、母材の加熱γ粒径が著しく微細
になる場合には、従来の制御圧延や加速冷却を用いるこ
となく普通圧延でも同程度のフェライト粒径と母材靭性
を付与できる可能性が出てくることから、本技術の確立
は工業的価値が高い。
る粒子として、高温でも溶解しにくい酸化物や硫化物が
考えられる。例えば、酸化物の導入方法としては鋼の溶
製工程においてTiなどの脱酸元素を単独に添加する方
法があるが、多くの場合に溶鋼保持中に酸化物の凝集合
体がおこり粗大な酸化物の生成をもたらすことによりか
えって鋼の清浄度を損ない靱性を低下させてしまうこと
が知られている。そのため、複合脱酸法などさまざまな
工夫がなされているが、従来知られている方法では、高
温での母材の加熱γ粒径、さらには溶接入熱が大きい場
合の結晶粒粗大化を完全に阻止しうるほどの微細な酸化
物を分散させることはできていない。また、硫化物につ
いても同様である。
な問題を解決し、母材靭性と溶接部HAZ靭性に優れた
高強度溶接構造用鋼およびその製造方法を提供すること
を課題とするものである。
酸化物や硫化物を微細分散させることを鋭意検討し、母
材の加熱γ粒径を微細化し、同時に大入熱あるいは超大
入熱溶接においても溶接部HAZ組織の加熱γ粒径も微
細化し、母材靭性と溶接部HAZ靭性に優れた高強度溶
接構造用鋼を製造できることを見出し本発明に至ったも
ので、その要旨とするところは、以下の通りである。
%、Si:0.02〜0.5%、Mn:0.3〜2%、
P:0.03%以下、S:0.0001〜0.03%、
Al:0.0005〜0.05%、Ti:0.003〜
0.05%を含有し、さらに、Mg:0.0001〜
0.01%、Ca:0.0001〜0.01%、RE
M:0.0001〜0.05%のうち1種または2種以
上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
かつ、Mg、Ca、REMの1種または2種以上と、
O、Sの一方もしくは両方を含み、粒子径0.005〜
0.5μm である粒子が、1mm2 当たり10000個以
上分散していることを特徴とする母材靭性と溶接部HA
Z靭性に優れた高強度溶接構造用鋼。 (2)質量%で、Cu:0.05〜1.5%、Ni:
0.05〜5%、Cr:0.02〜1.5%、Mo:
0.02〜1.5%、V:0.01〜0.1%、Nb:
0.0001〜0.2%、Zr:0.0001〜0.0
5%、Ta:0.0001〜0.05%、B:0.00
03〜0.005%のうち1種または2種以上を、さら
に含有することを特徴とする前記(1)に記載の母材靭
性と溶接部HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼。 (3)母材の加熱γ粒径(旧オーステナイト粒径)が再
加熱温度によらず100μm 以下であり、かつ、最終の
フェライト粒径が1〜50μm であることを特徴とする
前記(1)または(2)に記載の母材靭性と溶接部HA
Z靭性に優れた高強度溶接構造用鋼。 (4)溶接部HAZ組織の加熱γ粒径(旧オーステナイ
ト粒径)が溶接入熱によらず10〜200μm である前
記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の母材靭性と
溶接部HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼。
項に記載の鋼の製造において、鋼塊をAc3 点以上、1
350℃以下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延した
後、自然冷却することを特徴とする母材靭性と溶接部H
AZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼の製造方法。 (6)前記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の鋼
の製造において、鋼塊をAc3 点以上、1350℃以下
に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶
温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延を
した後、自然冷却することを特徴とする母材靭性と溶接
部HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼の製造方法。 (7)前記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の鋼
の製造において、鋼塊をAc3 点以上、1350℃以下
に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶
温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延を
した後、1〜60℃/secの冷却速度で600℃以下まで
冷却することを特徴とする母材靭性と溶接部HAZ靭性
に優れた高強度溶接構造用鋼の製造方法。 (8)前記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の鋼
の製造において、鋼塊をAc3 点以上、1350℃以下
に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結晶
温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延を
した後、1〜60℃/secの冷却速度で600℃以下まで
冷却し、引き続いて300℃〜Ac1 点に加熱して焼戻
し熱処理することを特徴とする母材靭性と溶接部HAZ
靭性に優れた高強度溶接構造用鋼の製造方法。
強脱酸剤、脱硫剤として鋼の清浄度を高めることで、溶
接熱影響部の靱性を向上させることが知られている。し
かしながら、これら元素を含有する酸化物の分散を制御
して、母材靭性および溶接部HAZ靱性を向上させる技
術として用いた例はこれまで報告されていない。特開平
11−293382号公報に記載されているMg添加方
法は溶接部HAZ靭性向上策として溶接部HAZ組織微
細化への適用のみを示している。本発明者らは、Mg、
Ca、REMの強脱酸剤あるいは強力な硫化物生成能に
着目し、これら元素の添加順序および量を制御すること
で、母材およびHAZ組織の加熱γ粒径の微細化に効果
を有する酸化物や硫化物の微細分散が期待できる余地が
あると考えた。
発明者らは、Tiを添加し弱脱酸した溶鋼中にMgを添
加した場合の酸化物の状態を系統的に調べた。その結
果、Si、Mnによる脱酸後に、Ti添加、Mg添加の
順に添加した場合に、あるいはTi添加とMg添加を同
時に行い、さらに平衡状態になった状態で再度Mgを添
加するというサイクルを2重ないしは3重に繰り返すこ
とで、Mgの酸化物や硫化物が極めて微細に、かつ高密
度に生成されることを見出した。このMg添加の効果は
CaやREMをMgの代わりに用いても同様に得られ、
いずれの元素を添加した場合も添加元素を含む酸化物や
硫化物が生成され、その粒子径は0.005〜0.5μ
m 、粒子数は鋼中に1mm2当たり10000個以上であ
り、強力なピニング力を有していることが確認された。
いは硫化物として単独に存在するものばかりでなく、混
合凝集したものや化合して酸硫化物として観察されるも
のも含めるものとし、Mg、Ca、REMの1種または
2種以上と、O、Sの一方もしくは両方が検出され、上
記粒径条件が満たされれば本発明も粒子とする。この粒
子の観察は、粒径が大きなものではEPMAによっても
可能であるが元素分析機能の付いた透過型電子顕微鏡の
利用が好ましい。
達成される母材靭性と溶接部HAZ靱性に優れた鋼材に
関するものであり、加熱γ粒径の変化を極力抑えた画期
的な技術である。すなわち、本発明の特徴は、母材の加
熱γ粒径(旧オーステナイト粒径)が再加熱温度によら
ず100μm 以下であり、さらに溶接部HAZ組織の加
熱γ粒径(旧オーステナイト粒径)が溶接入熱によらず
10〜200μm であり、これらのミクロ組織を反映し
て、母材靭性と溶接部HAZ靭性の両方に優れた高強度
溶接構造用鋼を提供できる点にある。しかも、本技術を
用いれば再加熱温度によらず最終フェライト粒径が1〜
50μm に安定して作り込むことができる。
方法であるが、既に述べたように、最初に、Si、Mn
を添加後、まず、Tiを添加し溶鋼中の酸素量を調整し
た後、少量のMg(Ca,REMでも同様、以下同じ)
を徐々に添加するか、あるいは、Tiと少量のMgを同
時に添加した後に、最終段階で再度Mgを添加する。最
適なMgの添加量は、Ti添加後、溶鋼中に存在する酸
素量などに依存するが、実験では、その時の酸素濃度は
Ti添加量とMg添加までの時間に依存し、TiとMg
添加量を適正な範囲で制御すれば良い。なお、繰り返し
の最終的なMg添加時の溶存酸素量は0.1〜50ppm
程度が適量である。最小の0.1ppm は微細なMgの酸
化物や硫化物ができる最小の量であり、50ppm を超え
ると粗大なMg酸化物ができるようになり、ピニング力
が弱くなることからこれを限度とした。以下、本発明の
成分の限定理由について述べる。
基本的な元素として欠かせない元素であり、その有効な
下限として0.01%以上の添加が必要であるが、0.
2%を超える過剰の添加では、鋼材の溶接性や靱性の低
下を招くので、その上限を0.2%とした。
元素であり、鋼中に0.02%以上の添加が必要である
が、0.5%を超えるとHAZ靱性を低下させるのでそ
れを上限とする。
保に必要な元素であるが、2%を超えるとHAZ靱性を
著しく阻害するが、逆に0.3%未満では、母材の強度
確保が困難になるために、その範囲を0.3〜2%とす
る。
り、0.03%を超えて含有すると鋼材の母材だけでな
くHAZの靱性を著しく阻害するのでその含有される上
限を0.03%とした。
れると粗大な硫化物の生成の原因となり、靱性を阻害す
るが、その含有量が0.0001%未満になると、粒内
フェライトの生成に有効なMnS等の硫化物生成量が著
しく低下するために、0.0001〜0.03%をその
範囲とする。
が、本発明においては、0.05%超えて添加されると
Mg、Ca,REMの添加の効果を阻害するために、こ
れを上限とする。また、Mg、Ca、REMの酸化物を
安定に生成するためには0.0005%は必要であり、
これを下限とした。
化物形成元素としてし結晶粒の細粒化に効果を発揮する
元素であるが、多量の添加は炭化物の形成による靱性の
著しい低下をもたらすために、その上限を0.05%に
する必要があるが、所定の効果を得るためには0.00
3%以上の添加が必要であり、その範囲を0.003〜
0.05%とする。
り、主に脱酸剤あるいは硫化物生成元素として添加され
るが、0.01%を超えて添加されると、粗大な酸化物
や硫化物が生成し易くなり、母材およびHAZ靱性の低
下をもたらす。しかしながら、0.0001%未満の添
加では、ピニング粒子として必要な酸化物の生成が十分
に期待できなくなるため、その添加範囲を0.0001
〜0.01%と限定する。
を生成することにより伸長MnSの生成を抑制し、鋼材
の板厚方向の特性、特に耐ラメラティアー性を改善す
る。さらに両元素はMgと同様な効果を有していること
から、本発明の重要な元素群である。Ca、REMはと
もに0.0001%未満では、以上の効果が得られない
ので下限値を0.0001%にした。逆に、Caの場合
には0.01%を、REMの場合には0.05%を超え
るとCaとREMの粗大酸化物個数が増加し、超微細な
酸化物や硫化物の個数が低下するため、その上限をそれ
ぞれ0.01%と0.05%とする。
を改善する元素として、Cu、Ni、Cr、Mo、V、
Nb、Zr、Ta、Bの中で、1種または2種以上の元
素を添加することができる。
上昇に有効な元素であるが、0.05%未満では効果が
なく、1.5%を超えると鋼片加熱時や溶接時に割れを
生じやすくする。従って、その含有量を0.05〜1.
5%以下とする。
効な元素であり、その効果を得るためには0.05%以
上の添加が必要であるが、5%以上の添加では溶接性が
低下するために、その上限を5%とする。
上させるために、0.02%以上の添加が有効である
が、多量に添加すると、焼入れ性を上昇させ、ベイナイ
ト組織を生じさせ、靱性を低下させる。従って、その上
限を1.5%とする。
時に、炭窒化物を形成し強度を改善する元素であり、そ
の効果を得るためには、0.02%以上の添加が必要に
なるが、1.5%を超えた多量の添加は必要以上の強化
とともに、靱性の著しい低下をもたらすために、その範
囲を0.02〜1.5%以下とする。
向上に効果がある元素であるが、0.01%以下の添加
ではその効果がなく、0.1%を超える添加では、逆に
靱性の低下を招くために、その範囲を0.01〜0.1
%以下とする。
度の向上に効果がある元素であるが、0.0001%以
下の添加ではその効果がなく、0.2%を超える添加で
は、靱性の低下を招くために、その範囲を0.0001
〜0.2%以下とする。
化物、窒化物を形成し強度の向上に効果がある元素であ
るが、0.0001%以下の添加ではその効果がなく、
0.05%を超える添加では、逆に靱性の低下を招くた
めに、その範囲を0.0001〜0.05%以下とす
る。
加させるが、またBNとして固溶Nを低下させ、溶接熱
影響部の靱性を向上させる元素である。従って、0.0
003%以上の添加でその効果を利用できるが、過剰の
添加は、靱性の低下を招くために、その上限を0.00
5%とする。
製後、連続鋳造などを経て再加熱、圧延、冷却処理を施
される。この場合、以下の点を限定した。熱間圧延・制
御圧延ともに、鋼塊をオーステナイト化するためにAc
3 点以上の温度に加熱する必要がある。しかし、135
0℃を超えて加熱すると、熱源コストの増大が生じるこ
とから、加熱温度は1350℃以下とした。
晶温度域で圧延することによりオーステナイト粒径を小
さくすることが必要である。また、制御圧延を用いて、
強度上昇と靭性向上を図る場合には、さらに未再結晶温
度域で圧延することによりオーステナイト粒内に変形帯
を導入し、フェライト変態核を導入することが有効であ
る。未再結晶域での累積圧下率が40%未満では変形帯
が十分に形成されないので、未再結晶域で累積圧下率の
下限値を40%とした。しかし、累積圧下率が90%を
超えると、母材シャルピー試験の吸収エネルギーの低下
が著しくなるために、上限を90%にした。
には加速冷却が必要である。しかしながら、冷却速度が
1℃/sec未満では、十分な強度を得ることができない。
逆に、冷却速度が60℃/sec超ではベイナイト主体組織
が生成するため母材の靭性が低下する。したがって、冷
却速度を1〜60℃/secに限定した。本発明において
は、母材の強度を得るために変態が終了するまで加速冷
却を継続する必要がある。このため、冷却停止温度の上
限を600℃とした。600℃超の停止温度では変態が
終了しないために、十分な強度が得られない。冷却停止
温度の下限は、加速冷却の効果の点からは特に定めない
が、室温を下回るような温度まで冷却する必要はない。
材組織の靭性向上を目的としたものであるから、加熱温
度は逆変態が生じない温度域であるAc1 点以下でなけ
ればならない。回復は転位の消滅・合体により格子欠陥
密度を減少させるものであり、これを実現するためには
300℃以上に加熱することが必要である。このため、
加熱温度の下限を300℃とした。上限は変態点以下で
あるため、Ac1 を上限とした。
の化学成分を有する鋼塊を表2に示す熱間圧延および熱
処理を行い鋼板とした後、母材靭性と溶接入熱が50kJ
/mmの超大入熱溶接を付与し、旧γ粒径を測定するとと
もに、HAZ靭性を評価した。靭性はそれぞれ母材が−
80℃、溶接部HAZ靭性が−20℃におけるシャルピ
ー吸収エネルギーにより評価した。
明らかなように、本発明の鋼板は化学成分、製造条件、
粒子数の各要件を満足しており、最終のフェライト粒径
が50μm 以下の微細組織を呈しており、これを反映し
て母材靭性は200J以上ときわめて良好な値となって
いる。さらに、50kJ/mmの超大入熱HAZ靭性もHA
Zの加熱γ粒径が200μm 以下となっていることか
ら、ほぼ母材並みの高靭性を有していることがわかる。
ら逸脱した比較例を示す。すなわち、鋼23、24、2
5、26、27、29、30、33、34、35は基本
成分あるいは選択元素の内いずれかの元素が、発明の要
件を超えて添加されている例であり(表1の下線を引い
た成分が本発明の範囲を逸脱しているものである)、本
発明の重要な部分である酸化物や硫化物の粒子数の要件
は満たしているものの、靱性劣化要因となる元素が過剰
に添加された事により、母材靭性の劣化および超大入熱
HAZ靱性の劣化がいずれも助長されている。鋼28、
31ではAlとTiが下限値より小さい場合に相当し、
加熱γ粒径が母材、HAZで共に粗大化している。ま
た、鋼32はMg、Ca、REMが無添加であり、超大
入熱のHAZ靭性の劣化が大きい。以上の比較例ではい
ずれも母材靭性と溶接部HAZ靱性は低いレベルにあ
り、特にHAZ靭性の劣化代が大きい。この点は入熱量
が小さい場合も同様であった。なお、比較鋼の33と3
4に示すように、微細な酸化物が多く存在していること
から粒径が小さいにも関わらず靱性劣化が大きくなって
いるのは過剰のMgあるいは不純物の酸素が多量に含ま
れていた事に起因しており、5μm 以上の粗大な粒子が
増大したためである。
発明の1と2と化学成分が同じであるが、最終のMg量
を添加する際の溶存酸素が50ppm を超えていた例であ
り、超微細な酸化物が生成されていないことから旧γ粒
径の粗大化と顕著な靱性劣化が起きている。
し、Ti添加後にMg、Ca、REMを適切に添加、あ
るいはTiとMgの同時添加後にMgを適切に添加する
ことで、母材の加熱γ粒径を微細化することができ、さ
らに溶接入熱に関わらずHAZの加熱γ粒径も微細化す
ることができ、この二つの効果により母材靭性と溶接部
HAZ靱性の両者に優れた高強度溶接構造用鋼の製造が
可能となる。その結果、建築、橋梁、造船、海洋構造
物、ラインパイプ、建設機械などの溶接構造物のぜい性
破壊に対する安全性が大幅に向上し、産業上の価値は極
めて高いといえる。
Claims (8)
- 【請求項1】 質量%で、 C :0.01〜0.2%、 Si:0.02〜0.5%、 Mn:0.3〜2%、 P :0.03%以下、 S :0.0001〜0.03%、 Al:0.0005〜0.05%、 Ti:0.003〜0.05%を含有し、さらに、 Mg:0.0001〜0.01%、 Ca:0.0001〜0.01%、 REM:0.0001〜0.05%のうち1種または2
種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からな
り、かつ、Mg、Ca、REMの1種または2種以上
と、O、Sの一方もしくは両方を含み、粒子径0.00
5〜0.5μmである粒子が、1mm2 当たり10000
個以上分散していることを特徴とする母材靭性と溶接部
HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼。 - 【請求項2】 質量%で、 Cu:0.05〜1.5%、 Ni:0.05〜5%、 Cr:0.02〜1.5%、 Mo:0.02〜1.5%、 V :0.01〜0.1%、 Nb:0.0001〜0.2%、 Zr:0.0001〜0.05%、 Ta:0.0001〜0.05%、 B :0.0003〜0.005%のうち1種または2
種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項1に
記載の母材靭性と溶接部HAZ靭性に優れた高強度溶接
構造用鋼。 - 【請求項3】 母材の加熱γ粒径(旧オーステナイト粒
径)が再加熱温度によらず100μm 以下であり、か
つ、最終のフェライト粒径が1〜50μm であることを
特徴とする請求項1または2に記載の母材靭性と溶接部
HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼。 - 【請求項4】 溶接部HAZ組織の加熱γ粒径(旧オー
ステナイト粒径)が溶接入熱によらず10〜200μm
である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の母材靭性
と溶接部HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼。 - 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
鋼の製造において、鋼塊をAc3 点以上、1350℃以
下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延した後、自然冷却
することを特徴とする母材靭性と溶接部HAZ靭性に優
れた高強度溶接構造用鋼の製造方法。 - 【請求項6】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
鋼の製造において、鋼塊をAc3 点以上、1350℃以
下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結
晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延
をした後、自然冷却することを特徴とする母材靭性と溶
接部HAZ靭性に優れた高強度溶接構造用鋼の製造方
法。 - 【請求項7】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
鋼の製造において、鋼塊をAc3 点以上、1350℃以
下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結
晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延
をした後、1〜60℃/secの冷却速度で600℃以下ま
で冷却することを特徴とする母材靭性と溶接部HAZ靭
性に優れた高強度溶接構造用鋼の製造方法。 - 【請求項8】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
鋼の製造において、鋼塊をAc3 点以上、1350℃以
下に加熱後、再結晶温度域で熱間圧延し、さらに未再結
晶温度域において累積圧下率で40〜90%の熱間圧延
をした後、1〜60℃/secの冷却速度で600℃以下ま
で冷却し、引き続いて300℃〜Ac 1 点に加熱して焼
戻し熱処理することを特徴とする母材靭性と溶接部HA
Z靭性に優れた高強度溶接構造用鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001238167A JP4762450B2 (ja) | 2001-08-06 | 2001-08-06 | 母材靭性と溶接部haz靭性に優れた高強度溶接構造用鋼の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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