JP2001020030A - 伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板 - Google Patents

伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板

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JP2001020030A
JP2001020030A JP11189736A JP18973699A JP2001020030A JP 2001020030 A JP2001020030 A JP 2001020030A JP 11189736 A JP11189736 A JP 11189736A JP 18973699 A JP18973699 A JP 18973699A JP 2001020030 A JP2001020030 A JP 2001020030A
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steel
ferrite structure
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Takahiro Kajima
高弘 鹿島
Shunichi Hashimoto
俊一 橋本
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度且つ優れた伸びフランジ性の熱延鋼板
を提供すること。 【解決手段】 C:0.01〜0.10%、Si:2%
以下(0%を含む)、Mn:0.5〜2%、P:0.0
8%以下(0%を含む)、Al:0.01〜0.1%、
NとSが、4S(ppm)+5N(ppm)≦240の
範囲で含有し、Ti:0.1〜0.5%、Nb:0.8
%以下(0%を含む)を含み、グラニュラー・ベイニテ
ィック・フェライト組織又は/及びベイニティック・フ
ェライト組織が面積率95%以上を占める、高強度で伸
びフランジ性の著しく改善された熱延鋼板を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伸びフランジ性に
優れた高強度熱延鋼板に関し、その優れた加工性を活か
して自動車部品、例えばメンバー類やアーム類などの足
周り部品やシャーシなどの材料として有効に活用でき
る。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車や産業機械などの分野では
部材の軽量化の要望が強く、それに伴い高強度熱延鋼板
の要望が増大している。それらの用途においては、加工
性の観点から優れた伸びフランジ性も求められている。
【0003】従来より高強度鋼板としては金属組織を複
合組織とし、フェライト組織中にマルテンサイト組織を
導入したDualPhase鋼板が用いられている。ま
た、伸びフランジ性の優れた鋼板として、フェライト・
ベイナイト組織を有する鋼板(特開昭57−10164
9、特開昭61−130454)なども提案されてい
る。
【0004】ところで、自動車の足周り部品等として用
いられる鋼板には、最終部品として高強度が求められる
他、複雑な形状への加工を容易にするための高い加工性
が必要であり、特に高レベルの伸びフランジ性(穴拡げ
性)が求められる。しかし上記DualPhase鋼板
等では、高強度かつ優れた伸びフランジ性という相反す
る両特性を同時に満たすことができない。
【0005】こうした状況の下で、本出願人はかねてよ
り熱延鋼板の強度と伸びフランジ性を共に改善すべく研
究を進めており、特に低炭素鋼を対象として鋼材の化学
成分や金属組織などを主体にした研究の成果として特開
平06−172924、同07−011382、同07
−070696などを提案している。
【0006】これらの発明では、強度と伸びフランジ性
の両特性について一応の改善効果を得ているが、伸びフ
ランジ性に関してはより高レベルの要請があり、更なる
改善が求められる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、特に
伸びフランジ性が良好で加工性に優れた高強度熱延鋼板
を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明の熱延鋼板とは、質量%で、C:0.0
1〜0.10%、Si:2%以下(0%を含む)、M
n:0.5〜2%、P:0.08%以下(0%を含
む)、Al:0.01〜0.1%、Ti:0.1〜0.
5%、Nb:0.8%以下(0%を含む)を満たす他、
NとSの含有量が下記式(1)の関係を満たし、且つ断
面金属組織のうちグラニュラー・ベイニティック・フェ
ライト組織又は/及びベイニティック・フェライト組織
が面積率95%以上を占める伸びフランジ性に優れた高
強度熱延鋼板である。
【0009】 4S(ppm)+5N(ppm)≦240…(1) 上記本発明の熱延鋼板においては、C2系介在物の清浄
度(非金属系介在物の含有量)が0.050%以下、好
ましくは0.040%以下であるものが好ましく、或い
は更に、鋼中に含まれるTiNの平均サイズが20μm
以下であるものが好ましい。また上記鋼材には他の元素
として、Mo:0.5%以下、Cr:0.5%以下、
B:0.005%以下、Cu:0.5%以下、Ni:
0.5%以下、Ca:0.01%以下よりなる群から選
ばれる少なくとも1種の元素を含有させることによっ
て、他の付加的機能を持たせることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者らは前述した様な状況の
下で、強度及び伸びフランジ性の両特性が一段と高めら
れた熱延鋼板の開発を期して鋭意研究を進めた結果、低
炭素鋼を基本組成とする熱延鋼板を対象とし、金属組織
をグラニュラー・ベイニティック・フェライト組織又は
/及びベイニティック・フェライト組織(日本鉄鋼協会
基礎研究会 発行 『鋼のベイナイト写真集−1』参
照)主体とすると共に、さらに鋼材中のC2系介在物の
清浄度やTiNのサイズを適正に制御してやれば伸びフ
ランジ性が飛躍的に高められることを見出し、上記本発
明に想到したものである。
【0011】以下、本発明において鋼材の化学成分や金
属組織を定めた理由を述べる。まず、鋼材の化学成分を
定めた理由は次の通りである。
【0012】C:0.01〜0.10% Cはスラブの加熱により、固溶Tiや固溶Nbとともに
鋼中の固溶C量を高め、熱延後の冷却中に生成するグラ
ニュラー・ベイニティック・フェライト組織やベイニテ
ィック・フェライト組織を生成させるのに欠くことので
きない元素であり、こうした効果を有効に発揮させるに
は0.01%以上、より好ましくは0.03%以上含有
させる。しかしC量が多くなり過ぎると、熱延後の冷却
過程でマルテンサイト組織やM/Aconstituentの如き
伸びフランジ性を阻害する組織が生成し易くなるので、
0.10%以下、より好ましくは0.08%以下に抑え
る。
【0013】Si:2%以下(0%を含む) Siは伸びフランジ性を劣化させることなく強度を高め
るのに有効な元素であるが、多過ぎるとポリゴナル・フ
ェライトが生成しやすくなり、グラニュラー・ベイニテ
ィック・フェライト組織やベイニティック・フェライト
組織の生成が阻害される。また、熱間変形抵抗を高めて
溶接部の脆化を起こし易くなり、更には鋼板の表面性状
にも悪影響を及ぼすので、Si量は2%以下、より好ま
しくは1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下に抑
える。
【0014】Mn:0.5〜2% Mnは固溶強化元素として有効に作用する他、変態を促
進してグラニュラー・ベイニティック・フェライト組織
やベイニティック・フェライト組織の生成を促進する作
用も発揮する。こうした効果を有効に発揮させるために
は、Mnを0.5%以上、より好ましくは0.7%以上
含有させる。しかし、多過ぎると、焼入れ性が高くなっ
て変態生成物が多量に生成し、高い伸びフランジ性が得
られ難くなるので、2%以下、より好ましくは1.8%
以下に抑える。
【0015】P:0.08%以下(0%を含む) Pは延性(加工性)を劣化させることなく優れた固溶強
化作用を発揮する有効な元素であるが、多過ぎるとP偏
析を生じて加工割れなどを起こす原因になるので、0.
08%以下、より好ましくは0.06%以下に抑える。
【0016】Al:0.01〜0.1% Alは、鋼を溶製する際に脱酸剤として添加され、脱酸
作用により酸化物系介在物量の低減に寄与するが、多過
ぎるとそれ自身が酸化物系介在物源になって加工性など
に悪影響を及ぼす。こうしたAlの利害得失を考慮し
て、含有量は0.01%以上、より一般的には0.02
%以上で、上限は0.1%以下、より好ましくは0.0
8%以下に抑える。
【0017】S、N:4S(ppm)+5N(ppm)
≦240 Sは、鋼材中のMnなどと結合してMnSの如き伸びフ
ランジ性に悪影響を及ぼす介在物の生成源となる有害元
素であるので、低含有量であることが望ましい。しか
し、脱硫などの製鋼設備上、極端な低S化はN量の増加
を招き、鋼中の多量のNがTiと反応してTiNを生成
し、伸びフランジ性を劣化させる。従ってN量の増大に
よるC2系介在物の生成を抑制しつつ低S化による伸び
フランジ性の向上と両立させるには、SとNの個々の含
有量を規定するのではなく、両者の含有量を総合的観点
から規制するのが最も効果的である。こうした観点から
更に追求した結果、後記図1で詳述する如く、SとNの
含有量を前記式(1)を満たす範囲に抑えれば、介在物
に由来する伸びフランジ性の低下が確実に抑えられるこ
とをつきとめた。
【0018】Ti:0.1〜0.5%及びNb:0.8
%以下(0%を含む) TiおよびNbは、熱間圧延前の高温スラブ加熱によっ
て鋼中に固溶し、この固溶Tiや固溶Nbが熱延終了後
の急冷時におけるポリゴナル・フェライトの核生成を抑
制し、転位密度の高いグラニュラー・ベイニティック・
フェライト組織やベイニティック・フェライト組織の生
成を助長する。こうした作用を有効に発揮させるにはT
iを0.1%以上、より好ましくは0.2%以上含有さ
せる。しかし、Tiが0.5%、Nbが0.8%を越え
ると、熱間加工組織がそのまま残存して適正な金属組織
が得られなくなる。しかも、TiNなどのC2系介在物
が多量に生成すると共にTiNのサイズも大きくなり、
伸びフランジ性を劣化させるのでそれ以下に抑えなけれ
ばならない。
【0019】本発明における必須の元素は以上の通りで
あり、通常、残部はFeおよび不可避不純物とするが、
必要によっては次の様な改善効果を得るため、Mo、C
r、B、Cu、Ni、およびCaよりなる群から選ばれ
る少なくとも1種を適量含有させることも有効である。
【0020】Cu:Cuは固溶強化元素として強度向上
に作用するほか、グラニュラー・ベイニティック・フェ
ライト組織やベイニティック・フェライト組織の生成を
促進して伸びフランジ性の向上にも有効に作用する。し
かしそれらの効果は約0.5%で飽和し、それ以上の添
加は経済的に無駄となるばかりでなく、熱間圧延工程で
へげ疵等の表面欠陥を生じる原因になるので、0.5%
以下に抑えなければならない。
【0021】Ni:Niは上記Cuの添加によって生じ
る熱間加工時の表面欠陥を防止するうえで有効に作用す
る元素であり、特にCuを添加する場合にはCu量とほ
ぼ等量、従って0.5%以下のNiを添加し、熱間圧延
時の表面欠陥を防止することが望ましい。
【0022】Mo、Cr:これらの元素は固溶強化元素
として有効に作用する他、変態を促進して、グラニュラ
ー・ベイニティック・フェライト組織やベイニティック
・フェライト組織の生成を促進する作用も有している。
それらの作用はMo、Crの添加量に対応して発揮され
るが、より明瞭には夫々0.05%程度以上含有させる
ことが推奨される。しかし、これら元素の含有量が多く
なり過ぎると、マルテンサイトやM/Aconstituentの
如き伸びフランジ性に悪影響を及ぼす低温変態生成物が
多量に生成し易くなるので、それぞれ0.5%以下に抑
えなければならない。
【0023】Ca:Caは、鋼中のSと結合して伸びフ
ランジ性に無害な球状硫化物CaSを生成することによ
り、穴拡げ性に悪影響を及ぼすMnSの生成を抑える作
用を発揮する。しかしその効果は約0.01%で飽和す
るので、それ以上の添加は経済的に無駄である。
【0024】B:Bは、焼入れ性を向上させる元素であ
り、グラニュラー・ベイニティック・フェライト組織や
ベイニティック・フェライト組織を生成するうえで有効
な元素であるが、多過ぎてもその効果が飽和するため経
済性などを考慮して、0.005%以下、より好ましく
は0.003%以下に抑える。
【0025】次に、金属組織と介在物について詳述す
る。
【0026】まず伸びフランジ加工中のボイド発生を抑
えるには、介在物の量を低減して清浄度を高めると共
に、鋼中TiNのサイズを小さくすることが有効であ
る。特に、伸びフランジ性に顕著な悪影響を及ぼす硫化
物系および窒化物系介在物を低減させ、本発明で意図す
るレベルの伸びフランジ性を得るには、後記図1でも明
らかする様に、N量とS量が前記式(1)を満たす様に
それらの総含有量を低減すると共に、C2系介在物の清
浄度を0.050%以下、好ましくは0.040%以下
に抑え、更にはTiNのサイズを平均粒径で20μm以
下にすることが好ましい。なお、C2系介在物の清浄度
やサイズは、介在物源となるNやTi等の量を低減する
ことによって、低くすることができる他、そのサイズ
は、連続鋳造時のスラブ冷却速度を速めることによって
も小さくできる。ここで言うC2系介在物の清浄度はJ
IS法(JIS G 0555)によって求められる値を
意味する。
【0027】ところで介在物の存在による割れ感受性
は、硬度の高い相ほど顕著に現れる。例えば従来例の如
くフェライト・ベイナイト相のような複合組織で高強度
を達成する場合は、強度の低い(硬度の低い)ポリゴナ
ル・フェライト相と共存するベイナイト相の強度(硬
度)を、高くしなければならず、該硬質のベイナイト相
中に介在物が存在する場合には、介在物による割れ感受
性は高くなる。これに対し、グラニュラー・ベイニティ
ック・フェライト組織やベイニティック・フェライト組
織の単相組織あるいはこれらの2相組織では、軟質のポ
リゴナル・フェライト相を含まないため、前述のフェラ
イト・ベイナイト鋼の例の様にベイナイト相より強度を
高くする必要がない。このため、グラニュラー・ベイニ
ティック・フェライト組織やベイニティック・フェライ
ト組織の中に含まれる介在物は、同程度の強度のフェラ
イト・ベイナイト鋼のベイナイト相中に存在する介在物
よりも、割れ感受性に及ぼす影響が小さく、その結果と
して割れが発生し難くなる。従って本発明では金属組織
をグラニュラー・ベイニティック・フェライト組織又は
/及びベイニティック・フェライト組織に特定したうえ
で、介在物の清浄度と特にTiNのサイズを適正に制御
することが極めて重要となるのである。
【0028】本発明で言う上記グラニュラー・ベイニテ
ィック・フェライト組織やベイニティック・フェライト
組織は、光学顕微鏡やSEM観察ではアシキュラー状を
呈しており、明確な違いを判定するにはTEM観察によ
る下部組織の同定が必要となる。そしてベイニティック
・フェライト組織は、ベイナイト組織が転位密度の高い
ラス状組織を持った下部組織を有しており、またグラニ
ュラー・ベイニティック・フェライトは、ラス状組織を
有していないものの転位密度の高い下部組織を有してい
る。これらは組織内に炭化物を有していない点で、ベイ
ナイト組織とは明らかに異なり、また、転位密度がない
か或いは極めて少ない下部組織を持ったポリゴナル・フ
ェライト、或いは細かいサブグレイン等の下部組織を持
った準ポリゴナル・フェライト組織とも異なっている
(日本鉄鋼協会 基礎研究会 発行『鋼のベイナイト写
真集−1』参照)。
【0029】そして本発明における上記グラニュラー・
ベイニティック・フェライト組織及びベイニティック・
フェライト組織とは、両方が混在してもよく、それらが
トータルとして金属組織中の面積率95%以上、より好
ましくは面積率98%以上を占めるものであれば、これ
ら以外の組織が少量混在していても本発明の目的は十分
に達成できる。
【0030】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範
囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、そ
れらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】実施例 表1に示す化学成分の鋼スラブを使用し、各鋼スラブ
を、1250℃に加熱し、30分保持した後、通常の熱
間圧延により仕上温度850℃で2.5mm(厚み)に
仕上げ圧延した。その後、空冷およびミスト冷却してか
ら、500℃以下の巻取温度で巻き取り、空冷して熱延
鋼板を製造した。実験用スラブは、溶製後の冷却条件を
変えることによって、TiNの大きさなどを変化させ
た。
【0032】得られた熱延鋼板について、JIS5号に
準じて圧延方向の引張試験、穴拡げ試験を行なうと共
に、SEMおよびTEM組織観察により組織の同定を行
った。
【0033】また清浄度は、光学顕微鏡組織からJIS
法(JIS G 0555)によってC2系介在物を観
察し、TiNの平均サイズは、上記JIS法の全視野内
で観察されるTiNについて長軸、短軸方向の長さを測
定し、両者の和を2分して個々の大きさを求め、更に全
TiNについてその平均値を求めた。
【0034】なお、穴拡げ試験は、直径10mmの打ち
抜き穴を60°円錐ポンチで押し拡げ、割れが鋼板板厚
を貫通した時点での穴径dを測定し、次式により穴拡げ
率λを求めた。結果を表2,3に示す。 λ=〔(d−d0)/10〕×100(%)(d0=10
mm)
【0035】表2は鋼材の化学成分と熱延条件、ならび
に金属組織が物性にどのような影響を与えるかを示すも
ので,表3は金属組織などに加えて,C2系介在物清浄
度とTiNサイズが物性にどのような影響を与えるかを示
すものである。
【0036】
【表1】
【0037】表1に示すように、鋼No.2はCが多いとい
う点で請求項1の要件を満足せず、鋼No.5,6,7は4S
+5Nで与えられる(1)式を満足しないという点で請
求項1の要件を満足しておらない。
【0038】
【表2】
【0039】表2における実験No.2,4,9,12
〜14,16,17は、請求項1の規定要件(断面金属
組織のうちグラニュラー・ベイニティック・フェライト
組織とベイニティック・フェライト組織の面積率総和が
95%以上を占める)を満たす実施例であり、引張り強
度(TS)、穴拡げ率(λ値)共に良好であり、高強度
でかつ優れた伸びフランジ性を有していることが分か
る。
【0040】これらに対し、上記以外の例は請求項1で
定める要件のいずれかを欠く比較例であり、下記の如く
強度、穴拡げ率のいずれかが不良で本発明の目的を果た
すことができない。 ・No.1:ポリゴナル・フェライトを主相とするもの
で、強度が低い。 ・No.3:鋼材のC量が規定範囲を超えて過剰であ
り、金属組織がフェライト+マルテンサイトの2相組織
であり、しかも清浄度も低いためλ値が劣悪である。 ・No.5,7,8:金属組織面では請求項1の要件を
満足しているが、鋼材のS,N含有量から求められる
(1)式を満足しない鋼種No.5,6,7を用いており、λ
値が低い。伸びフランジ性に悪影響を及ぼすC2系介在
物が多く生成するためと考えている。 ・No.6,15:金属組織がフェライト+ベイナイトの2
相組織であり、λ値が劣悪である。
【0041】
【表3】
【0042】・No.1,7〜15、17、18、19:グラニュ
ラー・ベイニティック・フェライト組織とベイニティッ
ク・フェライト組織の面積率総和が95%を満足すると共
に,C2系介在物清浄度およびTiNサイズが本発明の請求
項要件を満足し,強度およびλ値が満足すべき値を与え
ている。 ・No.2:金属組織中のベイニティック・フェライト
組織が95%以上であるにもかかわらず、鋼材の4S+
5Nで与えられる値が請求項1の要件を満足しないた
め、C2系介在物清浄度およびTiNサイズが本発明の請求
項2,3の要件を満足せず、λ値が低い。 ・No.3,4:金属組織中のベイニティック・フェラ
イト組織が100%であるにかかわらず、鋼材の4S+
5Nで与えられる値が請求項1の要件を満足しないこと
が原因となって、TiNサイズが本発明の請求項3の要件
を満足せず、λ値が低い。 ・No.5:鋼材の金属組織がグラニュラー・ベイニテ
ィック・フェライト組織とベイニティック・フェライト
組織を全く含まず、またC2系介在物清浄度も悪いた
め、λ値が低く、伸びフランジ性が悪い。 ・No.6,16:鋼材の4S+5Nで与えられる値が請
求項1の要件を満足しないことが原因となって、C2
介在物が多く生成し、λ値が低い。 ・No.20〜22:鋼材の金属組織がグラニュラー・
ベイニティック・フェライト組織とベイニティック・フ
ェライト組織を全く含まず、フェライトとベイナイトの
みで構成されるため,λ値が低い。
【0043】ところで図1は、上記表1〜3に示した実
験データの中から、鋼材中に含まれるS、N量から求め
られる[4S+5N]の値が伸びフランジ性に及ぼす影響
を整理して示したグラフであり、このグラフから、硫化
物系及び窒化物系介在物の悪影響を受けることなく高レ
ベルの伸びフランジ性を確保するには、S,N含有量を
前記式(1)の範囲内に抑える必要があることが確認で
きる。
【0044】また図2は、上記表1〜3に示した実験デ
ータの中から、金属組織別およびTiNサイズ別に、清
浄度が穴拡げ率(λ)に与える影響を示したものであ
る。このグラフからも明らかなように、清浄度が同レベ
ルであっても、金属組織がベイニティック・フェライト
組織である方が、フェライト・ベイナイト組織の場合よ
りも高い穴拡げ率(λ)を示しており、また、金属組織
がベイニティック・フェライト組織である方が、清浄度
の制御によるλ値の向上が顕著であることを確認でき
る。更に、金属組織が同じベイニティック・フェライト
組織であっても、TiNの平均サイズを20μm以下に
制御することで、より高いλ値が得られることを確認で
きる。
【0045】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、化
学成分の特定された低炭素鋼を対象として、金属組織を
グラニュラー・ベイニティック・フェライト組織又は/
及びベイニティック・フェライト組織主体とし、かつ鋼
の清浄度およびTiNの平均サイズを制御することによ
り、高強度で且つ卓越した伸びフランジ性を示し、例え
ば自動車用の各種部品材料等として有用な鋼材を提供し
得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験で用いた鋼材中のN含有量とS含有量が穴
拡げ率に与える影響を整理して示すグラフである。
【図2】実験で用いた鋼材の金属組織別およびTiNの
平均サイズ別に、C2系介在物清浄度が穴拡げ率に及ぼ
す影響を整理して示すグラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で C :0.01〜0.10%、 Si:2%以下(0%を含む)、 Mn:0.5〜2%、 P :0.08%以下(0%を含む)、 Al:0.01〜0.1%、 Ti:0.1〜0.5%、 Nb:0.8%以下(0%を含む)を満たす他、NとS
    の含有量が下記式(1)を満たし、断面金属組織のうち
    グラニュラー・ベイニティック・フェライト組織又は/
    及びベイニティック・フェライト組織が面積率95%以
    上を占めることを特徴とする伸びフランジ性に優れた高
    強度熱延鋼板。 4S(ppm)+5N(ppm)≦240…(1)
  2. 【請求項2】 C2系介在物の清浄度が0.050%以
    下である請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
  3. 【請求項3】 鋼中に含まれるTiNの平均サイズが2
    0μm以下である請求項1または2に記載の高強度熱延
    鋼板。
  4. 【請求項4】 鋼材が、更に他の元素として、Mo:
    0.5%以下、Cr:0.5%以下、B:0.005%
    以下、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、C
    a:0.01%以下よりなる群から選択される少なくと
    も1種の元素を含むものである請求項1〜3のいずれか
    に記載の高強度熱延鋼板。
JP11189736A 1999-07-02 1999-07-02 伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板 Pending JP2001020030A (ja)

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