JP2003047500A - ターゲット核酸断片の検出方法及びターゲット核酸断片の検出キット - Google Patents

ターゲット核酸断片の検出方法及びターゲット核酸断片の検出キット

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JP2003047500A
JP2003047500A JP2001233859A JP2001233859A JP2003047500A JP 2003047500 A JP2003047500 A JP 2003047500A JP 2001233859 A JP2001233859 A JP 2001233859A JP 2001233859 A JP2001233859 A JP 2001233859A JP 2003047500 A JP2003047500 A JP 2003047500A
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JP2001233859A
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Yoshihiko Makino
快彦 牧野
Toshihiro Mori
寿弘 森
Yoshihiko Abe
義彦 阿部
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Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特殊な技術や複雑な操作を必要とせず
に、誰でもが簡便かつ迅速に小型の装置を用いて実施す
ることのできるターゲット核酸断片の検出方法、及び省
スペースで自動化が可能なターゲット核酸断片の検出キ
ットを提供する。 【解決手段】 上記課題は、ターゲット核酸断片の特定
の塩基配列に基づくポリメラーゼ伸長反応の際に生成す
るピロ燐酸に対して、酸化酵素を含む酵素反応試薬で処
理し、酸化酵素が作用する際に起こる電子移動を、表面
に酸化還元活性を有する分子が固定されている酸化還元
活性分子修飾電極を用いて、電気化学的に電流として検
出する方法、及びその方法を使用した検出キットによっ
て解決される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウイルス、細菌等によ
る感染症の臨床検査、及び個人の遺伝的な特徴による遺
伝的疾患の検査等に有効である、特定の塩基配列を有す
るターゲット核酸断片を検出する方法に係わり、特に、
ターゲット核酸を鋳型とするポリメラーゼ伸長反応が進
行したか否かを酸化還元活性分子修飾電極を用いて検出
することにより、簡便にターゲット核酸断片の存在また
はターゲット核酸断片の塩基配列を検出する方法、及び
その方法を使用するターゲット核酸断片の検出キットに
関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ウイルス、細菌等による感染
症の臨床検査においては、血液等の体液、糞便、喀痰等
を試料とし検体の培養を行い、ウイルス、細菌等の病原
体を同定することが行われている。しかしながらこれら
の方法は、検体を培養するのに非常に長い時間を必要と
したり、ウイルス、細菌の種類によっては培養自体がう
まくゆかないという問題もある。また検体を培養するに
は特別の技術を要する点でも、必ずしも迅速、簡便に満
足のいく結果が得られる方法ではない。
【0003】また、抗原抗体反応を利用してウイルス、
細菌等の病原体を同定する方法も行われている。この方
法は、検査の自動化も可能であり、迅速性、簡便性の点
では良い方法である。しかしながら、病原体を抗原とし
て検出する抗原検出方法においては、試料中に存在する
病原体の量が不足することにより、病原体を検出できな
い場合があり、感度的に問題がある。また、病原体の種
類に固有な抗原部位を決定することが困難であるという
問題もある。一方、病原体の感染により体内で産生され
た抗体を検出する抗体検出法においては、病原体の感染
から抗体が産生されるまでに時間が必要で、その期間は
検出できないという問題がある。
【0004】これらに対して、ウイルス、細菌等の病原
体の種類に固有な塩基配列を持つ核酸断片(ターゲット
核酸断片)を、塩基配列の相補性を利用して検出する方
法は、病原体を直接に同定することを可能にする方法で
あり、DNAプローブ法またはPCR(ポリメラーゼチ
ェーンリアクション)法などの遺伝子検査法として普及
している。例えば、HCV(C型肝炎ウイルス)遺伝子
検査法は、C型肝炎のインターフェロン(INF)治療
におけるINF投与の検討、治癒のモニタリングにおい
て、HCV量を直接知ることのできる方法として威力を
発揮している。
【0005】今後さらに、ウイルス、細菌等の病原体の
遺伝子的特長(Genotype)が明らかにされ、そ
の遺伝子的特徴を利用した新しい治療薬が開発されるこ
とが期待できる。その場合には、病原体の同定のみなら
ず、その病原体の遺伝子的特徴を知ることが非常に重要
である。まさに遺伝子検査法はその需要を満たすことの
できる検査方法である。
【0006】一方、病原体の同定に限らず、遺伝子検査
法では個人の遺伝子的な特徴を直接検出することが可能
であるので、遺伝子疾患の原因である遺伝子の変異の検
出、癌や糖尿病などの生活習慣病などの病気にかかりや
すさを左右している遺伝子的要因の検出にも用いること
ができる。特に、ヒトゲノムの全塩基配列が決定された
後は、ポストゲノム研究として、今まで以上に遺伝子的
特長と疾患の関係が明らかにされていき、さらに遺伝子
的特長を利用した治療薬が開発されていくことが期待で
きる。ポストゲノム研究の進展に伴って、今後ますます
遺伝子検査法の需要が大きくなっていくことが予想され
る。
【0007】しかしながら、現在行われている遺伝子検
査法には特殊な技術、複雑な操作、及び特殊な装置等が
必要であり、遺伝子検査法を実施できる施設は、大規模
な検査センターなどに限られている。ウイルス、細菌等
による感染症の検査においても、また個人の遺伝子的特
長の検査においても、診断、治療の指針の決定がその場
で、できるだけ速く行えればより効力を発揮する。その
ためには、誰でもが簡単な操作で実施でき、検査結果を
迅速に得ることのできる新しい遺伝子検査法が必要であ
る。
【0008】これまでも簡便性、迅速性の向上を目指し
て、ターゲット核酸断片を鋳型としたポリメラーゼ伸長
反応の進行の検出を利用した遺伝子検査法が開発されて
いる。ターゲット核酸断片の特定核酸領域をPCRによ
り増幅する際、増幅産物の生成の過程を蛍光強度の変化
としてリアルタイムで検出する方法(Real Tim
e PCR法)は、PCR後に増幅産物を電気泳動し、
結果を解析するという工程を必要としないことから迅速
性の点で良い方法であり、TaqManプローブ法(P
E Biosystems社)、およびMolecul
ar Beacon法(Stratagene社)とし
て商品化されている。しかし、これらの方法は、FRE
T(fluorescence resonance e
nergytransfer)を利用した方法で、実施
には蛍光強度の変化を測定することのできる装置と、蛍
光色素とそのクエンチャー(quencher)が組み
合わせて標識された特殊なハイブリダイゼーションプロ
ーブを用意する必要がある点で問題があり、未だ特殊技
術の域を出ていない。
【0009】また、インターカレータ性蛍光物質の存在
下でターゲット核酸断片の特定核酸領域をPCRで増幅
し、その際の蛍光強度の変化を検出する方法(IM−P
CR:intercaration monitori
ng PCR法)が、文献「医学のあゆみ Vol.17
3、No.12、1995」に記載されている。この方
法は、Real Time PCR法としては、特別なハ
イブリダイゼーションプローブを必要としない点で良い
が、やはり実施には蛍光強度の変化を測定することので
きる装置が必要である。また、ターゲット核酸断片の特
定核酸領域のPCR増幅の有無にかかわらず、インター
カレータ性蛍光物質は系内に存在する核酸断片全てに結
合するので、特異性の点でも問題がある。
【0010】一方、ターゲット核酸断片の特定領域にヌ
クレアーゼ耐性を有するオリゴヌクレオチドプライマー
をハイブリダイズさせ、デオキシヌクレオシド3リン酸
(dNTP)、DNAポリメラーゼ、及びヌクレアーゼ
の存在下で伸長反応、分解反応を繰り返して、生成する
ピロ燐酸又はデオキシヌクレオシドモノリン酸を検出す
る方法が、特開平7−231799号公報に開示されて
いる。ポリメラーゼ伸長反応に伴って生成するピロ燐酸
を検出することによるターゲット核酸断片の検出方法
は、ポリメラーゼ伸長反応の副産物である一般化学物質
を検出することで、ターゲット核酸断片の検出を可能に
している点で優れている。しかしながら実施の形態にお
いて、ピロ燐酸をアデノシン−5’−ホスホサルフェー
トおよびアデノシン3燐酸(ATP)スルフリラーゼと
反応させてアデノシン3燐酸(ATP)を生成させ、次
いで生成したATPをルシフェリンとルシフェラーゼと
の反応時に生じる発光を検出するために、検出には発光
を測定することのできる装置が必要であり、簡便性の点
で問題が残る。また、ヌクレアーゼ耐性を有するプライ
マーを使用し、かつDNAポリメラーゼとヌクレアーゼ
を併用し、ポリメラーゼ反応とヌクレアーゼ反応を繰り
返して実施することで、実質的に連続して伸長反応が進
行しない条件で実施される点では本発明とは異なるもの
である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特殊な技術
や複雑な操作を必要とせずに、誰でもが簡便かつ迅速に
小型の装置を用いて実施することのできるターゲット核
酸断片の検出方法を提供することを課題とする。またこ
れらの目的を達成するために、省スペースで自動化が可
能なターゲット核酸断片の検出キットの提供も課題とす
るものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決するために、ターゲット核酸断片の特定の塩基配列
に基づくポリメラーゼ伸長反応の際に生成するピロ燐酸
に対して、酸化酵素を含む酵素反応試薬で処理し、酸化
酵素が作用する際に起こる電子移動を、表面に酸化還元
活性を有する分子が固定されている酸化還元活性分子修
飾電極を用いて、電気化学的に電流として検出すること
で、簡便性、迅速性に優れたターゲット核酸断片の検出
を行えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】即ち、本発明は、少なくとも一部の塩基配
列が既知であるターゲット核酸断片に対し、当該ターゲ
ット核酸断片の一部と相補的な少なくとも一種のプライ
マー、少なくとも一種のデオキシヌクレオシド3リン酸
(dNTP)、及び少なくとも一種のポリメラーゼの存
在下に、前記ターゲット核酸断片を鋳型にして前記プラ
イマーの3’末端を起点とするポリメラーゼ伸長反応が
連続して進行するか否かにより、前記ターゲット核酸断
片の存在またはターゲット核酸断片の塩基配列を検出す
る方法において、前記ポリメラーゼ伸長反応により生成
するピロ燐酸に対して、少なくとも一種の酸化酵素を含
む酵素反応試薬を作用させ、表面に酸化還元活性を有す
る分子が固定されている酸化還元活性分子修飾電極を用
いて、電気化学的に電流を測定することを特徴とするタ
ーゲット核酸断片の検出方法にある。
【0014】また、本発明の別の形態での、ターゲット
核酸断片検出方法の好ましい形態は以下の通りである。 (イ) ピロ燐酸に作用する酵素反応試薬が、キサントシ
ンまたはイノシン、ピロホスファターゼ、プリンヌクレ
オシドホスホリラーゼ、及びキサンチンオキシダーゼを
含有する酵素反応試薬である。 (ロ) 酸化還元活性分子修飾電極が、フェロセニル基を
有する分子が表面に固定されている電極である。 (ハ) ポリメラーゼが、DNAポリメラーゼI、DNA
ポリメラーゼIのクレノー断片、Bst DNAポリメ
ラーゼ、及び逆転写酵素(リバーストランスクリプター
ゼ)からなるグループから選択されるポリメラーゼであ
る。 (ニ) 電気化学的な電流の測定が、サイクリックボルタ
ンメトリーまたはディファレンシャルパルスボルタンメ
トリーである。
【0015】また、本発明の別の形態は、キサントシン
またはイノシン、ピロホスファターゼ、プリンヌクレオ
シドホスホリラーゼ、及びキサンチンオキシダーゼを含
有する酵素反応試薬、及び酸化還元活性分子修飾電極の
各要素を含むキットにある。
【0016】さらに、本発明の別の形態は、検出するタ
ーゲット核酸断片の一部と相補的な少なくとも一種のプ
ライマー、少なくとも一種のデオキシヌクレオシド3リ
ン酸(dNTP)、及び少なくとも一種のポリメラーゼ
を含有するポリメラーゼ伸長反応試薬、キサントシンま
たはイノシン、ピロホスファターゼ、プリンヌクレオシ
ドホスホリラーゼ及びキサンチンオキシダーゼを含有す
る酵素反応試薬、及び酸化還元活性分子修飾電極の各要
素を含むキットにある。
【0017】以下に本発明の実施の形態について詳細に
説明する。 (A) ターゲット核酸断片:本発明において検出の対象
となるターゲット核酸断片とは、少なくとも一部の塩基
配列が既知であるポリヌクレオチドであり、動物、微生
物、細菌、植物などすべての生物から単離されるゲノミ
ックDNA断片が対象となり得る。またウイルスから単
離可能なRNA断片またはDNA断片、およびmRNA
を鋳型として合成されたcDNA断片も対象とすること
が可能である。ターゲット核酸断片はできる限り精製さ
れ、核酸断片以外の余分な成分が取り除かれていること
が望ましい。例えば、動物(例えば人間)の血液から単
離したゲノミックDNA断片を対象とする場合または血
液中に存在する感染細菌やウイルスの核酸(DNAまた
はRNA)断片を対象とする場合、単離の過程で破壊さ
れた白血球細胞膜、赤血球中から溶出したヘモグロビ
ン、および血液中に存在するその他の一般化学物質は、
十分に取り除いておく必要がある。特にヘモグロンビン
は、続いておこなうポリメラーゼ伸長反応を阻害する。
また血液中に一般生化学物質として存在するピロ燐酸や
燐酸は、ポリメラーゼ伸長反応により生成するピロ燐酸
の正確な検出の妨害要因になる。
【0018】(B) ターゲット核酸断片と相補的なプラ
イマー:本発明において使用するターゲット核酸断片と
相補的なプライマーは、ターゲット核酸断片の塩基配列
が既知である目的の部位に対して相補的な塩基配列を有
するオリゴヌクレオチドである。このターゲット核酸断
片と相補的なプライマーがターゲット核酸断片の目的の
部位にハイブリダイゼーションすることで、プライマー
の3’末端を起点に、ターゲット核酸を鋳型としポリメ
ラーゼ伸長反応が進行する。即ち、本発明においてはプ
ライマーがターゲット核酸断片の目的の部位を認識して
特異的にハイブリダイゼーションするか否かがポイント
となる。本発明で使用するプライマーの好ましい塩基数
は5〜60塩基である。特に好ましくは15〜40塩基
である。プライマーの塩基数は少なすぎると、ターゲッ
ト核酸断片の目的の部位との特異性が低下するだけでな
く、ターゲット核酸断片とのハイブリッド自体が安定に
形成できない。また、プライマーの塩基数は多すぎる
と、プライマー間またはプライマー内で塩基間の水素結
合により2本鎖を形成してしまい、やはり特異性が低下
する。
【0019】本発明の方法を用いてターゲット核酸断片
の存在を検出する場合、ターゲット核酸断片の異なる部
位に対して、それぞれの部位に相補的なプライマーを複
数使用することも可能である。このようにターゲット核
酸断片を複数の部位で認識することで、ターゲット核酸
断片の存在の検出において、特異性が向上する。また、
ターゲット核酸断片の一部を増幅(例えばPCR法)す
る場合には、その増幅法に応じて複数のプライマーを設
計することも可能である。本発明の方法を用いてターゲ
ット核酸断片の塩基配列を検出する場合、特に変異また
は多型の有無を検出する場合は、目的の変異または多型
の部分を含むように、変異または多型に対応する塩基の
種類でプライマーを設計する。そうすることで、ターゲ
ット核酸断片の変異または多型の有無により、ターゲッ
ト核酸断片へのプライマーのハイブリダイゼーションの
有無に差異が生じ、結果的にポリメラーゼ伸長反応の差
異として検出することが可能になる。また、変異または
多型に対応する部分をプライマーの3’末端付近に設定
することでポリメーラーゼの反応部位の認識に差異が生
じ、結果的にポリメラーゼ伸長反応の差異として検出す
ることも可能である。
【0020】(C) ポリメラーゼ:本発明において使用
するポリメラーゼは、ターゲット核酸がDNAの場合
は、ターゲット核酸断片の一本鎖に変性された部分にプ
ライマーがハイブリダイゼーションすることで形成され
た2本鎖の部分を起点として、5’→3’の方向に、デ
オキシヌクレオシド3リン酸(dNTP)を材料とし
て、ターゲット核酸断片を鋳型にして相補的な伸長反応
を触媒するDNAポリメラーゼである。具体的に使用さ
れるDNAポリメラーゼとしては、DNAポリメラーゼ
I、DNAポリメラーゼIのクレノー断片、Bst D
NAポリメラーゼ等がある。DNAポリメラーゼは目的
に応じて選択または組み合わせることが可能である。例
えば、ターゲット核酸断片の一部を増幅(例えばPCR
法)する場合には、耐熱性に優れたTaq DNAポリ
メラーゼを用いることが有効である。また、文献「BI
O INDUSTRY,Vol.18,No.2,20
01」に記載されている増幅法(LAMP法:Loop
−mediated Isothermal Ampli
fication of DNA)を用いてターゲット核
酸断片の一部を増幅する場合には、5’→3’方向への
ヌクレアーゼ活性がなく、かつ鋳型上の2本鎖DNAを
1本鎖DNAとして遊離させながら伸長反応を触媒する
鎖置換型のDNAポリメラーゼとして、Bst DNA
ポリメラーゼを使用することが有効である。その他、目
的に応じて、3’→5’方向へのヘキソキナーゼ活性を
持つ、DNAポリメラーゼα、T4 DNAポリメラー
ゼ、及びT7 DNAポリメラーゼを併用することも可
能である。
【0021】また、RNAウイルスのゲノミック核酸ま
たはmRNAがターゲット核酸断片である場合には、逆
転写活性を有するリバーストランスクリプターゼを使用
することが可能である。さらにリバーストランスクリプ
ターゼとTaq DNAポリメラーゼを併用することも
可能である。
【0022】(D) ポリメラーゼ伸長反応:本発明にお
いて対象となるポリメラーゼ伸長反応には、前記(A)に
記載されているようなターゲット核酸断片の1本鎖に変
性された部分の一部に特異的にハイブリダイゼーション
した、前記(B)に記載されているようなターゲット核酸
断片と相補的なプライマーの3’末端を起点として、デ
オキシヌクレオシド3リン酸(dNTP)を材料とし
て、前記(C)に記載されているようなポリメラーゼを触
媒として、ターゲット核酸断片を鋳型にして進行する相
補的な核酸の伸長反応の全てが含まれる。この相補的な
核酸の伸長反応とは、少なくとも2回(2塩基分)、連
続しての伸長反応が起こることをさしている。
【0023】以下に、例として代表的なポリメラーゼ伸
長反応、およびポリメラーゼ伸長反応を伴うターゲット
核酸断片の目的部位の増幅反応の例を示す。ターゲット
核酸断片を鋳型にして、5’→3’の方向へのポリメラ
ーゼ伸長反応を一度だけ行う場合が最も単純である。こ
のポリメラーゼ伸長反応は等温の条件で実施することが
できる。この場合には、ポリメラーゼ伸長反応の結果と
して生成するピロ燐酸の量は、最初のターゲット核酸断
片の量に比例する。即ち定量的にターゲット核酸断片の
存在を検出するのに適した方法である。
【0024】ターゲット核酸の量が少ない場合は、ポリ
メラーゼ伸長反応を利用した何らかの手段でターゲット
核酸の目的部分を増幅することが好ましい。ターゲット
核酸の増幅には、これまで開発、発明されてきた各種の
方法を使用することができる。ターゲット核酸の増幅法
で最も一般的で普及している方法はPCR(ポリメラー
ゼチェーンリアクション)法である。PCR法は、反応
液の温度の上げ下げを周期的にコントロールすることに
より、ディネイチャー(核酸断片を2本鎖から1本鎖に
変性する工程)→アニーリング(1本鎖に変性した核酸
断片にプライマーをハイブイリダイズさせる工程)→ポ
リメラーゼ(Taq DNAポリメラーゼ)伸長反応→
ディネイチャーの周期的な工程を繰り返すことで、ター
ゲット核酸断片の目的部分を増幅する方法である。最終
的に、ターゲット核酸断片の目的部位は初期量の100
万倍にも増幅し得る。そのためPCR法の増幅過程での
ポリメラーゼ伸長反応で生成するピロ燐酸の蓄積量も多
くなり、検出が容易になる。しかしながらPCR法を用
いた場合には、ターゲット核酸断片の目的部位は指数的
に増幅するために、ターゲット核酸断片の初期量を定量
的に検出することは困難である。
【0025】特開平5−130870号公報に記載され
ている、エクソヌクレアーゼを用いたサイクリングアッ
セイ法もポリメラーゼ伸長反応を利用した、ターゲット
核酸断片の目的部位の増幅法の一つである。この方法は
ターゲット核酸断片の目的部位に特異的にハイブリダイ
ゼーションしたプライマーを起点とした、ポリメラーゼ
伸長反応とともに、5’→3’エクソヌクレアーゼを作
用させて、プライマーを逆方向から分解する方法であ
る。分解したプライマーの代わりに新たなプライマーが
ハイブリダイゼーションし、再度DNAポリメラーゼに
よる伸長反応が進行する。このポリメラーゼによる伸長
反応と、この先に伸長した鎖を外すエクソヌクレーアゼ
による分解反応が順次、周期的に繰り返される。ここ
で、ポリメラーゼによる伸長反応とエクソヌクレーアゼ
による分解反応は等温条件で実施することが可能であ
る。このサイクリングアッセイ法においても繰り返され
るポリメラーゼ伸長反応で生成するピロ燐酸の蓄積量も
多くなり、検出が容易になる。
【0026】近年、新しいターゲット核酸断片の目的部
位の増幅法として、LAMP(Loop−mediat
ed Isothermal Amplificatio
nof DNA)法が、文献「BIO INDUSTR
Y,Vol.18,No.2,2001」に記載されて
いる。この方法は、ターゲット核酸断片の少なくとも6
個所の特定部位を相補的に認識する少なくとも4種のプ
ライマーと、5’→3’方向へのヌクレアーゼ活性がな
く、かつ鋳型上の2本鎖DNAを1本鎖DNAとして遊
離させながら伸長反応を触媒する鎖置換型のBst D
NAポリメラーゼを使用することで、等温条件でターゲ
ット核酸断片の目的部位を、特別な構造として増幅する
方法である。このLAMP法の増幅効率は高く、ポリメ
ラーゼ伸長反応で生成するピロ燐酸の蓄積量も非常に多
くなり、検出が容易になる。
【0027】ターゲット核酸断片がRNA断片の場合
は、逆転写活性を有するリバーストランスクリプターゼ
を使用し、RNA鎖を鋳型にして伸長反応を行うことが
可能である。さらにリバーストランスクリプターゼとT
aq DNAポリメラーゼを併用して、RT(リバース
トランスクリプション)反応に引き続いてPCR反応を
行う、RT−PCR法を用いることができる。このRT
反応またはRT−PCR反応で生成するピロ燐酸を検出
することで、ターゲット核酸断片のRNA断片の存在を
検出することができる。この方法は、RNAウイルスの
存在を検出する場合に有効である。
【0028】(E) ピロ燐酸に作用する酵素反応試薬:
本発明においては、前記(D)に示したようなポリメラー
ゼ伸長反応の際に生成するピロ燐酸に対して作用する酵
素反応試薬を使用する。本発明で使用する、ピロ燐酸に
作用する酵素反応試薬は少なくとも一つの酸化酵素を含
んでいる。本発明に適したピロ燐酸に作用する酵素反応
試薬による、酵素反応は式(1)または式(2)に示し
た反応である。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】式(1)または式(2)に示した酵素反応
は、ピロ燐酸(PPi)をピロホスファターゼで無機燐
酸(Pi)に変換し、プリンヌクレオシドホスホリラー
ゼ(PNP)により無機燐酸(Pi)をキサントシンま
たはイノシンと反応させ、生じたキサンチンまたはヒポ
キサンチンをキサンチンオキシダーゼ(XOD)により
酸化して尿酸を生成させている。
【0032】式(1)または式(2)に示した酵素反応
において、ピロホスファターゼ(EC3,6,1,
1)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP,E
C2.4.2.1)、キサンチンオキシダーゼ(XO
D,EC1.2.3.2)及びペルオキシダーゼ(PO
D,EC1.11.1.7)は市販のものを使用するこ
とができる。
【0033】式(1)または式(2)に示した酵素反応
において、キサンチンまたはヒポキサンチンがキサンチ
ンオキシダーゼ(XOD)により酸化される際に電子移
動が起こる。本発明においては、この電子移動を検出す
る。
【0034】式(1)または式(2)に示した酵素反応
に、さらにウリカーゼを作用させて、式1または式2の
酵素反応で生成した尿酸をさらに酸化し、その際の電子
移動を検出することも可能である。
【0035】(F) 電極:本発明で使用する電極は通
常、外部に出力する端子を備えているものを用いる。電
極の材料としては、金以外にも、グラファイト、グラシ
ーカーボン等の炭素電極、白金、パラジウム、ロジウム
等の貴金属電極、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガ
ン、酸化鉛等の酸化物電極、Si、Ge、ZnO、Cd
S等の半導体電極、チタンなどの電子伝導体を挙げるこ
とができるが、金もしくはグラシーカーボンを用いるこ
とが特に好ましい。これらの電子伝導体は、導電性高分
子によって被覆されていても、単分子膜によって被覆さ
れていてもよい。電極は、例えば、電極がグラシーカー
ボンである場合には、電極を過マンガン酸カリウムで処
理するなどの方法で表面処理しておくことが好ましい。
【0036】本発明で用いられる電極は、導電性を持た
ない基体上に複数の電極が配置されたものであることが
好ましい。その場合、電極は、導電性を持たない基体上
に、互いに接しないように、かつ規則的に配置されてい
ることが好ましい。例えば、板上の基体上に電極が規則
的に配置された電極を好ましく使用できる。また底面に
電極を備えたウエル(穴)が基体に規則的に配置された
電極、および先端に電極を備えている棒状の基体を規則
的に配置したものも好ましく使用できる。
【0037】導電性を持たない基体としては、電気絶縁
性の疎水性担体、あるいは電気絶縁性の低親水性の担体
であることが好ましい。また、その表面が凹凸を有する
平面性の低いものであっても好ましく用いることができ
る。基板の材質としては、ガラス、セメント、陶磁器等
のセラミックスもしくはニューセラミックス、ポリエチ
レンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノール
Aのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタ
クリレート等のポリマー、シリコン、活性炭、多孔質ガ
ラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコン、多孔質活
性炭、織編物、不織布、濾紙、短繊維、メンブレンフィ
ルター等の多孔質物質などを挙げることができるが、各
種ポリマー、ガラスもしくはシリコンであることが特に
好ましい。これは、表面処理の容易さや電気化学的方法
による解析の容易さによるものである。基体の厚さは、
特に限定されないが、板状である場合には、100乃至
10000μmの範囲にあることが好ましい。
【0038】導電性を持たない基体上に複数の電極が配
置されたものとしては、導電性を持たない基体の表面を
上記の電子伝導体で処理したものを用いることが好まし
く、金を蒸着したものを用いることが特に好ましい。基
体は、電子伝導体で表面処理をする前に、基体上に親水
性の高分子物質からなる層や架橋剤からなる層を設けて
もよい。このような層を設けることによって基体の凹凸
を軽減することができる。また、基体によっては、その
基体中に電荷を有する親水性の高分子物質を含ませるこ
とも可能であり、このような処理を施した基体も好まし
く用いることができる。
【0039】導電性を持たない基体上に複数の電極が配
置されたものとしては、文献「Sosnowski,
R.G.et al.,Proc.Natl.Aci
d.Sci.USA,94,1119−1123,19
97」に記載の、シリコンチップも好ましく用いること
ができる。また、プリント配線基板のように、基体上に
印刷されてなるものであってもよい。
【0040】(G) 酸化還元活性分子修飾電極:本発明
で使用する酸化還元活性分子修飾電極は、前記(F)に示
したような電極の表面に酸化還元活性分子が固定されて
いる電極である。
【0041】電極表面に酸化還元活性分子を固定するに
は、電極が金電極の場合には、酸化還元活性を有する部
位を有するチオール化合物を用い、その水溶液、バッフ
ァー溶液または有機溶剤溶液を金電極表面に接触させ、
放置することで、酸化還元活性分子を金電極表面に固定
することができる。具体的には、酸化還元活性を有する
部位がフェロセニル基である場合、フェロセニルアルカ
ンチオールを金電極表面に作用させることで、表面に酸
化還元活性分子が固定されている酸化還元活性分子修飾
電極を作製することができる。
【0042】この場合、フェロセニルアルカンチオール
のチオール基(−SH)が金表面と反応して、Au(金)
−S結合を形成すると共に、アルキル長鎖同士の相互作
用によって、アルキル長鎖を介して金表面とは反対側に
フェロセニル基が並んだ構造の、高い配向性をもつ単分
子膜(Self−Assembled Monolay
ers:SAMs)を形成することが知られている。
【0043】上記の単分子膜を形成する際、連結基を介
してオキシダーゼを結合することが可能な官能基を有す
るアルカンチオール(具体例としてはアミノアルカンチ
オール)と、上記フェロセニルアルカンチオールとのニ
成分系で単分子膜を形成し、単分子膜表面に部分的にオ
キシダーゼ(具体例としてはキサンチンオキシダーゼ)
を固定した酸化還元活性分子修飾電極を作製することも
可能である。
【0044】このような部分的に酸化酵素を固定した酸
化還元活性分子修飾電極は、文献「Mat.Res.S
oc.Symp.Proc.,413,377(199
6)」に、試料中のグルコースを定量する方法に使用す
る酸化還元活性分子修飾電極として記載されている。し
かしながら、上記文献に記載されている方法は、部分的
に酸化酵素(グルコースオキシダーゼ)を固定した酸化
還元活性分子(フェロセニルアルカン)修飾電極を用い
て、前記酸化酵素がその基質であるグルコースを酸化す
る際に起こる電子移動を、フェロセニル基をメディエー
タとして、前記グルコースを定量する方法であり、本発
明の一つの形態である、ターゲット核酸断片を鋳型にし
たポリメラーゼ伸長反応により生成するピロ燐酸に対し
て、酸化酵素を含む酵素試薬を作用させて、その際に起
こる電子移動を酸化還元活性分子修飾電極を用いて検出
することで、ターゲット核酸断片の存在またはターゲッ
ト核酸断片の塩基配列を検出する方法とは異なるもので
ある。
【0045】このような酸化還元活性分子修飾電極で
は、その表面に固定された酸化還元活性分子により、前
記(E)で示したような、ピロリン酸に対して作用する酵
素反応において、酸化酵素が作用する際に起こる電子移
動を仲介する。図1は、電極(111)上に固定されて
いるフェロセニルアルカンチオール(121)が、酸化
酵素(131)と電極(111)の間の電子移動を仲介
している模式図である。電極(111)上に固定された
フェロセニルアルカンチオール(121)により、酸化
酵素(131)が作用する際に発生する電子が電極に伝
達される。即ち、フェロセニルアルカンチオール(12
1)は、酸化酵素(131)と電極(111)の間の電
子移動反応を仲介している。
【0046】(H) キット:本発明のターゲット核酸の
検出は、キサントシンまたはイノシン、ピロホスファタ
ーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及びキサン
チンオキシダーゼを含有する酵素反応試薬、及び酸化還
元活性分子修飾電極の各要素を含む、本発明に係わるキ
ットを用いて好ましく実施することができる。
【0047】上記のキットは、キサントシンまたはイノ
シン、ピロホスファターゼ、プリンヌクレオシドホスホ
リラーゼ、及びキサンチンオキシダーゼを含有する酵素
反応試薬を保持し、酸化還元活性分子修飾電極を備えて
いるカートリッジ(容器)であっても良い。
【0048】このキットを用いてターゲット核酸の検出
を行う場合は、ターゲット核酸断片、ターゲット核酸断
片の一部と相補的な少なくとも一種のプライマー、少な
くとも一種のデオキシヌクレオシド3リン酸(dNT
P)、及び少なくとも一種のポリメラーゼにより、予め
ポリメラーゼ伸長反応を行った反応液を、上記のキット
に供給することで、ターゲット核酸断片の検出を行う。
【0049】上記のポリメラーゼ反応を、キサントシン
またはイノシン、ピロホスファターゼ、プリンヌクレオ
シドホスホリラーゼ、及びキサンチンオキシダーゼを含
有する酵素反応試薬を保持し、酸化還元活性分子修飾電
極を備えている、前記カートリッジ(容器)の中で実施
することも可能である。
【0050】また、キットの別の形態として、少なくと
も一部の塩基配列が既知であるターゲット核酸断片を含
む液体を供給することのできる開口部と、ターゲット核
酸断片の一部と相補的な少なくとも一種のプライマー、
少なくとも一種のデオキシヌクレオシド3リン酸(dN
TP)、及び少なくとも一種のポリメラーゼを保持する
ことのできる少なくとも一つの反応セル部と、キサント
シンまたはイノシン、ピロホスファターゼ、プリンヌク
レオシドホスホリラーゼ、及びキサンチンオキシダーゼ
を含有する酵素反応試薬を保持し、酸化還元活性分子修
飾電極を備えている検出部と、及び前記開口部、反応セ
ル部、検出部の間を連結し、液体を移動させることので
きる細管または溝とを備えているカートリジを用いて実
施することも可能である。
【0051】図2には、本発明におけるカートリッジ形
態のキットの一例を示した。キット(10)において、
開口部(31)からターゲット核酸を含有する試料液を
供給することができる。開口部(31)は細管(41)
によって、反応セル(32)と連結されている。反応セ
ル(32)には、予めターゲット核酸断片の一部と相補
的な少なくとも一種のプライマー(81)、少なくとも
一種のデオキシヌクレオシド3リン酸(dNTP)(8
2)、及び少なくとも一種のポリメラーゼ(83)が保
持されている。さらに、反応セル(32)は細管(4
2)によって、検出部(33)と連結されている。検出
部(33)には予めキサントシンまたはイノシン、ピロ
ホスファターゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、
及びキサンチンオキシダーゼを含有する酵素反応試薬
(84)が保持され、酸化還元活性分子修飾電極(5
1)が備えられている。反応セル(32)でポリメラー
ゼ伸長反応が進行した試料液は、細管(42)を移動し
て、検出部(33)に供給される。検出部(33)に供
給された試料液中の、ポリメラーゼ伸長反応により生成
したピロ燐酸に対して酵素反応試薬(84)が作用し、
その際に起こる電子移動を、酸化還元活性分子修飾電極
(51)で電流として検出する。上記キット(10)に
おいて、開口部(31)と反応セル(32)の間、及び
反応セル(32)と検出部(33)の間の液体の移動
は、遠心力、電気泳動または電気浸透などを用いること
が可能である。また、反応セル(32)、細管(41,
42)、検出部(33)は、基体(21)と蓋(22)
によって密封されていることが望ましい。
【0052】図2に示したようなキット(10)を使用
する場合、図3に示したように、反応セル(32)およ
び検出部(33)の温度をコントロールすることのでき
る部分(61、62)と、酸化還元活性分子修飾電極
(51)上の電子移動を、電気化学的に電流として検出
する部分(71)を備えている装置を合わせて使用する
ことが望ましい。
【0053】本発明で使用することのできるカートリッ
ジ形態のキットは、図2に示されているものに限らな
い。ポリメラーゼ伸長反応に必要な試薬はそれぞれ別の
スペースに保持されていても良い。その場合は、反応時
にそれぞれの試薬が反応セルに移動してくるようにすれ
ば良い。酵素反応試薬が別々に、検出部以外のスペース
に保持されていても良い。その場合は、検出時に試薬が
検出部に移動してくるようにすれば良い。
【0054】また、1つのカートリッジ上に「開口部−
細管−反応セル−細管−検出部」の組を平行に並べて、
または同心円の半径方向に並べて、複数組設置すること
も可能である。この場合、例えば反応セルに保持するタ
ーゲット核酸断片の一部と相補的な少なくとも一種のプ
ライマーの塩基配列を、ターゲットとする核酸の種類に
応じて変更することで、同時に複数種のターゲット核酸
を検出することが可能なキットを提供できる。
【0055】
【実施例】以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
しかしながら、本実施例により本発明の技術的範囲が限
定されるものではない。
【0056】実施例1 酸化還元活性分子修飾電極を用
いたY染色体短腕上のSRY遺伝子関連部位の検出 (1) 酸化還元活性分子修飾電極の作製 面積が1.0mm2の金電極を、8−フェロセニル−1
−ヘキサンチオール(1mM)のエターノール溶液(2
μL)に浸漬し、25℃で18時間放置した。その後、
金電極表面をエタノールで洗浄し、さらに超純水で洗浄
し、次いで乾燥することにより、酸化還元活性分子修飾
電極を作製した。
【0057】(2) ターゲット核酸断片試料液の調製 男性、女性、各々1人づつから採取した血液検体に対し
て、市販の核酸抽出精製キット(QIAGEN社製、Q
IAamp DNA Blood Mini Kit)を用
いて、抽出、精製したゲノミック核酸断片を1mLの精
製蒸留水中に回収することで、ターゲット核酸断片試料
液を調製した。
【0058】(3) プライマーの調製 プライマーは、Y染色体短腕上のSRY遺伝子を特異的
に認識できるように設計した塩基配列を持つ、オリゴヌ
クレオチドのプライマーのセット(プライマー1、プラ
イマー2)として合成した。
【0059】<プライマーの塩基配列> プライマー1:5’−GATCAGCAAGCAGCT
GGGATACACGTG−3’ プライマー2:5’−CTGTAGCTTCCCGTT
GCGGTG−3’
【0060】(4) ポリメラーゼ伸長反応によるターゲ
ット核酸断片の増幅 以下に示す反応液の組成で、PCRによるターゲット核
酸断片の増幅を実施した。PCRは、[デネイチャー:
94℃・30秒、アニーリング:65℃・30秒、ポリ
メラーゼ伸長反応:72℃・1分]を30サイクル繰り
返することで実施した。
【0061】 <反応液の組成> 精製水 36.5μL 10×PCRバッファー 5μL 2.5mM dNTP 4μL Taq FP(ニッポンジーン社製) 0.5μL 20μM プライマー 2μL 30ng/μL ターゲット核酸断片試料液 2μL
【0062】(5) 電気化学的電流測定 前記(3)のポリメラーゼ伸長反応によるターゲット核
酸断片の増幅反応に、ターゲット核酸断片を含まない試
料液を用いた場合(コントロール)、男性から採取した
血液から調整したターゲット核酸試料液を用いた場合
(サンプルM)、及び女性から採取した血液から調整し
たターゲット核酸試料液を用いた場合(サンプルF)
の、各々の反応後の液を用いて、以下に示す組成の検出
液を調製した。
【0063】 <検出液の組成> ポリメラーゼ伸長反応後の液 100μL キサントシン 0.82g ピロホスファターゼ 250U プリンヌクレオシドホスホリラーゼ 100U キサンチンオキシダーゼ 200U 過塩素酸ナトリウム(0.1M)/ MES(1mM)緩衝液(pH6.4) 400μL
【0064】上記検出液に、(1)で作製した酸化還元
活性分子修飾電極を浸漬し、印加電圧100乃至700
mVの範囲で、ディファレンシャル・パルス・ボルタン
メトリー(DPV)測定を行った。次いで、印加電圧4
00mVでの応答電流値を求めたところ、コントロー
ル、サンプルM、サンプルFについて、各々−0.2μ
A、−2.8μA、及び−0.3μAであった。DPV
測定は、パルス振幅50mV、パルス幅50mSおよび
スキャン速度100mV/秒にて行った。
【0065】実施例1は、酸化還元活性分子修飾電極を
用いて、男性に特有に存在するY染色体短腕上のSRY
遺伝子関連部位を特異的に検出できることを示してい
る。この実施例1の結果より、本発明のポリメラーゼ伸
長反応の進行により生成するピロ燐酸に対して、少なく
とも一種の酸化酵素を含む酵素反応試薬を作用させ、酸
化還元活性分子修飾電極を用いて電気化学的に電流を測
定する方法により、ターゲット核酸断片の存在を検出す
ることが可能であることがわかる。
【0066】実施例2 酸化還元活性分子修飾電極を用
いたアルデヒド脱水素酵素遺伝子(ALDH2遺伝子)
関連部位の1塩基多型(SNPs)検出 (1) ターゲット核酸断片試料液の調製 予め塩基配列のシーケンシングにより、ALDH2遺伝
子関連部位の特定の1塩基種が異なることにより、AL
DH2活性型またはALDH2不活性型であることが既
知である、各々1人から採取した血液検体をもとに、実
施例1の(2)に記載されている方法と同様にして、タ
ーゲット核酸断片試料液を、各々サンプルALDH2活
性型、及びサンプルALDH2不活性型として調製し
た。
【0067】(2) プライマーの設計 プライマーは、12番染色体上のALDH2遺伝子関連
部位のなかで、ALDH2の活性を決定する特定部分に
ついて、ALDH2活性型の塩基配列に特異的なプライ
マーとして設計した塩基配列を持つ、オリゴヌクレオチ
ドのプライマー(プライマー1)と、前記特定部位の下
流の塩基配列に特異的なプライマーとして設計した塩基
配列を持つ、オリゴヌクレオチドのプライマー(プライ
マー2)のセットとして合成した。
【0068】<プライマーの塩基配列> プライマー1:5’−CAGGCATACACTGAA
GTGAAAACTG−3’(下線部のGAAの塩基配
列がAAAになるとALDH2不活性型となる) プライマー2:5’−AGGTCCTGAACTTCC
AGCAG−3’
【0069】(3) 酸化還元活性分子修飾電極を用いた
電気化学的電流測定 酸化還元活性分子修飾電極の作製は実施例1の(1)
に、ポリメラーゼ伸長反応によるターゲット核酸断片の
増幅(PCR)は実施例1の(4)に、及びポリメラー
ゼ伸長反応を行った後の反応液の酸化還元活性分子修飾
電極を用いての電気化学的電流測定は実施例1の(5)
に記載されている方法と同様にして、印加電圧400m
Vでの応答電流値を求めたところ、コントロール、サン
プルALDH2活性型、及びサンプルALDH2不活性
型について、各々−0.2μA、−2.5μA、及び−
0.2μAであった。
【0070】実施例2は、12番染色体上のALDH2
遺伝子関連部位のなかで、ALDH2の活性を決定する
特定部分の塩基配列違いを特異的に検出できることを示
している。この実施例2の結果より、本発明のポリメラ
ーゼ伸長反応の進行により生成するピロ燐酸に対して、
少なくとも一種の酸化酵素を含む酵素反応試薬を作用さ
せ、酸化還元活性分子修飾電極を用いて電気化学的に電
流を測定する方法により、ターゲット核酸断片の塩基配
列を検出することが可能であることがわかる。
【0071】
【発明の効果】本発明によれば、ウイルス、細菌等によ
る感染症の臨床検査、及び個人の遺伝的な特徴による遺
伝的疾患の検査等に有効な、特定の塩基配列を有するタ
ーゲット核酸断片の、簡便かつ迅速な検出方法およびキ
ットが提供される。
【0072】[配列表] 配列番号:1 配列の長さ:27 配列の型:核酸 配列の種類:合成DNA 配列:GATCAGCAAGCAGCTGGGATAC
ACGTG
【0073】 配列番号:2 配列の長さ:21 配列の型:核酸 配列の種類:合成DNA 配列:CTGTAGCTTCCCGTTGCGGTG
【0074】 配列番号:3 配列の長さ:25 配列の型:核酸 配列の種類:合成DNA 配列:CAGGCATACACTGAAGTGAAAA
CTG
【0075】 配列番号:4 配列の長さ:20 配列の型:核酸 配列の種類:合成DNA 配列:AGGTCCTGAACTTCCAGCAG
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施形態を説明する概念図
である。
【図2】 図2は、本発明のカートリッジ形態でのキッ
トの例を斜視図である。
【図3】 図3は、本発明のカートリッジ形態でのキッ
トを使用する場合のシステム構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
10…カートリッジ形態のキット 21…基体 22…蓋 31…開口部 32…反応セル 33…検出部 41…細管 42…細管 51…酸化還元活性分子修飾電極 61…温度コントロール部 62…温度コントロール部 71…電気化学的電流検出器 81…プライマー 82…dNTP 83…ポリメラーゼ 84…酵素反応試薬 111…電極 121…酸化還元活性分子 131…酸化酵素
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/50 G01N 27/46 336M 27/30 351 (72)発明者 阿部 義彦 埼玉県朝霞市泉水三丁目11番46号 富士写 真フイルム株式会社内 Fターム(参考) 2G045 AA35 DA13 FB01 FB05 4B063 QA01 QA18 QQ42 QQ52 QR08 QR42 QR62 QS25 QX04

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一部の塩基配列が既知である
    ターゲット核酸断片に対し、前記ターゲット核酸断片の
    一部と相補的な少なくとも一種のプライマー、少なくと
    も一種のデオキシヌクレオシド3リン酸、及び少なくと
    も一種のポリメラーゼの存在下に、前記ターゲット核酸
    断片を鋳型にして前記プライマーの3’末端を起点とす
    るポリメラーゼ伸長反応が連続して進行するか否かによ
    り、前記ターゲット核酸断片の存在または塩基配列を検
    出する方法において、前記ポリメラーゼ伸長反応により
    生成するピロ燐酸に対して、少なくとも一種の酸化酵素
    を含む酵素反応試薬を作用させ、表面に酸化還元活性を
    有する分子が固定されている酸化還元活性分子修飾電極
    を用いて、電気化学的に電流を測定することを特徴とす
    るターゲット核酸断片の検出方法
  2. 【請求項2】 ピロ燐酸に作用させる酵素反応試薬が、
    キサントシンまたはイノシン、ピロホスファターゼ、プ
    リンヌクレオシドホスホリラーゼ、及びキサンチンオキ
    シダーゼを含有する酵素反応試薬であることを特徴とす
    る、請求項1に記載のターゲット核酸断片の検出方法
  3. 【請求項3】 酸化還元活性分子修飾電極が、フェロセ
    ニル基を有する分子が表面に固定されている電極である
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の、
    ターゲット核酸断片の検出方法
  4. 【請求項4】 ポリメラーゼが、DNAポリメラーゼ
    I、DNAポリメラーゼIのクレノー断片、Bst D
    NAポリメラーゼ、及び逆転写酵素(リバーストランス
    クリプターゼ)からなるグループから選択される、請求
    項1、2または請求項3のいずれかに記載のターゲット
    核酸断片の検出方法
  5. 【請求項5】 電気化学的な電流の測定が、サイクリッ
    クボルタンメトリーまたはディファレンシャルパルスボ
    ルタンメトリーであることを特徴とする、請求項1、
    2、3または請求項4のいずれかに記載のターゲット核
    酸断片の検出方法
  6. 【請求項6】 キサントシンまたはイノシン、ピロホス
    ファターゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及び
    キサンチンオキシダーゼを含有する酵素反応試薬、電気
    化学活性分子修飾電極の各要素を含むターゲット核酸断
    片の検出キット
  7. 【請求項7】 要素として、検出するターゲット核酸断
    片の一部と相補的な少なくとも一種のプライマー、少な
    くとも一種のデオキシヌクレオシド3リン酸、及び少な
    くとも一種のポリメラーゼを含有するポリメラーゼ伸長
    反応試薬を更に含む請求項6に記載のターゲット核酸断
    片の検出キット
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