JP4104876B2 - 試料中の標的核酸を定量する方法、及びこれに用いられる装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中の標的核酸を高精度に定量することができる方法、及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCR(Polymerase Chain Reaction)は、二本鎖の核酸を鋳型とし、特定配列領域を挟むようにプライマー(オリゴヌクレオチド)を各相補鎖にハイブリッド結合(アニール)させ、基質である4種類のデオキシヌクレオチド三りん酸の存在下、DNAポリメラーゼを作用させると、プライマーの3’末端に鋳型の塩基配列に従ってヌクレオチドが添加され、伸長反応が起こることを利用した核酸の増幅方法である。伸長反応で出来た二本鎖を加熱して解離させ(変性)、プライマーを再びアニールさせ、伸長反応させる、というサイクルを繰り返してPCR産物を得ることができる。
【0003】
PCRは、上記のような変性、アニール、伸長というサイクルを繰り返すことによって、目的領域の核酸を
y=I×2n
(y:PCR産物量、 I=初期核酸量、 n=サイクル回数)
に従い指数関数的に増幅するものである。
【0004】
従来から、PCRを応用してDNAやRNAを定量する試みがなされている。これは、上記の式が
log(y)=nlog2+log(I)
と変形されることから、PCRのサイクル回数(n)とPCR産物量(y)の対数との関係から、初期核酸量(I)を概算する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のPCRを応用した標的核酸の定量方法は、核酸量が常に2nの割合で増幅するという仮定があるが、反応が進むにつれてPCR産物が次第に系内に増加し、PCR産物どうしがハイブリダイゼーションしてしまい、プライマーの鋳型核酸へのアニールの障害になるため、PCRサイクルが一定回数を越えると精度の良い定量ができないという問題がある。
【0006】
また、上記の方法では、反応によって蓄積されるピロリン酸が、DNAポリメラーゼの酵素活性を低下させてしまうので、精度の良い定量ができないという問題もあった。
【0007】
また、上記の方法では、最初に添加するプライマー等の必須物質が欠乏すると反応が停止してしまうというので精度の良い定量ができないという問題もあった。
【0008】
これらの問題を解決するため、操作の前段階に内部標準物質(インターナルスタンダード)を添加することでこれらのパラメータを補正し、より正確な初期核酸量を求める方法もあるが、内部標準物質としては目的核酸と同様の増幅効率を有するものを選択しなければならないため、内部標準物質の選択が非常に難しく、結果として精度の良い定量ができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解決することを目的とするものであり、極めて高感度に試料中の標的核酸を定量して、信頼性のある解析を可能とする方法及び装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、プライマー及び二本鎖特異的結合化合物の存在下において、(a)標的核酸を解離させる過程、(b)解離した標的核酸とプライマーをハイブリッド結合させる過程、(c)伸長反応させる過程、を繰り返し行い、前記二本鎖特異的結合化合物が有する電気化学的シグナルを検出することを特徴とする試料中の標的核酸を定量する方法を提供する。
【0011】
標的核酸は、特定配列領域からなる断片であることが好ましい。核酸には、DNA、RNA、LNA(locked nucleic acid;Proligo LLC社商標)等が含まれる。
【0012】
前記プライマーは2種のプライマーからなり、そのうちの1種は電極に固定化されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、4種のプライマー及び二本鎖特異的結合化合物の存在下において、標的核酸を解離させた後、標的核酸と4種のプライマーとをハイブリッド結合させ、次いで、伸長反応させ、前記二本鎖特異的結合化合物が有する電気化学的シグナルを検出する試料中の標的核酸を定量する方法であって、前記4種のプライマーそれぞれの両末端が前記伸長反応に寄与するものであり、前記伸長反応は、核酸の自己分子内二本鎖形成反応である試料中の標的核酸を定量する方法を提供する。
【0014】
上記のようにプイライマーが4種のプライマーからなる場合には、前記プライマーのうちの1種又は2種は、その両末端ではない部分に電極固定化のための官能基を有しており、該官能基を介して電極に固定化されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、2種のキメラプライマー及び二本鎖特異的結合化合物の存在下において、(a)標的核酸と2種のキメラプライマーをハイブリッド結合させる過程、(b)伸長反応させる過程、(c)上流側と下流側から伸長してきた伸長鎖どうしがハイブリッド結合して産物を得る過程、(d)該産物のハイブリッド部位を切断させる過程、を繰り返し行い、前記二本鎖特異的結合化合物が有する電気化学的シグナルを検出することを特徴とする試料中の標的核酸を定量する方法を提供する。
【0016】
前記2種のキメラプライマーのうちの1種は、電極に固定化されていることが好ましい。
【0017】
前記電気化学的シグナルは、二本鎖特異的結合化合物が有するアントラキノン、フェロセン、カテコールアミン、金属ビピリジン、金属フェナンスリン錯体、ビオローゲン、又はチオール基であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、前記のハイブリッド結合を行った段階で、電極を取り出すことを特徴とする、増幅産物の分離方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、試料中の標的核酸を定量するための装置であって、該装置は、プライマー及び二本鎖特異的結合化合物を含み、伸長反応により得られた二本鎖に、前記二本鎖特異的結合化合物を結合させ、該二本鎖特異的結合化合物が有する電気化学的シグナルを検出する手段を有することを特徴とする装置を提供する。
【0020】
また、本発明は、試料中の標的核酸を定量するための装置であって、反応容器と、該反応容器内に少なくとも一部が配置された電極と、電気化学測定器とを備え、前記反応容器内には、試料、第1のプライマー、電気化学活性を有する二本鎖特異的結合化合物が含まれ、かつ、前記電極の反応容器内に配置された部分に第2のプライマーが結合されていることを特徴とする装置を提供する。
【0021】
前記電極は、ワイヤー電極であることが好ましい。
【0022】
前記電極は金線、炭素棒、又は酸化チタンからなることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に係る定量方法、及び装置の実施形態を以下に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
(実施形態1に係る定量方法)
実施形態1は、PCR法を応用した試料中核酸の定量方法に係るものである。
【0025】
図1は、実施形態1に係る定量方法を模式的に示す図である。
【0026】
図1に示すように、ワイヤー電極12の表面には、第2のプライマー31が固定されている。これに、サンプルDNA32を加熱により変性(解離)させたもの(32’、32’’)と、第1のプライマー33と、を反応させると、解離したサンプルDNA32’と第1のプライマー31とが水素結合によりハイブリッド結合し、DNA32’’と第2のプライマー33とが水素結合によりハイブリッド結合する。
【0027】
系内には4種類のデオキシヌクレオチド三りん酸やDNAポリメラーゼ等の伸長反応に必要な物質が含まれているため、前記ハイブリッド結合に続いてポリメラーゼ伸長反応が起こる。
【0028】
ポリメラーゼ伸長反応により二本鎖が形成されると、系内に含まれている二本鎖特異的結合化合物35がこの二本鎖に結合する。二本鎖特異的結合化合物35は電気化学的シグナルを有しているので、これを検出する(例えば、電流値を測定する)ことにより二本鎖形成量(PCR産物量)を極めて高精度に求めることができる。
【0029】
次いで、系を加熱することにより、ポリメラーゼ伸長反応で形成された二本鎖を解離させた後、上記同様にして、ハイブリッド結合、ポリメラーゼ伸長反応、二本鎖特異的結合化合物の電気化学的シグナル検出、という過程を繰り返す。
【0030】
このように、変性、ハイブリッド結合、ポリメラーゼ伸長、電気化学的シグナル検出という過程を繰り返し行い、温度と電流値の測定結果をプロットすると、図2に示すようなデータが得られる。上述のように、
y=I×2n
(y:PCR産物量、 I=初期核酸量、 n=サイクル回数)であるから、
二本鎖DNA1コピー当たりの電流量をaとした場合、測定電流値iは、
i=I×2n−1×a
と、表わされ、これは以下のように変形される。
【0031】
log(i)=nlog2+log(Ia/2)
これより、図3に示すようなサイクル回数(n)−log(i)の関係をプロットすることによって切片(log(Ia/2))を求める。aは二本鎖の鎖長に依存する定数であるので、切片の値から初期核酸量(I)を算出することができる。
【0032】
本定量方法によれば、電気化学的に測定するためPCR産物量を高感度で検出することができるので、PCRを低サイクル(nが小さい)行うだけで極めて高精度に初期核酸量を定量することができる。すなわち、低サイクルでのPCRを行うだけで測定できるので、PCR産物量が検出限界に達しない段階において測定すれば足り、従来の方法のようなアニール障害、DNAポリメラーゼ酵素活性低下、反応停止といった問題が生じない。このため、極めて高感度に初期核酸量を定量することができる。
【0033】
なお、電気化学的シグナルを測定する際には、ワイヤー電極12を別の測定用電解液に移して、測定してもよい。
【0034】
また、ハイブリッド結合を行った段階でワイヤー電極12を取り出すことにより、PCR増幅産物のみを分離することができる。すなわち、上述のように、PCR増幅産物が電極上に固定されるので、ワイヤー電極12を取り出すことにより、容易に増幅産物のみを分離することができる。
【0035】
(実施形態2に係る定量方法)
実施形態2は、LAMP法(Loop-mediated Isothermal Amplification 栄研化学(株)登録商標)を応用した試料中核酸の定量方法に係るものである。
【0036】
本定量方法は、プライマーが4種のプライマーからなり、各プライマーの両末端が伸長反応に寄与するものであり、前記伸長反応は、核酸の自己分子内二本鎖形成反応である点が上記実施形態1とは異なっている。伸長反応は、ループ状のプライマーを起点にしてジグザグを描くように連続的に反応が起こる。この方法では、PCR法のように温度を上下調節する必要がなく、一定の温度を保って増幅させることができる。本定量方法では、前記プライマーのうちの1種又は2種は、その両末端ではない部分に電極固定化のための官能基を有しており、該官能基を介して電極に固定化されていることが好ましい。
本定量方法における増幅手法は、Nucleic Acids Research, Vol.28, No.12: e63 "Loop-mediated isothermal amplification"に記載ものを用いてもよい。
【0037】
実施形態2においては、標的核酸を解離させた後、標的核酸と4種のプライマーとのハイブリッド結合、伸長反応、電気化学的シグナル検出という過程を繰り返し行い、電流値の測定結果をプロットする。実施形態2では実施形態1の場合のような温度サイクル(n)ではなく、一定の反応時間(T)ごとにサンプルの電流値を検出することにより、初期核酸量(I)を定量する。
【0038】
y=I×2T/t
(y:PCR産物量、 I=初期核酸量、 t=核酸が2倍に増加するのに要する時間、 a:二本鎖DNA1コピー当たりの電流量)とした場合、測定電流値iは、 i=I×2(T/t−1)×a
と、表わされ、これは以下のように変形される。
【0039】
log(i)=(log2/t)・T+log(Ia/2)
実施形態1と同様に経過時間(T)−log(i)の関係をプロットすることによって切片を求め、これにより初期核酸量(I)を求めることができる。
【0040】
なお、実施形態2においても、増幅産物が電極上に固定されるので、ハイブリッド結合を行った段階でワイヤー電極12を取り出すことにより、増幅産物のみを容易に分離することができる。
【0041】
(実施形態3に係る定量方法)
実施形態3は、ICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids 宝酒造(株)登録商標)を応用した試料中核酸の定量方法に係るものである。
【0042】
本定量方法は、2種のキメラプライマー及び二本鎖特異的結合化合物の存在下において、(a)標的核酸と2種のキメラプライマーをハイブリッド結合させる過程、(b)伸長反応させる過程、(c)上流側と下流側から伸長してきた伸長鎖どうしがハイブリッド結合して産物を得る過程、(d)該産物のハイブリッド部位を切断させる過程、を繰り返し行い、前記二本鎖特異的結合化合物が有する電気化学的シグナルを検出するものであり、前記プライマーのうちの1種は電極に固定化されている。
【0043】
この方法においても、PCR法のように温度を上下調節する必要がなく、一定の温度を保って増幅させることができる。
【0044】
本定量方法における増幅手法は、第48回日本臨床検査医学会総会講演要旨集 96,2001 「等温遺伝子増幅法アイキャン(ICAN)TMによる結核菌検出試薬の開発」に記載ものを用いてもよい。
【0045】
実施形態3においては、標的核酸と2種のキメラプライマーとをハイブリッド結合させる過程、伸長反応させる過程、伸長鎖どうしをハイブリッド結合させる過程、ハイブリッド部位を切断させる過程、電気化学的シグナルを検出する過程を繰り返し行い、電流値の測定結果をプロットする。実施形態3においても、実施形態2と同様に一定の反応時間(t)ごとにサンプルの電流値を検出することにより、初期核酸量(I)を定量する。
【0046】
(標的核酸)
標的核酸は、試料中に含まれる核酸のうち、測定の対象(標的)とするものである。標的核酸は、特定配列領域からなる断片(セグメント)であることが好ましい。核酸には、DNA、RNA、LNA(locked nucleic acid;Proligo LLC社商標)、PNA(peptide nucleic acid)等が含まれる。
【0047】
(二本鎖特異的結合化合物)
二本鎖特異的結合化合物は、PCR産物である二本鎖に特異的に結合する化合物であり、アントラキノン、フェロセン、カテコールアミン、金属ビピリジン、金属フェナンスリン錯体、ビオローゲン、チオール基等の電気化学的シグナルを有するものが好ましい。
【0048】
ここで、二本鎖に特異的に「結合」するとは、二本鎖に挿入されて物理的に結合する場合のほか、共有結合、イオン結合、配位結合等も含まれる。特に二本鎖に挿入されて物理的に結合するインターカレータが好ましい。
【0049】
インターカレータは、二本鎖に挿入して置換基が主溝と副溝にそれぞれ位置するような複合体を形成する。すなわち、二本鎖の層間に侵入し、一種の電荷移動錯体を形成する。インターカレーションにより電極に流れる電流値が変化する。この電流は二本鎖に結合したインターカレータの酸化還元反応によるものである。二本鎖の形成の程度がインターカレートの程度として定量検出され得る。したがって、この電流値を検出することにより二本鎖量が測定され得る。
【0050】
インターカレータとしては、フェロセン、カテコールアミン、金属ピピリジン錯体、金属フェナンスリン錯体、ピオローゲン、またはこれら化合物を導入した縫い込み型インターカレータを有効成分とするものが挙げられ、特に好ましくは、フェロセン化ナフタレンジイミドである。この他に、エチジュウム、エチジュウムブロマイド、アクリジン、アミノアクリジン、アクリジンオレンジ、プロフラビン、エリブチシン、アクチノマイシンD、ドーノマイシン、マイトマイシンC、トリス(フェナントロリン)亜鉛錯体、トリス(フェナントロリン)ルテニュウム錯体、トリス(フェナントロリン)コバルト錯体、ジ(フェナントロリン)亜鉛錯体、ジ(フェナントロリン)ルテニュウム錯体、ジ(フェナントロリン)コバルト錯体、ビピリジンプラチナ錯体、ターピリジンプラチナ錯体、フェナントロリンプラチナ錯体、トリス(ビピリジル)亜鉛錯体、トリス(ビピリジル)ルテニュウム錯体、トリス(ビピリジル)コバルト錯体、ジ(ビピリジル)亜鉛錯体、ジ(ビピリジル)ルテニュウム錯体、ジ(ビピリジル)コバルト錯体を有効成分としてもよい。
【0051】
反応溶液中の二本鎖特異的結合化合物は、数nM〜数mMオーダーの濃度範囲で用いられ得る。好ましくは、0.1mM〜5mMであり、最も好ましくは0.5mMである。
【0052】
(プライマー)
プライマーは、定量対象としての標的核酸に特徴的な配列領域(特定配列領域)を特定した上で、この特定配列領域の増幅に必要なプライマーを選択して用いる。プライマーは、15〜30塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、DNA合成の出発点となるものである。
【0053】
プライマーは2種のプライマーを用い、そのうちの1種をワイヤ電極ー12へ結合(固定化)させることが好ましい。「2種のプライマー」とは、例えば5’プライマー(標的核酸のセグメントと同一の配列を含むもの)と、3’プライマー(標的核酸のセグメントと同一の配列に相補する配列を含むもの)と、からなるキメラプライマーであってもよい。
【0054】
また、プライマーは4種のプライマーを用い、そのうちの1種又は2種をワイヤー電極12へ結合させることも好ましい。「4種のプライマー」とは、例えばループ状のプライマーであって、各プライマーの両末端が核酸の自己分子内二本鎖形成反応(伸長反応)に寄与するものであってもよい。このような両末端が伸長反応に寄与するようなプイライマーの場合、プライマーの両末端ではない部分(プライマー塩基鎖の末端でない部分)に電極固定化のための官能基を有しており、該官能基を介して電極に固定化されることが好ましい。4種のプライマーのうち、BIPプライマー及び/又はFIPプライマーを電極に固定することが好ましい。
【0055】
(ワイヤー電極へのプライマーの結合)
以下に図4〜6を参照しながらワイヤー電極12へのプライマーの結合について説明する。
【0056】
図4に示すように、ワイヤー電極12が金線(Au)である場合には、プライマー(オリゴヌクレオチド)をチオール化(SH基を導入)して、金と硫黄との金−硫黄結合を介してプライマーがワイヤー電極12に結合される。オリゴヌクレオチドにチオール基を導入する方法としては、Mizuo MAEDA,Koji NAKANO,Shinji UCHIDA,and Makoto TAKAGI,Chemistry Letters,1805−1808(1994)あるいはB.A.Connolly,Nucleic Acids Rs.,13,4484(1985)に記載されている方法等を用いてもよい。なお、金−硫黄結合に関しては、例えばJ.Am.Chem.Soc 111号P321〜 1989年 C.D.Bain著や、Anal.Chem.70号P2396〜1998年 JJ.Gooding著に記載がある。
【0057】
図5に示すように、ワイヤー電極12が炭素棒(C)である場合には、プライマー(オリゴヌクレオチド)をアミノ化(NH2基を導入)して、グラシーカーボンを過マンガン酸カリウムで酸化することにより電極表面にカルボン酸を導入し、プライマーの有するアミノ基とアミド結合を形成させて、プライマーをワイヤー電極12に結合させる。グラシーカーボンへの固定化は、Kelly M.Millan and Susan R.Mikkelsen,Analitical Chemistry65,2317−2323(1993)に記載されている。
【0058】
図6に示すように、ワイヤー電極12が酸化チタン(TiO2)である場合には、プライマー(オリゴヌクレオチド)をアミノ化(NH2基を導入)して、図6(a)又は(b)のようにして、酸化チタン表面にプライマーを結合させる。酸化チタンへの固定化は、P.M.Armistead, H.H.Thorp, Analitical Chemistry., 73, 558-564(2001)に記載されている。
【0059】
(定量のための装置)
図7は、本発明に係る装置を簡潔に示す図である。
【0060】
図7に示すように、装置100は、反応容器10と、該反応容器10内の温度調節手段30と、電気化学測定器20と、制御部40を備えている。
【0061】
反応容器10内には、反応溶液11が注入されており、この反応溶液11にワイヤー電極12と、対極13と、参照電極14の一部が浸漬されている。ワイヤー電極12、対極13、及び参照電極14は、それぞれ電気化学測定器20に接続されている。制御部40は、温度調整手段30と電気化学測定器20にそれぞれ接続されており、これらをコントロールする。
【0062】
温度調節手段30としては、例えば、ペルチェ素子、ヒーター等を用いる。
【0063】
電気化学測定器20としては、サイクリックボルタモグラム、デファレンシヤルパルスボルタモグラム、ポテンシオスタット等を用いることができる。
【0064】
反応溶液11は、試料、第1のプライマー、二本鎖特異的結合化合物、その他、4種類のデオキシヌクレオチド三りん酸やDNAポリメラーゼ等の伸長反応に必要な物質が含まれている。
【0065】
ワイヤー電極12には第2のプライマーが結合されている。ワイヤー電極12は、金線、炭素棒、又は酸化チタンからなることが好ましい。
【0066】
対極13とワイヤー電極12の間に弱い電圧をかけると、二本鎖特異的結合化合物の有する電気化学的シグナルとワイヤー電極12との間に微弱電流が流れる。この電流を検出することにより電気化学的シグナルを電流値として検出することができる。
【0067】
なお、本発明の「試料中の標的核酸を定量するための装置」は、内部に試料、第1のプライマー、二本鎖特異的結合化合物を注入した解析用チップでであって、第2のプライマーを固定化した電極と、対極、参照電極を備えるものであってもよい。
【0068】
(実施例)
以下に実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
ジストロフィンのエキソン48の0.51 kbpの断片に対応する配列番号1のプラーマーA及び配列番号2のプライマーBを合成した。プライマーAの5’-末端にはSH基を導入した。
【0070】
SH化プライマーAの溶液を金ワイヤー(直径3 mm、長さ2 cm)に浸して一時間放置後水洗した。サンプルチューブ内に、このSH化プライマー、0.1μMのプライマーB、250μMのデオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(dNTPs)、2.5 ユニットのTaq DNA polymerase (Takara Shuzo)、10mMのTris-HCl buffer (pH 8.3)、50mMのKCl、1.5 mMのMgCl2、及び0.01% (W/v)のゼラチンを加えて全量を20μLとした。
【0071】
これをDNA Thermal Cycler (Astec, Fukuoka)を用いてPCRを行なった。1サイクルの条件は、94℃で1分、次いで50℃で2分、次いで72℃で3分という条件で行った。それぞれのサイクルで金電極を取り出し、0.1M 酢酸緩衝液(pH5.6)、0.1M KCl、50μM FNDを含む電解液で三電極方式(白金対極、参照電極;Ag/AgCl、作用極;金ワイヤー)にてDPV測定を行なった。テンプレート染色体DNA1f mol(目的遺伝子当たり)を用いた場合の結果を図8に示した。図8に示すように、低サイクル数において、電流値の対数とPCRサイクル数との間に直線関係が得られた。
【0072】
【発明の効果】
本発明に係る定量方法及び装置によれば、極めて高感度に試料中の標的核酸を定量して、信頼性のある解析を行うことができる。
【0073】
本発明の定量方法及び装置は、生物学、医学分野での遺伝子変異解析や遺伝子発現解析に有効な手段であり、遺伝子診断、予防医学、遺伝子治療、創薬に利用できる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態1に係る定量方法を模式的に示す図である。
【図2】 PCR産物量の経時変化及び温度の経時変化をプロットしたグラフである。
【図3】 サイクル回数(n)−log(i)の関係をプロットしたグラフである。
【図4】 ワイヤー電極(Au)へのプライマーの結合について説明する図である。
【図5】 ワイヤー電極(C)へのプライマーの結合について説明する図である。
【図6】 ワイヤー電極(TiO2)へのプライマーの結合について説明する図である。
【図7】 本発明に係る装置の全体構成を説明する図である。
【図8】 DPV応答(電流値)とPCRサイクルとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
31 第2のプライマー
32 サンプルDNA
33 第1のプライマー
35 二本鎖特異的結合化合物
100 装置
10 反応容器
30 温度調節手段
20 電気化学測定器
40 制御部
12 ワイヤー電極
11 反応溶液
13 対極
14 参照電極
Claims (8)
- プライマー及び二本鎖特異的結合化合物の存在下において、(a)標的核酸を解離させる過程、(b)解離した標的核酸とプライマーをハイブリッド結合させる過程、(c)伸長反応させる過程、を繰り返し行い、
前記二本鎖特異的結合化合物が有する電気化学的シグナルを検出することを特徴とする試料中の標的核酸を定量する方法であって、
前記プライマーは2種のプライマーからなり、そのうちの1種は電極に固定化されている、試料中の標的核酸を定量する方法。 - 4種のプライマー及び二本鎖特異的結合化合物の存在下において、標的核酸を解離させた後、標的核酸と4種のプライマーとをハイブリッド結合させ、次いで、伸長反応させ、前記二本鎖特異的結合化合物が有する電気化学的シグナルを検出する試料中の標的核酸を定量する方法であって、
前記4種のプライマーそれぞれの両末端が前記伸長反応に寄与するものであり、前記伸長反応は、核酸の自己分子内二本鎖形成反応であり、
前記プライマーのうちの1種又は2種は、その両末端ではない部分に電極固定化のための官能基を有しており、該官能基を介して電極に固定化されている、試料中の標的核酸を定量する方法。 - 2種のキメラプライマー及び二本鎖特異的結合化合物の存在下において、(a)標的核酸と2種のキメラプライマーをハイブリッド結合させる過程、(b)伸長反応させる過程、(c)上流側と下流側から伸長してきた伸長鎖どうしがハイブリッド結合して産物を得る過程、(d)該産物のハイブリッド部位を切断させる過程、を繰り返し行い、
前記二本鎖特異的結合化合物が有する電気化学的シグナルを検出することを特徴とする試料中の標的核酸を定量する方法であって、
前記2種のキメラプライマーのうちの1種は、電極に固定化されている、試料中の標的核酸を定量する方法。 - 前記電気化学的シグナルは、二本鎖特異的結合化合物が有するアントラキノン、フェロセン、カテコールアミン、金属ビピリジン、金属フェナンスリン錯体、又はビオローゲンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項においてハイブリッド結合を行った段階で、電極を取り出すことを特徴とする、増幅産物の分離方法。
- 試料中の標的核酸を定量するための装置であって、
反応容器と、該反応容器内に少なくとも一部が配置された電極と、電気化学測定器とを備え、
前記反応容器内には、試料、第1のプライマー、電気化学活性を有する二本鎖特異的結合化合物が含まれ、かつ、前記電極の反応容器内に配置された部分に第2のプライマーが結合されていることを特徴とする装置。 - 前記電極は、ワイヤー電極である請求項6記載の装置。
- 前記電極は金線、炭素棒、又は酸化チタンからなる請求項6又は7記載の装置。
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