JP2003037018A - 圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

圧粉磁心の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気抵抗値が大きく、渦電流によるコアロス
の小さい圧粉磁心を製造する。 【解決手段】 軟磁性粉末に、金属塩水溶液を混合し、
この混合物を成形したのち、加熱処理する工程を含む製
造方法であって、かつ、前記金属が電気絶縁性の酸化物
を形成するものとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は圧粉磁心の製造方法
に関し、さらに詳しくは、その表面が絶縁性酸化物で均
一に被覆された状態の軟磁性粉末を用いることにより、
渦電流によるコアロスが小さく抑えられた圧粉磁心の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】圧粉磁心は、対象製品が小型・複雑な形
状であっても高い歩留まりで製造することができるの
で、従来の磁心の主流であるケイ素鋼板を用いた積層型
磁心に取って代わって広く用いられ始めている。この圧
粉磁心は、一般に、次のようにして製造されている。
【0003】すなわち、まず、所定組成の軟磁性合金の
インゴットを機械粉砕したり、または軟磁性合金の溶湯
にアトマイズ法を適用したりして所定粒度の軟磁性粉末
が原料粉末として製造される。そして、この原料粉末に
対しては次のような処置が施される。この処置は、製造
目的の圧粉磁心の電気抵抗率を高めるためであり、同時
に後述する原料粉末の成形時における成形性を付与する
ための処置である。
【0004】例えば、この原料粉末に、絶縁処理剤とし
て、Al23粉末、SiO2粉末のような電気絶縁性の
酸化物粉末や、AlN粉末、Si34粉末、BN粉末の
ような電気絶縁性の窒化物粉末の所定量と、必要に応じ
て水ガラス、リン酸、シリコーン樹脂、フェノール樹
脂、イミド樹脂のような電気絶縁性のバインダ成分の所
定量とを混合して混合物にする。
【0005】したがって、得られた混合物は、原料粉末
の表面に上記した電気絶縁性の粉末が接触し、同時にそ
の全体が上記したバインダ成分で被覆された状態になっ
ている。換言すれば、この混合物は、電気絶縁性の被膜
でその表面が被覆されている原料粉末の集合体になって
いて、全体としては電気絶縁性を備えている。このよう
にして調製された混合物を所定形状の金型に充填し、つ
いで所定の圧力で成形する。そして最後に、得られた成
形体に対して温度500〜900℃程度の熱処理を行っ
て成形時に蓄積された歪みを解放・除去し、目的とする
圧粉磁心が製造される。
【0006】ところで、上記したようにして製造される
圧粉磁心の用途分野としては、例えば、スイッチング電
源の直流出力側の平滑用チョークコイル、交流入力側の
ノーマルモードノイズフィルタ、力率改善用のアクティ
ブフィルタ、DC−DCコンバータの昇圧および降圧コ
イル、または電磁弁の作動用コイルなどがある。その場
合、これらの分野における圧粉磁心は高周波の印加状態
下で使用されるので、当該圧粉磁心は、電気抵抗率が高
く、電気絶縁性に優れていることが必要になる。仮に、
電気絶縁性が劣っていると、その圧粉磁心は、高周波下
で透磁率が低下したり、渦電流が流れてコアロスが非常
に高くなるなどの問題が発生するからである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記した一
連の工程で圧粉磁心を製造する場合、混合物の成形工程
で下記のような問題が生じ、その結果として、高い電気
抵抗率の圧粉磁心が得にくいという問題がある。すなわ
ち、磁性粉末に添加される絶縁物が粉末形態であるた
め、混合により磁性粉末表面に絶縁物粉末を均一に被覆
することは困難である。そのため、続く成形工程で、印
加される加圧力によって、原料粉末の表面に形成されて
いた電気絶縁性の被膜が破損して原料粉末が相互に接触
するという事態が発生しやすいということである。いわ
ば、原料粉末間の電気絶縁性が破壊されてしまうという
問題である。
【0008】本発明は従来の製造方法における上記した
問題を解決し、従来の方法に比べて電気抵抗率が数倍以
上大きい値になるような圧粉磁心の製造方法の提供を目
的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
めに、本発明者らは種々検討を重ねた結果、従来のよう
に絶縁処理剤としての金属酸化物を粉末の形態で混合す
るのではなく、同じ金属を水溶性の金属塩の形態、すな
わち、金属塩の水溶液として使用するという着想を得
た。そして、この金属塩の水溶液を磁性粉末と混合し、
得られた混合物を成形した後加熱処理すれば、そのとき
の熱分解によって生成した金属酸化物により磁性粉末表
面を均一に被覆することができることを確認して、本発
明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明の圧粉磁心の製造方法
は、軟磁性粉末に、金属塩水溶液ならびにバインダ成分
を混合し、この混合物を成形したのち、加熱処理する工
程を含み、かつ、前記金属が電気絶縁性の酸化物を形成
するものである。この構成において、前記金属はAl,
Si、Mg,Li,Na,Ca,Zr,およびTiより
なる群から選択される1種または2種以上であることが
好ましく、さらに、前記塩はカルボン酸塩またはオキシ
カルボン酸塩が好ましく、このカルボン酸またはオキシ
カルボン酸は、ギ酸、シュウ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、
クエン酸、コハク酸、安息香酸およびサリチル酸よりな
る群から選択される1種または2種以上であることが好
ましい。
【0011】また、前記金属塩水溶液の濃度は、0.1
〜50質量%であり、この金属塩水溶液の添加量は、軟
磁性粉末100質量部に対して0.5〜100質量部で
あることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の圧粉磁心の製造方法は、
Fe基である軟磁性粉末に、絶縁バインダを混合する過
程で、従来法のように絶縁バインダとして電気絶縁性の
金属酸化物の粉末を用いるのではなく、酸化されて絶縁
性を発現するような金属の塩の水溶液を用いることを特
徴とする。
【0013】以下に本発明の製造工程を順次説明する。
まず、所定組成の軟磁性合金のインゴットを機械粉砕し
たり、または軟磁性合金の溶湯にアトマイズ法を適用し
たりして所定粒度の軟磁性粉末が原料粉末として製造さ
れる。このとき使用される軟磁性合金はとくに限定され
るものではないが、Fe基の軟磁性粉末が好ましく、具
体的には、純Fe,Fe−1Si,Fe−3Si,Fe
−50Ni,Fe―81Ni−2Mo,Fe−9.5S
i−5.5Al,Fe−50Co,Fe−49Co−2
V(数字はすべて質量%を表す)などをあげることがで
きる。
【0014】続いて、これらの軟磁性粉末に金属塩水溶
液およびバインダ成分を添加・混合する。使用する金属
塩はその金属が酸化物を生成しやすく、しかも、その酸
化物が良好な電気絶縁性を有するものであり、かつ、上
記金属塩の形態で水溶性であることが要求される。
【0015】具体的には、使用される金属としては、A
l,Si、Mg,Li,Na,Ca,Zr,およびTi
などをあげることができる。そして、これらの金属は塩
の形態で使用されるが、その金属塩が水溶性でなければ
ならないので、組み合わされるべき酸の具体例として
は、例えば、カルボン酸塩、オキシカルボン酸塩などを
あげることができ、さらに具体的には、ギ酸、シュウ
酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、安息香
酸およびサリチル酸などが好適なものとしてあげられ
る。
【0016】したがって、本発明で使用される金属塩は
上記の金属と酸の種々の組み合わせであり、例えば、シ
ュウ酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、酢酸ケイ素、
ギ酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、クエン酸リ
チウム、サリチル酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酢酸
ナトリウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなどをあ
げることができる。
【0017】また、これらの金属塩は単独で使用しても
よいが、2種以上を組み合わせて使用することも可能で
ある。上記の金属酸化物の水溶液は、例えば、0.1〜
50質量%の濃度で使用することが好ましい。さらに、
この水溶液は軟磁性粉末100質量部に対して、0.5
〜100質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0018】成形体の強度を高めるために必要に応じ
て、この金属塩水溶液とともに添加されるバインダ成分
としては、とくに限定されるものではなく、例えば、水
ガラスやシリコーン樹脂、リン酸、フェノール樹脂、イ
ミド樹脂のように従来から使用されているものを用いる
ことができる。さらに、上記の混合物に潤滑剤として、
ステアリン酸亜鉛、ワックスなどを軟磁性粉末100質
量部に対して、0.1〜2.0質量部の範囲で添加して
もよい。
【0019】次に、上記により得られた軟磁性粉末、金
属塩水溶液およびバインダ成分の混合物を、所定の形状
に成形する。この工程には通常のプレス成形工程などを
適用することができ、その成形圧は、例えば、500〜
2500MPaの範囲に設定されることが好ましい。し
かるのち、得られた成形体を加熱処理して圧粉磁心を得
る。この加熱処理工程は、成形時に蓄積された歪みを解
放・除去するという従来の効果を有すると同時に、軟磁
性粉末に混合された金属塩を加熱により熱分解して金属
酸化物を生成させ、軟磁性粉末の表面に絶縁性の金属酸
化物被膜を形成させる効果がある。すなわち、この加熱
処理によって、例えばシュウ酸アルミニウムは、熱分解
し、アルミナ(Al23)となって軟磁性粉末表面に絶
縁性の被膜となって形成される。
【0020】この加熱処理は、真空中またはArなどの
不活性ガス雰囲気中で行われる。そして、その加熱処理
温度は、金属塩が完全に分解することにより、金属酸化
物が生成する温度に設定することが好ましく、例えば、
500〜900℃の範囲に設定される。このように、金
属塩の水溶液を軟磁性粉末に混合して、成形、加熱する
ことにより、従来法すなわち軟磁性粉末にアルミナやシ
リカの粉末を混合して成形・加熱する方法に比べて、軟
磁性粉末の表面を絶縁性の金属酸化物で均一に被覆する
ことができるため、最終的に得られる圧粉磁心の電気抵
抗率が向上する。
【0021】
【実施例】実施例1〜13、比較例1〜8 水アトマイズ法により、平均粒径が約50μmで、表1
に示した成分組成の各種の軟磁性粉末を製造した。そし
て、これらの粉末に対して、表1に示した各種の金属塩
水溶液を、軟磁性粉末100質量部に対して表示の量
(cc,カッコ内は質量部換算)となるように添加・混
合した。そして、水分を蒸発させるために150℃で混
合物を乾燥させたのち、さらに0.5質量部のステアリ
ン酸亜鉛(潤滑剤)を混合した。
【0022】続いて、各混合物を1000〜2000M
Paの圧力でプレス成形して、5mm×5mm×30m
mの棒状の成形体を得た。しかるのち、得られた各成形
体を真空中、700℃で1時間保持する加熱処理を行っ
た。得られた各圧粉磁心に対し、4端子法により電気抵
抗率の測定を行い、得られた結果を表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】表1の結果から、同一組成の軟磁性粉末に
対して金属塩の水溶液を添加・混合して絶縁処理を行っ
た場合は、同じ金属の酸化物粉末を添加・混合した場合
に比べて、電気抵抗率が2〜4倍以上高くなっているこ
とが分かった。したがって、渦電流によるコアロスが小
さい圧粉磁心を製造することが可能となる。しかも、金
属塩水溶液を分解して金属酸化物を生成させる工程は、
成形後の磁気焼鈍工程と同時に行うことができるため、
付加的な工程を必要としないという利点もある。
【0025】
【発明の効果】以上の結果から明らかなように、本発明
によれば、従来方法と比較して数倍高い電気抵抗率を有
する圧粉磁心を製造することが可能であり、しかも、付
加的な工程を必要としないため、その工業的価値は極め
て大である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軟磁性粉末に、金属塩水溶液を混合し、
    この混合物を成形したのち、加熱処理する工程を含み、
    かつ、前記金属が電気絶縁性の酸化物を形成するもので
    ある圧粉磁心の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記金属がAl,Si,Mg,Li,N
    a,Ca,ZrおよびTiよりなる群から選択される1
    種または2種以上である請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記塩が、カルボン酸塩またはオキシカ
    ルボン酸塩である請求項1または2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記カルボン酸またはオキシカルボン酸
    がギ酸、シュウ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、コ
    ハク酸、安息香酸およびサリチル酸よりなる群から選択
    される1種または2種以上である請求項1〜3いずれか
    に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記金属塩水溶液の濃度が0.1〜50
    質量%である請求項1〜4いずれかに記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記金属塩水溶液の添加量が、前記軟磁
    性粉末100質量部に対して0.5〜100質量部であ
    る請求項1〜5いずれかに記載の製造方法。
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